説明

転倒検出装置、転倒検出方法

【課題】傾斜センサーの出力状態から傾斜センサーを身に付けた人間が転倒したことを検出する方法は、検出精度が低いという課題がある。
【解決手段】対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、一対の電極間に移動自由に存在する導電体とを有し、一対の電極の姿勢変化に伴う導電体の移動によって一対の電極間における導通状態が変化する傾斜センサーA,B,Cを、一対の電極が対向する方向が互いに直交するように配置した検出部1と、傾斜センサーA,B,Cの一対の電極間における導通状態を取得し、所定の第1期間における導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力部10と、第1期間の整数倍を第2期間とし、それぞれの傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定部16と、を備えた転倒検出装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒検出装置、転倒検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
傾斜角度によって出力状態が変化する傾斜センサーを身に付けて、独居老人や単独での工事従事者などが転倒したことを検出する方法が知られている。例えば、特許文献1では、例えば、傾斜センサーを身に付けた被装着者として独居老人を想定し、傾斜センサーで検知した情報を集積して発信する情報発信装置と、情報伝達手段を備えた安否確認システムが提案されている。
【0003】
特許文献1では、傾斜センサーのONまたはOFFの出力状態を信号として所定の間隔で検知し、傾斜センサーの出力状態がOFFである時間が長く続けば転倒したとして判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−242704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、傾斜センサーの姿勢が横になっている状態の時間が長いときを転倒したとして判定している。そのため、被装着者の意思で姿勢が横になっているのか、転倒してしまって姿勢が横になっているのかを区別することができない。例えば、被装着者の姿勢が横になって睡眠中であるときは、安否確認システムは、傾斜センサーの姿勢が横であることを示す信号を長時間にわたって受信することになり、これを転倒したとして判定することはできない。このように、傾斜センサーの出力状態から傾斜センサーを身に付けた被装着者が転倒したことを検出する方法は、検出精度が低いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に移動自由に存在する導電体とを有し、前記一対の電極の姿勢変化に伴う前記導電体の移動によって前記一対の電極間における導通状態が変化する複数の傾斜センサーを、前記一対の電極が対向する方向が互いに直交するように配置した検出部と、前記複数の傾斜センサーの前記一対の電極間における前記導通状態を取得し、所定の第1期間における前記導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力部と、前記第1期間の整数倍を第2期間とし、それぞれの前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定部と、を備えたことを特徴とする転倒検出装置。
【0008】
この構成によれば、それぞれの傾斜センサーの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定部、を備える。これにより、多値データの移動平均値から、所定の第1期間における一対の電極間の導通状態が非導通である期間の割合が、全ての傾斜センサーにおいて連続して高くなる時点を検出することができる。転倒検出装置の被装着者が転倒を開始した時点では、検出部の姿勢が急激に変化するため、検出部に備えられた全ての傾斜センサーにおける導電体が一対の電極から離れて非接触の状態となる可能性が高い。そのため、多値データの移動平均値から、所定の第1期間における一対の電極間の導通状態が非導通である期間の割合が、全ての傾斜センサーにおいて連続して高くなる時点を検出すれば、検出部の姿勢が急激に変化したことを検出することができる。従って、転倒検出装置の被装着者が転倒したことを検出する検出精度を向上させることが可能となる。
【0009】
[適用例2]前記転倒判定部は、それぞれの前記傾斜センサーの前記所定の第2期間における前記多値データの移動平均値が、前記第1の閾値以上であるときを第1の時点とし、姿勢変化する前に前記一対の電極が鉛直方向に対向して置かれた前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第2の閾値以下となったときを第2の時点とし、前記第1の時点から前記第2の時点までの期間が、所定の第3期間以下であるとき、転倒として判定することを特徴とする上記転倒検出装置。
【0010】
この構成によれば、第1の時点から第2の時点までの期間が、所定の第3期間以下であるときを、転倒として判定する条件をさらに追加する。これにより、第1の時点から第2の時点までの期間が、所定の第3期間を超えたときは転倒として判定しない。そのため、転倒ではなく、急激な姿勢の変化が長時間にわたって行われたときを転倒として誤検出してしまうことを抑制し、転倒として検出する検出精度をさらに向上させる。
【0011】
[適用例3]前記傾斜センサーは、半球状の凹面を対向する前記一対の電極と、球状の前記導電体とを有し、前記一対の電極の姿勢変化に伴って前記導電体は、一対の前記半球状の凹面によって形成される球状の空間を移動することを特徴とする上記転倒検出装置。
【0012】
この構成によれば、一対の電極の姿勢変化に伴って、一対の電極間の導通状態を導通または非導通にすることができる。
【0013】
[適用例4]対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に移動自由に存在する導電体とを有し、前記一対の電極の姿勢変化に伴う前記導電体の移動によって前記一対の電極間における導通状態が変化する複数の傾斜センサーを、前記一対の電極が対向する方向が互いに直交するように配置し、前記複数の傾斜センサーの前記一対の電極間における前記導通状態を取得し、所定の第1期間における前記導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力工程と、前記第1期間の整数倍を第2期間とし、それぞれの前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定工程と、を含むことを特徴とする転倒検出方法。
【0014】
この構成によれば、それぞれの傾斜センサーの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定工程、を含む。これにより、多値データの移動平均値から、所定の第1期間における一対の電極間の導通状態が非導通である期間の割合が、全ての傾斜センサーにおいて連続して高くなる時点を検出することができる。転倒検出装置の被装着者が転倒を開始した時点では、検出部の姿勢が急激に変化するため、検出部に備えられた全ての傾斜センサーにおける導電体が一対の電極から離れて非接触の状態となる可能性が高い。そのため、多値データの移動平均値から、所定の第1期間における一対の電極間の導通状態が非導通である期間の割合が、全ての傾斜センサーにおいて連続して高くなる時点を検出すれば、検出部の姿勢が急激に変化したことを検出することができる。従って、転倒検出装置の被装着者が転倒したことを検出する検出精度を向上させることが可能となる。
【0015】
[適用例5]前記転倒判定工程では、それぞれの前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、前記第1の閾値以上であるときを第1の時点とし、姿勢変化する前に前記一対の電極が鉛直方向に対向して置かれた前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第2の閾値以下となったときを第2の時点とし、前記第1の時点から前記第2の時点までの期間が、所定の第3期間以下であるとき、転倒として判定することを特徴とする上記転倒検出方法。
【0016】
この構成によれば、第1の時点から第2の時点までの期間が、所定の第3期間以下であるとき、転倒として判定する。これにより、第1の時点から第2の時点までの期間が、所定の第3期間を超えたときは転倒として判定しない。そのため、転倒ではなく、急激な姿勢の変化が長時間にわたって行われたときを転倒として誤検出してしまうことを抑制し、転倒したことを検出する検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態における転倒検出装置の主要構成を示したブロック図。
【図2】傾斜センサーの外観斜視図。
【図3】通常の姿勢にある検出部の傾斜センサーの外観斜視図。
【図4】転倒した姿勢にある検出部の傾斜センサーの外観斜視図。
【図5】多値データ出力部が生成した矩形波。
【図6】転倒前の通常の姿勢から転倒後の姿勢までの傾斜センサーの多値データを示したグラフ。
【図7】第1実施形態におけるプログラムの処理方法を示したフローチャート。
【図8】転倒前の通常の姿勢から転倒後の姿勢までの傾斜センサーの多値データを示したグラフ。
【図9】第2実施形態におけるプログラムの処理方法を示したフローチャート。
【図10】(a)は、湾曲した面を対向配置した一対の電極と円柱状の導電体を備えた傾斜センサー、(b)は、湾曲した面を対向配置した一対の電極と球状の導電体を備えた傾斜センサー。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は第1実施形態における転倒検出装置20の主要構成を示したブロック図である。
【0019】
検出部1には、傾斜センサーA,B,Cが備えられる。検出部1の姿勢変化によって、傾斜センサーA,B,Cそれぞれにおける導通状態が、導通(以降はONという)または非導通(以降はOFFという)として変化する。
【0020】
図1の多値データ出力部10は、電子回路から構成される。多値データ出力部10は、検出部1の傾斜センサーA,B,Cにおける導通状態をONまたはOFFである2段階に区分された2値データとして取得し、一定の期間におけるONまたはOFFである期間の割合に基づいて、導通状態を0、1、2、3として4段階に区分した多値データに変換して出力する。
【0021】
図1の制御部11には、CPU12、RAM13、ROM14、計時部15が備えられる。CPU12は、ROM14に格納されたプログラムをRAM13に読み出して実行する。RAM13には、多値データ出力部10から取得した多値データが一次的に記憶される。CPU12は、計時部15から時刻を取得することができる。
【0022】
転倒判定部16は、RAM13に記憶された多値データに基づいて、検出部1が転倒したことを検出し、通知部17に信号を出力する。転倒判定部16は、ROM14に格納されたプログラムから構成され、CPU12が、ROM14に記憶されたプログラムをRAM13に読み出して実行することにより機能する。
【0023】
通知部17は、外部の受信装置(不図示)に転倒したことを示す信号を無線により発信する機能を備える。通知部17は、転倒判定部16から転倒したことを示す信号を取得すると、外部の受信装置に対して転倒したことを示す信号を無線により発信する。
【0024】
次に、検出部1について詳細に説明する。
図2は、検出部1に備えられた傾斜センサーA,B,Cの外観斜視図である。傾斜センサーA,B,Cは、半球状の凹面を対向配置した一対の電極2を備える。一対の電極2は絶縁性部材(不図示)によって支持され、隙間Dが設けられて非接触の状態で位置が固定される。
【0025】
一対の電極2は、例えば、絶縁性部材に形成された半球状の凹面に金メッキする方法により形成される。あるいは、導電性材料を塑性加工する方法でもよい。
【0026】
一対の電極2を対向配置することにより、一対の半球状の凹面と、隙間Dにおける凹面の延長上の破線Lに示す面とから球状の空間Sが構成される。空間Sには、球状の導電体3が備えられる。導電体3は、検出部1の姿勢変化に伴って一対の電極2の姿勢が変化するので空間Sを移動する。そのため、一対の電極2の姿勢変化に伴って、導電体3が一対の電極2に同時に接触したり、一方の電極2のみ接触したり、両方の電極2と非接触となったりすることから、一対の電極2間の導通状態が変化する。
【0027】
図3は、通常の姿勢にある検出部1の傾斜センサーA,B,Cの外観斜視図である。鉛直方向GのZ軸は、X軸と、X軸に直交するY軸とで形成される水平面に直交する。
【0028】
図3の検出部1には、一対の電極2の凹面がX軸方向に対向する傾斜センサーA、一対の電極2の凹面がY軸方向に対向する傾斜センサーB、一対の電極2の凹面がZ軸方向に対向する傾斜センサーCが配置される。
【0029】
検出部1が図3の通常の姿勢にあるとき、傾斜センサーA及び傾斜センサーBにおけるそれぞれの導電体3は一対の電極2に接触し、一対の電極2間の導通状態はONの状態である。検出部1が図3の通常の姿勢にあるとき、傾斜センサーCにおける導電体3は一方の電極2に接触し、他方の電極2には接触せず、一対の電極2間の導通状態はOFFの状態である。
【0030】
図4は、図3の通常の姿勢にある検出部1を、X軸を回転軸として回転方向Rに90度回転させ、転倒した姿勢にある検出部1の傾斜センサーA,B,Cの外観斜視図である。検出部1が図4の転倒した姿勢にあるとき、傾斜センサーA及び傾斜センサーCにおけるそれぞれの導電体3は一対の電極2に接触し、一対の電極2間の導通状態はONであり、傾斜センサーBにおける導電体3は一方の電極2に接触し、他方の電極2には接触せず、一対の電極2間の導通状態はOFFである。
【0031】
転倒検出装置20の被装着者が通常の姿勢にあるとき、検出部1が図3の通常の姿勢となるように転倒検出装置20を装着する。従って、被装着者が転倒したときは、図4の検出部1の姿勢になる。
【0032】
次に、多値データ出力部10について詳細に説明する。
図5は、多値データ出力部10が生成した矩形波である。横軸は時間を示し、縦軸は、傾斜センサーAにおける導通状態をONまたはOFFとして示す。多値データ出力部10は、サンプリングタイムΔtごとにサンプリングして傾斜センサーAの一対の電極2間の導通状態を検出する。サンプリングタイムΔtは、例えば、5ms〜10msに設定する。
【0033】
多値データ出力部10は、一対の電極2間をサンプリングしたときの導通状態がONであったときは、Δtの期間はONであったとし、一対の電極2間をサンプリングしたときの導通状態がOFFであったときは、Δtの期間はOFFであったとして矩形波を生成する。
【0034】
多値データ出力部10は、所定の第1期間TAにおいて、ONの期間とOFFの期間を比較した結果によって、一対の電極2間の導通状態を多値データとして出力する。本実施形態では、例えば、所定の第1期間TAは、サンプリングタイムΔtの5倍として設定する。多値データは、一対の電極2間の導通状態から次のように設定する。
【0035】
所定の第1期間TAにおいて、すべての期間がONである場合を、多値データの値として0を設定する。
【0036】
所定の第1期間TAにおいて、
[ONの期間を合計した期間 ≧ OFFの期間を合計した期間]
である場合を、多値データの値として1を設定する。
【0037】
所定の第1期間TAにおいて、
[ONの期間を合計した期間 < OFFの期間を合計した期間]
である場合を、多値データの値として2を設定する。
【0038】
所定の第1期間TAにおいて、すべての期間がOFFである場合を、多値データの値として3を設定する。
【0039】
図5の下段に記載した多値データの値は、上記の方法によって設定したものである。多値データ出力部10は、傾斜センサーAと同様に、傾斜センサーB、傾斜センサーCの一対の電極2間をサンプリングし、多値データを設定する。
【0040】
以上、説明したように、多値データ出力部10は、傾斜センサーA,B,Cの一対の電極2間における導通状態をONまたはOFFである2段階に区分された2値データとして取得し、所定の第1期間TAにおけるONまたはOFFの導通状態の割合に基づいて、導通状態を0、1、2、3として4段階に区分した多値データ化する。
【0041】
次に、転倒判定部16が、多値データ出力部10から取得した多値データから転倒したことを検出する方法について説明する。本実施形態では、転倒検出装置20の被装着者が転倒した場合で、図3の通常の姿勢で静止していた検出部1が、X軸を回転軸として回転方向Rに90度回転し、図4の転倒した姿勢で静止した場合について説明する。
【0042】
多値データ出力部10は、図5を用いて説明した多値データを、順次、制御部11に出力する。図6(a)は、転倒前の図3の通常の姿勢から転倒後の図4の転倒した姿勢までの傾斜センサーAの多値データを示したグラフである。図6(b)は、同様に、傾斜センサーBの多値データを示したグラフである。図6(c)は、同様に、傾斜センサーCの多値データを示したグラフである。図6(a)〜(c)の横軸は時間(秒)を示し、縦軸は多値データを示す。
【0043】
図6(a)〜(c)の転倒前の時点t0では、図3の傾斜センサーA、傾斜センサーBは、所定の第1期間TAにおけるONの期間が全てとなるので、多値データが0であり、傾斜センサーCは、所定の第1期間TAにおけるOFFの期間が全てとなるので、多値データは3である。
【0044】
図6(a)〜(c)の転倒を開始した第1の時点t1では、傾斜センサーA、傾斜センサーBにおける導電体3は、凹面に沿って転がったり、あるいは、凹面から離れたりするので、一対の電極2の所定の第1期間TAにおける導通状態は、OFFの期間が占める割合が多くなる。従って、多値データの値は、2または3となる場合が多くなる。傾斜センサーCは、転倒を開始した第1の時点t1では、導通状態がOFFであるので、多値データの値は3である。
【0045】
このように、第1の時点t1では、傾斜センサーA,B,Cの多値データの値は、2以上となる可能性が高い。
【0046】
そこで、制御部11における転倒判定部16は、多値データ出力部10から順次、出力される所定の第2期間における直近の多値データの移動平均値を算出し、算出された移動平均値が第1の閾値N1以上となったとき、転倒したとして判定する。
【0047】
所定の第2期間は、図5の第1期間TAの整数倍の期間として定める。例えば、所定の第2期間は、第1期間TAの50倍の期間として定める。第1の閾値N1は、実験により定めた値であり、例えば、2.8とする。
【0048】
図6の転倒後の時点t3では、図4の転倒した姿勢にある検出部1の傾斜センサーA、傾斜センサーCは、所定の第1期間TAにおけるONの期間が全てとなるので、多値データが0であり、傾斜センサーBは、所定の第1期間TAにおけるOFFの期間が全てとなるので、多値データが3である。
【0049】
図6の転倒を開始した第1の時点t1から転倒後の時点t3において、傾斜センサーA,B,Cの多値データは、図6(a)〜(c)に示すようなグラフとなる。
【0050】
次に、転倒判定部16が行うプログラムの処理方法について説明する。図7は、本実施形態におけるプログラムの処理方法を示したフローチャートである。ステップS100では、転倒判定部16は、第2期間における直近の多値データを取得する。
【0051】
ステップS110では、取得した多値データから第2期間における多値データの移動平均値を算出する。
【0052】
ステップS120では、算出した移動平均値が第1の閾値N1以上であるか否かを判定する。移動平均値が第1の閾値N1以上であるとき、ステップS130に進み、通知部17に転倒を示す信号を出力する。移動平均値が第1の閾値N1未満であるとき、ステップS100に戻る。
【0053】
以上、本実施形態における転倒検出装置20は、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極2と、一対の電極2間に移動自由に存在する導電体3とを有し、一対の電極2の姿勢変化に伴う導電体3の移動によって一対の電極2間における導通状態が変化する傾斜センサーA,B,Cを、一対の電極2が対向する方向が互いに直交するように配置した検出部1と、傾斜センサーA,B,Cの一対の電極2間における導通状態を取得し、所定の第1期間TAにおける導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力部10と、第1期間TAの整数倍を第2期間とし、それぞれの傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるとき、転倒として判定する転倒判定部16と、を備える。
【0054】
この構成によれば、転倒検出装置20の被装着者が転倒を開始した第1の時点t1では、検出部1の姿勢が急激に変化するため、検出部1に備えられた傾斜センサーA,B,Cにおける導電体3が一対の電極2から離れて非接触の状態となる可能性が高い。そのため、多値データの移動平均値から、所定の第1期間TAにおける一対の電極2間の導通状態がOFFである期間の割合が、傾斜センサーA,B,Cにおいて連続して高くなる時点を検出すれば、検出部1の姿勢が急激に変化したことを検出することができる。従って、転倒検出装置20の被装着者が転倒したことを検出する検出精度を向上させることが可能となる。
【0055】
また、傾斜センサーA,B,Cは、半球状の凹面を対向する一対の電極2と、球状の導電体3を有し、一対の電極2の姿勢変化に伴って導電体3は、一対の半球状の凹面によって形成される球状の空間Sを移動する。
【0056】
この構成によれば、一対の電極2の姿勢変化に伴って、一対の電極2間の導通状態をONまたはOFFにすることができる。
【0057】
また、本実施形態で説明した転倒検出方法は、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極2と、一対の電極2間に移動自由に存在する導電体3とを有し、一対の電極2の姿勢変化に伴う導電体3の移動によって一対の電極2間における導通状態が変化する傾斜センサーA,B,Cを、一対の電極2が対向する方向が互いに直交するように配置し、傾斜センサーA,B,Cの一対の電極2間における導通状態を取得し、所定の第1期間TAにおける導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力工程と、第1期間TAの整数倍を第2期間とし、それぞれの傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるとき、転倒として判定する転倒判定工程と、を含む。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態では、一対の電極2の対向する方向が、転倒前には図3の鉛直方向Gに置かれた傾斜センサーCの導通状態の多値データを用いて、転倒検出装置の被装着者が転倒したのではなく、急激な動きを長時間した場合を排除することにより誤検出を抑制する方法について説明する。
【0059】
図8(a)〜(c)のグラフは、第1実施形態で説明した図6(a)〜(c)のグラフと同じで、図3の転倒前の通常の姿勢から図4の転倒後の姿勢までの傾斜センサーA、B、Cの多値データをそれぞれ示したグラフである。
【0060】
図8(c)の第2の時点t2は、傾斜センサーCの第2期間における多値データの移動平均値が、第2の閾値N2以下となった時点を示す。第2の閾値N2は、実験から定めた値であり、例えば、1.5である。
【0061】
第2実施形態では、転倒判定部16は、第2の時点t2を検出する。第2の時点t2以降は、傾斜センサーCの多値データが1または0を繰り返し、転倒後の時点t3では、多値データは0となる。そして、転倒判定部16は、第1実施形態で図6(a)〜(c)を用いて説明した第1の時点t1から、第2の時点t2までの期間TCを算出する。
【0062】
転倒判定部16は、傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるとき、かつ、第1の時点t1から第2の時点t2までの期間TCが、所定の第3期間以下であるとき、を転倒したとして検出する。ここで比較するための所定の第3期間は、実験から定めた値であり、例えば、1.5秒とする。
【0063】
次に、第2実施形態における転倒判定部16が行うプログラムの処理方法について説明する。図9は、第2実施形態におけるプログラムの処理方法を示したフローチャートである。図9は、第1実施形態で説明した図7のフローチャートに、ステップS99、ステップS111、ステップS121、ステップS122、ステップS112〜ステップS114を追加したものである。
【0064】
ステップS99では、Flagに0を設定する。ステップS100では、第2期間における直近の多値データを取得する。
【0065】
ステップS110では、取得した多値データから第2期間における多値データの移動平均値を算出する。
【0066】
ステップS111では、Flagが1であるか否かを判定する。Flagが1であるときは(Yes)、ステップS112に進む。Flagが1でないときは(No)、ステップS120に進む。ここでは、Flagは0でないので、ステップS120に進む。
【0067】
ステップS120では、算出した移動平均値が第1の閾値N1以上であるか否かを判定する。移動平均値が第1の閾値N1以上であるとき(Yes)、ステップS121に進み、移動平均値が第1の閾値N1未満であるとき(No)、ステップS100に戻る。ここでは、移動平均値が第1の閾値N1以上であるとし、ステップS121に進む。
【0068】
ステップS121では、計時部15から第1の時点t1の時刻を取得する。ステップS122では、Flagに1を設定し、ステップS100に戻る。
【0069】
ステップS100、ステップS110では、上述したように処理を行う。ステップS111では、Flagが1であるか否かを判定する。ここでは、Flagが1であるので、ステップS112に進む。
【0070】
ステップS112では、傾斜センサーCの第2期間における多値データの合計が第2の閾値N2以下であるか否かを判定する。多値データの合計が第2の閾値N2以下であるときは(Yes)、ステップS113に進み、多値データの合計が第2の閾値N2を超えるときは(No)、ステップS100に戻る。
【0071】
ステップS113では、計時部15から第2の時点t2の時刻を取得する。ステップS114では、第1の時点t1から第2の時点t2までの期間TC(図8(c)参照)は、所定の第3期間以下であるか否かを判定する。所定の第3期間以下であるときは(Yes)、ステップS130に進む。所定の第3期間を超えるときは(No)、ステップS99に戻る。ステップS130では、通知部17に転倒を示す信号を出力する。
【0072】
本実施形態で説明した転倒検出装置のその他の構成は、第1実施形態で説明した転倒検出装置20の構成と同じである。
【0073】
以上、本実施形態で説明した転倒検出装置における転倒判定部16は、傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるときという条件と、かつ、傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるときを第1の時点t1とし、姿勢変化する前に一対の電極2が鉛直方向Gに対向して置かれた傾斜センサーCの第2期間における多値データの移動平均値が、第2の閾値N2以下となったときを第2の時点t2とし、第1の時点t1から第2の時点t2までの期間TCが、所定の第3期間以下であるときという条件と、が成立したときを転倒したとして判定する。
【0074】
この構成によれば、第1の時点t1から第2の時点t2までの期間TCが、所定の第3期間を超えたときは転倒として判定しない。そのため、転倒ではなく、急激な姿勢の変化が長時間にわたって行われたときを転倒として誤検出してしまうことを抑制し、転倒したことを検出する検出精度を向上させることができる。
【0075】
また、以上、本実施形態で説明した転倒検出方法における転倒判定工程では、傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるときという条件と、かつ、傾斜センサーA,B,Cの第2期間における多値データの移動平均値が、第1の閾値N1以上であるときを第1の時点t1とし、姿勢変化する前に一対の電極2が鉛直方向Gに対向して置かれた傾斜センサーCの第2期間における多値データの移動平均値が、第2の閾値N2以下となったときを第2の時点t2とし、第1の時点t1から第2の時点t2までの期間TCが、所定の第3期間以下であるときという条件と、が成立したときを転倒したとして判定する。
【0076】
第1実施形態、第2実施形態では、半球状の凹面を有する一対の電極2と球状の導電体3を備えた傾斜センサーA,B,Cを用いて説明したが、図10(a)に示すように、湾曲した面を対向配置した一対の電極2aと円柱状の導電体3aを備えた傾斜センサーを用いてもよい。また、図10(b)に示すように、湾曲した面を対向配置した一対の電極2aと球状の導電体3bを備えた傾斜センサーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…検出部、2,2a…電極、3,3a,3b…導電体、10…多値データ出力部、16…転倒判定部、20…転倒検出装置、A,B,C…傾斜センサー、G…鉛直方向、N1…第1の閾値、N2…第2の閾値、S…球状の空間、t1…第1の時点、t2…第2の時点、TA…所定の第1期間、TC…第1の時点t1から第2の時点t2までの期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に移動自由に存在する導電体とを有し、前記一対の電極の姿勢変化に伴う前記導電体の移動によって前記一対の電極間における導通状態が変化する複数の傾斜センサーを、前記一対の電極が対向する方向が互いに直交するように配置した検出部と、
前記複数の傾斜センサーの前記一対の電極間における前記導通状態を取得し、所定の第1期間における前記導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力部と、
前記第1期間の整数倍を第2期間とし、それぞれの前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定部と、を備えたことを特徴とする転倒検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転倒検出装置であって、
前記転倒判定部は、それぞれの前記傾斜センサーの前記所定の第2期間における前記多値データの移動平均値が、前記第1の閾値以上であるときを第1の時点とし、姿勢変化する前に前記一対の電極が鉛直方向に対向して置かれた前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第2の閾値以下となったときを第2の時点とし、前記第1の時点から前記第2の時点までの期間が、所定の第3期間以下であるとき、転倒として判定することを特徴とする転倒検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の転倒検出装置であって、
前記傾斜センサーは、半球状の凹面を対向する前記一対の電極と、球状の前記導電体とを有し、前記一対の電極の姿勢変化に伴って前記導電体は、一対の前記半球状の凹面によって形成される球状の空間を移動することを特徴とする転倒検出装置。
【請求項4】
対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に移動自由に存在する導電体とを有し、前記一対の電極の姿勢変化に伴う前記導電体の移動によって前記一対の電極間における導通状態が変化する複数の傾斜センサーを、前記一対の電極が対向する方向が互いに直交するように配置し、前記複数の傾斜センサーの前記一対の電極間における前記導通状態を取得し、所定の第1期間における前記導通状態の割合に基づいて多値データ化する多値データ出力工程と、
前記第1期間の整数倍を第2期間とし、それぞれの前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第1の閾値以上であるとき、転倒として判定する転倒判定工程と、を含むことを特徴とする転倒検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の転倒検出方法であって、
前記転倒判定工程では、それぞれの前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、前記第1の閾値以上であるときを第1の時点とし、姿勢変化する前に前記一対の電極が鉛直方向に対向して置かれた前記傾斜センサーの前記第2期間における前記多値データの移動平均値が、第2の閾値以下となったときを第2の時点とし、前記第1の時点から前記第2の時点までの期間が、所定の第3期間以下であるとき、転倒として判定することを特徴とする転倒検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−186703(P2011−186703A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50232(P2010−50232)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】