説明

軌条間中心位置出し具

【課題】簡単な構成のもので、軌条間中心を容易かつ迅速に線状に位置出し、また線表示できるようにする。
【解決手段】計測バー1の両端部に軌条2、3の内側間または外側間に、内側または外側から当接する計測点4、5を設け、これら計測点4、5間の距離Lを、計測対象とする軌条2、3の内側当接部8、9間の最短距離L1または外側の当接部11、12間の最短距離L2よりも大きく設定し、計測バー1の計測点4、5間の中点O1対応位置に軌道面7への点描具6を下向きに設けたことで、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道と道路との両方を走行可能な軌陸車のための軌条間中心位置出し具に関し、詳しくは、軌陸車が道路から軌道に乗り換える際の車体を旋回させる軌条間中心を線状に位置出しする軌条間中心位置出し具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は、このような軌条間中心の線状位置出しの基に、道路から軌道に入った軌陸車の旋回中心が軌条間中心に位置したことを確認した後、車体を上昇させて道路輪を浮かせた状態で車体の中心ラインが位置出し線に一致する向きまで旋回させ、その旋回位置で車体を下降させることで軌道輪を軌条の上に乗せることで、軌陸車を軌道に移し換える軌陸車を開示している。
【0003】
特許文献1に開示の軌陸車は、車体を道路から軌道の方向に向けるための旋回台を車体の下方中央部に備えた軌陸車において、旋回台の旋回中心に窓を備え、この窓の上方に下方に向けて光ビームを投射するレーザー発振器などの光投射器を備えている。これにより、軌陸車を道路から軌道へ移すときは、軌道の中心に目印線を引き、光投射器から光ビームを投射しながら車両を移動して、光ビームの照射点が目印線の上に来たときに車両を止め、昇降装置を延ばして車体を持ち上げ、旋回装置回りに車体を旋回して軌道の方向に向け、軌道輪を降ろした後、昇降装置を縮退させて軌道輪を軌条上に載せられる。
【0004】
特許文献1はその段落0016に、軌陸車を道路から軌道へと乗り換えるときに具体例を開示している。それによれば、乗り換え位置の踏切の2本の軌条の中央に目印線を引く。そして、運転者がレーザー発振器を発光させて軌陸車を目印線の上に乗り入れる。このとき、車両脇に立った補助者がレーザービームの照射点の動きを見ながら運転者に合図して、照射点が目印線に重なった所で軌陸車を停止させる。この状態で旋回台の旋回中心が目印線の位置、すなわち軌道の2本の軌条の中心の位置に来るので、この状態で旋回台を降ろし、ローラスイッチが検出杆を検出する原点位置に車両を旋回させてやれば、軌道輪はちょうど軌条の上に来ることとなり、やり直し作業が生じないので、軌陸車の道路から軌道への乗り換え作業を短時間で間違いなく行うことができる。なお、特許文献1はその段落0005に、「軌道輪のフランジとレールとの間の隙間は、左右で約12〜16mm程度であるから、その精度で車両を停止させなければ道路から軌道への移行を行うことができない。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2004−34726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、軌条間の中心位置に合致した目印線の引き方については一切記述していない。特許文献1の段落0005に、「軌道の保守点検作業は、列車が通らない深夜から早朝にかけての限られた時間内に行なわねばならず、作業を時間通り速やかに行なう必要がある。」としているが、そのような暗いか薄暗い環境で、軌条間の中心位置を正確に計測し、計測位置に沿って目印線を手で引く作業は容易でなく、長い時間が掛かる。また、軌陸車の軌道への侵入位置が踏切であれば軌条間の渡り板や渡り床の上に目印線をチョーク等で引けるが、踏切から外れた位置では引きにくい。
【0007】
本発明は、以上のような課題に鑑みて、軌条間中心を容易かつ迅速に線状に位置出し、また線表示できるようにした簡易な軌条間中心位置出し具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明の軌条間中心位置出し具は、計測バーの両端部に軌条の内側間または外側間に、内側または外側から当接する計測点を設け、これら計測点間の距離を、計測対象とする軌条の内側当接部間の最短距離または外側の当接部間の最短距離よりも大きく設定し、計測バーの計測点間の中点対応位置に軌道面への点描具を下向きに設けたことを特徴としている。
【0009】
このような構成では、計測バーの両端部の計測点間距離が、それら計測点を当接させる軌条の内側当接部間の最短距離または外側の当接部間の最短距離よりも大きいことによって、計測バーは、軌条の内側間への当接の場合、軌条に対し傾斜姿勢となって軌条の内側間に計測点が当接して突っ張り合いそれ以上傾斜角を小さくできない減傾限界となる当接姿勢にて安定し、軌条の外側間への当接の場合、軌条に対し傾斜姿勢となって軌条の外側間に計測点が当接して引っ掛かり合いそれ以上傾斜角を大きくできない増傾限界となる当接姿勢にて安定する。計測バーは、これら減傾、増傾各限界となるいずれの傾斜姿勢においても、計測点間の中点が軌条間の中心位置に一致する。従って、計測バーを前記減傾限界、増傾限界となる当接姿勢を保って軌条の長手方向に移動させると、計測バーの計測点間の中点は軌条間の中心位置を保ったまま、点描具を伴い、軌条の長手方向に連続移動させられる。このとき下向きの点描具を軌道面に向け連続に働かせることで、点描具が軌道面に描く点を連続させて、軌条間の中心位置と一致した中点の移動に沿った線として描ける。また、前記移動中点描具を不連続に働かせれば、その断続状態に応じて点線、破れ線なども描ける。もっとも、計測バーは軌条のどの位置に当接させても同じように軌条間の中心位置を計測することができるので、当接状態を維持して連続移動するのではなく、軌条間の中心位置の計測が必要な距離を満足する2点で軌条間の中心位置を計測して、その計測位置2か所に点描具による点描を行い、2か所の点描間を、直線を表示する直線指標具で結べば、軌条間中心に一致した線描に代わる直線指標が得られる。
【0010】
上記のような構成において、さらに、点描具は、チョークや蝋石などの直接描画材、着色材を絞り出したり送り出したりする着色材流下具やインクジェットヘッドなどの間接描画具を選択して用いることができる。
【0011】
このような構成では、上記に加え、さらに、点描具としての直接描画材は、軌道面の踏切の踏み板や踏み床、枕木、枕木上に置いた描画用板などの平坦な表面への点描、線描に適し、間節描画具は、軌道面への点描、線描が非接触に行えるので、平坦な表面へはもとより、枕木とその間の敷石がなす凹凸面に対しても点描、線描が行える。
【0012】
上記のような構成において、さらに、計測点は、平面視して前記中点を中心とする点対称な円弧状、湾曲状をなして軌条の内側または外側から当接する当接面がなすものとすることができる。
【0013】
このような構成では、上記に加え、さらに、計測バーの両端部の計測点をなす当接面を、軌条に対し計測バーが傾斜姿勢となって軌条の内側間で突っ張り合って減傾限界となるまで当接させたり、軌条に対し計測バーが傾斜姿勢となって軌条の外側間で引っ掛かり合って増傾限界となるまで当接させたりするのに、当接面を軌条に対し滑らかに接触させていきながら無理なく減傾限界または増傾限界の位置に達することができる。また、平面視した当接面が中点を中心とする点対称な円弧状、湾曲状であることにより、狭軌道、広軌道といった軌条間隔が大小異なる軌道に計測バーを共用する場合など、減傾限界や増傾限界となったときの軌条への各当接点が、中点から等距離にある一対の計測点であることを満足することができる。
【0014】
上記の構成において、さらに、当接面は、回転ローラの側周面がなしたものとすることができる。
【0015】
このような構成では、上記に加え、さらに、当接面を軌条の内側間、または外側間に当接させて、計測バーを減傾限界または増傾限界姿勢となるように当接させていく過程での軌条との接触はもとより、計測バーを減傾限界または増傾限界姿勢を保ったまま移動させるときの軌条との接触をも、転がり接触とすることができる。
【0016】
上記のような構成において、さらに、計測バーの途中には、軌条との間で突っ張って、計測バーの軌条内側間での減傾限界位置または軌条外側間での増傾限界位置を維持する突っ張りバーを連結したものとすることができる。
【0017】
このような構成では、上記に加え、さらに、計測バーが所定の減傾限界または増傾限界になった時点で、突っ張りバーを軌条との間で突っ張るように働かせることにより、計測バーを軌条に沿っての移動に支障なく減傾限界または増傾限界の傾斜姿勢に安定させられる。
【0018】
上記のような構成において、さらに、計測バーは、軌条の適所に載置して、計測点の軌条への当接高さを保持する載置部を有したものとすることができる。
【0019】
このような構成では、上記に加え、さらに、計測カバーに設けた載置部を軌条の適所に載置することで、計測点を軌条との内側または外側からの当接高さに保つので、当接点を軌条の内側間、または外側間に当接させて、計測バーを減傾限界または増傾限界姿勢となるように当接させていく過程ではもとより、計測バーを減傾限界または増傾限界姿勢を保ったまま移動させるときでも、計測バーを人手によって計測高さに保ち続ける作業を不要にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の軌条間中心位置出し具によれば、計測バーは、軌条の内側間への当接の場合、軌条の内側間に計測点が当接して突っ張り合い減傾限界となる当接姿勢にて、軌条の外側間への当接の場合、軌条の外側間に計測点が当接して引っ掛かり合い増傾限界となる当接姿勢のいずれにも安定し、これらいずれの傾斜姿勢にても計測点間の中点が軌条間の中心位置に一致している。そこで、点描具を軌道面に働かせると軌条間の中心位置を点描して軌道面上に表示し、距離を隔てた2か所で計測し表示した2つの点描表示を結ぶ線を得て軌条間中心位置を線表示できるし、前記減傾限界または増傾限界となっている計測バーをそのときの当接姿勢を保って軌条の長手方向に移動させながら点描具を働かせることで線描し軌道面上に線表示することができる。従って、簡単かつ安価で持ち運びや取扱に便利な軌条間中心位置出し具により、軌条間中心位置を容易かつ迅速に計測して線表示することができるし、表示した線は、軌陸車の台車側から窓を通じた目視や撮像により直接または撮像データ、画面を通じて視認されて、台車の旋回中心点が、表線線上に達したかどうかを作業者に容易かつ正確に判断させられるので、軌道に進入した軌陸車の旋回中心を軌条間中心位置に精度よく一致させて失敗なく旋回させられる。
【0021】
上記に加え、さらに、点描具として直接描画材を選択すると安価であり、軌道面の踏切の踏み板や踏み床、枕木、枕木上に置いた描画用板などの平坦な表面への点描、線描に適し、間節描画具を用いると、軌道面への点描、線描が非接触に行えるので、平坦な表面へはもとより、枕木とその間の敷石がなす凹凸面に対しても点描、線描が行える。しかも、インクジェットヘッドを採用すると器具はやや高価であるが、インクの補充にて長期に使用できるし、電気的な制御で自動噴射させられる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施形態の軌条間中心位置出し計測具の1つの例を示す使用状態で示す側面図である。
【図2】同位置出し具によって位置出し点描または線描表示した軌条間中心位置に沿った線指標を発光表示する発光線指標具を折り畳状態、直状状態で示す各斜視図、凹断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る軌条間中心位置出し具につき、図1、図2を参照しながら以下に説明する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0024】
図1に示す本実施の形態の軌条間中心位置出し具100は、計測バー1の両端部に軌条2、3の内側間または外側間に、内側または外側から当接する計測点4、5を設け、これら計測点4、5間の距離Lを、計測対象とする軌条2、3の内側当接部間の最短距離L1または外側の当接部間の最短距離L2よりも大きく設定し、計測バー1の計測点4、5間の中点O1対応位置に軌道面7への点描具6を下向きに設けたことを基本的構成としている。
【0025】
このように、計測バー1の両端部の計測点4、5間の距離Lが、それら計測点4、5を当接させる軌条2、3の内側当接部8、9間の最短距離L1(軌条2、3に直角な方向になる)または外側の当接部11、12間の最短距離L2(軌条2、3に直角な方向になる)よりも大きいことによって、計測バー1は、図1に実線で示す軌条2、3の内側間への当接の場合、軌条2、3に対し傾斜姿勢となって軌条2、3の内側間に計測点4、5が当接して突っ張り合いそれ以上軌条2、3に対する軌条2、3に対する仮想線矢印方向での傾斜角を小さくできない減傾限界となる当接姿勢にて安定し、図1に仮想線で示す軌条2、3の外側間への当接の場合、軌条2、3に対し傾斜姿勢となって軌条2、3の外側間に計測点4、5が当接して引っ掛かり合いそれ以上軌条2、3に対する仮想線矢印方向での傾斜角を大きくできない増傾限界となる当接姿勢にて安定する。計測バーは、これら減傾、増傾各限界となるいずれの傾斜姿勢においても、計測点4、5の中点O1が軌条2、3間の中心位置Oに一致する。
【0026】
したがって、計測バー1を前記減傾限界、増傾限界となる当接姿勢を保って軌条2、3の長手方向に図1に白抜き矢印で示すように移動させると、計測バー1の計測点4、5間の中点O1は軌条2、3間の中心位置Oを保ったまま、つまり対応したまま、点描具6を伴い、軌条2、3の長手方向に連続移動させられる。このとき下向きの点描具6を軌道面7に向け連続に働かせることで、点描具6が軌道面7に描く点を連続させて、軌条2、3間の中心位置Oと一致した中点O1の移動に沿った線13として描ける。また、前記移動中に点描具6を不連続に働かせれば、その断続状態に応じて点線、破線なども描ける。
【0027】
もっとも、計測バー1は軌条2、3のどの位置に当接させても同じように軌条2、3間の中心位置Oを計測することができるで、当接状態を維持して連続移動するのではなく、軌条2、3間の中心位置の計測が必要な距離を満足する2点で軌条2、3間の中心位置Oを計測して、その計測位置2か所に図1に示すような点描具6による点描14、15を施し、2か所の点描14、15間を、直線を表示できる紐やワイヤなどの索条を含む図2に示すような直線指標具21で図1に仮想線で示すように結べば、軌条2、3間中心に一致した線描13に代わる直線指標22が得られる。
【0028】
以上のように、計測バー1は、軌条2、3の内側間への当接の場合、軌条2、3の内側間に計測点4、5が当接して突っ張り合い減傾限界となる図1に実線で示す当接姿勢にて、軌条2、3の外側間への当接の場合、軌条2、3の外側間に計測点4、5が当接して引っ掛かり合い増傾限界となる当接姿勢のいずれにも安定し、これらいずれの傾斜姿勢にても計測点4、5間の中点O1が軌条間の中心位置Oに一致している。そこで、点描具6を軌道面7に働かせると軌条2、3間の中心位置Oを点描して軌道面7上に表示し、距離を隔てた2か所で計測し表示した2つの点描14、15での表示を結ぶ直線指標22を得て軌条間2、3中心位置Oを線表示できるし、前記減傾限界または増傾限界となっている計測バー1をそのときの当接姿勢を保って軌条2,3の長手方向に移動させながら点描具6を働かせることで線描13し軌道面7上に線表示することができる。従って、簡単かつ安価で持ち運びや取扱に便利な軌条間中心位置出し具100により、軌条2、3間の中心位置Oを容易かつ迅速に計測して線表示することができるし、表示した直線指標21、22は、軌陸車の台車側から窓を通じた目視や撮像により直接または撮像データ、画面を通じて視認されて、台車の旋回中心点が、表線線上に達したかどうかを作業者に容易かつ正確に判断させられるので、軌道に進入した軌陸車の旋回中心を軌条2、3間の中心位置Oに精度よく一致させて失敗なく旋回させられる。結果、限られた時間帯での作業に好都合となる。
【0029】
ここで、点描具6は、図1に示すチョーク31や蝋石などの直接描画材、着色材を弾性チューブ、弾性容器から絞り出したり、シリンダからピストンで送り出したりする着色材流下具、インクジェットヘッドなどの間接描画具を選択して用いることができる。点描具としての直接描画材は、軌道面7の踏切の踏み板や踏み床、枕木、枕木上に置いた描画用板などの平坦な表面への点描、線描に適し、間節描画具は、軌道面7への点描、線描が非接触に行えるので、平坦な表面へはもとより、枕木とその間の敷石がなす凹凸面に対しても点描、線描が行える。
【0030】
点描具6としてチョーク31などの直接描画材を選択すると安価であるが、固形材が周になり、脆いチョークなどは折損防止上、図1に示すようにスリット入りホルダ32などに収容して用いるのが好適である。また、固形の描画材31は軌道面7に所定の必圧を保って接触させることが必須となるところ、常時軌道面7に圧接させる構成では、計測バー1による計測操作の邪魔になりやすい。そこで、図1に示す実施の形態では、チョーク31などの固形材を用いるのに、計測バー1を途中の点O1の位置で連結する連結金具33の中点O1に立設した操作グリップ34を利用して、描画する時点で、チョーク31などの固形材を操作グリップ34の穴に上方から挿入し、挿入後操作グリップ34の上端にコイルばね35付きのキャップ36を螺子合わせて装着し、チョーク31などの固形材をコイルばね35により軌道面7に適度な弾性力で押し付け、1回分の線13はチョーク31などの減りの影響なしに連続に描画できるようにしている。次回からの描画時にはその都度チョーク31などをホルダ32から所定量引き出すことで対応できる。しかし、これは一例であって他の手法によることもできる。なお、操作グリップ34は、計測バー1を図1の実線矢印や仮想線矢印で示す方向に回転させて、減傾限界または増傾限界となる計測当接位置を探り当てる操作と、この計測当接位置を保っての白抜き矢印方向に移動させる操作と、のいずれにも利用できる。軌道面7への点描、線描が非接触に行える間接描画具として、インクジェットヘッドを採用すると器具はやや高価であるが、インクの補充にて長期に使用できるし、電気的な制御で自動噴射させられる利点がある。
【0031】
また、計測点4、5は図1に示すように、平面視して前記中点O1を中心とする点対称な円弧状、湾曲状をなして軌条2、3の内側または外側から当接する当接面41がなしていると、計測バー1の両端部の計測点4、5をなす当接面41を、軌条2、3に対し計測バー1が傾斜姿勢となって軌条2、3の内側間で突っ張り合って減傾限界となるまで当接させたり、軌条2、3に対し計測バー1が傾斜姿勢となって軌条2、3の外側間で引っ掛かり合って増傾限界となるまで当接させたりするのに、当接面41を軌条2、3に対し滑らかに接触させていきながら無理なく減傾限界または増傾限界の位置に達することができる。また、平面視した当接面41が中点O1を中心とする点対称な円弧状、湾曲状であることにより、狭軌道、広軌道といった軌条間隔が大小異なる軌道に計測バー1を共用する場合など、減傾限界や増傾限界となったときの軌条2、3への各当接点45が、中点O1から等距離にある一対の計測点であることを満足することができる。ここで、軌条間中心位置出し具の当接点45間は絶縁性能を確保して、軌条2、3間が電気的に導通しないようにする必要がある。それには、計測バー1の全体ないしは一部が樹脂等の絶縁性部分を有したものとするのが好適である。
【0032】
このような、当接面41が、図1に示すように軸142を中心に回転する回転ローラの側周面にて形成していると、当接面41を軌条2、3の内側間、または外側間に当接させて、計測バー1を減傾限界または増傾限界姿勢となるように当接させていく過程での軌条2、3との接触はもとより、計測バー1減傾限界または増傾限界姿勢を保ったまま移動させるときの軌条2、3との接触をも、転がり接触とすることができ、摩擦抵抗が大幅に軽減されるし摩耗も大きく抑制できる。
【0033】
さらに、計測バー1の途中には、軌条2、3との間で突っ張って、計測バー1の軌条2、3の内側間での減傾限界位置または軌条2、3外側間での増傾限界位置を維持する図1に実線または仮想線で示した突っ張りバー43または44を連結している。これにより、計測バー1が所定の減傾限界または増傾限界になった時点で、突っ張りバー43または44を軌条2、3との間で突っ張るように働かせることにより、計測バー1を軌条2、3に沿っての移動に支障なく減傾限界または増傾限界の傾斜姿勢に安定させられる。従って、計測バー1を減傾限界または増傾限界の傾斜姿勢に安定させる操作を省略して軌条2、3に沿って移動させるだけで、軌条2、3間の中心Oの位置に沿った線13の描画ができる。
【0034】
図1に示す突っ張りバー42は、連結金具33に一端を軸44により回動できるように軸支してあり、他端を計測バー1の計測点4、5に倣った当接点45を設けて、減傾限界状態にした計測バー1と突っ張り側で対向する軌条3に内側から当接するように突っ張りバー42を、前記軸44を中心に計測バー1に対し一点鎖線矢印のように開閉することにより、突っ張りバー42を計測バー1と軌条3との間で突っ張らせて計測バー1の減傾限界状態に安定させるようにしてある。突っ張りバー42の開閉は、突っ張りバー42および計測バー1に摺動できるように嵌め合わせた摺動環45、46間をピン48、49により連結したリンク47の、摺動環45、46を手で摺動させての移動を伴うことで可能で、その移動位置は突っ張りバー42の開閉外力によっては変化しないので、突っ張りバー42の突っ張り状態となったときの開き角度は、リンク47の、摺動環45、46を手で摺動させての移動なしには変化せず安定する。
【0035】
図1に示す突っ張りバー43も、突っ張りバー42に準じて設けてよいが、変形例として、一端を連結金具33に固定した伸縮バーとし、他端側の当接点51が突っ張り側となる軌条2に内側から圧接するように破線矢印方向に伸張するようにばね48やガス圧にて付勢してある。これにより、計測バー1は、図1に仮想線で示す増傾限界位置に安定させられる。このため、計測バー1の計測点4、5を軌条2、3の外側間に対し外れた位置から当接させていくときの、外れた位置は当接点51の軌条2の内側への当接による伸縮バー43の付勢に抗した収縮を伴い行うことになる。これを回避するには、突っ張りバー43を伸縮自在の二重管構造とし、所定の伸縮位置にねじ止めなどできるようにすればよい。
【0036】
計測バー1は図1に実線で示すように、軌条2、3の適所に載置して、計測点4、5の軌条2、3への当接高さを保持する載置部61を有したものとしている。これにより、計測バー1に設けた載置部61を軌条2、3の適所、具体的には軌条2、3の頂面などに載置することで、計測点4、5を軌条2、3との内側または外側からの当接高さに保つので、当接点45を軌条2、3の内側間、または外側間に当接させて、計測バー1を減傾限界または増傾限界姿勢となるように当接させていく過程ではもとより、計測バー1を減傾限界または増傾限界姿勢を保ったまま移動させるときでも、計測バー1を人手によって計測高さに保ち続ける作業を不要にすることができる。図1に実線で示す載置部61は、計測バー1が計測点4、5を軌条2、3の内側に当接させるもので、計測バー1は軌条2、3上に延びている必要のないことから、計測バー1の両端を延長する状態に嵌め合わせて装着し固定したものとしている。これに併せ、計測点4、5をなす回転ローラを軸142により軸支する部分に共用している。しかし、具体的な構造は種々に設計することができる。なお、計測点4、5を図1に仮想線で示すように軌条2、3の外側間に当接させる場合、計測バー1は軌条2、3の頂面に載る長さとしてよく、特別な載置部61を設ける必要はない。しかし、軌条2、3の外側に計測点4、5を支持する支持部は必要である。
【0037】
最後に、図2に示す直線指標具21は、1つの例として、図2(c)に示すように、アルミニウム製の押し出し形材または板金加工材からなるチャンネル材よりなる本体71の開口スリット71aをカラー、具体的には赤色の透光性シート72で覆い、この透光性シート72幅方向両側を金属製の押さえ板73によって押さえて本体71の開口スリット71aの両側にねじ74により止着し、押さえ板73間に透光性シート72が幅2mm程度で露出した発光性線指標部75としている。これに併せ、本体71の両端は本体71内にランプや発光ダイオードなど適宜な光源76を臨ませる照明ブロック77を接続して塞ぎ、各照明ブロック77外端に電源収納管78を本体1の軸線上で接続している。これによって、スイッチ79の操作で光源76を点灯させると、発光性線指標部75は内側から照明されて外部に向け赤色光を照射する。この照射光は赤色であることにより、緑色などに比べて広がり少なく前方に向け照射する。従って、夜間から早朝にかけての作業において軌陸車の台車側から視認されやすいし、広がりの少ない照射光により位置精度よく視認させられる。直線指標具21を軌条2、3間中心位置Oを位置出しして描画した図1に示す線13や点描14、15などに正しく位置合わせして設置するには、電源収納管72の軸線を合わせれば簡単にできるし、それには軸線位置表示部を電源収納管78の端部に適当な形態で設けておくこともできる。なお、直線指標具21は、長尺で持ち運びや取り扱いに不便なことから、途中にヒンジ連結部81を設けて非作業時は2つ折りにしておけるようにしている。2つ折り状態から直線状に伸ばすと印ろう嵌め部82の嵌り合いによって安定するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、軌条間の中間位置出しにおいて、簡単な位置出し具によって容易かつ迅速に計測し、計測した軌条間の中間位置を点描具にて点描し、また計測状態の位置出し具の移動を伴い軌条の長手方向に線描して、軌陸車の軌道への進入による移し変えのための旋回位置の指標に供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 計測バー
2、3 軌条
4、5 計測点
6 点描具
7 軌道面
8、9、11、12 当接部
13 線描
14、15 点描
31 チョーク
41 当接面
42、43 突っ張りバー
45、51 当接点
61 載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測バーの両端部に軌条の内側間または外側間に、内側または外側から当接する計測点を設け、これら計測点間の距離を、計測対象とする軌条の内側当接部間の最短距離または外側の当接部間の最短距離よりも大きく設定し、計測バーの計測点間の中点対応位置に軌道面への点描具を下向きに設けたことを特徴とする軌条間中心位置出し具。
【請求項2】
計測点は、平面視して前記中点を中心とする点対称な円弧状、湾曲状をなして軌条の内側または外側から当接する当接面がなしている請求項1に記載の軌条間中心位置出し具。
【請求項3】
計測バーの途中には、軌条との間で突っ張って、計測バーの軌条内側間での減傾限界位置または軌条外側間での増傾限界位置を維持する突っ張りバーを連結した請求項1、2のいずれか1項に記載の軌条間中心位置出し具。
【請求項4】
計測バーは、軌条の適所に載置して、計測点の軌条への当接高さを保持する載置部を有した請求項1〜3のいずれか1項に記載の軌条間中間位置出し具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−95172(P2011−95172A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251113(P2009−251113)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】