説明

軟水装置

【課題】排水に基づく使用水量を減少させることにより、運転コストを低減させることが可能な軟水装置を提供すること。
【解決手段】本発明の軟水装置1は、被処理水を軟水化するイオン交換樹脂52が充填された樹脂筒5と、樹脂筒5に接続され、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水が循環可能な循環ライン19と、循環ライン19に設けられ、滞留水を循環させる循環ポンプ9と、循環ライン19に設けられ、滞留水から有機物を分解及び/又は除去する循環処理部8と、被処理水の樹脂筒5への通水の有無を検知可能な第1検知部10aと、第1検知部10aにより被処理水が検知されない場合に、循環ポンプ9を作動させる制御部7と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、イオン交換樹脂等の処理材を用いて水道水や地下水等の原水に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)をナトリウムイオン等へ置換する軟水装置は、様々な分野で利用されている。
【0003】
また、日本国内における原水は、通常、炭酸塩類を多く含んでおり、軟水装置を使用して原水中の硬度成分をナトリウムイオンへ置換すると、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムを含む軟水が得られる。この軟水は、保湿力や保温力が高く、例えば温泉と同様の入浴感が得られること、また、例えばアレルギー性疾患の治癒に効能を示す事例があること等から、近年においては、家庭用の軟水装置が注目を集めている。
【0004】
ところで、家庭用に用いられる軟水装置は、軟化用の処理材として交換が容易なイオン交換樹脂が用いられている。イオン交換樹脂は、通常、樹脂筒の内部に収容された状態で用いられるが、長時間通水が行われない場合には、樹脂筒の内部に滞留する滞留水に無害の有機物が溶出する場合がある。そして、樹脂筒の内部にこの有機物が溶出すると、例えば、軟水装置が通水を再開したときに若干の臭いや色水として処理水(軟水)中に混入してしまう。このような若干の臭いや色水が処理水に混入することは、家庭用に用いられる軟水装置としては、苦情等の原因となるおそれがあり問題であった。
【0005】
同様に、軟水装置は、長時間通水を行わない場合には、樹脂筒の内部に滞留する滞留水に雑菌が繁殖する場合がある。雑菌の繁殖する量は、外気温や水温等によって異なるが、軟水中に雑菌が繁殖することは、家庭用に用いられる軟水装置としては、健康被害等の原因となるおそれがあり問題であった。
【0006】
これに対しては、例えば、特許文献1には、給水状態を監視する給水検出手段を設け、給水検出手段からの検出信号が連続して途絶えている時間を計測して連続停止時間を検出し、連続停止時間が所定値に達したときに滞留水を排水することにより、色水の発生、有機物や雑菌等の混入を回避可能な軟水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−315086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の軟水装置は、例えば、安価なイオン交換樹脂等、有機物が溶出し易いイオン交換樹脂を用いた場合には、短い間隔で滞留水を排水させる必要が生じる。同様に、例えば、滞留水の水温が30から37℃くらいの場合等、雑菌が繁殖しやすい温度である場合においても、軟水装置は、頻繁に滞留水を排水させる必要が生じる。このように、短い間隔で頻繁に排水を実施させる行為は、使用水量の増大につながり、結果として軟水装置の運転コストの増加につながるという問題があった。
【0009】
本発明は、排水に基づく使用水量を減少させることにより、運転コストを低減させることが可能な軟水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の軟水装置は、被処理水を軟水化するイオン交換樹脂が充填された樹脂筒と、前記樹脂筒に接続され、前記樹脂筒の内部に滞留する滞留水を循環可能に配設された循環ラインと、前記循環ラインに設けられ、前記滞留水を循環させる循環ポンプと、前記循環ラインに設けられ、前記滞留水から有機物を分解及び/又は除去する循環処理部と、前記被処理水の前記樹脂筒への通水の有無を検知可能な第1検知部と、前記第1検知部により前記被処理水が検知されない場合に、前記循環ポンプを作動させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記循環処理部は、前記滞留水の殺菌を行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明の軟水装置は、前記イオン交換樹脂を再生させる再生液を検知可能な第2検知部を更に備え、前記制御部は、前記第1検知部により前記樹脂筒に通水される前記被処理水が検知されず、かつ、前記第2検知部により前記再生液が検知されない場合に、前記循環ポンプを作動させることを特徴とする。
【0013】
また、前記制御部は、前記循環ポンプを連続的に作動させることを特徴とする。
【0014】
また、前記制御部は、前記循環ポンプを間欠的に作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、排水に基づく使用水量を減少させることにより、運転コストを低減させることが可能な軟水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る軟水装置の概略構成を模式的に示す構成図である。
【図2】本実施形態に係る軟水装置を制御する制御部の電気的な接続構成の一部を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る軟水装置の制御動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る軟水装置1は、被処理水(以下、「原水」という)を軟水化した処理水(以下、「軟水」という)を浴室等の使用場所(図示せず)に供給する通水処理と、原水を軟水化するイオン交換樹脂52を再生させる再生処理と、循環処理部としての促進酸化処理装置8が配設される循環ライン19に滞留水を循環させ、滞留水に溶出した有機物の分解除去及び滞留水の殺菌を行う循環処理と、を実行可能に構成されている。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る軟水装置1の全体構成について説明する。なお、以下の説明においては、「ライン」とは流路、経路又は管路を含むものとして説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る軟水装置の概略構成を模式的に示す構成図である。図1に示すように、軟水装置1は、原水供給ライン11と、原水タンク2と、通水ライン12と、通水ポンプ3と、通水バルブ12aと、第1フロースイッチ4と、第1検知部としての第2フロースイッチ10aと、樹脂筒5と、軟水ライン13と、軟水バルブ13aと、バイパスライン14と、バイパスバルブ14aと、塩水タンク6と、塩水流下ライン15と、塩水流下バルブ15aと、原水流下ライン16と、原水流下バルブ16aと、第2検知部としての第3フロースイッチ10bと、排水ライン17と、排水バルブ17aと、補水ライン18と、制御部7と、循環ライン19と、第1循環バルブ19a及び第2循環バルブ19bと、促進酸化処理装置8と、循環ポンプ9と、を主体に構成されている。
【0020】
原水供給ライン11は、上流側が原水の供給源(図示せず)に接続され、下流側が原水タンク2に接続されている。原水供給ライン11は、供給源から供給される水道水等の原水を原水タンク2に供給するための流路を構成する。原水タンク2は、樹脂筒5の上方に配設されており、原水供給ライン11から供給される原水を貯留する。原水タンク2は、水位制御装置21と、オーバーフロー管22と、を備えて構成されている。水位制御装置21は、原水供給ライン11に連結されており、原水タンク2の内部に貯留される原水の水位が所定の水位を維持するように、原水タンク2の水量を制御する。オーバーフロー管22は、原水タンク2に供給された原水が所定の水位を超えた場合に、超過した原水を外部に排水する。
【0021】
通水ライン12は、上流側が原水タンク2に接続され、下流側が樹脂筒5の底部に接続されている。通水ライン12は、原水タンク2から供給される原水を樹脂筒5の内部に供給するための流路を主として構成する。また、通水ライン12には、第1分岐ポイント12bと、第1分岐ポイント12bの下流側に設けられる第2分岐ポイント12cとが設けられている。第1分岐ポイント12bには、バイパスライン14の上流側が接続される。第2分岐ポイント12cには、排水ライン17の上流側及び循環ライン19の下流側が接続される。また、第2分岐ポイント12cは、排水ライン17が樹脂筒5の底部の下方で接続されるように配設されている。
【0022】
通水ポンプ3は、通水ライン12に配設されている。具体的には、通水ポンプ3は、第1分岐ポイント12bの上流側に配設されている。通水ポンプ3は、原水タンク2に貯留される原水を吸引し、樹脂筒5又は使用場所に向かって原水を圧送する。また、通水ポンプ3は、制御部7と電気的に接続されている。通水ポンプ3は、第1フロースイッチ4が所定の水量を検知し、第1フロースイッチ4から所定の検出信号が制御部7に入力されると起動するように制御部7により制御されている。
【0023】
第1フロースイッチ4は、通水ライン12に配設されている。具体的には、第1フロースイッチ4は、通水ポンプ3と第1分岐ポイント12bとの間に配設されている。また、第1フロースイッチ4は、制御部7と電気的に接続されている。第1フロースイッチ4は、所定の水流を検知すると、検出信号を制御部7に出力する。つまり、第1フロースイッチ4は、第1分岐ポイント12bの上流側で原水の通水を検知すると、検出信号を制御部7に出力する。
【0024】
通水バルブ12aは、第1分岐ポイント12bと第2分岐ポイント12cとの間に配設されている。通水バルブ12aは、通水ライン12を開閉可能に構成されている。また、通水バルブ12aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0025】
第2フロースイッチ10aは、通水バルブ12aと第2分岐ポイント12cとの間に配設されている。また、第2フロースイッチ10aは、制御部7と電気的に接続されている。第2フロースイッチ10aは、第1分岐ポイント12bの下流側において、所定の水流を検知すると、制御部7に検出信号を出力する。つまり、第2フロースイッチ10aは、樹脂筒5に圧送される原水を検出可能に配設されており、樹脂筒5に圧送される原水の通水を検出すると所定の検出信号を制御部7に出力する。
【0026】
樹脂筒5は、樹脂筒本体50と、硅石51と、イオン交換樹脂52と、を有して構成されている。樹脂筒本体50は、その内部に硅石51及びイオン交換樹脂52を収容可能な略円筒状に形成されている。樹脂筒本体50の軸方向における一端側(以下、「底部」という)には、略中央部に通水ライン12が接続されている。つまり、原水は、樹脂筒5の底部から樹脂筒5の内部に圧送される。一方、樹脂筒本体50の軸方向における他端側(以下、「上部」という)には、略中央部に軟水ライン13が接続されている。つまり、樹脂筒5の内部でイオン交換樹脂52によって軟水化された軟水は、樹脂筒5の上部から軟水ライン13に圧送される。
【0027】
硅石51は、イオン交換樹脂52の保持部材として機能する。硅石51は、樹脂筒本体50の底部側に収容されている。イオン交換樹脂52は、原水を軟水化する処理材として機能する。イオン交換樹脂52は、樹脂筒本体50の内部において、硅石51の上部に充填されている。また、イオン交換樹脂52の上方には、スクリーン53が配設されており、イオン交換樹脂52は、硅石51とスクリーン53とに挟まれるように樹脂筒本体50の内部に収容されている。
【0028】
軟水ライン13は、上流側が樹脂筒5の上部に接続され、下流側が使用場所に接続されている。軟水ライン13は、イオン交換樹脂52により軟水化された軟水を使用場所に供給するための流路を主として構成する。また、軟水ライン13には、上流側から順に、第3分岐ポイント13bと、第4分岐ポイント13cと、第5分岐ポイント13dとが設けられている。第3分岐ポイント13bには、循環ライン19の上流側が接続される。第4分岐ポイント13cには、塩水流下ライン15及び原水流下ライン16の下流側が接続されている。第5分岐ポイント13dには、バイパスライン14の下流側が接続されている。
【0029】
軟水バルブ13aは、第4分岐ポイント13cと第5分岐ポイント13dとの間に配設されている。軟水バルブ13aは、軟水ライン13を開閉可能に構成されている。また、軟水バルブ13aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0030】
バイパスライン14は、上流側が通水ライン12の第1分岐ポイント12bに接続され、下流側が軟水ライン13の第5分岐ポイント13dに接続されている。バイパスライン14は、樹脂筒5を介さずに原水を使用場所に供給させるための流路を構成する。
【0031】
バイパスバルブ14aは、バイパスライン14に配設されている。バイパスバルブ14aは、バイパスライン14を開閉可能に構成されている。また、バイパスバルブ14aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0032】
塩水タンク6は、樹脂筒5の上方において、原水タンク2と並列に配設されている。塩水タンク6は、第1領域60と、第2領域61と、載置部62と、オーバーフロー管65と、を有して構成されている。第1領域60は、原水タンク2と補水ライン18により接続されており、原水タンク2から原水が供給されるように構成されている。第2領域61は、隔壁63により第1領域60と区画されている。第2領域61には、生成された飽和塩水が貯留される。飽和塩水は、載置部62に収容された後述の塩が第1領域60に貯留された原水に溶解することにより生成される。載置部62は、第1領域60及び第2領域61の上方に設けられている。載置部62と第1領域60及び第2領域61とは、第1領域60及び第2領域61の上方に設けられたネット64により区画されている。載置部62には、原水に溶解させるための塩が収容されている。オーバーフロー管65は、塩水タンク6に貯留される飽和塩水が所定の水位を超えた場合に、超過した飽和塩水を外部に排水する。
【0033】
塩水流下ライン15は、上流側が塩水タンク6の第2領域61に接続されており、下流側が第4分岐ポイント13cに接続されている。塩水流下ライン15は、イオン交換樹脂52を再生させるための塩水を樹脂筒5に供給するための流路を構成する。塩水流下バルブ15aは、塩水流下ライン15に配設されている。塩水流下バルブ15aは、塩水流下ライン15を開閉可能に構成されている。また、塩水流下バルブ15aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0034】
原水流下ライン16は、上流側が原水タンク2に接続されており、下流側が第4分岐ポイント13cに接続されている。原水流下ライン16は、飽和塩水を所定の濃度にするための原水及び塩水により再生されたイオン交換樹脂52を洗浄するための原水を樹脂筒5に供給するための流路を構成する。原水流下バルブ16aは、原水流下ライン16に配設されている。原水流下バルブ16aは、原水流下ライン16を開閉可能に構成されている。また、原水流下バルブ16aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0035】
排水ライン17は、上流側が樹脂筒5の下部に接続されており、下流側が外部に開放されている。排水ライン17は、樹脂筒5に滞留した滞留水、イオン交換樹脂52の再生に用いられた塩水及びイオン交換樹脂52の洗浄に用いられた原水等を外部に排出させるための流路を構成する。排水バルブ17aは、排水ライン17に配設されている。排水バルブ17aは、排水ライン17を開閉可能に構成されている。また、排水バルブ17aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0036】
循環ライン19は、上流側が軟水ライン13の第3分岐ポイント13bに接続されており、下流側が通水ライン12の第2分岐ポイント12cに接続されている。循環ライン19は、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水を循環させるための流路を構成する。
【0037】
第1循環バルブ19aは、循環ライン19の上流側に配設されている。第1循環バルブ19aは、循環ライン19の上流側を開閉可能に構成されている。また、第1循環バルブ19aは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。第2循環バルブ19bは、循環ライン19の下流側に配設されている。第2循環バルブ19bは、循環ライン19の下流側を開閉可能に構成されている。また、第2循環バルブ19bは、制御部7と電気的に接続されており、制御部7により開閉が制御されている。
【0038】
促進酸化処理装置8は、循環ライン19に配設されている。具体的には、促進酸化処理装置8は、第1循環バルブ19aと第2循環バルブ19bとの間に配設されている。促進酸化処理装置8は、紫外線、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸等による酸化処理を組み合わせた装置であり、樹脂筒5に滞留した滞留水に含まれる有機物を分解及び除去すると共に、滞留水を殺菌する。
【0039】
循環ポンプ9は、循環ライン19に配設されている。循環ポンプ9は、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水を吸引し、循環ライン19に向かって滞留水を圧送する。つまり、循環ポンプ9は、滞留水を循環させる。また、循環ポンプ9は、制御部7に電気的に接続されている。循環ポンプ9は、第2フロースイッチ10aからの検出信号が制御部7に出力されなくなってから所定時間(例えば、30分間)経過後であって、第3フロースイッチ10bから検出信号が出力されない場合に、所定時間(例えば、5分間)作動するように制御部7に制御されている。
【0040】
図2は、本実施形態に係る軟水装置を制御する制御部の電気的な接続構成の一部を示すブロック図である。図2に示すように、制御部7は、第1フロースイッチ4、第2フロースイッチ10a、第3フロースイッチ10b、通水ポンプ3、循環ポンプ9及びバルブ駆動部70に電気的に接続されている。制御部7は、第1フロースイッチ4、第2フロースイッチ10a及び第3フロースイッチ10bから出力される出力信号に基づき、通水処理又は循環処理のいずれかを判断し、通水ポンプ3又は循環ポンプ9を作動させると共に、通水処理又は循環処理を行うための各バルブの開閉をバルブ駆動部70に実行させる。また、制御部7は、イオン交換樹脂52の使用時間が所定時間経過すると、通水ポンプ3又は循環ポンプ9を停止させ、再生処理を行うための各バルブの開閉をバルブ駆動部70に実行させる。
【0041】
バルブ駆動部70は、通水バルブ12aと、軟水バルブ13aと、バイパスバルブ14aと、塩水流下バルブ15aと、原水流下バルブ16aと、排水バルブ17aと、第1循環バルブ19aと、第2循環バルブ19bと、電気的に接続されており、制御部7から出力される信号に基づき、各バルブを開閉させる。
【0042】
次に、本実施形態に係る軟水装置1が実行する通水処理、再生処理及び循環処理について説明する。
【0043】
まず、通水処理について説明する。この通水処理は、原水から生成された軟水をユーザに使用可能にする処理である。軟水装置1は、通常、この軟水処理の状態に設定されている。軟水処理が実行されると、制御部7は、通水バルブ12a及び軟水バルブ13aを開く。その結果、通水ライン12及び軟水ライン13が開放される。このとき、バイパスバルブ14a、塩水流下バルブ15a、原水流下バルブ16a、排水バルブ17a、第1循環バルブ19a及び第2循環バルブ19bは、閉じられた状態にあり、バイパスライン14、塩水流下ライン15、原水流下ライン16、排水ライン17及び循環ライン19は閉鎖されている。
【0044】
通水バルブ12aが開放されると、通水ライン12に原水が流れ、第1フロースイッチ4が所定の水流を検出する。第1フロースイッチ4が所定の水流を検出すると、第1フロースイッチ4は、制御部7に検出信号を出力する。制御部7は、第1フロースイッチ4からの検出信号を受信すると、通水ポンプ3を起動させる。通水ポンプ3が起動すると、通水ポンプ3により、原水タンク2に貯留される原水が吸引され、通水ライン12に向かって原水が圧送される。このとき、通水ライン12は、第1分岐ポイント12bでバイパスライン14と接続されているが、バイパスバルブ14aが閉じられた状態にあるため、原水がバイパスライン14に流通されることはない。同様に、通水ライン12は、第2分岐ポイント12cで排水ライン17及び循環ライン19と接続されているが、排水バルブ17a及び第2循環バルブ19bが閉じられた状態にあるため、原水が排水されることはなく、原水が循環ライン19に流通されることもない。
【0045】
通水ライン12に原水が圧送されると、樹脂筒5の底部から樹脂筒5の内部に原水が圧送される。樹脂筒5の内部に圧送された原水は、樹脂筒5の内部に充填されたイオン交換樹脂52により軟水化される。イオン交換樹脂52により軟水化された軟水は、樹脂筒5の上部から、さらに軟水ライン13に圧送される。このとき、軟水ライン13は、第5分岐ポイント13dでバイパスライン14と接続されているが、バイパスバルブ14aが閉じられた状態にあるため、軟水が軟水ライン13からバイパスライン14に流通されることはない。同様に、軟水ライン13は、第4分岐ポイント13cで塩水流下ライン15及び原水流下ライン16に接続されているが、塩水流下バルブ15a及び原水流下バルブ16aが閉じられた状態にあるため、軟水が塩水流下ライン15及び原水流下ライン16に流通することはない。同様に、軟水ライン13は、第3分岐ポイント13bで循環ライン19に接続されているが、循環バルブ019aが閉じられた状態にあるため、軟水が循環ライン19に流通されることはない。
【0046】
このようにして、軟水は、軟水ライン13を介してユーザの使用場所へと供給され、使用場所でのユーザによる蛇口の開閉等により使用可能となる。
【0047】
次に、軟水装置1の再生処理について説明する。この再生処理は、所定時間毎に(例えば、96時間毎に)使用されたイオン交換樹脂を再生させるための処理である。軟水装置1に用いられるイオン交換樹脂52は、所定量の軟水を採水すると、軟水化を行う能力が低下する。そのため、軟水装置1は、通水処理の状態で所定時間が経過すると、イオン交換樹脂52の再生処理を行うように設定されている。
【0048】
イオン交換樹脂52の再生処理は、イオン交換樹脂52に塩水を流通させることにより行われる。再生処理が実行されると、制御部7は、まず、塩水流下バルブ15a、原水流下バルブ16a、排水バルブ17a及びバイパスバルブ14aを開き、通水バルブ12a、軟水バルブ13a、第1循環バルブ19a及び第2循環バルブ19bを閉じる。その結果、塩水タンク6の内部に貯留された飽和塩水が塩水流下ライン15を介して重力により流下する。同様に、原水タンク2の内部に貯留された原水も原水流下ライン16を介して重力により流下する。飽和塩水と原水とは、第4分岐ポイント13cで混合され、所定濃度(約10%)の塩水となり、樹脂筒5の上部から樹脂筒5の内部に流下してイオン交換樹脂52を再生する。再生後の塩水は、排水ライン17を介して外部に排水される。このイオン交換樹脂52への塩水の流通は、所定時間(例えば、約15分)実行される。
【0049】
イオン交換樹脂52への塩水の流通が終了すると、次に、制御部7は、塩水流下バルブ15aを閉じる。その結果、原水タンク2の内部に貯留された原水のみが原水流下ライン16を介して樹脂筒5の内部に流下する。樹脂筒5の内部に原水が流通されると、原水は、イオン交換樹脂52の内部に残留する塩水を押し出しながら、イオン交換樹脂52を水洗する。なお、水洗後の原水は、排水ライン17を介して外部に排水される。イオン交換樹脂52の水洗は、所定時間(例えば、約60分)実行され、所定量の原水を樹脂筒5の内部に流下させて塩水を押し出すことにより完了する。
【0050】
再生処理は、イオン交換樹脂52に塩水を流通させ、その後、イオン交換樹脂52を水洗することにより終了する。再生処理が終了すると、軟水装置1は、通水処理の状態に戻る。
【0051】
なお、イオン交換樹脂52の再生時においては、バイパスバルブ14aを開き、バイパスライン14が開放されている。そのため、ユーザが使用場所で蛇口等を開くと、通水ライン12に所定の水流が発生する。通水ライン12に所定の水流が発生すると、第1フロースイッチ4が検出信号を制御部7に出力する。制御部7は、第1フロースイッチ4からの出力信号を受信すると、通水ポンプ3を起動させる。通水ポンプ3が起動すると、通水ポンプ3により、原水タンク2に貯留される原水が吸引され、バイパスライン14を介してユーザによる使用場所に原水が圧送される。このように、軟水装置1は、再生処理の実行時においては、ユーザに原水が供給される(原水供給状態)ように構成されている。
【0052】
次に、軟水装置1の循環処理について説明する。この循環処理は、軟水装置1の止水中に樹脂筒5の内部に滞留する滞留水を循環ライン19を介して循環させる処理である。軟水装置1は、長時間止水すると、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水にイオン交換樹脂52から無害の有機物が溶出する場合がある。同様に、滞留水に雑菌が繁殖する場合がある。そのため、本実施形態に係る軟水装置1は、軟水装置1が止水すると、滞留水を循環させて有機物の溶出及び雑菌の繁殖を防止すると共に、溶出した有機物の分解除去及び殺菌を行う循環処理を実行するように設定されている。
【0053】
なお、本実施形態においては、止水が検出されてから所定時間経過毎に、所定時間循環ポンプ9の作動を行うように設定されている。すなわち、止水が検出されてから所定時間が経過する毎に滞留水を所定時間循環させるように設定されている。例えば、5分間循環ポンプ9を作動した後、30分間循環ポンプ9を停止させる動作を繰り返すように設定されている。
【0054】
軟水装置1の循環処理は、循環ライン19に滞留水を循環させることにより行われる。通水処理状態の軟水装置1から循環処理が実行されると、制御部7は、まず、バイパスバルブ14a、第1循環バルブ19a及び第2循環バルブ19bを開き、通水バルブ12a、軟水バルブ13a、塩水流下バルブ15a、原水流下バルブ16a及び排水バルブ17aを閉じる。その結果、バイパスライン14及び循環ライン19が開放され、通水ライン12の一部、軟水ライン13の一部、塩水流下ライン15、原水流下ライン16及び排水ライン17が閉鎖される。
【0055】
次いで、制御部7は、循環ポンプ9を作動させる。循環ポンプ9は、間欠的に作動される。具体的には、循環ポンプ9は、5分間作動した後、30分間の停止を繰り返し実行される。循環ポンプ9が作動すると、循環ポンプ9は、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水を吸引し、循環ライン19に滞留水を循環させる。ここで、循環ライン19には、促進酸化処理装置8が配設されている。そのため、滞留水は、循環ライン19を循環することにより、促進酸化処理装置8によって有機物が分解除去されると共に、殺菌される。
【0056】
循環処理の実行時においては、バイパスバルブ14aが開かれ、バイパスライン14が開放されている。そのため、ユーザが使用場所で蛇口等を開く(軟水の要求がなされる)と、バイパスライン14を介して通水ライン12に所定の水流が発生する。通水ライン12に所定の水流が発生すると、第1フロースイッチ4が検出信号を制御部7に出力する。制御部7は、第1フロースイッチ4からの出力信号を受信すると、循環ポンプ9を停止させ、第1循環バルブ19a及び第2循環バルブ19bを閉じる。
【0057】
循環ポンプ9を停止させ、第1循環バルブ19a及び第2循環バルブ19bを閉じると、制御部7は、通水バルブ12a及び軟水バルブ13aを開くと共に、バイパスバルブ14aを閉じる。通水バルブ12a及び軟水バルブ13aを開き、バイパスバルブ14aを閉じると、制御部7は、通水ポンプ3を作動させる。通水ポンプ3が作動すると、通水ポンプ3により、原水タンク2に貯留される原水が吸引され、樹脂筒5に原水が通水されて軟水が生成されると共に、生成された軟水がユーザに供給される。このように、軟水装置1は、ユーザにより軟水が要求される(使用場所での蛇口の開放等)と、循環処理を中止し、通水処理の状態に戻るように構成されている。
【0058】
次に、通水処理から循環処理へ変更される場合の軟水装置1の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る軟水装置の制御動作を示すフローチャート図である。
【0059】
前述したように、軟水装置1は、通常は、通水処理の状態に設定されている。つまり、制御部7は、図3に示すように、前述の通水処理の状態に設定され、通水処理を実行している(ステップST10)。制御部7により、通水処理が実行されると、制御部7は、第2フロースイッチ10aから制御部7に所定の検出信号が出力されているか否かの判断を行う(ステップST20)。つまり、軟水装置1が通水状態にあるか、止水状態にあるかの判断を行う。
【0060】
ステップST20において、第2フロースイッチ10aから制御部7に所定の検出信号が出力されている場合には、軟水装置1は、樹脂筒5に原水が通水されていることとなる。そのため、制御部7は、第2フロースイッチ10aから所定の検出信号が出力されない状態、つまり、樹脂筒5に原水が通水されない状態(止水状態)になるまで前述の通水処理を繰り返す。
【0061】
一方、ステップST20において、第2フロースイッチ10aから所定の検出信号が検出されない場合には、軟水装置1は、樹脂筒5に原水が供給されていない状態、すなわち、止水状態にあると判断する。この場合においては、制御部7は、更に第3フロースイッチ10bから所定の検出信号が出力されているか否かの判断を行う(ステップST30)。つまり、制御部7は、ステップST30で軟水装置1が再生処理を行っているか否かの判断を行う。
【0062】
ステップST30において、第3フロースイッチ10bから制御部7に所定の検出信号が出力されている場合には、軟水装置1は、再生処理を行っていることとなる。この場合においては、制御部7は、ステップST20に戻り、再生処理が終わるまでこの判断を繰り返す。
【0063】
一方、ステップST30において、第3フロースイッチ10bから制御部7に所定の検出信号が出力されていない場合には、制御部7は、イオン交換樹脂52の再生処理が行われていない状態であると判断する。この場合においては、制御部7は、前述の循環処理を実行する(ステップST40)。前述したように、制御部7は、通水ポンプ3が作動されるまで、循環処理を繰り返す(ステップST50)。
【0064】
以上のように構成された本実施形態に係る軟水装置1によれば、以下のような効果が奏される。
【0065】
本実施形態に係る軟水装置1は、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水を循環させることが可能な循環ライン19と、循環ライン19に設けられ、滞留水から有機物を分解及び/又は除去する促進酸化処理装置8と、を備えて構成されている。また、軟水装置1は、樹脂筒5への原水の通水がない場合に、樹脂筒5に滞留する滞留水を循環ライン19を介して循環させるように構成されている。そのため、軟水装置1は、樹脂筒5に滞留する滞留水にイオン交換樹脂52から無害の有機物が溶出したり、滞留水に雑菌が発生することを防止又は抑制することが可能になる。これにより、軟水装置1は、例えば、排水を行うことなく、有機物の溶出や雑菌の発生に伴う臭いの発生や色水の混入を防止又は抑制することが可能になる。
【0066】
また、本実施形態に係る軟水装置1は、循環ライン19に促進酸化処理装置8が配設されている。そのため、軟水装置1は、例えば、滞留水に有機物が溶出した場合においても、循環ライン19を介して滞留水を循環させることにより、その有機物を分解除去することが可能になる。また、促進酸化処理装置8は、殺菌機能も有しているので、例えば、滞留水に雑菌等が発生した場合においても、循環ライン19を介して滞留水を循環させることにより、雑菌等を容易に殺菌することが可能になる。これにより、軟水装置1は、軟水の品質を向上させることが可能になる。
【0067】
また、本実施形態に係る軟水装置1は、促進酸化処理装置8が配設された循環ライン19に滞留水を循環させることにより、有機物の溶出や雑菌の発生に伴う臭いの発生や色水の混入等を防止又は抑制可能に構成されている。そのため、滞留水の排水処理を行う必要がなくなる。これにより、例えば、排水に基づく使用水量を減少させることが可能になり、結果として運転コストを低減させることが可能になる。
【0068】
また、本実施形態に係る軟水装置1は、止水中においては、間欠的に循環ポンプ9を作動させて、滞留水を循環させるように構成されている。そのため、軟水装置1は、連続的に循環ポンプを作動させる場合に比べて、運転エネルギーを節約することが可能になる。つまり、軟水装置1は、運転コストを減少させることが可能になる。
【0069】
なお、本発明は上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の具術的範囲は、これらに限定されるものではない。例えば、軟水装置1は、循環処理部として促進酸化処理装置8を用いて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。循環処理部は、例えば、オゾン酸化装置、紫外線酸化装置、活性炭濾過装置等であってもよい。すなわち、循環処理部は、有機物の分解及び除去、有機物の分解又は除去、殺菌等の処理を行うことが可能なものであればよい。
【0070】
また、本実施形態においては、軟水装置1は、原水の止水中に間欠的(30分毎に5分間)に循環ポンプ9を作動させ、樹脂筒5の内部に滞留する滞留水を、間欠的に循環させる構成としたが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、軟水装置1は、原水の止水中においては連続的に循環ポンプ9を作動させる構成としてもよい。連続的に循環ポンプ9を循環させることにより、間欠的に循環ポンプ9を作動する場合よりも、有機物の分解及び除去、有機物の分解又は除去、殺菌等の処理をより多く実行させることが可能になり、軟水の品質を向上させることが可能になる。
【0071】
また、本実施形態においては、原水の止水中において、循環ポンプ9を30分毎に5分間作動させる構成としたが、本発明においてはこれに限定されない。循環ポンプ9は、間欠的に循環されるように構成されていればよく、例えば、動作タイミングをユーザに設定されるように構成してもよい。
【0072】
また、軟水装置1は、例えば、滞留水の殺菌機能を有さない循環処理部を有する場合においては、通水時に滞留水を循環させると共に、定期的に滞留水を排水する排水処理を行う機能を付加したものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 軟水装置
2 原水タンク
3 通水ポンプ
4 第1フロースイッチ
5 樹脂筒
6 塩水タンク
7 制御部
8 促進酸化処理装置(循環処理部)
9 循環ポンプ
10a 第2フロースイッチ(第1検知部)
10b 第3フロースイッチ(第2検知部)
12 通水ライン
13 軟水ライン
14 バイパスライン
19 循環ライン
52 イオン交換樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を軟水化するイオン交換樹脂が充填された樹脂筒と、
前記樹脂筒に接続され、前記樹脂筒の内部に滞留する滞留水を循環可能に配設された循環ラインと、
前記循環ラインに設けられ、前記滞留水を循環させる循環ポンプと、
前記循環ラインに設けられ、前記滞留水から有機物を分解及び/又は除去する循環処理部と、
前記被処理水の前記樹脂筒への通水の有無を検知可能な第1検知部と、
前記第1検知部により前記被処理水が検知されない場合に、前記循環ポンプを作動させる制御部と、
を備えることを特徴とする軟水装置。
【請求項2】
前記循環処理部は、前記滞留水の殺菌を行う請求項1に記載の軟水装置。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂を再生させる再生液を検知可能な第2検知部を更に備え、
前記制御部は、前記第1検知部により前記樹脂筒に通水される前記被処理水が検知されず、かつ、前記第2検知部により前記再生液が検知されない場合に、前記循環ポンプを作動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟水装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記循環ポンプを連続的に作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軟水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記循環ポンプを間欠的に作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軟水装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−158651(P2010−158651A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4121(P2009−4121)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】