説明

軟質ポリウレタン発泡体

【課題】低硬度、低歪み、通気性の何れも良好な軟質ポリウレタン発泡体の提供を目的とする。
【解決手段】ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されたポリウレタン発泡体において、ポリオールには、脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなって官能基数2〜4のポリオール(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールであって前記ポリオキシアルキレン鎖にエチレンオキサイドを45〜85%含有するポリオール(B)とを併用し、前記ポリイソシアネートには少なくともトルエンジイソシアネートを用いたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタン発泡体、特には低硬度、低歪みおよび通気性が良好な軟質ポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタン発泡体は、クッション材として、枕、マットレス、シートクッション等、幅広く用いられている。また、軟質ポリウレタン発泡体は、枕等のように、低硬度、低歪み、通気性が求められる用途がある。しかし、従来の軟質ポリウレタン発泡体は、低硬度、低歪み、通気性のすべてにおいて良好とするのは難しかった。
【0003】
また、軟質ポリウレタン発泡体には、オープン発泡品とモールド発泡品がある。オープン発泡品は、ポリウレタン原料を常温、大気圧下で自然発泡し、硬化させたものであり、その後、裁断等により製品形状にされる。オープン発泡品の代表的なものとしてスラブ発泡品がある。スラブ発泡品は、ポリウレタン原料をベルトコンベア上に吐出し、ベルトコンベアが移動する間に、原料が常温、大気圧下で自然発泡し、硬化することで連続的に製造されたものであり、その後、乾燥炉内で硬化(キュア)した後、所定形状に裁断される。一方、モールド発泡品は、ポリウレタン原料をモールド(成形型)に注入してモールド内で発泡させ、その後に脱型することにより得られるものである。スラブ発泡品は、製品ごとにモールドを用意する必要がなく、種々の製品に対応することができる利点があり、一方、モールド発泡品は、モールド内で製品形状に賦形されるため、脱型後に製品形状とするための後加工が不要になる利点がある。
【0004】
前記モールド発泡品は、従来、低硬度のものは得られるものの、高い通気性のものは得難く、併せて歪みの少ないものについても得るのが難しかった。特に、モールド発泡品は、気泡膜が閉じたクローズドセルの割合が高い気泡構造からなるため、発泡後にモールド発泡品を圧縮するクラッシングを行って気泡膜を破壊しないと、その後の冷却によって気泡が収縮して発泡体の変形を生じるようになることから、クラッシングに余分な工数がかかっていた。
【0005】
また、石油原料の枯渇問題から、近年植物由来の原料に対する依存が高くなり、軟質ポリウレタン発泡体の分野においても、ひまし油や、大豆から抽出又は精製されたポリオールの使用が期待されている。
【0006】
なお、特許文献1には、自動車のシートパッド等に用いられる軟質ポリウレタンモールド発泡体において、低反発性と振動吸収性を両立させるため、ポリオールとして鎖末端エチレンオキサイド単位の含有量が4〜12重量%、水酸基価が25〜60mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオールを使用し、発泡剤としての水をポリオール100重量部に対して1〜3重量部配合することが示されている。また、特許文献2には、発泡体表面のキュア性及び発泡体の圧縮永久歪の改善を目的として、植物油を水添、アミン変性した後、水酸基を末端としたポリオールを使用してモールド成形したポリウレタン発泡体が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載されたポリウレタン発泡体においては、低硬度、低歪み、通気性のすべてについて良好とするのは難しく、特に高通気性とするのが難しかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−83605号公報
【特許文献2】特開平5−140052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、低硬度、低歪み、通気性の何れも良好な軟質ポリウレタン発泡体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されたポリウレタン発泡体において、前記ポリオールには、脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなって官能基数2〜4のポリオール(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールであって前記ポリオキシアルキレン鎖にエチレンオキサイドを45〜85%含有するポリオール(B)とを併用し、前記ポリイソシアネートには少なくともトルエンジイソシアネートを用いたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ポリオール(A)が、前記脂肪酸をリシノレイン酸とするひまし油ポリオールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟質ポリウレタン発泡体は、脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなって官能基数2〜4のポリオール(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールであって前記ポリオキシアルキレン鎖にエチレンオキサイドを45〜85%含有するポリオール(B)とを併用し、ポリイソシアネートには少なくともトルエンジイソシアネートを用いたことにより、低硬度、低歪み、通気性の良好なものが得られる。なお、本発明は、オープン発泡品(スラブ発泡品)およびモールド発泡品の何れにも適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料からオープン発泡(スラブ発泡)、あるいはモールド発泡により形成されるものである。
【0014】
本発明におけるポリオールは、ポリオール(A)とポリオール(B)の二種類が併用される。前記ポリオール(A)は、脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなるものが用いられる。前記脂肪酸は、リシノレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等を挙げることができる。また、多官能グリコールは、2官能のものとしてエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等、3官能のものとしてグリセリン、トリメチロールプロパン等、4官能のものとしてペンタエリスリトール、6官能のものとしてソルビトール、8官能のものとしてシュークロース等を挙げることができる。前記脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなるポリオールとして、ひまし油、大豆油、菜種油、綿実油などをベースとした植物油に由来するポリオールを挙げることができる。特に、前記ポリオール(A)としては、前記脂肪酸をリシノレイン酸とするひまし油ポリオールが、入手のし易さ等の点から好ましい。さらに、軟質ポリウレタン発泡体を低硬度で歪みの少ないものとするため、前記ポリオール(A)には官能基数が2〜4のものが用いられる。また、ポリオール(A)の水酸基価(OHV)は、40〜350mgKOH/g、分子量は500〜4000のものが好ましい。
【0015】
前記ポリオール(A)の量は、全ポリオール100重量部中、10〜50重量部が好ましい。ポリオール(A)の量が10重量部未満の場合には、エチレンオキサイドの含量が多い反応性の高いポリオール(B)の量が多くなるため、ポリウレタン原料の反応性が高くなって、発泡剤や触媒の添加量等のプロセスレンジが狭くなり、通気が得難く、良好な発泡体が得難くなる。特にモールド発泡体では、良好なポリウレタン発泡体を得るのが難しくなる。一方、ポリオール(A)の量が50重量部を超える場合には、ポリウレタン原料の反応性が低くなって正常に発泡させるのが難しくなり、良好な発泡体を得難くなる。前記ポリオール(A)のより好ましい量は、全ポリオール100重量部中30〜50重量部であり、この範囲とすることにより、高い通気性が得られ、より好ましい。
【0016】
前記ポリオール(B)は、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールからなり、前記ポリオキシアルキレン鎖にエチレンオキサイドを45〜85%含有するものが用いられる。エチレンオキサイド含量45〜85%のポリエーテルポリオールは、通常のモールド発泡品では用いられない過剰のエチレンオキサイド含量からなるポリオールである。本発明におけるエチレンオキサイドの量は、ポリオキシアルキレン鎖中のエチレンオキサイド(オキシエチレン基)の割合であり、本発明ではポリオキシエチレン鎖重量(ポリオキシエチレン全分子量)の45〜85重量%とされる。前記ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールを開始剤としてエチレンオキサイドを付加した物、ビスフェノールA等の多価フェノール類にエチレンオキサイドを付加した物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類やトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類にエチレンオキサイドを付加した物等を挙げることができる。前記エチレンオキサイドが45%未満の場合は発泡は可能であるが、高い通気性の発泡体を得るのが困難となり、一方85%を超える場合は、反応性が著しくなるため、プロセスレンジを確保するのが困難となる。
【0017】
前記ポリオール(B)の量は、ポリオール100重量部から前記ポリオール(A)の量を差し引いた残りの量であり、90〜50重量部とされる。前記ポリオール(B)の量が90重郎部を超えると、ポリオール原料の反応性が高くなって通気性の良好なものが得られなくなる。特にモールド発泡体では、プロセスレンジが得られず、発泡体にシュリンク(収縮)が発生したり、発泡体内に著しいガスが溜まったりして、良好な発泡体が得られなくなる。一方、前記ポリオール(B)の量が50重量部より少なくなると、併用するポリオール(A)とのバランスが取り難くなり、低硬度、低歪み、通気性のバランスが取れた発泡体を得ることができなくなる。また、ポリオール(B)の水酸基価(OHV)は、30〜100mgKOH/g、分子量は1000〜6500のものが好ましい。
【0018】
本発明におけるポリイソシアネートは、少なくともトルエンジイソシアネート(TDI)を含むものとされる。トルエンジイソシアネートを含むことによって、軟質ポリウレタン発泡体を、より低密度および低硬度にすることができる。使用するトルエンジイソシアネートには、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物があり、何れも使用することができる。
【0019】
前記ポリイソシアネートには、トルエンジイソシアネートと共に他のポリイソシアネートを併用してもよい。併用されるポリイソシアネートは、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0020】
例えば、2官能のイソシアネートとしては、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジアネート(MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。
【0021】
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。なお、その他ウレタンプレポリマーも使用することができる。また、ポリイソシアネートは、それぞれ一種類に限られず一種類以上であってもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートの一種類と芳香族系イソシアネートの二種類を併用してもよい。特に、トルエンジイソシアネート(TDI)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の併用は好ましく、なかでも、TDI/MDIの比率が80/20程度のものは、モールド成形において低密度、低硬度、高通気を得るのには特に好ましい。なお、TDIとMDIのブレンド品は、ポリウレタン発泡体の産業用途において広範に使用されており、安価であるため、好ましいポリイソシアネートである。さらに、TDIとMDIのブレンド(併用)は、モールド成形の場合にポリイソシアネートの粘度を上昇させ、ポリオールとの粘度差を小さくして、発泡原料の混合攪拌均一にし、発泡を良好にする効果もある。
【0022】
また、イソシアネートインデックス[ポリウレタン原料におけるNCO(モル)/OH(モル)×100]は、70〜100とするのが、低硬度、高通気性を得る上で好ましい。イソシアネートインデックスが70未満の場合、発泡体を形成するための十分な反応が行われず、歪みが大きくなって、良好な発泡体が得られなくなる傾向がある。一方、100を超えると、プロセスレンジを確保するのが困難となり、また発泡体が得られても、硬度が高くなり過ぎ、寝具類等のような比較的低硬度の用途に適さなくなる。より好ましいイソシアネートインデックスは75〜90である。
【0023】
本発明における発泡剤は、ポリウレタン発泡体用として公知のものを使用することができる。たとえば、水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。発泡剤の配合量は適宜の量とされるが、水の場合には、通常、ポリオール成分100重量部に対して1〜4重量部程度とされる。
【0024】
本発明における触媒は、ポリウレタン発泡体用として公知のものを使用することができ、特に限定されない。使用可能な触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)が挙げられる。触媒の配合量は、触媒の種類によって適宜決定されるが、ポリオール成分100重量部に対し0.3〜4.0重量部程度が一般的である。
【0025】
また、前記ポリウレタン原料には整泡剤が配合される。整泡剤としては、ポリウレタン発泡体用として公知のものを使用することができ、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤及び界面活性剤を挙げることができる。特に、シリコーン系整泡剤は好適なものである。シリコーン系整泡剤としては、シロキサン鎖主体からなるもの、シロキサン鎖とポリエーテル鎖が線状の構造をとるもの、分岐し枝分かれしたもの、ポリエーテル鎖がシロキサン鎖にペンダント状に変性されたもの等が挙げられる。
【0026】
前記ポリウレタン原料には、その他適宜助剤が配合される。助剤としては、例えば着色剤、難燃剤、可塑剤等を挙げることができる。可塑剤は、軟質ポリウレタン発泡体の硬度を下げる効果もある。例えば、可塑剤を、ポリオール100重量部に対して5〜30重量部配合すると、より低硬度な発泡体を得ることができる。可塑剤 としては、ポリウレタン発泡体用の公知ものを使用することができる。例えば、リン酸エステル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、オレイン酸ブチル等、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。なお、リン酸エステル系の化合物は可塑効果に併せて難燃剤としての効果も期待できる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表1〜表3の配合に基づきポリウレタン原料を調製して、モールド発泡およびオープン発泡により実施例及び比較例のポリウレタン発泡体を製造した。実施例1〜実施例11および比較例1〜比較例4はモールド発泡品、実施例12〜実施例14および比較例5〜比較例6はオープン発泡品である。実施例および比較例におけるモールド発泡は、モールド(金型)のキャビティ(成形用凹部)に各例のポリウレタン原料(混合液)を注入し、型締めしてモールド内で原料成分を反応及び発泡させる方法により行った。一般的にモールド発泡において、モールドの加熱温度は50〜70℃、加熱時間(注入から脱型までの時間)は5〜10分が好ましい。加熱温度が50℃未満または加熱時間が5分未満の場合には、ウレタン化反応、泡化反応、架橋反応などの反応が遅くなって良好な軟質ポリウレタン発泡体が得られなくなる。その一方、加熱温度が70℃を超える場合又は加熱時間が10分を超える場合には、前記反応が過度に進行して発泡体の架橋密度が高くなり過ぎ、得られる発泡体が柔軟性に欠ける傾向となる。今回の実施例および比較例においては、モールドを50℃にし、注入後脱型まで4分間放置してモールド内で発泡させた後、脱型して実施例及び比較例のポリウレタン発泡体を得た。各実施例はいずれもクラッシングを行わないでも所定の製品を得ることができたが、比較例3,4については所定の製品を得るためにはクラッシングを要した。それに対し、実施例および比較例におけるオープン発泡は、モールド発泡と相当原料を、常温(25℃)大気圧下で、上部が開放したボックスに吐出して自然発泡させ、硬化させて実施例及び比較例のポリウレタン発泡体を得た。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
表1において、ポリオールA1は官能基数2、水酸基価(OHV)90mgKOH/gのひまし油ポリオール、品番:H−56、伊藤製油株式会社製、ポリオールA2は官能基数3、水酸基価(OHV)100mgKOH/gのひまし油ポリオール、品番:H−57、伊藤製油株式会社製、ポリオールA3は官能基数2、水酸基価(OHV)52mgKOH/g、官能基数2の大豆油ポリオール、品番:R2−052、USSC社製、ポリオールB1は平均分子量2800、官能基数3、水酸基価(OHV)60mgKOH/g、EO=80%、品番:FA103、三洋化成工業株式会社製、ポリオールB2は平均分子量2500、官能基数3、水酸基価(OHV)68.5mgKOH/g、EO=50%、品番:GR2505、旭電化工業株式会社製、ポリオールCは平均分子量5000、官能基数3、水酸基価(OHV)36mgKOH/g、EO=20%、品番:No.38、三洋化成工業株式会社製、アミン触媒1はジエタノールアミン、アミン触媒2はトリエチレンジアミン33%とジプロピレングリコール67%、品番:DABCO33LV、三共エア−プロダクツ株式会社製、整泡剤1は、シリコーン系、品番:SH−192、東レ・ダウコーニング株式会社製、整泡剤2は、シリコーン系、品番:SF2961、東レ・ダウコーニング株式会社製、可塑剤は、品番:TMCPP、大八化学工業株式会社製、ポリイソシアネート1は、TDI/MDI=80/20の混合物、NCO%=44.6%、品番:コロネート1021、日本ポリウレタン工業株式会社製、ポリイソシアネート2は、TDI/MDI=50/50の混合物、NCO%=39.3%、品番:TM5050、ビ−エーエスエフイノアックポリウレタン株式会社製である。
【0032】
実施例1〜実施例5は本発明におけるポリオール(A)として官能基数3、OHV=100mgKOH/gのひまし油ポリオールA2を30重量部、ポリオール(B)としてEO=80%のポリオールB1を70重量部用いた例であり、さらに実施例1〜実施例4についてはイソシアネートインデックスを75〜95の範囲で変化させた例、実施例5は実施例1〜4とは異なるポリイソシアネートを使用した例である。実施例6はポリオールA2を10重量部、ポリオールB1を90重量部にした例、実施例7はポリオール(A)として官能基数2、OHV=90mgKOH/gのひまし油ポリオールA1を30重量部、ポリオール(B)としてEO=80%のポリオールB1を70重量部用いた例、実施例8は実施例1〜実施例6で用いたポリオールA2を50重量部、ポリオールB1を50重量部にした例、実施例9は実施例1におけるポリオールA2に代えて官能基数2、OHV=52mgKOH/gのひまし油ポリオールA3を用いた例、実施例10は実施例1におけるポリオールB1に代えてEO=50%のポリオールB2を用いた例、実施例11は実施例10のポリオールA2を30重量部から20重量部に減らすと共に実施例10のポリオールB2を70重量部から80重量部に増加させた例である。実施例12〜実施例14は実施例1〜実施例11までのモールド発泡に代えてオープン発泡で形成した例である。実施例12は、実施例1と同一配合からなり、実施例13は実施例7と同一配合からなり、実施例14はポリオール(A)として官能基数2、OHV=52mgKOH/gのひまし油ポリオールA3を30重量部、ポリオール(B)としてEO=50%のポリオールB2を70重量部用いた例である。
【0033】
一方、比較例1は官能基数3、OHV=100mgKOH/gのひまし油ポリオールA2を100重量部用いてモールド発泡した例、比較例2はEO=80%のポリオールB1を100重量部用いてモールド発泡した例、比較例3はEO=20%のポリオールCを100重量部を用いてモールド発泡した例、比較例4は官能基数3、OHV=100mgKOH/gのひまし油ポリオールA2、30重量部とEO=20%のポリオールC、70重量用いてモールド発泡した例、比較例5はEO=80%のポリオールB1を100重量部用いてオープン発泡した例、比較例6はEO=20%のポリオールCを100重量部用いてオープン発泡した例である。
【0034】
実施例および比較例について発泡状態を目視で判断した。発泡状態の結果を表1〜表3の下部に示した。発泡状態は、正常に発泡した場合を○、反応性が低過ぎることによって発泡途中でダウンし、正常に発泡できかった場合、あるいは反応性が高過ぎることによってガスが過剰に発生してシュリンクを生じた場合を×で示した。実施例1〜14についてはいずれも良好に発泡した。それに対し、比較例1については、官能基数3、OHV=100mgKOH/gのひまし油ポリオールA2を100重量部用いたことにより、反応性が低くなりすぎて発泡途中でダウンし、良好な発泡体が得られなかった。また比較例2については、EO=80%のポリオールB1を100重量部用いたことにより、反応性が高くなりすぎてガスが過剰に発生してシュリンクを生じ、良好な発泡体が得られなかった。
【0035】
良好な発泡体が得られた実施例1〜実施例14および比較例3〜比較例6に対し、密度(kg/m、JIS K 7222:1999準拠)、硬さ(N、JIS K 6400−2:2004 D法準拠)、反発弾性率(%、JIS K 6400−3:2004準拠)、50%湿熱歪(%、JIS K 6400準拠)、通気性(L/min、ASTM D 3574準拠)を測定した。なお、モールド発泡品についてはコア(表皮より内側)の部分を切り出して測定した。測定結果を表1〜表3の下部に示す。
【0036】
測定結果から理解されるように、実施例1〜実施例14は、略同密度の比較例3〜比較例6と比べて通気性が高いものであった。また、硬さについて、実施例4と実施例5を除いて実施例は、全ての比較例と比べ硬さが低く(柔らかく)なっていた。なお、実施例4および実施例5は比較例5よりも僅かに硬い結果となっていたが、比較例5はオープン発泡品であって硬さが極端に低いものであり、モールド発泡品である比較例3および比較例4と比べると、実施例4および実施例5は硬さが充分に低いものである。実施例4はイソシアネートインデックスが95で実施例中では高いことから、実施例中では比較的硬く、通気性が低くなっている。一方、実施例5は、TDI/MDIの比率が50/50であることから、実施例中では、比較的密度及び高度が高く、通気性が低くなっている。また、50%湿熱歪について、実施例5、実施例6、実施例8、実施例9を除いて実施例は、全ての比較例よりも歪が少なくなっていた。なお、実施例5、実施例6、実施例8、実施例9は、比較例3および比較例6よりも僅かに歪が大きくなっていたが、それでも充分に歪の少ないものである。
【0037】
このように、実施例の軟質ポリウレタン発泡体は、通気性がきわめて高く、特にモールド発泡品では、シュリンクの発生を抑えることができる。これは、本発明が、脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなって官能基数2〜4のポリオール(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールであって前記ポリオキシアルキレン鎖にエチレンオキサイドを45〜85%含有するポリオール(B)とを併用するものであり、ポリオール(A)が主に炭化水素からなる構造を有し、一方、ポリオール(B)がエチレンオキサイドからなる構造を有し、エーテル基に立体障害が少ないことから、相溶性が顕著に異なるポリオール(A)とポリオール(B)を用いることで発泡体の気泡(セル)が破泡しやすくなる結果と考えられる。また、前記ポリオール(A)とポリオール(B)の併用により、発泡体の樹脂骨格が細くなり、硬度の低い軟質ポリウレタン発泡体が得られたと考えられる。さらに、ポリイソシアネートにトルエンジイソシアネートを含むことにより、より軽量で、低硬度の軟質ポリウレタン発泡体が得られるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されたポリウレタン発泡体において、
前記ポリオールには、脂肪酸と多官能グリコールのエステル縮合物からなって官能基数2〜4のポリオール(A)と、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールであって前記ポリオキシアルキレン鎖にエチレンオキサイドを45〜85%含有するポリオール(B)とを併用し、
前記ポリイソシアネートには少なくともトルエンジイソシアネートを用いたことを特徴とするポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記ポリオール(A)が、前記脂肪酸をリシノレイン酸とするひまし油ポリオールであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン発泡体。

【公開番号】特開2009−35617(P2009−35617A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200431(P2007−200431)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】