説明

車輌盗難防止装置及び車輌盗難防止システム

【課題】バッテリの充電中に車輌内への不正侵入を高精度に検知して通報を行うことができると共に、侵入を検知した際の通報を行う機能を低コストで実現できる車輌盗難防止装置及び車輌盗難防止システムを提供する。
【解決手段】ボディECU20は、車輌1の車高を検知するためのホール素子9を用いて車輌1内への侵入を検知する。侵入を検知した場合、ボディECU20は充電口1aに接続された充電ケーブルを介して給電装置へ通報を行い、この通報に応じて給電装置が警報などを行う。また、侵入を検知した場合に、ボディECU20は、充電ケーブルを抜脱不可能にロックし、車輌1の全てのドアをロックしてアンロック禁止とし、全ての窓を閉じて開動作禁止とし、且つ、車輌1のエンジン始動を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車又はハイブリッド自動車等の車輌が充電ステーション又は自宅等にて充電を行っている際に、車輌内への不審者の侵入を検知して警報などを発することによって、車輌又は車輌内に設置された機器等の盗難を防止することができる車輌盗難防止装置及び車輌盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外部の給電装置に充電ケーブルを介して接続されてバッテリへの充電を行い、バッテリに蓄積した電力でモータを駆動することにより走行する電気自動車又はハイブリッド自動車等の車輌(いわゆる、プラグイン車)が普及し始めている。このようなプラグイン車では、バッテリを満充電状態とするために数十分〜数時間程度の時間を要し、長時間に亘って給電装置及び車輌が充電ケーブルを介して接続された状態で放置される虞がある。
【0003】
また車輌の車室内にはカーナビゲーション装置及びオーディオ装置等の種々の機器が搭載され、ユーザによる車輌の運転補助又は車内における居住快適性の向上が行われている。しかしこれらの車載機器が高価であることから、いわゆる車上荒らしのような車載機器の盗難犯罪が多発している。上述のようなプラグイン車では、バッテリの充電に長時間を要することからユーザが車輌から離れる可能性が高く、このような際に盗難が行われる可能性が高まる。
【0004】
特許文献1においては、充電時のいたずら又は盗難を防止することができる車輌の電源装置が提案されている。この電源装置は、モータに電力を供給するメインバッテリ及び車輌外部から充電を行うための充電ケーブルを接続する接続部を備えると共に、充電ケーブルの端部に設けられたコネクタを接続部に接続した状態でロックするロック機構を備え、このロック機構は車輌キーによりロック解除可能な構成である。
【0005】
一方、車輌の盗難を防止するための装置には、例えば車輌内への不審者の侵入を検知して警報又は通報等を行う機能を有しているものがある。このような侵入検知機能を有する車輌盗難防止装置は、例えば車輌内のインストルメントパネル又は天井部分等からマイクロ波又は超音波等を出力し、その反射波を検知して周波数の変化を調べることによって、車輌内の侵入者の有無を検知する構成とすることができる。この構成の車輌盗難防止装置は、マイクロ波又は超音波等を反射させる物体が動いている場合に、出力したマイクロ波又は超音波に対して検知される反射波の周波数が変化することを利用して、車輌内で動く物体(侵入者)を検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−236172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に記載の電源装置は、車輌のバッテリの充電中に充電ケーブルの接続をロックするのみの構成である。このため、車輌自体の盗難を防止することはできても、車輌内のカーナビゲーション装置又はオーディオ装置等の機器に対する盗難を防止することはできないという問題がある。
【0008】
また、マイクロ波又は超音波等を用いて車輌内への侵入検知を行う盗難防止装置は、車輌内における検知範囲が狭く、侵入者の検知精度が低いという問題がある。この検知方法では、マイクロ波又は超音波等の出力範囲を広げると誤検知が発生しやすくなるため、検知範囲を拡大することは容易ではない。また装置が高価であるため、この検知方法による侵入検知装置は、現状では高級車にのみ搭載されている。また盗難防止装置が通報を行う構成とするためには、携帯電話網又は無線LAN(Local Area Network)等を利用した無線通信機能を搭載する必要があり、コストが増大するという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、バッテリの充電中に車輌内への不正侵入を高精度に検知して通報を行うことができる車輌盗難防止装置及び車輌盗難防止システムを提供することにある。また他の目的とするところは、侵入を検知した際の通報を行う機能を低コストで実現できる車輌盗難防止装置及び車輌盗難防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車輌盗難防止装置は、車外に設置された給電装置から充電ケーブルを介して供給される電力をバッテリに充電する車輌に搭載され、該車輌内への侵入検知を検知して通報を行う車輌盗難防止装置であって、前記車輌の車高に応じた電気信号を出力する車高センサと、該車高センサの出力電圧値の変化量を算出する算出手段と、該算出手段が算出した変化量が閾値を超えるか否かを判定する判定手段と、変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記充電ケーブルを介して前記給電装置へ通報を行う通報手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車輌盗難防止装置は、前記充電ケーブルが、電力線を含み、前記通報手段は、前記電力線を介した電力線通信により通報を行うようにしてあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る車輌盗難防止装置は、前記充電ケーブルが、電力線及び通信線を含み、前記通報手段は、前記通信線を介して前記給電装置への通報を行うようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る車輌盗難防止装置は、変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記車輌のドアを施錠する施錠制御手段と、変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記車輌の窓を閉じる制御を行う窓閉制御手段とを更に備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る車輌盗難防止装置は、変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記車輌のエンジン始動を禁止する始動禁止手段を更に備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る車輌盗難防止装置は、変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記充電ケーブルを接続状態でロックする充電ケーブルロック手段を更に備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る車輌盗難防止装置は、前記車輌のエンジンのオン/オフを切り替えるスイッチの状態を取得するスイッチ状態取得手段と、前記スイッチがエンジンオンの状態である場合に、前記車高センサの検知結果に基づいて、前記車輌のヘッドライトの照射方向を調整する調整手段とを更に備え、前記通報手段は、前記スイッチがエンジンオフの状態である場合に、通報を行うようにしてあることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る車輌盗難防止システムは、上述の車輌盗難防止装置と、車外に設置された給電装置とを備え、前記車輌盗難防止装置が搭載された車輌及び前記給電装置が充電ケーブルを介して接続される車輌盗難防止システムであって、前記給電装置は、前記車輌盗難防止装置からの前記充電ケーブルを介した通報が与えられた場合に、報知を行う報知手段を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、車輌の車高を検知する車高センサを用いて車輌内への侵入の検知を行う。車輌内に人が侵入した場合、侵入者の体重によって車輌の車高が低下する。逆に、車輌内に潜んでいた侵入者が車輌の外へ出た場合、車輌の車高が上がる。よって車輌の車高の変化に応じて車輌内への侵入者の有無を判断することができる。また車輌内に侵入者が存在すれば、車輌内における侵入者の位置に関わらず、車輌の車高は低下するため、侵入の検知範囲は車輌内の全域であり、高精度な侵入検知を実現できる。
また車高センサの検知結果から車輌内への侵入を検知した場合、車輌盗難防止装置は、充電ケーブルを介して給電装置への通報を行う。バッテリの充電中は給電装置と車輌とが充電ケーブルで接続されているため、充電ケーブルを介した有線での通信が可能であり、無線通信ではなく有線通信にて通報を行う構成とすることにより車輌盗難防止装置のコストを低減することができる。
【0019】
また、本発明においては、車輌盗難防止装置及び給電装置との間の通信を、充電ケーブルに含まれる電力線を介した電力線通信にて行う。これにより充電ケーブルが通信線などを含まない場合であっても、車輌盗難防止装置及び給電装置の通信を実現できる。
【0020】
また、本発明においては、充電ケーブルが電力線と共に通信線を含む場合、車輌盗難防止装置及び給電装置との間の通信を、充電ケーブルの通信線を介して行う構成としてもよい。例えば充電ケーブルを介した車輌のバッテリの充電規格には、車輌及び給電装置間での情報交換を行うためにCPLT(コントロールパイロット信号)の授受を行うものがあり、この規格ではCPLT用の通信線が充電ケーブルに含まれるため、この通信線を利用することができる。
【0021】
また、本発明においては、車高センサの検知結果から車輌内への侵入を検知した場合、車輌盗難防止装置は、車輌のドアを施錠し、車輌の窓を閉じる。なおこのとき、車輌盗難防止装置は、車輌のドアの開錠及び窓の開動作を禁止することが好ましい。不審者が車輌内に存在する場合に車輌のドアを施錠して窓を閉じることにより、この不審者は車輌から外へ出ることができなくなるため、不審者を捕らえることができる。このような機能を車輌盗難防止装置に搭載することによって、不審者の車輌内への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0022】
また、本発明においては、車高センサの検知結果から車輌内への侵入を検知した場合、車輌盗難防止装置は車輌のエンジン始動を禁止する。車輌のエンジン始動を禁止することによって、車輌の盗難を防止できる。このような機能を車輌盗難防止装置に搭載することによって、不審者の車輌内への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0023】
また、本発明においては、車高センサの検知結果から車輌内への侵入を検知した場合、充電ケーブルの接続をロックする。これにより、侵入者による車輌自体の盗難を防止することができる。
【0024】
また近年では、例えばヘッドライトの角度調整を自動的に行うために車高センサを搭載した車輌も増加しており、この車高センサを利用することによって、上述の車輌盗難防止装置を低価格で実現できる。
そこで本発明においては、車高センサの検知結果に基づく侵入検知を行う車輌盗難防止装置と、車輌の車高に応じてヘッドライトの照射方向を制御する装置とを一つの車載制御装置に統合する。これにより車輌盗難防止装置及びライト制御装置が必要とする車高センサを共有化することができ、コスト低減を実現できる。
また、車輌内への侵入の検知は充電のために車輌が駐車されている場合に行う必要があり、ライトの照射方向の制御は車輌が走行中に行う必要がある。そこで本発明においては、イグニッションスイッチなどの車輌のエンジンオン/オフの切替に係るスイッチの状態を車載制御装置が取得し、エンジンのオン/オフ状態に応じた制御を行う。車載制御装置は、スイッチがエンジンオフに対応する状態の場合に、車高センサによる侵入者検知の処理を行い、また、スイッチがエンジンオンに対応する状態の場合には、車高センサによるライトの照射方向制御の処理を行う。
このように、侵入検知の処理とライトの制御処理とは同時的に行う必要はないため、車高センサを共用する場合であっても、各処理に適した方法で車高センサを使用することができる。
【0025】
また、本発明においては、車輌盗難防止装置が侵入を検知した場合に充電ケーブルを介した通知を行い、この通知を与えられた給電装置が報知を行う。例えば給電装置は、警告音声の出力又は警告ランプの点灯等の方法で報知を行うことができる。報知を給電装置が行う構成とすることによって、車輌盗難防止装置には報知の機能を備える必要がないため、車輌盗難防止装置の低コスト化を実現できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による場合は、車輌に搭載された車高センサを用いて車輌内への侵入検知を行う構成とすることにより、車輌内における侵入者の位置に関わらず侵入検知を行うことができるため、車輌内への不正侵入を高精度に検知することができる。また車輌内への侵入を検知した場合に車輌盗難防止装置から給電装置へ充電ケーブルを介して通知を行う構成とすることにより、車輌盗難防止装置及び給電装置が無線通信などの機能を搭載する必要がないため、低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車輌盗難防止システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車輌盗難防止装置を搭載した車輌の構成を示すブロック図である。
【図3】IGスイッチのオン/オフ状態に応じたボディECUの処理を説明するための模式図である。
【図4】セキュリティ機能の制御処理を説明するための状態遷移図である。
【図5】車輌への侵入の検知方法を説明するための模式図である。
【図6】給電装置の構成を示すブロック図である。
【図7】ボディECUが無警戒状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】ボディECUが警戒準備状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】ボディECUが警戒状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】ボディECUが通報状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】給電装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】変形例に係る車輌盗難防止装置を搭載した車輌の構成を示すブロック図である。
【図13】変形例に係る給電装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る車輌盗難防止システムの構成を示すブロック図である。図において1は車輌であり、車輌1は車外に設置された給電装置50に充電ケーブル70を介して接続され、走行用のモータを駆動するための電力を蓄積するバッテリ2(図2参照)の充電を行う。充電ケーブル70は、その一端が給電装置50に接続されており、他端には車輌1の充電口1aに挿入して接続されるプラグ部71が設けられている。また充電ケーブル70は、一又は複数の電力線及び接地線等の複数の配線を束ねたものである。
【0029】
図2は、本発明に係る車輌盗難防止装置を搭載した車輌1の構成を示すブロック図である。車輌1には、ドアのロック(施錠)/アンロック(解錠)の制御、又は、ライトの点灯/消灯の制御等を行うボディECU(Electronic Control Unit)20が搭載されている。更に本実施の形態に係るボディECU20は、車輌1内への不審者の侵入を検知して通報するなどの処理を行うセキュリティ機能、及び、車輌1の車高に応じてヘッドライト5の照射方向を調整する機能を備えている。なお、図2においては、ボディECU20のセキュリティ機能及びヘッドライト調整機能に係るブロックのみを図示し、その他の機能に係るブロックは図示を省略してある。
【0030】
車輌1には、バッテリ2への充電を制御する充電制御部3、ヘッドライト5の照射角度を調整する角度調整機構4、充電口1aに接続された充電ケーブル70のプラグ部71を抜脱不可能にロックするためのプラグロック機構6、電力線通信部7、車高センサとしてのホール素子9、エンジンの始動などを行うエンジン制御装置10、IG(イグニッション)スイッチ11、ドアのロックを行うドアロック機構12及び窓の開閉を行う窓開閉機構13等が搭載されている。これら各機器は、車輌1内のネットワークを介して、又は、直接的に専用の制御線を介してボディECU20に接続されている。ボディECU20は、ホール素子9及びIGスイッチ11等から与えられる情報に基づいて種々の演算処理を行い、処理結果に応じて他の機器の動作を制御する。
【0031】
バッテリ2は、例えばリチウムイオンバッテリなどであり、充電制御部3と電力線(太線)で接続されている。充電制御部3は、車輌1の充電口1aに接続された充電ケーブル70を介して給電装置50から供給される電力を適切な電圧値/電流値に調整してバッテリ2へ与えることで充電を行う。電力線通信部7は、充電口1a及び充電制御部3の間の電力供給経路に対して、ボディECU20から与えられた送信データを変調して重畳することで送信を行うと共に、重畳された信号を分離して復調することにより得られた受信データをボディECU20へ与える。ボディECU20は、セキュリティ機能によって車輌1内への侵入を検知した場合などに、電力線通信部7を利用することにより、充電ケーブル70を介して給電装置50への通報を行うことができる。
【0032】
角度調整機構4は、ヘッドライト5を変位させて角度を調整する歯車などの機械機構と、これら機械機構を駆動するモータ又はアクチュエータ等とを備えて構成されている。角度調整機構4は、ボディECU20から与えられた制御信号に応じて、ヘッドライト5の角度を調整する。ボディECU20は、ホール素子9が検知する車輌1の車高に応じてヘッドライト5の角度を決定し、角度調整機構4を動作させることによって、ヘッドライト5の照射方向を調整する。
【0033】
車輌1の側面などに設けられる充電口1aは、充電ケーブル70のプラグ部71が挿入される穴部と、充電ケーブル70に含まれる電力線及び接地線等との電気的接続を行うための複数の端子とを備えている。プラグロック機構6は、充電口1aの穴部に挿入された充電ケーブル70のプラグ部71に係合するなどにより、プラグ部71を充電口1aから抜脱不可能な状態に固定する。プラグロック機構6は、ロックのための機械機構、この機械機構を動作させるためのモータ又はアクチュエータ、及び、このモータ又はアクチュエータを駆動する駆動回路等を備えて構成されており、ボディECU20から指示に従ってロックを行う。ボディECU20は、セキュリティ機能によって車輌1内への侵入を検知した場合などに、プラグロック機構6へロック指示を与え、充電ケーブル70を抜脱不可能にロックすることができる。
【0034】
車高センサとして用いられるホール素子9は、車輌1の車体に取り付けられており、後輪の車軸1bとの相対位置に応じた(アナログの)電気信号を出力する。即ち、ホール素子9が出力する電気信号の電圧値は、車輌1の車体と車軸1bとの相対位置を示すものであり、これにより車輌1の車高を検知することができる。ホール素子9の出力信号はボディECU20へ入力されており、ボディECU20は、ホール素子9の検知結果(出力信号の電圧値)に応じて、車輌1内への侵入を検知する処理と、ヘッドライト5の照射方向の調整処理とを行う。またホール素子9は、ボディECU20により駆動されている。ボディECU20は、予め定められた周期でホール素子9への電源電圧の印加を行うことで、ホール素子9の駆動を行う。
【0035】
エンジン制御装置10は、車輌1のエンジン(図示は省略する)の動作を制御する装置である。ボディECU20は、セキュリティ機能によって車輌1内への侵入を検知した場合などに、エンジンの始動を禁止する命令をエンジン制御装置10へ与える。この命令が与えられたエンジン制御装置10は、エンジンの始動を許可する命令が与えられるまで、エンジンを動作させない。
【0036】
IGスイッチ11は、車輌1のエンジンの始動及び停止等の際に切り替えられるスイッチであり、オン/オフのスイッチ状態を示す2値信号がボディECU20へ与えられる。IGスイッチ11がオン状態の場合は、車輌1のエンジンがオン(動作)しており、IGスイッチ11がオフ状態の場合は、車輌1のエンジンがオフ(停止)している。
【0037】
ドアロック機構12は、車輌1の各ドアに設けられており、ロックのための機械機構、この機械機構を動作させるモータ又はアクチュエータ、及び、このモータ又はアクチュエータを駆動する駆動回路等を備えて構成されている。ボディECU20は、車輌1に設けられた操作部に対する操作などに応じてドアロック機構12を動作させ、ユーザの操作に応じたドアのロック/アンロックを行うと共に、セキュリティ機能によって車輌1内への侵入を検知した場合などに、ドアロック機構12により車輌1の全てのドアをロックする。
【0038】
同様に、窓開閉機構13は、車輌1の各ドアに設けられており、ドアの窓を開閉するための機械機構、この機械機構を動作させるモータ又はアクチュエータ、及び、このモータ又はアクチュエータを駆動する駆動回路等を備えて構成されている。ボディECU20は、車輌1に設けられた操作部に対する操作などに応じて窓開閉機構13を動作させ、ユーザの操作に応じた窓の開閉を行うと共に、セキュリティ機能によって車輌1内への侵入を検知した場合などに、窓開閉機構13により車輌1の全ての窓を閉じる。
【0039】
ボディECU20は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置、この演算処理装置にて実行されるプログラム及びデータ等が記憶されたEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)又はフラッシュメモリ等の記憶部、並びに、車輌1に搭載された他の機器との信号又はデータ等の入出力を行うインタフェース回路等を備えて構成されている。ボディECU20が行うセキュリティ機能及びヘッドライト5の角度調整機能等に係る処理は、ボディECU20の演算処理装置が、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行し、インタフェース回路に入力された他の機器からの信号又はデータ等に応じた演算を行い、演算結果に応じた信号又はデータ等をインタフェース回路から対象の機器へ出力することによって実現されるものである。
【0040】
ボディECU20は、ホール素子9によって検知される車輌1の車高に応じて、ヘッドライト5の角度(照射方向)の調整と、車輌1内への侵入検知とを行うが、IGスイッチ11の状態に応じてヘッドライト5の角度調整又は車輌1の侵入検知のいずれか一方の処理を行っている。図3は、IGスイッチ11のオン/オフ状態に応じたボディECU20の処理を説明するための模式図である。ボディECU20は、IGスイッチ11がオン状態の場合にヘッドライト5の角度調整処理を行い、IGスイッチ11がオフ状態の場合に侵入検知の処理を行う。
【0041】
ボディECU20は、IGスイッチ1のオン/オフ状態に応じてホール素子9の駆動を行っている。詳しくは、ボディECU20は、IGスイッチ11がオン状態の場合、短周期(数十ms周期)でのホール素子9の駆動を行い、また、IGスイッチ11がオフ状態の場合、長周期(数秒周期)でのホール素子9の駆動を行う。またボディECU20は、ホール素子9の駆動タイミングに同期してホール素子9の出力電圧値を取得し、取得した電圧値に基づいてヘッドライト5の角度調整処理及び車輌1内への侵入検知処理をホール素子9の駆動タイミングに同期して行っている。
【0042】
また、ボディECU20の侵入検知処理は車輌1のセキュリティ機能の一部であり、ボディECU20はこれらのセキュリティ機能全体の制御処理を行っている。図4は、セキュリティ機能の制御処理を説明するための状態遷移図である。ボディECU20は、セキュリティ機能の制御処理を、4つの状態(無警戒状態、警戒準備状態、警戒状態及び通報状態)を遷移しながら行っている。
【0043】
無警戒状態は、車輌1の走行中及び車輌1内にユーザが乗車している場合等、セキュリティ機能を動作させる必要がない状態であり、ボディECU20は警戒準備状態へ遷移する遷移条件1が成立するまで待機している。遷移条件1は、例えばIGスイッチ11がオフされ、充電口1aに充電ケーブル70が接続され、且つ、車輌1の全てのドアがロックされた場合又はセキュリティ機能を作動させるスイッチなどをユーザが操作した場合等に成立する。なお、充電口1aに充電ケーブルが接続されたか否かは、例えば充電口1aにスイッチなどを設けて検知する構成であってもよく、給電装置50との間で電力線通信が可能であるか否かに基づいて判断する構成であってもよく、その他の方法で判断する構成であってもよい。
【0044】
警戒準備状態は、遷移条件1の成立直後にセキュリティ機能の動作を開始させると、車輌1のユーザなどを不審者として誤検知する虞があるため、セキュリティ機能の動作開始までの一時的な待機状態を設けたものである。ボディECU20は、警戒準備状態に遷移した場合に内部のタイマなどを動作させ、所定時間(例えば数十秒〜数分)が経過(遷移条件2が成立)した場合に、警戒状態へ遷移する。
【0045】
警戒状態は、車輌1に搭載されたホール素子9及びその他のセンサ(例えば車輌1に対する接近を検知するセンサ、車輌1の振動を検知するセンサなど)を利用してボディECU20が車輌1の種々の異常検知を行う状態である。ボディECU20は、車輌1内への侵入を検知した場合など、車輌1の異常を検知(遷移条件3が成立)した場合に、通報状態へ遷移する。ボディECU20は、ホール素子9による車輌1内への侵入検知及びその他のセンサの検知結果に基づく異常検知の他に、例えば車輌1のドアが不正な手段で開けられた場合、又は、車輌1のバッテリが非接続となった後に再接続された場合等にも通報状態へ遷移する。
【0046】
通報状態は、車輌1の異常が検知されて、給電装置50への通報を行う状態である。通報状態においてボディECU20は、電力線通信部7へ通報の指示を与えることにより、充電ケーブル70を介した電力線通信により給電装置50への通報を行う。その後、ボディECU20は、所定時間(例えば数十秒〜数分)が経過(遷移条件4が成立)した場合に、充電ケーブル70を介した電力線通信により給電装置50へ通報解除を通知する。また本実施の形態に係るボディECU20は、車輌1内への侵入検知など異常が検知されて通報状態へ遷移した場合に、プラグロック機構6を動作させることによって充電ケーブル70のプラグ部71を充電口1aから抜脱不可能にロックし、ドアロック機構12を動作させることによって車輌1の全てのドアをロックし、窓開閉機構13を動作させることにより車輌1の全ての窓を閉じ、エンジン制御装置10へエンジン始動禁止命令を与えることで車輌1のエンジン始動を禁止する。なおボディECU20は、通報状態にて充電ケーブル70のロック、ドアのロック、窓閉及びエンジン始動禁止を一度行った後は、無警戒状態へ遷移するまでの間、車輌1内の操作部に対する操作が行われた場合であっても、充電ケーブル70のロック、ドアのアンロック、窓開及びエンジン始動許可を行わない。
【0047】
また警戒準備状態、警戒状態及び通報状態において、セキュリティ機能を停止するための遷移条件5が成立した場合、ボディECU20は、車輌1内への侵入検知などの処理を停止して無警戒状態へ遷移する。遷移条件5は、例えば車輌1のドアが正当な手段でアンロックされた場合、また例えばセキュリティ機能を停止するスイッチなどをユーザが操作した場合、また例えばIGスイッチ11がオン状態に切り替えられた場合等に成立する。なお、異常検知により充電ケーブル70のロック、ドアのロック、窓閉及びエンジン始動禁止が行われた場合、遷移条件5が成立してボディECU20が無警戒状態へ遷移した後に、充電ケーブル70の抜脱、ドアのアンロック、窓開及びエンジン始動が可能となる。
【0048】
このように、ボディECU20は、4つの状態を遷移してセキュリティ機能に係る制御処理を行っている。IGスイッチ11がオンの状態では、ボディECU20は無警戒状態であり、この状態で車高に応じたヘッドライト5の角度調整処理が行われる。IGスイッチ11がオンからオフに切り換えられた場合、ボディECU20は、ヘッドライト5の角度調整処理を停止し、車輌1内への侵入検知処理を含む異常検知処理を開始するが、この段階では無警戒状態であるため、侵入検知処理のための準備処理(例えばレジスタの初期化など)のみが行われ、実際の侵入検知及び警報の発令等は警戒状態へ移行した後に行われる。
【0049】
ホール素子9を用いた車輌1内への侵入検知処理において、ボディECU20は、上記の警戒準備状態から警戒状態への状態遷移を行う際に、ホール素子9の出力電圧値を取得し、取得した電圧値を基準電圧値として記憶する。その後、ボディECU20は、周期的にホール素子9を駆動して出力電圧値を取得し、取得した出力電圧値と記憶した基準電圧値との差分を算出することによって、ホール素子9の出力電圧値の変化量を算出する。更にボディECU20は、算出した変化量が予め定められた閾値を超えるか否かを判定し、算出した変化量が閾値を超える場合、車輌1の車高が変化したと判断できるため、車輌1内に不審者が侵入したと判定する。
【0050】
図5は、車輌1への侵入の検知方法を説明するための模式図であり、車高に応じたヘッドライト調整機能を搭載した市販車にて、停車中の車内への侵入に対する車高センサの出力電圧値を測定した結果をグラフ化したものである。本図においては、車輌の運転席、助手席、後部右側の座席(後右席)又は後部左側の座席(後左席)に、0人〜2人の乗員が乗車した場合の車高センサの出力電圧値を示してある。また本図において、実線で示した出力電圧値の測定結果は、車輌を平坦地に停車させて測定を行った結果であり、破線で示した出力電圧値の測定結果は、車輌の後部が高くなるように約5.3度の傾斜地に停車させて測定を行った結果であり、一点鎖線で示した出力電圧値の測定結果は、車輌の前部が高くなるように約5.3度の傾斜地に停車させて測定を行った結果である。
【0051】
図示の測定結果から、車輌内の乗員の人数が多いほど、乗員なしの場合の基準電圧値に対して車高センサの出力電圧値の変化量は大きい。また変化量が最も少ない1人の乗員が運転席に乗車した場合であっても、車高センサの出力電圧値は基準電圧値に対して約0.1V変化している。約0.1Vの変化は検出可能であり、この電圧値の変化を検出することによって、車輌内への不審者の侵入を検知することができる。例えばボディECU2は、変化量の閾値として0.07Vを予め設定しておき、基準電圧値に対する車高センサの出力電圧値がこの閾値を超えた場合に、侵入有りと判定すればよい。
【0052】
ただし、車輌1に対して外的要因で加えられた一時的な揺れなどによっても車高が変化する可能性があり、このような車高変化が閾値を超えて生じた場合、車輌1内への侵入を誤判定する虞がある。そこで本実施の形態に係るボディECU20は、算出した電圧値の変化量が閾値を超えると判定した後、この変化が所定期間(例えば十数秒〜数十秒)に亘って維持されたか否かを更に判定し、閾値を超える変化が所定期間に亘って維持された場合に車輌1内への侵入有りと判定する。
【0053】
図6は、給電装置50の構成を示すブロック図である。給電装置50は、給電制御部51、接続部53、電力線通信部54、LAN(Local Area Network)通信部55、駆動回路56及び警報器57等を備えて構成されている。給電制御部51は、電源52と、充電ケーブル70が接続される接続部53との間に介在しており、電源52から接続部53への電力供給経路を接続/遮断することによって、電力供給の開始/停止の制御を行っている。電源52は、電圧値が100V又は200Vであり、周波数が50Hz又は60Hzである交流電力を供給するものであり、商用交流電源などであってよい。なお電源52は、給電装置50内に備えられていなくてよい。接続部53は、充電ケーブル70が取り外し可能な構成であってもよく、取り外し不可能な構成であってもよい。
【0054】
電力線通信部54は、給電制御部51から接続部53までの電力供給経路に対して、給電制御部51から与えられた送信データを変調して重畳することにより送信を行うと共に、重畳された信号を分離して復調することにより得られた受信データを給電制御部51へ与える。充電ケーブル70を介して接続された車輌1との間で、電力線通信部54による電力線通信を行うことによって、給電制御部51は、認証処理又は課金情報の送受信処理等を行うことができる。また給電制御部51は、充電ケーブル70を介して接続された車輌1から侵入検知などの通報が与えられた場合、警報器57による警報などの処理を行う。
【0055】
LAN通信部55は、ネットワークNWを介して他の装置(図示は省略する)との間で通信を行うものであり、これにより給電制御部51は、例えば認証処理のための情報を他の装置から取得することができる。また給電制御部51は、充電ケーブル70を介して接続された車輌1から侵入検知などの通報が与えられた場合に、LAN通信部55にて更に他の装置への通報を行い、例えば車輌1のユーザが所持する携帯電話器などへの通報を行うことができる。
【0056】
警報器57は、車輌1からの通報に応じて警報音を発するためのものであり、例えば警報音を発するためのブザー又はスピーカ等の音声出力装置であってよい。また警報器57は、音声出力によるものに限らず、例えばランプなどを点灯させるものであってもよい。駆動回路56は、給電制御部51の制御により動作し、警報器57へ駆動信号を出力することによって、警報器57に警報音の出力を行わせる。給電制御部51は、車輌1からの通報を受信した場合、駆動回路56を動作させることによって、警報器57による警報音の出力を行う。また給電制御部51は、車輌1から通報解除の通知が与えられた場合、警報器57による警報音の出力を停止する。
【0057】
次に、フローチャートを用いて車輌1のボディECU20が行う処理及び給電装置50の給電制御部51が行う処理を説明する。図7は、ボディECU20が無警戒状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。無警戒状態において、まずボディECU20は、IGスイッチ11がオン状態であるか否かを判定する(ステップS1)。IGスイッチ11がオン状態の場合(S1:YES)、ボディECU20は、短周期でホール素子9の駆動を行い(ステップS2)、ホール素子9を駆動するタイミングに同期して、ホール素子9の出力電圧値を取得する(ステップS3)。次いでボディECU20は、ホール素子9の故障検知として、取得したホール素子9の出力電圧値が正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS4)。ホール素子9の出力電圧値が正常範囲内であれば(S4:YES)、ボディECU20は、取得した出力電圧値に応じて角度調整機構4へ指示を与えることにより、ヘッドライト5の照射角度の調整処理を行って(ステップS5)、ステップS1へ処理を戻す。またホール素子9の出力電圧値が正常範囲外であれば(S4:NO)、ボディECU20は、ヘッドライト5の照射角度の調整処理を行うことなく、ステップS1へ処理を戻す。
【0058】
IGスイッチ11がオフ状態の場合(S1:NO)、ボディECU20は、長周期でホール素子9の駆動を行い(ステップS6)、充電口1aに充電ケーブル70が接続され、且つ、例えば車輌1の全てのドアがロックされた又は例えばセキュリティ機能を作動させるスイッチなどをユーザが操作した等の遷移条件1が成立したか否かを判定し(ステップS7)、遷移条件1が成立していない場合には(S7:NO)、ステップS1へ処理を戻す。遷移条件1が成立した場合(S7:YES)、ボディECU20は、セキュリティ機能に係る状態を警戒準備状態として(ステップS8)、無警戒状態の処理を終了する。
【0059】
図8は、ボディECU20が警戒準備状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。警戒準備状態において、ボディECU20は、例えば車輌1のドアが正当な手段でアンロックされた、セキュリティ機能を停止するスイッチなどをユーザが操作した、又は、IGスイッチ11がオン状態に切り替えられた等の遷移条件5が成立したか否かを判定する(ステップS21)。遷移条件5が成立した場合には(S21:YES)、ボディECU20は、セキュリティ機能に係る状態を無警戒状態として(ステップS27)、警戒準備状態の処理を終了する。
【0060】
遷移条件5が成立しない場合(S21:NO)、ボディECU20は、警戒準備状態へ遷移して所定時間が経過したか否か、即ち遷移条件2が成立したか否かを判定する(ステップS22)。遷移条件2が成立しない場合(S22:NO)、ボディECU20は、ステップS21へ処理を戻す。
【0061】
遷移条件2が成立した場合(S22:YES)、ボディECU20は、ホール素子9の出力電圧値を取得し(ステップS23)、ホール素子9の故障検知として、取得したホール素子9の出力電圧値が正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS24)。ホール素子9の出力電圧値が正常範囲内であれば(S24:YES)、ボディECU20は、取得した出力電圧値を基準電圧値として記憶し(ステップS25)、セキュリティ機能に係る状態を警戒状態として(ステップS26)、警戒準備状態の処理を終了する。またホール素子9の出力電圧値が正常範囲外であれば(S24:NO)、ボディECU20は、基準電圧値を記憶することなく、セキュリティ機能に係る状態を警戒状態として(ステップS26)、警戒準備状態の処理を終了する。
【0062】
図9は、ボディECU20が警戒状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。警戒状態において、ボディECU20は、遷移条件5が成立したか否かを判定し(ステップS41)、遷移条件5が成立した場合には(S41:YES)、車輌1のドアアンロック、窓開及びエンジン始動の禁止を解除し(ステップS48)、セキュリティ機能に係る状態を無警戒状態として(ステップS49)、警戒状態の処理を終了する。
【0063】
遷移条件5が成立しない場合(S41:NO)、ボディECU20は、ホール素子9を駆動するタイミングに同期して、ホール素子9の出力電圧値を取得し(ステップS42)、ホール素子9の故障検知として、取得したホール素子9の出力電圧値が正常範囲内であるか否かを判定する(ステップS43)。ホール素子の出力電圧値が正常範囲外であれば(S43:NO)、ボディECU20は、ステップS41へ処理を戻す。また、ホール素子9の出力電圧値が正常範囲内であれば(S43:YES)、ボディECU20は、取得したホール素子9の出力電圧値と、記憶してある基準電圧値との差分を算出することによって、出力電圧値の変化量を算出する(ステップS44)。なお、警戒準備状態の処理においてホール素子9の故障が検出されて基準電圧値が記憶されていない場合、ボディECU20は、ステップS44にて変化量の算出を行わずに、ステップS41へ処理を戻せばよい。
【0064】
次いで、ボディECU20は、算出した変化量が予め定められた閾値を超えるか否かを判定し(ステップS45)、変化量が閾値を超えた場合(S45:YES)、閾値を超えた変化が所定時間に亘って維持されているか否か(遷移条件3)を更に判定する(ステップS46)。変化量が閾値を超えない場合(S45:NO)、又は、閾値を超えた変化が所定時間に亘って維持されていない場合(S46:NO)、ボディECU20は、ステップS41へ処理を戻す。閾値を超えた変化が所定時間に亘って維持された場合(S46:YES)、ボディECU20は、セキュリティ機能に係る状態を通報状態として(ステップS47)、警戒状態の処理を終了する。
【0065】
図10は、ボディECU20が通報状態にて行う処理の手順を示すフローチャートである。通報状態において、まずボディECU20は、プラグロック機構6へ指示を与えることによって、充電口1aに接続された充電ケーブル70のプラグ部71を抜脱不可能にロックし(ステップS60)、ドアロック機構12へ指示を与えることによって、車輌1の全てのドアをロックすると共に(ステップS61)、全てのドアのアンロックを禁止し(ステップS62)、窓開閉機構13へ指示を与えることによって、車輌1の全ての窓を閉じると共に(ステップS63)、全ての窓の開動作を禁止し(ステップS64)、エンジン制御装置10へ指示を与えることによって、車輌1のエンジンの始動を禁止する(ステップS65)。またボディECU20は、電力線通信部7を利用し、車輌1の充電口1aに接続された充電ケーブル70を介して、給電装置50への通報を行う(ステップS66)。
【0066】
次いで、ボディECU20は、遷移条件5が成立したか否かを判定し(ステップS67)、遷移条件5が成立した場合には(S67:YES)、ステップS66にて行った通報の解除を、充電ケーブル70を介した電力線通信により給電装置50へ与える(ステップS71)。次いで、ボディECU20は、車輌1のドアアンロック、窓開及びエンジン始動の禁止を解除し(ステップS72)、セキュリティ機能に係る状態を無警戒状態として(ステップS73)、通報状態の処理を終了する。
【0067】
遷移条件5が成立しない場合(S67:NO)、ボディECU20は、充電ケーブル70を介した給電装置50への通報から所定時間が経過したか否か(遷移条件4)を更に判定する(ステップS68)。所定時間が経過していない場合(S68:NO)、ボディECU20は、ステップS67へ処理を戻す。所定時間が経過した場合(S68:YES)、ボディECU20は、ステップS66にて行った通報の解除を、充電ケーブル70を介した電力線通信により給電装置50へ与え(ステップS69)、セキュリティ機能に係る状態を警戒状態として(ステップS70)、通報状態の処理を終了する。
【0068】
図11は、給電装置50が行う処理の手順を示すフローチャートである。なお、図11においては、充電ケーブル70を介して接続された車輌1から異常発生の通報が与えられた場合に給電装置50が行う処理の手順を示し、その他の処理(例えば車輌1との認証処理、又は、車輌1への給電処理等)の手順については図示を省略してある。また給電装置50は、充電ケーブル70を介して車輌1と接続されている間、図11に示す処理を繰り返し行っている。
【0069】
給電装置50の給電制御部51は、充電ケーブル70を介した車輌1からの通報を電力線通信部54にて受信したか否かを判定し(ステップS81)、受信していない場合には(S81:NO)、通報を受信するまで待機する。車輌1からの通報を受信した場合(S81:YES)、給電制御部51は、LAN通信部55にてネットワークNWを介した他の装置へ更に通報を行うための処理を行う(ステップS82)。このときに給電装置50は、例えば外部のメールサーバへ車輌1のユーザが所持する携帯電話器などへの通報メールの送信を行うことができ、また例えば車輌1のディーラなどへ異常発生を通報することができ、また例えばセキュリティ会社などへの通報を行うことができる。
【0070】
次いで給電装置50は、駆動回路56にて警報器57を駆動して(ステップS83)、警告音声の出力などを行う。その後、給電装置50は、充電ケーブル70を介して車輌1から異常発生の通報の解除が与えられたか否かを判定し(ステップS84)、通報の解除が与えられていない場合には(S84:NO)、ステップS83へ処理を戻して警報を継続し、通報の解除が与えられた場合には(S84:YES)、警報を停止して処理を終了する。
【0071】
以上の構成のボディECU20は、車輌1の車高を検知するためのホール素子9を用いて車輌1内への侵入を検知する構成とすることにより、車輌1への侵入検知を行う機能及び車高に応じてヘッドライト5の照射角度調整を行う機能をボディECU20に統合し、両機能にてホール素子9を共用することができるため、両機能が搭載される車輌1のコスト低減を実現できる。またボディECU20は、車高に応じて車輌1内への侵入を検知する構成とすることにより、侵入の検知範囲を車輌1内の全域とすることができ、高精度な侵入検知を実現できる。
【0072】
また、ボディECU20が車輌1内への侵入を検知した場合に、充電ケーブル70を介して給電装置50へ通報を行い、この通報に応じて給電装置50が警報などを行う構成とすることにより、車輌1に警報器などを設ける必要がないため、車輌1の低コスト化を実現できる。また車輌1のボディECU20及び給電装置50が充電ケーブル70に含まれる電力線を介した電力線通信を行う構成とすることにより、通信を行うために車輌1及び給電装置50に無線通信機などを設ける必要がなく、車輌1及び給電装置50のコスト増加を抑制できる。
【0073】
また、ホール素子9の検知結果などに基づいて車輌1に異常を検知した場合に、ボディECU20が、車輌1の全てのドアをロックしてアンロック禁止とし、全ての窓を閉じて開動作禁止とし、且つ、車輌1のエンジン始動を禁止する構成とすることにより、車輌1内に侵入した不審者を車輌1内に閉じ込めて捕らえることができる。このような機能を車輌1に搭載することによって、不審者の車輌1内への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0074】
また、ホール素子9の検知結果などに基づいて車輌1の異常を検知した場合に、ボディECU20のプラグロック機構6が、車輌1の充電口1aに接続された充電ケーブル70のプラグ部71を抜脱不可能にロックする構成とすることにより、侵入者によって車輌1自体が盗難されることを防止できる。
【0075】
また、侵入検知処理の開始時(警戒準備状態から警戒状態へ状態遷移するとき)にホール素子9の出力電圧値を基準電圧値として取得し、その後(警戒状態)にホール素子9の出力電圧値を定期的に取得し、基準電圧値に対する出力電圧値の変化量を算出し、算出した変化量が閾値を超えた場合に、車輌1内への侵入有りと判定する構成とすることにより、車輌1内における侵入者の位置に関わらず、車輌1内の全域において侵入者を検知することができるため、高精度な侵入検知を実現できる。
【0076】
また、ホール素子9の変化量が閾値を超え、且つ、この変化が所定時間に亘って維持された場合に、車輌1内への侵入有りと判定する構成とすることにより、車輌1に外的要因などで加えられた一時的な揺れによって生じた車高の変化に対して、車輌1内への侵入有りと誤判定することを防止できる。
【0077】
また、車輌1のエンジンオン/オフの切替に係るIGスイッチ11の状態を取得し、IGスイッチ11がオン状態の場合にヘッドライト5の角度調整処理を行い、IGスイッチ11がオフ状態の場合に侵入検知処理を行う構成とすることにより、角度調整及び侵入検知の両処理にてホール素子9を共用する場合であっても、各処理に適した方法で車高センサを利用することができる。また、IGスイッチ11がオン状態の場合にホール素子9を短周期で駆動し、IGスイッチ11がオフ状態の場合にホール素子9を長周期で駆動する構成とすることにより、車輌1のエンジンオフ状態での電力消費量を低減することができる。
【0078】
なお、本実施の形態においては、車輌1に1つのホール素子9を備える構成としたが、これに限るものではなく、複数のホール素子9を車輌1の適所に搭載する構成としてもよい。この場合、いずれかのホール素子9にて閾値を超えた車高の変化が検出された場合に、侵入者ありと判定する構成とすることができ、侵入検知の精度をより高めることが可能である。
【0079】
また、給電装置50は、車輌1からの通知が与えられた場合に、警報器57による警報音の出力を行う構成としたが、これに限るものではなく、警報は警報音によるもののみでなく、ランプの点灯など視覚的な警報を発するものであってよい。また、車輌1には警報器を備えない構成としたが、これに限るものではなく、車輌1にも警報器を備え、車輌1内への侵入を検知した場合などに警報を行う構成としてもよい。また無警戒状態から警戒準備状態へ遷移するための遷移条件1に、車輌1の充電口1aに対して充電ケーブル70が接続されることが含まれる構成としたが、これに限るものではなく、遷移条件1に充電ケーブル70に係る上記の条件を含まず、充電ケーブル70が未接続の場合であっても警戒準備状態への遷移が可能な構成としてもよい。
【0080】
また、ホール素子9の駆動の周期をIGスイッチ11のオン/オフ状態に応じて切り替える構成としたが、これに限るものではなく、ボディECU20のセキュリティ機能に係る状態遷移に応じて駆動周期を切り替える構成としてもよく、例えば無警戒状態では短周期での駆動を行い、警戒準備状態、警戒状態及び通報状態では長周期での駆動を行うなどの構成としてもよい。また、ボディECU20がホール素子9の検知する車高に応じたヘッドライト5の照射方向の調整処理を行う構成としたが、これに限るものではなく、ボディECU20がヘッドライト5の照射方向の調整を行わず、ホール素子9が検知する車高に応じた侵入検知のみを行う構成であってもよい。
【0081】
(変形例)
図12は、変形例に係る車輌盗難防止装置を搭載した車輌1の構成を示すブロック図である。また図13は、変形例に係る給電装置150の構成を示すブロック図である。変形例に係る車輌盗難防止システムにおいては、車輌1及び給電装置150を接続する充電ケーブル170に、一又は複数の電力線170aと、少なくとも1つの通信線170bを含む。車輌1のボディECU120は、充電口1aに充電ケーブル170が接続された場合に、充電ケーブル170に含まれる通信線170bを介した通信を行うことができる。同様に給電装置150の給電制御部151は、接続部53に接続された充電ケーブル170に含まれる通信線170bを介した通信を行うことができる。これにより、車輌1のボディECU120及び給電装置150の給電制御部151は、車輌1及び給電装置150が充電ケーブル170を介して接続された場合に、通信線170bを介して通信を行うことができる。
【0082】
車輌1のボディECU120は、ホール素子9の検知結果に基づいて車輌1内への侵入を検知した場合などに、充電ケーブル170の通信線170bを介して給電装置150へ通報を行う。この通報が与えられた給電装置150は、駆動回路56にて警報器57を駆動し、警報音を発するなどの処理を行う。
【0083】
このように、充電ケーブル170が通信線170bを含むものである場合には、電力線170aを介した電力線通信ではなく、通信線170bを利用した通信を行う構成としてもよい。なお、図12に示した例では、ボディECU120が直接的に通信線170bを介した通信を行う構成としたが、これに限るものではなく、通信線170bを介した通信を行う通信装置を車輌1に搭載し、この通信装置を介してボディECU120が通信を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 車輌
1a 充電口
1b 車軸
2 バッテリ
3 充電制御部
4 角度調整機構(調整手段)
5 ヘッドライト
6 プラグロック機構(充電ケーブルロック手段)
7 電力線通信部(通報手段)
9 ホール素子(車高センサ)
10 エンジン制御装置(始動禁止手段)
11 IGスイッチ
12 ドアロック機構(施錠制御手段)
13 窓開閉機構(窓閉制御手段)
20 ボディECU(算出手段、判定手段、通報手段、施錠制御手段、窓閉制御手段、始動禁止手段、充電ケーブルロック手段、スイッチ状態取得手段、調整手段)
50 給電装置
51 給電制御部(報知手段)
52 電源
53 接続部
54 電力線通信部
55 LAN通信部
56 駆動回路(報知手段)
57 警報器(報知手段)
70 充電ケーブル
71 プラグ部
120 ボディECU(算出手段、判定手段、通報手段、施錠制御手段、窓閉制御手段、始動禁止手段、充電ケーブルロック手段、スイッチ状態取得手段、調整手段)
150 給電装置
151 給電制御部
170 充電ケーブル
170a 電力線
170b 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に設置された給電装置から充電ケーブルを介して供給される電力をバッテリに充電する車輌に搭載され、該車輌内への侵入検知を検知して通報を行う車輌盗難防止装置であって、
前記車輌の車高に応じた電気信号を出力する車高センサと、
該車高センサの出力電圧値の変化量を算出する算出手段と、
該算出手段が算出した変化量が閾値を超えるか否かを判定する判定手段と、
変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記充電ケーブルを介して前記給電装置へ通報を行う通報手段と
を備えること
を特徴とする車輌盗難防止装置。
【請求項2】
前記充電ケーブルは、電力線を含み、
前記通報手段は、前記電力線を介した電力線通信により通報を行うようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の車輌盗難防止装置。
【請求項3】
前記充電ケーブルは、電力線及び通信線を含み、
前記通報手段は、前記通信線を介して前記給電装置への通報を行うようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の車輌盗難防止装置。
【請求項4】
変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記車輌のドアを施錠する施錠制御手段と、
変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記車輌の窓を閉じる制御を行う窓閉制御手段と
を更に備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の車輌盗難防止装置。
【請求項5】
変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記車輌のエンジン始動を禁止する始動禁止手段を更に備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の車輌盗難防止装置。
【請求項6】
変化量が閾値を超えると前記判定手段が判定した場合に、前記充電ケーブルを接続状態でロックする充電ケーブルロック手段を更に備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の車輌盗難防止装置。
【請求項7】
前記車輌のエンジンのオン/オフを切り替えるスイッチの状態を取得するスイッチ状態取得手段と、
前記スイッチがエンジンオンの状態である場合に、前記車高センサの検知結果に基づいて、前記車輌のヘッドライトの照射方向を調整する調整手段と
を更に備え、
前記通報手段は、前記スイッチがエンジンオフの状態である場合に、通報を行うようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車輌盗難防止装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の車輌盗難防止装置と、車外に設置された給電装置とを備え、前記車輌盗難防止装置が搭載された車輌及び前記給電装置が充電ケーブルを介して接続される車輌盗難防止システムであって、
前記給電装置は、
前記車輌盗難防止装置からの前記充電ケーブルを介した通報が与えられた場合に、報知を行う報知手段
を備えること
を特徴とする車輌盗難防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−107597(P2013−107597A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256463(P2011−256463)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】