説明

軟架橋性ポリウレタン材料

本発明は、ポリオール成分とイソシアネート成分から成るポリウレタンエラストマー用架橋性組成物であって、該ポリオール成分が30〜80重量%のポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール、10〜40重量%の少なくとも3個のOH基を有するポリオール及び1〜50重量%のイソシアネート−反応性基を有する単官能性化合物を含有し、該イソシアネート成分が少なくとも3官能性のイソシアネートを含有する該架橋性組成物(但し、NCO/OH比は0.9〜1.2である)に関する。本発明は、対応する架橋ポリウレタンエラストマーの成形体としての使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された長期間の弾性を発揮する軟架橋性ポリウレタン材料、及び該ポリウレタン材料から製造される成形体に関する。該ポリウレタン材料はジオール、ポリオール、及びNCO−反応性基を有すると共に少なくとも3官能性のイソシアネートによって架橋される少なくとも1種の可塑剤から形成される。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリウレタン材料又は熱可塑性ポリウレタン材料に基づく封止剤は知られている。これらの封止剤は、ポリオールとジイソシアネート又はポリイソシアネートに基づく架橋材料である。この種のポリウレタンは、通常は比較的硬く、弾性をほとんど示さない。この種のポリウレタン材料中へ可塑剤を配合することが知られている。可塑剤を配合する目的は、硬質の基材ポリマーに弾性と変形性を付与することである。
【0003】
特許文献1には、弾性ポリウレタンゲルが開示されている。該ポリウレタンゲルは、少なくとも75%の反応性モノアルコール(分子量:1000<)、1〜10%の有機反応性架橋剤(官能価:3<)[一般的にはポリオール]、及び架橋用のポリイソシアネート化合物に基づく。この種のポリウレタン材料は、固体ではなくて、高粘性液体であるために、場合によっては、カプセル化されなければならない。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが開示されている。この熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ジカルボン酸とC2〜C6ジオールとのポリエステル及びポリプロピレンオキシッドとの混合物と反応させた有機ジイソシアネート、及び400までの分子量を有する連鎖延長性ジオールから製造される。このポリウレタン材料には、無機充填剤及びフェノールアルキルスルホン酸又はベンジルブチルフタレートも配合される。対応する未架橋材料は成形材料として使用することができる。
【0005】
特許文献3には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが開示されており、該ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート、ポリプロピレンオキシドジオール、及びジエチレングリコールに基づいて製造される。ポリプロピレンオキシドジオールに対するジエチレングリコールのモル比は2:1〜20:1である。
【0006】
従来技術によるこの種のポリウレタンエラストマーは非常に軟質な状態で調製することができる。この種のポリウレタンエラストマーは封止剤として利用可能であるが、低架橋度に起因して非常に高い粘性な状態にあるためにカプセル化しなければならない場合には、その用途は非常に制限される。軟質弾性組成物の性状を可塑剤を用いて調整する場合の既知の問題点は、可塑剤がポリウレタン材料から移動して遊離するという点である。このような効果は、特に高温において発生し、通常は、封止剤の脆化がもたらされる。このような脆化封止剤は機械的な負荷容量をほとんど示さない。
【特許文献1】米国特許公報US2004/0147707
【特許文献2】ヨーロッパ特許公報EP 0695786
【特許文献3】国際公報WO 94/15985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、可塑剤が封止剤中へ化学的に組み込まれた軟質架橋ポリウレタン材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、下記のポリオール成分(A)及び架橋剤成分(B)を含有する架橋ポリウレタンエラストマー製造用組成物によって解決された:
(A)下記の成分i)〜iii)を含有するポリオール成分:
i)ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール30〜80重量%
ii)少なくとも3個のOH基を有するポリオール10〜40重量%
iii)イソシアネートに対して反応性を示す基を有する少なくとも1種の単官能性化合物1〜50重量%、及び
(B)少なくとも3官能性のイソシアネートを含有する架橋剤成分
(但し、2種の成分(A)及び(B)に関するNCO/OH比は0.90〜1.2であり、該単官能性化合物の分子量は2500未満である)。
【0009】
本発明は、この種の軟質ポリウレタンエラストマーから製造することができる成形体、及び該成形体の製造法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による組成物を製造するために適当な2官能性化合物であって、イソシアネートと反応することができる2官能性化合物としては、NCO基に対して反応性を示す基(例えば、NH基、OH基、及びSH基等)を2個有する末端が2官能性の線状化合物が例示される。この種の化合物としては、特に、ポリアルキレンエーテルジオール、チオエーテルグリコール、ポリオキシアルキレンアミン及びポリエステルジオールが挙げられる。この種の化合物の分子量は、400よりも大きく、20000までである。本発明において用いる「分子量」という用語は、GPC測定によって得ることができる算術平均分子量(M)を意味する。
【0011】
適当なポリエーテルジオールは、アルキレン残基中に2〜4個の炭素原子を有する1種又は複数種のアルキレンオキシドを、2個の活性水素原子を有するスターター分子と反応させることによって製造することができる。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド又は2,3−ブチレンオキシドが好ましい。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びこれらの混合物は特に適当である。これらの化合物はコポリマー又はブロックポリマーであってもよい。さらに適当なポリエーテルジオールは、ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランの重合生成物である。
【0012】
末端にチオ基又はアミノ基を有する対応する反応生成物、例えば、アミノポリエーテルポリオール等も知られており、また、市販されている。しかしながら、OH基含有ポリマーが好ましい。
【0013】
適当なポリエステルジオールは、例えば、2〜12個の炭素原子を有するジカルボン酸と2価アルコールから製造することができる。適当なジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸等)及び芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸等)が例示される。これらのジカルボン酸は単独で使用することができ、また、混合物として使用することもできる。ポリエステルジオールの製造に関しては、場合によっては、ジカルボン酸の代わりに、対応するジカルボン酸誘導体、例えば、アルコール残基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物及びカルボン酸クロリド等を使用することが有利な場合がある。2価アルコールとしては、2〜10個の炭素原子を有するグリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール及びジプロピレングリコール等が挙げられる。所望の特性に応じて、2価アルコールは単独で使用することができるが、混合物として使用することもできる。
【0014】
4〜6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸及び2〜6個の炭素原子を有するジオールに基づくポリエステルジオールは特に適している。
【0015】
前記のジオール(特に、4〜6個の炭素原子を有するジオール、例えば、1,4−ブタンジオール及び/又は1,6−ヘキサンジオール等)とカルボン酸とのエステル、ω−ヒドロキシカルボン酸(例えば、ω−ヒドロキシヘキサン酸等)の縮合生成物、及び好ましくは、ラクトン(例えば、場合によっては、置換ω−カプロラクトン等)の重合生成物も適当である。ポリオール成分としては、ポリアセタールも適当である。「ポリアセタール」という用語は、例えば、グリコール(例えば、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール又はこれらの混合物等)とホルムアルデヒドから得られるような化合物を意味する。本発明において使用可能なポリアセタールには、重合の結果得られる環状のアセタールも包含される。この種のポリエステルジオールは当業者には既知の化合物である。
【0016】
好ましい態様の組成物は、ジオール成分として、ポリエーテルジオールを少なくとも75%含有する。本発明の別の実施態様においては、末端がエチレンオキシドと反応したポリエステルジオール、又は特にポリエーテルジオールが使用される。
【0017】
ジオール成分の量は、成分AのNCO−反応性成分の全量に基づいて30〜80重量%、特に40〜70重量%である。600〜10000の分子量を有する線状ポリエーテルジオールは特に適当である。この種の化合物は単独で使用してもよく、あるいは混合物として使用することもできる。
【0018】
少なくとも3個のOH基を含むポリオールとしては、原則的には、ポリエステルの製造原料として一般的に知られている多官能性ポリオールに対応する化合物が適当である。この種のポリオールは、500未満の分子量を有する低分子量ポリオール、又は500よりも大きな分子量を有するポリオールであってもよい。低分子量ポリオールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、及び糖に基づくポリオール(例えば、ソルビトール等)が例示される。
【0019】
3個のOH基を有する好ましい高分子量ポリオールとして適当な化合物としては、ジカルボン酸又はトリカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸、及びフタル酸等)と低分子量ジオール又はトリオールの一部との縮合反応によって製造することができる液状ポリエステル等が例示される。前述のジオール又はトリオールを使用することもできる。場合によっては、この種のポリエステルの末端OH基にグリコールを反応させることができる。
【0020】
400〜15000(好ましくは、600〜10000)の分子量を有すると共に、1分子あたり3〜10個のOH基を有する自体既知のポリヒドロキシポリエーテルが特に好ましい。この種のポリヒドロキシポリエーテルは、自体既知の方法により、適当なスターター分子(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、及び粗糖等)のアルコキシル化によって得ることができる。適当なアルコキシル化剤は、特に、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーをもたらすことができるプロピレンオキシドとエチレンオキシドである。
【0021】
ポリオールの使用量は、成分AのNCO−反応性成分の全量に基づいて10〜40重量%、特に12〜30重量%である。これらの成分は異なるポリオールの混合物であってもよい。好ましくは、これらの成分は3官能性ポリエーテルポリオールである。
【0022】
本発明による組成物のジオールとポリオールは末端OH基を有する。高い反応性を得るためには、ジオール及び/又はポリオールの末端基に1個又は複数個のエチレンオキシド基を反応させることによってこの種の末端OH基を得ることが可能である。
【0023】
本発明による組成物を製造するための成分Bの少なくとも3官能性のポリイソシアネートとしては、自体既知の有機ポリイソシアネートである。使用可能な有機ポリイソシアネートとしては、脂肪族多価イソシアネート、脂環式多価イソシアネート、芳香族−脂肪族多価イソシアネート、及び芳香族多価イソシアネートが例示される。適当な有機ポリイソシアネートとしては、下記のポリイソシアネートの反応生成物又は3量化生成物が例示される:脂肪族ジイソシアネート、例えば、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,12−ドデカンジイソシアネート等;脂環式ジイソシアネート、例えば、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン等;芳香族ジイソシアネート、例えば、1,3−フェニルジイソシアネート、1,4−フェニルジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び1,5−ナフタレンジイソシアネート等;芳香族ポリイソシアネート、例えば、4,4'、4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,6−トリイソシアナトベンゼン、及びポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート等。異なる異性体の混合物又は異なるイソシアネートの混合物も使用することができる。
【0024】
変性ポリイソシアネートも使用することができる。この種の変性ポリイソシアネートとしてはカルボジイミド基を有するポリイソシアネート、アロファネート基を有するポリイソシアネート、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート、ウレタン基を有するポリイソシアネート、及びエステル基を有するポリイソシアネート等が例示される。本発明において適当なポリイソシアネートは少なくとも3の平均官能度を示すポリイソシアネートである。
【0025】
少なくとも3官能性のイソシアネートとしては、ジイソシアネートの3量化又は低重合化によって調製されるポリイソシアネート、前記のジイソシアネートとヒドロキシル基又はアミノ基を有する多官能性の低分子量化合物(例えば、トリメチロールプロパン、及びグリセロール等)との反応によって調製されるポリイソシアネートが適当である。この種のポリイソシアネートとしては、HDI、IPDI、2,4−MDI、4,4−MDI、TMXDI及び/又は2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン若しくは4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づくアロファネート構造を有するポリイソシアネート又はポリイソシアネート混合物が例示される。イソシアネートとしては、HDI、MDI、TDI又はIPDIが特に好ましい。この種のポリイソシアネートは市販品として入手することができ、また、当業者に既知の方法によって調製することができる。
【0026】
脂肪族イソシアネート、就中、3〜5の平均官能度を有するポリイソシアネートは特に好ましい。より架橋度の高いポリウレタンエラストマーは、より高位の多官能性イソシアネートの付加によって調製される。
【0027】
本発明によって調製することができるポリウレタンエラストマーは、イソシアネートと反応する基を分子中に1個のみ有する少なくとも1種の単官能性化合物を含有していなければならない。この成分は、一般的には内部可塑剤として作用し、通常は、25℃において液体である。
【0028】
既知のH−酸性基、例えば、OH基、NH基、SH基及びCOOH基は、イソシアネートに対して反応性を示す基として使用することができる。この種の反応性基は第二OH基、第一OH基、第一アミノ基、第二アミノ基、カルボン酸基又はカルボン酸アミド基であってもよい。NCO−反応性基としては、第一若しくは第二OH基又は第二アミノ基が特に好ましい。
【0029】
本発明に適した単官能性化合物は、種々のポリマーに基づいて調製することができる。しかしながら、この種の化合物はポリウレタンポリマーと相溶性を示すことが必要である。適当な単官能性可塑剤としては次の化合物が例示される:エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドに基づく単官能性ポリエーテル;末端SH基を有するポリチオエーテル化合物;C2〜C4ジオールに基づくポリアルキレンオキシドであって、末端に第一アミノ基又は第二アミノ基を有するポリアルキレンオキシド;アルキル基中に第一又は第二OH基を有するヒドロキシアルキルフェニル化合物;ポリアルキレンオキシドで変性されたフェノール誘導体;第一又は第二OH基を有するヒドロキシ官能性アルキルスルホン酸エステル及びヒドロキシ官能化アルキルベンジルエステル;アルキル残基中に第一又は第二OH基を有するN−アルキル置換安息香酸アミド又はベンゼンスルホンアミド;スルホン酸エステル基上又はスルホンアミド基上にヒドロキシアルキル置換基を有するスルホンアミド又はアルキルアリールスルホン酸エステル;ポリプロピレンオリゴマー、ポリブテンオリゴマー、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレン及び/又はポリブタジエンオリゴマー、並びに植物油又は動物油及びこれらの誘導体(但し、これらのオリゴマー等は正確に1個のOH基、好ましくは末端OH基を有する)。
【0030】
単官能性化合物の分子量は2500未満、好ましくは1000未満である。この分子量は、特に、アルキル置換基中に第二又は第一OH基を有するアルキル置換芳香族スルホン酸アルキルエステル又はN−アルキル置換芳香族スルホン酸アミドに当てはまる。アルキル残基は、10個までの炭素原子(特に6個までの炭素原子)を有する。該アルキル残基は線状であってもよく、あるいは分枝状であってもよい。アルキル残基上に第二OH基を有する化合物は特に好ましい。
【0031】
反応性化合物の使用量は、成分AのNCO−反応性成分の全量に基づいて1〜50重量%、特に5〜35重量%である。
【0032】
ポリウレタンを調製するためには、成分AとBを、適当な場合には触媒、助剤及び/又は添加剤の存在下において反応させる。この場合の両成分の反応量は、NCO−反応性基(特にOH基)の全体に対するNCO基の反応比が0.9:1〜1.2:1(好ましくは、0.95:1〜1.1:1)になるように調整される。
【0033】
ポリヒドロキシル化合物とポリイソシアネートとの反応を促進するために、常套のポリウレタン触媒を反応混合物中へ配合することができる。塩基性のポリウレタン触媒が適当であり、この種の触媒としては次の化合物が例示される:第三アミン、例えば、ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’、N’−テトラメチルジアミノジエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルピペラジン、ピリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アゾビシクロ−(3,3,0)−オクタン、ジメチルアミノエタノール、2−(N,N−ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N'、N''−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロトリアジン、及び特にトリエチレンジアミン。
【0034】
しかしながら、以下に例示する金属塩も適当な触媒である:塩化鉄(III)、塩化亜鉛、オクタン酸鉛、好ましい触媒としての錫塩、例えば、ジオクタン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、錫の酸化物、スルフィド及びチオール酸塩、例えば、ビス(トリブチル錫)オキシド、ジオクチル錫ジオクチルチオレート、ジブチル錫スルフィド、ジオクチル錫スルフィド、ビス(トリブチル錫)スルフィド、錫(II)オクチルチオレート、ジブチル錫ジエチレート、ジヘキシル錫ジヘキシレート、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、錫(II)フェノレート、錫(II)アセチルアセトネート。第三アミンと有機錫塩との混合物も使用することができる。全成分の混合物に基づき、0.1〜5重量%(好ましくは、0.5〜3重量%)の第三アミンに基づく触媒及び/又は0.01〜0.5重量%(好ましくは0.05〜0.25重量%)の金属塩を使用する態様が有効である。
【0035】
特定の性状(例えば、色、硬度、疎水性、及び加工性等)を改変するために、反応混合物中へ添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、染料、充填剤、顔料、例えば、二酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ケイ酸、層状シリケート、及びフィラーファイバー等が挙げられる。本発明による組成物は他の添加剤、例えば、チキソトロープ剤、定着剤、離型剤、及び安定剤等をさらに含有していてもよい。安定剤としては、抗酸化剤及び耐光剤等が例示される。このような添加剤の使用に際しては、該添加剤が架橋ポリウレタンエラストマーから遊離又は蒸発しないようなものを選択すべきである。揮発性の化合物、例えば、溶剤は配合すべきではない。添加剤又は添加物は、本発明による組成物へ10重量%まで、好ましくは5重量%まで、特に2重量%まで配合することができる。
【0036】
反応混合物中へは非官能化可塑剤を添加することも可能である。この種の可塑剤としては以下のものが例示される:薬用の白色鉱物油、ナフテン系鉱物油、パラフィン系炭化水素油、末端が反応したポリプロピレングリコールとポリブチレングリコール、液状のポリエステルとグリセロールエステル、及び芳香族ジカルボン酸エステルに基づく可塑剤。この種の可塑剤はポリマーと相溶性を示すべきである。また、該可塑剤は高い沸点を示し、ポリウレタンエラストマーから遊離しない。この種の非反応性可塑剤の配合量は組成物の全量に基づいて、一般的には15重量%未満、特に5重量%未満であるが、本発明による組成物はこの種の可塑剤を含んでいなくてもよい。好ましくは、本発明による組成物は溶剤を含有しない。
【0037】
本発明によるポリウレタンエラストマー用の成分は、通常は2成分として存在する。成分Aには、NCO基と反応し得る成分、特にジオール成分、トリオール成分及び単官能性のNCO−反応性成分が包含される。これらの構成成分は既知の方法によって混合することができる。これによって得られる混合物には、室温で液体の混合物、又は少なくとも100℃までの温度において液状になる混合物が含まれる。個々の添加剤又は全ての添加剤、例えば、触媒、顔料、安定剤又は定着剤等は、場合によっては、この混合物中へ添加することができる。個々の成分の混合は既知の装置を用いて実施することができる。例えば、高速撹拌ユニット内での強力ミキサー、例えば、溶解機等を用いて液状成分を均質化することができる。固体状成分を添加する場合には、該成分は分散させることができる。適当な場合には、このような成分は粉砕することができる。この混合物が室温において高い粘性を示すか、又は固体状である場合には、混合物の粘度は加熱によって低下させることができる。使用する出発原料は、特に水は含有しない。
【0038】
好ましくは、第二の成分Bは架橋剤成分、即ち、ポリイソシアネートを含有する。これらの成分にも添加剤を混合させることができるが、該添加剤はイソシアネート基と反応しない添加剤である。これらの混合物は固体状であってもよいが、好ましくは液状である。
【0039】
上記の2成分から均質混合物が調製される。この場合の混合比は、NCO/OH比によって予め決定される。混合操作は、例えば、前記の混合ユニットを用いておこなうことができる。しかしながら、混合操作は、計量ユニットの直後において、静的ミキサー又は動的混合装置を用いておこなえば十分である。この混合物は、自体既知の射出成形機内の適当なモールド内へ導入され、次いで、硬化される。好ましくは、硬化は高温でおこなわれる。本発明によるポリウレタンエラストマーの別の調製法は、モールド内への射出時に2種の個々の液状成分を混合する方法である。但し、この場合には、加工温度におけるこれらの成分の粘度が十分に低いことを条件とする。
【0040】
原則的には、OH成分とNCO成分は室温においても相互に反応性を示す。しかしながら、加工性を改善するためには、通常は触媒を添加し、反応温度を高くすることによって架橋を促進させる。
【0041】
本発明によるポリウレタンエラストマーは、注目すべきことには、高い可撓性を示す。該ポリウレタンエラストマーは永続的な弾性を示し、該弾性は長期間保存した後においても保持される。共有結合した可塑剤は、長期間の負荷と高温条件下におけるポリマーからの可塑剤成分の遊離を防止する。また、健康を害する可塑剤、特にフタレートエステルは不要である。本発明による組成物のショアー硬度は「90〜5のショアー00」又は「90〜40のショアー000」であり(DIN ASTM D 2240による測定値)、好ましくは10〜50のショアー00である。本発明によるポリウレタンエラストマーの破断点伸びは大きく、通常は100%よりも大きく、好ましくは200%よりも大きく、特に400%よりも大きい(DIN 53504による測定値)。95℃までの温度での負荷条件下に4週間放置した後においても、ショアー硬度の変化はほんの僅かであった。
【0042】
架橋ポリマーのガラス転移温度(Tg)は一般的には−20℃よりも低く、好ましくは−40℃よりも低い(DSCによる測定値)。可塑剤成分の移動度が低いので、架橋ポリマーを長期間保存した後であっても、Tgは一定に保持される。
【0043】
本発明によるポリウレタンエラストマーから製造される成形品も本発明の対象である。本発明によるポリウレタンエラストマーは軟質架橋ポリマーである。このようなポリマーから成形体を製造することができる。この種の成形体は単一の成形体であってもよく、あるいは、例えば、プラスチック製又は金属製の成形体上へ直接的に形成される成形体であってもよい。このような成形体は既知の方法、例えば、射出成形法によって製造することができる。
【0044】
本発明によるポリウレタンエラストマーから製造される成形体、又は金属製成形体若しくはプラスチック製成形体と組み合わせた成形体は、例えば、シール(seal)として使用することができる。この種のエラストマーは、特に環状形態又はスリーブ形態のシールとして製造される。また、この種の成形体は、シールされるべき他の成形品中へ直接的に組み入れることができる。特に、インサート(insert)を射出成形モールド内へ配置させ、次いで、硬化に際して、本発明によるポリウレタンエラストマーへ該インサートを直接的に接合させることによって成形品を得ることが可能である。本発明による製造法においては、金属製又はプラスチック製のインサートを射出成形モールド内へ配置させる態様が適当である。モールドを閉鎖させた後、個々の成分の未反応混合物をキャビティ内へ射出させる。成形体は加熱処理又は、適当な場合には、加圧下での加熱処理によって架橋させることができ、架橋成形体はモールドから取り出される。
【0045】
本発明によるポリウレタンエラストマーは成形体を形成する。このような成形体は不粘着性表面を示すが、その後で粘着性を示すことも可能である。この粘着性は、成形体の位置調整を促進させることができ、また、適当な場合には、封止性に影響を及ぼすことができる。外圧を印加させることによって、成形体を変形させることができ、また、封止されるべき成形品の輪郭に対して弾性的に適合させることができる。このような場合、例えば、水に対する封止作用は長期間に亘って維持される。永続的な弾性が発揮させる結果として、シールは、長期間の保存後においても、封止性を維持した状態で反復して開閉させることができる。本発明による組成物の別の利点は高い熱安定性であり、これにより、長期的な又は周期的な温度負荷に曝された後においても可塑剤の遊離は抑制され、軟弾性は維持される。
【0046】
本発明による弾性ポリウレタンポリマーは、例えば、シリコーンの代替材料として使用することができる。この場合、多くの用途に対しては、高温負荷条件下での永続的な弾性は特に重要である。例えば、熱応力に曝されるシリコーン材料は、本発明によるポリウレタンポリマー製の対応する成形体によって代替させることができる。このような適用分野としては、自動車工学やエンジン構築等が例示される。本発明によるポリウレタンエラストマー製の弾性シールは、適当な場合には、一般的工業において製造することができる。可塑剤の遊離性又は蒸発性の低減化によって、永続的な一定範囲の性能が保証される。
【実施例】
【0047】
実施例1
末端に第一ヒドロキシル基を有する3官能性ポリエーテルポリオール(分子量:約4300)21.5重量部を、ポリプロピレングリコールに基づくポリエーテルジオール(分子量:約4000)50重量部と混合させ、該混合物へ市販の常套の安定剤(チバ社製の「イルガノックス(Irganox)1135」)0.7重量部及びDBTL 0.07重量部を添加した。この混合物をN−ヒドロキシアルキル置換ベンゼンスルホン酸アミド11重量部と均質に混合した。
【0048】
得られた混合物へHDIの3量化反応物(バイエル社製の「デスモデュア(Desmodur)N 3300」)17.5重量部を添加した(NCO:OH=0.96:1)。
【0049】
製造直後の混合物をモールド内へ射出させた後、約80℃で架橋させることによって、僅かな粘着性を示す成形体が得られた。
【0050】
破断点伸びは、DIN 53504に従って、試験体を用いて数回測定したところ、800%よりも高い値が得られた。硬度は、ASTM D 2240に従って、試験体を用いてショアー00硬度として測定したところ、約50の値が得られた。
【0051】
90℃で30日間保存した後の試験体の破断点伸び及びショアー00硬度を測定したところ、それぞれ900%よりも高い値及び50〜55の値が得られた。
【0052】
実施例2
末端に第一ヒドロキシル基を有する3官能性ポリエーテルポリオール(分子量:約4300)26.6重量部を、ポリプロピレングリコールに基づくポリエーテルジオール(分子量:約4000)62.3重量部と混合させ、該混合物へ市販の常套の安定剤(チバ社製の「イルガノックス1135」)0.9重量部及びDBTL 0.08重量部を添加した。この混合物をN−ヒドロキシアルキル置換ベンゼンスルホン酸アミド1重量部と均質に混合した。
【0053】
得られた混合物へHDIの3量化反応物(バイエル社製の「デスモデュアN 3300」)9.3重量部を添加した(NCO:OH=1.02:1)。
【0054】
製造直後の混合物をモールド内へ射出させた後、約80℃で架橋させることによって、僅かな粘着性を示す成形体が得られた。
【0055】
破断点伸びは、試験体を用いて数回測定したところ、600%よりも高い値が得られた。また、試験体のショアー00硬度は85であった。
【0056】
90℃で30日間保存した後の試験体のショアー00硬度は85であった。
【0057】
実施例3
末端に第一ヒドロキシル基を有する3官能性ポリエーテルポリオール(分子量:約4300)19.7重量部を、ポリプロピレングリコールに基づくポリエーテルジオール(分子量:約4000)46.5重量部と混合させ、該混合物へ市販の常套の安定剤(チバ社製の「イルガノックス1135」)0.5重量部及びDBTL 0.05重量部を添加した。この混合物をN−ヒドロキシアルキル置換ベンゼンスルホン酸アミド13.2重量部と均質に混合した。
【0058】
得られた混合物へHDIの3量化反応物(バイエル社製の「デスモデュアN 3300」)19.5重量部を添加した。
【0059】
製造直後の混合物をモールド内へ射出させた後、約100℃で架橋させることによって、僅かな粘着性を示す成形体が得られた。
【0060】
破断点伸びは、試験体を用いて数回測定したところ、800%よりも高い値が得られた。また、試験体のショアー00硬度は35であった。
【0061】
実施例4
末端に第一ヒドロキシル基を有する3官能性ポリエーテルポリオール(分子量:約4300)17.6重量部を、ポリプロピレングリコールに基づくポリエーテルジオール(分子量:約4000)41.2重量部と混合させ、該混合物へ市販の常套の安定剤(チバ社製の「イルガノックス1135」)0.5重量部及びDBTL 0.05重量部を添加した。この混合物をN−ヒドロキシアルキル置換ベンゼンスルホン酸アミド17.6重量部と均質に混合した。
【0062】
得られた混合物へHDIの3量化反応物(バイエル社製の「デスモデュアN 3300」)22.6重量部を添加した。
【0063】
製造直後の混合物をモールド内へ射出させた後、約80℃で架橋させることによって、僅かな粘着性を示す成形体が得られた。
【0064】
破断点伸びは、試験体を用いて数回測定したところ、800%よりも高い値が得られた。また、試験体のショアー00硬度は25であった。
【0065】
荷重を加えた条件下において、90℃で30日間保存した試験体のショアー00硬度は約30であった。
【0066】
実施例5
末端に第一ヒドロキシル基を有する3官能性ポリエーテルポリオール(分子量:約4300)22.1重量部を、ポリプロピレングリコールに基づくポリエーテルジオール(分子量:約4000)51.5重量部と混合させ、該混合物へ市販の常套の安定剤(チバ社製の「イルガノックス1135」)0.7重量部及びDBTL 0.07重量部を添加した。この混合物をモノヒドロキシポリプロピレングリコールエーテル(分子量:1100)14.7重量部と均質に混合した。
【0067】
得られた混合物へHDIの3量化反応物(バイエル社製の「デスモデュアN 3300」)10.7重量部を添加し、均質化した。
【0068】
製造直後の混合物をモールド内へ射出させた後、約80℃で架橋させることによって、僅かな粘着性を示す成形体が得られた。
【0069】
試験体の破断点伸びは500%よりも高い値であり、また、試験体のショアー00硬度は約65であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のポリオール成分(A)及び架橋剤成分(B)を含有する架橋ポリウレタンエラストマー製造用組成物:
(A)下記の成分i)〜iii)を含有するポリオール成分:
i)ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール30〜80重量%
ii)少なくとも3個のOH基を有するポリオール10〜40重量%
iii)イソシアネートに対して反応性を示す基を有する少なくとも1種の単官能性化合物1〜50重量%、及び
(B)少なくとも3官能性のイソシアネートを含有する架橋剤成分
(但し、2種の成分(A)及び(B)に関するNCO/OH比は0.90〜1.2であり、また、該単官能性化合物の分子量は2500未満である)。
【請求項2】
ジオールがエチレンオキシドユニットと末端で反応した請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ジオールが、エチレンオキシドユニット、プロピレンオキシドユニット及び/又はブチレンオキシドユニットから構成されるポリエーテルジオールを少なくとも75重量%含有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも3個のOH基を有するポリオールがエチレンオキシドユニットと末端で反応した請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも3個のOH基を有するポリオールがポリエーテルポリオール、特にトリオールである請求項1から4いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
単官能性化合物の分子量が1000未満である請求項1から5いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
単官能性化合物がOH基を有する請求項1から6いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
単官能性化合物が芳香族成分を含有する請求項6又は7記載の組成物。
【請求項9】
単官能性化合物がスルホンアミド基又はスルホン酸エステル基を含む請求項6から8いずれかに記載の組成物。
【請求項10】
単官能性化合物第二OH基を有する請求項7から9いずれかに記載の組成物。
【請求項11】
付加的に触媒、安定剤、顔料及び/又はその他の添加剤を含有する請求項1から10いずれかに記載の組成物。
【請求項12】
イソシアネートが3官能性イソシアネートである請求項1から11いずれかに記載の組成物。
【請求項13】
イソシアネートが脂肪族イソシアネートのトリマーである請求項1から12いずれかに記載の組成物。
【請求項14】
硬化ポリウレタンエラストマーが90未満のショアー00硬度を有する請求項1から13いずれかに記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から14いずれかに記載の組成物から製造される架橋ポリウレタンエラストマー。
【請求項16】
シールの形態に造形された請求項15記載の架橋ポリウレタンエラストマー。
【請求項17】
インサート製品上で成形された請求項15又は16記載の架橋ポリウレタンエラストマー。
【請求項18】
プラスチック製又は金属製のインサート製品が配置されたモールド内での成形品の製法であって、下記の工程(1)及び(2)を含む該製法:
(1)請求項1から13いずれかに記載の反応性の組成物を該モールドのキャビティ内へ射出させ、次いで
(2)モールド内の混合物を加熱硬化させることによってポリウレタンエラストマーを生成させる。
【請求項19】
1分子あたり1個の第二OH基を有すると共に2500未満の分子量を有する反応性の単官能性化合物の使用であって、架橋ポリウレタンエラストマー中の反応関与成分としての該使用。
【請求項20】
反応性の単官能性化合物がスルホンアミド基又はスルホン酸エステル基を含み、及び/又は芳香族核を含む請求項19記載の使用。

【公表番号】特表2009−530450(P2009−530450A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500717(P2009−500717)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001058
【国際公開番号】WO2007/107210
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】