説明

軟化剤を含有するフォームラバーおよびその製造方法

【課題】軟化剤が均一に分散したフォームラバーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】フォームラバーをラテックスから製造する方法であって、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを、10〜10,000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で30分以上混合させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟化剤を含有するフォームラバー、ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
靴の中敷き、手袋または化粧用パフなどの、人肌に直接接触する部材の材質として、弾性に優れて柔らかな触感を提供し得ると共に、皮膚表面に汗と共に滲む油に対して高い耐性を有するフォームラバーが好適に使用されている。特に、皮膚に直接接触する部材などに使用する場合、フォームラバーとして柔軟性に富んでいるものが好ましい。
【0003】
フォームラバーを軟化させ弾力性を与えるために、(1)気泡率を高めることにより、密度を小さく方法と、(2)軟化剤を配合する方法の二つがある。
【0004】
しかし、上記(1)の方法は、フォームラバーを軟化させる一方、機械的強度を低下させて、破損しやすくさせるので、実用に適さない。また、上記(2)の方法では、軟化剤を、合成ラテックス製造時にモノマーに添加したり、直接ラテックスに添加したり、乳化してから添加したりなどする(非特許文献1)が、このような軟化剤の添加方法においては、軟化剤とラテックスとが分離しやすく、軟化剤を含有するフォームラバーを得るのが困難であった。また、軟化剤をあらかじめ乳化するなどの前工程を要するため製造コストが上がるし、しかも得られるフォームラバーの貯蔵安定性も低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エマルジョン・ラテックスハンドブック編集委員会編、「エマルジョン・ラテックスハンドブック」、初版、株式会社大成社、昭和50年3月25日、430〜435頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、軟化剤を含有するフォームラバーおよびそれを容易に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、フォームラバーは、ラテックスと所要の副原料とを混合し、得られる混合物にゲル化剤および空気を添加して気泡状態のゲル状物とし、次いでこれを成形し、架橋させて通常得る。この際、ラテックスと所要の副原料との混合は、空気の混入を避けるため、人が手で棒を使ってゆっくりと攪拌するか、または9min-1以下に設定された最大剪断速度で攪拌することで行われてきたが、このような混合条件では、軟化剤を添加しても十分に混合されず、すぐに分離が起こるため、軟化剤が均一に分散したフォームラバーを得るのが困難であった。
【0008】
しかし、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の混合条件を採用すること、およびフォームラバー中の気泡の安定性を高めて気泡を形成しやすくするものとして知られる気泡安定剤を添加することにより、軟化剤が均一に分散したフォームラバーを容易に得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、ゴム系ポリマーと軟化剤とを含有するフォームラバー、およびその用途に関する。
また、本発明は、ラテックスからフォームラバーを製造する方法であって、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを、10〜10,000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で30分以上混合させる工程を含む方法にも関する。
さらに、本発明は、この製造方法により得られるフォームラバーにも関する。
なお、本発明において、フォームラバーとはラテックスから製造した発泡体のことをいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラテックスを原料にしてフォームラバーを製造する際、合成ラテックス製造時にモノマーに添加したり、軟化剤をあらかじめ原料のラテックス中に添加したり、他の溶媒によって乳化させたりするなどの前工程が不要となり、また軟化剤をラテックスおよび所要の副原料などと一緒に混合できるため、製造コストを抑えることができる。また、本発明によれば、フォームラバーを型成形した後、型から取り出しやすい。
さらに、本発明によれば、気泡率を上げることなくフォームラバーを軟化して弾力性を与えることができ、そのため、柔軟性のある、しかも機械的強度にも優れたフォームラバーを得ることもできる。
その上、本発明によれば、保湿効果を有し、また生体に対して安全性が高いフォームラバーを得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゴム系ポリマーとしては、モノマー単位としてエチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルエーテルおよびビニルピロリドンなどを1種以上含むポリマーが挙げられる。
上記のゴム系ポリマーとして、例えば、天然ゴム(NR);ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリレート−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)もしくはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などの合成ゴム;またはカルボキシ変性スチレン−ブタジエンゴムもしくはカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの変性ゴム系ポリマーなどが挙げられる。また、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン系ラテックス、DPL(解重合ラテックス)またはクロロスルホン化ポリエチレンラテックス中のポリマーなども挙げられる。
上記のゴム系ポリマーとして、好ましくは、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムまたはカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムが挙げられ、より好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムまたはカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムである。
本発明のフォームラバーは、これらのゴム系ポリマーを1種以上含有することができる。
【0012】
本発明の軟化剤は、本発明のフォームラバーに適度の柔軟性を付与する成分である。軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの炭化水素系プロセス油、スピンドル油、ペトロラタムおよび流動パラフィンのなどの炭化水素油;ひまし油、紅花油、綿実油、あまに油、菜種油、大豆油、落下生油、パーム油、やし油、オリーブ油、コーン油などの植物油および動物油、ならびにそれらを脱水または水素化して得られる脂肪酸エステル油などの生物起源脂肪酸エステル油、例えば脱水ひまし油など;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、テトラヒドロフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、リン酸トリクレジル、リン酸アルキルアリル、ブチルフタリルブチルグリコレート、セバシン酸ジ−n−ブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、トリエチレングリコール・ジ(2−エチル・ヘキソエート)、クエン酸アセチル・トリ−n−ブチルなどの可塑剤;ならびにそれらの混合物などが挙げられる。
なお、本発明において、パラフィン系プロセスオイルとはパラフィン系炭化水素を全炭素量に対し50重量%以上含むプロセスオイルを、ナフテン系プロセスオイルとはナフテン系炭化水素の炭素の割合が全炭素量に対し30〜45重量%含むプロセスオイルを、芳香族系プロセスオイルとは芳香族炭化水素の炭素の割合が全炭素量に対し35重量%以上含むプロセスオイルを、それぞれいう。
炭化水素油において、フォームラバーの黄変を抑えたり、人体への安全性をより高めたりするために、パラフィン系プロセスオイルおよび流動パラフィンが好ましく、パラフィン系炭化水素の全炭素量に対する含量が高いもの、例えば、全炭素量に対してパラフィン系炭化水素を70重量%以上含み、残余としてナフテン系炭化水素を30重量%以下含むパラフィン系プロセスオイルがより好ましく、流動パラフィンが特に好ましい。
本発明における好ましい軟化剤として、人体に対する安全性をより高める点から、ひまし油、紅花油、綿実油、あまに油、菜種油、大豆油、落下生油、パーム油、やし油、オリーブ油、コーン油などの植物油および動物油が挙げられ、特に好ましくは植物油、例えば、落下生油、コーン油、オリーブ油、大豆油、紅花油および綿実油である。
また、本発明のフォームラバーは、これらの軟化剤を1種以上含むことができる。
【0013】
フォームラバー中のゴム系ポリマー100重量部に対する軟化剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、フォームラバーに適度の柔軟性と優れた伸びを与えるため、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは0.7重量部以上、特に好ましくは1.0重量部以上であり、フォームラバーから軟化剤がブリードして周辺を汚染することを防ぐため、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。
【0014】
本発明において、ラテックスを原料にして本発明の軟化剤を含有するフォームラバーを製造する実施形態を以下に示すが、この実施形態に本発明のフォームラバーの製造方法が限定されるものではない。
【0015】
(工程1)
まず、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを混合させて混合ラテックスフォーム原料を調製する。
【0016】
本発明においてラテックスとは、水性媒体中に前記のゴム系ポリマーが安定して分散しているものをいう。
【0017】
本発明の気泡安定剤として、例えば、塩化エチルなどの塩化アルキルをホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させて得られる、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。この反応生成物のアルキルの炭素数は4以下が好ましい。このような反応生成物として、例えば、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。また、アルキル第四級アンモニウムクロリド、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキルアリールスルホン酸塩;および高級脂肪酸アンモニウム、好ましくはアルキルの炭素数が4以下の高級脂肪酸アンモニウムなども、本発明の気泡安定剤として使用できる。
本発明の気泡安定剤として、軟化剤を均一に分散させたりするため、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物、特にアルキルの炭素数が4以下の塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物、とりわけ、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が好ましい。
【0018】
本発明では、ラテックス中のゴム系ポリマー100重量部に対する気泡安定剤の添加量は、フォームラバー中に軟化剤を均一に分散させるため、2重量部以上、好ましくは3重量部以上、より好ましくは3.5重量部以上であり、また、気泡安定剤のコストを減らしたり、ゲル化時間を短縮させたりするため、8重量部以下、好ましくは7重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0019】
ラテックス、軟化剤および気泡安定剤は、フォームラバー中において軟化剤を均一に分散させるために、10〜10000min-1、好ましくは100〜10000min-1、より好ましくは3000〜7000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で、30分以上、好ましくは40分以上、より好ましくは60分以上混合させることが望ましい。
この混合に用いる手段は、上記の最大剪断速度を得られれば特に制限されず、攪拌羽根を備えた混合タンク、ホモジナイザーまたはホモミキサーなどが挙げられるが、混合中における空気の混入を抑え、次工程での気泡率の調整を容易にするため、攪拌羽根を備えた混合タンクが好適である。
【0020】
本発明において剪断速度(min-1)は、例えば、攪拌羽根を備えた混合タンク中で混合する場合、以下の式から求められる。
剪断速度=(P×円周率×S)/V
P:攪拌羽根の翼径(mm)、S:1分あたりの攪拌羽根の回転数、V:攪拌羽根と混合タンクの壁面との間の隙間(クリアランス)における最も狭い部分の距離(mm)
【0021】
なお、ラテックスを2種以上含有するフォームラバーを製造する場合、このフォームラバー中でそれぞれのゴム系ポリマーが均一に存在することが好ましい。このため、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを混合させる前に、2種以上のラテックスを、上述したラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを混合させたのと同じ条件で混合させることが望ましい。
このラテックスの混合工程により、ゴム系ポリマーを2種以上含む、各部の性質が均一なフォームラバーを製造することができる。
2種以上のラテックスを用いる場合、上記の2種以上のラテックスの混合工程を経てから、またはその混合工程中に、軟化剤および気泡安定剤を添加し、上記と同じ混合条件で混合させて、軟化剤を含むフォームラバーを製造するための混合ラテックスフォーム原料を調製してもよい。
【0022】
本発明において、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを、所要の副原料と一緒混合してもよい。このような副原料として、例えば、架橋剤、起泡剤および老化防止剤などが使用できる。
【0023】
上記の架橋剤は、ゴム系ポリマーの種類および架橋反応機構に応じて、硫黄、有機過酸化物物またはフェノール化合物などが用いられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄および微粉末硫黄のほか;二塩化硫黄およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどの硫黄化合物などを用いることができる。また、2−メルカプトベンゾチアゾールなどの加硫促進剤を併用することがある。有機過酸化物による架橋の場合、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m−トルイルペルオキシドなどのアシルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブトキシペルオキシ)ヘキサンなどのアルキルペルオキシド;t−ブトキシペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノアート、t−ブトキシペルオキシベンゾアートなどのペルオキシエステル;1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサなどのペルオキシケタール;t−ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブトキシペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボナートなどのペルオキシカルボナートなどの有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、モレキュラーシーブなどの無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサンなどの不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に供してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化−p−第三ブチルフェノール樹脂およびアルキルフェノール・スルフィド樹脂を用いることができる。架橋剤および加硫促進剤の添加量は、ゴム系ポリマーの種類、架橋機構および架橋剤によっても異なるが、ラテックス中のゴム系ポリマー100重量部あたり通常0.02〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0024】
前記の起泡剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸などの脂肪酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウムなどのサルコシン塩;やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどの硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン性界面活性剤などが例示される。起泡剤の配合量は、ラテックス中のゴム系ポリマー100重量部あたり通常1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部である。
【0025】
前記の老化防止剤としては、N−フェニル−N′−(p−トルエンスルホニル)−p−フェニレンジアミンなどのジフェニルアミン系化合物;芳香族アミンと脂肪族ケトンの縮合物;2−メルカプトベンゾイミダゾールやその亜鉛塩などのイミダゾール系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのモノ−フェノール系;ビス−、トリス、ポリフェノール系などが例示される。老化防止剤の配合量は、ラテックス中のゴム系ポリマー100重量部あたり1〜10量部が好ましく、2〜6重量部がさらに好ましい。
【0026】
(工程2)
例えばダンロップ法などに準じて、工程1で調製した混合ラテックスフォーム原料に所要の空気およびゲル化剤を添加し、充分に混合させて気泡状態にさせると共にゲル化させ、ゲル状物を得る。
【0027】
上記のゲル化剤としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム(SSF)、ケイフッ化カリウムもしくはケイフッ化カルシウムなどのヘキサフルオロケイ酸塩;またはシクロヘキシルアミンの酢酸塩もしくはスルファミン酸塩などのシクロヘキシルアミン塩などを水溶液状態とした液状物が使用され、その量としては、前記の混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部に対して1〜10重量部程度が好適である。ゲル化剤としては、特に上記のヘキサフルオロケイ酸塩、特にケイフッ化ナトリウムが、ゲル化開始時間等の反応制御が容易であることから好適に使用される。
あるいは、亜鉛アンモニウム錯塩、2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩、ポリプロピレングリコールまたはポリメチルビニルエーテルなどの感熱剤を、前記の混合ラテックスフォーム原料中のゴム系ポリマー100重量部に対して1〜10重量部添加して、40〜100℃に加熱することにより、ラテックスを凝固させることもできる。
【0028】
(工程3)
前記のゲル状物を、流延、注型または押出し成形などの方法によって所望の形状に加工し、次いで、架橋剤の種類に応じて50〜200℃に加熱して充分に架橋反応を進行させ、次いで適宜加工を加えて、所望の形状のフォームラバーを得ることができる。ここでの加熱方法は、ゲル化原料を架橋させ得るものであれば、特に制限されない。
【0029】
本発明のフォームラバーは、独立気泡、連続気泡またはその両方を有していてよく、特に制限されないが、得られるフォームラバーの吸液性を高めたい場合、連続気泡を有していることが好ましい。
すなわち、本発明のフォームラバーが独立気泡のみを有する場合、吸水率は通常5%未満であるが、連続気泡または独立気泡と連続気泡の両方を有する場合、吸水率は通常5%以上である。本発明のフォームラバーの吸水率は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは50%以上、とりわけ好ましくは100%以上、最も好ましくは300%以上である。なお、上記吸水率は、ASTM D1056に従って測定される。
【0030】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は、実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例で、特にことわらない限り、ラテックスの重量部は、そのラテックスに含まれるゴム系ポリマーの重量部を表す。
【実施例】
【0031】
実施例1〜3および比較例1〜2
ラテックス(アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、商品名Nipol 531、日本ゼオン株式会社製)100重量部、表1に示す配合量の綿実油(関東化学株式会社製)、気泡安定剤(エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物、商品名トリメンベース、ユニロイヤルケミカルカンパニー製)2.5重量部、架橋剤含有エマルション(硫黄40%および分散剤(カゼイン)10%を、水50%中に乳化させたもの、株式会社軽井沢精錬所製)1重量部、加硫促進剤(ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、商品名ノクセラーBZ、大内新興化学工業株式会社製)1.5重量部、起泡剤(オレイン酸カリウム石鹸、商品名FR14、花王株式会社製)2.5重量部および老化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、商品名スミライザーBHT、住友工業株式会社製)2重量部とを、攪拌羽根を備えた混合タンク中で、4500min-1に設定された最大剪断速度で40分間混合して、混合ラテックスフォーム原料を得た。これに、ゲル化剤(ケイフッ化ナトリウム、三井化学株式会社製)3重量部および表1に示す量の空気を加えてゲル化させ、注型により成形してから140℃、40時間加熱処理をして、フォームラバーの試験片(100×100×1mm)を作製した。
【0032】
比較例3
最大剪断速度を4500min-1に設定して混合する代わりに、9min-1に設定して混合した以外、上記の実施例1と同様にしてフォームラバーの試験片の作製を試みた。
【0033】
比較例4
綿実油100重量部とオレイン酸5重量部とをコロイドミルを用いて高速攪拌(8000min-1、6時間)にて混合してから、この混合物を5重量%のアンモニア水の中に高速攪拌(10000min-1、30分間)しながら加えた。さらに6時間攪拌を続けてから、室温に24時間放置して、貯蔵安定性を確認し、軟化剤エマルションを調製した。綿実油の代わりに、この軟化剤エマルションを綿実油4重量部に相当する量加えた以外、上記の比較例3と同様にしてフォームラバーの試験片の作製を試みた。
【0034】
上記で作製した実施例1〜3と比較例1〜2の試験片について、下記に示す方法に従い測定を行い、得られた結果を表1に示した。
(1)密度の測定:JIS K6400に準じて、見掛け密度として室温で測定した。
(2)引張強さおよび伸びの測定:JIS K6400に準じて、試験片を1号形のダンベル状に打ち抜いて測定した。
(3)硬さの測定:アスカー硬度計F型(高分子計器株式会社製)を用いて測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1において、実施例1〜3と比較例1とを比較すると、軟化剤を含有するフォームラバーの方が、密度が同じであっても、軟化剤を含有しないものより機械的強度および柔軟性において優れていることが分かった。
また、比較例2から、密度を小さくしたフォームラバーは、柔らかいものの、機械的強度が低く、伸びにくいことが分かった。
なお、比較例3および4は、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤などとの混合工程中で、軟化剤が分離してしまったため、試験片を調製することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のフォームラバーは、柔軟性・弾力性に優れているので、肌に直接適用する化粧用パフ、顔面に貼るシート、マスカラなどに使用できる。また、それ以外にも本発明のフォームラバーは、マットレス、和洋枕、敷布団、椅子用クッションなどの家庭用品、列車、飛行機および自動車などの乗り物用の座席クッション、さらにはじゅうたんの裏打ちおよびドアパッキング、ならびに電子機器および家庭用電化製品のシール材および緩衝材などにも使用できる。また、本発明のフォームラバーは、ワイビング材、スポンジたわし、吸水ロールおよび吸水マットなどにも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系ポリマーと軟化剤とを含有するフォームラバー。
【請求項2】
ゴム系ポリマー100重量部に対して、軟化剤を0.5〜30重量部含有する、請求項1記載のフォームラバー。
【請求項3】
ラテックスからフォームラバーを製造する方法であって、ラテックスと軟化剤と気泡安定剤とを、10〜10,000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で30分以上混合する工程を含む方法。
【請求項4】
ラテックス中のゴム系ポリマー100重量部に対して、気泡安定剤を2〜8重量部添加する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1項記載のフォームラバーを含む、化粧用パフ。

【公開番号】特開2010−111877(P2010−111877A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8918(P2010−8918)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【分割の表示】特願2004−36288(P2004−36288)の分割
【原出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】