転写シートセット、及び窯業製品への画像の転写方法
【課題】転写シート上の画像の滲みを防止するとともに、焼成後に良好な画質を得ることができる転写シートセットを提供することである。
【解決手段】支持体11に、水溶性樹脂を含む剥離層12と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含むカバー層13と、フリット及び樹脂を含むフリット層14とが順に形成される転写シート1(10)と、支持体21に、水溶性樹脂を含む剥離層22と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含むカバー層23とが順に形成される転写シート2(20)とを有し、カバー層12及びカバー層22の熱分解開始温度は、フリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下である、転写シートセット30を提供する。
【解決手段】支持体11に、水溶性樹脂を含む剥離層12と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含むカバー層13と、フリット及び樹脂を含むフリット層14とが順に形成される転写シート1(10)と、支持体21に、水溶性樹脂を含む剥離層22と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含むカバー層23とが順に形成される転写シート2(20)とを有し、カバー層12及びカバー層22の熱分解開始温度は、フリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下である、転写シートセット30を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートセット、及び窯業製品への画像の転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器や、琺瑯、タイル等の窯業製品への画像の形成には、転写シートを用いて、転写シート上に画像を形成し、この画像を窯業製品の表面に転写する方法がある。従来の転写シート、及び転写方法を以下に説明する。
【0003】
まず、吸水性を有する台紙に水溶性樹脂を塗布、乾燥し、剥離層を作製する。次に、無機顔料及びガラスフラックスを、溶剤型のアクリル樹脂であるスキージオイルと練り合わせてインクを作製する。そして、このインクを使用して、剥離層上にスクリーン印刷で画像を形成し、画像層を作製する。なお、上絵の具を水溶性樹脂と一緒に溶いたものを絵筆で描いて手書きで画像層を作製することもできる。画像層上から溶剤型のアクリル樹脂であるカバーコート樹脂をスクリーン印刷でコーティングしてカバーコート樹脂層を作製することで、画像層をカバーコート樹脂層で固定し、転写シートを作製する。
【0004】
窯業製品に画像を転写する際は、転写シートを水に浸し、剥離層の水溶性樹脂を膨潤、溶解させることで、画像層及びカバーコート樹脂層が台紙から剥離し、分離することが可能になる。この画像層及びカバーコート樹脂層を、窯業製品の表面に滑らして貼り付け、固定する。貼り付ける面は、素焼き状態でも釉薬層上でもかまわない。この状態で、窯業製品を焼成することにより、樹脂成分が蒸発、分解されて消失し、インク中のガラス成分が溶融して窯業製品の基材とインク中の無機顔料とを融着させ、また、冷却することで、画像が窯業製品の表面に固着する。
【0005】
従来の転写方法ではシルクスクリーン、パッド印刷等で画像を形成するため、版作製に時間がかかることや、コストがかかるという問題がある。また、写真画質を再現することが困難であるという問題もある。
【0006】
これらの問題を解決するために、静電複写方式、熱転写方式、インクジェット方式を用いて、版無しで写真画質を再現する、いくつかの提案がなされているが、未だ簡便なシステムで窯業製品用の転写シートの作製方法は見あたらない。
【0007】
特許文献1では、台紙上に水溶性樹脂層と、合成樹脂層と、疎水性樹脂及びフリットからなるフリット層とを設けた転写紙を用いて、フリット層上に水性インクジェットで画像を形成した後、水中で台紙を剥離し陶磁器上にこれを貼り付け、焼成することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−281072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術では、転写シートの剥離層を剥離する際に転写シートを水に浸漬するため、転写シート上に水性インクを用いて画像を形成すると、水によって画像の滲みが発生する可能性がある。また、特許文献1では、疎水性樹脂から構成されるフリット層の上に水性インクを塗布すると、インクの水溶性有機溶剤が浸透しないため、十分な乾燥が行われず、画像を定着することが難しいという問題がある。さらに、窯業製品の焼成後の画質も良好にする必要がある。
【0009】
本発明の目的としては、転写シート上の画像の滲みを防止するとともに、焼成後に良好な画質を得ることができる転写シートセット及び窯業製品への画像の転写方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一構成としては、第1支持体に、水溶性樹脂を含む第1剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層とが順に形成される第1転写シートと、第2支持体に、水溶性樹脂を含む第2剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成される第2転写シートとを有し、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、転写シートセットである。
【0011】
本発明の他の構成としては、上記転写シートセットを使用する窯業製品への画像の転写方法であって、前記第1転写シート上に画像が形成され、前記第1転写シートと前記第2転写シートとを圧着し、前記第1転写シート及び前記第2転写シートを水に接触させ、前記第1支持体及び前記第2支持体を剥離し、前記第1転写シート及び前記第2転写シートを窯業製品に貼り付け、前記窯業製品を乾燥及び焼成する、窯業製品への画像の転写方法である。
【0012】
本発明の別の他の構成としては、窯業製品の成形体上に、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成され、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、窯業製品の成形体である。
【0013】
本発明の別の他の構成としては、上記窯業製品の成形体を焼成することによって得られる、窯業製品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写シート上の画像の滲みを防止するとともに、焼成後に良好な画質を得ることができる転写シートセット及び窯業製品への画像の転写方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について説明するが、本実施の形態における例示が本発明を限定することはない。
【0016】
以下、本発明の転写シートセットの一実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における転写シートセット30の断面模式図である。
【0018】
図1において、転写シートセット30は、第1転写シートとしての転写シート1(10)と第2転写シートとしての転写シート2(20)とから構成される。転写シートセット30は、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを図1に示すように別々の状態でセットとして使用者に提供してもよいし、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを後述の図2(d)に示すように圧着した状態で使用者に提供してもよい。
【0019】
転写シート1(10)は、第1支持体としての支持体11に、第1剥離層としての剥離層12と、第1カバー層としてのカバー層13と、フリット層14とが順に形成される。
【0020】
支持体11としては、材料、質量及び厚みは特に限定されないが、支持体11に形成される剥離層12、カバー層13、及びフリット層14を支持することができ、また、機械搬送性を確保することができる強度、及びフレキシビリティを有することが好ましい。また、転写工程で剥離層12を水と接触させて剥離するために、支持体11は水吸収性を有することが好ましい。例えば、厚さ50μm〜500μmの上質紙やコート紙等を支持体11として使用することができる。
【0021】
剥離層12としては、水溶性樹脂を含む。水溶性樹脂を含む剥離層12は、転写シートが水中に浸漬される等して水と接触すると、水溶性樹脂が溶解及び/又は膨潤し、支持体11と、カバー層13及びフリット層14とを剥離する。水溶性樹脂としては、例えば、デキストリン、アラビアボム、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン等、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。また、剥離層12は、その他の成分として、塗工性を確保し、また水膨潤性を向上するために、活性剤、水溶性有機溶剤等を適宜添加して形成されてもよい。
【0022】
カバー層13としては、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含み、転写シート1(10)、特にフリット層14の耐水性を確保することができる。また、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを貼り付ける際に、加圧及び加熱することで、良好に圧着することができる。疎水性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
また、カバー層13のTg(ガラス転移温度)は20℃以下であることが好ましい。転写シートセット30は、被転写体の転写面の形状に対応して貼り付ける必要があるため、柔軟性及び伸縮性を有することが好ましい。そのため、カバー層13の樹脂にはTgが20℃以下の低い材料が好ましい。また、カバー層13の樹脂自体のTgが高くても可塑剤等の添加剤によってTgを低下させて20℃以下としてもよい。添加剤としては、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)等が挙げられる。
【0024】
フリット層14としては、フリットと樹脂とを含む。
【0025】
フリット層14のフリットとしては、被転写体の焼成温度で、被転写体の表面を形成する材料と融着可能であれば特に限定されない。
【0026】
フリットは、例えば、次の無機材料を単独で、又は2種以上を組み合わせて、混合後溶融させ、溶融物を冷却粉砕したものを使用することができる。フリットを構成する無機材料の一例としては、水酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物、塩化アルミニウム、ほう酸、アルカリ金属やアルカリ土類金属のほう酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のメタほう酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のピロリン酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の珪酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のメタ珪酸塩、珪酸ジルコニウム、骨灰、硼砂、メタバナジン酸アンモニウム、酸化タングステンや五酸化バナジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化モリブデン等の金属酸化物、フッ化カルシウムやフッ化アルミニウム等の金属フッ化物、ガラスレット等、並びに、石灰長石やカリ長石、ソーダ長石、ベタライト(リチウム長石)等の長石類、カオリン、珪石、蝋石、アルミナ、シリカ、石英、酸化チタン、シャモット等、並びに、土灰類、石灰石、マグネサイト、タルク、ドロマイト等の天然鉱物、炭酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸ストロンチウム等の化合物等が挙げられる。
【0027】
フリットの粒径は1μm〜20μmが好ましい。フリットの粒径が20μ以下であることで、画像性を確保することができ、特にインクジェット印刷での画像性を良好に保つことができる。
【0028】
フリット層14の樹脂は、フリットを結合するために添加される材料であり、特に限定されないが、水溶性樹脂であることが好ましい。転写シートセット30は、疎水性を有するカバー層12及び13によってフリット層14が覆われて防水される。そのため、フリット層14の樹脂に水溶性樹脂を用いることができる。そして、フリット層14の樹脂に水溶性樹脂を用いることで、フリット層14に画像を形成する際に、水性インクを用いると、水性インクがフリット層14の内部まで浸透し、画像を安定して保持することが可能になる。また、フリット層14の樹脂に水溶性樹脂を用いると、水性インクが深さ方向により速く浸透し、タッチフリーの状態(印刷面を手で触っても画像が乱れない状態)が速やかに得られる。
【0029】
このようなフリット層14の水溶性樹脂としては、例えば、デキストリン、アラビアゴム、PVA、CMC、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール系樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、フリット層14の樹脂には、その他の成分として、ぬれ性を改善するために活性剤等を含むこともできる。活性剤としては、アセチレン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0031】
次に、転写シートセット30の転写シート2(20)は、第2支持体としての支持体21に、第2剥離層としての剥離層22と、第2カバー層としてのカバー層23とが順に形成される。
【0032】
転写シート2(2)の支持体21、剥離層22、及びカバー層23は、それぞれ上記した転写シート1(10)で説明したものと同様のものを使用することができる。転写シート1(10)と転写シート2(20)の各層は、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。
【0033】
転写シート2(20)の支持体21は、転写シート1(10)と転写シート2(20)を熱圧着する際に、転写シート1(10)上の画像を転写シート2(20)を介して確認することができるように、光透過性、好適には透明性を有する材料から構成されることが好ましい。
【0034】
転写シートセット30は、転写シート1(10)のカバー層13及び転写シート2(20)のカバー層23の熱分解開始温度が、転写シート1(10)のフリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下である。
【0035】
ここで、熱分解開始温度は、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、質量が10%減量したときの温度である。カバー層の熱分解開始温度は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定するときのものである。フリット層の樹脂の熱分解開始温度は、フリット層に含まれる樹脂、具体的にはフリット以外の成分を使用して測定したときのものである。
【0036】
フリット層14の樹脂の熱分解が終了した状態では、画像を形成する着色剤とフリットとの緩い結合のみになっているため、フリット層14は比較的もろい状態である。この状態で、カバー層13及び23が残っていて熱分解が開始すると、フリットと着色剤の形状を乱す可能性がある。その後、フリットが溶融して、被転写体の表面上に融着した場合、画像が歪んで乱れることがあり、フリット表面も荒れた状態になることがある。したがって、転写シート1(10)のカバー層13及び転写シート2(20)のカバー層23の熱分解開始温度が、転写シート1(10)のフリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下であることで、カバー層13及び23の熱分解がフリット層14に含まれる樹脂より先に、又は同時に終了するため、フリット層及び画像を良好な状態で被転写体上に転写することができる。
【0037】
さらに好ましくは、フリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度はフリットの屈伏点以下である。フリットが熱によって大きく変形する前に、フリット層14に含まれる樹脂の熱分解が開始し焼失することで、フリット層の形状が乱れることを防止することができる。
【0038】
転写シートセット30は、転写シート1(10)のフリット層14に含まれる樹脂の500℃減量率が80%以上が好ましく、より好適には90%以上である。フリット層14に含まれる樹脂の500℃減量率が80%以上であることで、フリット層に形成される画像の焼成工程での歪みの発生を防止し、良好な画像を有する被転写体を得ることができる。フリット層14では、フリットが溶融するまでに、フリット以外の材料、すなわち主として樹脂は焼失していることが好ましい。そのため、500℃まで加熱した時点で樹脂の残分が少ないことが好ましい。
【0039】
また、カバー層13及び23の500℃減量率もまた、80%以上が好ましく、より好適には90%以上である。これによって、フリット層14のフリットが溶融するまでに、カバー層13及び23が焼失し、焼成工程での画像の歪みを確実に防止することができる。
【0040】
ここで、500℃減量率は、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、測定開始時の質量に対する500℃時点での質量の減量率を%で示す。フリット層に含まれる樹脂の500℃減量率は、フリット層に含まれる樹脂、具体的にはフリット以外の成分を使用して測定するときのものである。カバー層の500℃減量率は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定するときのものである。
【0041】
転写シートセット30には、転写シート1(10)のフリット層14に画像15が形成される。なお、転写シートセット30は、画像15を形成しない状態で使用者に提供し、使用者が任意の画像を転写シート1(10)上に形成するようにすることも可能である。
【0042】
画像15は、好ましくは、転写シート1(10)のフリット層14に水性インクによって形成される。転写シートセット30は、フリット層14がカバー層13及び23によって防水されているため、水性インクを用いて画像15を形成しても、支持体11及び21の剥離の際に水によって画像15が滲むことを防止することができる。また、水性インクを用いることができるため、インクジェット印刷等の簡便な印刷方法によって画像を形成することができる。
【0043】
水性インクとしては、特に限定されないが、例えば、無機顔料等のフリットと融着する着色剤、分散剤、水、水溶性有機溶剤、浸透剤、防腐剤、その他各種添加剤を含むインクを用いることができる。
【0044】
また、好ましくは、水性インクが転写シート1(10)のフリット層14の内部に浸透している。水性インクがフリット層14の内部に浸透していることで、画像を安定して保持することができる。これは、水性インクがフリット層14の内部に浸透すると、フリット層14内でフリットと着色剤とが混合された状態になり、焼成の際にフリットと着色剤との融着性が向上し、焼成後の画像の定着性を良好にすることができる。また、フリット層14内で着色剤が保持されるため、焼成の際の画像の歪みを防止することができる。
【0045】
また、好ましくは、転写シート1(10)のフリット層14にインクジェット印刷によって画像が形成される。インクジェット印刷は、版を必要とせず、写真画質の画像を簡便にすることができる。上記したように水性インクを用いて画像を形成する場合には、インクジェット印刷が特に適している。
【0046】
転写シート1(10)及び転写シート2(20)の製造方法としては、特に限定されないが、支持体に各層を塗布等で形成することができる。粘性の高い樹脂を塗布する場合は、エタノールや酢酸エチル等の有機溶媒で希釈してから塗布してもよい。また、各層の厚さは、好ましくは、剥離層12及び22では1μm〜50μm、カバー層13及び23では5μm〜100μm、フリット層では20μm〜200μmとするとよい。
【0047】
以下、本発明の窯業製品への画像の転写方法の一実施形態について図面を参照して説明する。図2及び図3は、本発明の一実施形態における転写シートセット30を使用する窯業製品への画像の転写方法である。
【0048】
図2(a)では、上記した転写シート1(10)を用意する。
【0049】
図2(b)では、転写シート1(10)のフリット層14の上から、インクジェットヘッド100を使用してインクジェット印刷を行い、画像15を形成する。このとき、フリット層14の樹脂を水溶性樹脂とし、水性インクを使用することで、フリット層14の内部まで水性インクが浸透し、画像15を安定して保持することができる。
【0050】
図2(c)では、画像15が形成された転写シート1(10)に合わせて、上記した転写シート2(20)を用意する。
【0051】
図2(d)では、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを貼り合わせて熱圧着する。この工程によって、転写シートセット30の耐水性を確保することができる。また、このとき、転写シート2(20)の支持体21が光透過性又は透明性を有することで、転写シート2(20)を介して転写シート1(10)上の画像15を確認することができ、両シートの位置合わせを簡便に行うことができる。
【0052】
次に、図3(a)では、転写シートセット30を水中に浸漬する等して水と接触させて、転写シート1(10)の剥離層12と転写シート2(20)の剥離層22とを溶解及び/又は膨潤させて、転写シート1(10)の支持体11と転写シート2(20)の支持体21とを剥離する。このとき、フリット層14がカバー層13及び23によって保護されるため、フリット層14上に形成された画像15が水で滲むことを防止することができ、また、フリット層14が水溶性樹脂の場合はフリット層14が溶け出すことを防止することができる。なお、カバー層13及び/又はカバー層24上に剥離層12及び/又は剥離層22の一部が残っても、後の焼成工程で燃焼して除去されるためかまわない。
【0053】
図3(b)から(c)では、転写シートセット30を水に濡れた状態で、転写シート1(10)のカバー層13を窯業製品40側に向けて、釉薬41が塗布された窯業製品40に貼り付ける。このとき、貼り付け面の空気を抜くために、布等で転写シートセット30を窯業製品40に押し付けても、画像15はカバー層23によって保護されているため、画像15を傷つけずに速やかに貼り付けることができる。また、転写シートセット30は、カバー層13及び23によって覆われていることより柔軟性があり、画像をしっかり保持しているため、窯業製品の被転写面が複雑な形状で、被転写面の形状に応じてカバー層13及び23を伸ばしても、カバー層13及び23の変形に応じて画像15も変形し、全体として画像を良好に維持することができる。
【0054】
図3(d)では、転写シートセット30が貼り付けられた状態で、窯業製品40を乾燥及び焼成する。例えば、700℃〜1000℃の温度範囲で焼成することができる。焼成工程では、カバー層13及び23とフリット層14の樹脂が燃焼、すなわち熱分解し、フリット層14のフリットが溶融し、画像15部分の着色剤が窯業製品40の釉薬41と一体化し、冷却することで固着、定着する。
【0055】
このような窯業製品への画像の転写方法によれば、滲みや歪みを防止した良好な画像を有する窯業製品を提供することができる。窯業製品としては、特に限定されないが、陶磁器、琺瑯、タイル等を用いることができる。また、窯業製品の被転写面は、上記したように釉薬が塗布されていてもよいし、素焼きの状態の面でもよい。
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、転写の際にフリット層の両面をカバー層が覆うため、支持体を剥離するときに、転写シートセットを水と接触させても、フリット層が水に接触することを防止することができる。そのため、フリット層上に形成される画像を水から保護することができ、画像の滲みを防止することができる。
【0057】
また、本発明によれば、第1カバー層及び第2カバー層の熱分解開始温度がフリット層に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下であることで、被転写体の窯業製品を焼成するときに、フリット層に形成される画像の歪みの発生を防止し、焼成後にも良好な画質を有する窯業製品を得ることができる。
【0058】
本発明は、また、窯業製品の成形体上に、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成され、第1カバー層及び第2カバー層の熱分解開始温度は、フリット層に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下である窯業製品の成形体を提供する。この窯業製品の成形体は、上記した図3の(c)に示すものと同様の構成を有し、各部材は上記したものと同様のものを用いることができる。ここで、窯業製品の成形体は、焼成前の窯業製品であればよく、釉薬が塗布された状態や、素焼きの状態の窯業製品も含まれる。このような窯業製品の成形体によれば、焼成することで、滲みや歪みを防止した良好な画像の窯業製品を得ることができる。
【0059】
本発明は、また、上記窯業製品の成形体を焼成することによって得られる窯業製品を提供する。この窯業製品は、上記した図3(d)に示すものと同様の構成を有し、各部材は上記したものと同様のものを用いることができる。このような窯業製品によれば、滲みや歪みを防止した良好な画像の窯業製品を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
[転写シート1の作製]
支持体として、あらかじめ水溶性樹脂としてデキストリンが塗布されている陶磁器用転写紙台紙(伊勢久株式会社製)を用意した。この台紙上に以下のカバー層樹脂をワイヤーバーで塗工し30μmのカバー層を作製した。
【0062】
エチルセルロースN7(ハーキュレス社製) 15.0g
DBP(フタル酸ジブチル、和光純薬工業株式会社製) 4.5g
エタノール(和光純薬工業株式会社製) 35.0g
このカバー層上に以下のフリット層樹脂をワイヤーバーで塗工、乾燥し50μmのフリット層を作製した。
【0063】
メチルセルロースSM25(信越化学工業株式会社製)2.5%水溶液 50g
フリットA(12−3737P、屈伏点575℃、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)25g
[転写シート2の作製]
支持体として、あらかじめ水溶性樹脂としてデキストリンが塗布されている陶磁器用転写紙台紙(伊勢久株式会社製)を用意した。この台紙上に上記した転写シート1と同様の樹脂組成でカバー層を作製した。
【0064】
[インクの作製]
以下の成分(質量%)をビーズミルで分散し、3ミクロンフィルターを通し、インクジェットインクを作製した。
【0065】
着色剤 黒無機顔料(♯9550 大日精化工業株式会社製) 21部
分散剤 ディスパーサント5034(サンノプコ株式会社製) 6部
水溶性有機溶剤 1,3プロパンジオール(和光純薬工業株式会社製) 9部
グリセリン(和光純薬工業株式会社製) 28部
水 水 36部
[転写方法]
上記した転写シート1のフリット層上に、東芝テック株式会社製インクジェットヘッド(CB−1)を使用し、上記したインクジェットインクを吐出させて画像を形成した。インクは、転写シート1のフリット層中に浸透し、すぐにさわってもインクが付着することなく、画像を乱すことがなかった。
【0066】
次に、転写シート1のフリット層と上記した転写シート2のカバー層とを重ね合わせ、家庭用アイロンを使用して140℃で熱圧着した。転写シート1と転写シート2はしっかりと貼り付けることができた。このときも、インクジェットインクの画像が乱れることはなかった。
【0067】
次に、転写シートを水中に浸漬し、転写シート1と転写シート2の台紙を剥離した。転写シートは、フリット層に作製された画像を上下からカバー層に挟まれた状態になっており、水に接触しても、水性インクジェットインクによって形成された画像を損なうことはなかった。
【0068】
上記した転写シートを水に濡れたまま、タイル(TOTO製)の上に、転写シート1のカバー層をタイル側に向けて貼り付けた。このとき、転写シートをタイルに布で押しつけ、転写シートとタイルとの間の水を抜いた。その後、タイルを乾燥させた。
【0069】
次に、タイルを電気炉(DDR3000、伊勢久株式会社製)に入れて、800℃、30分で焼成を行った。タイル表面には、転写シート1に作製した初期のインクジェットの画像がそのままの状態で強固に定着した。
【0070】
(実施例2)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例2の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0071】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂を以下に変更した。
【0072】
エチルセルロースN50(ハーキュレス社製) 10.0g
DBP 3.0g
エタノール 40.0g
また、転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0073】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(65SH400、信越化学工業株式会社製) 50g
フリットA 25g
(実施例3)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例3の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0074】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂A(LO−170SY、互応化学工業株式会社製、以下同じ)に変更し、転写シート1のフリット層のフリットをフリットB(12−3619、屈伏点571℃、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)に変更した。
【0075】
(実施例4)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例4の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0076】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂を酢酸ビニル系樹脂(KE−60、コニシ株式会社製)に変更した。
【0077】
(実施例5)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例5の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0078】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂Aに変更した。
【0079】
転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0080】
PVA(ポリビニルアルコール、和光純薬工業株式会社製、以下同じ)5%水溶液 50g
フリットA
活性剤(サーフィノールS465、AIR PRODUCTS製)
(実施例6)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例6の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0081】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル/セルロース系樹脂(エチルセルロースとアクリル酸エステルの共重合物)に変更した。
【0082】
このアクリル/セルロース系樹脂は、以下の成分を窒素雰囲気下で80℃、3時間反応させ、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを添加し4時間反応させ、反応後、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート239gを添加し、固形分量40%の樹脂溶液として得た。
【0083】
エチルセルロース(和光純薬工業株式会社製) 25g
メタクリル酸メチル(和光純薬工業株式会社製) 40g
メタクリル酸nブチル(和光純薬工業株式会社製) 160g
アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製) 0.2g
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(和光純薬工業株式会社製) 100g
(実施例7)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例7の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0084】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂B(OS−1000、互応化学工業株式会社製)に変更した。
【0085】
転写シート1のフリット層樹脂を、エチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)の10%メタノール溶液と、PEG系樹脂(ポリエチレングリコール系樹脂、アクアコーク、住友精化株式会社製、以下同じ)の4%メタノール溶液を5:2で混合した溶液に変更した。
【0086】
(実施例8)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例8の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0087】
転写シート1及び転写シート2のフリット層のフリットをフリットC(12−3974P、屈伏点619℃、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)に変更した。
【0088】
(実施例9)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例9の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0089】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂を実施例6で用いたものと同様のアクリル/セルロース系樹脂に変更し、転写シート1のフリット層樹脂をCMC(カルボキシメチルセルロース、和光純薬工業株式会社製)に変更した。
【0090】
(比較例1)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例1の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0091】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂Aに変更した。
【0092】
転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0093】
PEG系樹脂(ポリエチレングリコール系樹脂、アクアコーク、住友精化株式会社製、以下同じ) 2g
メタノール 48g
フリットA 25g
(比較例2)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例2の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0094】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をポリエステル系樹脂(PES360−S30、アロンエバーグリップリミテッド製、以下同じ)に変更した。
【0095】
(比較例3)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例3の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0096】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をオレフィン系樹脂(PPET−1303S、アロンエバーグリップリミテッド製、以下同じ)に変更した。
【0097】
(比較例4)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例4の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0098】
転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0099】
アルギン酸ソーダ(和光純薬工業株式会社製)2%水溶液 50g
フリットA 25g
(比較例5)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって比較例5の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0100】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をウレタン系樹脂(ユニメルト、日本ユニポリマー株式会社製)に変更した。
【0101】
(比較例6)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって比較例6の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0102】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をポリエステル系樹脂(PES360−S30、アロンエバーグリップリミテッド製)に変更した。
【0103】
(比較例7)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって比較例7の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0104】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をオレフィン系樹脂(PPET−1303S、アロンエバーグリップリミテッド製、以下同じ)に変更した。
【0105】
(評価)
上記した実施例1から9、及び比較例1から7について、カバー層の熱分解開始温度、フリット層の樹脂の熱分解開始温度、カバー層の500℃減量率、フリット層の樹脂の500℃減量率、及び焼成品評価の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
[熱分解開始温度]
熱分解開始温度は、TG/DTA(株式会社リガク製)を使用して、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、質量が10%減量したときの温度とした。カバー層の熱分解開始温度は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定した。フリット層樹脂の熱分解開始温度は、フリット層に含まれるフリット以外の成分を使用して測定した。
【0107】
[500℃減量率]
500℃減量率は、上記TG/DTAを使用して、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、測定開始時の質量に対する500℃時点での質量の減量を%で示す。カバー層の500℃減量率は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定した。フリット層樹脂の500℃減量率は、フリット層に含まれるフリット以外の成分を使用して測定した。
【0108】
[焼成品評価]
タイルを焼成後に、タイル上の画像を目視で観察した。
【0109】
◎は、転写シート1に形成した画像が、タイル上にきれいに強固に定着していたことを示す。
【0110】
○は、転写シート1に形成した画像が、タイル上に若干荒れているが製品レベルの品質は維持し強固に定着していたことを示す。
【0111】
×は、焼成工程前までは問題なかったが、焼成工程後、転写画像表面が汚く画像が崩れて定着していたことを示す。
【表1】
【0112】
表1に示すように、実施例1から9は、カバー層の熱分解開始温度がフリット層樹脂の熱分解開始温度以下であり、比較例1から7に比べて、焼成評価が良好であった。比較例1から7は、カバー層の熱分解開始温度がフリット層樹脂の熱分解開始温度より高く、焼成評価が良好ではなかった。
【0113】
また、実施例1から8は、フリット層樹脂の500℃減量率が80%以上であり、実施例9に比べて、焼成評価がより良好であった。実施例9は、フリット層の樹脂の500℃減量率が80%以下であり、実施例1から8に比べて、焼成評価が良好ではないが、製品レベルの品質は得ることができた。
【0114】
また、実施例3及び8では、それぞれフリットB及びCを用いているが、その他のフリットAを用いた実施例と同様の焼成効果を得ることができた。これは、各実施例においてフリット層樹脂の熱分解開始温度がフリットA、B、及びCの屈伏点以下であることから、フリットが熱によって大きく変形する前にフリット層樹脂の熱分解が開始し焼失するため、フリットの種類に関わらず焼成効果が良好であったと考えられる。
【0115】
なお、実施例1から9、及び比較例1から7の転写シートセットでは、焼成工程前まではいずれも問題がなく、転写シート1への画像形成、支持体の剥離、転写シート1と転写シート2の貼り合わせ、転写シートセットのタイルへの貼り付け等の各工程において、画像は良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、本発明の実施例における転写シートセットの断面模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施例における転写シートセットの転写方法の説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施例における転写シートセットの転写方法の説明図である。
【符号の説明】
【0117】
10 転写シート1
11 支持体
12 剥離層
13 カバー層
14 フリット層
15 画像
20 転写シート2
21 支持体
22 剥離層
23 カバー層
30 転写シート
40 被転写体
41 釉薬
100 インクジェットプリンタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートセット、及び窯業製品への画像の転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器や、琺瑯、タイル等の窯業製品への画像の形成には、転写シートを用いて、転写シート上に画像を形成し、この画像を窯業製品の表面に転写する方法がある。従来の転写シート、及び転写方法を以下に説明する。
【0003】
まず、吸水性を有する台紙に水溶性樹脂を塗布、乾燥し、剥離層を作製する。次に、無機顔料及びガラスフラックスを、溶剤型のアクリル樹脂であるスキージオイルと練り合わせてインクを作製する。そして、このインクを使用して、剥離層上にスクリーン印刷で画像を形成し、画像層を作製する。なお、上絵の具を水溶性樹脂と一緒に溶いたものを絵筆で描いて手書きで画像層を作製することもできる。画像層上から溶剤型のアクリル樹脂であるカバーコート樹脂をスクリーン印刷でコーティングしてカバーコート樹脂層を作製することで、画像層をカバーコート樹脂層で固定し、転写シートを作製する。
【0004】
窯業製品に画像を転写する際は、転写シートを水に浸し、剥離層の水溶性樹脂を膨潤、溶解させることで、画像層及びカバーコート樹脂層が台紙から剥離し、分離することが可能になる。この画像層及びカバーコート樹脂層を、窯業製品の表面に滑らして貼り付け、固定する。貼り付ける面は、素焼き状態でも釉薬層上でもかまわない。この状態で、窯業製品を焼成することにより、樹脂成分が蒸発、分解されて消失し、インク中のガラス成分が溶融して窯業製品の基材とインク中の無機顔料とを融着させ、また、冷却することで、画像が窯業製品の表面に固着する。
【0005】
従来の転写方法ではシルクスクリーン、パッド印刷等で画像を形成するため、版作製に時間がかかることや、コストがかかるという問題がある。また、写真画質を再現することが困難であるという問題もある。
【0006】
これらの問題を解決するために、静電複写方式、熱転写方式、インクジェット方式を用いて、版無しで写真画質を再現する、いくつかの提案がなされているが、未だ簡便なシステムで窯業製品用の転写シートの作製方法は見あたらない。
【0007】
特許文献1では、台紙上に水溶性樹脂層と、合成樹脂層と、疎水性樹脂及びフリットからなるフリット層とを設けた転写紙を用いて、フリット層上に水性インクジェットで画像を形成した後、水中で台紙を剥離し陶磁器上にこれを貼り付け、焼成することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−281072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術では、転写シートの剥離層を剥離する際に転写シートを水に浸漬するため、転写シート上に水性インクを用いて画像を形成すると、水によって画像の滲みが発生する可能性がある。また、特許文献1では、疎水性樹脂から構成されるフリット層の上に水性インクを塗布すると、インクの水溶性有機溶剤が浸透しないため、十分な乾燥が行われず、画像を定着することが難しいという問題がある。さらに、窯業製品の焼成後の画質も良好にする必要がある。
【0009】
本発明の目的としては、転写シート上の画像の滲みを防止するとともに、焼成後に良好な画質を得ることができる転写シートセット及び窯業製品への画像の転写方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一構成としては、第1支持体に、水溶性樹脂を含む第1剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層とが順に形成される第1転写シートと、第2支持体に、水溶性樹脂を含む第2剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成される第2転写シートとを有し、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、転写シートセットである。
【0011】
本発明の他の構成としては、上記転写シートセットを使用する窯業製品への画像の転写方法であって、前記第1転写シート上に画像が形成され、前記第1転写シートと前記第2転写シートとを圧着し、前記第1転写シート及び前記第2転写シートを水に接触させ、前記第1支持体及び前記第2支持体を剥離し、前記第1転写シート及び前記第2転写シートを窯業製品に貼り付け、前記窯業製品を乾燥及び焼成する、窯業製品への画像の転写方法である。
【0012】
本発明の別の他の構成としては、窯業製品の成形体上に、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成され、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、窯業製品の成形体である。
【0013】
本発明の別の他の構成としては、上記窯業製品の成形体を焼成することによって得られる、窯業製品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写シート上の画像の滲みを防止するとともに、焼成後に良好な画質を得ることができる転写シートセット及び窯業製品への画像の転写方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について説明するが、本実施の形態における例示が本発明を限定することはない。
【0016】
以下、本発明の転写シートセットの一実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における転写シートセット30の断面模式図である。
【0018】
図1において、転写シートセット30は、第1転写シートとしての転写シート1(10)と第2転写シートとしての転写シート2(20)とから構成される。転写シートセット30は、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを図1に示すように別々の状態でセットとして使用者に提供してもよいし、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを後述の図2(d)に示すように圧着した状態で使用者に提供してもよい。
【0019】
転写シート1(10)は、第1支持体としての支持体11に、第1剥離層としての剥離層12と、第1カバー層としてのカバー層13と、フリット層14とが順に形成される。
【0020】
支持体11としては、材料、質量及び厚みは特に限定されないが、支持体11に形成される剥離層12、カバー層13、及びフリット層14を支持することができ、また、機械搬送性を確保することができる強度、及びフレキシビリティを有することが好ましい。また、転写工程で剥離層12を水と接触させて剥離するために、支持体11は水吸収性を有することが好ましい。例えば、厚さ50μm〜500μmの上質紙やコート紙等を支持体11として使用することができる。
【0021】
剥離層12としては、水溶性樹脂を含む。水溶性樹脂を含む剥離層12は、転写シートが水中に浸漬される等して水と接触すると、水溶性樹脂が溶解及び/又は膨潤し、支持体11と、カバー層13及びフリット層14とを剥離する。水溶性樹脂としては、例えば、デキストリン、アラビアボム、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン等、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。また、剥離層12は、その他の成分として、塗工性を確保し、また水膨潤性を向上するために、活性剤、水溶性有機溶剤等を適宜添加して形成されてもよい。
【0022】
カバー層13としては、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含み、転写シート1(10)、特にフリット層14の耐水性を確保することができる。また、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを貼り付ける際に、加圧及び加熱することで、良好に圧着することができる。疎水性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
また、カバー層13のTg(ガラス転移温度)は20℃以下であることが好ましい。転写シートセット30は、被転写体の転写面の形状に対応して貼り付ける必要があるため、柔軟性及び伸縮性を有することが好ましい。そのため、カバー層13の樹脂にはTgが20℃以下の低い材料が好ましい。また、カバー層13の樹脂自体のTgが高くても可塑剤等の添加剤によってTgを低下させて20℃以下としてもよい。添加剤としては、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)等が挙げられる。
【0024】
フリット層14としては、フリットと樹脂とを含む。
【0025】
フリット層14のフリットとしては、被転写体の焼成温度で、被転写体の表面を形成する材料と融着可能であれば特に限定されない。
【0026】
フリットは、例えば、次の無機材料を単独で、又は2種以上を組み合わせて、混合後溶融させ、溶融物を冷却粉砕したものを使用することができる。フリットを構成する無機材料の一例としては、水酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物、塩化アルミニウム、ほう酸、アルカリ金属やアルカリ土類金属のほう酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のメタほう酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のピロリン酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の珪酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のメタ珪酸塩、珪酸ジルコニウム、骨灰、硼砂、メタバナジン酸アンモニウム、酸化タングステンや五酸化バナジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化モリブデン等の金属酸化物、フッ化カルシウムやフッ化アルミニウム等の金属フッ化物、ガラスレット等、並びに、石灰長石やカリ長石、ソーダ長石、ベタライト(リチウム長石)等の長石類、カオリン、珪石、蝋石、アルミナ、シリカ、石英、酸化チタン、シャモット等、並びに、土灰類、石灰石、マグネサイト、タルク、ドロマイト等の天然鉱物、炭酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸ストロンチウム等の化合物等が挙げられる。
【0027】
フリットの粒径は1μm〜20μmが好ましい。フリットの粒径が20μ以下であることで、画像性を確保することができ、特にインクジェット印刷での画像性を良好に保つことができる。
【0028】
フリット層14の樹脂は、フリットを結合するために添加される材料であり、特に限定されないが、水溶性樹脂であることが好ましい。転写シートセット30は、疎水性を有するカバー層12及び13によってフリット層14が覆われて防水される。そのため、フリット層14の樹脂に水溶性樹脂を用いることができる。そして、フリット層14の樹脂に水溶性樹脂を用いることで、フリット層14に画像を形成する際に、水性インクを用いると、水性インクがフリット層14の内部まで浸透し、画像を安定して保持することが可能になる。また、フリット層14の樹脂に水溶性樹脂を用いると、水性インクが深さ方向により速く浸透し、タッチフリーの状態(印刷面を手で触っても画像が乱れない状態)が速やかに得られる。
【0029】
このようなフリット層14の水溶性樹脂としては、例えば、デキストリン、アラビアゴム、PVA、CMC、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール系樹脂等、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、フリット層14の樹脂には、その他の成分として、ぬれ性を改善するために活性剤等を含むこともできる。活性剤としては、アセチレン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0031】
次に、転写シートセット30の転写シート2(20)は、第2支持体としての支持体21に、第2剥離層としての剥離層22と、第2カバー層としてのカバー層23とが順に形成される。
【0032】
転写シート2(2)の支持体21、剥離層22、及びカバー層23は、それぞれ上記した転写シート1(10)で説明したものと同様のものを使用することができる。転写シート1(10)と転写シート2(20)の各層は、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。
【0033】
転写シート2(20)の支持体21は、転写シート1(10)と転写シート2(20)を熱圧着する際に、転写シート1(10)上の画像を転写シート2(20)を介して確認することができるように、光透過性、好適には透明性を有する材料から構成されることが好ましい。
【0034】
転写シートセット30は、転写シート1(10)のカバー層13及び転写シート2(20)のカバー層23の熱分解開始温度が、転写シート1(10)のフリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下である。
【0035】
ここで、熱分解開始温度は、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、質量が10%減量したときの温度である。カバー層の熱分解開始温度は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定するときのものである。フリット層の樹脂の熱分解開始温度は、フリット層に含まれる樹脂、具体的にはフリット以外の成分を使用して測定したときのものである。
【0036】
フリット層14の樹脂の熱分解が終了した状態では、画像を形成する着色剤とフリットとの緩い結合のみになっているため、フリット層14は比較的もろい状態である。この状態で、カバー層13及び23が残っていて熱分解が開始すると、フリットと着色剤の形状を乱す可能性がある。その後、フリットが溶融して、被転写体の表面上に融着した場合、画像が歪んで乱れることがあり、フリット表面も荒れた状態になることがある。したがって、転写シート1(10)のカバー層13及び転写シート2(20)のカバー層23の熱分解開始温度が、転写シート1(10)のフリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下であることで、カバー層13及び23の熱分解がフリット層14に含まれる樹脂より先に、又は同時に終了するため、フリット層及び画像を良好な状態で被転写体上に転写することができる。
【0037】
さらに好ましくは、フリット層14に含まれる樹脂の熱分解開始温度はフリットの屈伏点以下である。フリットが熱によって大きく変形する前に、フリット層14に含まれる樹脂の熱分解が開始し焼失することで、フリット層の形状が乱れることを防止することができる。
【0038】
転写シートセット30は、転写シート1(10)のフリット層14に含まれる樹脂の500℃減量率が80%以上が好ましく、より好適には90%以上である。フリット層14に含まれる樹脂の500℃減量率が80%以上であることで、フリット層に形成される画像の焼成工程での歪みの発生を防止し、良好な画像を有する被転写体を得ることができる。フリット層14では、フリットが溶融するまでに、フリット以外の材料、すなわち主として樹脂は焼失していることが好ましい。そのため、500℃まで加熱した時点で樹脂の残分が少ないことが好ましい。
【0039】
また、カバー層13及び23の500℃減量率もまた、80%以上が好ましく、より好適には90%以上である。これによって、フリット層14のフリットが溶融するまでに、カバー層13及び23が焼失し、焼成工程での画像の歪みを確実に防止することができる。
【0040】
ここで、500℃減量率は、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、測定開始時の質量に対する500℃時点での質量の減量率を%で示す。フリット層に含まれる樹脂の500℃減量率は、フリット層に含まれる樹脂、具体的にはフリット以外の成分を使用して測定するときのものである。カバー層の500℃減量率は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定するときのものである。
【0041】
転写シートセット30には、転写シート1(10)のフリット層14に画像15が形成される。なお、転写シートセット30は、画像15を形成しない状態で使用者に提供し、使用者が任意の画像を転写シート1(10)上に形成するようにすることも可能である。
【0042】
画像15は、好ましくは、転写シート1(10)のフリット層14に水性インクによって形成される。転写シートセット30は、フリット層14がカバー層13及び23によって防水されているため、水性インクを用いて画像15を形成しても、支持体11及び21の剥離の際に水によって画像15が滲むことを防止することができる。また、水性インクを用いることができるため、インクジェット印刷等の簡便な印刷方法によって画像を形成することができる。
【0043】
水性インクとしては、特に限定されないが、例えば、無機顔料等のフリットと融着する着色剤、分散剤、水、水溶性有機溶剤、浸透剤、防腐剤、その他各種添加剤を含むインクを用いることができる。
【0044】
また、好ましくは、水性インクが転写シート1(10)のフリット層14の内部に浸透している。水性インクがフリット層14の内部に浸透していることで、画像を安定して保持することができる。これは、水性インクがフリット層14の内部に浸透すると、フリット層14内でフリットと着色剤とが混合された状態になり、焼成の際にフリットと着色剤との融着性が向上し、焼成後の画像の定着性を良好にすることができる。また、フリット層14内で着色剤が保持されるため、焼成の際の画像の歪みを防止することができる。
【0045】
また、好ましくは、転写シート1(10)のフリット層14にインクジェット印刷によって画像が形成される。インクジェット印刷は、版を必要とせず、写真画質の画像を簡便にすることができる。上記したように水性インクを用いて画像を形成する場合には、インクジェット印刷が特に適している。
【0046】
転写シート1(10)及び転写シート2(20)の製造方法としては、特に限定されないが、支持体に各層を塗布等で形成することができる。粘性の高い樹脂を塗布する場合は、エタノールや酢酸エチル等の有機溶媒で希釈してから塗布してもよい。また、各層の厚さは、好ましくは、剥離層12及び22では1μm〜50μm、カバー層13及び23では5μm〜100μm、フリット層では20μm〜200μmとするとよい。
【0047】
以下、本発明の窯業製品への画像の転写方法の一実施形態について図面を参照して説明する。図2及び図3は、本発明の一実施形態における転写シートセット30を使用する窯業製品への画像の転写方法である。
【0048】
図2(a)では、上記した転写シート1(10)を用意する。
【0049】
図2(b)では、転写シート1(10)のフリット層14の上から、インクジェットヘッド100を使用してインクジェット印刷を行い、画像15を形成する。このとき、フリット層14の樹脂を水溶性樹脂とし、水性インクを使用することで、フリット層14の内部まで水性インクが浸透し、画像15を安定して保持することができる。
【0050】
図2(c)では、画像15が形成された転写シート1(10)に合わせて、上記した転写シート2(20)を用意する。
【0051】
図2(d)では、転写シート1(10)と転写シート2(20)とを貼り合わせて熱圧着する。この工程によって、転写シートセット30の耐水性を確保することができる。また、このとき、転写シート2(20)の支持体21が光透過性又は透明性を有することで、転写シート2(20)を介して転写シート1(10)上の画像15を確認することができ、両シートの位置合わせを簡便に行うことができる。
【0052】
次に、図3(a)では、転写シートセット30を水中に浸漬する等して水と接触させて、転写シート1(10)の剥離層12と転写シート2(20)の剥離層22とを溶解及び/又は膨潤させて、転写シート1(10)の支持体11と転写シート2(20)の支持体21とを剥離する。このとき、フリット層14がカバー層13及び23によって保護されるため、フリット層14上に形成された画像15が水で滲むことを防止することができ、また、フリット層14が水溶性樹脂の場合はフリット層14が溶け出すことを防止することができる。なお、カバー層13及び/又はカバー層24上に剥離層12及び/又は剥離層22の一部が残っても、後の焼成工程で燃焼して除去されるためかまわない。
【0053】
図3(b)から(c)では、転写シートセット30を水に濡れた状態で、転写シート1(10)のカバー層13を窯業製品40側に向けて、釉薬41が塗布された窯業製品40に貼り付ける。このとき、貼り付け面の空気を抜くために、布等で転写シートセット30を窯業製品40に押し付けても、画像15はカバー層23によって保護されているため、画像15を傷つけずに速やかに貼り付けることができる。また、転写シートセット30は、カバー層13及び23によって覆われていることより柔軟性があり、画像をしっかり保持しているため、窯業製品の被転写面が複雑な形状で、被転写面の形状に応じてカバー層13及び23を伸ばしても、カバー層13及び23の変形に応じて画像15も変形し、全体として画像を良好に維持することができる。
【0054】
図3(d)では、転写シートセット30が貼り付けられた状態で、窯業製品40を乾燥及び焼成する。例えば、700℃〜1000℃の温度範囲で焼成することができる。焼成工程では、カバー層13及び23とフリット層14の樹脂が燃焼、すなわち熱分解し、フリット層14のフリットが溶融し、画像15部分の着色剤が窯業製品40の釉薬41と一体化し、冷却することで固着、定着する。
【0055】
このような窯業製品への画像の転写方法によれば、滲みや歪みを防止した良好な画像を有する窯業製品を提供することができる。窯業製品としては、特に限定されないが、陶磁器、琺瑯、タイル等を用いることができる。また、窯業製品の被転写面は、上記したように釉薬が塗布されていてもよいし、素焼きの状態の面でもよい。
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、転写の際にフリット層の両面をカバー層が覆うため、支持体を剥離するときに、転写シートセットを水と接触させても、フリット層が水に接触することを防止することができる。そのため、フリット層上に形成される画像を水から保護することができ、画像の滲みを防止することができる。
【0057】
また、本発明によれば、第1カバー層及び第2カバー層の熱分解開始温度がフリット層に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下であることで、被転写体の窯業製品を焼成するときに、フリット層に形成される画像の歪みの発生を防止し、焼成後にも良好な画質を有する窯業製品を得ることができる。
【0058】
本発明は、また、窯業製品の成形体上に、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成され、第1カバー層及び第2カバー層の熱分解開始温度は、フリット層に含まれる樹脂の熱分解開始温度以下である窯業製品の成形体を提供する。この窯業製品の成形体は、上記した図3の(c)に示すものと同様の構成を有し、各部材は上記したものと同様のものを用いることができる。ここで、窯業製品の成形体は、焼成前の窯業製品であればよく、釉薬が塗布された状態や、素焼きの状態の窯業製品も含まれる。このような窯業製品の成形体によれば、焼成することで、滲みや歪みを防止した良好な画像の窯業製品を得ることができる。
【0059】
本発明は、また、上記窯業製品の成形体を焼成することによって得られる窯業製品を提供する。この窯業製品は、上記した図3(d)に示すものと同様の構成を有し、各部材は上記したものと同様のものを用いることができる。このような窯業製品によれば、滲みや歪みを防止した良好な画像の窯業製品を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
[転写シート1の作製]
支持体として、あらかじめ水溶性樹脂としてデキストリンが塗布されている陶磁器用転写紙台紙(伊勢久株式会社製)を用意した。この台紙上に以下のカバー層樹脂をワイヤーバーで塗工し30μmのカバー層を作製した。
【0062】
エチルセルロースN7(ハーキュレス社製) 15.0g
DBP(フタル酸ジブチル、和光純薬工業株式会社製) 4.5g
エタノール(和光純薬工業株式会社製) 35.0g
このカバー層上に以下のフリット層樹脂をワイヤーバーで塗工、乾燥し50μmのフリット層を作製した。
【0063】
メチルセルロースSM25(信越化学工業株式会社製)2.5%水溶液 50g
フリットA(12−3737P、屈伏点575℃、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)25g
[転写シート2の作製]
支持体として、あらかじめ水溶性樹脂としてデキストリンが塗布されている陶磁器用転写紙台紙(伊勢久株式会社製)を用意した。この台紙上に上記した転写シート1と同様の樹脂組成でカバー層を作製した。
【0064】
[インクの作製]
以下の成分(質量%)をビーズミルで分散し、3ミクロンフィルターを通し、インクジェットインクを作製した。
【0065】
着色剤 黒無機顔料(♯9550 大日精化工業株式会社製) 21部
分散剤 ディスパーサント5034(サンノプコ株式会社製) 6部
水溶性有機溶剤 1,3プロパンジオール(和光純薬工業株式会社製) 9部
グリセリン(和光純薬工業株式会社製) 28部
水 水 36部
[転写方法]
上記した転写シート1のフリット層上に、東芝テック株式会社製インクジェットヘッド(CB−1)を使用し、上記したインクジェットインクを吐出させて画像を形成した。インクは、転写シート1のフリット層中に浸透し、すぐにさわってもインクが付着することなく、画像を乱すことがなかった。
【0066】
次に、転写シート1のフリット層と上記した転写シート2のカバー層とを重ね合わせ、家庭用アイロンを使用して140℃で熱圧着した。転写シート1と転写シート2はしっかりと貼り付けることができた。このときも、インクジェットインクの画像が乱れることはなかった。
【0067】
次に、転写シートを水中に浸漬し、転写シート1と転写シート2の台紙を剥離した。転写シートは、フリット層に作製された画像を上下からカバー層に挟まれた状態になっており、水に接触しても、水性インクジェットインクによって形成された画像を損なうことはなかった。
【0068】
上記した転写シートを水に濡れたまま、タイル(TOTO製)の上に、転写シート1のカバー層をタイル側に向けて貼り付けた。このとき、転写シートをタイルに布で押しつけ、転写シートとタイルとの間の水を抜いた。その後、タイルを乾燥させた。
【0069】
次に、タイルを電気炉(DDR3000、伊勢久株式会社製)に入れて、800℃、30分で焼成を行った。タイル表面には、転写シート1に作製した初期のインクジェットの画像がそのままの状態で強固に定着した。
【0070】
(実施例2)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例2の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0071】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂を以下に変更した。
【0072】
エチルセルロースN50(ハーキュレス社製) 10.0g
DBP 3.0g
エタノール 40.0g
また、転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0073】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(65SH400、信越化学工業株式会社製) 50g
フリットA 25g
(実施例3)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例3の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0074】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂A(LO−170SY、互応化学工業株式会社製、以下同じ)に変更し、転写シート1のフリット層のフリットをフリットB(12−3619、屈伏点571℃、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)に変更した。
【0075】
(実施例4)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例4の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0076】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂を酢酸ビニル系樹脂(KE−60、コニシ株式会社製)に変更した。
【0077】
(実施例5)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって実施例5の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0078】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂Aに変更した。
【0079】
転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0080】
PVA(ポリビニルアルコール、和光純薬工業株式会社製、以下同じ)5%水溶液 50g
フリットA
活性剤(サーフィノールS465、AIR PRODUCTS製)
(実施例6)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例6の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0081】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル/セルロース系樹脂(エチルセルロースとアクリル酸エステルの共重合物)に変更した。
【0082】
このアクリル/セルロース系樹脂は、以下の成分を窒素雰囲気下で80℃、3時間反応させ、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを添加し4時間反応させ、反応後、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート239gを添加し、固形分量40%の樹脂溶液として得た。
【0083】
エチルセルロース(和光純薬工業株式会社製) 25g
メタクリル酸メチル(和光純薬工業株式会社製) 40g
メタクリル酸nブチル(和光純薬工業株式会社製) 160g
アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製) 0.2g
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(和光純薬工業株式会社製) 100g
(実施例7)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例7の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0084】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂B(OS−1000、互応化学工業株式会社製)に変更した。
【0085】
転写シート1のフリット層樹脂を、エチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)の10%メタノール溶液と、PEG系樹脂(ポリエチレングリコール系樹脂、アクアコーク、住友精化株式会社製、以下同じ)の4%メタノール溶液を5:2で混合した溶液に変更した。
【0086】
(実施例8)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例8の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0087】
転写シート1及び転写シート2のフリット層のフリットをフリットC(12−3974P、屈伏点619℃、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)に変更した。
【0088】
(実施例9)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって実施例9の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0089】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂を実施例6で用いたものと同様のアクリル/セルロース系樹脂に変更し、転写シート1のフリット層樹脂をCMC(カルボキシメチルセルロース、和光純薬工業株式会社製)に変更した。
【0090】
(比較例1)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例1の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0091】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をアクリル系樹脂Aに変更した。
【0092】
転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0093】
PEG系樹脂(ポリエチレングリコール系樹脂、アクアコーク、住友精化株式会社製、以下同じ) 2g
メタノール 48g
フリットA 25g
(比較例2)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例2の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0094】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をポリエステル系樹脂(PES360−S30、アロンエバーグリップリミテッド製、以下同じ)に変更した。
【0095】
(比較例3)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例3の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0096】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をオレフィン系樹脂(PPET−1303S、アロンエバーグリップリミテッド製、以下同じ)に変更した。
【0097】
(比較例4)
以下の点を除いては実施例1と同様の方法によって比較例4の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0098】
転写シート1のフリット層樹脂を以下に変更した。
【0099】
アルギン酸ソーダ(和光純薬工業株式会社製)2%水溶液 50g
フリットA 25g
(比較例5)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって比較例5の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0100】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をウレタン系樹脂(ユニメルト、日本ユニポリマー株式会社製)に変更した。
【0101】
(比較例6)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって比較例6の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0102】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をポリエステル系樹脂(PES360−S30、アロンエバーグリップリミテッド製)に変更した。
【0103】
(比較例7)
以下の点を除いては実施例5と同様の方法によって比較例7の転写シートセット、及びタイルを作製した。
【0104】
転写シート1及び転写シート2のカバー層樹脂をオレフィン系樹脂(PPET−1303S、アロンエバーグリップリミテッド製、以下同じ)に変更した。
【0105】
(評価)
上記した実施例1から9、及び比較例1から7について、カバー層の熱分解開始温度、フリット層の樹脂の熱分解開始温度、カバー層の500℃減量率、フリット層の樹脂の500℃減量率、及び焼成品評価の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
[熱分解開始温度]
熱分解開始温度は、TG/DTA(株式会社リガク製)を使用して、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、質量が10%減量したときの温度とした。カバー層の熱分解開始温度は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定した。フリット層樹脂の熱分解開始温度は、フリット層に含まれるフリット以外の成分を使用して測定した。
【0107】
[500℃減量率]
500℃減量率は、上記TG/DTAを使用して、室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱する間の質量変化を測定し、測定開始時の質量に対する500℃時点での質量の減量を%で示す。カバー層の500℃減量率は、カバー層に含まれる全ての成分を使用して測定した。フリット層樹脂の500℃減量率は、フリット層に含まれるフリット以外の成分を使用して測定した。
【0108】
[焼成品評価]
タイルを焼成後に、タイル上の画像を目視で観察した。
【0109】
◎は、転写シート1に形成した画像が、タイル上にきれいに強固に定着していたことを示す。
【0110】
○は、転写シート1に形成した画像が、タイル上に若干荒れているが製品レベルの品質は維持し強固に定着していたことを示す。
【0111】
×は、焼成工程前までは問題なかったが、焼成工程後、転写画像表面が汚く画像が崩れて定着していたことを示す。
【表1】
【0112】
表1に示すように、実施例1から9は、カバー層の熱分解開始温度がフリット層樹脂の熱分解開始温度以下であり、比較例1から7に比べて、焼成評価が良好であった。比較例1から7は、カバー層の熱分解開始温度がフリット層樹脂の熱分解開始温度より高く、焼成評価が良好ではなかった。
【0113】
また、実施例1から8は、フリット層樹脂の500℃減量率が80%以上であり、実施例9に比べて、焼成評価がより良好であった。実施例9は、フリット層の樹脂の500℃減量率が80%以下であり、実施例1から8に比べて、焼成評価が良好ではないが、製品レベルの品質は得ることができた。
【0114】
また、実施例3及び8では、それぞれフリットB及びCを用いているが、その他のフリットAを用いた実施例と同様の焼成効果を得ることができた。これは、各実施例においてフリット層樹脂の熱分解開始温度がフリットA、B、及びCの屈伏点以下であることから、フリットが熱によって大きく変形する前にフリット層樹脂の熱分解が開始し焼失するため、フリットの種類に関わらず焼成効果が良好であったと考えられる。
【0115】
なお、実施例1から9、及び比較例1から7の転写シートセットでは、焼成工程前まではいずれも問題がなく、転写シート1への画像形成、支持体の剥離、転写シート1と転写シート2の貼り合わせ、転写シートセットのタイルへの貼り付け等の各工程において、画像は良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、本発明の実施例における転写シートセットの断面模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施例における転写シートセットの転写方法の説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施例における転写シートセットの転写方法の説明図である。
【符号の説明】
【0117】
10 転写シート1
11 支持体
12 剥離層
13 カバー層
14 フリット層
15 画像
20 転写シート2
21 支持体
22 剥離層
23 カバー層
30 転写シート
40 被転写体
41 釉薬
100 インクジェットプリンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持体に、水溶性樹脂を含む第1剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層とが順に形成される第1転写シートと、
第2支持体に、水溶性樹脂を含む第2剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成される第2転写シートとを有し、
前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、転写シートセット。
【請求項2】
前記フリット層に含まれる前記樹脂の500℃減量率が80%以上である、請求項1に記載の転写シートセット。
【請求項3】
前記フリット層に含まれる前記樹脂は水溶性である、請求項1又は2に記載の転写シートセット。
【請求項4】
前記フリット層に水性インクによって形成される画像を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の転写シートセット。
【請求項5】
前記水性インクが前記フリット層の内部に浸透している、請求項4に記載の転写シートセット。
【請求項6】
前記フリット層にインクジェット印刷によって画像が形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の転写シートセット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の転写シートセットを使用する窯業製品への画像の転写方法であって、
前記第1転写シート上に画像が形成され、
前記第1転写シートと前記第2転写シートとを圧着し、
前記第1転写シート及び前記第2転写シートを水に接触させ、前記第1支持体及び前記第2支持体を剥離し、
前記第1転写シート及び前記第2転写シートを窯業製品に貼り付け、
前記窯業製品を乾燥及び焼成する、
窯業製品への画像の転写方法。
【請求項8】
窯業製品の成形体上に、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成され、
前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、窯業製品の成形体。
【請求項9】
請求項8に記載の窯業製品の成形体を焼成することによって得られる、窯業製品。
【請求項1】
第1支持体に、水溶性樹脂を含む第1剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層とが順に形成される第1転写シートと、
第2支持体に、水溶性樹脂を含む第2剥離層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成される第2転写シートとを有し、
前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、転写シートセット。
【請求項2】
前記フリット層に含まれる前記樹脂の500℃減量率が80%以上である、請求項1に記載の転写シートセット。
【請求項3】
前記フリット層に含まれる前記樹脂は水溶性である、請求項1又は2に記載の転写シートセット。
【請求項4】
前記フリット層に水性インクによって形成される画像を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の転写シートセット。
【請求項5】
前記水性インクが前記フリット層の内部に浸透している、請求項4に記載の転写シートセット。
【請求項6】
前記フリット層にインクジェット印刷によって画像が形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の転写シートセット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の転写シートセットを使用する窯業製品への画像の転写方法であって、
前記第1転写シート上に画像が形成され、
前記第1転写シートと前記第2転写シートとを圧着し、
前記第1転写シート及び前記第2転写シートを水に接触させ、前記第1支持体及び前記第2支持体を剥離し、
前記第1転写シート及び前記第2転写シートを窯業製品に貼り付け、
前記窯業製品を乾燥及び焼成する、
窯業製品への画像の転写方法。
【請求項8】
窯業製品の成形体上に、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第1カバー層と、フリット及び樹脂を含むフリット層と、疎水性を有する熱可塑性樹脂を含む第2カバー層とが順に形成され、
前記第1カバー層及び前記第2カバー層の熱分解開始温度は、前記フリット層に含まれる前記樹脂の熱分解開始温度以下である、窯業製品の成形体。
【請求項9】
請求項8に記載の窯業製品の成形体を焼成することによって得られる、窯業製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−126426(P2010−126426A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305943(P2008−305943)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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