説明

転がり軸受の停止を検出するための方法及びコンピュータプログラムとこれにより評価可能な転がり軸受

本発明は、z個の転動体を持つ転がり軸受の停止を検出する方法に関し、zが整数なるべく偶数であり、転がり軸受にセンサ装置が取付けられて、転がり軸受の回転の際その回転位置に関係する波状の信号を供給し、この信号がサンプリングされ、それによりサンプル値が求められ、第1の時間間隔(J)のサンプル値の第1の平均値(MW)が求められ(S120)、それから別の時間間隔(J,J,・・・)のそれぞれの平均値(MW,MW,・・・)が求められ(S132)、A)別の時間間隔(J,J,・・・)のそれぞれの平均値(MW,MW,・・・)が第1の平均値(MW)が第1の平均値(MW)と著しく相違しておらず(S134)、かつ/又はB)第1の平均値(MW)と別の時間間隔のそれぞれの平均値(MW,MW,・・・)との間の勾配が0と著しく相違していない(S335)限り、転がり軸受(20)が停止しているものとみなされる。本発明は、更に本発明による方法及びコンピュータプログラムを実施するための評価装置を備えている転がり軸受に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受の停止を検出するための請求項1又は19に記載の方法及びコンピュータプログラム製品(単にコンピュータプログラム又はソフトフエアともいう)と、前記の方法により評価可能な請求項20に記載の転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受は工業分野におけるあらゆる機械に使用されている。このような機械の寿命及び確実な作動に対して常に高まる要求のため、転がり軸受が回転しているか又は実際に停止しているかを確認する必要性がますます存在している。特に転がり軸受が非常にゆっくり回転していると、この情報は、得るのが非常に困難である。なぜならば、その場合信号検出のため取出されて評価される信号では、評価電子装置又はセンサ装置における雑音のため、又はこの限界範囲においてしばしば小さすぎる信号立上がりのため、停止とゆっくりした回転とを区別することが困難だからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基礎になっている課題は、コンピュータプログラムとしても実現可能な転がり軸受の停止を検出するための確実に検出を行うができるだけ効果的な方法を提供することである。更に評価装置に接続可能であるか又は接続されている転がり軸受を提供し、この評価装置において停止検出を確実にかつできるだけ効果的に行うようにする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1に記載の方法、請求項19に記載のコンピュータプログラム、及び請求項20に記載の転がり軸受によって解決される。本発明の有利な展開が従属請求項の対象である。
【0005】
請求項1に記載の本発明による方法は、転がり軸受の回転の際その回転位置に関係する波状信号を複数の間隔においてサンプリングし、各間隔においてサンプル値の平均値を計算し、最初の間隔の平均値を次の間隔の平均値と比較する。次の間隔の平均値が最初の間隔の平均値とあまり相違していない限り、転がり軸受は停止しているものとみなされる。その代わりに、最初の平均値と別の間隔のそれぞれの平均値との間の勾配が0とはあまり相違していない限り、転がり軸受は停止しているものとみなすことができる。別の可能性として、前記の両方の条件の1つが満たされているか又は前記の両方の条件が累積的に満たされていると、転がり軸受の停止を想定することができる。
【0006】
請求項2〜8による好ましい方法によれば、それぞれの平均値が特に効率的に非常に僅かな記憶場所需要で求められ、次の平均値と最初の平均値との比較、又は勾配と数0との比較及びなるべく調節可能な閾値との比較が行われる。
【0007】
請求項11により間隔が互いに隣接するか、又は請求項10により互いに重なり合っていると、停止の検出の速度を高めることができ、請求項9により各間隔に同じ数のサンプリング時点が対応していると、方法を簡単に構成することができる。
【0008】
各時間間隔が最大で転がり軸受の回転角に重なり、この回転角が、センサ上における転動体の完全な転がりの4分の1より小さく、従ってz個の転動体では90°/zの回転角に相当していると、本発明による方法は特に効率的に動作する。
【0009】
転がり軸受に少なくとも2つのセンサ装置が設けられ、その相互間隔が2つの隣接する転動体の間隔の整数倍に等しくない場合、請求項18による方法は、すべてのセンサ装置の信号が評価される時、360°/より小さい回転角を検出するため、転動体の起こり得る往復運動(通常「がくんとした動き」と称される)を検出するためにも、使用することができる。z個より多いセンサ装置が設けられている場合、それにより、センサ装置の相互間隔は、転がり軸受の周方向において、隣接する2つの転動体の相互間隔より小さくすることができ、それによりすべてのセンサ装置の信号の並列評価の際、場合によっては起こり得るがくんとした動きを特に確実に検出することができる。
【0010】
請求項20に記載の本発明により転がり軸受は評価装置を含み、この評価装置により、請求項1〜18に記載の方法、又はその代わりに記憶媒体(例えばRAM,ROM,CD,DVD,ディスケット、ハードディスク、フラッシュメモリ等)に記憶可能でありかつ/又は回路網を介して呼出し可能な請求項19に記載のコンピュータプログラムを実行することができる。その際なるべくチップにASICとして形成される評価装置の大きさが、外レースの溝内に設置するため、限られた計算容量しか持っていないことが、考慮されている。チップの幅は先験的に軸受の外レースの幅により決定される。更にチップは外レースの周方向にあまり長くない。なぜならば、そうしないと外レースの湾曲のため、溝内にあるチップは極度に曲げられ、それにより破損するおそれがあるからである。
【0011】
本発明のそれ以外の利点及び特徴は、概略図面に基いて本発明の好ましいが限定されない実施例の以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず本発明による転がり軸受が好ましい実施例に基いて説明され、続いて停止を検出するための本発明による方法の有利な実施例が、流れ図を使用して詳細に説明される。
【0013】
図1及び2は、本発明による転がり軸受20いわゆる知的軸受の主要部分を示している。図は象徴的であり、図解に役立つが、限定するものとみなすべきではない。
【0014】
知的軸受は、使用者に、転がり軸受(以下単に「軸受」という)20が回転しているか否かの情報を使用者に供給する。このような軸受20は内レース21及び外レース22を含み、外レースの外側に取囲む縦溝23が設けられている。内レース21と外レース22との間に転動体24が設けられているので、内レース21は外レース22に対して回転可能である。データを取出すためにセンサ装置26(単に「センサ」という)26が用いられ、これらのセンサは、好ましい実施例では、ホイートストンブリッジ回路にまとめられるそれぞれ4つのひずみ計31〜34であり、これらのひずみ計は外レース22の外側にある縦溝23に収容され、その抵抗は転動体24がその上を転がることによって変化する。更に溝23に設けられる印刷回路板28が概略的に示され、この印刷回路板が、各センサ26の個々のひずみ計31〜34の導体接続、及びセンサ26と後述する評価装置50との導体接続を行う。転動体24の運動方向が図2に矢印Aで示されている。
【0015】
溝23従って印刷回路板28は、後述するように、等間隔で設けられるセンサ26(ひずみ計31〜34)及び例えば2つの評価ユニット50及び51を含む各センサ用の適当な評価装置50を持つ外レース22の全周にある。それにより生じるセンサ信号40は、評価装置50なるべく用途にとって特有なスイッチング回路いわゆるASIC(特定用途向けIC)の形の電気回路によって適当に評価される。その際ASICにおいて停止検出のため実行される本発明の方法は、限られた構造空間従って限られたチップ大きさにもかかわらず、データの一貫した評価が可能であるように設計されねばならない。センサ及び知的評価ハードウエアの完全なユニットは、従って潜在的な顧客に軸受20の起こり得る停止を実時間で知らせるいわゆる「スマートセンサ」でなけらばならない。
【0016】
本発明による方法の構成のために、外レース22におけるセンサ26の幾何学的配置を考慮せねばならない。なぜならば、それによりセンサ26から供給される信号40の推移が求められ、従ってセンサ信号40の信号理論的処理の方法が規定されるからである。ホイートストンブリッジとなるように配線されるセンサ26の4つのひずみ計(以下単にDMSという)31〜34は、その相互間隔が転動体間隔の半分に相当する(図2参照)ように、溝23の縦方向に配置されている。それにより転動体24がブリッジの常に2つのひずみ計31,33又は32,34の上を転がるようにすることができる。溝23内でそれに続くホイートストンブリッジの最初のひずみ計31も同様に、先行するブリッジの最後のひずみ計34に対して、転動体間隔の半分の所にある。この配置により、z個の転動体に対してz/2個のセンサ26が軸受に存在する。その代わりに、z個より少ないか又は多いセンサ、例えばz/2−1,z/2+1,z+1又は2z個のセンサが存在していてもよい。
【0017】
z個のセンサを持つがそのうち2つのセンサ29及び30のみを示す例が、図1に示されている。(異なる符号で示される)それぞれ4つのDMSがセンサを形成し、ここでは36,37,38,39がセンサ29を形成し、46,47,48,49がセンサ30を形成している。1つのセンサ内における個々のDMSの間隔は著しく小さくされており、従ってセンサと次のセンサとの間隔も著しく小さくされる。それにより軸受20の「がくんとした動き」即ち比較的小さい回転角の往復運動を検出でき、これは、そうでない場合もっと大きいセンサ間隔では恐らく実現不可能であろう。図示したセンサ29及び30に別の図示しないセンサが続いている。
【0018】
2つのセンサの前後に位置する8つのDMS(ここでは例示のためセンサ29及び30を考察する)が、図1とは異なり、溝23の縦方向にDMSが次のようにセンサに対応している形で接続され、即ちセンサが櫛状にはまり合っていることによって、センサの別の可能な配置が生じる。即ち第1のセンサはDMS39,37,49,47を含み、第2のセンサはDMS38,36,48,46を含んでいる。別のこのようなセンサを設けることができるが、図示してない。それにより最小の空間で、DMS上を転がることにより、往復運動の評価によく適している位相のずれた2つの辺(信号40)が発生される。
【0019】
更に2つのDMS(例えば第1及び第2のDMSのみ)を、第3及び第4のDMSと共にではなく伸びた感応しないそれぞれ1つの抵抗と共に、それぞれ1つのホイートストン半ブリッジにまとめることも可能である。前述したDMSの代わりに、例えば圧電センサ又は磁気センサのような別のセンサも使用できる。この場合転動体に対してセンサの別の関係が生じてもよい。
【0020】
図2は、1つのセンサについて、外レース22の溝23内におけるひずみ計及び転動体24の幾何学的分布を概略的に示している。転動体がDMS1 31及びDMS3 33上を転がると、一定の供給電圧Uで、転動体の押圧により大きくなるひずみ計の変形と共に、ブリッジ出力電圧U(t)が上昇する。ブリッジ回路において交点を介して接続されているひずみ計は同時に転動体を通過され又は変形され、それにより出力電圧の上昇が更に強められる。続いてひずみ計DMS1 31及びDMS3 33が次第に荷重を除かれ、遂にその最初の抵抗値に達し、ブリッジがほぼ平衡する。続いて転動体がひずみ計DMS2 32及びDMS4 34上を転がると、ブリッジ回路の極性のため逆の符号で、出力電圧の同じ推移が起こるので、結局波状のほぼ正弦状の推移が生じる。
【0021】
図3a〜3cには、異なる可能性を示すため、零通過後の信号40の典型的な推移のそれぞれ1つの小さい部分が示され、従って信号40は直線的に現われているが、本来は波状である。図示について、最初のサンプリング間隔Jはちょうど零通過で始まるが、これは一般には当てはまらない。なぜならば、最初のサンプリング間隔Jの位置は、方法の開始点に関係しているからである。
【0022】
図3aに示す第1の可能性によれば、間隔Jが互いに隣接している。即ちN個のサンプリング時点t〜tを持つ間隔Jに、N個のサンプリング時点tN+1〜t2Nを持つ間隔Jが続き、この間隔Jに再びN個のサンプリング時点t2N+1〜t3Nを持つ間隔J等が続いている。従ってすべてのサンプリング時点が停止検出のために使用される。
【0023】
これに反し図3bに示す第2の可能性によれば、サンプリング間隔は1つの相互間隔を持っている。L個のサンプリング時点を含む第1の時間間隔において、第1のサンプリング間隔Jのt〜tのN個のサンプリング時点にサンプリングが行われ、その後サンプリング時点tまで待たれ、それから第2の間隔Jが得られるまで、残りのL−N個のサンプリング時点が経過する。それから初めて、この第2の時間間隔Jにおいて、時点tL+1から再びtL+NまでのN個の順次に続くサンプリング時点にサンプリングが行われ、それから時点t2Lまで待たれる。この手順は後続の間隔において継続する。図3bからわかるように、この例ではLはNより大きい。間隔のこのような配置は、例えば転がり軸受20の極めて遅い回転の際有利である。
【0024】
図3cに示す第3の可能性によれば、サンプリング間隔が互いに重なり合っている。図3cに示す例では、これがL=1の場合について示されている。即ち第2の間隔Jの第1のサンプリング時点tL+1が既に第1の間隔Jの第2のサンプリング時点tに始まり、即ちこのサンプリング時点tL+1はサンプリング時点tと一致している。第2の間隔Jは、第1の間隔J後の第1のサンプリング時点tN+1に相当するサンプリング時点tL+N〜で終わっている。間隔のこの極端な重なりによって、場合によっては非常に速い停止検出を行うことができる。
【0025】
N及びLの値は任意に選択可能であり、即ち検出すべき軸受20のそれぞれの特徴に合わせることができ、一般に経験で求められ、間隔幅はシステム毎に変化してもよい。
【0026】
次に流れ図により本発明による方法の実施例が説明される。
【0027】
図4に第1実施例として、サンプリング間隔が隣接する簡単な方法が示されている。段階S101において、間隔毎のサンプリング時点の数としてパラメータNと閾値εが入力される。それから段階S106において、順序変数n及びkの開始値がそれぞれ1にセットされる。段階S108からの方法は、サンプル値x,xn+1・・・を処理することができる。段階S110において第1の和の開始値Sが0にセットされ、この和から第1のサンプリング間隔Jにあるサンプル値の第1の平均値MWが後で計算される。この開始値Sに、段階S112において現在のサンプル値xが加算される。続いて段階S114において順序変数nが1だけ高められ、段階S116において、第1のサンプリング間

1の走査間隔の終わりに既に達したか又は超過した場合(分枝no)、段階S120において、サンプル値の数Nによりサンプル値の和Sを除算することにより、第1の平均値MWが計算される。そうでない場合(分枝yes)、方法は段階S112に戻り、第1のサンプリング間隔Jの終わりに達し、第1の平均値MWを計算できるまで、方法が続行される。それから段階S122において順序変数kが1だけ高められ、段階S124においてk番目の和Sが0にセットされる。
【0028】
それから段階S216において、段階S112におけるように、現在のサンプル値が現在の和Sに加算される。それから段階S128において順序変数nが1だけ高められ、段階S130において、段階S116と同様に、k番目のサンプリング間隔の終わりに達

りに既に達した場合(分枝no)、段階S132において、k番目の間隔Jのサンプル値の数Nによりこの間隔Jのサンプル値の和Sを除算することによって、k番目の平均値MWが計算される。そうでない場合(分枝no)、方法は段階S126へ戻り、k番目のサンプリング間隔の終わりに達し、k番目の平均値MWを計算できるまで、方法が続行される。
【0029】
最後に段階S134において、k番目の平均値MWから第1の平均値MWが減算され、この差の値が最初に入力された閾値εより大きいか否かが検査される。yesの場合、段階S150において、転がり軸受20が回転しているという、出力フラグがセットされる。この情報は場合によっては出力し、かつ/又は表示器69に表示することができる。閾値εを超過しなかった場合、方法は段階S122に戻り、少なくとも次のサンプリング間隔Jk+1の終わりに達して、k+1番目の平均値MWk+1を計算できるまで、方法が続行される。起こり得る停止について転がり軸受20の連続的な監視を保証するため、段階S150後に方法を段階S122に戻して続行することができる。
【0030】
本発明による方法の別の有利な第2の実施例が図5に示されている。ここでは段階S102において、段階S101の入力のほかに、間隔の相互位置を規定するパラメータLの入力が必要である。この別の方法は、段階S124までまず図4のように経過する。それから段階S225において、段階S116の実行以降L−Nサンプル値をスキップするため、nが(k−1)L+1の値にセットされる。それから段階S126において和形成が行われ、段階S128において順序変数nが1だけ高められ、それから段階S230にお

L+Nであるか否かが検査される。k番目のサンプリング間隔の終わりに既に達していた場合、段階S132において再びk番目の間隔Jのサンプル値の数Nによりこの間隔Jのサンプル値の和Sを除算することによって、k番目の平均値MWが再び計算される。そうでない場合、方法が段階S126に戻り、k番目のサンプリング間隔の終わりに達してk番目の平均値MWを計算できるまで、方法が続行される。段階S134からの方法の推移は第1実施例におけるように行われる。
【0031】
本発明による方法の第3実施例が図6により説明される。前記の閾値εの代わりに、段階S103において、パラメータL及びNのほかに、閾値δが入力される。それから段階S132におけるk番目の平均値MWの計算まで、方法が図5におけるように行われる。段階S132の後で段階S333において、k番目の平均値MWから第1の平均値MWを減算し、その差を両方の平均値の間隔(k−1)Lで除算することによって、平均値MWとMWとの間の勾配gradが計算される。続いて段階S335において、勾配gradの値が最初に入力された閾値δより大きいか否かが検査される。yesの場合、転がり軸受20が回転しているものと想定され、段階S150において適当な出力フラグがセットされる。そうでない場合方法が段階S126へ戻って、(k+1)番目の間隔における勾配gradk+1を求め、段階S335においてその値を閾値δと比較する。ここでも起こり得る停止について転がり軸受20の連続的な監視を保証するため、段階S150後に方法を段階S122に戻して続行することもできる。
【0032】
図7は本発明による方法の第4実施例を示している。段階S104において、パラメータL及びNのほかに、閾値ε及び閾値δが入力される。それから方法は、段階S132におけるk番目の平均値MWの計算まで、図5及び6におけるように行われる。段階S132の後で、2つの分枝が並列に実行される。即ち一方では図4及び5におけるように段階S134において、平均値MWとMWの差の値が閾値εと比較され、その結果から場合によっては転がり軸受20の回転が推論される。他方では段階S335において、段階S333で求められた勾配gradの値が閾値δと比較され、その結果から場合によっては転がり軸受20の回転が推論される。換言すれば、段階S134及びS335の両方の条件の1つが満たされている時、転がり軸受20の回転の出力フラグがセットされ、これはOR結合に相当する。従ってこの方法は、転がり軸受20の回転の検出のために2つの異なる判定基準を考慮することができる。段階S134およびS335の両方の条件のいずれも満たされていない場合、方法はいずれにせよ段階S122から続行される。ここでも所望の場合には、段階S150において転がり軸受の回転が確認される時にも、方法を続行することができる。
【0033】
AND結合に従って、段階S134及びS335の両方の条件の累積考慮は、転がり軸受20が回転していることの前提条件として、本発明による方法の第5実施例を示す図8に示されている。段階S104から段階S132まで、方法は第4実施例におけるように経過する。段階S132後段階S333において、第4実施例におけるように勾配gradが計算され、それから段階S134において、平均値の差の値と閾値εとの比較が行われ、それから段階S335において、勾配gradの値と閾値δとの比較が行われる。段階S134及びS335の両方の比較が結果yesになった時に初めて、段階S150において、転がり軸受20の回転のための出力フラグをセットすることができる。もちろんその代わりに、段階S134の後に初めて段階S333を実行するか、又は段階S335とS134の順序を互いに交換することもできる。
【0034】
前記の閾値ε及びδは通常力に関係しており、即ち転動体24がセンサ装置26又は29に作用する力に関係している。これらの閾値ε及びδは、理論的規定に従って選ぶか、又は経験的に求めることができる。
【0035】
1Hzの典型的な周波数を持つ信号は、模範的な使用では、80kHzの周波数でサンプリングの時点tは従って12.5μs互いに離れている。サンプル値x(x,・・・x2000)を持つ時間間隔Jの好ましい幅は、N=2000の値に対して精確に隣接する間隔の場合に生じる。
【0036】
このことは、本発明による方法の前記の5つの実施例においてはっきり述べなかったが、対応する平均値MWの計算後(もはや)必要とされない和又は中間和、及び(第1の平均値MWのほか)平均値MW及び/又は適当な閾値ε及びδとの比較後(もはや)必要とされない勾配gradは、場合によっては記憶することなく棄却することができる。
【0037】
先には、各サンプリング間隔に同じ数のサンプル値Nが対応していることを前提とした。しかし個々の場合、外部からの介入により方法の経過におけるサンプリング間隔当たりサンプリング点の数を変化するか、方法自体により変化又は適合させることも、望ましいであろう。更にそれぞれの平均値及び勾配の計算は、上述した有利な方法に限定されず、他の適当なやり方で行うこともできる。
【0038】
個々の実施例に関連して説明した本発明の特徴が、異なるように示されているか又は技術的な理由から禁止される場合を除いて、例えば流れ図からの段階又は構造的特徴のように、他の実施例に存在していてもよいことは、心にとめておくべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 本発明による転がり軸受の概略図を示す。
【図2】 本発明による転がり軸受の外側溝にあるホイートストンブリッジにおけるひずみ計の配置の異なる可能性を概略的に示す。
【図3a】 互いに隣接するサンプリング間隔による、評価すべき信号の外乱のない部分を示す。
【図3b】 互いに離れたサンプリング間隔による、評価すべき信号の外乱のない部分を示す。
【図3c】 互いに重なるサンプリング間隔による、評価すべき信号の外乱のない部分を示す。
【図4】 本発明による方法の第1実施例の流れ図を示す。
【図5】 本発明による方法の第2実施例の流れ図を示す。
【図6】 本発明による方法の第3実施例の流れ図を示す。
【図7】 本発明による方法の第4実施例の流れ図を示す。
【図8】 本発明による方法の第5実施例の流れ図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
z個の転動体(24)を持つ転がり軸受(20)の停止を検出する方法であって、zが整数なるべく偶数であり、転がり軸受(20)にセンサ装置(26;29)が取付けられて、転がり軸受(20)の回転の際その回転位置に関係する波状の信号(40)を供給し、この信号がサンプリングされ、それによりサンプル値が求められ、
第1の時間間隔(J)のサンプル値の第1の平均値(MW)が求められ(S120)、それから別の時間間隔(J,J,・・・)のそれぞれの平均値(MW,MW,・・・)が求められ(S132)、
A)別の時間間隔(J,J,・・・)のそれぞれの平均値(MW,MW,・・・)が第1の平均値(MW)が第1の平均値(MW)と著しく相違しておらず(S134)、かつ/又は
B)第1の平均値(MW)と別の時間間隔のそれぞれの平均値(MW,MW,・・・)との間の勾配が0と著しく相違していない(S335)
限り、転がり軸受(20)が停止しているものとみなされる、転がり軸受の停止を検出する方法。
【請求項2】
次の段階を含む
a)サンプル値x(x,x,・・・x)を求める時点t(t,t,・・・t)に信号(40)をサンプリングし(S108),
b)それぞれ所定の期間を持つp個の時間間隔J(J,J,・・・J)のk番目の時間間隔(J)にある時点t(t,t,・・・t)に、所定の数Nのサンプル値x(x,x,・・・x)のk番目の平均値(MW)を、第1の平均値として計算し(S120)、
c)第1の平均値(MW)を記憶し、
d)p個の時間間隔J(J,J,・・・J)の(k+1)番目の時間間隔(J,J,・・・J)にある時点t(tkL+1,tkL+2,・・・tkL+N)に、所定の数のサンプル値x(xkL+1,xkL+2,・・・xkL+N)の(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)を計算し(S132)、
e)(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)が少なくとも1つの所定のなるべく調節可能な閾値(ε)だけ段階c)において記憶された第1の平均値(MW)と相違しているか否か確認し(S134)、
f)段階e)における確認が肯定的である場合、転がり軸受(20)が回転していることを確定し(S150)、そうでない場合
g)kを1だけ高め、かつ段階d)〜f)を反覆し、その際k,m,n,p,L,M及

請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の段階を含む
a)サンプル値x(x,x,・・・x)を求める時点t(t,t,・・・t)に信号(40)をサンプリングし(S108),
b)それぞれ所定の期間を持つp個の時間間隔J(J,J,・・・J)のk番目の時間間隔(J)にある時点t(t,t,・・・t)に、所定の数Nのサンプル値x(x,x,・・・x)のk番目の平均値(MW)を、第1の平均値として計算し(S120)、
c)第1の平均値(MW)を記憶し、
d)p個の時間間隔J(J,J,・・・J)の(k+1)番目の時間間隔(J,J,・・・J)にある時点t(tkL+1,tkL+2,・・・tkL+N)に、所定の数のサンプル値x(xkL+1,xkL+2,・・・xkL+N)の(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)を計算し(S132)、
h)(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)と第1の平均値(MW)との間の勾配(grad)を求め(S333)、
i)段階h)において求められた勾配(grad)が少なくとも1つの所定のなるべく調節可能な閾値(δ)だけ0と相違しているか否かを確認し(S335)、
j)段階i)における確認が肯定的である場合、転がり軸受(20)が回転していることを確定し(S150)、そうでない場合
k)kを1だけ高め、段階d)及びh)〜i)を反覆し、その際k,m,n,p,L,

請求項1に記載の方法。
【請求項4】
次の段階を含む
a)サンプル値x(x,x,・・・x)を求める時点t(t,t,・・・t)に信号(40)をサンプリングし(S108),
b)それぞれ所定の期間を持つp個の時間間隔J(J,J,・・・J)のk番目の時間間隔(J)にある時点t(t,t,・・・t)に、所定の数Nのサンプル値x(x,x,・・・x)のk番目の平均値(MW)を、第1の平均値として計算し(S120)、
c)第1の平均値(MW)を記憶し、
d)p個の時間間隔J(J,J,・・・J)の(k+1)番目の時間間隔(J,J,・・・J)にある時点t(tkL+1,tkL+2,・・・tkL+N)に、所定の数のサンプル値x(xkL+1,xkL+2,・・・xkL+N)の(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)を計算し(S132)、
e)(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)が少なくとも1つの所定のなるべく調節可能な閾値(ε)だけ段階c)において記憶された第1の平均値(MW)と相違しているか否か確認し(S134)、
h)(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)と第1の平均値(MW)との間の勾配(grad)を求め(S333)、
i)段階h)において求められた勾配(grad)が少なくとも1つの所定のなるべく調節可能な閾値(δ)だけ0と相違しているか否かを確認し(S335)、
l)段階e)及び/又は段階i)における確認が肯定的である場合、転がり軸受(20)が回転していることを確定し(S150)、そうでない場合
m)kを1だけ高め、段階d),e),h),i)及びl)を反覆し、その際k,m,n,

る、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階c)において記憶された第1の平均値(MW)と少なくとも所定の閾値(ε)だけ相違してないことが段階e)(S134)において確認された各(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)が、記憶されることなく棄却されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも所定の閾値(ε)だけ0とは相違していないことが段階i)(S335)において確認された各勾配(grad)が、記憶されることなく棄却されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
段階c)において記憶された第1の平均値(MW)と少なくとも所定の閾値(ε)だけ相違していない各(k+1)番目の平均値(MW,MW,・・・MW)と、少なくとも所定の閾値(δ)だけ0とは相違していないことが段階i)(S335)において確認されかつこれらの平均値に対応する各勾配(grad)が、記憶されることなく棄却されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
第1のサンプル値(x)と第2のサンプル値(x)を加算し(S112)、その和を中間和として記憶し、それから別の各サンプル値(x,x,・・・x)をそれぞれ中間和に加算し(S112)、関係する時間間隔J(J,J,・・・J)のそれぞれ最後のサンプル値(x,xkL+N)に達するまで、中間和を記憶し、
続いて最後の中間和をそれぞれの数の考慮されたサンプル値で除算する(S132)ことによって、
段階b)及びd)において各時間間隔J(J,J,・・・J)の平均値(MW,MW,・・・MW)の計算が行われる
ことを特徴とする、請求項2〜7の1つに記載の方法。
【請求項9】
段階b)及びd)において各時間間隔J(J,J,・・・J)に同じ数Nの時点を対応させることを特徴とする、請求項2〜8の1つに記載の方法。
【請求項10】
L<Nが成立することを特徴とする、請求項2〜9の1つに記載の方法。
【請求項11】
L=Nが成立することを特徴とする、請求項2〜9の1つに記載の方法。
【請求項12】
それぞれ先行時点tm−1及び後続時点tm+1に対する時点t(t,t,・・・t)の間隔が等間隔であることを特徴とする、請求項2〜11の1つに記載の方法。
【請求項13】
p個の時間間隔J(J,J,・・・J)の各々が、最大でも転がり軸受(20)の90°/zの回転角にわたって延びていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項14】
転がり軸受(20)の1回転が確認された時にも、方法が続行されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項15】
転がり軸受(20)が回転しているか否かの確認の結果に応じて、転がり軸受(20)が回転しているか否か出力装置(69)における出力を行うことを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項16】
転がり軸受(20)に少なくとも2つのセンサ装置(26;29)が設けられて、転がり軸受(20)の回転の際その回転位置に関係するそれぞれ1つの波状信号(40)を供給し、この信号(40)がサンプリングされ、それによりサンプル値が求められ、
センサ装置(26;29)が転がり軸受(20)の周方向に順次に設けられ、かつこの周方向において、隣接する2つの転動体(24)の周方向における相互間隔の整数倍に等しくない相互間隔を持っているものにおいて、
すべてのセンサ装置(26;29)の信号(40)を評価して、停止検出のために使用する
ことを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項17】
z個より多いセンサ装置(26;29)が設けられ、それにより転がり軸受(20)の周方向におけるセンサ装置(26;29)の相互間隔が、周方向に隣接する2つの転動体(24)の相互間隔より小さいものにおいて、すべてのセンサ装置(26;29)の信号(40)が互いに並列に評価されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
すべてのセンサ装置(26;29)の信号(40)が、更に360°/zより小さい範囲にある回転角だけ転がり軸受(20)の起こり得る往復運動を検出するために使用されることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
z個の転動体を持つ転がり軸受(20)の停止検出用コンピュータプログラム製品であって、zがなるべく整数なるべく偶数であり、転がり軸受(20)がセンサ装置(26;29)を含み、このセンサ装置が、転がり軸受(20)の回転の際その回転位置に関係する波状信号(40)を評価装置(50)へ供給し、コンピュータプログラム製品が、評価装置(50)において請求項1〜18の1つに記載の方法による段階を実施するための手段を含んでいる、コンピュータプログラム製品。
【請求項20】
zが整数なるべく偶数であるz個の転動体(24)と、転がり軸受(20)の停止検出装置とを持つ転がり軸受であって、
転がり軸受(20)に取付けられる少なくとも1つのセンサ装置(26;29)が設けられ、各センサ装置(26;29)が、転がり軸受(20)の回転の際その回転位置に関係する波状信号(40)を供給し、
少なくとも1つの評価装置(50)が設けられ、各評価装置(50)がそれぞれ1つのセンサ装置(26;29)に接続され、
各評価装置(50)が、請求項1〜18の1つに記載の方法による段階を実施する評価ユニット(51,52)を含んでいる、
転がり軸受。
【請求項21】
各センサ装置(26;29)が、転がり軸受(20)の回転方向に順次に設けられてホイートストンブリッジとなるように接続される4つのひずみ計(31〜34)から形成され、各センサ装置(26)の第1のひずみ計(31)と第3のひずみ計(33)、及び各センサ装置(26)の第2のひずみ計(32)と第4のひずみ計(34)が、周方向に隣接する2つの転動体(24)の相互間隔のc倍の間隔を持つか、又は
転がり軸受(20)の周方向に順次に設けられる2つのひずみ計がそれぞれ1つのホイートストン半ブリッジを形成し、転動体(24)がひずみ計(31〜34)の上を転がることによって、信号(40)の発生が行われ、cが1又はそれより大きい整数である
ことを特徴とする、請求項20に記載の転がり軸受。
【請求項22】
ひずみ計(31〜34)及び少なくとも1つの評価装置(50)が、転がり軸受(20)の外レース(22)の取囲む外溝(23)に設けられていることを特徴とする、請求項21に記載の転がり軸受。
【請求項23】
各評価装置(51,52)が電気回路なるべくASICとして構成されていることを特徴とする、請求項20〜22の1つに記載の転がり軸受。
【請求項24】
転がり軸受(20)に少なくとも2つのセンサ装置(26;29)が設けられて、転がり軸受の回転の際その回転位置に関係する波状信号(40)を供給し、これらの信号がそれぞれサンプリングされ、それによりそれぞれのサンプル値が求められ、
センサ装置(26;29)が、転がり軸受(20)の周方向に順次に設けられ、この周方向に隣接する2つの転動体(24)のこの周方向における相互間隔の整数倍に等しくない相互間隔を持ち、
少なくとも1つの評価装置(50)が、複数なるべくすべてのセンサ装置(26;29)に接続され、それにより複数なるべくすべてのセンサ装置(26;29)の信号(40)が評価されて、停止検出のために使用可能であることを特徴とする、請求項20〜23の1つに記載の転がり軸受。
【請求項25】
z個より多いセンサ装置(26;29)が設けられ、それにより転がり軸受(20)の周方向におけるセンサ装置(26;29)の相互間隔が、隣接する2つの転動体(24)の周方向相互間隔より小さく、
評価装置(50)が、複数なるべくすべてのセンサ装置(26;29)の信号(40)をそれぞれの評価ユニットから互いに並列に評価するように設計されている
ことを特徴とする、請求項24に記載の転がり軸受。
【請求項26】
評価装置(50)が、すべてのセンサ装置(26;29)の信号(40)を、更に、360°/zより小さい範囲にある回転角だけ転がり軸受(20)の起こり得る往復運動を検出するために使用するように設計されていることを特徴とする、請求項24又は25に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−508540(P2008−508540A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528573(P2007−528573)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001312
【国際公開番号】WO2006/012853
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】