説明

軟質ポリウレタンフォーム

反応して二酸化炭素を生じるイソシアネートと水を含むフォーム形成成分をプレポリマーに混合することによって、軟質ウレタンフォームを製造する。該プレポリマーは先端に水酸基がついており、これは、ポリオール上の利用可能な水酸基と反応するために必要な理論量未満のイソシアネートをポリオールに反応させることによって製造される。該プレポリマーは、軟質ポリウレタンフォームの製造に使用するための新しい貯蔵安定性の出発物質であり、このプレポリマーから製造したフォームは、耐加水分解性に関して有利な性質を持っている。該プレポリマーは、低粘度又は高粘度で、ポリオールと反応するイソシアネートの割合を適切に選択することによって製造することができる。高粘度においては、フォーム化においてガス処理又は脱ガス処理することによって、セル構造を都合よく制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタン(PU)フォームに関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォーム(軟質PUフォーム)を製造するための方法は、当業者に公知であり、例えば、プラスチックマニュアル、第7巻、ポリウレタン、ベッカー/ブラウン、第二版、カールハンセルバーラッグ、p.170-235に取り上げられている。
【0003】
従来から、軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールに多官能性イソシアネートを反応させ、NCO基とOH基とが付加反応によってウレタン結合を形成することによって製造されており、また、該ポリウレタンは、イソシアネートと水を反応させることによってインサイチューで生成する二酸化炭素によってフォーム化されている。
【0004】
この従来のプロセスは、ポリオール、イソシアネート及び水を一緒に混合して、ポリウレタンを同一工程で形成及びフォーム化する、いわゆる“ワンショット”法で実行できる。
【0005】
しかしながら、第1工程でポリオールをイソシアネートと反応させて、いわゆる‘プレポリマー’を生じさせ、第2工程でイソシアネートと水を反応させることによって発生する二酸化炭素により該プレポリマーをフォーム化する、二段法を用いることも公知である。
【0006】
英国特許第870119号及び英国特許第929371号の何れにも、ポリオールにトルエンジイソシアネート(TDI)を反応させて粘稠なプレポリマーを生成させ、その後、該プレポリマーに水及び触媒を混合してフォームを生成させることが記載されている。
【0007】
しかしながら、これらの先行特許文献には、ポリオールの利用可能な水酸基の全てと反応させるのに十分な量のTDIによって製造させたプレポリマーが記載されており、従って結果として生成するプレポリマーは、末端がNCOであり;いわゆる“イソシアネートプレポリマー”であって、利用可能なOH基を持たない。該プレポリマーのNCO基は、水との反応に利用できるので、追加の更なるイソシアネートを必要とすることなく、PUフォームを製造できる。
【0008】
また、いわゆる“ポリオールプレポリマー”は、PU材料の製造において公知である。“ポリウレタンハンドブック”ギュンター オエルテル編、ハンザー出版、p.76に記載されているとおり、ポリオールプレポリマーは、未反応の水酸基を残しておくために、化学量論的に不足量のイソシアネートと反応させることにより、ポリエーテル及びポリエステルポリオールを転換して得られるオリゴマー状の付加物である。記載されているように、これらのプレポリマーは、未変性のポリオールよりも高い粘度を有するウレタン変性ポリオールであり、ラッカー、ペンキ、被覆材及びシーリング剤の分野で使用される。例えば、熱により活性化されるハードコーティング(焼付塗装)は、ポリオールプレポリマーとマスクされた又はブロックされたポリイソシアネートとから製造できる。その適用分野は、本発明が関与する軟質PUフォームの分野とは異なる。
【0009】
軟質PUフォームの分野においては、加水分解によってフォームが老化し、特に柔らかくなることが知られている。様々な用途において、このことは、使用中に材料の性質を変化させてしまうので好ましくない。
【0010】
【非特許文献1】プラスチックマニュアル第7巻のポリウレタン、ベッカー/ブラウン、第二版、カールハンセルバーラッグ、p.170-235
【特許文献1】英国特許第870119号公報
【特許文献2】英国特許第929371号公報
【非特許文献2】“ポリウレタンハンドブック”ギュンター オエルテル編、ハンザー出版、p.76
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、大幅に改良された耐加水分解性を有する軟質PUフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明によれば、プレポリマーとフォーム形成成分の混合物からPUフォームを製造する方法であって、前記プレポリマーを、少なくとも一種のポリオールに少なくとも一種の多官能性イソシアネートを反応させることにより製造し、該プレポリマーが利用可能なOH基を複数有する非フォーム化ポリオールプレポリマーであり、且つ、前記フォーム形成成分が少なくとも一種の多官能性イソシアネート及び水を含むことを特徴とする、軟質ポリウレタンフォームの製造方法が提供される。
【0013】
この方法によって、加水分解による老化に対して驚くべき抵抗性を有するPUフォームを製造できることが見出された。
【0014】
前記のように、例えば、焼付ハードコーティングを作製するためにポリオールプレポリマーを用いることは公知であるが、驚くべきことに、該方法を用いて、有利な性質を持った軟質PUフォームを製造することができる。
【0015】
先端にイソシアネートがついているプレポリマーを用いたフォームの製造について記載されている前記文献の教示に反して、本発明では、利用可能なOH基を有し、そのためPUフォームを製造するために更に追加のイソシアネートを必要とするイソシアネート/ポリオールプレポリマーを使用するが、これによって、驚くべき耐加水分解性を有するフォームがもたらされることが分かった。
【0016】
該耐加水分解性に対して如何なるメカニズムに制限されることも意図するものではないが、前記プレポリマーを使用することによって、水による攻撃に対してほとんど反応しない尿素結合を有するPUフォームが生じるものと考えられる。
【0017】
イソシアネートとポリオールの反応は、付加反応によりウレタン結合を生じる。
I. R−NCO+HO−R’→R−NH−CO−O−R’
イソシアネートが水と反応して、アミンと二酸化炭素を生じる。
II. R−NCO+HO→RNHCOOH→RNH+CO
アミンがイソシアネートと反応して、尿素結合を生じる。
III. R−NCO+RNH→R−NH−CO−NH−R
尿素結合が徐々に加水分解して、アミンと二酸化炭素を生じる。
IV. R−NH−CO−NH−R+HO→2RNH+CO
NCO、HO、HOの相互作用により、上記反応(1)、(2)、(3)が同時に起こる結果として生じる尿素結合が組み込まれたPU鎖が生じる。
【0018】
軟質PUフォームは、一般的に、尿素結合及びウレタン結合のNH及びカルボニル基等の極性基間の水素結合を有する、ポリウレタン及びポリウレアの芳香族ハードセグメントが結合した長く柔軟なポリオール鎖から構成されるセグメント化された構造を有する。
【0019】
水は、尿素結合を加水分解させて開裂させ、すなわち反応IVに従って鎖を分割することによって、また、構造中に浸透して水素結合を変性し、該構造内の鎖にずれを生じさせることによって、構造を攻撃することができ、このことが、フォームの物理的な性質を変化させ、特には、柔らかくする。
【0020】
イソシアネート/水反応によって、尿素結合が形成される機会無しに、PU鎖のネットワークが大部分形成されるため、フォーム化の前にイソシアネート/ポリオール反応の一部が起こるプレポリマーを使用することで、尿素結合の形成を最小化できるものと思われる。
【0021】
また、イソシアネートが水及びプレポリマー上の利用可能なOH基の両方と反応する際に、フォーム化プロセス中に生成する尿素結合は、水による攻撃に対して殆ど反応しなくなるように、PU鎖のネットワーク内のより良好な‘組織’に、十分に組み込まれる傾向があるものと思われる。考えられる一解釈は、PU基が尿素結合の種として作用し、その結果、上記のような、尿素結合を加水分解して裂け目を生じたり、水素結合を変性してずれを生じさせる原因となる水の浸透が容易でない、より組織化され又は不均一な系を生じるとことである。プレポリマー中のイソシアネートが増加すると、組織の度合いは増加するかもしれないが、以下で議論するように、イソシアネートが増加するとプレポリマーの粘度が上昇して、フォームの物理的及び化学的性質を変化させうる。
【0022】
イソシアネート、ポリオール及び水を一緒に反応させる、いわゆる‘ワンショット’法、又はイソシアネート末端プレポリマーに水を反応させることによってPUフォームを製造する場合、加水分解又は鎖のずれによってPU鎖のネットワークがより‘再編成’されやすくなるように、尿素結合が、より‘組織化されていない’2相系に組み込まれる可能性がある。この‘再編成’の結果、軟化し又は硬度を失う。
【0023】
本発明によれば、前記プレポリマーは、完全に又は実質的に水が存在しない条件でイソシアネートとポリオールを反応させて製造される、貯蔵安定性を有する材料である。該プレポリマーは、予備調製され、また、次の段階において二酸化炭素を発生するイソシアネートと水の反応にさらすことによってフォーム化され、この段階はプレポリマーの製造直後に同一容器内または別の容器内で実行してもよく、また、貯蔵安定性を有するプレポリマーを完全に分離して製造または供給する場合は、必要に応じてその後の段階に別の装置を用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ここで使用するプレポリマーという用語は、従来からの意味で使用され、ウレタンで変性されたポリオール、すなわち、最終製造物であるポリウレタン材料の製造に使用され、ポリオールにイソシアネートを反応させることによって製造され、ウレタン結合を有するポリマー材料を指す。また、ここで使用する非フォーム化プレポリマーの言及については、実質的にフォーム化すること無く製造したプレポリマーを意味する。実施においては、不可避的に存在し、イソシアネートと反応する可能性のある、例えば原材料のポリオール中に含まれている微量の水に起因して、フォーム化がささいな又はわずかな程度起こるかもしれない。しかしながら、プレポリマーの製造において水を意図的に又は故意に入れないこと、並びに反応条件及び成分を選択して、イソシアネート/水の反応によって二酸化炭素が生成するのを阻害する又は最小化することが好ましい。
【0025】
また、本発明のプロセスが、単一のプレポリマー、すなわち単一のポリオールに単一の多官能性イソシアネートを反応させることによって得られるポリマー材料を使用することを含み、或いは、異なった複数の混合プレポリマー及び/又は一種以上のコポリマーを生成させるために、いくつかのポリオールにいくつかの多官能性イソシアネートを反応させることによって製造した複数種のプレポリマーを使用することを含むことを理解すべきである。
【0026】
該プレポリマーは、ポリオール又はポリオールの混合物に、イソシアネート又はイソシアネートの混合物を、場合によっては触媒等の一種以上の他成分の存在下で混合することによって形成することができる。かかる混合は、例えば撹拌によるバッチプロセス、又はミキシングヘッド等により供給する連続プロセスとして実行してもよい。反応物及び他の成分の性質によって別の温度及び時間を使用してもよいが、室温で混合を行ってもよく、また、適当な時間、例えば24時間、混合を維持してもよい。
【0027】
ポリオールに関しては、如何なる適切な種類のポリオールでもよい。一般的に、PUフォームの製造にはポリエーテル及びポリエステルポリオールが使用され、本発明によれば、ポリオールは全部又は少なくとも大部分がポリエーテルポリオールであることが好ましい。ポリエーテルポリオールは、ポリエステルポリオールの場合よりも加水分解されにくいPUフォームを生じる。ポリエーテルポリオールを使用する場合、酸化エチレン(EO)を酸化プロピレン(PO)の代わりに又はPOの追加として使用してもよいが、ポリエーテルポリオールは、全部が又は少なくとも大部分が酸化プロピレン由来であることが好ましい。EO由来のポリオールは、PO由来のものよりも加水分解に弱い。しかしながら、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合物も使用できる。ポリオールは2から6、特には2から4のOH官能性を有していること、及びおよそ400−10,000の範囲の分子量(MW)を有していることが望ましい。
【0028】
混合ポリオールを用いて系の反応性を変化させること又は生成したPUフォームを望ましい性質にすることは当業者に周知であり、必要に応じて他のポリオール類及びポリオール類の混合物を使用してもよいが、本発明では通常PO由来のポリエーテルポリオールが好ましい。
【0029】
本発明により使用できるポリエーテルポリオールの例は、例えば、プラスチックマニュアル、7巻、ポリウレタンの項、ベッカー/ブラウン著、第2版、カールハンザーベルラッグ(Carl Hanser Verlag)出版、p.44-54及びp.75-78に記載されている。
【0030】
従って、例えば、ポリオールは、以下と同様でもよい:
I. PO及びプロピレングリコール由来で、(25℃の)粘度が250-350mPa.s、OH価が56±3のもの。
II. EO及びPO及びトリメチロールプロパン由来で、(25℃の)粘度が750-900mPa.s、OH価が35±2のもの。
III. PO及びトリメチロールプロパン由来で、粘度が600-700、OH価が380±25のもの。
IV. PO及びグリセリン由来で、粘度が450-550、OH価が56±3のもの。
【0031】
(mPa.sでの)粘度の測定は全て、ブルックフィールド粘度計を用いて求めている。他に記載がなければ、粘度は25℃で測定している。OH価(ヒドロキシル価)は、mg KOH/gでの単位重量当たりのNCO反応性OH基の濃度を与える慣例的なパラメーターである。
ヒドロキシル価(OH)=56.1×官能性×1,000
ポリオールのMW
【0032】
また、ビルトイン触媒を既に含むポリエーテルポリオールが使用可能であり、これは、例えば、国際公開第WO03/016373A1号に記載されている。更に、同様に、前記ポリエーテルポリオールの混合物も使用可能である。
【0033】
好ましいポリオールは、グリセリンの酸化プロピレン付加物であって3,000程度の分子量を有するトリオールである。市販例は、ボラノール(登録商標)3008(ダウケミカルカンパニー)又はデスモフェン(登録商標)20WB56(バイエル)である。
【0034】
多官能性イソシアネートに関しては、ジイソシアネート、特にはTDI(トルエンジイソシアネート)が好ましい。しかしながら、他の多官能性イソシアネートを、好ましくは2から5の官能性を有する多官能性イソシアネートを、それのみで又は何らかの適当な組み合わせで使用してもよい。同じイソシアネートをプレポリマーの製造及びその後のフォームの製造に使用してもよく、或いは、別のイソシアネートを使用してもよい。
【0035】
従って、多官能性イソシアネートは:
TDI(トルエンジイソシアネートの全ての異性体の混合物)
MDI(メチレンジフェニルイソシアネート)、
のいずれか一種以上でよく、
これらは単一物又は重合体(いわゆる芳香族イソシアネート)でもよい。
【0036】
更に詳細には、多官能性イソシアネートは、二つ以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートであり、標準的な市販のジイソシアネート及び/又はトリイソシアネートを一般的に使用する。これらポリイソシアネートの適切な例は、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、アリール脂肪族イソシアネート、及び/又は、ジイソシアネートトルエン(=トリレンジイソシアネート TDI)の2,4−異性体及び2,6−異性体の市販の混合物等の芳香族イソシアネートであり、これらは商品名クラデート(登録商標)T80(シェル)又はボラネート(登録商標)T80及びT65(ダウケミカルズ)で販売されている。また、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン(=4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート);MDI)並びにTDI及びMDIの混合物も使用できる。しかしながら、TDI又はMDI及びポリオールをベースとするイソシアネートプレポリマーを使用することも可能である。さらに、変性又は混合イソシアネート(例えば、バイエルのデスモデュア(登録商標)MT58)を使用してもよい。脂肪族イソシアネートの例は、バイエルのデスモデュア(登録商標)N100又はN3300等の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート又はトリイソシアネートである。
【0037】
反応してプレポリマーを形成するポリオールとイソシアネートの相対的な割合、及びポリオールのMW(分子量)は、必要に応じて選択することができる。イソシアネートの割合は、全ての利用可能なOH基と反応するために理論的に必要な量の0.1−99%であり、好ましくは0.1−50%である。粘度はイソシアネートの割合とともに上昇し、その上限は作業上の要件に依存する。実際、プレポリマーのヒドロキシル価は、以下の関係から割り出すことができる。
OH(プレポリマー)=OH(ポリオール)−php(NCO)×561
EW(NCO)
【0038】
OH(ポリオール)は、原料ポリオールのヒドロキシル価であり、通常56である。php(NCO)は、ポリオール100重量部当たりのNCOの重量部であり、EW(NCO)は、イソシアネートの当量であり、TDIに対しては87である(すなわち、分子量を理論官能性で割った値)。
【0039】
イソシアネートの割合が高く、また必要に応じてポリオールのMWが高い場合、プレポリマーは、非常に粘稠で約30,000mPa.s又はそれ以上である。或いは、使用したイソシアネートの割合がより低く、必要に応じてMWが低いポリオールを使用すれば、より少ないOH基が反応し、粘度がより低くなる。粘度がより低いプレポリマーほど、PUフォームの連続製造により適している。従って、該粘度は20,000mPa.s未満でもよく、また7,000未満で700mPa.s位でもよく、及び/又はベースのポリオールの粘度に近い或いは実質的にベースのポリオールの粘度と同じでもよい。ポリオールのMWは、400-10,000の範囲にできる。
【0040】
本発明による有益なフォーム、すなわち優れた耐加水分解性を有するフォームを、(イソシアネートと反応するOH基を少ない割合でのみ有する)粘度の低いプレポリマー、及び(イソシアネートと反応するOH基をより多くの割合で有する)より粘度の高いプレポリマーの両方で製造できることが見出された。また、以下に議論するように、セル構造の制御が必要な場合、より粘度の高いプレポリマーによって製造したフォームは、セル構造に関して利点を有している。
【0041】
より粘度の高いプレポリマーは、5,000mPa.sを超える、好ましくは7,000mPa.sを超える粘度を有しており、この上限は約50,000mPa.s、好ましくは35,000mPa.sである。詳細には、9,000から35,000mPa.s、特には15,000から35,000mPa.sの範囲が有利である。
【0042】
好ましい範囲は5,000mPa.s未満からベースのポリオールの粘度付近の600又は700mPa.sまでであるが、より粘度の低いプレポリマーは、20,000mPa.s未満の粘度、特には7,000mPa.s未満の粘度を有し、より高い粘度の範囲と重なってもよい。
【0043】
粘度は、使用したイソシアネートの割合から割り出せ、ポリオールの利用可能な全ての水酸基と反応するために必要なイソシアネートの理論重量に関係し、また、プレポリマーを形成するために使用したポリオール又はポリオール混合物の元の粘度から割り出せる。概して、前記載のように、該割合は0.1から99%である。粘度の高いプレポリマーは、必要なイソシアネートの30%から99%、特には30%から50%に相当するのに対して、粘性の低いプレポリマーは、必要なイソシアネートの0.1%から30%、或いは0.1%から23%または25%、特には0.1%から12%、例えば3%から12%に相当する。
【0044】
イソシアネートの付加反応のために、如何なる適当な触媒を使用してもよい。該触媒は、第一スズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート等のスズ化合物、又は1,4−ジアザ(2,2,2)ビシクロオクタン等の3級アミン、又はジンクオクトエート等の当業者に使用されている他の物質でもよい。必要であれば、二種以上の異なる触媒を同時に使用してもよい。しかしながら、必要に応じて、加熱又はその他の反応開始条件に依存して、触媒無しでもプレポリマーを製造できる。
【0045】
前記のようにアミン及び他の触媒も更に使用できるが、通常、如何なる添加触媒も、ジブチルスズジラウリエート、第一スズオクトエート又はより高分子の相同物等のスズ塩に対して、例えば0.004重量%程度の少量使用する。該触媒は、通常ポリオールに混合され、その後イソシアネートをゆっくり加え、その後生成した混合物をフォーム化前に十分に反応させる。この様にして、初期混合を約15分間実行し、また、約24時間更に反応を進行させてもよい。
【0046】
また、プレポリマーのフォーム化においては、助剤又は添加剤として他の成分を混合してもよい。
【0047】
これらとして、より具体的には、鎖延長剤、架橋剤及び鎖終結剤等の助剤が挙げられる。
【0048】
例えば、ジエタノールアミン又は水等の低分子量のイソシアネート反応性である二官能性化合物、或いはトリエタノールアミン、グリセリン等のより高官能性化合物、或いはソルビトール等の糖アルコールを、鎖延長剤及び/又は架橋剤として使用してもよい。
【0049】
一価アルコール、一級及び二級アミン等のイソシアネート反応性の一官能性化合物を鎖終結剤として使用できる。
【0050】
更に、難燃材、顔料又は充填剤等の、当該技術分野で公知の助剤を添加してもよい。
【0051】
該プレポリマーを他の材料に組み込んでもよいし、フォーム化の前に該プレポリマーを他の材料と混合してもよい。例えば、プレポリマーを希釈して低粘性にするために、或いは系の反応性又は生成するフォームの性質を変えるために、例えば、同種又は異種の未反応ポリオールを加えてもよい。
【0052】
該プレポリマーは、例えばベッカー/ブラウン著、プラスチックマニュアル、第二版、第7巻、ポリウレタンの項、p.171-178、カールハンサーバーラッグ出版に記載されているような従来の装置を用い、また、例えばベッカー/ブラウン著、プラスチックマニュアル、第二版、第7巻、ポリウレタンの項、p.187-193、カールハンサーバーラッグ出版に記載されているような従来のフォーム配合を用いる従来の方法で、フォーム化されてもよい。
【0053】
通常、フォームを製造するために、該プレポリマーは、水及び/又は他の発泡剤、イソシアネート、一種以上の触媒、及び泡安定剤等の一種以上の他成分と混合される。
【0054】
また、フォーム化は、バッチ法又は連続法でもよく、また混合物を窒素でガス処理してもよい。
【0055】
更に具体的には、前記フォーム成分は、下記a)、b)、c)、d)、e)の一以上を含む:
a)脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、アリール脂肪族イソシアネート、及び/又は芳香族イソシアネート等のイソシアネート類。例は、ジ−イソシアネートトルエン(=トリレンジイソシアネート TDI)の2,4−異性体及び2,6−異性体である市販の化合物である。商品名は、シェルのクラデート(登録商標)T80並びにダウケミカルズのボラネート(登録商標)T80及びT65である。また、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン(=4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート);MDI)及びMDIとTDIの混合物も使用できる。
【0056】
更に、TDI又はMDI及びポリオールをベースとするイソシアネートプレポリマーも使用できる。更に、修飾イソシアネート又は混合イソシアネート(例えばバイエルのデスモデュア(登録商標)MT58)も使用できる。脂肪族イソシアネートの例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート又はトリイソシアネートであり、例えば、バイエルのデスモデュア(登録商標)N100又はN3300である。
【0057】
該イソシアネートは、プレポリマーを製造するために使用したイソシアネートと同じでも異なってもよい。
b)水、好ましくはポリオール又はプレポリマー又はポリオール/プレポリマー混合物100重量部に対して0.5から10重量部
c)追加の発泡剤として液体COもまた使用できる。
d)他の添加剤、特にPUフォーム技術においてよく知られている触媒等の添加物、具体的には、DMEA(ジメチルエタノールアミン)、ダブコ(登録商標)33LV(エアプロダクツの三級アミン)等のアミン、及び/又はスズ触媒、例えばコスモス29(第一スズオクトエート)等の有機金属化合物、或いはジンクオクトエート等の他の触媒;当該技術分野で公知の泡安定剤、例えば、ゴールドシュミットのテゴスタブ(登録商標)レンジ又はBYK−Chemieのシルバイク(登録商標)レンジ等のシリコーン界面活性剤;ジエタノールアミン、グリセリン、ソルビトール等の鎖延長剤及び/又は架橋剤;また難燃材;充填剤も、任意に使用できる。これらの添加剤及び従来のフォーム化プロセスに関して当該技術分野で公知の他の添加剤を組み合わせて使用してもよい。
e)ガス処理及びセル構造(大きさ及び大きさの分布)制御用の窒素
【0058】
フォーム化のために、必要であれば、減圧下又は加圧下で作業できる;このためのプロセス条件が、例えば、米国特許第5,194,453号に開示されている。
【0059】
フォーム化を目的とした基本材料、例えば、プレポリマー又は基本成分の液状混合物に微細に分散した気体を供給することによって、非常に細かいセルが得られる。該ガスは、好ましくは窒素で、空気を使用してもよい。
【0060】
以下で議論するように、セルの構造を制御するために気体処理することは、粘度の高いプレポリマー、例えば5,000mPa.sを超えるプレポリマーに特に有用である。
【0061】
プレポリマーに加えて、プレポリマーとポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール又は他のポリオールとの混合物も、ここで使用できる。如何なるエチレンオキサイド量のジオールからヘキソールまで使用できる。
【0062】
本発明の付随的な特徴として、セル数及びプレポリマーの粘度に関するパラメーターを制御して、有益な性質を持つPUフォームを生成でき、このことが前記プレポリマーの使用における更に特有の利点であることが分かった。
【0063】
従って、一実施態様においては、特定の規則正しいセル構造を有する、又は必要に応じて、セルサイズが非常に細かいもの(80ppiを超えるセル数)から非常に粗いもの(6ppiまで減少したセル数)まで及び不規則なセル構造を有する軟質PUフォームが生成する。ppiという用語は、フォーム表面上の直線1インチあたり(2.54cmあたり)の空孔数をカウントして、セル(又は空孔)サイズを測定することを指す。この実施態様は、大規模な工業スケールで使用できる方法により、所定の望ましいセルサイズ又はセル数及び/又はセルサイズ分布を有する上記軟質フォームを製造することを可能にする。
【0064】
この点で、非常に微細なセル(>80ppi)を有する軟質ポリエーテル−ポリウレタンフォームは、これまでのところ、市場で一般に入手できる原料を用いて商業的に製造できなかった。他方、ポリエステルポリオールをフォーム化してポリエステル−ポリウレタンフォームを製造する場合には、非常に細かいセルが得られることが知られている。
【0065】
しかしながら、本発明の過程において、驚くべきことに、好ましくは下記の高粘性のプレポリマーにおいて、本発明のプレポリマーを使用することによって、ポリエーテルポリオール(これは通常低粘性材料とみなされている)を非常に細かいセルを有するPURフォームに加工できることも明らかになった。
【0066】
他の意味を明白に言及しない限り、本文中で“高粘性”という用語は、材料又は材料混合物の粘度が5,000mPa.sと同じ又はこれを超える、特には7,000mPa.sを超えることを指すために使用される。
【0067】
生成した軟質フォームは、次の特徴、すなわち従来技術が今まで達成できなかったポリエーテルポリオール系のPUフォームに関する特徴:
− プレポリマーの構成を制御して、その粘性を制御できることによって得られる制御されたセル数及び構造(細かい/粗いセル数及び規則正しい/不規則な構造)、
− 優れた加水分解老化性能;及び
− 10-100kg/m3、好ましくは14-70kg/m3の密度、
によって常に区別される。
【0068】
本発明による製造方法に特有の利点は、セルサイズ又はセル数と、セルサイズ又はセル構造の規則性又は不規則性との両方を意図的に前もって決定することが容易であることである。このことは、主として、例えばフォーム化するための空気又は窒素を用いたガス処理を変化させることにより、必要であれば所望のフォームの品質に応じて基本材料又は少なくともその幾つかを多かれ少なかれ脱ガス化することを組み合わせて、達成される。
【0069】
ここで、“セル構造”という用語は、サイズ、分布、及び数に関するフォームマトリクスの構造及びそこに含まれるセルのタイプを指すために使用されていることを理解すべきである。均一又は規則的なセル構造とは、セルの大部分が同じ大きさ又はほとんど同じ大きさであることを意味する。
【0070】
プレポリマーの作用である高い粘性のために、その構造に依存して、分散性、特に気泡の分散速度が低粘性の反応混合物に較べて著しく減少し、また該気泡及び水蒸気の泡がその結果融合して、ゆっくりとより大きな構造を形成するものと思われる。特に、通常低粘性の系であるポリエーテルポリオールをベースとするフォーム系の粘度を上げられること、及びその結果としてセルサイズを制御し特定できることは、本成果の驚くべき特徴である。
【0071】
また、意外にも、フォーム化するためのガス処理を故意に抑制し、他方、イソシアネート及び/又はプレポリマーの脱ガス処理を制御することによっても、非常に大きなセルを有するフォームを製造できる。この場合、より強く脱ガス処理すると、セルが大きくなり最終生成物のセル数が減少する。該脱ガス処理は、例えば閉鎖循環系内で、真空下で実行できる。
【0072】
前記高粘性のプレポリマーは、>5,000mPa.s、特には>7,000mPa.s、好ましくは15,000から35,000mPa.s、又はおよそ50,000mPa.s以下の粘性を有する。
【実施例】
【0073】
本発明をよりよく説明するために、例を参照して更に説明する。
【0074】
例1:バッチ法によるプレポリマーの製造
96.24% ポリエーテルポリオール[デスモフェン 20WB56(バイエル)]、ヒドロキシル価:56、粘度:20℃で約700mPa.s
3.75% ジイソシアネートトルエン80/20(TDI80/20)
0.00385% ジブチルスズジラウレート(DBTL)
【0075】
該ポリエーテルポリオールを室温で混合容器内に投入し、その後撹拌しながらジブチルスズジラウレートを加える。ジイソシアネートトルエンをゆっくり撹拌して、この混合物中に加える。
【0076】
24時間後、生成したプレポリマーは、25℃での粘度が約30,000mPa.sである。
【0077】
しかしながら、該プレポリマーは、連続法によっても同様に製造できる。
【0078】
例2:先行技術において公知の従来の生成物と比較した、本発明によるフォームの製造及び特徴
【0079】
該フォームを、標準的な工業用軟質フォームスラブストックプラント(メサーズ ヘンネケ、ドイツ(Messrs. Hennecke, Germany))内で、ワンショット法によって製造した。この例においては、配合に従い、基本材料(原料)を、保存容器から撹拌機及び排出管を具える混合チャンバーに、ポンプ(例えば、ピストンポンプ又はギアポンプ)を用いて直接供給した。
【0080】
原料の供給及び混合は、当該技術分野で公知の方法で行った。この例においては、原料の温度を25±3℃に調整した。
【0081】
該プレポリマー又はポリオールの総生産量は50kg/分であった。付加的な核生成(すなわち、泡を発達させるための追加の核生成)のために、混合チャンバーに窒素ガスを供給した。6,000rpmを超えない、好ましくは6,000rpm未満の撹拌速度、且つ2.5バールを超えない、好ましくは2.5バール未満の混合チャンバー圧で、フォーム化を実行した。
【0082】
以下の明細に従う成分(表1)をフォーム化の基本材料として使用し、本発明に従って使用するプレポリマーを例1に従って製造し、また、参照例のポリエーテルポリオールは、例1のポリエーテルポリオールと同一であり粘度が約700mPa.sであった。
【0083】
【表1】

【0084】
*php=ポリオール(又はプレポリマー又はプレポリマー/ポリオール混合物)100重量部当たりの重量部
【0085】
これら条件下で製造した軟質PUフォームに以下の試験をした:
a)加速老化試験による圧縮硬さの減少、及び
b)セル構造の測定(ppi)
【0086】
加速老化試験の前後に、圧縮硬さをkPa.sで測定した。EN ISO 3386-1に従い、40%歪みにおいて、該圧縮硬さを測定した。EN ISO 2440に従い、オートクレーブ内で120℃の飽和蒸気を用いて5時間(1回の老化サイクル)で、加速老化試験(湿気による老化)を実行した。
【0087】
セル構造は、直線上にあるセルの数をカウントすることによって測定した。データをppi(直線1インチ又は2.54cm当たりの気孔数)で与える。
【0088】
【表2】

【0089】
かかる比較(表2)からわかるように、本発明に従って製造した約25kg/m3の密度を有する軟質PUフォームは、同じ密度を有するように配合され従来技術の一般的な方法によって製造されたフォームよりも、実質的により微細にセル化されているだけでなく、老化に対して更なる抵抗性を有していた。
【0090】
これまでに本発明に従う方法によって製造した各種フォーム生成物は全て、同一又は大部分同一の配合を有し従来技術の既知の方法によって同程度の条件で製造したフォームに較べて、(上記加速試験の基準に従う)湿気による老化に対して、きわめて優れた抵抗性を有していることがさらに明らかになった。
【0091】
既知の方法に従って製造したフォームの場合、圧縮硬さの減少は35%以下であったが、主成分のイソシアネート及びポリオールに関して同一又は大部分同一の配合である本発明に従って製造したフォームの場合、かかる値は15%以下であった。>80ppiのセル数及び20-30kg/m3の密度を有するフォームの場合、圧縮硬さの減少はさらに0-5%の範囲にあった。
【0092】
概して、本発明により製造した生成物の圧縮硬さの減少は、従来技術による類似の生成物よりも、いずれにせよ10-50%低かった。このことは、本発明により製造されたフォームは、老化、特に湿気による老化に対する抵抗性が実質的に改善されていることを見事に示している。
【0093】
これに関連して、参照生成物の配合は、本発明による生成物と基本的に同一の密度及び硬度特性を生じさせるように選択した。
【0094】
更に具体的には、参照生成物の配合は、本発明により製造されたフォームとほとんど同じ見かけ密度及び硬さで、公差範囲が±10%であるフォームを生じさせるように選択した。
【0095】
例3:泡の核形成を減少させることによる粗いセルの軟質フォームの製造
【0096】
例2に従う更なる反応配合において、密度18kg/m3及びセル数8ppiの軟質フォームを、プレポリマーと同じ配合から、使用した基本材料、主としてイソシアネートの脱ガス処理によって製造した。
【0097】
これらの例及び更なる例が、以下の例3を参照することにより与えられ、表3中のカラムA及びBは表1中のものと同様であり、カラムCは上記例3であり、その他のカラムは、指摘したものを除いて、また、それぞれの処理を表1での機械混合ではなく実験室レベルの混合で行ったことを除いて、表1と同一の配合および方法を用いた他の例である。
【0098】
【表3A】

【0099】
【表3B】

【0100】
【表3C】

【0101】
テゴアミン ZE-1(Tegoamin ZE-1)及びコスモス EF(KOSMOS EF)は、それぞれアミン及びスズ触媒であり、ダブコ 33LV (Dabco 33LV)及びナイアックスA1(Niax A1)と異なる働きをするが、所望の低いフォギング性能を有している。
【0102】
表3の説明
カラムAとBは前述の例1であり、カラムCは例3である。すなわち、カラムB及びCは、本発明に従って(高粘性のプレポリマーを用いて)機械を用いて製造したフォームであり、また、カラムAは、カラムBのプレポリマーを調製するために使用したのと同じベースポリオールを使用し、カラムBのフォームと同じ密度を有するように配合して調製した、従来の機械で製造した参照例のフォームである。
【0103】
制御された細かい及び粗いセル構造(カラムB及びC)と共に、加水分解による老化において実質的な改善が見られた。
【0104】
カラムDからGは、フォーム化段階において同じ密度及び同じ水レベルで製造したフォームである。プレポリマーを調製したのと同じイソシアネート及び触媒(TDI及びDBTL)を使用したが、イソシアネートの割合が異なるので、異なる粘度のプレポリマーが生じる。ベースポリオールは、例1で使用したものと同じである(MW=3,000)。フォームの触媒は、例1の触媒と異なり:それらは自動車産業で使用するフォームの製造に好ましい、低フォギング触媒である。
【0105】
本発明によるフォーム(カラムE−G)は、その参照カラムDに較べて改善された老化性能を有している。
【0106】
カラムH−Jは、カラムAと同様である(また同じポリオール及び同じイソシアネート及び触媒を使用してプレポリマーを調製する)が、プレポリマーを調製するために使用したのとイソシアネートの割合が異なり、また機械による混合ではなく実験室レベルの混合である。本発明によるフォーム(カラムI,J)は、参照カラムHに較べて改善された老化性能を有している。
【0107】
カラムK−Rは、例1よりもフォーム化の水レベルが低く、プレポリマーの製造に異なる割合のイソシアネートを用いた更なる例(ここでは、例1と同じポリオールを使用する)であり、次のパラメーターを以下のように変えた:
i)プレポリマーを調製するために使用したイソシアネート/触媒
K−N,Q,R:TDI+DBTL
O:TDI+第一スズオクトエート
P:ポリマーのMDI(例えば、ダウケミカルのボラネート M220)+DBTL
ii)Kは、ベースポリオールをプレポリマーに変換していない参照例である;L−Qは、プレポリマーに変換された同種のベースポリオールの量が同じである;Pは、プレポリマーに変換された同種のベースポリオールの量が半分で、等量のプレポリマーに変換されていない同種のベースポリオールによって希釈されている。
【0108】
本発明によるフォーム(カラムL−R)は、参照カラムKに較べて改善された老化性能を有している。
【0109】
カラムS及びTは、特にポリオールが(例1のPOのみのポリオールではなく)EO/POポリオールで、また大部分が二級の水酸基を有し分子量が3500の三官能性ポリエーテルポリオール、具体的にはルプランノール(登録商標)2084(BASF)である点で、例1と異なる。プレポリマーの調製に用いたイソシアネート/触媒は、TDI/DBTLである。
【0110】
本発明によるフォーム(カラムT)は、参照例(カラムS)に較べて改善された老化性能を示している。
【0111】
表3の配合によれば、表1、2(これらは表3のカラムA及びBの繰り返しである)の場合と同様に、本発明によるプレポリマーを使用しない参照配合に較べて、本発明による配合を用いると、硬さの低下が大幅に改善されることが分かる。
【0112】
プレポリマーを調製するために使用したイソシアネートの性質の違いは、700mPa.sの比較的低レベルの粘度から高レベルの粘度(30,000mPa.s)までの範囲に及ぶ、プレポリマーの粘度の違いをもたらす。しかしながら、驚くべきことに、どの場合も、対応する参照配合に較べて、硬さの低下が実質的に改善されており、このことは、末端がOHのイソシアネート/ポリオールプレポリマーを使用することが重要な要素であることを示している。更に、該結果は、場合によっては、上昇した粘度も有力な要素であることを示している。広範囲のプレポリマー粘度において、優れた品質の有用なフォームを得ることができる。
【0113】
上記の通り、より高粘度のプレポリマーをもたらすより高いイソシアネートのレベルは、最終的なフォームに若干より高い密度をもたらしうる。
【0114】
本発明に従うフォームの用途は、特には工業スケールの製造におけるフォームスラブストックであるが、非常に多様である。この用途は、例えば、建物及び土木及び自動車の製造における絶縁、防音、断熱系から、掃除用スポンジ又はそれを備え付けた掃除器具の形成における掃除用品の製造、化粧用スポンジ並びにマットレス及び室内装飾用フォーム等のコンフォートフォーム、また、記録装置又はプリンターのインク用キャリアフォーム、或いはスタンプパッドとしての特殊用途にまで広がっている。
【0115】
いうまでもなく、上記配合例は一例として記載されており、これらの詳細によって本発明を限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0116】
ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することに加えて、本発明は、以上に記載したようなフォームを製造するために使用するための新しい貯蔵安定プレポリマーを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマーとフォーム形成成分の混合物から軟質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
前記プレポリマーを、少なくとも一種のポリオールに少なくとも一種の多官能性イソシアネートを反応させることにより製造し、
該プレポリマーが利用可能なOH基を複数有する非フォーム化ポリオールプレポリマーであり、且つ、前記フォーム形成成分が少なくとも一種の多官能性イソシアネート及び水を含むことを特徴とする、軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記イソシアネートと反応して前記プレポリマーを生成する前記ポリオールが、少なくとも主としてポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエーテルポリオールが、少なくとも主としてプロピレンオキシド(PO)由来であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオールがトリオールであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プレポリマーが、前記ポリオールの利用可能な全ての水酸基と反応するために必要な理論量の0.1から30重量%の範囲の割合でイソシアネートを反応させることによって製造された低粘性プレポリマーであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記割合が3重量%から25重量%の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プレポリマーが、前記ポリオールの利用可能な全ての水酸基と反応するために必要な理論量の30重量%から99重量%の範囲の割合でイソシアネートを反応させることによって製造された高粘性プレポリマーであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記割合が30重量%から50重量%であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プレポリマーとフォーム形成成分の混合物をガス処理または脱ガス処理して、製造したポリウレタンフォーム中に所定のセル数及び規則性を有するセル構造を生じさせることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記プレポリマーを、一種又は複数種の更なるポリオールの存在下で前記フォーム形成成分と混合することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記更なるポリオール又は前記更なるポリオールの各々がポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記更なるポリオールが、前記イソシアネートと反応させて前記プレポリマーを生成するために使用したポリオールと同じものであることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
製造されたフォーム製品が10から100kg/m3、特には14から70kg/m3の密度を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって形成され、軟質フォームスラブストックの形態にあるフォーム製品。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって形成され、成形体の形態にあるフォーム製品。
【請求項16】
少なくとも一種のポリオールに少なくとも一種の多官能性イソシアネートを反応させることにより製造される軟質ポリウレタンフォームの製造に使用するための貯蔵安定性を有するプレポリマーであって、
前記イソシアネートの割合が、前記ポリオールの利用可能な全ての水酸基と反応するために必要な理論量のイソシアネートの0.1から30重量%の範囲にあり、それによって、前記プレポリマーの先端に、更なるイソシアネートとの反応に利用可能なヒドロキシル基がついていることを特徴とする貯蔵安定性を有するプレポリマー。
【請求項17】
前記割合が0.1重量%から25重量%であることを特徴とする請求項16に記載のプレポリマー。
【請求項18】
前記割合が3重量%から12重量%であることを特徴とする請求項17に記載のプレポリマー。
【請求項19】
前記割合が30重量%から99重量%であることを特徴とする請求項16に記載のプレポリマー。
【請求項20】
前記割合が30重量%から50重量%であることを特徴とする請求項19に記載のプレポリマー。
【請求項21】
前記ポリオールが、少なくとも主としてポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項16から20のいずれか一項に記載のプレポリマー。
【請求項22】
前記ポリエーテルポリオールが、少なくとも主としてプロピレンオキシド由来であることを特徴とする請求項21に記載のプレポリマー。
【請求項23】
前記ポリエーテルポリオールがトリオールであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
50,000mPa.s以下の粘度を有することを特徴とする請求項16から23のいずれか一項に記載のプレポリマー。
【請求項25】
35,000mPa.s以下の粘度を有することを特徴とする請求項24に記載のプレポリマー。
【請求項26】
前記粘度が5,000mPa.sを超えることを特徴とする請求項24又は25に記載のプレポリマー。
【請求項27】
前記粘度が7,000mPa.sを超えることを特徴とする請求項26に記載のプレポリマー。
【請求項28】
前記粘度が20,000mPa.s未満であることを特徴とする請求項24に記載のプレポリマー。
【請求項29】
前記粘度が7,000mPa.s未満であることを特徴とする請求項28に記載のプレポリマー。
【請求項30】
前記粘度が5,000mPa.s未満であることを特徴とする請求項29に記載のプレポリマー。

【公表番号】特表2007−537318(P2007−537318A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512122(P2007−512122)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005314
【国際公開番号】WO2005/108455
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(500301005)フリッツ・ナウアー・アーゲー (3)
【Fターム(参考)】