説明

転がり軸受の保持器用保持器セグメント

本発明は、転がり軸受の保持器用保持器セグメント(1)であって、周方向に延びる少なくとも2つの周囲橋絡片(2,3)及び少なくとも2つの結合橋絡片(4)を持ち、周囲橋絡片(2,3)と結合橋絡片(4)が、転動体(20)を受入れる少なくとも1つのポケット(20)を形成しているものに関する。保持器セグメント(1)が、保持器セグメント(1)を端面で別の保持器セグメントに結合するため、連結装置(10,11,12,13)を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受の保持器用保持器セグメント、それから形成される保持器、及びこのような保持器セグメントを持つ転がり軸受に関する。本発明は、(500mmより大きいピッチ円を持つ)大形転がり−ころ軸受に関連して、すべての軸受構造について説明される。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受用保持器は多様に公知であり、保持器ポケットを準備して、その中に転動体を保持して案内するのに役立つ。しかしこのような転がり軸受の作動の際、保持器セグメントが製造される材料の膨らみ及び/又は温度膨張を生じることがある。これにより保持器に強い応力が生じることがある。なぜならば、保持器又は保持器セグメントの材料は、通常鋼から製造される転がり軸受より著しく大きく熱膨張するからである。機械的応力は摩擦を増大し、動かなくし、又は保持器の破壊すら引き起こすことがある。
【0003】
更に例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10246825号明細書において、互いに結合されず即ちゆるく取付けられる複数の保持器セグメントから保持器を形成することが提案され、互いにつなぐ際最後の保持器セグメント及び最初の保持器セグメントの隣接する端面の間に間隙が残って、膨らみ及び/又は温度による膨張を吸収するように、これらの保持器セグメントが寸法を定められるので、機械的応力が回避される。それにより全最終遊びが生じる。このような保持器は、特に風力設備用の遊びなし又は予荷重転がり軸受において使用される。
【0004】
しかし保持器セグメントの間に生じ得る間隙は、次のような欠点を持っている。即ち作動中に保持器セグメント中又はその間に、膨らみ及び膨張により大きい力が現れて、プラスチック保持器セグメントの塑性変形又は亀裂形成を引き起こすことがある。それにより軸受の摩耗も著しく増大する。その際一層高い温度及び/又は摩耗が生じる。
【0005】
更に従来技術から、例えば圧延プレス又は推進機械において、転がり軸受にある種々の構造の鋼ピン保持器が公知である。しかしこのような保持器の欠点は、このような保持器の比較的高い製造費及び同様に比較的大きい重量である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の欠点を回避し、一方では保持器セグメントから形成される転がり軸受用保持器の機械的応力を回避でき、他方では強制力により増大する摩耗を回避できる、転がり軸受の保持器用保持器セグメントを利用可能にすることである。更に本発明の課題は、このような保持器セグメントを持つ保持器及び転がり軸受を利用可能にすることである。更に安価な保持器構造を利用可能にし、保持器の摩耗及び重量を減少する。充分な強さ及び剛さを持つセグメントを利用可能にし、保持器セグメントの満足できる寸法安定性が得られるようにする。
【0007】
更に有利な滑り特性及び摩耗特性及び化学物質に対する高い安定性及び方法的に確実な製造可能性が望ましい。
【0008】
更に鋼ピン保持器の代わりとして特に大きいころ軸受のために提供され、その点で技術的の等価又はそれより良いけれども一層安価な解決策を与える保持器を利用可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の保持器セグメント及び別の独立請求項に記載の保持器及び転がり軸受により解決される。
【0010】
本発明のそのほかの有利な構成は従属請求項に示されている。
【0011】
本発明によれば、転がり軸受の保持器用保持器セグメントが設けられている。保持器セグメントは、周方向に延びる少なくとも2つの周囲橋絡片及び少なくとも2つの結合橋絡片を持ち、周囲橋絡片と結合橋絡片が、転動体を受入れる少なくとも1つのポケットを形成している。本発明によれば、保持器セグメントが、保持器セグメントを端面で別の保持器セグメントに結合するため、連結装置を持っている。
【0012】
本発明による保持器セグメントにより可能になる転がり軸受用保持器の構造では、保持器セグメントが互いに結合されているので、転がり軸受の作動の際保持器セグメントの相互衝突を回避することができる。他方本発明によるセグメントで製造される保持器は、従来技術から公知の鋼ピン保持器より安価に製造可能である。
【0013】
好ましい実施形態では、別の保持器セグメントの結合がすきまばめで行われるように、連結装置が構成されている。こうして保持器セグメントにより形成される保持器の機械的応力が回避される。なぜならば保持器セグメントがそれぞれ連結装置を介して互いに結合されて、別の保持器セグメントへの結合がすきまばめで行われる。それにより、複数の本発明による保持器セグメントにより形成される保持器の膨らみ膨張及び/又は温度膨張を、機械的応力を生じることなしに、連結装置において吸収することができる。従って保持器セグメントの膨らみ膨張及び温度膨張を吸収するため、連結装置のすきまばめが1つの大きさを持っている。
【0014】
それにより原理的に、各転動体の周りにポケット又は格間が生じて、互いに列をなして複数の転動体用の共通な一層大きい単位体を生じる。保持器の周方向において転動体の間に壁又は結合橋絡片があり、これらの壁又は結合橋絡片が、両側で周方向に、帯又は縁とも称される周囲橋絡片又は結合橋絡片と結合されているように、保持器セグメントを構成することもできる。保持器セグメントの大きさ及び転動体列毎のその数は、軸受の大きさ、転動路直径及びレースの形状寸法に合わされる。保持器セグメント毎に、2〜10個の転動体に対して2〜10個のポケットが設けられている。
【0015】
本発明による保持器セグメントは、周方向に関して第1の端面に第1の連結素子もち、第2の端面に第2の連結素子を持ち、両方の連結素子が互いに相補的に形成されている。特に第1及び第2の連結素子が、互いにはまり合いで結合可能であるように形成されている。
【0016】
組立ての際、保持器の周囲にほぼ均一なすきま分配が行われ、膨らみ膨張又は温度膨張の場合にもセグメントがその位置を保持できるように、保持器セグメントが互いに結合されるか又は互いに差込まれる。
【0017】
更に第1及び第2の連結素子が相補的な差込み結合素子として形成されるので、同じ種類の保持器セグメントを1つの保持器となるように互いに結合することができる。
【0018】
差込み結合部内になるべく小さいすきまばめが含まれて、例えば温度変化による僅かな変化を大幅に吸収することができる。更に閉じられる保持器セグメントの半径方向案内直径と転がり軸受の外レース転動路との間隔が充分大きく構成されて、多分付加的に生じる直系増大をなお吸収できるように、保持器セグメントの形状寸法が調整される。これが、本発明による軸受を参照して更に詳細に説明される。
【0019】
ある程度の直径変化を伴って現れる体積変化は、従来技術及び使用される材料に応じて、形状寸法規定の際考慮することができる。
【0020】
第1の連結素子が周方向に突出する連結突片を持ち、第2の連結素子が、別の保持器素子の第1の連結素子の連結突片を受入れる連結凹所を持っているのがよい。特に連結突片が周囲橋絡片の延長部として形成されている。
【0021】
好ましい実施形態によれば、連結突片がそれから突出する係止素子を備え、連結凹所の範囲に係止凹所が設けられて、はまり合いで結合を行うため、別の保持器素子の第1の連結素子の係止素子により周方向に関して係合可能である。特に係止素子がピンとして形成されて、第2の連結素子の連結凹所にある係止開口へ受入れ可能である。
【0022】
その代わりに、連結突片が係止凹所を備え、連結凹所の範囲に係止素子が設けられ、周方向に関して別の保持器セグメントの第1の連結素子の係止凹所へはまって、はまり合い結合を行うことができる。その際係止素子は、組立てられる保持器の縦方向に周囲橋絡片から突出している。しかし結合素子は半径方向外方へ突出していてもよい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、保持器セグメントが特にガラス−炭素−アラミド補強熱可塑性プラスチックで形成されている。
【0024】
更に熱可塑性プラスチックが、10〜15重量%の繊維を含むポリエーテル−エーテル−ケトンを持っている。しかし他のプラスチックも使用できる。
【0025】
本発明の別の局面によれば、複数の上述した保持器セグメントを持つ転がり軸受用保持器が設けられ、保持器セグメントは連結装置により端面で互いに結合されて、閉じた環を形成している。
【0026】
更に本発明は、上述した種類の少なくとも1つの保持器セグメントを持つ転がり軸受及び上述した種類の保持器を持つ転がり軸受に向けられている。
【0027】
好ましい実施形態では、保持器の結合橋絡片が、転がり軸受の外レースの転動路から、転がり軸受の半径方向に離されている。このように離すことにより、保持器のねじれを生じることなく、保持器の少なくとも僅かな膨張が可能である。もっと詳しくいうと、ここに述べた実施形態では、閉じられる保持器セグメントの半径方向案内直径と外レース転動路との間の間隔又は遊隙が、例えば熱による直径増大をなお吸収できるのに充分な大きさであるように、保持器セグメントの形状寸法が調整されている。
【0028】
結合橋絡片に半径方向外方へ向く案内素子が設けられ、これらの案内素子が外レースの転動路から離れて、外レースに対する保持器の膨張が吸収されるのがよい。
【0029】
この実施形態では、個々の環セグメントのすきまばめは必ずしも必要ではないけれども有利である。逆に上述したすきまばめを持つ上記の実施形態では、外レースに対して間隔をとるのは必ずしも必要でない。なぜならば、例えば熱による膨張は、すきまばめにより吸収できるからである。外レースの転動路の内側半径と結合橋絡片(又は案内素子)の幾何学的外側半径とが互いに合わされて、保持器の膨らみ又は温度による直径増大を吸収可能であるのがよい。
【0030】
本発明のそれ以外の利点及び実施形態は添付図面からわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1及び2には、転がり軸受特に円錐ころ軸受用の保持器セグメントから構成される保持器の保持器セグメントの斜視図及びその一部の図が示されている。このような転がり軸受は例えば風力設備の回転子の支持のために使用される。
【0032】
保持器を形成するため、同様の保持器セグメント1が互いに結合されるので、転がり軸受用保持器を形成する閉じた環が生じる。詳細には保持器セグメント1は内側周囲橋絡片2と外側周囲橋絡片3とを持っている。ここで内側周囲橋絡片2は外側周囲橋絡片3より小さい曲率半径を持っている。導入される転動体はここでは円錐形状を持っている。
【0033】
内側周囲橋絡片2と外側周囲橋絡片3との間には結合橋絡片4が設けられて、互いにほぼ同じ相互間隔を持ち、それぞれ1つの転動体20を受入れるため、これらの結合橋絡片の間にポケット5が形成されている。
【0034】
ポケット5内に転動体20を案内するため、結合橋絡片4は案内素子6を持ち、ポケット5内における転動体10の位置が、これらの案内素子6により保証される。各結合橋絡片4には、隣接する各ポケット5のためにそれぞれ2つの案内素子6が設けられ、保持器セグメント1により形成される保持器の軸線方向に関して、結合橋絡片4から同じ方向に突出している。更に案内素子6は、例えば温度による膨張の場合外レースの転動路に対して保持器を支持するための支持素子としても役立つ。保持器の半径方向に関して結合橋絡片4の反対側に、それぞれ1つの突起7が設けられて、必要な場合(図示しない)内レースの転動路上に保持器セグメントを支持する。案内素子6と突起7により、転動体に対する保持器の望ましくない移動が防止される。案内素子6の端部6aにより形成される外周は、保持器の僅かな膨張を可能にするために、(図示しない)内レース転動路の周囲より小さい。
【0035】
周囲橋絡片2,3は2つの脚辺2a,2b,3a,3bを持っているので、周方向にL字状断面を持っている。脚辺のそれぞれ1つは保持器の半径方向に延びている。L字状周囲橋絡片2,3の半径方向に延びる脚辺を載置圧力に対して支持するため、支持素子8が等間隔で周囲橋絡片2,3に設けられているので、周囲橋絡片2,3の両方の脚辺の間に所定の角例えば直角が保証される。
【0036】
図示した保持器セグメント1は、5つの結合橋絡片4により形成される4つのポケット5を持っている。外側の2つの結合橋絡片4は、組立てた状態で別の保持器セグメントの端面に対向する保持器セグメント1の端面9を形成している。内側の橋絡片4とは異なり、外側の橋絡片9は、それぞれ1つのポケットに隣接しているだけなので、転動体をそれぞれの保持器セグメントのポケット内で案内するために、それぞれ2つの案内素子6のみを持っている。
【0037】
保持器セグメント1は、図示した実施例では、転動体用の4つのポケットを持っているが、それ以上又は以下のポケットなるべく2〜10個の転動体用ポケットを設けることもできる。
【0038】
保持器セグメント1の第1の端面9には、周囲橋絡片2,3の延長部である2つの連結突片10が設けられている。保持器セグメント1の反対側の第2の端面9に、周囲橋絡片2,3は適当な連結凹所11を持ち、同じように形成される別の保持器セグメント1の対応する連結突片10がこれらの連結凹所11へはまることができる。図1に示す実施例では、連結凹所11は周囲橋絡片2,3の先薄部により形成されている。特に周囲橋絡片2,3は、連結凹所11の範囲にL字状断面を持たず、即ちここに脚辺2b,3bはない。
【0039】
連結凹所11の範囲において、内側の周囲橋絡片2及び外側の周囲橋絡片3に、係止素子として役立つ係止突起12が設けられている。これに対して相補的に、連結突片10に係止凹所13が設けられて、係止突起12に対する係止縁をなしている。係止突起12は半径方向外方へ先細になっており、係止凹所13は対応する相補形状に形成されている。こうして2つの同様な保持器セグメントが半径方向に互いに差込まれるので、これらの保持器セグメントは周方向の引張り力に関してはまり合いで連結されている。係止突起12の先細形状及び係止凹所13の対応する形状は、保持器セグメント1が1つの方向において互いに結合され、逆の方向では再び互いに分離されるので、保持器の組立てが容易になる。
【0040】
連結突片10及び連結凹所11の形状寸法はなるべく互いに合わされて、連結突片10が連結凹所11内へ滑って受入れられるようにしている。係止突起12及び係止凹所13はなるべく互いに合わされて、係止状態即ち互いにはまった状態で、保持器の周方向に保持器セグメント1の相対移動を特定の行程だけ可能にするすきまばめが存在するようにしている。このすきまばめは、転がり軸受の作動の際生じる各保持器セグメント1の膨らみ膨張及び温度膨張を吸収するように、寸法を定められている。特にすきまばめは、保持器セグメント1の周長の0.1〜2%の遊びが存在するように寸法を定められている。特にすきまばめは保持器セグメントの周方向における長さの1%とすることができる。
【0041】
第1の周囲橋絡片2の連結凹所11にある係止突起12と第2の周囲橋絡片3の連結凹所11にある係止突起12は、(図示しない転動体の)縦方向Lにそれぞれ外方へ突出している。それに応じて両方の連結突片10にある係止凹所13は、保持器セグメント1に関して連結突片10の内側部分に、互いに対向して設けられている。
【0042】
図2には、図1に示すように保持器セグメント1を持つ転がり軸受用保持器の一部が、組立てられた状態で示されている。保持器セグメントがはめ合わせにより結合され、その際保持器セグメントがほぼ周方向にはめ合わされることがわかる。個々の保持器セグメントの内側周囲橋絡片2と外側周囲橋絡片3が互いに結合されている場合、それぞれの係止突起12が係止凹所13にすきまばめで受入れられているので、周方向における圧縮に関してただしなるべく引張りに関しても、少なくとも1つの遊びが存在する。平均周囲温度又は室温で、保持器セグメント1の間の各連結装置が、周方向に関して引張り方向及び圧縮方向にすきまばめを持つように、保持器セグメント1の寸法を選ぶのがよい。保持器セグメントの長さは、大体において、整数の保持器セグメント1により転がり軸受用保持器が形成されるように選ばれている。更に図2から、転動体20が案内素子6により保持器セグメント1のポケット5にどのように収容されるかがわかる。それにより150℃までの作動温度を受けることができる。
【0043】
保持器セグメント1は、なるべくガラス−炭素−アラミド補強熱可塑性プラスチックから形成される。基本材料として、例えば10〜50重量%(なるべく15〜25重量%)の繊維を含む。ポリエーテル−エーテル−ケトンが考慮される。粘度変化剤及び老化防止剤のような別の添加物が保持器セグメント1の材料にあってもよい。
【0044】
保持器セグメント1により形成される保持器又は保持器セグメントは、転動体の案内に関して種々のやり方で構成可能であり、即ち内レース曲げ縁案内、外レース曲げ縁案内、内レース転動路案内、外レース転動路案内及び/又は転動体案内の任意の組合せで構成可能である。特に転動案内、内レース転動路案内及び/又は内レース曲げ縁案内の実施例のほかに、内レース転動路案内及び/又は外レース曲げ縁案内の実施例も考えられる。
【0045】
更に転動体案内、内レース(又は外レース)転動路案内及び/又は内レース曲げ縁又は外レース曲げ縁案内の実施例も考慮される。場合によっては外レース曲げ縁案内又は内レース曲げ縁案内と組合わせて外レース転動路案内も考慮される。
【0046】
図3には、本発明の別の実施例による保持器セグメント1が斜視図で示されている。この実施例を説明するために、同じ素子又は同じあるいは対比可能な機能の素子に対して、同じ符号が使用される。従って図示した保持器セグメント1は、第1(内側)の周囲橋絡片2、第2(外側)の周囲橋絡片3、結合橋絡片4、ポケット5、案内素子6、突起7、支持素子8及び端面9を持っている。連結突片10は、図1の実施例におけるように周囲橋絡片2,3の延長部として形成されているが、係止凹所13の代わりにそれぞれ1つのピン15を持ち、このピン15が連結突片10から周方向とは異なる方向特にそれに対して直角に突出し、係止素子として役立つ。連結突片10を備えた端面に対向する端面9a、周囲橋絡片2,3が、別の保持器セグメント1の連結突片10を受入れるように形成される連結凹所11を持っている。周囲橋絡片2,3は連結凹所11の範囲に、別の保持器セグメントの連結突片10にあるピン15を受入れるための貫通穴の形の係止凹所16を持っている。
【0047】
2つの保持器セグメント1の係止凹所16と対応するピン15は、互いに連結された状態で、すきまばめが存在するように寸法を定められ、即ちそれぞれの連結突片10は、隣接する保持器セグメント1の凹所11内で、ピン15と係止凹所16との差込み結合の遊びの範囲内で滑ることができる。
【0048】
図3の実施例では、周囲橋絡片2,3も同様に支持素子8を持つL字状に形成され、結合橋絡片4がL字状周囲橋絡片2,3の対応する脚辺の方向に向けられる案内素子6を持っている。滑り突起7は、保持器セグメント1の載置面から離れる方向に向いている。
【0049】
図4には、転動体20をはめられた図3による保持器セグメントを持つ保持器の一部が示されている。図4に示すように、保持器セグメントは、第1実施例による保持器セグメント1と同じように、差込みにより互いに結合される。
【0050】
図5は本発明による保持器セグメントの別の実施例を示している。ここで連結装置は、図3に示す実施例とは異なるように構成されている。この実施例では、連結突片10が係止凹所19を持ち、この係止凹所19へ別の保持器セグメントの係止突起18がはまる。この実施例では、係止突起18は保持器セグメントの縦方向Lにそれぞれ外方へ突出している。
【0051】
図6は互いにはまる2つの保持器セグメントの詳細図を示している。係止凹所19内の係止突起18が、最初に述べたように熱による膨張を吸収できるようにするため、保持器セグメントの周方向にある程度の遊びを持っていることがわかる。
【0052】
図7は本発明による保持器セグメントの別の実施例を示す。この保持器セグメントの別の相違点は、連結装置がここでは非対称に形成されていることである。先の実施例では、内側周囲橋絡片2も外側周囲橋絡片3も常に一方の側に連結突片10を持っているが、図7に示す実施例では、外側周囲橋絡片3が(図7に関して)左側の連結突片10を持ち、内側周囲橋絡片2が右側の連結突片10を持っている。対応する連結凹所は、ここでは外側周囲橋絡片3の右側及び内側周囲橋絡片2の左側に設けられている。別の保持器セグメントの個々の保持器セグメントの係合は、図3に関連して説明したのと同じように行われる。転動体の案内面も、異なるやり方で形成され、もっと詳しく言うと、これらの案内面は保持器セグメントの縦方向にほぼ連続して延び、その端部に半径方向になお小さい隆起6bを持っている。
【0053】
要約すれば、本発明の思想は、転がり軸受の保持器を形成する保持器セグメントを、適当な連結装置により互いに結合することである。連結装置は、2つの保持器セグメントの結合が遊びを持っているように、形成されている。こうして保持器の全周にわたって均一な遊び分布が行われるので、膨れ及び又は温度による膨張の際にも、保持器セグメントがそのそれぞれの位置を維持することができる。更にそれにより、個々の保持器セグメントの相互衝突がほぼ回避されるか、又は著しく軽減される。
【0054】
保持器セグメントの間の連結装置の形状寸法は、僅かなすきばばめが存在して、圧縮を受けず、周方向における引張りに対して結合を釈放できるように、設定されている。更に再連結も再び可能である。
【0055】
出願書類に開示されたすべての特徴は、それらが個々に又は組合せで従来技術に対して新規である限り、本発明にとって重要なものとして権利を請求される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】 本発明の第1実施例による保持器セグメントの斜視図を示す。
【図2】 図1による保持器セグメントから形成される保持器の一部の図を示す。
【図3】 本発明の別の実施例による保持器セグメントの斜視図を示す。
【図4】 図3による保持器セグメントから形成される保持器の一部の図を示す。
【図5】 本発明による保持器セグメントの別の実施例を示す。
【図6】 互いに係合する図5の2つの保持器セグメントの詳細図を示す。
【図7】 本発明による保持器セグメントの別の実施例を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 保持器セグメント
2 内側周囲橋絡片
2a,2b 内側周囲橋絡片の脚辺
3 外側周囲橋絡片
3a,3b 外側周囲橋絡片の脚辺
4 結合橋絡片
5 ポケット
6 案内素子
6a 案内素子の端面
6b 隆起
7 滑り突起
8 支持素子
9 端面
10 連結突片
11 連結凹所
12 係止突起
13 係止凹所
15 ピン
16 別の係止凹所
18 係止突起
19 係止凹所
20 転動体
L 保持器セグメントの縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の保持器用保持器セグメント(1)であって、周方向に延びる少なくとも2つの周囲橋絡片(2,3)及び少なくとも2つの結合橋絡片(4)を持ち、周囲橋絡片(2,3)と結合橋絡片(4)が、転動体(20)を受入れる少なくとも1つのポケット(20)を形成しているものにおいて、保持器セグメント(1)が、保持器セグメント(1)を端面で別の保持器セグメントに結合するため、連結装置(10,11,12,13)を持っていることを特徴とする、保持器セグメント。
【請求項2】
別の保持器セグメントとの結合がすきまばめで行われるように、連結装置(10,11,12,13)が構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の保持器セグメント。
【請求項3】
保持器セグメントの膨らみ膨張及び温度膨張を吸収するため、連結装置(10,11,12,13)のすきまばめが1つの大きさを持っていることを特徴とする、請求項2に記載の保持器セグメント。
【請求項4】
第1の端面(9)に第1の連結素子(10,13,15)が設けられ、第2の端面(9)に第2の連結素子(11,12,16)が設けられ、両方の連結素子が互いに相補的に形成されていることを特徴とする、請求項2及び3の1つに記載の保持器セグメント。
【請求項5】
第1及び第2の連結素子(10,11,12,13,15,16)が、互いにはまり合いで結合可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の保持器セグメント。
【請求項6】
第1及び第2の連結素子(10,11,12,13,15,16)が相補的な差込み結合素子として形成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の保持器セグメント。
【請求項7】
第1の連結素子(10,13,15)が周方向に突出する連結突片(10)を持ち、第2の連結素子(11,12,16)が、別の保持器セグメントの第1の連結素子の連結突片を受入れる連結凹所(11)を持っていることを特徴とする、請求項4〜6の1つに記載の保持器セグメント。
【請求項8】
連結突片(10)が周囲橋絡片(2,3)の延長部として形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の保持器セグメント。
【請求項9】
連結突片(10)がそれから突出する係止素子(15)を備え、連結凹所(11)の範囲に係止凹所(16)が設けられて、はまり合いで結合を行うため、別の保持器セグメントの第1の連結素子(10,13,15)の係止素子により周方向に関して係合可能であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の保持器セグメント。
【請求項10】
係止素子(12,16)がピン(16)として形成されて、第2の連結素子(11,12)の連結凹所(11)にある係止開口(15)へ受入れ可能であることを特徴とする、請求項9に記載の保持器セグメント。
【請求項11】
連結突片(10)が係止凹所(13)を備え、連結凹所(11)の範囲に係止素子(12)が設けられ、周方向に関して別の保持器セグメントの第1の連結素子(10,13)の係止凹所(13)へはまって、はまり合い結合を行うことを特徴とする、請求項7又は8に記載の保持器セグメント。
【請求項12】
保持器セグメント(1)が特にガラス−炭素−アラミド補強熱可塑性プラスチックで形成されていることを特徴とする、請求項1〜11の1つに記載の保持器セグメント。
【請求項13】
熱可塑性プラスチックが、10〜15重量%の繊維を含むポリエーテル−エーテル−ケトンを持っていることを特徴とする、請求項12に記載の保持器セグメント。
【請求項14】
保持器セグメント(1)が連結装置(10,11,12,13)により端面で互いに結合されて、閉じた環を形成していることを特徴とする、請求項1〜13の1つに記載の複数の保持器セグメント(1)を持つ転がり軸受用保持器。
【請求項15】
保持器の結合橋絡片(4)が、外レースの転動路から、転がり軸受の半径方向に離されていることを特徴とする、請求項14に記載の保持器を持つ転がり軸受。
【請求項16】
外レースの転動路の内側半径と結合橋絡片(4)の幾何学的外側半径とが互いに合わされて、保持器の膨らみ又は温度による直径増大を吸収可能であることを特徴とする、請求項16に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−537003(P2009−537003A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513542(P2009−513542)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000852
【国際公開番号】WO2007/131478
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】