説明

車輌内装材用のポリエステル繊維布帛の処理方法、車輌内装材の製造方法、及び車輌内装材

【課題】充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることが可能な、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛を処理する方法を提供する。
【解決手段】融点が50〜150℃であるワックスと、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤と、溶剤と、を含み上記ワックスが上記溶剤中に乳化分散された処理液を、ポリエステル繊維布帛に付着させ、当該ポリエステル繊維布帛に付着した上記処理液を乾燥することによって上記ポリエステル繊維布帛に上記ワックスを付着させる工程を備える、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛を処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛の処理方法、車輌内装材の製造方法、及び車輌内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌の内装においては、カーシート等の車輌内装材が用いられる。従来、車輌内装材としては、ポリエステル繊維布帛を繊維基材として有する繊維製品が利用されている。例えば、モケット等のポリエステル繊維織物や、トリコット及びジャージ等のポリエステル繊維編物が、車輌内装材用の繊維製品を構成する繊維基材として利用されている。
【0003】
特に最近は、製造コストの利点から、ポリエステル繊維のジャージ編物が多用されてきている。しかし、ジャージ編物を用いた繊維製品の場合、縫製の際の針と繊維基材中の糸との間の摩擦が大きいと地糸の糸切れが発生し、この糸切れが発端となって繊維製品が破れやすくなるという問題がある。
【0004】
従来、繊維基材を用いた繊維製品における糸切れを防止する技術として、例えば、ワックス、シリコーンオイル及び界面活性剤からなる組成物を用いる方法(特許文献1)、ジメチルシリコーン乳化物を立毛調編物に含浸処理した後、その裏面にアクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を付与する方法(特許文献2)、ポリカーボネート系ポリオールを用いて合成されるポリウレタン樹脂を布帛表面に露出している繊維に被覆して模様付ける方法(特許文献3)が開示されている。
【特許文献1】特開昭59−199871号公報
【特許文献2】特開昭63−282380号公報
【特許文献3】特開2006−207087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛としてトリコット編物等を用いた場合、従来の方法によりトリコット編物等に起毛処理を施すと、起毛性については充分な効果が得られるものの、難燃性や摩擦堅牢度が低下する傾向があった。また、上記ポリエステル繊維布帛としてジャージ編物等を用いた場合、従来の方法によりジャージ編物に地糸切れ防止処理を施すと、充分な地糸切れ防止効果は得られるものの、難燃性や摩擦堅牢度が低下する傾向があった。
【0006】
難燃性については、ヘキサブロモシクロドデカン等のハロゲン系難燃剤やリン酸グアニジン及びポリリン酸カルバメート等のリン系難燃剤を大量に用いることによって充分な効果を得ることができるが、その場合、摩擦堅牢度及び起毛性又は地糸切れ防止性が低下する傾向があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることが可能な、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛を処理する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のワックスと特定の界面活性剤と溶剤とを含み、ワックスが溶剤中に乳化分散された処理液を用いて、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛にワックスを付着させることにより、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることが可能であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、融点が50〜150℃であるワックスと、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤と、溶剤と、を含み、上記ワックスが上記溶剤中に乳化分散された処理液を、ポリエステル繊維布帛に付着させ、当該ポリエステル繊維布帛に付着した上記処理液を乾燥することによって上記ポリエステル繊維布帛に上記ワックスを付着させる工程を備える、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛を処理する方法である。上記本発明に係る方法によれば、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることができる。
【0010】
上記ワックスは、炭化水素ワックス、炭化水素酸化ワックス及び動植物性ワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらのワックスを用いることによって、ポリエステル繊維布帛の難燃性及び摩擦堅牢度が低下するのをより効果的に防止することができる。
【0011】
上記溶剤は水であることが好ましい。溶剤として水を用いることによって、環境への負担を軽くすることができる。
【0012】
本発明の方法は、ポリエステル繊維布帛にリン系難燃剤を付着させる工程を備えることが好ましい。リン系難燃剤を付着させることによって、更に難燃性を向上させることができる。
【0013】
上記リン系難燃剤は疎水性リン系難燃剤であることが好ましい。疎水性リン系難燃剤を用いることによって、白化現象等の際付きを防止しながら優れた難燃性を付与することができる。
【0014】
上記ポリエステル繊維布帛は、ポリエステルジャージ編物又はポリエステルトリコット編物であることが好ましい。これらのポリエステル繊維布帛は製造コスト等の点で利用しやすい。また、これらのポリエステル繊維布帛は摩擦堅牢度の低下を生じやすいため、本発明はこれらのポリエステル繊維布帛を処理する場合に特に有用である。
【0015】
別の側面において、本発明は、ポリエステル繊維布帛を含む車輌内装材の製造方法に関する。本発明に係る車輌内装材の製造方法は、上記本発明に係る方法によりポリエステル繊維布帛を処理する工程を備える。上記本発明に係る製造方法によれば、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることが可能である。
【0016】
更に別の側面において、本発明は車輌内装材に関する。本発明に係る車輌内装材は、上記本発明に係る製造方法により得られるものであり、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態に係る製造方法は、ポリエステル繊維布帛を繊維基材として有する繊維製品である車輌内装材を製造するための方法に関する。当該製造方法は、融点が50〜150℃であるワックスと、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤と、溶剤とを含み、ワックスが溶剤中に乳化分散された処理液を、ポリエステル繊維布帛に付着させ、当該ポリエステル繊維布帛に付着した上記処理液を乾燥することによってポリエステル繊維布帛にワックスを付着させる方法により、ポリエステル繊維布帛を処理する工程を備える。
【0020】
上記処理液を製造する方法としては特に限定されないが、ワックスと界面活性剤と溶剤とを混合し、ホモミキサーやホモジナイザーを用いてワックスを溶剤中に乳化分散する方法が挙げられる。
【0021】
ワックスとしては、炭化水素ワックス、炭化水素酸化ワックス、動植物性ワックスが挙げられる。炭化水素ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油由来のワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成ワックスが挙げられる。炭化水素酸化ワックスとしては、石油ワックスの酸化物、ポリエチレンワックスの酸化物が挙げられる。動植物性ワックスとしては、蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋等の動物由来のワックス、カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋、キャンデリラワックス等の植物由来のワックスが挙げられる。これらのワックスは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
これらのワックスのうち、融点が50〜150℃であるワックスを用いる。ワックスの融点が50℃未満であると、難燃性や摩擦堅牢度が低下する傾向がある。一方、ワックスの融点が150℃を越えると、ワックスの乳化分散が困難となって、処理後の難燃性や摩擦堅牢度のばらつきが大きくなる傾向がある。なおここでいう融点とは、JIS K2235:1991に規定される方法により求められる融点を意味する。
【0023】
非イオン界面活性剤としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物等のエーテル型の非イオン界面活性剤;脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、油脂のアルキレンオキサイド付加物等のエーテルエステル型の非イオン界面活性剤;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリアルキレングリコール型界面活性剤;グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル等のエステル型の非イオン界面活性剤;多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等のその他の非イオン界面活性剤を挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを挙げることができ、アルキレンオキサイドの付加形態は、2種以上のランダム付加でも、ブロック付加でもよい。これらの非イオン界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
なお、より安定した乳化分散が可能で、難燃性や摩擦堅牢度の低下を防止することができるという観点から、非イオン界面活性剤としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物が好ましく、炭素数16〜30の高級アルコールアルキレンオキサイド付加物が特に好ましい。
【0025】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸セッケン等のカルボン酸塩のアニオン界面活性剤;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステル塩、フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、多価アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸、硫酸化オレフィン等の硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸等のホルマリン縮合物、α−オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩等のスルホン酸塩等のスルホン酸エステル塩のアニオン界面活性剤;オレオイルメチルタウリンナトリウム塩、高級アルコールリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル塩、フェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、多価アルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のリン酸エステル塩;N−メチルタウリンオレイン酸塩、N−メチルタウリンステアリン酸塩等のその他のアニオン界面活性剤が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを挙げることができ、アルキレンオキサイドの付加形態は、2種以上のランダム付加でも、ブロック付加でもよい。塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミン等の2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等のアミン塩を挙げることができる。これらのアニオン界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
より安定した乳化分散が可能で、難燃性や摩擦堅牢度の低下を防止することができるという観点から、アニオン界面活性剤としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩が好ましく、炭素数16〜30の高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩が特に好ましい。アニオン界面活性剤を併用することで、ワックスの分散物をポリエステル繊維布帛に付着させた後、難燃剤等の機能性材料を更に付着させる際に、機能性材料の付着ムラを防止し、安定した機能を得ることができる。
【0027】
溶剤としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジオキサン、エチレングリコール等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。環境への配慮等の観点から、溶剤として水を用いることが好ましい。
【0028】
界面活性剤の使用量は特に制限されないが、非イオン界面活性剤の使用量は、ワックス100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、1〜60質量部であることが特に好ましい。非イオン界面活性剤の使用量が上記下限未満であると、ワックスの乳化分散が不良となり難燃性や摩擦堅牢度にムラが生じる傾向がある。一方、非イオン界面活性剤の使用量が上記上限を超えると、ワックスがポリエステル系繊維布帛へ付着しにくくなり摩擦堅牢度が低下する傾向がある。
【0029】
また、アニオン界面活性剤の使用量は、ワックス100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることが特に好ましい。アニオン界面活性剤の使用量が上記下限未満であると、ワックスの乳化分散の安定性が不良となり、処理後の難燃性や摩擦堅牢度のばらつきが大きくなる傾向がある。一方、アニオン界面活性剤の使用量が上記上限を超えると、摩擦堅牢度の低下を防止する効果が小さくなる傾向がある。
【0030】
上記処理液をポリエステル繊維布帛に付着させる方法としては、特に限定されないが、パディング法、パッド法、スプレー法等の方法を挙げることができる。また、ポリエステル繊維布帛に付着した上記処理液を乾燥する方法としては、特に限定されないが、自然乾燥や加熱乾燥等の方法を挙げることができる。
【0031】
ポリエステル繊維布帛に付着させるワックスの量は、特に限定されないが、ポリエステル系繊維布帛100質量部に対して0.05〜3質量程度が好ましい。ポリエステル繊維布帛に付着させるワックスの量が上記範囲内にあることにより、摩擦堅牢度の低下を特に効果的に防止することができる。
【0032】
本実施形態に係る車輌内装材の製造方法においては、ポリエステル繊維布帛に、リン原子を含有するリン化合物からなるリン系難燃剤を付着させることができる。リン系難燃剤としては、疎水性リン系難燃剤、リン酸塩系難燃剤が挙げられる。疎水性リン系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクリルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート)トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル;レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジクレジル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族縮合リン酸エステル;10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、エチル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド、フェニル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド等のフェナントレン誘導体、トリフェノキシトリメトキシシクロトリホスファゼン、テトラフェノキシテトラメトキシシクロテトラホスファゼン、ヘキサフェノキシヘキサメトキシシクロヘキサホスファゼン等ホスファゼン化合物、アミノジフェニルホスフェート、メチルアミノジフェニルホスフェート、ジメチルアミノジフェニルホスフェート、エチルアミノジフェニルホスフェート、ジエチルアミノジフェニルホスフェート、プロピルアミノジフェニルホスフェート、ジプロピルアミノジフェニルホスフェート、オクチルアミノジフェニルホスフェート、ジフェニルウンデシルアミノホスフェート、シクロヘキシルアミノジフェニルホスフェート、ジシクロヘキシルアミノジフェニルホスフェート、アリルアミノジフェニルホスフェート、アニリノジフェニルホスフェート、ジ−o−クレジルフェニルアミノホスフェート、ジフェニル(メチルフェニルアミノ)ホスフェート、ジフェニル(エチルフェニルアミノ)ホスフェート、ベンジルアミノジフェニル、モルホリノジフェニルホスフェート等のリン酸アミド化合物等のリン化合物が挙げられる。リン酸塩系難燃剤としては、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物が挙げられる。白化現象等の際付きを防止する効果を高めることができるという観点から、リン系難燃剤としては疎水性リン系難燃剤が特に好ましい。
【0033】
リン系難燃剤をポリエステル繊維布帛に付着させる工程は、ワックスを付着させる工程の前、ワックスを付着させる工程と同時、又はワックスを付着させる工程の後に行う。このうち、ワックスを付着させる工程の前又はワックスを付着させる工程の後が好ましく、ワックスを付着させる工程の前が特に好ましい。ワックスを付着させる前にリン系難燃剤を付着させる場合、ポリエステル繊維布帛を染色する際に染料と共に難燃剤を付着させることが好ましい。染料と共にリン系難燃剤を付着させることによって、難燃性のばらつきが小さくなり、難燃性を効果的に向上させることができる。
【0034】
リン系難燃剤をポリエステル繊維布帛に付着させる方法としては、特に限定されない。例えば、リン系難燃剤の水分散液又は水溶液をパディング法、パッド法、スプレー法及びキスロール法等の方法により付着させ、ポリエステル繊維布帛に付着した水分散液又は水溶液を乾燥する方法によってリン系難燃剤をポリエステル繊維布帛に付着させることができる。この場合の乾燥は、自然乾燥や加熱乾燥等の従来周知の方法によって行うことができる。リン系難燃剤をポリエステル繊維布帛に付着させる工程をワックスを付着させる工程と同時に行う場合、ワックスを含む処理液中にリン系難燃剤が添加される。
【0035】
リン系難燃剤の水分散液を製造する方法としては、特に限定されないが、リン系難燃剤と界面活性剤と水とを混合し、ホモミキサーやホモジナイザー、コロイドミル、サンドグラインダー、ビーズミル、ボールミル、アトライター等を用いて、リン系難燃剤を水中に乳化分散させる方法が挙げられる。この場合に用いる界面活性剤としては、上記ワックスの乳化分散に用いられる界面活性剤と同様のものが好ましい。
【0036】
ポリエステル系繊維布帛に付着させるリン系難燃剤の量は、特に限定されないが、ポリエステル繊維布帛100質量部に対して0.1〜30質量部程度が好ましい。ポリエステル繊維布帛に付着させるリン系難燃剤の量が上記範囲内にあることにより、難燃性及び摩擦堅牢度の低下を特に効果的に防止することができる。
【0037】
ポリエステル系繊維布帛としては、特に限定されないが、レギュラーポリエステル繊維布帛、カチオン可染ポリエステル繊維布帛、再生ポリエステル繊維布帛、又はこれら2種以上からなるポリエステル繊維布帛が挙げられる。また、このようなポリエステル繊維と、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ナイロン、アクリル、ポリアミド等の合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維等の無機繊維;又はこれら2種以上からなる繊維との混紡により得られる複合繊維布帛をポリエステル繊維布帛として用いてもよい。
【0038】
また、ポリエステル繊維布帛の形態としては、起毛、ベアロ等のトリコット、ハイパイル起毛等のダブルラッセル、シンカーパイル等の丸編み、ジャージ等の編物、ジャガーモケット等の織物、ニードルパンチ、ステッチポンド、スパンレース等の不織布等を挙げることができる。これらのうち、トリコット編物及びジャージ編物が好適に用いられる。なお、ポリエステル繊維布帛の厚さ及び目付は、素材に応じて適宜調整される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(ワックス乳化分散液1)
155°Fパラフィンワックス(融点69℃)100g、ステアリルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物35g及びステアリルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩2gを容器に仕込み、90℃で溶融し、均一に混合した。容器の内容物を撹拌しながら80〜90℃の水863gを徐々に添加していき、W/O型のエマルションからO/W型のエマルションに転相させた。更に80〜90℃にて保温しながらホモジナイザー(APV Gaulin製)を用いて乳化処理を行った後、冷却してワックス乳化分散液1を得た。得られたワックス乳化分散液1について、レーザ回折式粒度分布測定装置〔SALD−1100、島津製作所(株)製〕を用いて乳化分散物の平均粒子径を測定した結果、0.5μmであった。
【0041】
(ワックス乳化分散液2)
酸化ポリエチレンワックス(酸価28、融点138℃)100g、ステアリルアルコールエチレンオキサイド15モル付加物30g、ステアリルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩2g、水酸化カリウム2.8g及び水865.2gを耐圧性容器に仕込み、150〜160℃で3時間撹拌して乳化した後、冷却してワックス乳化分散液2を得た。得られたワックス乳化分散液2の乳化分散物の平均粒子径は、0.9μmであった。
【0042】
(ワックス乳化分散液3)
カルナバワックス(融点58℃)100g、ステアリルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物35g及びステアリルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩2gを容器に仕込み、90℃で溶融し、均一に混合した。容器の内容物を撹拌しながら80〜90℃の水863gを徐々に添加していき、W/O型のエマルションからO/W型のエマルションに転相させた。更に80〜90℃にて保温しながらホモジナイザー(APV Gaulin製)を用いて乳化処理を行った後、冷却してワックス乳化分散液3を得た。得られたワックス乳化分散液3の乳化分散物の平均粒子径は、0.5μmであった。
【0043】
(ワックス乳化分散液4)
155°Fパラフィンワックス(融点69℃)100g、ミリスチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物50g及びステアリルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩2gを容器に仕込み、90℃で溶融し、均一に混合した。容器の内容物を撹拌しながら80〜90℃の水848gを徐々に添加していき、W/O型のエマルションからO/W型のエマルションに転相させた。更に80〜90℃にて保温しながらホモジナイザー(APV Gaulin製)を用いて乳化処理を行った後、冷却してワックス乳化分散液4を得た。得られたワックス乳化分散液4の乳化分散物の平均粒子径は、0.8μmであった。
【0044】
(ワックス乳化分散液5)
115°Fパラフィンワックス(融点47℃)100g、ステアリルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物35g及びステアリルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩2gを容器に仕込み、90℃で溶融し、均一に混合した。容器の内容物を撹拌しながら80〜90℃の水863gを徐々に添加していき、W/O型のエマルションからO/W型のエマルションに転相させた。更に80〜90℃にて保温しながらホモジナイザー(APV Gaulin製)を用いて乳化処理を行った後、冷却してワックス乳化分散液5を得た。得られたワックス乳化分散液5の乳化分散物の平均粒子径は、0.5μmであった。
【0045】
(ワックス乳化分散液6)
155°Fパラフィンワックス(融点69℃)100g、ステアリルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物35g及びステアリルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩2gを容器に仕込み、90℃で溶融し、均一に混合した。容器の内容物を撹拌しながら80〜90℃の水868gを徐々に添加してW/O型のエマルションからO/W型のエマルションに転相させた。更に80〜90℃にて保温しながらホモジナイザー(APV Gaulin製)を用いて乳化処理を行った後、冷却してワックス乳化分散液6を得た。得られたワックス乳化分散液6の乳化分散物の平均粒子径は、0.5μmであった。
【0046】
(シリコーン乳化分散液7)
ジメチルシリコーン(粘度100000CS)100g、ステアリルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物35g及びステアリルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩2gを容器に仕込み、60℃で均一に混合した。容器の内容物を撹拌しながら70〜80℃の水863gを徐々に添加していき、W/O型のエマルションからO/W型のエマルションに転相させた。更に70〜80℃にて保温しながらホモジナイザー(APV Gaulin製)を用いて乳化処理を行った後、冷却してシリコーン乳化分散液7を得た。得られたシリコーン乳化分散液7の乳化分散物の平均粒子径は、0.5μmであった。
【0047】
(難燃剤1の水分散液)
トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド15モル付加物の硫酸エステルアンモニア塩20g及び水580gを容器に仕込み、均一に混合した。容器の内容物をミキサーにて撹拌しながら10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(難燃剤1)400gを添加し、更に撹拌により予備分散して分散液を得た。0.5mmガラスビーズを用いたビーズミルによって、得られた分散液に対して微粒子化処理を行い(本分散)、難燃剤1の水分散液を得た。得られた難燃剤1の水分散液について、レーザ回折式粒度分布測定装置〔SALD−1100、島津製作所(株)製〕を用いて分散物の平均粒子径を測定した結果、0.6μmであった。
【0048】
(難燃剤2の水分散液)
トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド15モル付加物の硫酸エステルアンモニア塩20g及び水580gを容器に仕込み、均一に混合した。容器の内容物をミキサーにて撹拌しながらレゾルシノールビス(ジキシレニル)ホスフェート(難燃剤2)400gを添加し、更に撹拌して分散液を得た。0.5mmガラスビーズを用いたビーズミルによって、得られた分散液に微粒子化処理を行い、難燃剤2の水分散液を得た。得られた難燃剤2の水分散液における分散物の平均粒子径は0.3μmであった。
【0049】
(難燃剤3の水分散液)
リン酸グアニジン(難燃剤3)400g及び水600gを容器に仕込み、均一に混合して、難燃剤3の水分散液を得た。
【0050】
<評価方法>
車輌内装材について、摩擦堅牢度、難燃性、起毛性、際付き及び地糸切れ防止性を以下の方法により評価した。
【0051】
(1)摩擦堅牢度
JIS L 0849:2004に準じて、摩擦試験機(大栄化学精機製作所製)を用いて、荷重2Nの条件で車輌内装材を摩擦布により100回摩擦した。摩擦布として綿金巾を使用した。摩擦後の綿金巾の汚染度と、汚染用グレースケールとの比較に基づいて、以下の5段階の評価基準に従って摩擦堅牢度を評価した。評価は乾式及び湿式それぞれの条件で行った。
5級:汚染が認められない。
4級:汚染がわずかに認められる
3級:汚染が明瞭に認められる
2級:汚染がやや著しく認められる
1級:汚染が著しく認められる
【0052】
(2)燃焼性
FMVSS−302法(自動車内装用品の安全基準)の方法に従って、車輌内装材の燃焼距離、燃焼時間及び燃焼速度を測定し、以下の基準によって燃焼性を評価した。
不燃性 :A標線を越えて燃焼しない(A標線前自消)。
自己消火性:A標線を越えて燃焼するが、燃焼距離が50mm未満、且つ燃焼速度が80mm/分未満である。
易燃性 :A標線を越えて燃焼し、燃焼距離が50mm以上、又は燃焼速度が80mm/分以上である。
【0053】
(3)起毛性
車輌内装材を、幅25cm、長さ40cmの生地とした。その生地をミシンにて縫い合わせ、3〜4mのエンドレス状としたものを試料とした。起毛試験機〔ユニバーサルKU−50、金井重要工業(株)製〕を用いて、300rpmにて試料に対して起毛処理を行った。起毛処理された試料について、毛の長さ、毛のさばけ方、起毛密度及び均一性を目視で観察して起毛による風合いの状態を総合的に評価し、以下の3段階の基準によって起毛性を判定した。
A:良好
B:やや不良
C:不良
【0054】
(4)際付き
90℃の純水2mLを車輌内装材の表面に滴下した。室温にて風乾後、車輌内装材の表面における際付き(白化や濃色部の出現)の有無を目視で観察し、以下の3段階の基準によって際付きを評価した。
A:際付きなし
B:やや際付きが認められる
C:明らかに際付きが認められる
【0055】
(5)地糸切れ防止性
車輌内装材を、幅10cm且つ長さ55cmの生地とした。その生地を2枚重ね合わせ、工業用ミシンを用いて、以下の条件で左右の両端50cmずつを縫い合わせた。合計1m分の縫製部分を観察し、地糸切れが発生した箇所の個数によって地糸切れ防止性を評価した。なお、地糸切れ防止性は、地糸切れの箇所が少ない程良好である。
ミシン :LU2−4410−BIT−CS、三菱電気(株)製
ミシン針 :#21Sボールポイント
縫い目ピッチ:3.5mm
縫い代 :8.0mm
縫い糸 :ポリエステル#8
ミシン回転数:2000rpm
縫製長さ :0.5m
【0056】
実施例1
以下の条件で、ポリエステル繊維布帛に対して染色処理を行った。
ポリエステル繊維布帛:ポリエステルトリコット編物(目付380g/m
染色機 :ミニカラー染色機、テクサム技研社製
浴比(繊維重量:染色液重量):1対15
処理温度 :130℃
処理時間 :60分間
(染色液の組成)
分散染料 :Dianix Black HF−B(8%owf)
分散均染剤:ニッカサンソルトRM−340E(商品名)、日華化学(株)製(0.5g/L)
酢酸 :0.2cc/L
難燃剤1の水分散液:5%owf
【0057】
次に、ソーピング剤サンモール RC−700E〔登録商標、日華化学(株)〕1g/L、ハイドロサルファイト2g/L及び苛性ソーダ1g/Lを含む水溶液を用いて、ポリエステル繊維布帛を80℃で20分間還元洗浄した。湯洗及び水洗を行った後、140℃で3分間乾燥させた。
【0058】
ワックス乳化分散液1が2質量%含まれるように水で希釈した処理液を用いて、絞り率60%にて上記乾燥後のポリエステル繊維布帛にパディング処理を行った。更に150℃で5分間乾燥して、ワックスが付着したポリエステル繊維布帛を車輌内装材として得た。
【0059】
実施例2
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0060】
実施例3
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0061】
実施例4
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0062】
実施例5
難燃剤1の水分散液の代わりに難燃剤2の水分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0063】
実施例6
難燃剤1の水分散液を含まない染色液を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順でポリエステル繊維布帛へのワックスの付着までを行った。その後、難燃剤1の水分散液が5質量%含まれるように水で希釈した処理液を用いて絞り率60%にてパディング処理を行い、150℃で5分間乾燥して、車輌内装材を得た。
【0064】
実施例7
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液2を用いたこと以外は、実施例6と同様にして車輌内装材を得た。
【0065】
実施例8
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液4を用いたこと以外は、実施例6と同様にして車輌内装材を得た。
【0066】
実施例9
ワックス乳化分散液1及び難燃剤1の水分散液の代わりにワックス乳化分散液3及び難燃剤2の水分散液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして車輌内装材を得た。
【0067】
実施例10
難燃剤1の水分散液の代わりに難燃剤3の水分散液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして車輌内装材を得た。
【0068】
実施例11
実施例1と同様の手順でポリエステル繊維布帛へのワックスの付着までを行った。その後、ワックス乳化分散液1を2質量%及び難燃剤1の水分散液を5質量%含むように水で希釈された処理液を用いて、絞り率60%にてポリエステル繊維布帛にパディング処理を行った後、150℃で5分間乾燥して、車輌内装材を得た。
【0069】
実施例12
ワックス乳化分散液1及び難燃剤1の水分散液の代わりにワックス乳化分散液3及び難燃剤2の水分散液を用いたこと以外は、実施例11と同様にして車輌内装材を得た。
【0070】
実施例13
難燃剤1の水分散液の代わりに難燃剤3の水分散液を用いたこと以外は、実施例11と同様にして車輌内装材を得た。
【0071】
実施例14
難燃剤1の水分散液を含まない染色液を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順でポリエステル繊維布帛へのワックスの付着までを行って、車輌内装材を得た。
【0072】
実施例15
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液2を用いたこと以外は、実施例14と同様にして車輌内装材を得た。
【0073】
実施例16
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液3を用いたこと以外は、実施例14と同様にして車輌内装材を得た。
【0074】
比較例1
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0075】
比較例2
ワックス乳化分散液1の代わりにワックス乳化分散液6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0076】
比較例3
ワックス乳化分散液1の代わりにシリコーン乳化分散液7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして車輌内装材を得た。
【0077】
比較例4
ワックス乳化分散液1の代わりにシリコーン乳化分散液7を用いたこと以外は、実施例6と同様にして車輌内装材を得た。
【0078】
比較例5
ワックス乳化分散液1の代わりにシリコーン乳化分散液7を用いたこと以外は、実施例11と同様にして車輌内装材を得た。
【0079】
比較例6
ワックス乳化分散液1の代わりにシリコーン乳化分散液7を用いたこと以外は、実施例14と同様にして車輌内装材を得た。
【0080】
比較例7
未処理のポリエステルトリコット編物(目付380g/m)を車輌内装材とした。
【0081】
実施例1〜16及び比較例1〜7で得られた車輌内装材について、摩擦堅牢度、難燃性、起毛性及び際付きの評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示されるように、実施例1〜16で得られた車輌内装材においては、未処理のポリエステル繊維布帛(比較例7)と比較して、摩擦堅牢度又は難燃性が低下することなく、起毛性が向上することが明らかとなった。また、際付きも良好なレベルが維持された。特に疎水性リン系難燃剤を用いた実施例1〜9、11〜12においては、際付きが全く見られなかった。一方、融点の低いワックスを付着させた比較例1においては、摩擦堅牢度と難燃性の低下が見られた。また、カチオン性界面活性剤を用いた比較例2においては、摩擦堅牢度の低下が見られた。更に、シリコーンを付着させた比較例3〜6においては、難燃性の顕著な低下が見られた。
【0084】
実施例17〜32及び比較例8〜17
ポリエステルトリコット編物(目付380g/m)の代わりに、ポリエステルジャージ編物(目付395g/m)を用いたこと以外は、実施例1〜16及び比較例1〜7と同様にして車輌内装材を得た。
【0085】
実施例17〜32及び比較例8〜17で得られた車輌内装材について、摩擦堅牢度、難燃性、地糸切れ防止性及び際付きの評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示されるように、実施例17〜32で得られた車輌内装材においては、未処理のポリエステル繊維布帛(比較例14)と比較して、摩擦堅牢度及び難燃性が低下することなく、地糸切れ防止性が改善されることが明らかとなった。また、際付きも良好なレベルが維持された。特に疎水性リン系難燃剤を用いた実施例17〜25、27〜28、30〜32においては、際付きが全く見られなかった。一方、融点の低いワックスを付着させた比較例8においては、摩擦堅牢度及び難燃性の低下が見られ、地糸切れも生じた。また、カチオン性界面活性剤を用いた比較例9においては、摩擦堅牢度の低下が見られた。更に、シリコーンを付着させた比較例10〜13においては、難燃性の顕著な低下が見られた。
【0088】
以上より明らかなように、本発明の製造方法によれば、充分な難燃性及び摩擦堅牢度を有すると共に充分な起毛性又は地糸切れ防止性を有する車輌内装材を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が50〜150℃であるワックスと、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤と、溶剤と、を含み前記ワックスが前記溶剤中に乳化分散された処理液を、ポリエステル繊維布帛に付着させ、当該ポリエステル繊維布帛に付着した前記処理液を乾燥することによって前記ポリエステル繊維布帛に前記ワックスを付着させる工程を備える、車輌内装材用のポリエステル繊維布帛を処理する方法。
【請求項2】
前記ワックスが、炭化水素ワックス、炭化水素酸化ワックス及び動植物性ワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤が水である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステル繊維布帛にリン系難燃剤を付着させる工程を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リン系難燃剤が疎水性リン系難燃剤である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステル繊維布帛が、ポリエステルジャージ編物又はポリエステルトリコット編物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によりポリエステル繊維布帛を処理する工程を備える、ポリエステル繊維布帛を有する車輌内装材の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の製造方法により得られる車輌内装材。

【公開番号】特開2008−163501(P2008−163501A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352481(P2006−352481)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】