説明

軌道舗装構造、及び軌道近傍の舗装方法

【課題】現場条件に適応し易くPC鋼棒や支持金具等の施工が容易な軌道舗装構造、及び軌道近傍の舗装方法を提供する。
【解決手段】ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔41A等を有し長手方向軸がレールR4の長手方向と平行になりかつレール300の頭部又は腹部の付近に配置される詰めゴム部材40Aと、レール収容凹部121bの中に設置されるPC鋼棒支持金具45A等と、レールクリップ部材46A等を備え、曲面と凹曲面との摺動により、PC鋼棒の高さ調整を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の近傍に舗装部材が設置され道路の路面を構成する軌道舗装構造、及び軌道の近傍に舗装部材を設置することにより道路の路面を構成する軌道近傍の舗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路と道路が平面交差する踏切道においては、歩行者や自動車等の交通の用に供するため、舗装を行っていた。例としては、図示はしていないが、木材又は石材等からなる敷材を2本のレール(軌条)の内側及び外側に敷設する踏切道が挙げられる。この敷材舗装の場合には、2本のレールの内側と敷材との間にガードレールが敷設されており、このガードレールにより、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過できるために確保すべき空間である「フランジウェイ」が形成されていた。
【0003】
また、近年、道路幅員が大きく道路交通量の多い踏切道等においては、図10(A)及び図10(B)に示すように、踏切箇所のまくらぎを取り外し、そのかわりとして鉄筋コンクリート(RC)やプレストレストコンクリート(PC)等からなる板状の連接軌道板121を用い、この連接軌道板121の上面に設けられた2つのレール収容凹部121aと121bの内部に、それぞれ左右のレール300、300を収容し、取付ボルト131や136、及びナット130や135によって締結・支持する「連接軌道」と呼ばれる踏切舗装構造が用いられている。図10(A)における符号122、123は、鉄筋コンクリート(RC)やプレストレストコンクリート(PC)等からなる板状の舗装ブロックである。図10(A)において、符号F9及びF10は、フランジウェイを示している。
【0004】
また、道路幅員が大きく道路交通量の多い踏切道等においては、図11(A)及び図10(B)に示すように、踏切箇所のまくらぎを取り外さずに、鉄筋コンクリート(RC)やプレストレストコンクリート(PC)等からなる板状の踏切舗装板(内軌側踏切舗装板1、外軌側踏切舗装板2及び3)を用い、この踏切舗装板201、202、及び203を、踏切箇所の軌道の内側及び外側のまくらぎTの上面に取り付けることにより、踏切箇所の舗装を行う踏切舗装構造(以下、「総研形舗装板式踏切舗装構造」という。)も知られている。
【0005】
この総研形舗装板式踏切舗装構造においては、図11(B)に示すように、レール(例えば300)を下方から支持する連結板207と取付ボルト291及び292により、各踏切舗装板(例えば、内軌側踏切舗装板201と外軌側踏切舗装板202)が軌道に固定される。図11(A)において、符号F11及びF12は、フランジウェイを示している。
【0006】
上記した従来の総研形舗装板式踏切舗装構造においては、レールの頭部又は腹部の付近に、レールの長手方向と平行になるように、ゴムシュート284が設置されている。このゴムシュート284は、断面が略「K」状で梁状の部材であり、その長手方向がレールの長手方向と平行となるように配置される。
【0007】
これらのゴムシュート284がレール300の近傍に配置される従来の理由の一つは、降雪地帯において、フランジウェイF11内に雪が溜まってしまい列車等が「乗り上がり脱線」を起こすことを防止するためであった。また、近年、幼児が、踏切内のレールの周辺のレール収容凹部などに足を挟まれ列車に接触して死亡する事故が発生し、このような人身事故を防止するため、レールの周囲には、フランジウェイ以外の凹部や間隙を残さないようにするべく、これらの間詰め用ゴムシュート類が踏切箇所に全面的に使用されるようになってきた。これらのゴムシュートは、天然ゴム、人造ゴムを含むゴム材料により作製されている。
【0008】
レール300の側方の間隙を充填するための部材の材料としては、ゴム材料のほかにも、金属材料、合成樹脂材料、あるいは木材等も考えられる。しかし、レールと接触することから電気絶縁性が要求されること、狭い間隙へはめ込む際に弾性変形が利用できること、雪や氷が付着し難いこと、付着した雪氷等を打撃やそれに伴う弾性変形等により容易に割砕することができること、等の理由から、ゴム材料が用いられている。
【0009】
しかしながら、上記した従来のゴムシュート284においては、剛性が低く容易に変形するため、土砂等がゴムシュートと連接軌道板や踏切舗装板との間から下方に流入し溜まりやすい、という問題があった。また、特に、総研形舗装板式踏切舗装構造においては、降り積もった雪が車輪のフランジで圧縮されて氷状となった場合、上方のフランジからの押圧力により、ゴムシュート284が転倒してしまう、という問題もあった。
【0010】
これに対し、出願人らは、ゴムシュートをPC鋼棒で支持し、PC鋼棒の両端や中間部を支持する金具を連接軌道のレール締結装置の締結ボルトとナットを利用して取り付ける構造及び方法を提案した(特許文献1を参照)。
【0011】
しかしながら、この構造及び方法では、現場での種々の条件や誤差により、支持金具やPC鋼棒を精度良く設置することは、困難が伴うことが多かった。そこで、さらに、現場での施工性の改良が要請されていた。
【特許文献1】特開2003−268709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、現場条件に適応し易くPC鋼棒や支持金具等の施工が容易な軌道舗装構造、及び軌道近傍の舗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る軌道舗装構造は、
軌道の近傍に舗装部材が設置され道路の路面を構成する軌道舗装構造であって、
ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔を有し、前記略梁状体の長手方向軸がレールの長手方向と平行になるようにして前記レールの頭部又は腹部の付近に配置される緩衝部材と、
前記緩衝部材の挿通孔に挿通され前記緩衝部材を保持する棒状保持部材と、
頂面が上に凸な円筒面状に形成されるとともに前記軌道舗装構造のいずれかの箇所に設置可能に構成される第1支持部材と、前記第1支持部材の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能な凹曲面を下面として有するとともに前記棒状保持部材のいずれかの部分を支持する凹部を有する第2支持部材と、前記第1支持部材の頂面と第2支持部材の下面との間に介接可能な略曲面状の薄板である調整部材を有する棒状保持部材支持手段を備え、
前記棒状保持部材支持手段は、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の摺動回転と、前記調整部材の厚み及び個数により、前記第2支持部材の高さ位置を調整可能であること
を特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る軌道舗装構造は、
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材をその長手方向の端部で他の棒状保持部材に継ぐため、ゴム系材料又は合成樹脂系材料からなるブロック状の部材であって前記棒状保持部材の端部を両方の開口から挿入可能な貫通孔を有する保持部材接合手段をさらに備えること
を特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る軌道舗装構造は、
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記舗装部材は、連接軌道板であること
を特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4に係る軌道舗装構造は、
請求項3記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材支持手段は、前記連接軌道板のいずれかの箇所により支持されること
を特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5に係る軌道舗装構造は、
請求項4記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材支持手段は、前記連接軌道板に設けられたレール収容凹部内に設置されるタイプレートにより支持されること
を特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6に係る軌道舗装構造は、
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記舗装部材は、舗装板であること
を特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7に係る軌道舗装構造は、
請求項6記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材支持手段は、前記舗装板のいずれかの箇所により支持されること
を特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項8に係る軌道舗装構造は、
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記緩衝部材は、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過し得る空間であるフランジウェイを上方に確保するように取り付けられること
を特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項9に係る軌道舗装構造は、
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記緩衝部材は、前記レールの付近の空間のうち、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過し得る空間であるフランジウェイとは前記レールに関して反対側となる空間を閉塞するように取り付けられること
を特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項10に係る軌道近傍の舗装方法は、
軌道の近傍に舗装部材を設置することにより道路の路面を構成する軌道近傍の舗装方法であって、
ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔を有し、前記略梁状体の長手方向軸がレールの長手方向と平行になるようにして前記レールの頭部又は腹部の付近に配置される緩衝部材を用い、
棒状保持部材支持手段を、頂面が上に凸な円筒面状に形成される第1支持部材と、前記第1支持部材の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能な凹曲面を下面として有するとともに前記棒状保持部材のいずれかの部分を支持する凹部を有する第2支持部材と、前記第1支持部材の頂面と第2支持部材の下面との間に介接可能な略曲面状の薄板である調整部材を有するように構成しておき、前記軌道舗装構造のいずれかの箇所に前記棒状保持部材支持手段の第1支持部材を設置し、
棒状保持部材を前記緩衝部材の挿通孔に挿通して前記緩衝部材を保持させ、前記棒状保持部材の第2支持部材を前記第1支持部材に支持させ、
かつ前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の摺動回転と、前記調整部材の厚み及び個数により、前記第2支持部材の高さ位置を調整可能としたこと
を特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項11に係る軌道近傍の舗装方法は、
請求項10記載の軌道近傍の舗装方法において、
前記緩衝部材は、前記レールの付近の空間のうち、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過し得る空間であるフランジウェイを上方に確保するように、位置決め用治具により容認される第1設置位置範囲内となるように前記フランジウェイ側に取り付けられるとともに、前記フランジウェイとは前記レールに関して反対の側である逆フランジウェイ側については、前記位置決め用治具により容認される第2設置位置範囲内となるように前記逆フランジウェイ側の空間を閉塞するように取り付けられること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る軌道舗装構造、及び軌道近傍の舗装方法は、軌道の近傍に舗装部材が設置され道路の路面を構成する軌道舗装構造であって、ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔を有し、略梁状体の長手方向軸がレールの長手方向と平行になるようにしてレールの頭部又は腹部の付近に配置される緩衝部材と、緩衝部材の挿通孔に挿通され前記緩衝部材を保持する棒状保持部材と、頂面が上に凸な円筒面状に形成されるとともに軌道舗装構造のいずれかの箇所に設置可能に構成される第1支持部材と、第1支持部材の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能な凹曲面を下面として有するとともに棒状保持部材のいずれかの部分を支持する凹部を有する第2支持部材と、第1支持部材の頂面と第2支持部材の下面との間に介接可能な略曲面状の薄板である調整部材を有する棒状保持部材支持手段を備えるようにしたので、棒状保持部材支持手段は、第2支持部材に対する前記第1支持部材の摺動回転と、前記調整部材の厚み及び個数により、第2支持部材の高さ位置を調整可能である、という効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に説明する実施例は、軌道の近傍に舗装部材が設置され道路の路面を構成する軌道舗装構造であって、ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔を有し、略梁状体の長手方向軸がレールの長手方向と平行になるようにしてレールの頭部又は腹部の付近に配置される緩衝部材と、緩衝部材の挿通孔に挿通され前記緩衝部材を保持する棒状保持部材と、頂面が上に凸な円筒面状に形成されるとともに軌道舗装構造のいずれかの箇所に設置可能に構成される第1支持部材と、第1支持部材の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能な凹曲面を下面として有するとともに棒状保持部材のいずれかの部分を支持する凹部を有する第2支持部材と、第1支持部材の頂面と第2支持部材の下面との間に介接可能な略曲面状の薄板である調整部材を有する棒状保持部材支持手段を備えるようにしたので、棒状保持部材支持手段は、第2支持部材に対する前記第1支持部材の摺動回転と、前記調整部材の厚み及び個数により、第2支持部材の高さ位置を調整可能であり、本発明を実現するための構成として最良の形態である。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の第1実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造における詰めゴム部材の配置状態を示す横断面図である。また、図2は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造におけるPC鋼棒中間支持金具とレールクリップ部材等の配置状態を示す横断面図である。また、図3は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるPC鋼棒中間支持金具の一例の構成を示す図である。また、図4は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるレールクリップ部材の構成を示す図である。また、図5は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるPC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材の配置状態を示す図である。また、図6は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるPC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材の一例の構成を示す図である。また、図7は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具の設置状態を示す図である。また、図8は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具のうちレール当接部材の構成を示す図である。また、図9は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具のうち金具当接部材の構成を示す図である。
【0027】
次に、緩衝部材である詰めゴム部材の連接軌道板への取り付け及び支持について、図を参照しつつ、詳細に説明する。
【0028】
まず、図1及び2に示すように、レール収容凹部121b内にタイプレートパッド127を敷設する。次に、タイプレート125を設置する。次に、レールパッド126を敷設する。その上に、レール300を設置する。
【0029】
次に、図2に示すように、第1支持部材であるレールクリップ部材46Aを、レール300の底板上面を押さえるようにして設置する。その状態で、第2支持部材であるPC鋼棒中間支持金具44A又は45Aを取り付ける。以下、PC鋼棒中間支持金具45Aを例にとって説明を行う。PC鋼棒中間支持金具44Aの場合も直立部44A2の高さがPC鋼棒中間支持金具45Aよりも低いだけで、その他の構成はPC鋼棒中間支持金具45Aの場合とまったく同様である。
【0030】
レールクリップ部材46Aを、レール300の底板上面を押さえるようにして設置したのち、その状態で、PC鋼棒中間支持金具45Aの底板部45A1(図3参照)を、レールクリップ部材46Aの上面の上に配置し、底板部45A1に設けられたボルト穴45A5の下方からT型ボルト49Aの軸部を挿通させる(図5参照)。T型ボルト49Aの下端は、略「T」字状となっており、タイプレート125の一部に設けられた凹部(図5参照)によって係止される。その後、竹の子状バネ50Aを介してナット51Aを締結することにより、PC鋼棒支持金具45Aが、レールクリップ部材46Aに取り付けられるとともに、レールクリップ部材46Aが、レール300をタイプレート125に締結する。
【0031】
また、タイプレート125は、図10(B)に示す取付ボルト136と、座金133と、コイルバネ134と、ナット135により連接軌道板121に固定される。この場合、取付ボルト136の図における下端は、図示はしていないが、略「T」字状となっており、連接軌道板121のレール収容凹部121bの底部に設けられた凹部(図示せず)によって係止されるようになっている。
【0032】
本実施例の特徴は、レールクリップ部材46Aの基盤部46A1の頂面が、上に凸な円筒面状に形成されており、かつ、支持されるPC鋼棒支持金具45Aの底板部45A1の下面45A4が、上に凸な円筒凹曲面状に形成されている点にある。このような構成により、PC鋼棒支持金具45Aの底板部45A1の下面45A4は、レールクリップ部材46Aの基盤部46A1の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能となっており、摺動しつつ回転させることにより、PC鋼棒の高さを適宜に調整可能となっている。また、レールクリップ部材46Aの基盤部46A1の頂面と、PC鋼棒支持金具45Aの底板部45A1の下面45A4との間には、調整部材である高さ調整板47A1及び47A2が挟み込まれている。この高さ調整板47A1及び47A2のいずれか1枚又は両者を用いること(個数とその厚み)によっても、PC鋼棒の高さの調整が可能となっている。
【0033】
次に、上記のようにして取り付けられた2つのPC鋼棒支持金具45Aの中間に、緩衝部材である詰めゴム部材40Aを入れる。この状態で、PC鋼棒支持金具45Aの底板部45A1から略垂直に立設された直立部45A2に設けられているPC鋼棒嵌合凹部45A3と、詰めゴム部材40Aに設けられている挿通孔41A及び42A(図1参照)に、それぞれ、棒状保持部材であるPC鋼棒43Aを挿通して、2つのPC鋼棒支持金具45Aにより支持させることができる。
【0034】
また、PC鋼棒43Aの両端部には、図5及び図6に示す保持部材接合手段であるPC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材48Aを配置し、PC鋼棒43Aを、その長手方向の端部で継ぐことができる。PC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材48Aは、ゴム系材料又は合成樹脂系材料からなるブロック状の部材であって、PC鋼棒43Aの端部を両方の開口から挿入可能な貫通孔48A2及び48A3を有している。
【0035】
また、上記のようなPC鋼棒支持金具44A、45Aによって詰めゴム部材40Aが、その長手方向軸がレール300の長手方向と平行になるようにして、レール300の頭部又は腹部の付近の位置となるように取り付けられる。図1に示す状態では、フランジウェイF10が確保されている。
【0036】
緩衝部材である詰めゴム部材40Aは、ゴム系材料からなり、略長方形断面の梁状体に形成され、2つの挿通孔41A及び42Aを有している。上記したゴム系材料は、天然ゴムと人造ゴムを含むほか、天然ゴム又は人造ゴムを母材(マトリクス)とし、その中に補強部材を混入させ分散配置させて成型した複合材料等をも含む概念の材料である。
【0037】
上記のような構成により、第1実施例の連接軌道においては、詰めゴム部材40AがPC鋼棒43Aで取り付けられるため、その剛性が高く、変形しにくい。このため、土砂等がゴムシュートと連接軌道板の間から下方に流入することはほとんどない。また、PC鋼棒支持金具45Aの底板部45A1の下面45A4は、レールクリップ部材46Aの基盤部46A1の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能となっており、摺動しつつ回転させることにより、PC鋼棒の高さを適宜に調整可能となっている。
【0038】
上記した第1実施例において、連接軌道板121は、特許請求の範囲における舗装部材に相当している。また、詰めゴム部材40Aは、特許請求の範囲における緩衝部材に相当している。また、PC鋼棒支持金具44A、45Aは、特許請求の範囲における棒状保持部材支持手段に相当している。また、PC鋼棒43Aは、特許請求の範囲における棒状保持部材に相当している。
【0039】
図7〜9は、本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具55Aの構成と使用方法を説明するための図である。
【0040】
金具高さ調整治具55Aは、レール300の頂面と連接軌道板121の両方に当接可能な部分を有するレール当接部材56Aと、軌間内用金具当接部材57Aを有している。レール当接部材56Aには略中央に開口部56A4が形成され、この開口部56A4に、軌間内用金具当接部材56Aが挿通可能となっている。また、軌間内用金具当接部材56Aの下部の溝の部分が、PC鋼棒支持金具44A、45Aの頂部に当接した場合、設定値通りにPC鋼棒支持金具44A、45Aが配置されている場合には、軌間内用金具当接部材56Aの上端は、開口部56A4から上方に突出することはない。しかし、何らかの誤差等で、PC鋼棒支持金具44A、45Aの配置高さが高すぎる場合には、軌間内用金具当接部材56Aの上端は、開口部56A4からその分だけ上方に突出する。これにより、現場施工者は、PC鋼棒支持金具44A、45Aの配置高さを容易かつ直感的に把握することができ、施工性が大幅に向上する。すなわち、この位置決め方法によれば、緩衝部材である詰めゴム部材40Aは、レール300の付近の空間のうち、鉄道車両の車輪WのフランジW1が支障無く通過し得る空間であるフランジウェイを上方に確保するように、位置決め用治具である金具高さ調整治具55Aにより容認される第1設置位置範囲内となるようにフランジウェイ側に取り付けられるとともに、フランジウェイとはレール300に関して反対の側である逆フランジウェイ側については、位置決め用治具である金具高さ調整治具55Aにより容認される第2設置位置範囲内となるように逆フランジウェイ側の空間を閉塞するように取り付けられることになる。
【0041】
なお、本発明は、上記各実施例に限定されるものではない。上記実施例は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
例えば、レールクリップ部材46A等の曲面は、上に凸な曲面だけでなく、下に凸な曲面でもよい。
【0043】
また、上記実施例においては、鉄道線路と道路との平面交差部である踏切付近の路面を構成する例について説明したが、本発明はこれには限定されず、軌道は、鉄道線路以外の軌道、例えば路面電車の軌道等であってもよい。また、舗装を行う箇所についても、踏切以外の箇所、例えば路面電車の停留所付近、路面電車の道路交差点付近等であってもよい。
【0044】
また、緩衝部材(例えば、詰めゴム部材40A)の断面形状は、上記実施例のものに限定されず、他の断面形状であってもよい。
【0045】
また、棒状保持部材は、PC鋼棒には限定されず、PC鋼線、PCケーブル(PC鋼線をよったもの)であってもよい。また、棒状保持部材(例えばPC鋼棒43A及び44A)の個数は、2個には限定されず、3個以上であってもよい。また、緩衝部材の棒状保持部材軸まわりの回転を防止する手段を設ける場合には、棒状保持部材の個数は、1個であってもよい。
【0046】
また、棒状保持部材支持手段(例えば、PC鋼棒支持金具45A等)の取付箇所は、上記した各実施例における取付箇所には限定されない。要は、軌道舗装構造のいずれかの箇所に設置されればよい。
【0047】
また、上記実施例においては、緩衝部材を適用する軌道舗装構造として、連接軌道と総研形舗装板式踏切舗装構造を例に挙げて説明したが、本発明はこれらには限定されず、他の構成の軌道舗装構造に緩衝部材を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る軌道舗装構造、及び軌道近傍の舗装方法は、鉄道を運営する鉄道事業者で実施可能であり、鉄道線路の保守を行う企業でも実施可能であり、これらの産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施例である踏切舗装構造における詰めゴム部材の配置状態を示す横断面図である。
【図2】本発明の第1実施例である踏切舗装構造におけるPC鋼棒中間支持金具とレールクリップ部材等の配置状態を示す横断面図である。
【図3】本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるPC鋼棒中間支持金具の一例の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるレールクリップ部材の構成を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるPC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材の配置状態を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例である踏切舗装構造に用いるPC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材の一例の構成を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具の設置状態を示す図である。
【図8】本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具のうちレール当接部材の構成を示す図である。
【図9】本発明の第1実施例である踏切舗装構造の施工に用いる金具高さ調整治具のうち金具当接部材の構成を示す図である。
【図10】従来の踏切舗装構造の一例である連接軌道の構成を示す図である。
【図11】従来の踏切舗装構造の他の例である踏切舗装板の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
40A 詰めゴム部材
41A、42A 挿通孔
43A PC鋼棒
43A1 アンボンド皮膜付きPC鋼棒
43A2 アンボンド皮膜除去PC鋼棒
44A PC鋼棒中間支持金具
44A1 底板部
44A2 直立部
44A6 肉薄部
44A7 肉厚部
44A8 金具頂面
45A PC鋼棒中間支持金具
45A1 底板部
45A2 直立部
45A3 PC鋼棒嵌合凹部
45A4 円筒凹曲面
45A5 ボルト穴
45A6 肉薄部
45A7 肉厚部
45A8 金具頂面
46A レールクリップ部材
46A1 基盤部
46A2 レール押さえ部
46A3 タイプレート当接部
46A4 ボルト用長穴
47A1、47A2 高さ調整板
48A PC鋼棒つなぎ用ゴムブロック部材
48A1 ブロック本体
48A2 大径PC鋼棒挿入孔
48A3 小径PC鋼棒挿入孔
48A4 肉厚部収容凹部
48A5 フード部
49A T型ボルト
50A 竹の子状バネ
51A ナット
55A 金具高さ調整治具
56A レール当接部材
56A1 本体部
56A2 第1直立部
56A3 第2直立部
56A4 開口部
56A5 舗装板第1当接面
56A6 レール第1当接面
56A7 第1高さ基準面
56A8 舗装板第2当接面
56A9 レール第2当接面
56A10 第2高さ基準面
57A 軌間内用金具当接部材
57A1 本体部
57A2 金具嵌合溝
57A3 高さ判定面
57A4 金具頂部当接面
58A 軌間外用金具当接部材
58A1 本体部
58A2 金具嵌合溝
58A3 高さ判定面
58A4 金具頂部当接面
121 連接軌道板
121a、121b レール収容凹部
122、123 舗装ブロック
124 PC鋼棒
125 タイプレート
126 レールパッド
127 タイプレートパッド
128 レールクリップ部材
129 竹の子状バネ
130 ナット
131 取付ボルト
132 ゴムシュート
133 座金
134 コイルバネ
135 ナット
136 取付ボルト
137 ゴムシュート
138 クサビ
201 内軌側踏切舗装板
202、203 外軌側踏切舗装板
204〜206 ゴム受台
207 連結金具
215a 内軌板保護部材
215a1 水平部
215a2 鉛直部
215b 外軌板保護部材
216 取付部材
216a 平板部
216b 斜面部
216c ストッパー
225 ボルト孔
271 外軌板受部
271a ボルト孔
272 レール受部
273 内軌板受部
273a ボルト孔
273b 斜面部
273c 平面部
281 パッド
282、283 絶縁材
284 ゴムシュート
291、292 取付ボルト
293 ナット
294 竹の子状バネ
295 座金
296 被支持部材
300 レール
303 底部
303a 下面
303b 側面
303c 外方上面
F9〜F12 フランジウェイ
T10 まくらぎ
W 車輪
W1 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道の近傍に舗装部材が設置され道路の路面を構成する軌道舗装構造であって、
ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔を有し、前記略梁状体の長手方向軸がレールの長手方向と平行になるようにして前記レールの頭部又は腹部の付近に配置される緩衝部材と、
前記緩衝部材の挿通孔に挿通され前記緩衝部材を保持する棒状保持部材と、
頂面が上に凸な円筒面状に形成されるとともに前記軌道舗装構造のいずれかの箇所に設置可能に構成される第1支持部材と、前記第1支持部材の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能な凹曲面を下面として有するとともに前記棒状保持部材のいずれかの部分を支持する凹部を有する第2支持部材と、前記第1支持部材の頂面と第2支持部材の下面との間に介接可能な略曲面状の薄板である調整部材を有する棒状保持部材支持手段を備え、
前記棒状保持部材支持手段は、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の摺動回転と、前記調整部材の厚み及び個数により、前記第2支持部材の高さ位置を調整可能であること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項2】
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材をその長手方向の端部で他の棒状保持部材に継ぐため、ゴム系材料又は合成樹脂系材料からなるブロック状の部材であって前記棒状保持部材の端部を両方の開口から挿入可能な貫通孔を有する保持部材接合手段をさらに備えること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項3】
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記舗装部材は、連接軌道板であること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項4】
請求項3記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材支持手段は、前記連接軌道板のいずれかの箇所により支持されること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項5】
請求項4記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材支持手段は、前記連接軌道板に設けられたレール収容凹部内に設置されるタイプレートにより支持されること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項6】
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記舗装部材は、舗装板であること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項7】
請求項6記載の軌道舗装構造において、
前記棒状保持部材支持手段は、前記舗装板のいずれかの箇所により支持されること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項8】
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記緩衝部材は、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過し得る空間であるフランジウェイを上方に確保するように取り付けられること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項9】
請求項1記載の軌道舗装構造において、
前記緩衝部材は、前記レールの付近の空間のうち、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過し得る空間であるフランジウェイとは前記レールに関して反対側となる空間を閉塞するように取り付けられること
を特徴とする軌道舗装構造。
【請求項10】
軌道の近傍に舗装部材を設置することにより道路の路面を構成する軌道近傍の舗装方法であって、
ゴム系材料からなり略梁状体に形成されるとともに挿通孔を有し、前記略梁状体の長手方向軸がレールの長手方向と平行になるようにして前記レールの頭部又は腹部の付近に配置される緩衝部材を用い、
棒状保持部材支持手段を、頂面が上に凸な円筒面状に形成される第1支持部材と、前記第1支持部材の頂面の円筒面に対して摺動しつつ回転可能な凹曲面を下面として有するとともに前記棒状保持部材のいずれかの部分を支持する凹部を有する第2支持部材と、前記第1支持部材の頂面と第2支持部材の下面との間に介接可能な略曲面状の薄板である調整部材を有するように構成しておき、前記軌道舗装構造のいずれかの箇所に前記棒状保持部材支持手段の第1支持部材を設置し、
棒状保持部材を前記緩衝部材の挿通孔に挿通して前記緩衝部材を保持させ、前記棒状保持部材の第2支持部材を前記第1支持部材に支持させ、
かつ前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の摺動回転と、前記調整部材の厚み及び個数により、前記第2支持部材の高さ位置を調整可能としたこと
を特徴とする軌道近傍の舗装方法。
【請求項11】
請求項10記載の軌道近傍の舗装方法において、
前記緩衝部材は、前記レールの付近の空間のうち、鉄道車両の車輪のフランジが支障無く通過し得る空間であるフランジウェイを上方に確保するように、位置決め用治具により容認される第1設置位置範囲内となるように前記フランジウェイ側に取り付けられるとともに、前記フランジウェイとは前記レールに関して反対の側である逆フランジウェイ側については、前記位置決め用治具により容認される第2設置位置範囲内となるように前記逆フランジウェイ側の空間を閉塞するように取り付けられること
を特徴とする軌道近傍の舗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−113292(P2007−113292A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306425(P2005−306425)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000230825)日本軌道工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】