説明

車輌用前照灯

【課題】車輌用前照灯に前方からの衝突があった場合に、衝突物のダメージを軽減或いは無くす。
【解決手段】ランプハウジング20と該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバー30とで画成された灯室11内に収容されると共に光源を備えたランプユニット40と、前記ランプユニットをランプハウジングに対して傾動可能に支持するエイミング機構50とを備え、前記エイミング機構は、前記ランプユニットの傾動支点を構成するエイミング支点51と、前記ランプハウジングに回転可能に支持されて前方へ延出するエイミングスクリュー52と、前記ランプユニットに設けられたブラケット42bに支持され、前記エイミングスクリューの回転に応じて該エイミングスクリューに沿って前後方向に移動する合成樹脂製ベアリング53とから構成され、前記ベアリングには、前記エイミングスクリューの軸方向に延びる切欠部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、車輌用前照灯に前方からの衝突があった場合に、衝突物のダメージを軽減或いは無くす技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯の一例に特許文献1に示されたものがある。
【0003】
特許文献1に示された車輌用前照灯は、ランプボディと、該ランプボディの前面開口を閉塞する透光カバーとで画成された灯室内に灯具ユニットが配置されて成るものである。そして、これら灯具ユニットはエイミング機構を介して前記ランプボディに傾動可能に支持されている。
【0004】
そして、前記灯具ユニットはほぼ同じ構造をしている。すなわち、灯具ユニットは、光源を支持したリフレクタの前端にレンズホルダが固定され、該レンズホルダの前端に投影レンズが支持された構造をしている。そして、このような灯具ユニットと透光カバーとの間には前記エイミング機構を前方に対して閉塞するエクステンションパネルが配置されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−49189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した特許文献1に示された車輌用前照灯に限らず、車輌用前照灯というものは、大きな質量を有する車輌の最前部に装備されており、従って、衝突の際には、真っ先に相手方と衝突する可能性が大である。そして、衝突の相手方が歩行者である場合には、歩行者に怪我等大きなダメージを与える惧れがある。
【0007】
例えば、透光カバーやエクステンションパネルを歩行者との衝突によって容易に変形するように構成しておくことによって、衝突による衝撃を緩和して歩行者等へのダメージを軽減することは出来る。
【0008】
しかしながら、透光カバーやエクステンションパネルの内側には灯具ユニットが位置している。灯具ユニットは前記したものに限らず、構造上それなりの剛性を有していて、容易には変形しないようになっている。特に、前記したプロジェクタ型の灯具ユニットは、リフレクタにはアルミダイカストが、レンズホルダにはアルミダイカストや金属板が、投影レンズにはガラスが、それぞれ使用されることが多く、相当の剛性を有する場合が多い。
【0009】
そのため、折角、透光カバーやエクステンションパネルが変形しても、これらが灯具ユニットと当接した後は、それ以上の変形が成されず、結局、歩行者等にかなりの衝撃が与えられる惧れがある。
【0010】
本発明は、以上に示した問題点に鑑みて為されたものであり、車輌用前照灯に前方からの衝突があった場合に、衝突物のダメージを軽減或いは無くすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
車輌用前照灯は、前記した課題を解決するために、ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとで画成された灯室内に収容されると共に光源を備えたランプユニットと、前記ランプハウジングとランプユニットとの間に介在されて、前記ランプユニットをランプハウジングに対して傾動可能に支持するエイミング機構とを備え、前記エイミング機構は、前記ランプユニットの傾動支点を構成するエイミング支点と、前記ランプハウジングに回転可能に支持されて前方へ延出するエイミングスクリューと、前記ランプユニットに設けられたブラケットに支持されると共に前記エイミングスクリューが螺合し、前記エイミングスクリューの回転に応じて該エイミングスクリューに沿って前後方向に移動する合成樹脂製ベアリングとから構成され、前記ベアリングには、前記エイミングスクリューの軸方向に延びる切欠部が形成されている。
【0012】
従って、車輌用前照灯にあっては、カバーが後方へ向かって変形すると、該変形したカバーがランプユニットを後方へ押して、ベアリングがエイミングスクリューから外れて後方へ移動或いはベアリングがエイミングスクリューに沿って後方へ移動する。
【発明の効果】
【0013】
本発明車輌用前照灯は、ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとで画成された灯室内に収容されると共に光源を備えたランプユニットと、前記ランプハウジングとランプユニットとの間に介在されて、前記ランプユニットをランプハウジングに対して傾動可能に支持するエイミング機構とを備えた車輌用前照灯であって、前記エイミング機構は、前記ランプユニットの傾動支点を構成するエイミング支点と、前記ランプハウジングに回転可能に支持されて前方へ延出するエイミングスクリューと、前記ランプユニットに設けられたブラケットに支持されると共に前記エイミングスクリューが螺合し、前記エイミングスクリューの回転に応じて該エイミングスクリューに沿って前後方向に移動する合成樹脂製ベアリングとから構成され、前記ベアリングには、前記エイミングスクリューの軸方向に延びる切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
従って、本発明車輌用前照灯にあっては、カバーが後方へ向かって変形すると、該変形したカバーがランプユニットを後方へ押して、ランプユニットに回動しようとする力又はほぼ前後方向に直交する方向に移動しようとする力が加わるため、ランプユニットに支持されているベアリングに後方への移動力又は前後方向に直交する方向への移動力が付与される。そして、ベアリングは切欠部によって脆弱部分が形成され及び/又はエイミングスクリューに対する保持力が低下しているので、ベアリングがエイミングスクリューの軸方向へ滑り又はベアリングがエイミングスクリューから脱落する。そのため、ランプユニットは、回動するか又は後方へ移動する。従って、カバーの変形と相俟って衝突による衝撃を緩和することが出来る。
【0015】
請求項2に記載した発明にあっては、前記切欠部のエイミングスクリューの軸方向と直交する方向における幅がエイミングスクリューの半径以下であるので、通常時、すなわち、ベアリングに衝突等による特別な負荷がかからない状態では、ベアリングがエイミングスクリューから脱落する惧れがない。
【0016】
請求項3に記載した発明にあっては、前記切欠部のエイミングスクリューの軸方向と直交する方向における中央がエイミングスクリューの中心軸を通る鉛直面から左右方向にオフセットされているので、ベアリングにランプユニットの重量による下方への負荷がかかっても、ベアリングがエイミングスクリューから脱落することがない。
【0017】
請求項4に記載した発明にあっては、前記切欠部はエイミングスクリューの中心軸を通る水平面より上方に位置しているので、ベアリングがランプユニットの上側に設けられた場合には、ベアリングにかかる後方への又は後下方への移動力によってベアリングがエイミングスクリューの周方向において切欠部から開きやすく、ベアリングの後方への移動及び/又は後下方への脱落が起きやすい。
【0018】
請求項5に記載した発明にあっては、前記ランプユニットは、光源を支持したリフレクタと、該リフレクタで反射された前記光源の光を前方へ投射する凸レンズと、前記リフレクタの前部に支持されると共に前記リフレクタの前方を閉塞するように前記凸レンズを支持するレンズホルダとを備えた投射型ランプユニットであるので、ランプユニットそのものの剛性が高く、衝突により衝突物に与えるダメージが大きくなるため、衝突の衝撃によってランプユニットが後方へ変位し又は回動することによって衝撃を緩和するという本発明による効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。なお、図示した最良の形態は本発明を自動車用前照灯に適用したものである。
【0020】
図1乃至図5は第1の最良の形態を示すものであり、図1は自動車用前照灯10の概略縦断面図である。先ず、図1を参照して、自動車用前照灯10の概要を説明する。
【0021】
前方に向かって開口した容器状をしたランプハウジング20の前面開口部が透明なカバー30によって閉塞されている。前記ランプハウジング20とカバー30とによってランプユニット40を配置する空間である灯室11が画成される。
【0022】
前記カバー30は灯室11の前端を規定し、灯室11への塵埃や雨水等の侵入を防止すると共に体裁面を構成するもので、ランプユニット40から投射される光束を前方へ効率よく透過させる材質及び色で構成される。カバー30の材質は、ガラス又は合成樹脂が適用できるが、衝突時の変形の容易性を考えれば、合成樹脂が好ましい。また、形状的には、例えば、上方に行くほど薄肉になるように形成して、衝突時の衝撃によって容易に弾性変形するように構成するのが好ましい。
【0023】
自動車用前照灯10において、カバー30は、下端縁からほぼ後方へ突出した下側縁部31を有し、下側縁部31の前端から上方へ行くに従って徐々に後方へ湾曲状に変位し上端付近で湾曲度が大きくされている。そして、上端部と下側縁部の後端に後方へ向かって突出した埋め込み片32が形成され、該埋め込み片32の前端に隣接して外方へ突出した突当片33が形成されている。なお、前記埋め込み片32及び突当片33はカバー30の後端部の全周に亘って形成されている。
【0024】
前記ランプハウジング20の前端開口縁には前方に向かって開口した取付溝21が形成され、カバー30の前記埋め込み片32が、突当片33が取付溝21の前端に当接するまで、前記取付溝21に埋め込まれ、この状態で、カバー30がランプハウジング20に取り付けられる。
【0025】
前記ランプユニット40は、光源41を支持したリフレクタ42と、該リフレクタ42で反射された光源41の光を前方へ投射する凸レンズ43と、前記リフレクタ42の前部に支持されて前記凸レンズ43をリフレクタ42の前方を閉塞するように支持するレンズホルダ44とを備える。
【0026】
光源41には、放電ランプが使用されているが、ハロゲンランプ等の白熱ランプを使用しても良い。リフレクタ42は楕円面、放物楕円面等の集光性を有する反射面42aを備え、光源41の光を反射して、所定の点或いは領域に集光させるようになっている。また、前記リフレクタ42の前端部にはそれぞれ上方又は下方に突出されたブラケット42b、42cが設けられている。
【0027】
凸レンズ43は背面が平面で前面が前方に凸の略半球状に形成されており、その後側焦点(図示しない)が前記リフレクタ42の集光点又は集光領域に或いはそれらの近傍に位置している。従って、リフレクタ42の反射面42aによって集光点又は集光領域に集光された光源41の光を凸レンズ43が前方へ投射することになる。
【0028】
前記したランプユニット40はいわゆる投射型ランプユニットであるが、本発明自動車用前照灯におけるランプユニットが投射型ランプユニットに限定されるものではなく、例えば、放物面リフレクタの略焦点位置に白熱光源を配置した平行光投射型ランプユニット等、他の形態のランプユニットであっても構わないものである。
【0029】
前記ランプユニット40は、エイミング機構50によって、ランプハウジング20に傾動可能に支持される。エイミング機構50は、前記ランプユニット40の下側の傾動支点を構成するエイミング支点51と、前記ランプハウジング20に回転可能に支持されて前方へ延出するエイミングスクリュー52と、前記リフレクタ42の上側に設けられたブラケット42bに支持されると共に前記エイミングスクリュー52が螺合し、前記エイミングスクリュー52の回転に応じて該エイミングスクリュー52に沿って前後方向に移動する合成樹脂製のベアリング53とから構成される。
【0030】
前記エイミング支点51はランプハウジング20の後部から前方へ向かって突出した支点軸51aの前端にランプユニット40の下側のブラケット42cに支持された受体51bが回動自在に支持されて成る。すなわち、支点軸51aの前端に形成された球体(図示しない)が受体51bに形成された球状の凹部(図示しない)に回転可能な状態で嵌合されて成る。
【0031】
前記エイミングスクリュー52は、ランプハウジング20の後面壁22に回転可能に支持され、エイミングスクリュー52の後端部52aは前記後面壁22の後面に露出されている。エイミングスクリュー52の後端部52aは、例えば、六角ナット状に形成され、ランプハウジング20の後側から回転操作することが可能に形成されている。なお、エイミングスクリュー52はランプハウジング20の後側から操作可能であれば良く、そのためには、後端部52aは六角ナット状でなければならないものではなく、例えば、プラスドライバーの先端で回転可能なような歯車を有するなど、適宜の形状乃至構造に形成されればよい。また、前記エイミングスクリュー52の少なくとも前端部は、螺溝を有する螺軸部52bに形成されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、前記ベアリング53は、合成樹脂で形成されており、前記ブラケット42bに支持される支持部53aと、該支持部53aから上方へ突出した受部53bとを備える。そして、前記受部53bは略円筒状に形成され、該受部53bには、全体を前後に貫通する螺孔53cが形成されている。さらに、前記受部53bには、外周面53dと螺孔53cとに開口する切欠部53eが前端から後端に達して形成されている。また、前記切欠部53eは、図3で分かるように、切欠部53eの幅方向における中央Cenが螺孔53cの中心軸Ax、従って、この螺孔53cにエイミングスクリュー52が螺合された場合には、該エイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vs上に略位置し、且つ、エイミングスクリュー52の中心軸を通る水平面Hsより上方に位置するようになっている。
【0033】
前記したベアリング53の支持部53aがランプユニット40のリフレクタ42に設けられた上側のブラケット42bに支持される。なお、前記支持部53aのブラケット42bへの支持手段は、係合、ネジ止めなど適宜のものであって良い。
【0034】
そして、エイミングスクリュー52の螺軸部52bがベアリング53の螺孔53cに螺合され、これによって、ランプユニット40のブラケット42bの部分がエイミングスクリュー52を介してランプハウジング20に支持される。そして、エイミングスクリュー52が回転されると、その螺軸部52bが、回転の方向に応じて、ベアリング53にねじ込まれ又はねじ戻される。これによって、ベアリング53はエイミングスクリュー52に沿って前後に移動される。そして、ベアリング53が後方へ移動すると、ランプユニット40はエイミング支点51を回動支点として上向き方向に回動し、また、ベアリング53が前方へ移動すると、ランプユニット40はエイミング支点51を回動支点として下向き方向に回動する。
【0035】
前記カバー30の内側、すなわち、カバー30とランプユニット40との間には、エクステンション60が配置され、該エクステンション60によって前記エイミング機構50が前方から遮蔽されている。前記エクステンション60は、ランプハウジング20に支持されても、また、カバー30に支持されてもよいが、カバー30に支持されていると、カバー30が後方へ変移する際にエクステンション60がカバー30と共に移動しやすい。また、エクステンション60には変形を容易にするための脆弱部が形成されていることが好ましい。
【0036】
次に、前記自動車用前照灯10に前方から歩行者等の物体70が衝突した場合の作用について説明する。
【0037】
図4に示すように、自動車用前照灯10に歩行者等の物体70が、カバー30をほぼ後方へ向かって押すように(図4の矢印Fr参照)衝突すると、その衝撃力によって、カバー30の一部34が変形して後方へ移動する。そして、変形して後方へ移動するカバー30の一部34によって押されてエクステンション60がカバー30と共に後方へ移動する。そして、エクステンション60が後方へ移動すると、エクステンション60がランプユニット40の前端、例えば、凸レンズ43に衝突し、これによって、ランプユニット40に上向き方向に回動する力が加えられる。エイミングスクリュー52の螺軸部52bとベアリング53の螺孔53cとの螺合が、ベアリング53を現在位置に止めるように働くが、ベアリング53の受部53bは切欠部53eによってエイミングスクリュー52の周方向に開きやすくなっているため、ベアリング53に前方から強い力が加えられると、切欠部53eのエイミングスクリュー52の軸方向と直交する方向における間隔(以下、単に「幅」という)W1が大きくなるように受部53bが開き(図3の矢印Opn参照)、前記螺軸部52bと螺孔53cとの螺合が外れ、ベアリング53がエイミングスクリュー52に沿って後方(図4の矢印R参照)へ移動する。
【0038】
ベアリング53が、前記したように、後方へ移動すると、ランプユニット40のベアリング53によって支持されている部分が後方へ移動する。従って、衝突によって物体70に作用する衝撃が緩和され、物体70へのダメージが軽減される。
【0039】
また、図5に示すように、物体70が、カバー30を後下方へ向かって押すように(図5の矢印Fd参照)衝突することがある。このような衝突によって、カバー30の一部35が変形してエクステンション60を変形させ、エクステンション60がランプユニット40の前端部を略下方へ押圧するように突き当たる。これによって、ランプユニット40には略下方へ移動させる力が加えられ、従って、ベアリング53にも略下方へ移動させる力が加えられる。すると、前記したように、切欠部53eの幅W1が前記図4の場合よりさらに大きくなるように受部53bが開き(図3の矢印Opn参照)、受部53bがエイミングスクリュー52から下方へ脱落する。これによって、ランプユニット40の上部を支持するものがなくなるため、ランプユニット40が略下方(図5の矢印D参照)へ移動する。従って、衝突によって物体70に作用する衝撃が緩和され、物体70へのダメージが軽減される。
【0040】
なお、衝突の状況によっては、後方へ移動しながら下方へ移動するなど、図4に示す移動と図5に示す移動とが複合的に行われて、衝撃を緩和する。
【0041】
図6に第2の最良の形態を示す。なお、第2の最良の形態が第1の最良の形態と異なる点は、ベアリングの形状だけであるので、ベアリング以外の部分についての説明は省略する。なお、以下の第3の最良の形態以下の他の最良の形態もベアリングの形状のみが第1の最良の形態と異なるので、ベアリング以外の部分についての説明は省略する。
【0042】
ベアリング153は合成樹脂で形成され、前記ブラケット42bに支持される支持部153aと、該支持部153aから上方へ突出した受部153bとを備える。そして、前記受部153bは略円筒状に形成され、該受部153bには、全体を前後に貫通する螺孔153cが形成されている。さらに、前記受部153bには、外周面153dと螺孔153cとに開口する切欠部153eが前端から後端に達して形成されている。また、前記切欠部153eは、図6で分かるように、切欠部153eの幅方向における中央Cenが螺孔153cの中心軸Ax、従って、この螺孔153cにエイミングスクリュー52が螺合された場合には、該エイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vs上に略位置し、且つ、エイミングスクリュー52の中心軸を通る水平面Hsより上方に位置するようになっている。
【0043】
ただ、この第2の最良の形態によるベアリング153は、切欠部153eの幅W2が前記第1の最良の形態によるベアリング53の切欠部53eの幅W1より狭くなっている点で第1の最良の形態によるベアリング53と異なる。そして、この切欠部153eのエイミングスクリュー52の軸方向と直交する方向における幅(以下、単に「幅」という)W2はエイミングスクリュー52の半径以下になっている。そのため、通常時、すなわち、ベアリング153に衝突等による特別な負荷がかからない状態では、ベアリング153がエイミングスクリュー52から脱落する惧れがない。
【0044】
この第2の最良の形態にあっても、ベアリング153の受部153bは切欠部153eによってエイミングスクリュー52の周方向に開きやすくなっているため、ベアリング153に前方から強い力が加えられると、切欠部153eの幅W2が大きくなるように受部153bが開き、前記螺軸部152bと螺孔153cとの螺合が外れ、ベアリング153がエイミングスクリュー52に沿って後方へ移動する。
【0045】
また、ベアリング153に略下方へ移動させる力が加えられると、前記したように、切欠部153eの幅W2が、後方への力が加えられた場合より、さらに大きくなるように受部153bが開き、受部153bがエイミングスクリュー52から下方へ脱落する。
【0046】
図7に第3の最良の形態を示す。
【0047】
ベアリング253は合成樹脂で形成され、前記ブラケット42bに支持される支持部253aと、該支持部253aから上方へ突出した受部253bとを備える。そして、前記受部253bは略円筒状に形成され、該受部253bには、全体を前後に貫通する螺孔253cが形成されている。さらに、前記受部253bには、外周面253dと螺孔253cとに開口する切欠部253eが前端から後端に達して形成されている。また、前記切欠部253eは、図7で分かるように、切欠部253eの幅方向における中央Cenが螺孔253cの中心軸Ax、従って、この螺孔253cにエイミングスクリュー52が螺合された場合には、該エイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vsから左右方向に(図7では右方向に)オフセットされ、且つ、エイミングスクリュー52の中心軸を通る水平面Hsより上方に位置するようになっている。
【0048】
前記ベアリング253にあっては、切欠部253eの幅方向における中央Cenがエイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vsから左右方向にオフセットされているので、ベアリング253にランプユニット40の重量による下方への負荷がかかっても、該負荷によるベアリング253を切欠部253eから開かせるようとする力が小さく、衝突等による強い衝撃が加わらない通常時において、ベアリング253がエイミングスクリュー52から脱落し難い。
【0049】
この第3の最良の形態にあっても、ベアリング253の受部253bは切欠部253eによってエイミングスクリュー52の周方向に開きやすくなっているため、ベアリング253に前方から強い力が加えられると、切欠部253eのエイミングスクリュー52の軸方向と直交する方向における間隔(以下、単に「幅」という)W3が大きくなるように受部253bが開き、前記螺軸部52bと螺孔253cとの螺合が外れ、ベアリング253がエイミングスクリュー52に沿って後方へ移動する。
【0050】
また、ベアリング253に略下方へ移動させる力が加えられると、前記したように、切欠部253eの幅W3が、後方への力が加えられた場合より、さらに大きくなるように受部253bが開き、受部253bがエイミングスクリュー52から下方へ脱落する。
【0051】
図8に第4の最良の形態を示す。
【0052】
ベアリング353は合成樹脂で形成され、前記ブラケット42bに支持される支持部353aと、該支持部353aから上方へ突出した受部353bとを備える。そして、前記受部353bは略円筒状に形成され、該受部353bには、全体を前後に貫通する螺孔353cが形成されている。さらに、前記受部353bには、外周面353dと螺孔353cとに開口する切欠部353eが前端から後端に達して形成されている。また、前記切欠部353eは、図8で分かるように、切欠部353eの幅方向における中央Cenが螺孔353cの中心軸Ax、従って、この螺孔353cにエイミングスクリュー52が螺合された場合には、該エイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vsから左右方向に(図8では右方向に)オフセットされ、且つ、エイミングスクリュー52の中心軸を通る水平面Hsより上方に位置するようになっている。
【0053】
前記ベアリング353にあっては、切欠部353eの幅方向における中央Cenがエイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vsから左右方向にオフセットされているので、ベアリング353にランプユニット40の重量による下方への負荷がかかっても、該負荷によるベアリング353を切欠部353eから開かせるようとする力が小さく、衝突等による強い衝撃が加わらない通常時において、ベアリング353がエイミングスクリュー52から脱落し難い。また、第4の最良の形態によるベアリング353の切欠部353eのエイミングスクリュー52の軸方向と直交する方向における間隔(以下、単に「幅」という)W4は前記第3の最良の形態によるベアリング253の切欠部253eの幅W3より狭くなっている。そして、この切欠部353eの幅W4はエイミングスクリュー52の半径以下になっている。そのため、通常時、すなわち、ベアリングに衝突等による特別な負荷がかからない状態では、ベアリング353がエイミングスクリュー52から脱落する惧れがない。
【0054】
この第4の最良の形態にあっても、ベアリング353の受部353bは切欠部353eによってエイミングスクリュー52の周方向に開きやすくなっているため、ベアリング353に前方から強い力が加えられると、切欠部353eの幅W4が大きくなるように受部353bが開き、前記螺軸部52bと螺孔353cとの螺合が外れ、ベアリング353がエイミングスクリュー52に沿って後方へ移動する。
【0055】
また、ベアリング353に略下方へ移動させる力が加えられると、前記したように、切欠部353eの幅W4が、後方への力が加えられた場合より、大きくなるように受部353bが開き、受部353bがエイミングスクリュー52から下方へ脱落する。
【0056】
図9及び図10に第5の最良の形態を示す。
【0057】
ベアリング453は合成樹脂で形成され、前記ブラケット42bに支持される支持部453aと、該支持部453aから上方へ突出した受部453bとを備える。そして、前記受部453bは略円筒状に形成され、該受部453bには、全体を前後に貫通する螺孔453cが形成されている。さらに、前記受部453bには、その前端から後端のやや手前の部分にかけて形成され、外周面453dと螺孔453cとに開口する切欠部453eが周方向にほぼ等間隔に離間して4個形成されている。前記受部453bは後端部453fを除いた部分が切欠部453eによって4つの部分に分離されている。そして、前記螺孔453cの螺溝は後端部453fを除いた部分に形成され、後端部453fの内径は前記螺孔453cの谷部の内径とほぼ同じか又は前記谷部の内径より大きく形成されている。
【0058】
なお、前記切欠部453eのうち上部に形成された2個の切欠部453eの幅方向における中央Cenは螺孔453cの中心軸Ax、従って、この螺孔453cにエイミングスクリュー52が螺合された場合には、該エイミングスクリュー52の中心軸を通る鉛直面Vsから左右方向にオフセットされている。また、前記切欠部453eのエイミングスクリュー52の軸方向と直交する方向における間隔(以下、単に「幅」という)W5はエイミングスクリュー52の半径以下になっている。
【0059】
この第5の最良の形態にあっても、ベアリング453の受部453bは4個の切欠部453eによってエイミングスクリュー52の周方向に開きやすくなっているため、ベアリング453に前方から強い力が加えられると、切欠部453eの幅W5が大きくなるように受部453bが開き、前記螺軸部52bと螺孔453cとの螺合が外れ、ベアリング453がエイミングスクリュー52に沿って後方へ移動する。
【0060】
また、ベアリング453に略下方へ移動させる力が加えられると、前記したように、切欠部453eの幅W5が、後方への力が加えられた場合より、大きくなるように受部453bが開き、且つ、強い衝撃によって受部453bの後端部453fが破壊され、受部453bがエイミングスクリュー52から下方へ脱落する。
【0061】
なお、第5の最良の形態のように、ベアリング453の受部453bに複数の切欠部453eを形成する場合は、前記後端部453fのように、切欠部453eが形成されない部分が必要であり、また、切欠部453eの数は4個に限らず、4個より多くても、また、4個より少なくても構わない。
【0062】
なお、前記図1に示したように、ランプユニットが、光源41を支持したリフレクタ42と、該リフレクタ42で反射された光源41の光を前方へ投射する凸レンズ43と、前記リフレクタ42の前部に支持されて前記凸レンズ43をリフレクタ42の前方を閉塞するように支持するレンズホルダ44とを備える投射型ランプユニット40である場合は、本発明を適用する効果がより大きく現れる。すなわち、前記した投写型ランプユニット40は、その構造上リフレクタ42にアルミダイカストが使用される等、強固な構造を有する。そのため、ランプユニット40そのものが破壊されにくく、また、衝突物に対して与える衝撃も大きくなる。そのような、投写型ランプユニット40が衝突時に容易に衝撃を避ける方向へ変移することは、衝突物に対するダメージを緩和するのに好適である。
【0063】
また、前記最良の形態の説明では、傾動支点をランプユニットの下側に設け、ベアリングをランプユニットの上側に設けた例を示したが、傾動支点をランプユニットの上側に設け、ベアリングをランプユニットの下側に設けた構成としても良い。
【0064】
さらに、前記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、いずれも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図面は本発明車輌用前照灯を自動車用前照灯に適用した第1の最良の形態を示すものであり、本図は通常時における概略縦断面図である。
【図2】図3と共にベアリングを示すものであり、本図は拡大斜視図である。
【図3】拡大正面図である。
【図4】ほぼ後方へ向けての衝撃が加えられた場合の自動車用前照灯の状態を示す概略縦断面図である。。
【図5】ほぼ下方へ向けての衝撃が加えられた場合の自動車用前照灯の状態を示す概略縦断面図である。。
【図6】第2の最良の形態にかかるベアリングの拡大正面図である。
【図7】第3の最良の形態にかかるベアリングの拡大正面図である。
【図8】第4の最良の形態にかかるベアリングの拡大正面図である。
【図9】図10と共に第5の最良の形態を示すものであり、本図はベアリングの拡大斜視図である。
【図10】ベアリングの拡大正面図である。
【符号の説明】
【0066】
10…自動車用前照灯(車輌用前照灯)、11…灯室、20…ランプハウジング、30…カバー、40…ランプユニット、41…光源、42…リフレクタ、42b…ブラケット、43…凸レンズ、44…レンズホルダ、50…エイミング機構、51…エイミング支点、52…エイミングスクリュー、53…ベアリング、53e…切欠部、Cen…切欠部の幅方向における中央、Ax…中心軸、Vs…鉛直面、Hs…水平面、W1…切欠部の幅、153…ベアリング、153e…切欠部、Cen…切欠部の幅方向における中央、Ax…中心軸、Vs…鉛直面、Hs…水平面、W2…切欠部の幅、253…ベアリング、253e…切欠部、Cen…切欠部の幅方向における中央、Ax…中心軸、Vs…鉛直面、Hs…水平面、W3…切欠部の幅、353…ベアリング、353e…切欠部、Cen…切欠部の幅方向における中央、Ax…中心軸、Vs…鉛直面、Hs…水平面、W3…切欠部の幅、453…ベアリング、453e…切欠部、Cen…切欠部の幅方向における中央、Ax…中心軸、Vs…鉛直面、W4…切欠部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングと該ランプハウジングの前面開口を閉塞するカバーとで画成された灯室内に収容されると共に光源を備えたランプユニットと、前記ランプハウジングとランプユニットとの間に介在されて、前記ランプユニットをランプハウジングに対して傾動可能に支持するエイミング機構とを備えた車輌用前照灯であって、
前記エイミング機構は、前記ランプユニットの傾動支点を構成するエイミング支点と、前記ランプハウジングに回転可能に支持されて前方へ延出するエイミングスクリューと、前記ランプユニットに設けられたブラケットに支持されると共に前記エイミングスクリューが螺合し、前記エイミングスクリューの回転に応じて該エイミングスクリューに沿って前後方向に移動する合成樹脂製ベアリングとから構成され、
前記ベアリングには、前記エイミングスクリューの軸方向に延びる切欠部が形成されている
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記切欠部のエイミングスクリューの軸方向と直交する方向における幅がエイミングスクリューの半径以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記切欠部のエイミングスクリューの軸方向と直交する方向における中央がエイミングスクリューの中心軸を通る鉛直面から左右方向にオフセットされている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記切欠部はエイミングスクリューの中心軸を通る水平面より上方に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車輌用前照灯。
【請求項5】
前記ランプユニットは、光源を支持したリフレクタと、該リフレクタで反射された前記光源の光を前方へ投射する凸レンズと、前記リフレクタの前部に支持されると共に前記リフレクタの前方を閉塞するように前記凸レンズを支持するレンズホルダとを備えた投射型ランプユニットである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−129739(P2009−129739A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304270(P2007−304270)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】