説明

車輌用照明器具

【課題】車輌外に漏れる光を抑制し、少ないエネルギで効率よく車輌内を照明して、照明効率を向上させることができる車輌用照明器具を提供する。
【解決手段】車輌用照明器具10は、光源部11と、光源部11から壁開口部33に向かって出射する光を、天井側壁部32に向けて配光させるプリズム15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用照明器具に関し、より詳細には、鉄道車輌の天井部に設けられ、少ないエネルギで客室内を効果的に照明することができる車輌用照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
図8及び図9に示すように、従来、鉄道車輌1に配設される車輌用照明器具5しては、鉄道車輌1の長手方向に沿って天井部2に配置されたものが知られている。この車輌用照明器具5は、直管型蛍光灯6と、直管型蛍光灯6の全体を覆う半透明のカバーとから構成されている。直管型蛍光灯6から出射する光は、天井部2から下方全方向に略均等に放射されるため、必ずしも鉄道車輌1内を効率的に照明するものではなかった。
【0003】
すなわち、車輌用照明器具は、乗客に快適な空間を提供するため、車輌内を適度の明るさで照明する必要がある。一方、近年の環境問題に配慮したとき、できるだけ少ないエネルギで効率よく照明することは重要である。図8及び図9に示す従来の車輌用照明器具5は、光を全方向に略均等に放射しているため、必ずしも照明を必要としない部分も照明することになり、更に、壁開口部である窓に向けて出射する光が、車輌の外に漏れてしまうため、効率的でない問題があった。
【0004】
また、間接照明によって鉄道車輌内を照明する照明装置としては、灯具カバーを、蛍光灯の長手方向に沿って延びる3つの板状のカバー部材で構成することにより、蛍光灯を覆い隠すと共に、カバー部材の隙間を通じて蛍光灯より外側にも光を反射させて、広範囲にわたって間接照明するようにした鉄道車輌用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、傾斜する拡散反射面を有するケーシングに平面型放電管を組み込んで、荷棚下面に付設可能な薄型照明装置を構成し、読書などに必要な照明を確保しつつ、全体を柔らかくてリラックスできるように照明するようにした照明装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献1及び2に記載の照明装置は、カバー部材や拡散反射面によって光を反射して、車輌内全体を間接的に照明している。しかしながら、照明器具から窓に向けて出射する光は、車輌の外に漏れてしまい、照明光として有効に使用することができず、照明効率を低下させる可能性があった。特に、暗い場所を走行する地下鉄車輌や、夜間における車輌では、照明効率低下の傾向が強く、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−149970号公報
【特許文献2】特開2007−302162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので車輌外に漏れる照明光を抑制し、少ないエネルギで効率よく車輌内を照明して、照明効率を向上させることができる車輌用照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天井部と、前記天井部に連なる天井側壁部と、壁開口部と、床部と、を有する車輌に備えられる車輌用照明器具であって、
光源部と、光学系と、を有し、
前記光学系は、前記光源部からの光のうち、前記壁開口部に向かう光を前記天井側壁部に向けて配光させるものである。
【0009】
この構成により、壁開口部から車輌外に漏れ出す光を抑制することができ、効率よく車輌内を照明することができる。これにより、天井側壁部を明るくして全体の明るさ感を向上させると共に、車輌内の表示や広告の視認性向上させることが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記の車輌用照明器具において、前記光学系は、前記光源部から前記壁開口部に向けて照射される光を、前記天井側壁部に向けて屈折させるプリズムを含む。
【0011】
この構成により、プリズムの屈折角度を任意角度に設定して、壁開口部に向かう光を任意の方向に配光することができる。またこれによって天井側壁部の任意の位置を効果的に照明することができる。
【0012】
更に、本発明は、上記の車輌用照明器具において、前記プリズムは、前記光源部を覆う透光性のカバーに一体成形されるものを含む。
【0013】
この構成により、光源部を覆うようにカバーを取り付けるだけで、壁開口部に向けて照射される光を、容易に天井側壁部に向けて配光することが可能となる。
【0014】
また、上記車輌用照明器具であって、光源部と光学系とを有し、前記車輌を長手方向に沿う鉛直断面で2等分する中心面に対して一方側に配設され、
前記光学系は、前記光源部からの光を、前記中心面に対して他方側の前記天井側壁部及び座席面に向けて配光させるものである。
【0015】
この構成により、他方側の壁開口部から車輌外に漏れ出す光を抑制することができる。また、照明器具を車輌の両側方に配置すれば、照明器具からの光が、車輌の中心付近で交差することとなり、荷物棚によって光が遮られることなく、車輌内を明るく照明することが可能となる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記の車輌用照明器具において、前記光学系は、反射板であるものを含む。
【0017】
この構成により、光学系を容易に製作することができ、安価な器具で光源部からの光を他方側の天井側壁部及び座席面に向けて配光させることができる。
【0018】
また、本発明は、上記の車輌用照明器具において、前記光源部は、線状光源であるものを含む。
【0019】
この構成により、光源部の長手方向を、車輌の長手方向に合わせて配置することにより、車輌内全体を効率よく、且つ均一に照明することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車輌外に漏れる照明光を抑制し、少ないエネルギで効率よく車輌内を照明して、照明効率が高い車輌用照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施の形態1の車輌用照明器具が配設された車輌の斜視図
【図2】図1に示す車輌用照明器具の部分断面図
【図3】図2に示す車輌用照明器具の配光方向を示すグラフ
【図4】図2に示す車輌用照明器具による車輌内の照明状態を示す斜視図
【図5】本発明に係る実施の形態2の車輌用照明器具が配設された車輌の斜視図
【図6】図5に示す車輌用照明器具の断面図
【図7】図6に示す車輌用照明器具の配光方向を示すグラフ
【図8】従来の車輌用照明器具が配設された車輌の部分斜視図
【図9】図8に示す従来の車輌用照明器具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る車輌用照明器具の各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1である車輌用照明器具が配設された車輌の斜視図、図2は車輌用照明器具の部分断面図である。図1に示すように、鉄道車輌30は、天井部31と、天井部31の左右方向両側に連なる天井側壁部32と、天井側壁部32の下方に設けられた壁開口部である窓部33と、床部34と、窓部33と床部34との間に設けられた座席35と、を有し、これらによって画成された空間が客室36を構成している。
【0023】
本実施の形態の車輌用照明器具10は、鉄道車輌30の長手方向に沿って天井部31に2列で配置されており、客室36内を照明する。図2に示すように、車輌用照明器具10は、光源部11と、光学系12とを有する。光源部11は、例えば、発光ダイオード(以下、「LED」と略記する)が線状に配置された線状光源であり、板金製の取付けベース14に固定された実装基板13上に実装されている。取付けベース14は、不図示の取付けネジによって天井部31に固定される。なお、光源部11は、LEDに限定されず、直管型蛍光灯などであってもよい。
【0024】
光学系12は、光源部11の前面側(光出射側)を覆う、断面略半円形のカバー12によって構成されており、このカバー12は、例えば、高い透光性を備える不燃性の透明樹脂で成形されている。カバー12の内面12aには、中心線CLに対して対称位置に、線状のプリズム15が、線状光源である光源部11と略平行に一体成形されている。
【0025】
プリズム15は、光源部11から出射されてプリズム15に入射する光を、所定の方向に屈折させて配光を制御する。具体的に、図中破線矢印で示すように、光源部11から窓部33に向かって出射する光は、プリズム15に入射して屈折し、プリズム15から天井側壁部32に向かって出射するように、プリズム15の位置、大きさ、及び屈折角度が設定されている。
【0026】
カバー12の外側には、断面略半円形のアウターカバー16が、パッキン17を介してアウターカバー固定具18によって固定されている。アウターカバー16は、例えば、不燃性の半透明樹脂によって成形されており、光源部11から出射される光を和らげて客室36内を照明する。
【0027】
このような光学系12を有する車輌用照明器具10においては、図3に示すように、光源部11から照射角度略50°〜70°で出射し、窓部33に向かって照射される光は、プリズム15に入射して屈折し、照射角度略75°〜85°で天井側壁部32に向かって出射する。また、光源部11から照射角度略0°〜40°、及び75°〜85°で出射する光は、プリズム15に入射することなく、透明なカバー12を透過して、それぞれ鉄道車輌30の床部34から座席35、及び天井側壁部32を照明する。ここで、照射角度は、光源部11から真下方向を0°、真横方向を90°とする。
【0028】
図4に示すように、光源部11から出射する光のうち、図中破線矢印で示す窓部33に向かって照射される光(照射角度略50°〜70°)は、プリズム15によって天井側壁部32方向に屈折するため(照射角度略75°〜85°)、窓部33から鉄道車輌30の外部への光漏れが抑制され、天井側壁部32を明るく照明する。
【0029】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る車輌用照明器具10によれば、従来の車輌用照明器具と比較して、客室36内を明るく照明することができ、全体の明るさ感を向上させると共に、鉄道車輌30内に掲示される表示物や広告の視認性向上させることができる。また、少ないエネルギで効率的に照明することができる。
【0030】
なお、プリズム15による配光方向は、光源部11から窓部33に向かって出射する光(照射角度略50°〜70°)を、床部34から座席35の範囲(照射角度略0°〜40°)に向かうように屈折させるようにしてもよい。
【0031】
(実施の形態2)
次に、車輌用照明器具の実施の形態2について、図5から図7を参照して説明する。実施の形態2の車輌用照明器具10は、鉄道車輌30の左右の荷物棚37の上方にそれぞれ配設されている。なお、以下の説明では、理解を容易にするため、図5に示すように、一方側の車輌用照明器具10について説明する。即ち、長手方向に沿う鉛直断面で鉄道車輌30を2等分する中心面CFに対して、一方側(図中右側)に配置された車輌用照明器具10が、他方側(図中左側)の天井側壁部32、床部34及び座席35を照明する。
【0032】
図6に示すように、車輌用照明器具10は、例えば、LEDが線状に配置された線状光源である光源部11と、光学系である反射板20とを備える。光源部11は、光の出射方向を上方に向けて板金製の取付けベース14に固定され、荷物棚37上方の天井部31に固定されている。
【0033】
反射板20は、断面略逆ヘの字形に形成され、光源部11の上方に対向配置された金属板であり、鉄道車輌30の左右方向中央に向かうに従って僅かに上方に傾斜する第1反射部20aと、第1反射部20aから延設され、第1反射部20aより大きな角度で上方に傾斜する第2反射部20bとを備える。第1反射部20a及び第2反射部20bの下面(光源部11に対向する面)は、反射面である鏡面になっており、光源部11から出射する光を効率よく反射する。
【0034】
光源部11、及び反射板20は、下方に配設されたカバー21によって覆われている。カバー21は、不燃性の半透明樹脂によって成形されており、光源部11から出射され、反射板20による反射光を和らげて客室36内を照明する。
【0035】
図7に示すように、光源部11から出射した光の一部は、第1反射部20aの反射面により照射角度略10°〜40°の範囲に反射される。また、残りの光は、第2反射部20bの反射面により照射角度略70°〜85°の範囲に反射される。このように、反射板20は、照射角度略50°〜70°の範囲に反射される光が、少なくなるように反射角度が設定されている。
【0036】
図5に示すように、照射角度略50°〜70°の光は、窓部33へ向かって照射される光であるが、この方向への照射光は反射板20によって少なくなるように制限されているため、窓部33から鉄道車輌30の外部への光漏れが抑制されて、効率的に客室36内を照明することができる。また、鉄道車輌30の左右両側に配置された車輌用照明器具10からの光は、車輌30の中心面CF付近で交差するため、鉄道車輌30の中心(両車輌用照明器具10の中間部)をより明るく照らすことができる。
【0037】
また、光源部11からの光は、荷物棚37上方に配置された照明器具10の反射板20によって反射されて客室36内を照明するため、車輌用照明器具10の近傍にある荷物棚37で光の照射が阻害されるのを抑制することができる。
【0038】
その他の部分については、本発明の実施の形態1の車輌用照明器具10と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0039】
尚、本発明は、前述した各実施の形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 車輌用照明器具
11 光源部(線状光源)
12 カバー(光学系)
15 プリズム
20 反射板(光学系)
30 鉄道車輌
31 天井部
32 天井側壁部
33 窓部(壁開口部)
34 床部
35 座席
CF 中心面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部と、前記天井部に連なる天井側壁部と、壁開口部と、床部と、を有する車輌におりつけられる車輌用照明器具であって、
光源部と、光学系と、を有し、
前記光学系は、前記光源部からの光のうち、前記壁開口部に向かう光を前記天井側壁部に向けて配光させるものである車輌用照明器具。
【請求項2】
請求項1に記載の車輌用照明器具であって、
前記光学系は、前記光源部から前記壁開口部に向けて照射される光を、前記天井側壁部に向けて屈折させるプリズムである車輌用照明器具。
【請求項3】
請求項2に記載の車輌用照明器具であって、
前記プリズムは、前記光源部を覆う透光性のカバーに一体成形される車輌用照明器具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の車輌用照明器具であって、
前記車輌を長手方向に沿う鉛直断面で2等分する中心面に対して一方側に配設され、
前記光学系は、前記光源部からの光を、前記中心面に対して他方側の前記天井側壁部及び座席面に向けて配光させるものである車輌用照明器具。
【請求項5】
請求項4に記載の車輌用照明器具であって、
前記光学系は、反射板である車輌用照明器具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の車輌用照明器具であって、
前記光源部は、線状光源である車輌用照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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