説明

軌道分岐部の異物除去装置

【課題】軌道分岐部の後方側のレール間において異物を除去することができるとともに、軌道分岐部の後方側のレール間へ容易に配置することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供する。
【解決手段】ストッパ部材13は、基本レール101及びトングレール102の一方に設けられて他方に当接することでこれらのレール間の間隔を規制し、軌道分岐部100において後方側に配置される。ノズル機構14は、ストッパ部材13の内部において区画されて空気源装置11と連通する中空部20と、ストッパ部材13に形成されるとともに中空部20と連通して圧縮空気を噴射するノズル孔(21a、21b)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本レールとこの基本レールに対して当接及び離間可能なトングレールとを有する軌道分岐部において設けられ、圧縮空気を噴射することで基本レールとトングレールとの間にある異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、降雪地方では、鉄道の軌道分岐部において、電熱式、熱風式、温水式等の融雪装置が用いられている。しかし、このような融雪装置によると、車両が軌道分岐部を通過する際にその振動によって落とされる落下雪氷を短時間で溶かすことが難しく、また、雪氷がバラスト(軌道において敷き詰められた砕石や砂利)上に落下した際の衝撃による飛石等を除去することはできない。そこで、圧縮空気を噴射することで軌道分岐部における基本レールとトングレールとの間に落下した異物を除去する異物除去装置が提案されている(特許文献1乃至特許文献6参照)。
【0003】
上記特許文献1乃至特許文献6に開示された異物除去装置においては、ノズルが設けられた配管ユニットの取り付け構成が異なっている。まず、特許文献1及び特許文献2においては、配管ユニットがレールに対してそのレールの腹部に設けた孔にボルトを挿通させて取り付けられる異物除去装置が開示されている。また、特許文献3においては、レールの底面に沿って配置される特殊な構造の挟持金具を用いるとともにレールストッパの取付ボルトを利用することで、配管ユニットがレールに対して取り付けられた異物除去装置が開示されている。また、特許文献4乃至特許文献6においては、配管ユニットをレールに固定する取り付け用の部材(ボルトやねじ等)が中空構造で設けられ、その内部が圧縮空気を配管ユニットに供給する供給通路として構成されている異物除去装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−240605号公報(第2−3頁、第1図、第3図)
【特許文献2】特開平7−54317号公報(第2−3頁、第1−2図)
【特許文献3】特開2000−144602号公報(第3頁、第1−7図)
【特許文献4】特開2000−144670号公報(第3頁、第1−2図、第5図)
【特許文献5】特開平7−54318号公報(第3頁、第1−2図)
【特許文献6】特開2001−131935号公報(第4頁、第2−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1乃至特許文献6に開示された異物除去装置は、いずれも、軌道分岐部における基本レールとトングレールとが当接可能な前方側にノズルが設けられている。即ち、これらの特許文献においては、軌道分岐部における前方側のレール間(基本レールとトングレールとの間)において異物を除去する異物除去装置の構成が開示されている。したがって、上記の特許文献1乃至特許文献6に開示された異物除去装置では、軌道分岐部における後方側(基本レールとトングレールとが当接可能な前方側とは反対側)において異物を除去することができない。また、上記の特許文献1乃至特許文献6に開示された異物除去装置を軌道分岐部の後方側のレール間での異物除去装置として適用しようとする場合、ノズルが設けられた配管ユニットを軌道分岐部の後方側のレール間に取り付ける必要がある。しかしながら、軌道分岐部における後方側のレール間においては、通常、前記基本レール及びトングレールのいずれか一方に設けられて他方に当接することで基本レールとトングレールとの間の間隔を規制するストッパが配置されている。このため、ストッパとの干渉が発生し、ノズルを後方側へ配置するように配管ユニットを取り付けることが極めて困難となってしまう。尚、特許文献3に開示の異物除去装置は、あくまでレールストッパの取付ボルトを配管ユニットの取付構成の一部として利用したものであり、かかる構成によっては、軌道分岐部の後方側のレール間の異物を除去する構成を実現することは不可能である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、軌道分岐部の後方側のレール間において異物を除去することができるとともに、軌道分岐部の後方側のレール間へ容易に配置することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、基本レールと当該基本レールに対して当接及び離間可能なトングレールとを有する軌道分岐部に対して設けられ、圧縮空気を噴射することで前記基本レールと前記トングレールとの間にある異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置であって、前記基本レールと前記トングレールとの間に配置され、前記基本レール及び前記トングレールのいずれか一方に設けられて他方に当接することで前記基本レールと前記トングレールとの間の間隔を規制するストッパ部材と、圧縮空気を噴射するノズル機構と、前記ノズル機構に圧縮空気を供給する空気源装置と、を備え、前記ストッパ部材は、前記軌道分岐部において、前記基本レールと前記トングレールとが当接可能な前方側とは反対側の後方側に配置され、前記ノズル機構は、前記ストッパ部材の内部において区画されて前記空気源装置と連通する中空部と、前記ストッパ部材に形成されるとともに前記中空部と連通して圧縮空気を噴射するノズル孔と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明によると、軌道分岐部における後方側のレール間(基本レールとトングレールとの間)に配置されるストッパ部材に設けられる中空部とノズル孔とによって、空気源装置から供給される圧縮空気を噴射するノズル機構が構成される。このため、ストッパ部材にスペース効率よくノズル機能を付加する構成により、軌道分岐部の後方側のレール間においてストッパ部材との干渉を発生させることなくノズル機構を容易に配置することができる。また、ストッパ部材にノズル機構を付加することにより、従来技術のようなノズルが設けられた配管ユニットをそもそも設ける必要がない構成を実現できる。そして、ストッパ部材に付加されたノズル機構により、軌道分岐部の後方側のレール間において圧縮空気を噴射して異物を除去することができる。
従って、本発明によると、軌道分岐部の後方側のレール間において異物を除去することができるとともに、軌道分岐部の後方側のレール間へ容易に配置することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【0009】
第2発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第1発明の軌道分岐部の異物除去装置において、前記ノズル孔として、後方側に向かって開口するように形成されている後方向きノズル孔が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、ノズル機構における後方向きノズル孔から後方に向かって圧縮空気が噴射される。このため、軌道分岐部の後方側のレール間に配置されたノズル機構において、後方に向かって圧縮空気を噴射して異物を除去することができる。これにより、軌道分岐部の後方側において除去された異物が前方側へ吹き飛ばされてしまうことが防止され、軌道分岐部の後方側において効率よく異物を除去することができる。
【0011】
第3発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第2発明の軌道分岐部の異物除去装置において、前記後方向きノズル孔は、後方側で且つ斜め下方に向かって開口するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、ノズル機構における後方向きノズル孔から後方の斜め下方に向かって圧縮空気が噴射される。このため、下方に向かって噴射された圧縮空気が軌道に対して跳ね返るように流動し、これに伴い、軌道に落下している異物が跳ね上げられるようにして除去されることになる。これにより、軌道分岐部の後方側において除去された異物が前方側へ吹き飛ばされてしまうことが防止されるとともに、軌道分岐部の後方側において、落下した異物を跳ね上げるようにして効率よく除去することができる。
【0013】
第4発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第2発明又は第3発明の軌道分岐部の異物除去装置において、前記後方向きノズル孔は、後方側で且つ前記基本レール及び前記トングレールの他方に斜めに向かって開口するように形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、ノズル機構における後方向きノズル孔から、基本レール及びトングレールのうちのノズル機構が設けられている一方のレールに対向する他方のレールに向かって斜めに、圧縮空気が噴射される。このため、ストッパ部材で規制される間隔まで接近する基本レールとトングレールとの間で、後方向きノズル孔から噴射される圧縮空気が他方のレールに対して跳ね返るように流動し、これに伴い、異物が他方のレールで跳ね返されるようにして後方に向かって吹き飛ばされて除去されることになる。これにより、軌道分岐部の後方側において除去された異物が前方側へ吹き飛ばされてしまうことが防止されるとともに、軌道分岐部の後方側において、基本レール及びトングレールのうちの一方のレールから他方のレールに対して異物を後方に向かって跳ね返させるようにして効率よく除去することができる。
【0015】
第5発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第1発明乃至第4発明のいずれかの軌道分岐部の異物除去装置において、前記ノズル機構は、前記空気源装置と連通するとともに前記中空部に連通する中空の中間連通部材を更に有していることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、ノズル孔に連通する中空部に空気源装置からの圧縮空気を供給する中間容積部分を形成する中間連通部材が更にノズル機構に設けられている。このため、ノズル孔に対して、その上流側から作用する圧縮空気の圧力がより安定して作用し易くなり、圧縮空気の噴射の際にノズル孔から噴射される圧縮空気の圧力が不規則に増減するような圧力変動が生じることが抑制される。また、中間連通部材が設けられることで、ノズル孔の上流での圧力損失をより低減することができる。従って、本発明の構成により、異物除去機能がより安定して発揮されることになる。
【0017】
第6発明に係る軌道分岐部の異物除去装置は、第5発明の異物除去装置において、前記中間連通部材は、前記基本レール及び前記トングレールにおける前記ストッパ部材が設けられる一方を貫通するように配置されていることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、基本レール及びトングレールにおけるストッパ部材が設けられる一方を貫通するように中間連通部材が配置されるため、ストッパ部材をレールに対して取り付けるための構成として、中間連通部材を利用することができる。このため、ノズル孔の上流側における中間容積部分を形成する中間連通部材をコンパクトにスペース効率よく配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、軌道分岐部の後方側のレール間において異物を除去することができるとともに、軌道分岐部の後方側のレール間へ容易に配置することができる、軌道分岐部の異物除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態に係る軌道分岐部の異物除去装置は、軌道分岐部において設けられて圧縮空気を噴射することで基本レールとトングレールとの間に落下した異物を除去する軌道分岐部の異物除去装置として広く適用できるものである。
【0021】
(軌道分岐部の構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る軌道分岐部の異物除去装置1(以下、単に「異物除去装置1」という)とこの異物除去装置1が設けられた軌道分岐部100とを示す平面図である。図1に示すように、この軌道分岐部100においては、一対の基本レール101、101、一対のトングレール102、102、転轍棒103を備えて構成される転轍機、まくらぎ104等が設置されている。一対の基本レール101、101は、所定の間隔を離間した状態で配設され、この一対の基本レール101、101間に、一対のトングレール102、102が配設されている。
【0022】
基本レール101及びトングレール102は、まくらぎ104上に床板やベアリング床板を介して配設されており、トングレール102はベアリング床板により移動可能に構成されている。これにより、各トングレール102は、各基本レール101に対して当接及び離間可能に設けられている。ここで、軌道分岐部100において基本レール101とトングレール102とが当接可能な側を前方側とし、軌道分岐部100におけるその反対側を後方側とする。図1では、軌道分岐部100における前方の方向を矢印Aで、後方の方向を矢印Bで示している。通常、軌道分岐部100に対して前方側から進入した車両が、軌道分岐部100において進行方向を規定され、軌道分岐部100の後方側へと走行していくことになる。
【0023】
また、図1に示すように、各トングレール102の前方側における端部同士は、転轍棒103によって一定間隔が維持された状態で連結されている。そして、図示しない制御装置からの指令に基づいて転轍棒103を備える転轍機が作動することにより、基本レール101に対してトングレール102が当接又は離間する方向に移動し、軌道分岐部100における走行レールの切り換え動作(ポイントの切り換え動作)が行われるようになっている。
【0024】
また、軌道分岐部100に配置されるまくらぎ104は、横まくらぎと縦まくらぎとが組み合わされて構成されるまくらぎ構造を備えている(図3及び図4参照、図1では縦まくらぎの図示を省略)。横まくらぎは、軌道(路盤上に配置されるレール、まくらぎ、道床などの構造物)と垂直な方向に配置され、縦まくらぎは、軌道に沿って配置されている。尚、本実施形態の異物除去装置1は、縦まくらぎ及び横まくらぎを備えるまくらぎ構造であっても、横まくらぎのみを備えるまくらぎ構造であっても、適用することができる。
【0025】
(異物除去装置の全体構成)
次に、本実施形態に係る異物除去装置1の構成について説明する。異物除去装置1は、上述した軌道分岐部100に設けられ、圧縮空気を噴射することで基本レール101とトングレール102との間に落下した雪や飛石などの異物を除去するために設置される。図1に示すように、異物除去装置1は、空気源装置11、空気配管12、ストッパ部材13、ノズル機構14等を備えて構成されている。空気源装置11は、軌道分岐部100における軌道の近傍に配置されている。一方、ストッパ部材13及びノズル機構14は、軌道分岐部における基本レール101とトングレール102との間、及びその近傍の領域において、基本レール101が途中から緩やかに湾曲している分岐線側(図1において空気源装置11が配置されている側)とその反対側で基本レール101が真っ直ぐに延びている基準線側(空気源装置11が配置される側とは反対側)とにそれぞれ配置されている。
【0026】
また、空気配管12は、空気源装置11とノズル機構14とを接続して空気源装置11からの圧縮空気をノズル機構14に供給する供給配管として設けられている。この空気配管12は、図1に示すように、分岐線側のノズル機構14と基準線側のノズル機構14とにそれぞれ接続するように、複数系統(2系統)設けられている。また、図1及び図1の一部拡大図である図3に示すように、空気配管12においては本管12aとこの本管12aから分岐する分岐管12bとが設けられ、各分岐管12bが各ノズル機構14に対して接続している。尚、ノズル機構14に接続する空気配管12は、一対の基本レール101間まで延びるように配置されるため、レールと干渉しないように、中途部分が適宜バラスト内に埋設されて配設される。また、後述するようにノズル機構14はトングレール102とともに変位するため、バラスト内に一部が埋設された本管12aに対するノズル機構14の変位を許容できるように、分岐管12bは可撓性を有するフレキシブルホースとして構成されている。
【0027】
(空気源装置の構成)
図2は、空気源装置11を示す空気回路図である。図1及び図2に示す空気源装置11は、ノズル機構14に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源として設けられており、コンプレッサ15、空気タンク16、電磁切換弁17a、17bなどを備えて構成されている。コンプレッサ15にて生成された圧縮空気は、空気タンク16へと貯留されるようになっている。空気タンク16には、電磁切換弁17a及び空気配管12を介して、基準線側の基本レール101及びトングレール102の間及びその近傍領域に配置されるノズル機構14が接続されている。同様に、空気タンク16には、電磁切換弁17b及び空気配管12を介して、分岐線側の基本レール101及びトングレール102の間及びその近傍領域に配置されるノズル機構14が接続されている。
【0028】
上述した空気源装置11において図示しない制御装置からの指令に基づいて電磁切換弁17a及び電磁切換弁17bがそれぞれ遮断位置(図2に示す状態)から連通位置に切り換えられることで、各電磁切換弁17a、17bの下流側に接続されたノズル機構14を介して圧縮空気が噴射されることになる。尚、本実施形態の空気源装置11はコンプレッサ15を備えて構成されているが、このコンプレッサ15が共有される状態で備えられているものであってもよい。例えば、空気源装置11のコンプレッサ15から、軌道分岐部100とは異なる軌道分岐部に対応する空気源装置でコンプレッサが設けられていない空気源装置の空気タンクにも圧縮空気が供給されるように構成されていてもよい。また、空気源装置11が、その逆の構成(空気源装置11にコンプレッサ15が設けられておらず、他の空気源装置のコンプレッサから圧縮空気が空気タンク16に供給される構成)を備えるものであってもよい。
【0029】
(ストッパ部材の構成)
図3は、基準線側に配置されたストッパ部材13とその近傍の領域について図1の一部を拡大して示す平面図であり、図4は、図3のC−C線矢視図である。尚、図4では、横まくらぎと縦まくらぎとが組み合わされて構成されるまくらぎ104について、断面を示す斜線は省略して図示している。図1、図3及び図4に示すように、ストッパ部材13は、基準線側及び分岐線側のそれぞれにおいて基本レール101とトングレール102との間に配置され、例えば鋼製の部材として形成されている。このストッパ部材13は、トングレール102において基本レール101に対向する側部に取り付けられており、トングレール102の長手方向に沿って配置されている。尚、本実施形態では、6つのストッパ部材13(13a、13b、13c、13d、13e、13f)が、トングレール102に対して直列に配置された構成を例示している。そして、ストッパ部材13は、軌道分岐部100において、後方側に配置されている。
【0030】
図5は、図3のD−D線矢視断面図である。尚、図5において、空気配管12については部分断面図として図示している。また、図7は、ストッパ部材13bの平面図(図7(a))、正面図(図7(b))、及び図中矢印E線方向から見た側面図(図7(c))を示したものである。また、図8は、ストッパ部材13eの平面図(図8(a))、正面図(図8(b))、及び図中矢印F線方向から見た側面図(図8(c))を示したものである。
【0031】
図3乃至図5、図8、及び図9に示すように、ストッパ部材13は、当接部18と取付部19とを備えて構成されている。当接部18は、角柱状に形成されており、取付部19に対して、例えば溶接により接合されている。この当接部18は、トングレール102とともに基本レール101に向かって変位した際にその先端側の端部(取付部19に対して接合される側とは反対側の端部)が基本レール101の側部に対して当接するように、配設されている。取付部19は、細長い平板状に形成されている。そして、取付部19は、長手方向の両端部分においてボルト孔19aが設けられており、このボルト孔19aに挿通されるボルトを介してトングレール102に対して取り付けられる。このように、ストッパ部材13は、トングレール102に設けられて基本レール101に当接するように配設されており、軌道分岐部100の後方側において基本レール101とトングレール102との間の間隔を規制するように構成されている。
【0032】
(ノズル機構の構成)
図1及び図3に示すように、圧縮空気を噴射するノズル機構14は、基準線側及び分岐線側のそれぞれにおいて基本レール101とトングレール102との間及びその近傍の領域に配置されている。このノズル機構14は、トングレール102の長手方向に沿って、ストッパ部材13に対応して配置されている。尚、本実施形態では、6つのノズル機構14(14a、14b、14c、14d、14e、14f)が、トングレール102に対して直列に配置された構成を例示している。そして、ノズル機構14は、軌道分岐部100において、後方側に配置されている。
【0033】
図5、図7及び図8に例示するように、ノズル機構14は、ストッパ部材13に形成される中空部20及びノズル孔(レール向きノズル孔21a、後方向きノズル孔21b)、中間連通部材22を備えて構成されている。中空部20は、ストッパ部材13の当接部18及び取付部19のそれぞれの内部において区画されて圧縮空気の経路を構成する管状空間領域として設けられており、中間連通部材22及び空気配管12を介して空気源装置11と連通するように配設されている。
【0034】
図5、図7及び図8に例示するように、レール向きノズル孔21a及び後方向きノズル孔21bは、ストッパ部材13に形成されるとともに中空部20と連通して圧縮空気を噴射するノズル孔として設けられている。これらのノズル孔(21a、21b)は、ストッパ部材13の当接部18において中空部20と外部とを連通する貫通孔として形成されている。また、レール向きノズル孔21aは、当接部18における先端側(突出する側)の端部に形成されており、ストッパ部材13が設けられているトングレール102に対向する基本レール101に向かって開口するよう形成されている。
【0035】
また、後方向きノズル孔21bは、複数設けられており、当接部18が突出する方向に沿って直列に並ぶようにこの当接部18に対して開口形成されている。尚、図7及び図8に示すノズル機構(14b、14e)では、後方向きノズル孔21bが3つ形成されている場合を例示している。この後方向きノズル孔21bは、軌道分岐部100における後方側に向かって開口するように形成されている。また、後方向きノズル孔21bは、図7及び図8によく示すように、後方側で且つ斜め下方に向かって開口するとともに、ノズル機構14が設けられているトングレール102に対向する基本レール101に斜めに向かって開口するように形成されている。尚、後方向きノズル孔21bが水平方向に対して斜め下方に向かって開口する角度、及び後方向きノズル孔21bがトングレール102の長手方向に対して基本レール101に斜めに向かって開口する角度としては、例えば5〜10度程度に設定することができるが、ノズル機構14が設けられる箇所での条件に応じて、適宜選択して設定することができる。また、1つのノズル機構14における後方向きノズル孔21bの配置数や配置間隔についても、ノズル機構14が設けられる箇所での条件に応じて、適宜選択して設定することができる。
【0036】
図5に例示するように、中間連通部材22は、中空部20に連通するとともに空気配管12を介して空気源装置11と連通する中空の管状部材として形成されている。そして、中間連通部材22は、ストッパ部材13が設けられるトングレール102をレール長手方向と垂直な方向にその側部において貫通するように配置されている。この中間連通部材22は、一端側がストッパ部材13の取付部19に対して、他端側が空気配管12に対して、例えば螺合により固定して取り付けられている。
【0037】
(異物除去装置の作動)
上述した異物除去装置1は、図示しない制御装置が、例えば、異物の落下検知センサ(図示せず)や降雪センサ(図示せず)等の各種センサでの検知結果、或いは転轍機の動作信号(ポイントの切り換え信号)等の各種機器の動作指令信号などに基づいて、電磁切換弁17a又は電磁切換弁17bの切り換え指令が発せられることで作動して、異物除去動作が行われることになる。また、ポイント切り換え信号に伴ってトングレール102が基本レール101に対して変位することで、トングレール102の前方側においてはその端部が基本レール101に対して当接又は離間し、トングレール102の後方側においてはストッパ部材13が基本レール101に対して当接及び離間する。図6は、トングレール102の変位に伴ってストッパ部材13aが基本レール101に対して当接した状態を示す断面図であって、図5に対応する図である。この図6に示すように、ストッパ部材13は、その当接部18の先端側の端部が基本レール101に当接することで、基本レール101とトングレール102との間の間隔を規制するように構成されている。
【0038】
尚、車両運行中の時間帯等の異物除去動作が必要となる可能性のある時間帯においては、図2に示す空気源装置11において、コンプレッサ15から供給される圧縮空気は、空気タンク16に貯留されている。そして、前述のように、制御装置からの指令に基づいて各電磁切換弁17a、17bが図2に示す遮断位置から連通位置に切り換えられることで、空気タンク16に貯留された圧縮空気が、各電磁切換弁17a、17bを介して各空気配管12へと流動することになる。
【0039】
空気配管12へと流動した圧縮空気は、本管12aから分岐管12bを経てノズル機構14へと供給される(図3参照)。そして、この圧縮空気は、ノズル機構14において、中間連通部材22の内部を通過してストッパ部材13に設けられた中空部20へと流動し、さらにレール向きノズル孔21a及び後方向きノズル孔21bから噴射される(図5参照)。このとき、レール向きノズル孔21aからは基本レール101に向かって圧縮空気が噴射され、後方向きノズル孔21bからは後方に向かって且つ斜め下方で更に基本レール101に斜めに向かって圧縮空気が噴射される。これによって、軌道分岐部100の後方側における基本レール101とトングレール102との間に落下した異物が、ノズル機構14から噴射される圧縮空気によって吹き飛ばされて除去されることになる。
【0040】
(異物除去装置の効果)
以上説明した異物除去装置1によると、軌道分岐部100における後方側のレール間(基本レール101とトングレール102との間)に配置されるストッパ部材13に設けられる中空部20とノズル孔(21a、21b)とによって、空気源装置11から供給される圧縮空気を噴射するノズル機構14が構成される。このため、ストッパ部材13にスペース効率よくノズル機能を付加する構成により、軌道分岐部100の後方側のレール間においてストッパ部材13との干渉を発生させることなくノズル機構14を容易に配置することができる。また、ストッパ部材13にノズル機構14を付加することにより、従来技術のようなノズルが設けられた配管ユニットをそもそも設ける必要がない構成を実現できる。そして、ストッパ部材13に付加されたノズル機構14により、軌道分岐部100の後方側のレール間において圧縮空気を噴射して異物を除去することができる。
【0041】
従って、本実施形態によると、軌道分岐部100の後方側のレール間において異物を除去することができるとともに、軌道分岐部100の後方側のレール間へ容易に配置することができる、軌道分岐部100の異物除去装置1を提供することができる。
【0042】
また、異物除去装置1によると、ノズル機構14における後方向きノズル孔21bから後方に向かって圧縮空気が噴射される。このため、軌道分岐部100の後方側のレール間に配置されたノズル機構14において、後方に向かって圧縮空気を噴射して異物を除去することができる。これにより、軌道分岐部100の後方側において除去された異物が前方側へ吹き飛ばされてしまうことが防止され、軌道分岐部100の後方側において効率よく異物を除去することができる。
【0043】
また、異物除去装置1によると、後方向きノズル孔21bから後方の斜め下方に向かって圧縮空気が噴射される。このため、下方に向かって噴射された圧縮空気が軌道に対して跳ね返るように流動し、これに伴い、軌道に落下している異物が跳ね上げられるようにして除去されることになる。これにより、軌道分岐部100の後方側において除去された異物が前方側へ吹き飛ばされてしまうことが防止されるとともに、軌道分岐部100の後方側において、落下した異物を跳ね上げるようにして効率よく除去することができる。
【0044】
また、異物除去装置1によると、後方向きノズル孔21bから、ノズル機構14が設けられているトングレール102に対向する基本レール101に向かって斜めに、圧縮空気が噴射される。このため、ストッパ部材13で規制される間隔まで接近する基本レール101とトングレール102との間で、後方向きノズル孔21bから噴射される圧縮空気が基本レール101に対して跳ね返るように流動し、これに伴い、異物が基本レール101で跳ね返されるようにして後方に向かって吹き飛ばされて除去されることになる。これにより、軌道分岐部100の後方側において除去された異物が前方側へ吹き飛ばされてしまうことが防止されるとともに、軌道分岐部100の後方側において、トングレール102から基本レール101に対して異物を後方に向かって跳ね返させるようにして効率よく除去することができる。
【0045】
また、異物除去装置1によると、ノズル孔(21a、21b)に連通する中空部20に空気源装置11からの圧縮空気を供給する中間容積部分を形成する中間連通部材22が更にノズル機構14に設けられている。このため、ノズル孔(21a、21b)に対して、その上流側から作用する圧縮空気の圧力がより安定して作用し易くなり、圧縮空気の噴射の際にノズル孔(21a、21b)から噴射される圧縮空気の圧力が不規則に増減するような圧力変動が生じることが抑制される。また、中間連通部材22が設けられることで、ノズル孔(21a、21b)の上流での圧力損失をより低減することができる。従って、異物除去装置1において、異物除去機能がより安定して発揮されることになる。
【0046】
また、異物除去装置1によると、ストッパ部材13が設けられるトングレール102を貫通するように中間連通部材22が配置されるため、ストッパ部材13をトングレール102に対して取り付けるための構成として、中間連通部材22を利用することができる。このため、ノズル孔(21a、21b)の上流側における中間容積部分を形成する中間連通部材22をコンパクトにスペース効率よく配置することができる。
【0047】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例を実施することができる。
【0048】
(1)本実施形態では、軌道分岐部の後方側にのみ異物除去装置が設けられている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、軌道分岐部の後方側に設けられる本実施形態の異物除去装置に加えて、軌道分岐部の前方側にも従来から用いられているような形態の異物除去装置がさらに配置されていてもよい。
【0049】
(2)本実施形態では、ストッパ部材がトングレールに対して取り付けられている形態を例示したが、この通りでなくてもよく、基本レールに対して取り付けられている形態であってもよい。
【0050】
(3)本実施形態では、ノズル機構におけるノズル孔として、後方向きノズル孔とレール向きノズル孔とが設けられている形態を例にとって説明したが、ノズル孔の形態はこの通りでなくてもよい。また、軌道分岐部の後方側に配置されたノズル機構のうち最も前方側に配置されているノズル機構においては、後方向きノズル孔等に加えて、前方側に開口形成されたノズル孔もさらに設けられていてもよい。この場合、軌道分岐部における前方側と後方側との間の領域に落下した異物を上記の前方側に開口したノズル孔から噴射された圧縮空気で前方側に吹き飛ばし、軌道分岐部の前方側に配置された異物除去装置によってさらに前方側へと吹き飛ばして除去する構成を実現することができる。
【0051】
(4)本実施形態では、ほぼ同一の直径となるように各ノズル孔が開口形成されている形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、図9に示す変形例のように、各ノズル孔に至るまでの中空部における圧力損失を考慮して異なった開口面積のノズル孔が設けられる形態のノズル機構であってもよい。
【0052】
図9は、変形例に係るノズル機構23をストッパ部材13とともに示す平面図(図9(a))及び側面図(図9(b))を示したものである。図9(a)は図8(a)に、図9(b)は図8(c)に対応した状態をそれぞれ図示している。尚、図9において、本実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、ノズル機構23は、ストッパ部材13に形成される中空部20及び後方向きノズル孔24を備えて構成されている。しかし、本実施形態とは異なり、当接部18の突出方向に沿って直列に複数配置された後方向きノズル孔24は、それぞれの開口面積が当接部18の突出方向の先端側ほど大きくなるように(当接部18の取付部19へ取り付けられる根元側ほど小さくなるように)、開口形成されている。当接部18における先端側ほど中空部20内を通過する圧縮空気に生じる圧力損失は大きくなり易い。このため、上記のように、当接部18の先端側の後方向きノズル孔24は開口直径を大きくして開口面積を大きくし、当接部18の根元側の後方向きノズル孔24は開口直径を小さくして開口面積を小さくすることで、各後方向きノズル孔24から噴射される圧縮空気の流量をより均一な状態に近づけて噴射させる構成を実現できる。
【0054】
(5)本実施形態では、レールを貫通するように配置された中間連通部材を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、中間連通部材は、両端部分が閉じられるとともにレールに沿った長手方向を有する長方形断面の細長い管状部材として形成されて、複数のストッパ部材の中空部に対してストッパ部材の上部や下部で内部が連通するヘッダーとして設けられていてもよい。この場合、この中間連通部材は、レールや車両と干渉することなく設備配置が可能な領域である建築限界までの範囲で配設される必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、軌道分岐部に設けられ、圧縮空気を噴射することで基本レールとトングレールとの間に落下した異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軌道分岐部の異物除去装置とこの異物除去装置が設けられた軌道分岐部とを示す平面図である。
【図2】図1に示す異物除去装置における空気源装置を示す空気回路図である。
【図3】図1の一部拡大図である。
【図4】図3のC−C線矢視図である。
【図5】図3のD−D線矢視断面図である。
【図6】図5に示すトングレールが変位した状態を示す断面図である。
【図7】図3に示すストッパ部材の平面図、正面図、及び側面図である。
【図8】図3に示すストッパ部材の平面図、正面図、及び側面図である。
【図9】ノズル機構の変形例を示す平面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 軌道分岐部の異物除去装置
11 空気源装置
13、13a〜13f ストッパ部材
14、14a〜14f ノズル機構
20 中空部
21a、21b ノズル孔
100 軌道分岐部
101 基本レール
102 トングレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本レールと当該基本レールに対して当接及び離間可能なトングレールとを有する軌道分岐部に対して設けられ、圧縮空気を噴射することで前記基本レールと前記トングレールとの間にある異物を除去する、軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記基本レールと前記トングレールとの間に配置され、前記基本レール及び前記トングレールのいずれか一方に設けられて他方に当接することで前記基本レールと前記トングレールとの間の間隔を規制するストッパ部材と、
圧縮空気を噴射するノズル機構と、
前記ノズル機構に圧縮空気を供給する空気源装置と、
を備え、
前記ストッパ部材は、前記軌道分岐部において、前記基本レールと前記トングレールとが当接可能な前方側とは反対側の後方側に配置され、
前記ノズル機構は、前記ストッパ部材の内部において区画されて前記空気源装置と連通する中空部と、前記ストッパ部材に形成されるとともに前記中空部と連通して圧縮空気を噴射するノズル孔と、を有することを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記ノズル孔として、後方側に向かって開口するように形成されている後方向きノズル孔が設けられていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記後方向きノズル孔は、後方側で且つ斜め下方に向かって開口するように形成されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記後方向きノズル孔は、後方側で且つ前記基本レール及び前記トングレールの他方に斜めに向かって開口するように形成されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記ノズル機構は、前記空気源装置と連通するとともに前記中空部に連通する中空の中間連通部材を更に有していることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。
【請求項6】
請求項5に記載の軌道分岐部の異物除去装置であって、
前記中間連通部材は、前記基本レール及び前記トングレールにおける前記ストッパ部材が設けられる一方を貫通するように配置されていることを特徴とする、軌道分岐部の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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