軟組織を同時に画像化しながら等角放射線治療を送達するためのシステム
増殖性の組織異常によって引き起こされる疾病の治療において、患者へと投与される高度に原体照射的な電離放射線の線量を直接測定して制御するため、強度変調放射線治療(IMRT)の最中に患者の体構造について、高い時間および空間分解能でのMR画像化を実行するための装置およびプロセス。本発明は、オープンMRI(0015)、マルチリーフ・コリメータ(125)または補償フィルタをベースとするIMRT(020)投与、およびコバルト遠隔治療の技術を、位置合わせされてガントリー(025)へと取り付けられた単一のシステムへと組み合わせている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年2月20日に出願された、米国仮特許出願番号60/546,670に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府支援の研究または開発に関する記述)
適用なし。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、放射線治療のシステムおよび方法に関し、さらに詳しくは、数日または数週間の経過にわたるいくつかの部分において、患者へと投与される実際の電離放射線量を割り出すことができ、器官の運動または患者の形状の変化によって生じる処置の投与の誤差を補償すべく治療を調節できるよう、放射線治療の際に患者へと線量が投与される瞬間において、患者の体構造を迅速かつ繰り返し画像化するための放射線治療システムおよび方法に関する。さらに、本発明において使用される磁気共鳴画像化法は、既存のX線コンピュータ断層撮影(CT)画像化に比べて軟組織のコントラストを改善し、代謝および生理に関するさらなる情報を提供して、対象の描写を改善し、治療に対する患者または疾病の応答の監視を可能にすることができる。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
がんおよび冠動脈再狭窄など、増殖性の組織異常によって引き起こされる疾病の放射線による治療においては、患者において疾病を含んでいることが分かっている部分、あるいは疾病を含んでいると考えられる部位が、照射される。この目的のため、放射線治療計画システムが使用され、まずは疾病部位および周囲の領域について計画用の画像が取得される。
【0005】
放射線治療計画システムは、一般的には、CTまたは磁気共鳴画像化(MRI)シミュレータを含んでいる。CTまたはMRI放射線撮影は、位置合わせされた複数の断面2‐D画像を取得するため、治療の開始前のある1日に行われる。これらの断面画像が、公知のアルゴリズムを使用して組み合わされ、3‐D画像が生み出される。これらの3‐Dシミュレーション画像が、放射線撮影から明らかである腫瘍や微視的な疾病の拡散が考えられる領域など、疾病が考えられる処置すべき領域の位置を特定するため、表示され、次いで分析される。処置すべきこれらの領域は、放射線治療ターゲットと呼ばれる。器官の運動を補償しようと試みるため、マージンおよび計画ターゲット体積(PVT)という考え方が、放射の大部分において望ましくはターゲットを含んでいると考えられる体積を照射しようと試みるために開発された。PVTは、患者の形状の変化または運動を補償するための形状マージンを含んでいる。同様に、3‐Dシミュレーション画像が、脊髄および肺などといった放射線によって損傷し得る重要な正常な体構造および組織を特定し、これらの組織の機能に対して放射線がもたらす潜在的影響を評価するため、表示され、次いで分析される。過剰な放射線から退避または保護されるべきこれらの領域は、重要構造または危険器官と呼ばれ、やはり患者の形状の変化または運動を補償するためのマージンを含むことができる。次いで、放射線治療の投与が、伝統的には、ただ1組のCTおよび/またはMRI画像から導き出された放射線治療ターゲットおよび重要構造についてのただ1つの静的なモデルについて、計画される。公知の技術においては、同時の画像化および治療が不可能であるため、正確な線量の投与のために、患者および患者の体内のすべての器官を、正確に再配置する必要がある。しかしながら、患者を正確に再配置することは、患者の設定すなわち患者の体の形状および整列を再現することが不可能であること、体重の減少または腫瘍の成長および収縮など、患者に生理学的変化が存在すること、ならびに、これらに限られるわけではないが呼吸運動、心拍、直腸の膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の運動など、器官が運動すること、などといったいくつかの要因により、線量のただ1回の投与のためであってさえも不可能であることが、当該分野において公知である。器官の運動が、単一の線量の投与の最中に変化が生じ得るように速い時間軸において生じる可能性があり(例えば、呼吸運動)(「フラクション内」器官運動と称される)、あるいは線量の投与の間に変化が生じ得るように遅い時間軸において生じる可能性がある(「フラクション間」器官運動と称される)ことに、注意すべきである。頭蓋の外側のがんの患者の治療処置の多くは、投与される放射線治療がフラクションに分けられることを必要としており、すなわち線量が多数のフラクションにて投与されることを必要としている。典型的には、線量が、1日当たり1回の1.8〜2.2Gyのフラクションまたは2回の1.2〜1.5Gyのフラクションにて投与され、週間労働時間(月曜日〜金曜日)の間に投与され、例えば70〜72Gyの累積線量の投与に2.0または1.8Gyにてそれぞれ7〜8週間を要する。本発明の目的は、数週間の放射線治療の全体を通じて、患者の設定誤差、生理学的変化、ならびにフラクション内およびフラクション間の両者の器官の運動によって放射線治療に課されている制約を、克服することにある。他の目的は、代謝および生理に関する情報を提供するMRIの実行、または疾病全体の成長または収縮の評価によって、医師が治療に対する患者の疾病の応答を定期的に監視できるようにすることにある。
【0006】
次いで、照射場の形状が、計画用画像に表われているターゲットの疾病領域または疾患があると考えられる領域の画像の輪郭に一致するように決定される。照射の角度が、疾病部分を含む幅広い領域の断面画像、または3‐Dシミュレーション画像によって生み出された特定の方向から見た透過画像から、決定される。照射角度から見た透過画像が表示される。次いで、オペレータが、表示された画像にもとづいて放射場の形状を決定し、放射場に対するアイソセンター(基準点)を設定する。
【0007】
必要に応じて、患者を、従来からのシミュレータ(放射線治療の設定のためポータル画像の生成を可能にする常用電圧X線画像化システム)に対して再配置することができる。上述のとおりに決定された照射角度に対応する照射角度が、シミュレータに設定され、画像が、基準の放射線写真として利用するために、一般的には放射線撮影によってフィルム上に放射線撮影される。同様のデジタル式に再現される放射線画像を、CTまたはMRIシミュレーション・ソフトウェアを使用して生成してもよい。
【0008】
次いで、患者が、典型的には線形加速装置である放射線源を一般的には備えている放射線治療装置に対して配置および拘束される。照射角度が、上述のとおり決定された照射角度に設定され、フィルム放射線撮影が、放射線治療装置から放射を発することによって実行される。この放射線フィルム画像を、放射線治療の手順に先立って患者ができる限り正確に計画に従って位置していることを確認するため、基準放射線写真として機能する上述のフィルム画像と相関させる。通常は、基準放射線写真内の構造が治療放射線画像内の構造に0.2〜0.5cmの許容誤差の範囲内で一致するように患者を再配置するため、いくらかの位置変更が必要とされる。患者が認容可能な位置にあることが確認された後、放射線治療が開始される。
【0009】
患者の設定誤差、生理学的変化、および器官の運動は、放射線治療のプロセスが進むにつれて、患者の放射線治療ターゲットおよび重要構造に対する処置用ビームの整列ずれの増加につながる。長年にわたり、実務家らは、放射線治療用のビームを使用して、専門的には「ポート・フィルム」と称される患者のハードコピー・フィルムを取得し、ビームの位置が元の計画から大きく変化していないことを確認しようと試みてきた。しかしながら、取得されるポート・フィルムは、一般的には、放射線治療のプロセスにおいてある所定の間隔(典型的には、1週間)で撮影されるただ1つの2‐D投射画像である。ポート・フィルムでは、器官の運動を補償することはできない。さらに、ポート・フィルムは、軟組織の体構造を有意なコントラストで画像化せず、患者の骨構造についてのみ信頼できる情報をもたらす。したがって、ずれについての情報は、ポート画像が取得された時点の瞬間においてのみもたらされ、骨構造と軟組織構造との整列が必ずしも相関しておらず時間とともに変化するため、誤りを引き起こす可能性がある。提供されるポート画像内の適切なマーカによって、ビームのずれを、ある限られた程度においてのみ割り出して修正することができる。
【0010】
より最近では、電子ポータル画像化と称されるが、ポート画像の電子的な取得が何人かによって開示されている。この画像化技法は、線形加速装置または関連のキロボルトX線ユニットのX線を使用して、患者のX線透過放射線画像を取得するために、固体半導体、シンチレータ、または液体イオン化チャンバ・アレイの技術を使用している。ハードコピーの技法と同様、ずれについてのデータは、ポート画像が取得された時点の瞬間においてのみもたらされる。電子ポータル画像化における他の最近の進歩として、軟組織の位置を画像化しようと試みる埋め込み間質性放射線不透過マーカの使用が挙げられる。これらの手順は、侵襲的であり、マーカの移動に左右される。多数の画像の迅速な取得によって実行されるときでさえも、軟組織内の放射線不透過マーカによって特定される不連続な点の移動を見つけるにとどまり、器官の運動の真の複雑さ、およびそれによって引き起こされる線量の誤差を補償することはできない。多数の2D電子ポータル画像から3D体積画像の組を生成する他の最近の進歩は、日々の治療の投与の前または後に、体積コーン・ビームX線CTまたはヘリカル断層治療メガボルトX線CT画像の組を取得することである。この技法は、患者の設定誤差、すなわち患者の体の形状および整列、体重の減少または腫瘍の成長および収縮などの患者における生理学的変化、ならびに直腸の充満および排泄など、フラクション間の患者の器官の運動を補償することができるが、フラクション内の患者の器官の運動を補償することはできない。フラクション内の器官の運動は、きわめて重要であり、これらに限られるわけではないが、呼吸運動、心拍、直腸のガス膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の動きが含まれる。
【0011】
放射線治療は、歴史的には、対象とする体積を含む体の大きな領域に対して投与されてきた。微視的な疾病の広がりの可能性を補償するために、いくらかの体積マージンが必要とされるが、マージンの多くは、処置の計画および放射線の投与における不確実さを補償するために必要とされる。照射される組織の総体積を少なくすることが、照射を受ける正常な組織の量を少なくし、したがって放射線治療からの患者に対する全体としての毒性を少なくするため、有益である。さらに、全体としての処置体積を小さくすることで、ターゲットへの線量の増大を可能にでき、腫瘍抑制の可能性を高めることができる。
【0012】
臨床コバルト(Co60放射性同位体源)治療ユニットおよびMV線形加速器(または、リニアック)は、1950年代の初めに、ほぼ同時代に導入された。最初の2つの臨床コバルト治療ユニットは、ほぼ同時に、1951年10月にOntario州のSaskatoonおよびLondonに設置された。臨床用のみを目的とする最初のMV線形加速器は、1952年の6月に英国LondonのHammersmith Hospitalに設置された。1953年の8月に、この装置によって初めての患者が処置された。これらの装置は、すぐにがん治療において幅広く使用されるようになった。深く進入するイオン化光子ビームが、すぐに放射線治療の大黒柱となり、奥深くに位置する腫瘍の広範囲に及ぶ非侵襲の処置を可能にした。X線治療の役割は、主として一時しのぎの治療から決定的な治癒の処置へと、これらの装置の登場によって徐々に変化した。その類似性にもかかわらず、コバルト・ユニットとリニアックとは、常に外部ビーム放射線治療における競合技術として考えられていた。この競合関係の結果、最終的には、米国および西欧においてはリニアックが支配的となった。コバルト・ユニットはきわめて単純であり、時間を経ても技術的に大きく改善されることがなかった。当然ながら、コバルト・ユニットの簡潔さは、その魅力のいくつかの理由であり、コバルト・ユニットはきわめて信頼性が高く、正確であり、保守および専門技術をあまり必要とせずに動作可能であった。これが、初期に、コバルト治療が最も広まった外部ビーム治療の一形態となることを可能にした。リニアックは、より技術集約的な装置である。電子の大きな流れを4〜25MeVのエネルギーまで加速して、制動放射光子または散乱電子のビームを生み出すことで、リニアックは、より鋭い境界を有してより進入性であるビーム、およびより高い線量の割合を可能にするはるかに多目的な装置であった。リニアックの信頼性が高くなるとともに、より進入性である光子ビームを電子ビームの追加と組み合わせて備えるという有益さが、既存のコバルト・ユニットに取って代わるための充分に強力な推進力と見られるようになった。コバルト治療は、何の反論もなく消え去ったわけではなく、その論争の本質は、リニアックに対するコバルト・ユニットの得失を説明したLaughlin、Mohan、およびKutcherによる1986年の有名な論文に記載されている。これは、コバルト・ユニットの継続およびさらなる技術的発展を弁護する訴訟からの論説を伴っていた。コバルト・ユニットおよびリニアックの利点は、すでに挙げた。コバルト・ユニットの欠点は、線量の進入深さが少ないこと、ソースの寸法により境界が大きいこと、エネルギーが少ない混入電子のため大きなフィールドについて表面の線量が大きいこと、および必須の規制監督であると見られていた。リニアックの欠点は、それらのエネルギー(したがって、低エネルギーのコバルト・ビームからの相違)が大きくなるとともに増大し、ビルドダウンの増加、電子の輸送による境界の増加、骨への線量の増加(対生成による線量の増加のため)、および最も重要なことには、10MVを超える加速電位での光中性子の発生であると見られていた。
【0013】
強度変調放射線治療(IMRT)以前の時代において、リニアックは、コバルト治療に対して決定的な利点を保持していた。4MVのリニアック加速電位を使用してコバルトにきわめて類似したビームを生み出すことができるという事実が、電子ビームまたはより進入性である光子ビームを生成できるというリニアックの能力と組み合わされて、リニアックを好ましいものとしていた。コバルト治療の価値がリニアック治療の価値に対して重み付けられたとき、照射場は手動によってのみ生み出され、IMRTの利益は存在しなかった。IMRTが発展するにつれ、より高いMVのリニアック加速電位のビームおよび電子ビームの使用は、この分野の人々によって大部分が断念された。これは、一部には、IMRTによって必要とされるビーム・オン時間の増大に関する中性子の生成(および、患者の体全体への線量の増加)に対する懸念の高まり、および電子ビームの最適化の複雑さによるものであるが、最も重要には、低MV光子ビームIMRTが、がん治療のすべての場所のために優れた品質の治療計画を生み出すことができるためである。
【0014】
IMRTは、静止物体について達成された高度の正確さおよび精密さの点まで、3D線量計算および最適化の改善の数十年の頂点を提示している。しかしながら、現在受け入れられている線量モデル化のパラダイムには、根本的な欠点が存在する。その問題は、患者が基本的には動的かつ変形し得る物体であって、フラクションに分けられた放射線治療において完璧に再配置することができないという事実とともにある。1回の線量の投与においてさえも、フラクション内の器官の運動が、かなりの誤差を引き起こす可能性がある。この事実にもかかわらず、放射線治療の投与は、伝統的に、放射線治療ターゲットおよび重要構造の静的なモデルについて計画されている。真の問題は、頭蓋の外部(すなわち、定位放射線治療を使用するCNS疾病の処置を除く)の放射線治療が、効果的であるためにフラクションに分けられる必要があり、すなわち1日当たり1つの1.8〜2.2Gyのフラクションまたは2つの1.2〜1.5Gyのフラクションで投与されなければならず、伝統的に週間労働時間(月曜日〜金曜日)の間に投与され、例えば70〜72Gyの治療用線量の投与に2.0または1.8Gyにてそれぞれ7〜8週間を要するという事実にある。この日々のフラクション化により、正確な線量の投与のために、患者および患者の体内の器官のすべてを正確に再配置することが必要となる。これが、放射線治療に、「実際の治療の最中にターゲットおよび重要構造が移動する場合、我々が開発した高度な線量計算および最適化のすべては何の役に立つのであろうか」というきわめて重要な疑問を提起する。器官の運動の研究についての最近の重要な再検討が2001年までの既存の文献を要約しており、患者の設定誤差および器官の運動という2つの最も有力な種類の器官の運動を示している。例えば、頭頸部がんにおける腫瘍のかなりの収縮など、患者においてかなりの生理学的変化がしばしば臨床的に観測されているが、それらはあまり研究されていない。器官の運動の研究は、フラクション間およびフラクション内の器官の運動にさらに分類され、この2つを明示的に分離することは不可能であると認識されており、すなわちフラクション内運動が、混同によってフラクション間運動の明快な観察を妨げていることは明らかである。婦人科の腫瘍、前立腺、膀胱、および直腸のフラクション間運動についてのデータが、肝臓、横隔膜、腎臓、膵臓、肺腫瘍、および前立腺のフラクション内運動についてのデータと同様、公開されている。公開に先立つ20年間にわたる多くの同業者の再検討した刊行物が、フラクション間およびフラクション内の器官の運動が放射線治療の線量測定に大きな影響をもたらす可能性があることを示している。これは、0.5〜4.0cmの変位が50人未満の患者の研究において一般に観察されているという事実に見られる。器官の運動の多数の観察についての平均の変位は小さいかもしれないが、頻繁ではないにせよ大きな変位が、患者の受け取る生物学的に有効な線量を、大きく変化させる可能性がある。というのも、広く認められているように、腫瘍の抑制を達成するためにフラクション当たりの正確な線量を維持しなければならないからである。非特許文献1によって最近公開されたフラクション内の器官の運動についてのより集中した検討においては、器官の運動に関係する線量の誤差に対処する重要性が、「・・・認容することができず、あるいは少なくとも望ましくない大きな運動が、いくらかの患者において生じ得ることに、議論の余地はない・・・」と簡潔に述べられている。さらに、器官の運動の問題が常に放射線治療における懸念であることが、Goiteinによって「患者が運動および呼吸をし、患者の心臓が鼓動し、患者の腸が運動することは、放射線が最初にがんの治療に使用されたときから知られている。それほど遠くない数十年においては、そのような運動のすべてをシミュレータの蛍光透視鏡で眺め、フィールドの縁のワイヤをターゲット(それを見ることができないことを気にせずに)がフィールド内にとどまるように充分に広く設定することだけが解決策であった」と説明されている。
【0015】
何週にもわたる放射線治療の全体を通じての患者の設定誤差、生理学的変化、および器官の運動によって放射線治療に課せられる制約に対処する試みにおいて、従来技術は、それぞれの放射の投与の前および後に体積CT「スナップ・ショット」を取得することができる画像化システムへと進化した。この放射線治療ユニットと放射線画像化設備との新規な組み合わせは、画像案内放射線治療(IGRT)と称され、好ましくは画像案内IMRT(IGIMRT)と称されている。この従来技術は、患者の設定誤差、ゆっくりとした生理学的変化、および放射線治療の長い推移にわたって生じるフラクション間の器官の運動を取り除く可能性を有している。しかしながら、この従来技術は、器官の運動のきわめて重要な一形態であるフラクション内の器官の運動を、補償することができない。この従来技術の装置は、患者の全体位置をずらすためだけにしか使用することができない。この従来技術は、フラクション内の器官の運動を捉えることができず、ヘリカルまたはコーン・ビームCT画像化が実行できる速度によって制約されている。第2には、おそらくは同程度に重要であるが、CT画像化が、患者へと投与される電離放射線の線量を増加させる。二次的発がんの発生が低‐中程度の線量の領域において生じること、および体全体への線量が多数回のCT画像調査を加えることによって増すことが、よく知られている。
【0016】
CT画像化およびMRIユニットは、どちらも1970年代に実演された。CT画像化は、X線減衰の物理的プロセスに由来する固有の空間的完全性により、初期に放射線治療の画像化の「標準」として採用された。MRIにおいて生じる空間ひずみの可能性にもかかわらず、MRIは、CT画像化に比べて軟組織のコントラストがはるかに良好であり、化学的な腫瘍の兆候または酸素生成のレベルなどの生理学および代謝の情報を画像化できるため、依然として放射線治療のための画像化の様相としてきわめて魅力的である。データの空間的完全性に影響を及ぼすMRIアーチファクトは、磁界の均一性の望ましくない変動に関係しており、1)磁石の設計に固有の磁界の不均一性および勾配スイッチングによって誘起される渦電流など、スキャナに起因するアーチファクト、および2)画像化対象に起因するアーチファクト、すなわち患者の固有の磁気感受性という2つのカテゴリに分離することができる。現代のMRIユニットは、注意深く特徴付けられ、スキャナに起因するアーチファクトを効果的に除去できる再現アルゴリズムを使用している。1.0〜3.0Tの範囲の強い磁界強度において、患者の磁気感受性が、大きなひずみ(磁界の強さに比例する)を生み出し得るが、これは最初に感受性画像化データを取得することによって、しばしば除くことができる。最近では、多数の学術研究センターが、放射線治療処置の計画にMRIを使用し始めている。強い磁界における患者関連のアーチファクトに対処するよりもむしろ、多くの放射線治療センターは、放射線治療処置の計画に0.2〜0.3Tの低い磁界のMRIユニットを使用している。なぜなら、これらのユニットは患者の感受性による空間的ひずみが無視できるレベルにまで減少させるからである。フラクション内の器官の運動に対処するために、MRIは、患者の動きをリアルタイムで追跡するために充分高速であり、容易に調節および配向が可能な視野を有しており、二次的ながんの発生率を増加させ得る患者への追加の電離放射線をもたらすことがないため、きわめて好ましい。最近では、呼吸により制御され肺活量計によってゲートされる高速多断面CTが、フラクション内の呼吸運動を評価またはモデル化する試みにおいて、多くの研究グループによって使用されている。高速の1断面MRIも、フラクション内運動の評価に使用されており、動的平行MRIは、フラクション内運動の体積画像化を実行することができる。MRIは、CT画像化においては患者へと投与される線量を増大させる必要があるため、高速の繰り返しの画像化に関してCTに対して決定的な利点を保持している。全身への線量に起因する二次的発がんの増加についての懸念は、IMRTにおいてすでに存在しており、繰り返しのCT画像化の追加によって大きく悪化する。
【0017】
従来技術において、2つの研究グループが同時に、リニアックに統合されたMRIユニットを開発しようと試みたようである。2001年に、MRIとリニアックとを一体化した装置を教示する特許が、Greenによって出願されている。2003年に、オランダのUtrecht大学のグループが、MRIとリニアックとを一体化した装置の設計を提示し、以後、それら装置の実現可能性を試験するための線量計算を報告している。CT画像化ユニットと反対に、MRIをリニアックに一体化させる大きな困難は、MRIの磁界がリニアックを機能不可能にする点にある。磁界
【0018】
【化1】
の存在下で速度
【0019】
【化2】
で運動している荷電粒子が、
【0020】
【化3】
によって与えられるローレンツ力に直面することは、周知である。MRIユニットによって生じるローレンツ力によって、電子が直線経路で移動することができなくなり、事実上リニアックをオフにするため、リニアックによる電子の加速が不可能になる。さらに、リニアックの高い無線周波数(RF)の放射が、MRIユニットのRF送受信システムに問題を引き起こし、画像の再現に必要とされる信号を劣化させ、おそらくは繊細な回路を破壊してしまう。リニアックとMRIユニットとの一体化は、途方もない技術的努力であり、未だ可能にされていない。
【0021】
強度変調放射線治療(IMRT)は、照射を腫瘍のサイズ、形状、および位置に一致させることができる外部ビーム治療の一種である。IMRTは、従来からの放射線治療に比べて大きな進歩である。IMRTの放射線治療の投与方法は、放射線治療の技術分野において知られており、非特許文献2に記載されている。このWebbの業績を、以下では「Webb 2001」と称し、その全体が本明細書中に参考として援用される。従来の放射線治療の有効性は、腫瘍の不完全な照準および不充分な放射線量によって制限されている。これらの制約により、従来の放射線は、過剰な量の健康な組織を照射にさらして、負の副作用または合併症を引き起こす可能性がある。IMRTによれば、当該分野(Webb 2001)において知られている基準によって定められるとおりの最適な3D線量分布が、腫瘍へと届けられ、周囲の健康な組織への線量が最小化される。
【0022】
典型的なIMRTの処置手順においては、患者が、疾病の照準のための代謝情報を得るために、おそらくはMRIシミュレーションまたは陽電子放射断層撮影(PET)調査が追加されるが、処置計画用X線CT画像化シミュレーションを受ける。走査が行われるとき、患者は、画像化が最高の精度で完了するよう、処置と一致するやり方にて動かぬように固定される。典型的には、放射線がん専門家または他の関連の医療専門家が、これらの画像を分析し、処置を必要とする3D領域、ならびに例えば脊髄および周囲の器官といった重要構造など、隔離を必要とする3D領域を決定する。この分析にもとづき、IMRT処置計画が、大規模最適化を使用して作られる。
【0023】
IMRTは、2つの先進技術に依拠している。第1は、逆方向治療計画である。高速なコンピュータを使用する高度なアルゴリズムによって、周囲の健康な組織の過剰な暴露を最小にしつつ所定の均一な線量を腫瘍へと届けるように意図された認容可能な治療計画が、最適化プロセスを使用して決定される。逆方向計画においては、照射ビームを構成する多数(例えば、数千)のペンシルビームまたはビームレットが、腫瘍または他の目標構造へと高精度で個々に照準される。最適化アルゴリズムによって、個々のビームレットの不均一な強度分布が、ある特定の臨床目的を達成するために決定される。
【0024】
IMRTを構成する第2の技術は、一般的には、マルチリーフ・コリメータ(MLC)を利用する。この技術が、逆方向治療計画システムから導き出された治療計画を投与する。リーフ・シーケンシングと呼ばれる別個の最適化が、ビームレット・フルエンスの組を、等価なリーフ移動指示または関連のフルエンスを有する静的開口の組へと変換するために使用される。MLCは、典型的には、治療計画からの強度プロファイルに従って照射ビームを遮断する特定のパターンを形成すべく移動するコンピュータ制御のタングステン・リーフで構成されている。MLC投与の代案として、減衰フィルタを、ビームレットのフルエンスに一致するように設計してもよい。本発明は、MLC投与が、フラクション内の器官の運動を補償すべく投与を速やかに調節できる一方で、減衰フィルタは能動的に調節することができないという事実を想定している。
【0025】
計画が生成され、品質管理チェックが完了した後、患者が処置用カウチに配置および固定され、最初のX線CTまたは磁気共鳴画像化のために実行された配置を再現しようと試みられる。次いで、照射が、MLC指示または減衰フィルタを介して患者へと投与される。次いで、このプロセスが、所定の累積線量が投与されたと考えられるまで、多数の週間労働時間にわたって繰り返される。
【0026】
磁気共鳴画像化(MRI)は、X線またはメガボルトX線CT画像化において使用される電離放射線を使用することなく、内部の体構造の詳細な画像を生成する先進の診断用画像化手順である。MRIの診断用画像化方法は、放射線医学および放射線治療の技術分野において公知であり、非特許文献3および非特許文献4に記載されている。非特許文献3および非特許文献4を、以下ではそれぞれ「Haackeら 1999」ならびに「LiangおよびLauterbur 2001」と称し、その全体が本明細書中に参考として援用される。MRIは、強力な主磁石、磁界勾配システム、無線周波数(RF)送受信機システム、および画像再構成用コンピュータ・システムを使用することによって、詳細な画像を生み出すことができる。開放磁気共鳴画像化(オープンMRI)は、MRI診断用画像化の進んだ一形態であり、画像化の際に患者を完全には囲まない主磁石形状を使用する。MRIは、CT画像化に比べて軟組織のコントラストがはるかに良好であり、分光学的検査により得られる化学的な腫瘍の信号または酸素生成のレベルなどの生理学および代謝の情報を画像化できるため、放射線治療のための画像化の様相としてきわめて魅力的である。軟組織のコントラストを改善するため、MRI用の多数のトレーサ剤が存在し、かつ開発中である(例えば、腎臓または腸管の強調のためのガドペンテト酸ジメグルミン、または全体コントラストのためのガドテル酸メグルミン)。炭素13、窒素15、または同様の安定な同位体物質を含んでいる過分極化液体あるいは常磁性のニオゾーム(niosomes)を使用することによってPET画像化に類似する腫瘍の代謝的検出を可能にする新規な造影剤が、現在開発中である。これら診断用MRI技法はすべて、疾病の正確な照準を向上させ、放射線治療における処置への応答の評価を容易にする。
【0027】
IMRT治療計画のためのCT走査は、場合によってはヨウ素含有コントラスト媒体の静脈内注射の後で、薄い断層(2〜3mm)を使用して行われ、軟組織および骨の窓およびレベルの設定で撮影される。磁気共鳴画像化(MRI)よりも幅広く利用可能であって、安価であるという利点を有しており、治療計画のための電子密度情報を得るために較正することができる。MRIによる調査が不可能であるある種の患者(閉所恐怖症、心臓ペースメーカ、動脈瘤クリップ、などのため)を、CTによって走査することができる。
【0028】
患者の設定誤差、生理学的変化、および放射線治療の最中の器官の運動の問題は、現在、放射線腫瘍学の分野において大きな関心および重要性を有する話題である。原体照射治療の精度が、線量のただ1回の投与の最中(フラクション内の変化;例えば、ガスによる直腸の膨張、尿による膀胱の充満、あるいは胸の呼吸運動などの器官の運動)および日々の線量の投与の間(フラクション間の変化;体重の増加および腫瘍の成長または収縮ならびに患者の形状の変化などの生理学的変化)の両者における患者の質量、位置、向き、および関節による幾何学的構成の変化、ならびにフラクション間およびフラクション内の器官の運動(例えば、呼吸の際の)によって大きく制約されることは、周知である。本件発明を除き、実際の線量の投与のそれぞれかつすべての最中にこれら逸脱のすべてを同時に補償する単一の効果的な方法は、知られていない。現在の技術水準の画像化技法は、放射線の投与の前および後において、患者の2Dおよび3Dメガボルトまたは常用電圧X線CT「スナップ・ショット」の撮影を可能にしており、あるいは放射線投与の最中に軟組織のコントラストを有していない時間分割の2D放射線画像を取得を可能にしている。
【0029】
原体照射治療において大きな進歩がなされてきているが、それらの本当の効果は、本発明によって提供される完全なリアルタイム画像化による案内および制御を欠いては、実現されない。「リアルタイム画像化」という用語は、放射ビームからの線量を投与しつつ、患者の形状において発生して大きな変化をもたらすあらゆるフラクション内の器官の運動を捉えて解像するために、充分に高速に取得できる繰り返しの画像化を意味する。リアルタイム画像化によって得られるデータが、患者における実際の線量の堆積の割り出しを可能にする。これは、運動している組織および目標へと投与された線量を合計するため、変形可能な位置合わせおよび補間の公知の技法を適用することによって達成される。放射ビームを患者に当てて線量を投与しつつ、複数週にわたる放射線治療の全体にわたって得たこのデータが、3D体内線量の定量的な割り出しを可能にする。このように、本発明は、器官の運動に関係する線量投与の誤差を評価し、抑制し、あるいは取り除く唯一の有効な手段を可能にする。
【非特許文献1】Goiteinら、Seminar in Radiation Oncology、2004年1月、第14巻第1号、p.2‐9
【非特許文献2】Steve Webb、「Intensity‐Modulated Radiation Therapy」、IOP Publishing、2001年、ISBN 0750306998
【非特許文献3】E.M.Haacke、R.W.Brown、M.R.Thompson、R.Venkatesan、「Magnetic Resonance Imaging:Physical Principles and Sequence Design」、John Wiley & Sons、1999年、ISBN 0‐471‐35128‐8
【非特許文献4】Z.‐P.LiangおよびP.C.Lauterbur、「Principles of Magnetic Resonance Imaging:A Signal Processing Perspective」、IEEE Press、2000年、ISBN 0‐7803‐4723‐4
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0030】
(発明の要旨)
本発明は、電離放射線治療用ビームを生成するための少なくとも1つ、おそらくはより多くの放射性同位体源、前記治療用ビームによってIMRTを実行するための少なくとも1つ、おそらくはより多くのMLCまたは減衰器システム、目標領域および周囲の健康な組織または重要構造を前記電離放射線の投与の最中に同時に画像化する磁気共鳴画像化(MRI)システム、および/またはすべての構成要素に伝達可能に接続されたコントローラを含んでいる放射線治療システムを提供する。MRIからもたらされた画像データが、実際に投与された電離放射線の線量の定量的評価を可能にするとともに、IMRTによって投与される電離放射線を目標領域へとより正確に案内するため、処置の投与の再最適化または再計画を可能にする。以下では、本発明の有益な実施形態を説明する。この有益な実施形態においては、オープンMRIの主磁石ヘルムホルツ・コイル対が、分割ソレノイドとして設計され、磁石の中央の円筒形の穴を通って患者カウチが走行し、IMRTユニットが、2つのソレノイド部分の間のすき間を通って患者に照準する(図1〜図4)。この実施形態においては、分割ソレノイドMRI(015)が静止したままである一方で、マルチリーフ・コリメータIMRTユニット(020)を備え、遮蔽され、位置合わせされている同位体放射源が、ガントリー(025)上でカウチを中心にして軸回転する(有益には、2つより多くの(020)を使用することができる)。患者(035)は、同時の画像化および処置のために患者カウチ(030)上に配置される。マルチリーフ・コリメータを備え、位置合わせされている同位体放射源(020)は、固定の主コリメータ(120)、二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)で視準される放射性同位体源(115)を含んでいる(図5〜図7)。
【0031】
この実施形態は、軸方向の処置ビームのアクセスをもたらすためにオープンMRIを回転させる必要性を除き、患者に沿って頭部‐尾部方向の磁界をもたらし、高速な画像取得のため並列多相アレイRF送受信機コイルを使用して改善されたMRI速度を可能にするため、有用である。
【0032】
次に、複雑さおよび計算の必要がさまざまである本発明のプロセスのさらなる有益な実施形態を説明する。これらのプロセスの実施形態はすべて、任意の装置の実施形態を使用することができる。これらのプロセスの実施形態はすべて、日々の放射線投与に先立って高分解能の診断用品質の体積MRIデータを取得するステップ、次いで放射線の投与の最中にリアルタイムのMRIデータを取得するステップを含むことができ、ここでリアルタイムのデータは、別の空間格子について採取されてもよく、あるいは取得の速度を向上させるべく低い信号対雑音比で採取されてもよい。1つの有益なプロセスの実施形態は、MRIデータを取得し、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を割り出すため、変形可能な画像の位置合わせおよび線量計算のための当該分野において公知の方法を、届けられるIMRTコバルト・ユニット・フルエンスへと適用する。次いで、それぞれ腫瘍の抑制の向上または副作用の軽減のために投与のフラクションを追加または減じるよう、患者の処置の補正を行うことができる。線量の評価とともに、患者の疾病のサイズおよび進行も日々を基準に評価される。
【0033】
第2の有益なプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与のそれぞれに先立ってIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を評価するため、先のプロセスと組み合わせられる。
【0034】
第3の有益なプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの投与に先立ってビームごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、一般的には、前記第1のプロセスが各ビームの投与の直前に実行されることを含んでいる。
【0035】
第4の有益なプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの各部分の投与の最中に瞬間ごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、前記第1のプロセスが放射の投与と同時にリアルタイムで実行されることを含んでいる。本発明は、低レイテンシのローカル・ネットワークによって有用に接続された多数のコンピュータを使用する並列計算の使用を予期しており、あるいは広域ネットワーク上のセキュアな接続を、MRI画像再現、変形可能な画像の位置合わせ、線量の計算、およびIMRTの最適化のための公知のアルゴリズムの速度を大きく向上させるために使用してもよい。
【0036】
他の局面において、さらに本発明は、放射線治療を加える方法であって、放射線治療を加えるための治療計画を決定するステップ、磁気共鳴画像化(MRI)システムを使用して被験体の体積内のターゲット領域の画像を取得するステップ、ターゲット領域を処置する治療用ビームでターゲット領域および重要構造の領域を照射するステップ、ならびにターゲット領域の照射の最中にターゲット領域および重要構造の領域の画像の取得を続けるステップを有しており、治療計画を、治療の最中に取得したターゲット領域および重要構造の領域の画像にもとづいて治療の最中に変更することができる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図面には、現在考えられる実施形態が示されているが、本発明が図示されている構成および手段そのものには限定されないことを、理解すべきである。
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明を、多数の変更および変種が当業者にとって明らかであるがためにあくまで例示を意図するものである以下の実施例において、さらに詳しく説明する。本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、そのようでないことが文脈から明らかでない限り、複数への言及を含んでもよい。同様に、本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、用語「・・・からなる(comprising)」は、「・・・で構成される」実施形態、および「・・・で基本的に構成される」実施形態を含み得る。
【0039】
本発明は、患者へと投与される高度に原体照射的な電離放射線の線量を直接測定して制御するため、強度変調放射線治療(IMRT)の最中に患者の体構造および疾病について、高い時間および空間分解能での磁気共鳴画像化(MRI)を実行するための装置およびプロセスの両者である。有益な実施形態において、本発明は、患者へのIMRT照射ビームでの軸方向のアクセスを可能にするオープンMRI、マルチリーフ・コリメータまたは補償フィルタをベースとするIMRT投与システム、ならびにコバルト60遠隔治療法の放射源の技術を、位置合わせされてガントリーに取り付けられた単一のシステムへと組み合わせている。
【0040】
すでに述べたように、従来の技術は、患者にビームを当てつつ放射線治療の投与の最中にリアルタイムで人間の内部軟組織の画像化を同時に行ってはいない。むしろ、放射線の投与の前および/または後に画像が生成され、これらの画像は、放射線の投与の最中に患者に生じ得る運動および/または自然な変化を反映していない。したがって、狙いをつけた照射も、本明細書に記載する本発明が存在しないと、初期の画像を撮影した後に処置対象の体の部位のサイズが自然に変化した場合、あるいは治療前に処置対象の体の部位の位置が変化した場合、すなわち患者の体構造の形状および整列に患者設定誤差が生じた場合、体重の減少または腫瘍の成長および収縮など、患者に生理学的変化が生じた場合、ならびにこれらに限られるわけではないが呼吸運動、心拍、直腸の膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の運動など、患者の器官が動いた場合に、成功しないであろう。
【0041】
本発明は、患者のリアルタイムのMRIを照射の投与と実質的に同時に実行し、処置対象の領域が患者の設定誤差、生理学的変化、およびフラクション間またはフラクション内の器官の運動によって引き起こされるいずれかの種類の線量の誤差を抱えている場合に、狙いをつけた放射を再調節することによって、これらの問題のすべての除去を助ける。これらに限られるわけではないが、ターゲットおよび体構造のサイズおよび/または位置の変化を補償すべく患者の位置を動かすこと、処置を完全に中断し、処置の再開前にさらなる計算を実行できるようにし、あるいは一時的な運動の休止を可能にすること、腫瘍抑制の可能性を高めるべく余分なフラクションの投与を追加し、あるいは副作用の可能性を少なくすべくフラクションの投与の数を制限すること、すでに説明した有益なプロセスの実施形態のいずれかを行うこと、ならびに例えばIMRT計画のすべての投与、すべてのビーム、またはすべてのセグメントについて再最適化を実行するなど、さまざまな時間軸についてIMRT治療計画の再最適化を行うこと、など、多数の対応をとることができる。
【0042】
本発明の有益な実施形態は、マルチリーフ・コリメータまたは自動補償フィルタ・システムを直交取り付けの「オープン」MRIユニットとともに回転ガントリーに取り付けて備えるコバルト‐60治療ユニットなどのコンピュータ制御コーン・ビーム・コバルト治療ユニットを含んでいる。図1に見られるように、IMRTコバルト・ユニット(020)が、コーン・ビーム形状の放射を軸オープンMRIユニット(015)の開口の中心に向かって投射するとともに、ガントリー(025)上で患者を中心として軸回転(患者の長手軸(頭部‐尾部)を中心として)する。調節可能な処置用カウチ(030)を、ビームの角度を変化させるためにガントリーが回転している最中に、患者を静止位置に支持するために使用することができる。
【0043】
本発明は、放射線治療としてコバルト遠隔治療を使用する。いくつかのIMRTは、より進入性の放射線治療を投与するための線形電子加速器を使用するが、加速器そのものは、放射される放射線のレベルに関してきわめてさまざまである処置ビームを生み出す。したがって、患者について使用されている放射線の量を正確に割り出して、MLCの動きをIMRT投与に強調させることが、困難になる。ガンマ線は、放射性の同位元素の分解によって発せられる電磁放射であり、典型的には約100KeVから1MeVをはるかに超えるが、役に立つイオン化を生み出すための充分なエネルギーを有している。放射線学の目的において最も有用なガンマ放射の放射性同位元素は、コバルト(Co60)、イリジウム(Ir192)、セシウム(Cs137)、イッテルビウム(Yb169)、およびツリウム(Tm170)であることが分かっている。このように、放射性同位元素の分解は周知の現象であり、したがってコバルト遠隔治療法によって放射される放射線は、より一貫しており、したがって患者のための処置の計画を用意するという点で、より計算が容易である。
【0044】
本発明のコバルトIMRTの実施可能性は、計算による分析によって実証されている。市販のコバルト治療ユニットおよびMLCによるIMRTの投与について、シミュレーションを実行した。コバルト・ビームレット・モデルでの3D画像ベースの放射線治療処置計画システムを委託し、Theratronics 1000Cコバルト治療ユニットからの測定済み放射線着色フィルム・データを使用して確認した。等方性の4×4×4mm3の線量ボクセル格子(γ線IMRTソースの半影に関して事実上シャノン‐ナイキスト制限である)を生成した。このビームレット・モデルを、公開されているデータに当てはめ、Cerrobendブロックによって形成されすでに報告された方法論を使用して測定された1×1cm2のビームレットの放射線着色フィルム測定結果で確認した。次いで、計算深さを、構造の標準的な三次元光線追跡で同じボクセルについて割り出した。計算された深さへの密度のスケーリングを、線量モデルにおいて組織の異質性をよりよく補償するために使用した。IMRT最適化のため密な列の取り扱いを含むバリア内点法の実行を使用するCPLEX,ILOG Concert Technologiesの産業用最適化ソルバーを、最適IMRT計画を解くために使用した。ビームレットのフルエンスを、各ビーム角度についてリーフ・シーケンシングのための5%のレベルまで分離した。得られる計画線量分布およびヒストグラムを、投与可能な不連続強度によって重み付けられた線量値を合計することによって計算した。リーフ伝達漏れ強度を、そうでなければゼロ強度であるビームレットについて、保守的に1.7%と評価した。最後に、治療計画のための投与の指示を生成するための発見的リーフ・シーケンシング最適化の標準的な方法を使用した。Virginia Medical Collegeの同時積分ブースト(SIB)というターゲット線量レベルの仕組みを、それが文献において支持されている最大の最大‐最小臨床処方線量比であって、最も困難な線量処方の仕組みを満足しているために採用した。頭部および頸部IMRTが、いくつかの理由でIMRT最適化のテストのための優れた基礎をもたらす。すなわち、1)ターゲットの均一な包含を維持しつつ唾液腺および他の構造を隔離するという明確な治療目標が存在する点、2)これらの目標を達成しようと試みることが、IMRT最適化を技術的限界までテストする点、および3)Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)のH‐0022 Phase I/II Study of Conformal and Intensity Modulated Irradiation for Oropharyngeal Cancerという大規模なフェーズI/IIの多施設の試行が、計画の基準の一般的な組を定めている点、である。調査される事例を、0°、51°、103°、154°、206°、257°、および309°というInternational Electrotechnical Commission(IEC)のガントリー角度を有する等間隔の7つのビームについて実行した。治療計画システムは、7つのビーム角度からターゲットを適切にカバーする1,289のビームレットを生成し、4mmの等方性のボクセル格子は、417,560のボクセルを生成した。結果が、図8および図9に示されている。本発明者らのシステムが、高線量ターゲットの95%のカバーを確保するために計画を正規化している点に注目すべきである。図8は、委託されたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRTの事例からの軸方向の線量分布を示している。ターゲットの優れた包含および組織の隔離を観測することができる。図9は、4mmのボクセルおよび1Gyの線量ビンを使用してリーフ・シーケンシングされ、漏れ補正された計画(すなわち、投与可能な計画)から導出されたDVHデータを示している。コバルト源にもとづくIMRTは、頭部‐頸部の患者について優れたIMRT治療計画を生成した。このγ線IMRTは、右耳下腺(RPG)を明確に隔離し、左耳下腺(LPG)および右顎下腺(RSMG)を30Gyにおいて体積50%未満に保ちつつ、ターゲット体積(CTVおよびGTV)の95%超を所定の線量以上でカバーできている。他のすべての構造は、許容値未満である。不特定の組織(SKIN)は、60Gy未満に保たれており、50Gyを超えるのは体積の3%未満であった。使用された最適化モデルは、Romeijnらにおいて公開されたものと同じであり、コバルト・ビームのためには変更されなかった。より大きな奥行きを有する前立腺および肺などの部位については、余分なビームまたはアイソセンタを追加することで、リニアックにもとづくIMRTと同じ臨床品質基準を達成できるコバルトIMRTを使用する治療計画の生成が可能であることが、当該分野において知られている。この実施可能性の実証は、コバルト治療ユニットが高品質のIMRTを提供できることを示している。
【0045】
磁界の存在下でのコバルトIMRTについての本発明の線量計算の実施可能性は、計算による分析によって実証されている。さらに、コバルト遠隔治療を使用することによって、本発明は、MRIの磁界にもとづいて計算をよりよく行うことができる。患者をMRI内に配置して放射線治療が実行されるとき、磁界が、狙いを付けた放射をわずかに偏向させる。したがって、治療計画を決定するために使用される計算は、この偏向を考慮に入れなければならない。真空中で速度
【0046】
【化4】
で運動する荷電粒子は、磁界
【0047】
【化5】
の存在下において、
【0048】
【化6】
によって与えられるローレンツ力に直面する。この力は、役に立つイオン化光子および電子の物体との相互作用の物理学を大きく変化させるほどには充分に大きくないが、イオン化電子の全体的な輸送、したがって得られる線量分布に影響を及ぼし得る。二次電子の輸送に対する磁界の影響は、50年よりも前から始まって、物理学の文献においてよく研究されている。最近の研究は、患者における局所的な線量の体積を増加させるために一次または二次電子の合焦または捕捉を助けるため局所化された磁界を使用する試みにおいて、モンテカルロ・シミュレーションおよび分析的分析を使用している。これらの研究はすべて、ローレンツ力で電子の輸送を横方向に閉じ込めるため、磁力線をビーム軸の方向に整列させつつ調査されている(「長手方向の」磁界と称され、ここで長手という用語は、患者ではなくビームを指している)。約1.5〜3.0Tの間の磁界の強磁界のMRIにおいて、旋回の初期の半径が二次電子の大角度散乱相互作用(制動放射、弾性散乱、および強衝突(hard collisions))のMFPに比べて小さく、この状況が電子の所望の捕捉または合焦をもたらすことが知られている。電子がエネルギーを失うと、
【0049】
【化7】
に比例して半径が小さくなり、大角度散乱相互作用(CSDA)が存在しないとき、電子は停止するまで半径の減少する螺旋に従う。この螺旋は、電子のフルエンスを変化させ得るが、何ら有意なシンクロトロン放射を生まないことが知られている。本発明においては、平行なMRIでリアルタイムの画像化が可能であるために、磁界が照射ビームに対して直交していなければならない。最近の研究が、6MVリニアック・ビームのビーム軸に直交する1.5Tの磁界が、6MVリニアック・ビームレットについて、水への線量分布を大きくかき乱し得ることを示している。このような線量分布のひずみの回避、および画像化データの空間的完全性を損ない得るMRIアーチファクトの防止の両者のため、本発明の有益な実施形態は、磁界を患者の上下方向に沿って導くことができる低磁界オープンMRIの設計を使用する(図1を参照)。コバルトγ線からの二次電子についての旋回の半径の簡単な評価が、旋回の半径が電子の大角度散乱相互作用のMFPよりもはるかに大きいことを示している。これは、ローレンツ力が磁界の大きさ
【0050】
【化8】
に比例し、旋回の半径が磁界(104)に反比例するため、容易に理解できる。本発明者らは、スラブ・ファントム形状のコバルトγ線源からのビームレットのモデル化を、よく検証されたIntegrated Tiger Series(ITS)Monte Carlo packageおよびそのACCEPTMサブルーチンを磁界中での輸送について使用して実行した。シミュレーションのため、0.1MeVの電子および0.01MeVの光子の輸送エネルギーのカットオフ、標準的な凝縮されたヒストリー・エネルギー格子(ETRANアプローチ)、ランドー分布からサンプルしたエネルギー・ストラグリング、ベーテ理論にもとづく質量衝突停止パワー、デフォルトの電子輸送サブステップ・サイズ、および束縛効果を含んでいる非コヒーレントな散乱を使用した。3組のシミュレーションを実行し、各組は、ビーム方向に平行な0.3Tの一様な磁界の存在下および非存在下での実行を含んでいた。2cmの円形コバルトγ線ビームレットを、以下の形状についてモデル化した。すなわち、30×30×30cm3の水ファントム、10cmの肺密度(0.2g/cc)水スラブを5cmの深さに有する30×30×30cm3の水ファントム、および10cmの空気密度(0.002g/cc)水スラブを5cmの深さに有する30×30×30cm3の水ファントムである。シミュレーションは、推定される線量において1パーセント未満の標準偏差を得るため、8〜30時間にわたってP4 1.7GHz PCで3000万〜1億のヒストリーにて実行された。結果は図10〜12に示されている。図10は、本発明の有益な実施形態において存在するような0.3Tの直交一様磁界が、軟組織または骨における線量分布を測定可能なほどにはかき乱さないことを明確に証明している。本発明にとってきわめて有用な処置部位は、体内で最も顕著な組織異質性を含んでいる肺および胸部である。図11に示されているように、ファントムに12cmの肺密度(0.2g/cc)の水スラブを加えることで、高および低密度の領域の境界において、線量にきわめて小さいが検出可能である乱れが引き起こされている。これらの乱れは、補正なしで認容可能な臨床適用を可能にするために充分小さい。図12において、最後に我々は、低密度の領域および境界領域に大きく存在する顕著な乱れを観測した。これは、空洞が、正確な線量測定に関して最大の課題を有することを示している。しかしながら、低密度の媒体との境界を除くと、軟組織および(MFPが軟組織よりもさらに短くなる)骨において大きな乱れは存在しないはずである。このデータは、低磁界(0.2〜0.5テスラ)のMRIでの本発明の有益な実施形態において、線量の乱れは、組織が存在していないため正確な線量測定が必要とされない空洞の内側を除き、小さいことを示している。コバルト遠隔治療ユニットなどの公知の放射線源を使用することによって、MRI磁界の強さが既知であれば、偏向の量を容易に割り出すことができる。しかしながら、磁界の強さが既知であっても、線形加速器が使用される場合には、未知である放射のエネルギー・スペクトルが計算をはるかに困難にする。
【0051】
陽子、重イオン、および中性子など、MRIユニットから離れた加速器またはリアクタによって生み出されてビームによって患者へと運ばれるMRIユニットの動作を大きくは妨げない他の放射源も、本発明に含まれる。
【0052】
さらに、MRI磁界の強度が計算に織り込まれ、結果として、オープンMRIの使用がクローズドMRIに対する利点を提供する。オープンMRIにおいては、一般的に、生成される磁界の強度がクローズドMRIの磁界よりも小さい。したがって、オープンMRIからもたらされる画像は、より多くの雑音を有しており、より高磁界のクローズドMRIからの画像ほど明瞭でなく、かつ/または明確でない。しかしながら、クローズドMRIのより強力な磁界は、オープンMRIのより弱い磁界に比べ、放射線治療をより大きく偏向させる。したがって、所与の治療計画にとって最も有益な特徴に依存して、本発明は、クローズドMRIが使用可能であることも予期している。しかしながら、計算が容易であり、かつ/またはわずかに明瞭さに劣る治療時の画像であっても大部分の治療計画を調節するために充分であるため、本発明は、大きな線量の乱れを除き、空間的な画像化ひずみを防止し、高速な平行位相アレイMRIを可能にするため、図1に示した形状のオープンMRIがコバルト遠隔治療とともに使用されることを予期している。
【0053】
オープンMRIおよびコバルト遠隔治療を使用することによって、本発明は、放射線治療の最中の患者の三次元(3D)画像化を提供する。したがって、ターゲット領域の3D画像およびターゲット領域の計画用画像を使用することによって、変位が割り出され、放射線治療プロセスの最中に受け取られる連続的な3D画像にもとづいて更新される。次いで、得られた情報を使用し、測定された変位が所定の限界の範囲外にある場合など、照射プロセスの最中の変位を少なくすべく患者を処置ビームに対して移動させることができる。次いで、移動の後に、照射のプロセスを継続することができる。あるいは、処置用ビームを移動させてもよい。移動は、治療の最中に行われてもよく、あるいは治療を中断して、移動を行ってもよい。
【0054】
治療の最中に3D画像を使用し、それらの画像を放射線治療プロセスの最中に迅速に患者を配置および/または調節するために使用することによって、治療の精度を大きく改善することができる。照射が加えられている間に患者の位置がずれた場合、このずれを、位置の調節によって緩和することができる。可能な線量の段階的増大に加え、位置精度の改善によって、従来のシステムを使用する放射線では処置できないと現在考えられている腫瘍の治療が可能になる。例えば、初期の脊髄腫瘍および脊髄転移は、そのような重要な機能の体構造領域の病変を処置するためには高い精度が必要であるため、典型的には、従来の放射線システムでは処置されていない。処置の最中の3D画像化がもたらす精度の向上は、これらの種類の腫瘍の処置を実現可能にする。肺、胸上部、およびフラクション内の器官の運動が放射線治療の線量に問題を生じさせることが知られている他の領域に位置するターゲットについても、改善が予想される。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、実際の患者の位置を計画および放射線治療の両者において得られた画像化情報に相関させるために使用できる患者の位置を追跡するための別個の案内システムを含むことができる。本発明のこの部分は、患者の設定および治療の投与の段階の全体にわたって、更新可能な画像の相関および位置情報をもたらすことによって、たとえ患者が治療用装置の座標系に直交しない位置に動いた場合でも、患者の位置決めの容易さを大きく向上させることができる。非共面の処置位置において患者の位置を監視できるこの能力は、従来の放射線治療システムに対する大きな改善であり得る。一有益な実施形態においては、案内システムが、患者を乗せて再配置するための調節可能なベッドまたはカウチを含むことができる。他の有益な実施形態においては、案内システムが、MRIおよびコバルト治療ユニットの実質的に同時の移動を可能にするガントリーを備えることができる。いくつかの有益な実施形態は、ガントリーおよび調節可能なベッドまたはカウチの両者を含んでいる。
【0056】
本発明は、これらに限られるわけではないが、患者の処置対象面積、放射の強度、MRI磁界の強度、放射線ユニットに対する患者の位置、処置の最中の患者の変化、ならびに/あるいは処置の最中の患者および/または放射線ユニットに必然の位置の変化など、種々の要因を考慮するコンピュータ・プログラムの使用にもとづいて、初期の放射線治療および/または治療計画への変更を決定する。次いで、得られるIMRTがプログラムされ、治療処置が開始される。
【0057】
本発明において使用されるような強度変調放射線医療(IMRT)について治療計画を決定するための一実施形態は、患者の三次元の体積を、それぞれがそれぞれあるビームレット強度を有している複数のビームレットから所定の線量の放射線を受け取る線量ボクセルの格子へと分割するステップ、および放射線の投与を最適化するため、凸目的関数を備える凸計画モデルを用意するステップを含んでいる。このモデルが、大域的最適フルエンス・マップを得るために解かれ、フルエンス・マップが、複数のビームレットのそれぞれについてのビームレット強度を含んでいる。この方法は、関連の出願U.F.開示番号11296号にさらに詳しく説明されている。
【0058】
一般に、治療計画を決定するために使用される方法は、一有益な実施形態においては、内点法およびその変種である。この方法は、効率が高く、結果として一般に計算時間が短いため、有益である。内点法は、Steven J.Wrightによる「Primal‐Dual Interior‐Point Methods」という書籍(SIAM Publications、1997、ISBN 089871382X)に説明されている。Primal‐Dualアルゴリズムは、最も有益かつ有用なアルゴリズムとして内点クラスから現われた。Wrightは、path‐followingアルゴリズム(short‐およびlong‐step、predictor‐corrector)、potential‐reductionアルゴリズム、およびinfeasible‐interior‐pointアルゴリズムなど、線形計画のための主要なPrimal‐Dualアルゴリズムを開示している。
【0059】
ひとたび治療計画が決定されると、本発明は、医師が確実に治療計画に従うことができるようにする。処置対象の患者が、MRIに配置される。処置対象領域の画像が取得され、MRIが当該領域の3D画像を伝えるべく続けられる。治療計画がコバルト放射線遠隔治療ユニットに入力され、処置が開始される。処置の最中に、処置対象領域の連続画像が観察される。患者が動いた場合、あるいは処置対象の領域のサイズが変化した場合など、処置対象の領域の位置が変化した場合に、本発明は、治療を中断することなく治療計画を計算し直し、さらに/あるいは患者または放射線ユニットを調節する。あるいは本発明は、治療を中止し、治療計画を計算し直し、治療の再開に先立って患者および/または放射線ユニットを調節する。
【0060】
本発明は、患者の治療の精度の向上に使用できる複数のプロセスの実施形態を予期している。一プロセスの実施形態は、MRIデータを取得し、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を割り出すため、変形可能な画像の位置合わせおよび線量計算のための当該分野において公知の方法を、届けられるIMRTコバルト・ユニット・フルエンスへと適用する。次いで、それぞれ腫瘍の抑制の向上または副作用の軽減のために投与のフラクションを追加または減じるよう、患者の処置の補正が行われる。線量の評価とともに、患者の疾病のサイズおよび進行も日々を基準に評価される。
【0061】
第2のプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与のそれぞれに先立ってIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を評価するため、先のプロセスと組み合わせ可能である。
【0062】
第3のプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの投与に先立ってビームごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、前記第1のプロセスが各ビームの投与の前に迅速に実行されることを含んでいる。
【0063】
第4のプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの各部分の投与の最中に瞬間ごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスも、前記第1のプロセスが放射の投与と同時にリアルタイムで実行されることを含んでいる。本発明は、低レイテンシのローカル・ネットワークによって有用に接続された多数のコンピュータを使用する並列計算の使用を予期しており、あるいは広域ネットワーク上のセキュアな接続を、MRI画像再現、変形可能な画像の位置合わせ、線量の計算、およびIMRTの最適化のための公知のアルゴリズムの速度を大きく向上させるために使用してもよい。
【0064】
次に、まず図1から、図面について具体的な詳細を参照するが、図面においては、いくつかの図面を通じて、同様の参照番号が同様または等価な要素を指し示している。
【0065】
図1においては、本発明が、一実施形態において、本発明のシステムを示しており、オープンMRI015およびIMRTコバルト治療ユニット020を有している。さらにこのシステムは、MLCまたは補償フィルタ・ユニットなどのIMRTを実行するための手段を020に含んでおり、MRI015を静止させつつコバルト・ユニット020を回転させるために使用できるガントリー025を含んでいる。患者035が、調節可能な静止カウチ030上でシステム内に配置されている。
【0066】
図2は、使用時のシステムを示しており、ガントリー025が時計方向にほぼ90°回転させられている。したがって、コバルト治療ユニット020は、多数の選択位置の1つにおいて患者035を処置するための位置にある。図3は、図1のシステムの上面図である。図4は、図1のシステムの側面図である。
【0067】
以上、本明細書の例示の実施形態について、添付の図面および実施例を参照しつつ説明したが、これらの開示がそれら正確な実施形態に限定されるものではなく、本明細書の開示の技術的思想の範囲から離れることなく当業者によって種々の他の変更または変形が可能であることを、理解すべきである。そのような変更または変形はすべて、添付の特許請求の範囲によって定められる本開示の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】開放分割ソレノイド磁気共鳴画像化装置(015)、マルチリーフ・コリメータを備え遮蔽され位置合わせされた同位体放射源(020)(有益な実施形態において2つ以上の020を適用できる点に注意すべきである)、(020)の角度を変化させるためのガントリー(025)、患者カウチ(030)、ならびに同時の画像化および処置のための位置にある患者(035)を含んでいる放射線治療システムの概略である。
【図2】ガントリーの回転を示しており、マルチリーフ・コリメータを備え遮蔽され位置合わせされた同位体放射源(020)が、右側方ビーム位置から前方‐後方のビーム位置へと回転させられている。
【図3】図1のシステムの上面図である。
【図4】図1のシステムの側面図である。
【図5】図1に(020)として示したマルチリーフ・コリメータを備え位置合わせされた同位体放射源の詳しい概略である。放射性同位体源(115)が、固定の主コリメータ(120)、二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)を備えて示されている。
【図6】二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)の斜視図である。
【図7】放射性同位体源(115)、二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)をビームから見た図である。
【図8】コミッションされたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRT事例からの軸方向の線量分布を示している。
【図9】コミッションされたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRT事例から導出されたDVHデータを示している。
【図10】0.3テスラの磁界の存在下および非存在下における、水中でのコバルト・ビームレット線量分布である。
【図11】0.3テスラの磁界の存在下および非存在下における、水中および肺中でのコバルト・ビームレット線量分布である。
【図12】0.3テスラの磁界の存在下および非存在下における、水中および空気中でのコバルト・ビームレット線量分布である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年2月20日に出願された、米国仮特許出願番号60/546,670に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府支援の研究または開発に関する記述)
適用なし。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、放射線治療のシステムおよび方法に関し、さらに詳しくは、数日または数週間の経過にわたるいくつかの部分において、患者へと投与される実際の電離放射線量を割り出すことができ、器官の運動または患者の形状の変化によって生じる処置の投与の誤差を補償すべく治療を調節できるよう、放射線治療の際に患者へと線量が投与される瞬間において、患者の体構造を迅速かつ繰り返し画像化するための放射線治療システムおよび方法に関する。さらに、本発明において使用される磁気共鳴画像化法は、既存のX線コンピュータ断層撮影(CT)画像化に比べて軟組織のコントラストを改善し、代謝および生理に関するさらなる情報を提供して、対象の描写を改善し、治療に対する患者または疾病の応答の監視を可能にすることができる。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
がんおよび冠動脈再狭窄など、増殖性の組織異常によって引き起こされる疾病の放射線による治療においては、患者において疾病を含んでいることが分かっている部分、あるいは疾病を含んでいると考えられる部位が、照射される。この目的のため、放射線治療計画システムが使用され、まずは疾病部位および周囲の領域について計画用の画像が取得される。
【0005】
放射線治療計画システムは、一般的には、CTまたは磁気共鳴画像化(MRI)シミュレータを含んでいる。CTまたはMRI放射線撮影は、位置合わせされた複数の断面2‐D画像を取得するため、治療の開始前のある1日に行われる。これらの断面画像が、公知のアルゴリズムを使用して組み合わされ、3‐D画像が生み出される。これらの3‐Dシミュレーション画像が、放射線撮影から明らかである腫瘍や微視的な疾病の拡散が考えられる領域など、疾病が考えられる処置すべき領域の位置を特定するため、表示され、次いで分析される。処置すべきこれらの領域は、放射線治療ターゲットと呼ばれる。器官の運動を補償しようと試みるため、マージンおよび計画ターゲット体積(PVT)という考え方が、放射の大部分において望ましくはターゲットを含んでいると考えられる体積を照射しようと試みるために開発された。PVTは、患者の形状の変化または運動を補償するための形状マージンを含んでいる。同様に、3‐Dシミュレーション画像が、脊髄および肺などといった放射線によって損傷し得る重要な正常な体構造および組織を特定し、これらの組織の機能に対して放射線がもたらす潜在的影響を評価するため、表示され、次いで分析される。過剰な放射線から退避または保護されるべきこれらの領域は、重要構造または危険器官と呼ばれ、やはり患者の形状の変化または運動を補償するためのマージンを含むことができる。次いで、放射線治療の投与が、伝統的には、ただ1組のCTおよび/またはMRI画像から導き出された放射線治療ターゲットおよび重要構造についてのただ1つの静的なモデルについて、計画される。公知の技術においては、同時の画像化および治療が不可能であるため、正確な線量の投与のために、患者および患者の体内のすべての器官を、正確に再配置する必要がある。しかしながら、患者を正確に再配置することは、患者の設定すなわち患者の体の形状および整列を再現することが不可能であること、体重の減少または腫瘍の成長および収縮など、患者に生理学的変化が存在すること、ならびに、これらに限られるわけではないが呼吸運動、心拍、直腸の膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の運動など、器官が運動すること、などといったいくつかの要因により、線量のただ1回の投与のためであってさえも不可能であることが、当該分野において公知である。器官の運動が、単一の線量の投与の最中に変化が生じ得るように速い時間軸において生じる可能性があり(例えば、呼吸運動)(「フラクション内」器官運動と称される)、あるいは線量の投与の間に変化が生じ得るように遅い時間軸において生じる可能性がある(「フラクション間」器官運動と称される)ことに、注意すべきである。頭蓋の外側のがんの患者の治療処置の多くは、投与される放射線治療がフラクションに分けられることを必要としており、すなわち線量が多数のフラクションにて投与されることを必要としている。典型的には、線量が、1日当たり1回の1.8〜2.2Gyのフラクションまたは2回の1.2〜1.5Gyのフラクションにて投与され、週間労働時間(月曜日〜金曜日)の間に投与され、例えば70〜72Gyの累積線量の投与に2.0または1.8Gyにてそれぞれ7〜8週間を要する。本発明の目的は、数週間の放射線治療の全体を通じて、患者の設定誤差、生理学的変化、ならびにフラクション内およびフラクション間の両者の器官の運動によって放射線治療に課されている制約を、克服することにある。他の目的は、代謝および生理に関する情報を提供するMRIの実行、または疾病全体の成長または収縮の評価によって、医師が治療に対する患者の疾病の応答を定期的に監視できるようにすることにある。
【0006】
次いで、照射場の形状が、計画用画像に表われているターゲットの疾病領域または疾患があると考えられる領域の画像の輪郭に一致するように決定される。照射の角度が、疾病部分を含む幅広い領域の断面画像、または3‐Dシミュレーション画像によって生み出された特定の方向から見た透過画像から、決定される。照射角度から見た透過画像が表示される。次いで、オペレータが、表示された画像にもとづいて放射場の形状を決定し、放射場に対するアイソセンター(基準点)を設定する。
【0007】
必要に応じて、患者を、従来からのシミュレータ(放射線治療の設定のためポータル画像の生成を可能にする常用電圧X線画像化システム)に対して再配置することができる。上述のとおりに決定された照射角度に対応する照射角度が、シミュレータに設定され、画像が、基準の放射線写真として利用するために、一般的には放射線撮影によってフィルム上に放射線撮影される。同様のデジタル式に再現される放射線画像を、CTまたはMRIシミュレーション・ソフトウェアを使用して生成してもよい。
【0008】
次いで、患者が、典型的には線形加速装置である放射線源を一般的には備えている放射線治療装置に対して配置および拘束される。照射角度が、上述のとおり決定された照射角度に設定され、フィルム放射線撮影が、放射線治療装置から放射を発することによって実行される。この放射線フィルム画像を、放射線治療の手順に先立って患者ができる限り正確に計画に従って位置していることを確認するため、基準放射線写真として機能する上述のフィルム画像と相関させる。通常は、基準放射線写真内の構造が治療放射線画像内の構造に0.2〜0.5cmの許容誤差の範囲内で一致するように患者を再配置するため、いくらかの位置変更が必要とされる。患者が認容可能な位置にあることが確認された後、放射線治療が開始される。
【0009】
患者の設定誤差、生理学的変化、および器官の運動は、放射線治療のプロセスが進むにつれて、患者の放射線治療ターゲットおよび重要構造に対する処置用ビームの整列ずれの増加につながる。長年にわたり、実務家らは、放射線治療用のビームを使用して、専門的には「ポート・フィルム」と称される患者のハードコピー・フィルムを取得し、ビームの位置が元の計画から大きく変化していないことを確認しようと試みてきた。しかしながら、取得されるポート・フィルムは、一般的には、放射線治療のプロセスにおいてある所定の間隔(典型的には、1週間)で撮影されるただ1つの2‐D投射画像である。ポート・フィルムでは、器官の運動を補償することはできない。さらに、ポート・フィルムは、軟組織の体構造を有意なコントラストで画像化せず、患者の骨構造についてのみ信頼できる情報をもたらす。したがって、ずれについての情報は、ポート画像が取得された時点の瞬間においてのみもたらされ、骨構造と軟組織構造との整列が必ずしも相関しておらず時間とともに変化するため、誤りを引き起こす可能性がある。提供されるポート画像内の適切なマーカによって、ビームのずれを、ある限られた程度においてのみ割り出して修正することができる。
【0010】
より最近では、電子ポータル画像化と称されるが、ポート画像の電子的な取得が何人かによって開示されている。この画像化技法は、線形加速装置または関連のキロボルトX線ユニットのX線を使用して、患者のX線透過放射線画像を取得するために、固体半導体、シンチレータ、または液体イオン化チャンバ・アレイの技術を使用している。ハードコピーの技法と同様、ずれについてのデータは、ポート画像が取得された時点の瞬間においてのみもたらされる。電子ポータル画像化における他の最近の進歩として、軟組織の位置を画像化しようと試みる埋め込み間質性放射線不透過マーカの使用が挙げられる。これらの手順は、侵襲的であり、マーカの移動に左右される。多数の画像の迅速な取得によって実行されるときでさえも、軟組織内の放射線不透過マーカによって特定される不連続な点の移動を見つけるにとどまり、器官の運動の真の複雑さ、およびそれによって引き起こされる線量の誤差を補償することはできない。多数の2D電子ポータル画像から3D体積画像の組を生成する他の最近の進歩は、日々の治療の投与の前または後に、体積コーン・ビームX線CTまたはヘリカル断層治療メガボルトX線CT画像の組を取得することである。この技法は、患者の設定誤差、すなわち患者の体の形状および整列、体重の減少または腫瘍の成長および収縮などの患者における生理学的変化、ならびに直腸の充満および排泄など、フラクション間の患者の器官の運動を補償することができるが、フラクション内の患者の器官の運動を補償することはできない。フラクション内の器官の運動は、きわめて重要であり、これらに限られるわけではないが、呼吸運動、心拍、直腸のガス膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の動きが含まれる。
【0011】
放射線治療は、歴史的には、対象とする体積を含む体の大きな領域に対して投与されてきた。微視的な疾病の広がりの可能性を補償するために、いくらかの体積マージンが必要とされるが、マージンの多くは、処置の計画および放射線の投与における不確実さを補償するために必要とされる。照射される組織の総体積を少なくすることが、照射を受ける正常な組織の量を少なくし、したがって放射線治療からの患者に対する全体としての毒性を少なくするため、有益である。さらに、全体としての処置体積を小さくすることで、ターゲットへの線量の増大を可能にでき、腫瘍抑制の可能性を高めることができる。
【0012】
臨床コバルト(Co60放射性同位体源)治療ユニットおよびMV線形加速器(または、リニアック)は、1950年代の初めに、ほぼ同時代に導入された。最初の2つの臨床コバルト治療ユニットは、ほぼ同時に、1951年10月にOntario州のSaskatoonおよびLondonに設置された。臨床用のみを目的とする最初のMV線形加速器は、1952年の6月に英国LondonのHammersmith Hospitalに設置された。1953年の8月に、この装置によって初めての患者が処置された。これらの装置は、すぐにがん治療において幅広く使用されるようになった。深く進入するイオン化光子ビームが、すぐに放射線治療の大黒柱となり、奥深くに位置する腫瘍の広範囲に及ぶ非侵襲の処置を可能にした。X線治療の役割は、主として一時しのぎの治療から決定的な治癒の処置へと、これらの装置の登場によって徐々に変化した。その類似性にもかかわらず、コバルト・ユニットとリニアックとは、常に外部ビーム放射線治療における競合技術として考えられていた。この競合関係の結果、最終的には、米国および西欧においてはリニアックが支配的となった。コバルト・ユニットはきわめて単純であり、時間を経ても技術的に大きく改善されることがなかった。当然ながら、コバルト・ユニットの簡潔さは、その魅力のいくつかの理由であり、コバルト・ユニットはきわめて信頼性が高く、正確であり、保守および専門技術をあまり必要とせずに動作可能であった。これが、初期に、コバルト治療が最も広まった外部ビーム治療の一形態となることを可能にした。リニアックは、より技術集約的な装置である。電子の大きな流れを4〜25MeVのエネルギーまで加速して、制動放射光子または散乱電子のビームを生み出すことで、リニアックは、より鋭い境界を有してより進入性であるビーム、およびより高い線量の割合を可能にするはるかに多目的な装置であった。リニアックの信頼性が高くなるとともに、より進入性である光子ビームを電子ビームの追加と組み合わせて備えるという有益さが、既存のコバルト・ユニットに取って代わるための充分に強力な推進力と見られるようになった。コバルト治療は、何の反論もなく消え去ったわけではなく、その論争の本質は、リニアックに対するコバルト・ユニットの得失を説明したLaughlin、Mohan、およびKutcherによる1986年の有名な論文に記載されている。これは、コバルト・ユニットの継続およびさらなる技術的発展を弁護する訴訟からの論説を伴っていた。コバルト・ユニットおよびリニアックの利点は、すでに挙げた。コバルト・ユニットの欠点は、線量の進入深さが少ないこと、ソースの寸法により境界が大きいこと、エネルギーが少ない混入電子のため大きなフィールドについて表面の線量が大きいこと、および必須の規制監督であると見られていた。リニアックの欠点は、それらのエネルギー(したがって、低エネルギーのコバルト・ビームからの相違)が大きくなるとともに増大し、ビルドダウンの増加、電子の輸送による境界の増加、骨への線量の増加(対生成による線量の増加のため)、および最も重要なことには、10MVを超える加速電位での光中性子の発生であると見られていた。
【0013】
強度変調放射線治療(IMRT)以前の時代において、リニアックは、コバルト治療に対して決定的な利点を保持していた。4MVのリニアック加速電位を使用してコバルトにきわめて類似したビームを生み出すことができるという事実が、電子ビームまたはより進入性である光子ビームを生成できるというリニアックの能力と組み合わされて、リニアックを好ましいものとしていた。コバルト治療の価値がリニアック治療の価値に対して重み付けられたとき、照射場は手動によってのみ生み出され、IMRTの利益は存在しなかった。IMRTが発展するにつれ、より高いMVのリニアック加速電位のビームおよび電子ビームの使用は、この分野の人々によって大部分が断念された。これは、一部には、IMRTによって必要とされるビーム・オン時間の増大に関する中性子の生成(および、患者の体全体への線量の増加)に対する懸念の高まり、および電子ビームの最適化の複雑さによるものであるが、最も重要には、低MV光子ビームIMRTが、がん治療のすべての場所のために優れた品質の治療計画を生み出すことができるためである。
【0014】
IMRTは、静止物体について達成された高度の正確さおよび精密さの点まで、3D線量計算および最適化の改善の数十年の頂点を提示している。しかしながら、現在受け入れられている線量モデル化のパラダイムには、根本的な欠点が存在する。その問題は、患者が基本的には動的かつ変形し得る物体であって、フラクションに分けられた放射線治療において完璧に再配置することができないという事実とともにある。1回の線量の投与においてさえも、フラクション内の器官の運動が、かなりの誤差を引き起こす可能性がある。この事実にもかかわらず、放射線治療の投与は、伝統的に、放射線治療ターゲットおよび重要構造の静的なモデルについて計画されている。真の問題は、頭蓋の外部(すなわち、定位放射線治療を使用するCNS疾病の処置を除く)の放射線治療が、効果的であるためにフラクションに分けられる必要があり、すなわち1日当たり1つの1.8〜2.2Gyのフラクションまたは2つの1.2〜1.5Gyのフラクションで投与されなければならず、伝統的に週間労働時間(月曜日〜金曜日)の間に投与され、例えば70〜72Gyの治療用線量の投与に2.0または1.8Gyにてそれぞれ7〜8週間を要するという事実にある。この日々のフラクション化により、正確な線量の投与のために、患者および患者の体内の器官のすべてを正確に再配置することが必要となる。これが、放射線治療に、「実際の治療の最中にターゲットおよび重要構造が移動する場合、我々が開発した高度な線量計算および最適化のすべては何の役に立つのであろうか」というきわめて重要な疑問を提起する。器官の運動の研究についての最近の重要な再検討が2001年までの既存の文献を要約しており、患者の設定誤差および器官の運動という2つの最も有力な種類の器官の運動を示している。例えば、頭頸部がんにおける腫瘍のかなりの収縮など、患者においてかなりの生理学的変化がしばしば臨床的に観測されているが、それらはあまり研究されていない。器官の運動の研究は、フラクション間およびフラクション内の器官の運動にさらに分類され、この2つを明示的に分離することは不可能であると認識されており、すなわちフラクション内運動が、混同によってフラクション間運動の明快な観察を妨げていることは明らかである。婦人科の腫瘍、前立腺、膀胱、および直腸のフラクション間運動についてのデータが、肝臓、横隔膜、腎臓、膵臓、肺腫瘍、および前立腺のフラクション内運動についてのデータと同様、公開されている。公開に先立つ20年間にわたる多くの同業者の再検討した刊行物が、フラクション間およびフラクション内の器官の運動が放射線治療の線量測定に大きな影響をもたらす可能性があることを示している。これは、0.5〜4.0cmの変位が50人未満の患者の研究において一般に観察されているという事実に見られる。器官の運動の多数の観察についての平均の変位は小さいかもしれないが、頻繁ではないにせよ大きな変位が、患者の受け取る生物学的に有効な線量を、大きく変化させる可能性がある。というのも、広く認められているように、腫瘍の抑制を達成するためにフラクション当たりの正確な線量を維持しなければならないからである。非特許文献1によって最近公開されたフラクション内の器官の運動についてのより集中した検討においては、器官の運動に関係する線量の誤差に対処する重要性が、「・・・認容することができず、あるいは少なくとも望ましくない大きな運動が、いくらかの患者において生じ得ることに、議論の余地はない・・・」と簡潔に述べられている。さらに、器官の運動の問題が常に放射線治療における懸念であることが、Goiteinによって「患者が運動および呼吸をし、患者の心臓が鼓動し、患者の腸が運動することは、放射線が最初にがんの治療に使用されたときから知られている。それほど遠くない数十年においては、そのような運動のすべてをシミュレータの蛍光透視鏡で眺め、フィールドの縁のワイヤをターゲット(それを見ることができないことを気にせずに)がフィールド内にとどまるように充分に広く設定することだけが解決策であった」と説明されている。
【0015】
何週にもわたる放射線治療の全体を通じての患者の設定誤差、生理学的変化、および器官の運動によって放射線治療に課せられる制約に対処する試みにおいて、従来技術は、それぞれの放射の投与の前および後に体積CT「スナップ・ショット」を取得することができる画像化システムへと進化した。この放射線治療ユニットと放射線画像化設備との新規な組み合わせは、画像案内放射線治療(IGRT)と称され、好ましくは画像案内IMRT(IGIMRT)と称されている。この従来技術は、患者の設定誤差、ゆっくりとした生理学的変化、および放射線治療の長い推移にわたって生じるフラクション間の器官の運動を取り除く可能性を有している。しかしながら、この従来技術は、器官の運動のきわめて重要な一形態であるフラクション内の器官の運動を、補償することができない。この従来技術の装置は、患者の全体位置をずらすためだけにしか使用することができない。この従来技術は、フラクション内の器官の運動を捉えることができず、ヘリカルまたはコーン・ビームCT画像化が実行できる速度によって制約されている。第2には、おそらくは同程度に重要であるが、CT画像化が、患者へと投与される電離放射線の線量を増加させる。二次的発がんの発生が低‐中程度の線量の領域において生じること、および体全体への線量が多数回のCT画像調査を加えることによって増すことが、よく知られている。
【0016】
CT画像化およびMRIユニットは、どちらも1970年代に実演された。CT画像化は、X線減衰の物理的プロセスに由来する固有の空間的完全性により、初期に放射線治療の画像化の「標準」として採用された。MRIにおいて生じる空間ひずみの可能性にもかかわらず、MRIは、CT画像化に比べて軟組織のコントラストがはるかに良好であり、化学的な腫瘍の兆候または酸素生成のレベルなどの生理学および代謝の情報を画像化できるため、依然として放射線治療のための画像化の様相としてきわめて魅力的である。データの空間的完全性に影響を及ぼすMRIアーチファクトは、磁界の均一性の望ましくない変動に関係しており、1)磁石の設計に固有の磁界の不均一性および勾配スイッチングによって誘起される渦電流など、スキャナに起因するアーチファクト、および2)画像化対象に起因するアーチファクト、すなわち患者の固有の磁気感受性という2つのカテゴリに分離することができる。現代のMRIユニットは、注意深く特徴付けられ、スキャナに起因するアーチファクトを効果的に除去できる再現アルゴリズムを使用している。1.0〜3.0Tの範囲の強い磁界強度において、患者の磁気感受性が、大きなひずみ(磁界の強さに比例する)を生み出し得るが、これは最初に感受性画像化データを取得することによって、しばしば除くことができる。最近では、多数の学術研究センターが、放射線治療処置の計画にMRIを使用し始めている。強い磁界における患者関連のアーチファクトに対処するよりもむしろ、多くの放射線治療センターは、放射線治療処置の計画に0.2〜0.3Tの低い磁界のMRIユニットを使用している。なぜなら、これらのユニットは患者の感受性による空間的ひずみが無視できるレベルにまで減少させるからである。フラクション内の器官の運動に対処するために、MRIは、患者の動きをリアルタイムで追跡するために充分高速であり、容易に調節および配向が可能な視野を有しており、二次的ながんの発生率を増加させ得る患者への追加の電離放射線をもたらすことがないため、きわめて好ましい。最近では、呼吸により制御され肺活量計によってゲートされる高速多断面CTが、フラクション内の呼吸運動を評価またはモデル化する試みにおいて、多くの研究グループによって使用されている。高速の1断面MRIも、フラクション内運動の評価に使用されており、動的平行MRIは、フラクション内運動の体積画像化を実行することができる。MRIは、CT画像化においては患者へと投与される線量を増大させる必要があるため、高速の繰り返しの画像化に関してCTに対して決定的な利点を保持している。全身への線量に起因する二次的発がんの増加についての懸念は、IMRTにおいてすでに存在しており、繰り返しのCT画像化の追加によって大きく悪化する。
【0017】
従来技術において、2つの研究グループが同時に、リニアックに統合されたMRIユニットを開発しようと試みたようである。2001年に、MRIとリニアックとを一体化した装置を教示する特許が、Greenによって出願されている。2003年に、オランダのUtrecht大学のグループが、MRIとリニアックとを一体化した装置の設計を提示し、以後、それら装置の実現可能性を試験するための線量計算を報告している。CT画像化ユニットと反対に、MRIをリニアックに一体化させる大きな困難は、MRIの磁界がリニアックを機能不可能にする点にある。磁界
【0018】
【化1】
の存在下で速度
【0019】
【化2】
で運動している荷電粒子が、
【0020】
【化3】
によって与えられるローレンツ力に直面することは、周知である。MRIユニットによって生じるローレンツ力によって、電子が直線経路で移動することができなくなり、事実上リニアックをオフにするため、リニアックによる電子の加速が不可能になる。さらに、リニアックの高い無線周波数(RF)の放射が、MRIユニットのRF送受信システムに問題を引き起こし、画像の再現に必要とされる信号を劣化させ、おそらくは繊細な回路を破壊してしまう。リニアックとMRIユニットとの一体化は、途方もない技術的努力であり、未だ可能にされていない。
【0021】
強度変調放射線治療(IMRT)は、照射を腫瘍のサイズ、形状、および位置に一致させることができる外部ビーム治療の一種である。IMRTは、従来からの放射線治療に比べて大きな進歩である。IMRTの放射線治療の投与方法は、放射線治療の技術分野において知られており、非特許文献2に記載されている。このWebbの業績を、以下では「Webb 2001」と称し、その全体が本明細書中に参考として援用される。従来の放射線治療の有効性は、腫瘍の不完全な照準および不充分な放射線量によって制限されている。これらの制約により、従来の放射線は、過剰な量の健康な組織を照射にさらして、負の副作用または合併症を引き起こす可能性がある。IMRTによれば、当該分野(Webb 2001)において知られている基準によって定められるとおりの最適な3D線量分布が、腫瘍へと届けられ、周囲の健康な組織への線量が最小化される。
【0022】
典型的なIMRTの処置手順においては、患者が、疾病の照準のための代謝情報を得るために、おそらくはMRIシミュレーションまたは陽電子放射断層撮影(PET)調査が追加されるが、処置計画用X線CT画像化シミュレーションを受ける。走査が行われるとき、患者は、画像化が最高の精度で完了するよう、処置と一致するやり方にて動かぬように固定される。典型的には、放射線がん専門家または他の関連の医療専門家が、これらの画像を分析し、処置を必要とする3D領域、ならびに例えば脊髄および周囲の器官といった重要構造など、隔離を必要とする3D領域を決定する。この分析にもとづき、IMRT処置計画が、大規模最適化を使用して作られる。
【0023】
IMRTは、2つの先進技術に依拠している。第1は、逆方向治療計画である。高速なコンピュータを使用する高度なアルゴリズムによって、周囲の健康な組織の過剰な暴露を最小にしつつ所定の均一な線量を腫瘍へと届けるように意図された認容可能な治療計画が、最適化プロセスを使用して決定される。逆方向計画においては、照射ビームを構成する多数(例えば、数千)のペンシルビームまたはビームレットが、腫瘍または他の目標構造へと高精度で個々に照準される。最適化アルゴリズムによって、個々のビームレットの不均一な強度分布が、ある特定の臨床目的を達成するために決定される。
【0024】
IMRTを構成する第2の技術は、一般的には、マルチリーフ・コリメータ(MLC)を利用する。この技術が、逆方向治療計画システムから導き出された治療計画を投与する。リーフ・シーケンシングと呼ばれる別個の最適化が、ビームレット・フルエンスの組を、等価なリーフ移動指示または関連のフルエンスを有する静的開口の組へと変換するために使用される。MLCは、典型的には、治療計画からの強度プロファイルに従って照射ビームを遮断する特定のパターンを形成すべく移動するコンピュータ制御のタングステン・リーフで構成されている。MLC投与の代案として、減衰フィルタを、ビームレットのフルエンスに一致するように設計してもよい。本発明は、MLC投与が、フラクション内の器官の運動を補償すべく投与を速やかに調節できる一方で、減衰フィルタは能動的に調節することができないという事実を想定している。
【0025】
計画が生成され、品質管理チェックが完了した後、患者が処置用カウチに配置および固定され、最初のX線CTまたは磁気共鳴画像化のために実行された配置を再現しようと試みられる。次いで、照射が、MLC指示または減衰フィルタを介して患者へと投与される。次いで、このプロセスが、所定の累積線量が投与されたと考えられるまで、多数の週間労働時間にわたって繰り返される。
【0026】
磁気共鳴画像化(MRI)は、X線またはメガボルトX線CT画像化において使用される電離放射線を使用することなく、内部の体構造の詳細な画像を生成する先進の診断用画像化手順である。MRIの診断用画像化方法は、放射線医学および放射線治療の技術分野において公知であり、非特許文献3および非特許文献4に記載されている。非特許文献3および非特許文献4を、以下ではそれぞれ「Haackeら 1999」ならびに「LiangおよびLauterbur 2001」と称し、その全体が本明細書中に参考として援用される。MRIは、強力な主磁石、磁界勾配システム、無線周波数(RF)送受信機システム、および画像再構成用コンピュータ・システムを使用することによって、詳細な画像を生み出すことができる。開放磁気共鳴画像化(オープンMRI)は、MRI診断用画像化の進んだ一形態であり、画像化の際に患者を完全には囲まない主磁石形状を使用する。MRIは、CT画像化に比べて軟組織のコントラストがはるかに良好であり、分光学的検査により得られる化学的な腫瘍の信号または酸素生成のレベルなどの生理学および代謝の情報を画像化できるため、放射線治療のための画像化の様相としてきわめて魅力的である。軟組織のコントラストを改善するため、MRI用の多数のトレーサ剤が存在し、かつ開発中である(例えば、腎臓または腸管の強調のためのガドペンテト酸ジメグルミン、または全体コントラストのためのガドテル酸メグルミン)。炭素13、窒素15、または同様の安定な同位体物質を含んでいる過分極化液体あるいは常磁性のニオゾーム(niosomes)を使用することによってPET画像化に類似する腫瘍の代謝的検出を可能にする新規な造影剤が、現在開発中である。これら診断用MRI技法はすべて、疾病の正確な照準を向上させ、放射線治療における処置への応答の評価を容易にする。
【0027】
IMRT治療計画のためのCT走査は、場合によってはヨウ素含有コントラスト媒体の静脈内注射の後で、薄い断層(2〜3mm)を使用して行われ、軟組織および骨の窓およびレベルの設定で撮影される。磁気共鳴画像化(MRI)よりも幅広く利用可能であって、安価であるという利点を有しており、治療計画のための電子密度情報を得るために較正することができる。MRIによる調査が不可能であるある種の患者(閉所恐怖症、心臓ペースメーカ、動脈瘤クリップ、などのため)を、CTによって走査することができる。
【0028】
患者の設定誤差、生理学的変化、および放射線治療の最中の器官の運動の問題は、現在、放射線腫瘍学の分野において大きな関心および重要性を有する話題である。原体照射治療の精度が、線量のただ1回の投与の最中(フラクション内の変化;例えば、ガスによる直腸の膨張、尿による膀胱の充満、あるいは胸の呼吸運動などの器官の運動)および日々の線量の投与の間(フラクション間の変化;体重の増加および腫瘍の成長または収縮ならびに患者の形状の変化などの生理学的変化)の両者における患者の質量、位置、向き、および関節による幾何学的構成の変化、ならびにフラクション間およびフラクション内の器官の運動(例えば、呼吸の際の)によって大きく制約されることは、周知である。本件発明を除き、実際の線量の投与のそれぞれかつすべての最中にこれら逸脱のすべてを同時に補償する単一の効果的な方法は、知られていない。現在の技術水準の画像化技法は、放射線の投与の前および後において、患者の2Dおよび3Dメガボルトまたは常用電圧X線CT「スナップ・ショット」の撮影を可能にしており、あるいは放射線投与の最中に軟組織のコントラストを有していない時間分割の2D放射線画像を取得を可能にしている。
【0029】
原体照射治療において大きな進歩がなされてきているが、それらの本当の効果は、本発明によって提供される完全なリアルタイム画像化による案内および制御を欠いては、実現されない。「リアルタイム画像化」という用語は、放射ビームからの線量を投与しつつ、患者の形状において発生して大きな変化をもたらすあらゆるフラクション内の器官の運動を捉えて解像するために、充分に高速に取得できる繰り返しの画像化を意味する。リアルタイム画像化によって得られるデータが、患者における実際の線量の堆積の割り出しを可能にする。これは、運動している組織および目標へと投与された線量を合計するため、変形可能な位置合わせおよび補間の公知の技法を適用することによって達成される。放射ビームを患者に当てて線量を投与しつつ、複数週にわたる放射線治療の全体にわたって得たこのデータが、3D体内線量の定量的な割り出しを可能にする。このように、本発明は、器官の運動に関係する線量投与の誤差を評価し、抑制し、あるいは取り除く唯一の有効な手段を可能にする。
【非特許文献1】Goiteinら、Seminar in Radiation Oncology、2004年1月、第14巻第1号、p.2‐9
【非特許文献2】Steve Webb、「Intensity‐Modulated Radiation Therapy」、IOP Publishing、2001年、ISBN 0750306998
【非特許文献3】E.M.Haacke、R.W.Brown、M.R.Thompson、R.Venkatesan、「Magnetic Resonance Imaging:Physical Principles and Sequence Design」、John Wiley & Sons、1999年、ISBN 0‐471‐35128‐8
【非特許文献4】Z.‐P.LiangおよびP.C.Lauterbur、「Principles of Magnetic Resonance Imaging:A Signal Processing Perspective」、IEEE Press、2000年、ISBN 0‐7803‐4723‐4
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0030】
(発明の要旨)
本発明は、電離放射線治療用ビームを生成するための少なくとも1つ、おそらくはより多くの放射性同位体源、前記治療用ビームによってIMRTを実行するための少なくとも1つ、おそらくはより多くのMLCまたは減衰器システム、目標領域および周囲の健康な組織または重要構造を前記電離放射線の投与の最中に同時に画像化する磁気共鳴画像化(MRI)システム、および/またはすべての構成要素に伝達可能に接続されたコントローラを含んでいる放射線治療システムを提供する。MRIからもたらされた画像データが、実際に投与された電離放射線の線量の定量的評価を可能にするとともに、IMRTによって投与される電離放射線を目標領域へとより正確に案内するため、処置の投与の再最適化または再計画を可能にする。以下では、本発明の有益な実施形態を説明する。この有益な実施形態においては、オープンMRIの主磁石ヘルムホルツ・コイル対が、分割ソレノイドとして設計され、磁石の中央の円筒形の穴を通って患者カウチが走行し、IMRTユニットが、2つのソレノイド部分の間のすき間を通って患者に照準する(図1〜図4)。この実施形態においては、分割ソレノイドMRI(015)が静止したままである一方で、マルチリーフ・コリメータIMRTユニット(020)を備え、遮蔽され、位置合わせされている同位体放射源が、ガントリー(025)上でカウチを中心にして軸回転する(有益には、2つより多くの(020)を使用することができる)。患者(035)は、同時の画像化および処置のために患者カウチ(030)上に配置される。マルチリーフ・コリメータを備え、位置合わせされている同位体放射源(020)は、固定の主コリメータ(120)、二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)で視準される放射性同位体源(115)を含んでいる(図5〜図7)。
【0031】
この実施形態は、軸方向の処置ビームのアクセスをもたらすためにオープンMRIを回転させる必要性を除き、患者に沿って頭部‐尾部方向の磁界をもたらし、高速な画像取得のため並列多相アレイRF送受信機コイルを使用して改善されたMRI速度を可能にするため、有用である。
【0032】
次に、複雑さおよび計算の必要がさまざまである本発明のプロセスのさらなる有益な実施形態を説明する。これらのプロセスの実施形態はすべて、任意の装置の実施形態を使用することができる。これらのプロセスの実施形態はすべて、日々の放射線投与に先立って高分解能の診断用品質の体積MRIデータを取得するステップ、次いで放射線の投与の最中にリアルタイムのMRIデータを取得するステップを含むことができ、ここでリアルタイムのデータは、別の空間格子について採取されてもよく、あるいは取得の速度を向上させるべく低い信号対雑音比で採取されてもよい。1つの有益なプロセスの実施形態は、MRIデータを取得し、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を割り出すため、変形可能な画像の位置合わせおよび線量計算のための当該分野において公知の方法を、届けられるIMRTコバルト・ユニット・フルエンスへと適用する。次いで、それぞれ腫瘍の抑制の向上または副作用の軽減のために投与のフラクションを追加または減じるよう、患者の処置の補正を行うことができる。線量の評価とともに、患者の疾病のサイズおよび進行も日々を基準に評価される。
【0033】
第2の有益なプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与のそれぞれに先立ってIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を評価するため、先のプロセスと組み合わせられる。
【0034】
第3の有益なプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの投与に先立ってビームごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、一般的には、前記第1のプロセスが各ビームの投与の直前に実行されることを含んでいる。
【0035】
第4の有益なプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの各部分の投与の最中に瞬間ごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、前記第1のプロセスが放射の投与と同時にリアルタイムで実行されることを含んでいる。本発明は、低レイテンシのローカル・ネットワークによって有用に接続された多数のコンピュータを使用する並列計算の使用を予期しており、あるいは広域ネットワーク上のセキュアな接続を、MRI画像再現、変形可能な画像の位置合わせ、線量の計算、およびIMRTの最適化のための公知のアルゴリズムの速度を大きく向上させるために使用してもよい。
【0036】
他の局面において、さらに本発明は、放射線治療を加える方法であって、放射線治療を加えるための治療計画を決定するステップ、磁気共鳴画像化(MRI)システムを使用して被験体の体積内のターゲット領域の画像を取得するステップ、ターゲット領域を処置する治療用ビームでターゲット領域および重要構造の領域を照射するステップ、ならびにターゲット領域の照射の最中にターゲット領域および重要構造の領域の画像の取得を続けるステップを有しており、治療計画を、治療の最中に取得したターゲット領域および重要構造の領域の画像にもとづいて治療の最中に変更することができる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図面には、現在考えられる実施形態が示されているが、本発明が図示されている構成および手段そのものには限定されないことを、理解すべきである。
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明を、多数の変更および変種が当業者にとって明らかであるがためにあくまで例示を意図するものである以下の実施例において、さらに詳しく説明する。本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、そのようでないことが文脈から明らかでない限り、複数への言及を含んでもよい。同様に、本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、用語「・・・からなる(comprising)」は、「・・・で構成される」実施形態、および「・・・で基本的に構成される」実施形態を含み得る。
【0039】
本発明は、患者へと投与される高度に原体照射的な電離放射線の線量を直接測定して制御するため、強度変調放射線治療(IMRT)の最中に患者の体構造および疾病について、高い時間および空間分解能での磁気共鳴画像化(MRI)を実行するための装置およびプロセスの両者である。有益な実施形態において、本発明は、患者へのIMRT照射ビームでの軸方向のアクセスを可能にするオープンMRI、マルチリーフ・コリメータまたは補償フィルタをベースとするIMRT投与システム、ならびにコバルト60遠隔治療法の放射源の技術を、位置合わせされてガントリーに取り付けられた単一のシステムへと組み合わせている。
【0040】
すでに述べたように、従来の技術は、患者にビームを当てつつ放射線治療の投与の最中にリアルタイムで人間の内部軟組織の画像化を同時に行ってはいない。むしろ、放射線の投与の前および/または後に画像が生成され、これらの画像は、放射線の投与の最中に患者に生じ得る運動および/または自然な変化を反映していない。したがって、狙いをつけた照射も、本明細書に記載する本発明が存在しないと、初期の画像を撮影した後に処置対象の体の部位のサイズが自然に変化した場合、あるいは治療前に処置対象の体の部位の位置が変化した場合、すなわち患者の体構造の形状および整列に患者設定誤差が生じた場合、体重の減少または腫瘍の成長および収縮など、患者に生理学的変化が生じた場合、ならびにこれらに限られるわけではないが呼吸運動、心拍、直腸の膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の運動など、患者の器官が動いた場合に、成功しないであろう。
【0041】
本発明は、患者のリアルタイムのMRIを照射の投与と実質的に同時に実行し、処置対象の領域が患者の設定誤差、生理学的変化、およびフラクション間またはフラクション内の器官の運動によって引き起こされるいずれかの種類の線量の誤差を抱えている場合に、狙いをつけた放射を再調節することによって、これらの問題のすべての除去を助ける。これらに限られるわけではないが、ターゲットおよび体構造のサイズおよび/または位置の変化を補償すべく患者の位置を動かすこと、処置を完全に中断し、処置の再開前にさらなる計算を実行できるようにし、あるいは一時的な運動の休止を可能にすること、腫瘍抑制の可能性を高めるべく余分なフラクションの投与を追加し、あるいは副作用の可能性を少なくすべくフラクションの投与の数を制限すること、すでに説明した有益なプロセスの実施形態のいずれかを行うこと、ならびに例えばIMRT計画のすべての投与、すべてのビーム、またはすべてのセグメントについて再最適化を実行するなど、さまざまな時間軸についてIMRT治療計画の再最適化を行うこと、など、多数の対応をとることができる。
【0042】
本発明の有益な実施形態は、マルチリーフ・コリメータまたは自動補償フィルタ・システムを直交取り付けの「オープン」MRIユニットとともに回転ガントリーに取り付けて備えるコバルト‐60治療ユニットなどのコンピュータ制御コーン・ビーム・コバルト治療ユニットを含んでいる。図1に見られるように、IMRTコバルト・ユニット(020)が、コーン・ビーム形状の放射を軸オープンMRIユニット(015)の開口の中心に向かって投射するとともに、ガントリー(025)上で患者を中心として軸回転(患者の長手軸(頭部‐尾部)を中心として)する。調節可能な処置用カウチ(030)を、ビームの角度を変化させるためにガントリーが回転している最中に、患者を静止位置に支持するために使用することができる。
【0043】
本発明は、放射線治療としてコバルト遠隔治療を使用する。いくつかのIMRTは、より進入性の放射線治療を投与するための線形電子加速器を使用するが、加速器そのものは、放射される放射線のレベルに関してきわめてさまざまである処置ビームを生み出す。したがって、患者について使用されている放射線の量を正確に割り出して、MLCの動きをIMRT投与に強調させることが、困難になる。ガンマ線は、放射性の同位元素の分解によって発せられる電磁放射であり、典型的には約100KeVから1MeVをはるかに超えるが、役に立つイオン化を生み出すための充分なエネルギーを有している。放射線学の目的において最も有用なガンマ放射の放射性同位元素は、コバルト(Co60)、イリジウム(Ir192)、セシウム(Cs137)、イッテルビウム(Yb169)、およびツリウム(Tm170)であることが分かっている。このように、放射性同位元素の分解は周知の現象であり、したがってコバルト遠隔治療法によって放射される放射線は、より一貫しており、したがって患者のための処置の計画を用意するという点で、より計算が容易である。
【0044】
本発明のコバルトIMRTの実施可能性は、計算による分析によって実証されている。市販のコバルト治療ユニットおよびMLCによるIMRTの投与について、シミュレーションを実行した。コバルト・ビームレット・モデルでの3D画像ベースの放射線治療処置計画システムを委託し、Theratronics 1000Cコバルト治療ユニットからの測定済み放射線着色フィルム・データを使用して確認した。等方性の4×4×4mm3の線量ボクセル格子(γ線IMRTソースの半影に関して事実上シャノン‐ナイキスト制限である)を生成した。このビームレット・モデルを、公開されているデータに当てはめ、Cerrobendブロックによって形成されすでに報告された方法論を使用して測定された1×1cm2のビームレットの放射線着色フィルム測定結果で確認した。次いで、計算深さを、構造の標準的な三次元光線追跡で同じボクセルについて割り出した。計算された深さへの密度のスケーリングを、線量モデルにおいて組織の異質性をよりよく補償するために使用した。IMRT最適化のため密な列の取り扱いを含むバリア内点法の実行を使用するCPLEX,ILOG Concert Technologiesの産業用最適化ソルバーを、最適IMRT計画を解くために使用した。ビームレットのフルエンスを、各ビーム角度についてリーフ・シーケンシングのための5%のレベルまで分離した。得られる計画線量分布およびヒストグラムを、投与可能な不連続強度によって重み付けられた線量値を合計することによって計算した。リーフ伝達漏れ強度を、そうでなければゼロ強度であるビームレットについて、保守的に1.7%と評価した。最後に、治療計画のための投与の指示を生成するための発見的リーフ・シーケンシング最適化の標準的な方法を使用した。Virginia Medical Collegeの同時積分ブースト(SIB)というターゲット線量レベルの仕組みを、それが文献において支持されている最大の最大‐最小臨床処方線量比であって、最も困難な線量処方の仕組みを満足しているために採用した。頭部および頸部IMRTが、いくつかの理由でIMRT最適化のテストのための優れた基礎をもたらす。すなわち、1)ターゲットの均一な包含を維持しつつ唾液腺および他の構造を隔離するという明確な治療目標が存在する点、2)これらの目標を達成しようと試みることが、IMRT最適化を技術的限界までテストする点、および3)Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)のH‐0022 Phase I/II Study of Conformal and Intensity Modulated Irradiation for Oropharyngeal Cancerという大規模なフェーズI/IIの多施設の試行が、計画の基準の一般的な組を定めている点、である。調査される事例を、0°、51°、103°、154°、206°、257°、および309°というInternational Electrotechnical Commission(IEC)のガントリー角度を有する等間隔の7つのビームについて実行した。治療計画システムは、7つのビーム角度からターゲットを適切にカバーする1,289のビームレットを生成し、4mmの等方性のボクセル格子は、417,560のボクセルを生成した。結果が、図8および図9に示されている。本発明者らのシステムが、高線量ターゲットの95%のカバーを確保するために計画を正規化している点に注目すべきである。図8は、委託されたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRTの事例からの軸方向の線量分布を示している。ターゲットの優れた包含および組織の隔離を観測することができる。図9は、4mmのボクセルおよび1Gyの線量ビンを使用してリーフ・シーケンシングされ、漏れ補正された計画(すなわち、投与可能な計画)から導出されたDVHデータを示している。コバルト源にもとづくIMRTは、頭部‐頸部の患者について優れたIMRT治療計画を生成した。このγ線IMRTは、右耳下腺(RPG)を明確に隔離し、左耳下腺(LPG)および右顎下腺(RSMG)を30Gyにおいて体積50%未満に保ちつつ、ターゲット体積(CTVおよびGTV)の95%超を所定の線量以上でカバーできている。他のすべての構造は、許容値未満である。不特定の組織(SKIN)は、60Gy未満に保たれており、50Gyを超えるのは体積の3%未満であった。使用された最適化モデルは、Romeijnらにおいて公開されたものと同じであり、コバルト・ビームのためには変更されなかった。より大きな奥行きを有する前立腺および肺などの部位については、余分なビームまたはアイソセンタを追加することで、リニアックにもとづくIMRTと同じ臨床品質基準を達成できるコバルトIMRTを使用する治療計画の生成が可能であることが、当該分野において知られている。この実施可能性の実証は、コバルト治療ユニットが高品質のIMRTを提供できることを示している。
【0045】
磁界の存在下でのコバルトIMRTについての本発明の線量計算の実施可能性は、計算による分析によって実証されている。さらに、コバルト遠隔治療を使用することによって、本発明は、MRIの磁界にもとづいて計算をよりよく行うことができる。患者をMRI内に配置して放射線治療が実行されるとき、磁界が、狙いを付けた放射をわずかに偏向させる。したがって、治療計画を決定するために使用される計算は、この偏向を考慮に入れなければならない。真空中で速度
【0046】
【化4】
で運動する荷電粒子は、磁界
【0047】
【化5】
の存在下において、
【0048】
【化6】
によって与えられるローレンツ力に直面する。この力は、役に立つイオン化光子および電子の物体との相互作用の物理学を大きく変化させるほどには充分に大きくないが、イオン化電子の全体的な輸送、したがって得られる線量分布に影響を及ぼし得る。二次電子の輸送に対する磁界の影響は、50年よりも前から始まって、物理学の文献においてよく研究されている。最近の研究は、患者における局所的な線量の体積を増加させるために一次または二次電子の合焦または捕捉を助けるため局所化された磁界を使用する試みにおいて、モンテカルロ・シミュレーションおよび分析的分析を使用している。これらの研究はすべて、ローレンツ力で電子の輸送を横方向に閉じ込めるため、磁力線をビーム軸の方向に整列させつつ調査されている(「長手方向の」磁界と称され、ここで長手という用語は、患者ではなくビームを指している)。約1.5〜3.0Tの間の磁界の強磁界のMRIにおいて、旋回の初期の半径が二次電子の大角度散乱相互作用(制動放射、弾性散乱、および強衝突(hard collisions))のMFPに比べて小さく、この状況が電子の所望の捕捉または合焦をもたらすことが知られている。電子がエネルギーを失うと、
【0049】
【化7】
に比例して半径が小さくなり、大角度散乱相互作用(CSDA)が存在しないとき、電子は停止するまで半径の減少する螺旋に従う。この螺旋は、電子のフルエンスを変化させ得るが、何ら有意なシンクロトロン放射を生まないことが知られている。本発明においては、平行なMRIでリアルタイムの画像化が可能であるために、磁界が照射ビームに対して直交していなければならない。最近の研究が、6MVリニアック・ビームのビーム軸に直交する1.5Tの磁界が、6MVリニアック・ビームレットについて、水への線量分布を大きくかき乱し得ることを示している。このような線量分布のひずみの回避、および画像化データの空間的完全性を損ない得るMRIアーチファクトの防止の両者のため、本発明の有益な実施形態は、磁界を患者の上下方向に沿って導くことができる低磁界オープンMRIの設計を使用する(図1を参照)。コバルトγ線からの二次電子についての旋回の半径の簡単な評価が、旋回の半径が電子の大角度散乱相互作用のMFPよりもはるかに大きいことを示している。これは、ローレンツ力が磁界の大きさ
【0050】
【化8】
に比例し、旋回の半径が磁界(104)に反比例するため、容易に理解できる。本発明者らは、スラブ・ファントム形状のコバルトγ線源からのビームレットのモデル化を、よく検証されたIntegrated Tiger Series(ITS)Monte Carlo packageおよびそのACCEPTMサブルーチンを磁界中での輸送について使用して実行した。シミュレーションのため、0.1MeVの電子および0.01MeVの光子の輸送エネルギーのカットオフ、標準的な凝縮されたヒストリー・エネルギー格子(ETRANアプローチ)、ランドー分布からサンプルしたエネルギー・ストラグリング、ベーテ理論にもとづく質量衝突停止パワー、デフォルトの電子輸送サブステップ・サイズ、および束縛効果を含んでいる非コヒーレントな散乱を使用した。3組のシミュレーションを実行し、各組は、ビーム方向に平行な0.3Tの一様な磁界の存在下および非存在下での実行を含んでいた。2cmの円形コバルトγ線ビームレットを、以下の形状についてモデル化した。すなわち、30×30×30cm3の水ファントム、10cmの肺密度(0.2g/cc)水スラブを5cmの深さに有する30×30×30cm3の水ファントム、および10cmの空気密度(0.002g/cc)水スラブを5cmの深さに有する30×30×30cm3の水ファントムである。シミュレーションは、推定される線量において1パーセント未満の標準偏差を得るため、8〜30時間にわたってP4 1.7GHz PCで3000万〜1億のヒストリーにて実行された。結果は図10〜12に示されている。図10は、本発明の有益な実施形態において存在するような0.3Tの直交一様磁界が、軟組織または骨における線量分布を測定可能なほどにはかき乱さないことを明確に証明している。本発明にとってきわめて有用な処置部位は、体内で最も顕著な組織異質性を含んでいる肺および胸部である。図11に示されているように、ファントムに12cmの肺密度(0.2g/cc)の水スラブを加えることで、高および低密度の領域の境界において、線量にきわめて小さいが検出可能である乱れが引き起こされている。これらの乱れは、補正なしで認容可能な臨床適用を可能にするために充分小さい。図12において、最後に我々は、低密度の領域および境界領域に大きく存在する顕著な乱れを観測した。これは、空洞が、正確な線量測定に関して最大の課題を有することを示している。しかしながら、低密度の媒体との境界を除くと、軟組織および(MFPが軟組織よりもさらに短くなる)骨において大きな乱れは存在しないはずである。このデータは、低磁界(0.2〜0.5テスラ)のMRIでの本発明の有益な実施形態において、線量の乱れは、組織が存在していないため正確な線量測定が必要とされない空洞の内側を除き、小さいことを示している。コバルト遠隔治療ユニットなどの公知の放射線源を使用することによって、MRI磁界の強さが既知であれば、偏向の量を容易に割り出すことができる。しかしながら、磁界の強さが既知であっても、線形加速器が使用される場合には、未知である放射のエネルギー・スペクトルが計算をはるかに困難にする。
【0051】
陽子、重イオン、および中性子など、MRIユニットから離れた加速器またはリアクタによって生み出されてビームによって患者へと運ばれるMRIユニットの動作を大きくは妨げない他の放射源も、本発明に含まれる。
【0052】
さらに、MRI磁界の強度が計算に織り込まれ、結果として、オープンMRIの使用がクローズドMRIに対する利点を提供する。オープンMRIにおいては、一般的に、生成される磁界の強度がクローズドMRIの磁界よりも小さい。したがって、オープンMRIからもたらされる画像は、より多くの雑音を有しており、より高磁界のクローズドMRIからの画像ほど明瞭でなく、かつ/または明確でない。しかしながら、クローズドMRIのより強力な磁界は、オープンMRIのより弱い磁界に比べ、放射線治療をより大きく偏向させる。したがって、所与の治療計画にとって最も有益な特徴に依存して、本発明は、クローズドMRIが使用可能であることも予期している。しかしながら、計算が容易であり、かつ/またはわずかに明瞭さに劣る治療時の画像であっても大部分の治療計画を調節するために充分であるため、本発明は、大きな線量の乱れを除き、空間的な画像化ひずみを防止し、高速な平行位相アレイMRIを可能にするため、図1に示した形状のオープンMRIがコバルト遠隔治療とともに使用されることを予期している。
【0053】
オープンMRIおよびコバルト遠隔治療を使用することによって、本発明は、放射線治療の最中の患者の三次元(3D)画像化を提供する。したがって、ターゲット領域の3D画像およびターゲット領域の計画用画像を使用することによって、変位が割り出され、放射線治療プロセスの最中に受け取られる連続的な3D画像にもとづいて更新される。次いで、得られた情報を使用し、測定された変位が所定の限界の範囲外にある場合など、照射プロセスの最中の変位を少なくすべく患者を処置ビームに対して移動させることができる。次いで、移動の後に、照射のプロセスを継続することができる。あるいは、処置用ビームを移動させてもよい。移動は、治療の最中に行われてもよく、あるいは治療を中断して、移動を行ってもよい。
【0054】
治療の最中に3D画像を使用し、それらの画像を放射線治療プロセスの最中に迅速に患者を配置および/または調節するために使用することによって、治療の精度を大きく改善することができる。照射が加えられている間に患者の位置がずれた場合、このずれを、位置の調節によって緩和することができる。可能な線量の段階的増大に加え、位置精度の改善によって、従来のシステムを使用する放射線では処置できないと現在考えられている腫瘍の治療が可能になる。例えば、初期の脊髄腫瘍および脊髄転移は、そのような重要な機能の体構造領域の病変を処置するためには高い精度が必要であるため、典型的には、従来の放射線システムでは処置されていない。処置の最中の3D画像化がもたらす精度の向上は、これらの種類の腫瘍の処置を実現可能にする。肺、胸上部、およびフラクション内の器官の運動が放射線治療の線量に問題を生じさせることが知られている他の領域に位置するターゲットについても、改善が予想される。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、実際の患者の位置を計画および放射線治療の両者において得られた画像化情報に相関させるために使用できる患者の位置を追跡するための別個の案内システムを含むことができる。本発明のこの部分は、患者の設定および治療の投与の段階の全体にわたって、更新可能な画像の相関および位置情報をもたらすことによって、たとえ患者が治療用装置の座標系に直交しない位置に動いた場合でも、患者の位置決めの容易さを大きく向上させることができる。非共面の処置位置において患者の位置を監視できるこの能力は、従来の放射線治療システムに対する大きな改善であり得る。一有益な実施形態においては、案内システムが、患者を乗せて再配置するための調節可能なベッドまたはカウチを含むことができる。他の有益な実施形態においては、案内システムが、MRIおよびコバルト治療ユニットの実質的に同時の移動を可能にするガントリーを備えることができる。いくつかの有益な実施形態は、ガントリーおよび調節可能なベッドまたはカウチの両者を含んでいる。
【0056】
本発明は、これらに限られるわけではないが、患者の処置対象面積、放射の強度、MRI磁界の強度、放射線ユニットに対する患者の位置、処置の最中の患者の変化、ならびに/あるいは処置の最中の患者および/または放射線ユニットに必然の位置の変化など、種々の要因を考慮するコンピュータ・プログラムの使用にもとづいて、初期の放射線治療および/または治療計画への変更を決定する。次いで、得られるIMRTがプログラムされ、治療処置が開始される。
【0057】
本発明において使用されるような強度変調放射線医療(IMRT)について治療計画を決定するための一実施形態は、患者の三次元の体積を、それぞれがそれぞれあるビームレット強度を有している複数のビームレットから所定の線量の放射線を受け取る線量ボクセルの格子へと分割するステップ、および放射線の投与を最適化するため、凸目的関数を備える凸計画モデルを用意するステップを含んでいる。このモデルが、大域的最適フルエンス・マップを得るために解かれ、フルエンス・マップが、複数のビームレットのそれぞれについてのビームレット強度を含んでいる。この方法は、関連の出願U.F.開示番号11296号にさらに詳しく説明されている。
【0058】
一般に、治療計画を決定するために使用される方法は、一有益な実施形態においては、内点法およびその変種である。この方法は、効率が高く、結果として一般に計算時間が短いため、有益である。内点法は、Steven J.Wrightによる「Primal‐Dual Interior‐Point Methods」という書籍(SIAM Publications、1997、ISBN 089871382X)に説明されている。Primal‐Dualアルゴリズムは、最も有益かつ有用なアルゴリズムとして内点クラスから現われた。Wrightは、path‐followingアルゴリズム(short‐およびlong‐step、predictor‐corrector)、potential‐reductionアルゴリズム、およびinfeasible‐interior‐pointアルゴリズムなど、線形計画のための主要なPrimal‐Dualアルゴリズムを開示している。
【0059】
ひとたび治療計画が決定されると、本発明は、医師が確実に治療計画に従うことができるようにする。処置対象の患者が、MRIに配置される。処置対象領域の画像が取得され、MRIが当該領域の3D画像を伝えるべく続けられる。治療計画がコバルト放射線遠隔治療ユニットに入力され、処置が開始される。処置の最中に、処置対象領域の連続画像が観察される。患者が動いた場合、あるいは処置対象の領域のサイズが変化した場合など、処置対象の領域の位置が変化した場合に、本発明は、治療を中断することなく治療計画を計算し直し、さらに/あるいは患者または放射線ユニットを調節する。あるいは本発明は、治療を中止し、治療計画を計算し直し、治療の再開に先立って患者および/または放射線ユニットを調節する。
【0060】
本発明は、患者の治療の精度の向上に使用できる複数のプロセスの実施形態を予期している。一プロセスの実施形態は、MRIデータを取得し、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を割り出すため、変形可能な画像の位置合わせおよび線量計算のための当該分野において公知の方法を、届けられるIMRTコバルト・ユニット・フルエンスへと適用する。次いで、それぞれ腫瘍の抑制の向上または副作用の軽減のために投与のフラクションを追加または減じるよう、患者の処置の補正が行われる。線量の評価とともに、患者の疾病のサイズおよび進行も日々を基準に評価される。
【0061】
第2のプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与のそれぞれに先立ってIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、投与の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を評価するため、先のプロセスと組み合わせ可能である。
【0062】
第3のプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの投与に先立ってビームごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスは、前記第1のプロセスが各ビームの投与の前に迅速に実行されることを含んでいる。
【0063】
第4のプロセスの実施形態は、治療の投与の精度を向上させるため、MRIデータを取得し、個々の放射の投与の各放射ビームの各部分の投与の最中に瞬間ごとの基準でIMRT治療計画の再最適化を実行する。このプロセスも、前記第1のプロセスが放射の投与と同時にリアルタイムで実行されることを含んでいる。本発明は、低レイテンシのローカル・ネットワークによって有用に接続された多数のコンピュータを使用する並列計算の使用を予期しており、あるいは広域ネットワーク上のセキュアな接続を、MRI画像再現、変形可能な画像の位置合わせ、線量の計算、およびIMRTの最適化のための公知のアルゴリズムの速度を大きく向上させるために使用してもよい。
【0064】
次に、まず図1から、図面について具体的な詳細を参照するが、図面においては、いくつかの図面を通じて、同様の参照番号が同様または等価な要素を指し示している。
【0065】
図1においては、本発明が、一実施形態において、本発明のシステムを示しており、オープンMRI015およびIMRTコバルト治療ユニット020を有している。さらにこのシステムは、MLCまたは補償フィルタ・ユニットなどのIMRTを実行するための手段を020に含んでおり、MRI015を静止させつつコバルト・ユニット020を回転させるために使用できるガントリー025を含んでいる。患者035が、調節可能な静止カウチ030上でシステム内に配置されている。
【0066】
図2は、使用時のシステムを示しており、ガントリー025が時計方向にほぼ90°回転させられている。したがって、コバルト治療ユニット020は、多数の選択位置の1つにおいて患者035を処置するための位置にある。図3は、図1のシステムの上面図である。図4は、図1のシステムの側面図である。
【0067】
以上、本明細書の例示の実施形態について、添付の図面および実施例を参照しつつ説明したが、これらの開示がそれら正確な実施形態に限定されるものではなく、本明細書の開示の技術的思想の範囲から離れることなく当業者によって種々の他の変更または変形が可能であることを、理解すべきである。そのような変更または変形はすべて、添付の特許請求の範囲によって定められる本開示の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】開放分割ソレノイド磁気共鳴画像化装置(015)、マルチリーフ・コリメータを備え遮蔽され位置合わせされた同位体放射源(020)(有益な実施形態において2つ以上の020を適用できる点に注意すべきである)、(020)の角度を変化させるためのガントリー(025)、患者カウチ(030)、ならびに同時の画像化および処置のための位置にある患者(035)を含んでいる放射線治療システムの概略である。
【図2】ガントリーの回転を示しており、マルチリーフ・コリメータを備え遮蔽され位置合わせされた同位体放射源(020)が、右側方ビーム位置から前方‐後方のビーム位置へと回転させられている。
【図3】図1のシステムの上面図である。
【図4】図1のシステムの側面図である。
【図5】図1に(020)として示したマルチリーフ・コリメータを備え位置合わせされた同位体放射源の詳しい概略である。放射性同位体源(115)が、固定の主コリメータ(120)、二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)を備えて示されている。
【図6】二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)の斜視図である。
【図7】放射性同位体源(115)、二次二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ(125)、および二次マルチリーフ・コリメータ(125)からのリーフ間の漏れを遮断するための三次マルチリーフ・コリメータ(130)をビームから見た図である。
【図8】コミッションされたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRT事例からの軸方向の線量分布を示している。
【図9】コミッションされたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRT事例から導出されたDVHデータを示している。
【図10】0.3テスラの磁界の存在下および非存在下における、水中でのコバルト・ビームレット線量分布である。
【図11】0.3テスラの磁界の存在下および非存在下における、水中および肺中でのコバルト・ビームレット線量分布である。
【図12】0.3テスラの磁界の存在下および非存在下における、水中および空気中でのコバルト・ビームレット線量分布である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・1つ以上の放射性同位体源から電離放射線を投与するための装置、
・磁気共鳴画像化システム、および
・前記電離放射線の投与と実質的に同時に画像を取得できるよう、前記電離放射線を投与するための装置および前記磁気共鳴画像化システムに接続されたコントローラ
を有している放射線治療システム。
【請求項2】
前記磁気共鳴画像化システムが、磁気共鳴画像化データが前記電離放射線の投与と実質的に同時にトレーサの摂取の領域を特定するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記磁気共鳴画像化システムが、磁気共鳴画像化データが前記電離放射線の投与と実質的に同時にコントラスト強調の領域を特定するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記磁気共鳴画像化システムが、前記電離放射線の投与と実質的に同時に分光学的情報を取得するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記磁気共鳴画像化システムが、前記電離放射線の投与と実質的に同時に代謝の情報または生理学的情報を取得するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記磁気共鳴画像化システムが、前記電離放射線の投与と実質的に同時に磁気共鳴血管造影データ、リンパ管造影データ、または両者が取得されるように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記磁気共鳴画像化システムが、取得した磁気共鳴画像化データを被験体の治療への応答を前記電離放射線の投与と実質的に同時に監視するために使用するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記磁気共鳴画像化システムが、照射の最中の体構造および放射線治療ターゲットの動きを追跡するため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、変形可能画像の位置合わせ法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項9】
前記磁気共鳴画像化システムが、照射の最中に動きの存在下での被験体への線量を割り出すため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、線量計算の方法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記磁気共鳴画像化システムが、照射の最中に動きの存在下での被験体への線量を割り出すため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、変形可能画像の位置合わせ法および線量計算の方法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記磁気共鳴画像化システムが、被験体のIMRT処置を再最適化するため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、変形可能画像の位置合わせ法、線量計算の方法、およびIMRT最適化の方法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項12】
前記磁気共鳴画像化システムが、生体内温度測定法を実行するために、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データを使用するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項13】
実質的に同時の画像の案内のもとで除去的治療(ablative therapy)を実行するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項14】
実質的に同時の画像の案内のもとで増殖性組織を抑制するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項15】
実質的に同時の画像の案内のもとで血管の増殖性組織を抑制するように構成および配置されている請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項16】
前記放射線の1つ以上の放射性同位体源が、1つ以上のマルチリーフ・コリメータ強度変調放射線投与システムに組み合わせられている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項17】
前記1つ以上のマルチリーフ・コリメータ強度変調放射線投与システムが、リーフ間の漏れを遮断し、閉じられたときに放射源の放射を完全に遮断することができるように構成および配置された個々のリーフを使用する二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ・システムを有している請求項16に記載の放射線治療システム。
【請求項18】
磁気共鳴画像化データから割り出された投与線量を、被験体の強度変調放射線治療を再最適化するために使用するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項19】
前記磁気共鳴画像化システムが、磁気共鳴画像化データが前記電離放射線の投与と実質的に同時にトレーサの摂取の領域を特定するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項20】
前記磁気共鳴画像化システムが、
・高い診断用品質の磁気共鳴画像化が、治療の開始前、治療の開始後、または両者において実行され、かつ
・低い品質の磁気共鳴画像化システムが、体構造およびターゲットの追跡のために、前記電離放射線を投与するための装置からの実質的に同時の電離放射線の投与の最中に実行される
ように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項21】
前記磁気共鳴画像化システムが、
・高い分解能の磁気共鳴画像化が、治療の開始前、治療の開始後、または両者において、データ空間サンプリング・パターンを取得するために使用され、かつ
・低い分解能の磁気共鳴画像化が、実質的に同時の電離放射線の投与の最中の器官の運動を捉えるべくデータ空間サンプリング・パターンbを取得するために使用される
ように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項22】
・強磁界の送出システムが、治療の開始前に実行される診断用の磁気共鳴画像化の品質を改善すべく構成および配置され、かつ
・低磁界の送出システムが、体構造およびターゲットの追跡の目的のために実質的に同時の電離放射線の投与の最中に画像が取得されるときに、磁気共鳴画像化の空間的完全性を向上させるとともに、投与される線量の分布の乱れを少なくするように構成および配置されている
請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項23】
前記1つ以上の放射性同位体源から電離放射線を投与するための装置が、陽子ビーム、重イオンビーム、中性子源ビーム、またはこれらの組み合わせから選択される治療用ビームによって増強されている請求項1に記載の方法。
【請求項24】
・陽子ビーム、重イオンビーム、中性子源ビーム、またはこれらの組み合わせから選択される1つ以上の治療用ビームから電離放射線を投与するための装置、
・磁気共鳴画像化システム、および
・前記電離放射線の投与と実質的に同時に画像を取得できるよう、前記電離放射線を投与するための装置および前記磁気共鳴画像化システムに接続されたコントローラ
を有している放射線治療システム。
【請求項1】
・1つ以上の放射性同位体源から電離放射線を投与するための装置、
・磁気共鳴画像化システム、および
・前記電離放射線の投与と実質的に同時に画像を取得できるよう、前記電離放射線を投与するための装置および前記磁気共鳴画像化システムに接続されたコントローラ
を有している放射線治療システム。
【請求項2】
前記磁気共鳴画像化システムが、磁気共鳴画像化データが前記電離放射線の投与と実質的に同時にトレーサの摂取の領域を特定するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記磁気共鳴画像化システムが、磁気共鳴画像化データが前記電離放射線の投与と実質的に同時にコントラスト強調の領域を特定するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記磁気共鳴画像化システムが、前記電離放射線の投与と実質的に同時に分光学的情報を取得するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記磁気共鳴画像化システムが、前記電離放射線の投与と実質的に同時に代謝の情報または生理学的情報を取得するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記磁気共鳴画像化システムが、前記電離放射線の投与と実質的に同時に磁気共鳴血管造影データ、リンパ管造影データ、または両者が取得されるように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記磁気共鳴画像化システムが、取得した磁気共鳴画像化データを被験体の治療への応答を前記電離放射線の投与と実質的に同時に監視するために使用するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記磁気共鳴画像化システムが、照射の最中の体構造および放射線治療ターゲットの動きを追跡するため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、変形可能画像の位置合わせ法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項9】
前記磁気共鳴画像化システムが、照射の最中に動きの存在下での被験体への線量を割り出すため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、線量計算の方法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記磁気共鳴画像化システムが、照射の最中に動きの存在下での被験体への線量を割り出すため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、変形可能画像の位置合わせ法および線量計算の方法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記磁気共鳴画像化システムが、被験体のIMRT処置を再最適化するため、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データについて、変形可能画像の位置合わせ法、線量計算の方法、およびIMRT最適化の方法の使用を可能にするように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項12】
前記磁気共鳴画像化システムが、生体内温度測定法を実行するために、前記電離放射線の投与と実質的に同時に取得した磁気共鳴画像化データを使用するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項13】
実質的に同時の画像の案内のもとで除去的治療(ablative therapy)を実行するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項14】
実質的に同時の画像の案内のもとで増殖性組織を抑制するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項15】
実質的に同時の画像の案内のもとで血管の増殖性組織を抑制するように構成および配置されている請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項16】
前記放射線の1つ以上の放射性同位体源が、1つ以上のマルチリーフ・コリメータ強度変調放射線投与システムに組み合わせられている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項17】
前記1つ以上のマルチリーフ・コリメータ強度変調放射線投与システムが、リーフ間の漏れを遮断し、閉じられたときに放射源の放射を完全に遮断することができるように構成および配置された個々のリーフを使用する二重ダイバージェント・マルチリーフ・コリメータ・システムを有している請求項16に記載の放射線治療システム。
【請求項18】
磁気共鳴画像化データから割り出された投与線量を、被験体の強度変調放射線治療を再最適化するために使用するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項19】
前記磁気共鳴画像化システムが、磁気共鳴画像化データが前記電離放射線の投与と実質的に同時にトレーサの摂取の領域を特定するように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項20】
前記磁気共鳴画像化システムが、
・高い診断用品質の磁気共鳴画像化が、治療の開始前、治療の開始後、または両者において実行され、かつ
・低い品質の磁気共鳴画像化システムが、体構造およびターゲットの追跡のために、前記電離放射線を投与するための装置からの実質的に同時の電離放射線の投与の最中に実行される
ように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項21】
前記磁気共鳴画像化システムが、
・高い分解能の磁気共鳴画像化が、治療の開始前、治療の開始後、または両者において、データ空間サンプリング・パターンを取得するために使用され、かつ
・低い分解能の磁気共鳴画像化が、実質的に同時の電離放射線の投与の最中の器官の運動を捉えるべくデータ空間サンプリング・パターンbを取得するために使用される
ように構成および配置されている請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項22】
・強磁界の送出システムが、治療の開始前に実行される診断用の磁気共鳴画像化の品質を改善すべく構成および配置され、かつ
・低磁界の送出システムが、体構造およびターゲットの追跡の目的のために実質的に同時の電離放射線の投与の最中に画像が取得されるときに、磁気共鳴画像化の空間的完全性を向上させるとともに、投与される線量の分布の乱れを少なくするように構成および配置されている
請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項23】
前記1つ以上の放射性同位体源から電離放射線を投与するための装置が、陽子ビーム、重イオンビーム、中性子源ビーム、またはこれらの組み合わせから選択される治療用ビームによって増強されている請求項1に記載の方法。
【請求項24】
・陽子ビーム、重イオンビーム、中性子源ビーム、またはこれらの組み合わせから選択される1つ以上の治療用ビームから電離放射線を投与するための装置、
・磁気共鳴画像化システム、および
・前記電離放射線の投与と実質的に同時に画像を取得できるよう、前記電離放射線を投与するための装置および前記磁気共鳴画像化システムに接続されたコントローラ
を有している放射線治療システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−526036(P2007−526036A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554190(P2006−554190)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/004953
【国際公開番号】WO2005/081842
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/004953
【国際公開番号】WO2005/081842
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】
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