説明

転写シート及び固体高分子形燃料電池用部材、並びに、固体高分子形燃料電池用部材及びエッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法

【課題】電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを低減することのできる転写シートなどを提供することを課題とする。
【解決手段】基材71と、基材71上に形成されており、開口部を有するエッジシール72と、開口部内において基材71上に形成された触媒層73と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シート及び固体高分子形燃料電池用部材、並びに、固体高分子形燃料電池用部材及びエッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く電解質膜の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるため、小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。この固体高分子形燃料電池は、電解質膜の両面に電極が形成された電極−電解質膜積層体にガスケットを取り付け、これを両面からセパレータで挟持する構成を取っているが、電解質膜の破れを防止するなどの目的からエッジシールが取り付けられたものが提案されている。
【0003】
このエッジシールを取り付ける方法として、例えば、特許文献1の図4には、長尺の電解質膜上に複数の触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の両面に、開口部を有する長尺のエッジシールを接着させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−180031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した方法は、エッジシールの開口部よりも触媒層の方を大きくしていたため、触媒層−電解質膜積層体とエッジシールとを重ねたときに、エッジシールの開口部周縁領域と触媒層の外周縁部とが重なる部分がある。この重なる部分は、触媒層−電解質膜積層体とエッジシールとをドラムでプレスするときに応力が集中してしまい、この部分に対応する電解質膜が他の部分に比べて薄くなってしまうという問題がある。そこで、本発明は、電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを低減することのできる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の転写シートは、基材と、前記基材上に形成されており、開口部を有するエッジシールと、前記開口部内において前記基材上に形成された触媒層と、を備えている。
【0007】
この転写シートは、電解質膜と重ね合わせて圧力を掛けることによって、その触媒層及びエッジシールを電解質膜に転写させてエッジシール付き触媒層−電解質膜積層体を作製する。この転写において、この触媒層及びエッジシールは、互いに重なり合っていないため、電解質膜には均一に圧力が掛かり、電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを防止することができる。そして、このように電解質膜の厚みが均一であると、電池性能の長期的な安定化に繋がる。
【0008】
本発明に係る第2の転写シートは長尺の基材と、前記基材上に形成されており、前記基材の長さ方向に並ぶ複数の開口部を有するエッジシールと、前記各開口部内において前記基材上に形成された触媒層と、を備えている。
【0009】
この転写シートも同様に触媒層とエッジシールとが重なり合っていないため、上述したのと同様の効果を奏することができる。また、この転写シートは長尺となっているため、この転写シートからエッジシール付き触媒層−電解質膜積層体を作製する際の生産性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る第1の固体高分子形燃料電池用部材は、電解質膜と、前記電解質膜の少なくとも一方面に接着された上記いずれかの転写シートと、を備え、前記転写シートは、前記触媒層及びエッジシールが前記電解質膜に接着している。これによれば、上記いずれかの転写シートを備えているため、電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを防止することができ、ひいてはこの固体高分子形燃料電池用部材を使用した固体高分子形燃料電池の電池性能の長期安定化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る第2の固体高分子形燃料電池用部材は、電解質膜と、前記電解質膜の両面に接着された上記いずれかの転写シートと、を備え、前記各転写シートは、前記触媒層及びエッジシールが前記電解質膜に接着しており、前記各転写シートは、その触媒層の大きさが互いに異なる。この固体高分子形燃料電池用部材は、上記いずれかの転写シートを備えているため、電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを防止することができる。また、各触媒層の大きさが互いに異なっているため、例えばアノード触媒層の大きさをカソード触媒層よりも大きくすることで位置ずれなどが生じた場合でも、厚み方向でカソード触媒層が電解質膜を介してアノード触媒層がない領域をなくすことができるためカソード触媒層のカーボン腐食を防止できる。
【0012】
また、本発明に係る第1の固体高分子形燃料電池用部材の製造方法は、電解質膜を供給する電解質膜供給工程と、開口部を有するエッジシールが基材上に接着された転写シートであって、前記開口部内において前記基材上に触媒層が形成された前記転写シートを供給する転写シート供給工程と、前記エッジシール及び触媒層が前記電解質膜と対向するように前記転写シートを前記電解質膜の少なくとも一方面上に配置し、前記転写シートのエッジシール及び触媒層が前記電解質膜に接着するよう圧力を掛けるプレス工程と、を含む。
【0013】
この固体高分子形燃料電池用部材の製造方法によれば、基材上に形成されたエッジシールと触媒層とは互いに重なり合っていないため、この転写シートと電解質膜とを重ねて圧力を掛けても電解質膜に均一に圧力を掛けることができ、ひいては電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを防止できる。
【0014】
また、本発明に係る第2の固体高分子形燃料電池用部材の製造方法は、長尺の電解質膜を供給する電解質膜供給工程と、長手方向に並ぶ複数の開口部が形成された長尺のエッジシールが長尺の基材上に接着された転写シートであって、前記各開口部内において前記基材上に触媒層が形成された前記転写シートを供給する転写シート供給工程と、前記エッジシール及び各触媒層が前記電解質膜に対向するように前記転写シートを前記電解質膜の少なくとも一方面上に配置し、前記転写シートのエッジシール及び触媒層が前記電解質膜に接着するよう圧力を掛けるプレス工程と、を含む。
【0015】
この固体高分子形燃料電池用部材の製造方法も、上記製造方法と同様に、転写シートと電解質膜とを重ねて圧力を掛けても電解質膜に均一に圧力を掛けることができ、ひいては電解質膜が局所的に薄くなってしまうことを防止できる。
【0016】
この第2の固体高分子形燃料電池用部材の製造方法は、電解質膜供給工程において電解質膜を長手方向に搬送し、転写シート供給工程において転写シートを電解質膜と同一方向に搬送し、プレス工程において、搬送中の前記電解質膜と転写シートとを一対のローラで挟むことにより転写シートを電解質膜に接着させるような方法とすることが好ましい。
【0017】
また、転写シートが接着された長尺の電解質膜を、各開口部の間において切断する工程をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明に係るエッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法は、上記いずれかの固体高分子形燃料電池用部材の製造方法と、前記転写基材の基材を剥離する工程と、前記触媒層上に導電性多孔質基材を積層する工程と、を含む。この方法では、上記いずれかの固体高分子形燃料電池用部材の製造方法を採用しているため、電解質膜が局所的に薄くなることを防止できる。
【0019】
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池の製造方法は、上記エッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法と、前記エッジシール上にガスケットを設置する工程と、前記ガスケットが設置されたエッジシール付き電極−電解質膜積層体をセパレータによって両側から挟持する工程と、を含む。この方法は、上記エッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法を含んでいるため、電解質膜が局所的に薄くなることを防止できる。
【0020】
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池用部材の製造装置は、長尺の電解質膜を供給する電解質膜供給部と、長手方向に並ぶ複数の開口部が形成された長尺のエッジシールが長尺の基材上に接着された転写シートであって、前記各開口部内において前記基材上に触媒層が形成された前記転写シートを供給する転写シート供給部と、前記エッジシール及び各触媒層が前記電解質膜に対向するように前記転写シートを前記電解質膜の少なくとも一方面上に配置した状態で、前記電解質膜と転写シートとを挟んで圧力を掛ける加圧部と、を備えている。
【0021】
この製造装置によれば、基材上に形成されたエッジシールと触媒層とは互いに重なり合っていないため、この転写シートと電解質膜とを重ねて加圧部にて圧力を掛けても電解質膜に対して均一に圧力を掛けることができ、ひいては電解質膜が局所的に薄くなることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電解質膜が局所的に薄くなることを防止でき、ひいては固体高分子形燃料電池の電池性能の長期安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用部材の製造装置を示す概略側面図である。
【図2】図2は本実施形態に係る転写シートを示す平面図である。
【図3】図3は図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用部材の側面断面図である。
【図5】図5は本実施形態に係る長尺の固体高分子形燃料電池用部材から固体高分子形燃料電池を製造する方法を示す説明図である。
【図6】図6は別の実施形態に係る転写シートの製造方法を示す説明図である。
【図7】図7は別の実施形態に係る転写シートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る固体高分子形燃料電池用部材の製造装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1の右側を下流、左側を上流と称して説明する。また、各図中の矢印Yは、電解質膜や、転写シート、固体高分子形燃料電池用部材などの進行方向を示している。
【0025】
図1に示すように、固体高分子形燃料電池用部材の製造装置1は、長尺の電解質膜6を供給する電解質膜供給部2と、長尺の転写シート7を供給する転写シート供給部3と、電解質膜6と転写シート7とを仮着させる加圧部4と、電解質膜6に転写シート7が仮着された固体高分子形燃料電池用部材8をロール状に巻き取る巻取部5と、を備えている。
【0026】
電解質膜供給部2は、ロール状に巻かれた電解質膜6がセットされた第1回転軸21と、この第1回転軸21を回転させる第1駆動機構(図示省略)を備えている。第1駆動機構は、この第1回転軸21を回転させることでこの第1回転軸にセットされた電解質膜6を下流に送り出すように構成されている。この電解質膜6の搬送速度は、特に限定されるものではないが、0.1〜5m/minとすることが好ましい。
【0027】
転写シート供給部3は、ロール状に巻かれた転写シート7がセットされた第2回転軸31と、この第2回転軸31を回転させる第2駆動機構(図示省略)を備えている。第2駆動機構は、この第2回転軸31を回転させることでこの第2回転軸31にセットされた転写シート7を下流に送り出すように構成されている。この転写シート7の搬送速度は、特に限定されるものではないが、電解質膜6の搬送速度とほぼ同じとすることが好ましい。このロール状に巻かれた転写シート7は、図2及び図3に示すように、まず長尺の基材71を有しており、この基材71上にエッジシール72が接着している。このエッジシール72は間隔dを開けて長手方向に並ぶ複数の開口部が形成されており、各開口部内において基材71上に触媒層73が形成されている。
【0028】
加圧部4は、上述したように電解質膜供給部2と転写シート供給部3とから送り出された電解質膜6と転写シート7とを上下から挟むように設置された一対の加圧ローラ41から構成されている。この加圧ローラ41によって電解質膜6と転写シート7とを加圧し転写シート7を電解質膜6に仮着させることで固体高分子形燃料電池用部材8を作製する。また、この加圧ローラ41は例えば内部に熱媒が流れることなどによって電解質膜6と転写シート7とを加熱してもよく、このときの加圧ローラ41の温度は、200度以下が好ましく、180度以下とすることがより好ましい。なお加圧ローラ41内を流れる熱媒体としては好ましくは水やオイルなどを使用できる。
【0029】
巻取部5は、固体高分子形燃料電池用部材8をロール状に巻き取るための第3回転軸51と、この第3回転軸51を回転させる第3駆動機構とを備えている。
【0030】
次にこのように構成された固体高分子形燃料電池用部材の製造装置を用いた固体高分子形燃料電池用部材の製造方法について説明する。
【0031】
まず、図1に示すように、電解質膜供給部2から電解質膜6を巻き出すとともに、各転写シート供給部3から転写シート7を巻き出す。このとき、各転写シート7は、エッジシール72及び触媒層73が電解質膜6と対向するような向きであり、また、電解質膜6を介して上側に配置された転写シート7の触媒層73と下側に配置された転写シート7の触媒層73との位置が一致するように配置されている。このように巻き出された電解質膜6と転写シート7とは、転写シート7、電解質膜6、転写シート7の順で重なった状態で、一対の加圧ローラ41の間を通過することで加圧ローラ41によって加圧される。これによって各転写シート7が電解質膜6に仮着し、固体高分子形燃料電池用部材8が形成される。なお、このときの圧力は、エッジシール72自体が有する粘着力によって転写シート7が電解質膜6に仮着する程度の圧力であれば特に限定されるものではないが、0.5〜20MPa程度とすることが好ましく、1〜10MPa程度とすることがより好ましい。なお、このとき加圧ローラ41を加熱してもよく、この場合は加圧ローラ41の表面温度が200度程度以下とすることが好ましく、180度程度以下とすることがさらに好ましい。
【0032】
以上のように形成された固体高分子形燃料電池用部材8は、図4に示すように、長尺の電解質膜6の上面及び下面のそれぞれに転写シート7が仮着されることで構成されている。このように構成された固体高分子形燃料電池用部材8が巻取部5に巻き取られることでロール状となっている。
【0033】
続いて、ロール状に形成された固体高分子形燃料電池用部材8から固体高分子形燃料電池を形成する方法を図5に基づいて説明する。まず、ロール状の固体高分子形燃料電池用部材8を巻取部5から取り出し、公知の切断装置にて、各触媒層73間で切断して単セル毎の固体高分子形燃料電池用部材8’を作製する(図5(a))。そして、この単セル毎の固体高分子形燃料電池用部材8’をホットプレス機にて加熱及び加圧することにより電解質膜6にエッジシール72及び触媒層73を転写させる。このときのホットプレスの条件として、加圧レベルは、転写不良を避けるために0.5〜20MPa程度とすることが好ましく、1〜10MPa程度とすることがさらに好ましい。また、加熱温度は、電解質膜の破損や変形等を避けるために約200℃以下にすることが好ましく、約150℃以下にすることがさらに好ましい。なお、この切断工程とホットプレスの順序は逆であってもよい。
【0034】
このように形成された固体高分子形燃料電池用部材8’から基材71を剥離してエッジシール付き触媒層−電解質膜積層体10を形成する(図5(b))。そして、このエッジシール付き触媒層−電解質膜積層体10の各触媒層73上に導電性多孔質基材9を積層してエッジシール付き電極−電解質膜積層体20を形成する(図5(c))。なお、この導電性多孔質基材9は、積層される触媒層73と同じ大きさとすることが好ましい。また、導電性多孔質基材9を積層する直前まで基材71を剥離しないことにより、この基材71にてエッジシール付き触媒層−電解質膜積層体10を保護することができる。
【0035】
最後に、エッジシール72上に導電性多孔質基材9を囲うように枠状のガスケット11を配置し、ガス流路121が形成されたセパレータ12を上下から挟むように配置して固体高分子形燃料電池30が完成する(図5(d))。
【0036】
次に、上述した固体高分子形燃料電池の各要素の材質について説明する。
【0037】
電解質膜6は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、上記の水素イオン伝導性高分子電解質からなる電解質膜以外にも、アニオン導電性高分子電解質膜や液状物質含浸膜も挙げられる。アニオン導電性高分子電解質膜は、基材上にアニオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し乾燥することで形成されたものであり、このアニオン伝導性高分子電解質としては炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂等が挙げられ、具体例としては炭化水素系樹脂としては、旭化成(株)製のAciplex(登録商標)A201,211,221や、トクヤマ(株)製のネオセプタ(登録商標)AM−1,AHA等が挙げられ、フッ素系樹脂としては、東ソー(株)製のトスフレックス(登録商標)IE−SF34等が挙げられる。また液状物質含浸膜としては、例えばリン酸を含浸したポリベンゾイミダゾール(PBI)等が挙げられる。
【0038】
転写シート7の基材71としては、シート状或いはフィルム状のものであれば、特に限定されないが、例えば、金属箔、高分子フィルム等が挙げられる。これらの他、アート紙,コート紙,軽量コート紙等の塗工紙,ノート用紙,コピー用紙等の非塗工紙等であってもよい。また、エッジシール72や触媒層73からの剥離性を向上させるため、離型層等を設けてもよい。離型層としては、例えば、基材71の表面に、公知のワックスから構成されたものやフッ素樹脂をコーティングで設けることもできるが、ケイ素酸化物等からなる蒸着層を離型層として設けることが望ましい。なお、高分子フィルムとしては、ポリイミド,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリパルバン酸アラミド,ポリアミド(ナイロン),ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテル・エーテルケトン,ポリエーテルイミド,ポリアリレート,ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。また、他にもポリエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE),テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。この基材71の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常6〜100μm程度、好ましくは10〜30μm程度とするのがよい。このような基材71としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0039】
また、触媒層73は、触媒粒子を担持させた炭素粒子と、水素イオン伝導性高分子電解質とを含有するものが挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質としては、上記電解質膜6の電解質と同様のデュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、上記の水素イオン伝導性高分子電解質以外には、アニオン導電性高分子電解質も挙げられる。アニオン伝導性高分子電解質としては炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂等が挙げられ、具体例としては炭化水素系樹脂としては、旭化成(株)製のAciplex(登録商標)A201,211,221や、トクヤマ(株)製のネオセプタ(登録商標)AM−1,AHA等が挙げられ、フッ素系樹脂としては、東ソー(株)製のトスフレックス(登録商標)IE−SF34等が挙げられる。また、触媒粒子としては、例えば、白金や白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は前記金属と白金との合金である。炭素粒子は、導電性を有しているものであれば限定的ではなく、公知又は市販のものを広く使用できる。例えば、カーボンブラックや、黒鉛、活性炭等を1種又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を挙げることができる。炭素粒子の算術平均粒子径は通常5nm〜200nm程度、好ましくは20〜80nm程度である。この炭素粒子の平均粒子径は、例えば、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定できる。
【0040】
エッジシール72の材料としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポエイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。またそれらを変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂を使用することができ、その中でも不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレンもしくは不飽和カルボン酸で変性したポリエチレンを使用することが絶縁性、耐熱性、及び基材71と弱粘着する観点から好ましい。また、その他にもパーフルオロカーボンスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂といったような上記電解質膜6と同様の材料を挙げることができ、具体的には、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等を挙げることができる。このエッジシール72の製造方法の一例について説明すると、上述した材料を溶融した状態にし、これを溶融押し出し法によって押し出し、さらに所望の開口部を設けることでエッジシール72を作製することができる。開口部の形成法は限定されないがトムソン刃などを使用した切り抜き加工などにより形成できる。なお、エッジシール72の表面には、必要に応じて電解質膜6や基材71との密着性を高めるための公知の易接着処理や、公知の接着剤層を設けてもよい。
【0041】
ここで、上記転写シート7の製造方法について説明するが、下記に記述した方法に限定されない。まず、基材71上に、触媒層73を形成する。具体的には上述した触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して触媒ペーストを作製する。そして、この触媒ペーストを、形成される触媒層が所望の膜厚、所望の形状になるよう、基材71上に塗工・乾燥して触媒層73を形成する。なお、所望の形状の開口部が形成されたマスクを介して塗工したり、パターン塗工を行うことで触媒層73を所望の形状にすることができる。必要に応じて離型層を介して各触媒ペーストを基材71上に塗工する。これにより基材71の触媒層73からの離型性を一層向上させることができる。また、触媒ペーストの塗工方法としては、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。触媒ペーストを塗工した後、所定の温度及び時間で乾燥することにより基材71上に触媒層73が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは10分〜1時間程度である。なお、上記触媒ペーストに使用される溶剤としては、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。このように触媒層73が形成された基材71上に、触媒層73と同じ形状の開口部が形成されたエッジシール72を接着させる。このとき、開口部内に触媒層73が収まるようにエッジシール72を基材71上に接着させる。なお、この接着はエッジシール72自体の粘着性によるものとすることができる。
【0042】
なお、触媒層73とエッジシール72の厚みはほぼ同じであることが好ましく、具体的にはエッジシール72の厚みを100%としたときにエッジシール72と触媒層73の厚みの差の割合が±20%以内であることが好ましく、±5%以内であることがより好ましい。触媒層73とエッジシール72との厚みをほぼ同じに揃えることにより、上述した転写シート7と電解質膜6とのホットプレスの工程において電解質膜6の膜やせやしわ発生を防止することができる。また、触媒層73とエッジシール72との間には隙間がないことが好ましい。触媒層73とエッジシール72の形成時の精度により隙間が生じる場合でもホットプレスによりエッジシール72が溶融して触媒層73と結着する程度であることが好ましく、具体的には隙間は約2mm以内であることが好ましく、更には約1mm以内であることがより好ましい。
【0043】
導電性多孔質基材9は、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層に供給するために多孔質の導電性基材から構成されたものであり、このような導電性多孔質基材9としては、公知であり、アノード(燃料極)、カソードを構成する各種の導電性多孔質基材を使用できる。このような導電性多孔質基材9としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス等が挙げられる。
【0044】
ガスケット11としては、熱プレスに耐えうる強度を保ち、かつ、外部に燃料及び酸化剤を漏出しない程度のガスバリア性を有しているものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートやテフロン(登録商標)シート、シリコンゴムシート等を例示することができる。
【0045】
セパレータ12としては、公知であり、燃料電池内の環境においても安定な導電性板であればよく、一般的には、カーボン板にガス流路を形成したものが用いられる。また、セパレータをステンレス等の金属により構成し、金属の表面にクロム、白金族金属又はその酸化物、導電性ポリマーなどの導電性材料からなる被膜を形成したものや、同様にセパレータを金属によって構成し、該金属の表面に銀、白金族の複合酸化物、窒化クロム等の材料によるメッキ処理を施したもの等も使用可能である。
【0046】
以上、本実施形態によれば、基材71上のエッジシール72と触媒層73とは互いに重なっていないため、この転写シート7と電解質膜6とを重ねて圧力を掛けても、電解質膜6に掛かる圧力は均一であり、電解質膜6が局所的に薄くなってしまうことを防止することができる。また、エッジシール72は開口部が形成されているため、このエッジシール72にテンションを掛けると、形状が捩れたり、局所的に延びてしまって変形してしまうなどといった問題がありエッジシール72を単体で取り扱うことは困難であるが、上記実施形態では、エッジシール72は基材71で支持されているため、その取り扱いを容易にすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態において作製した固体高分子形燃料電池は、長尺の固体高分子形燃料電池用部材がロール状に巻かれたものを用いているが、特にこれに限定されるものではなく、例えば枚葉シート状のものとすることもできる。この場合は、枚葉シート状の電解質膜6と2枚の転写シート7とを用意し、各転写シート7の触媒層73やエッジシール72が電解質膜6側を向くように、転写シート7、電解質膜6、転写シート7の順でこれらを重ね合わせる。そして、ホットプレス機によって上記実施形態と同様にホットプレスを行う。これ以降は、上記実施形態と同様の方法で固体高分子形燃料電池を作製することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、触媒層はカソード側とアノード側とを同じ大きさとしていたが、これを異なる大きさとすることもでき、この場合はアノード側の触媒層をカソード側の触媒層よりも大きくすることが好ましい。なお、この場合も、触媒層73とエッジシール72は隙間なく接している。このようにアノード側の触媒層を大きく形成することで、位置ずれなどが生じた場合でもカソード側の触媒層には電解質膜を介して確実にアノード側の触媒層が対向している状態とすることができる。このため電位によるカソード側の触媒層の腐食を防止することができる。また、電解質膜の劣化を防止することができる。また、エッジシールと触媒層は重ならず且つ隙間なく接しているので位置ずれなどが生じた場合でもカソードに供給されるO2がアノードに直接クロスリークすることがなくアノードでの過酸化水素の生成を有意に抑えることができるため電解質膜劣化を防止できる。
【0050】
また、上記実施形態では、転写シート7を作製する際に、基材71に触媒層73を形成してからエッジシール72を接着しているが、この逆であってもよい。すなわち、まず、基材71上に、開口部が形成されたエッジシール72を接着させ、次にこのエッジシール72の開口部を介して基材71上に触媒ペーストを塗工・乾燥して触媒層73を形成することによって転写シート7を作製してもよい。より具体的には、図6に示すように、剥離層741とマスク本体742とから構成されたマスク74を準備し(図6(a))、このマスク74にエッジシール72を接着させてマスク付きエッジシール75を作製する(図6(b))。そして、このマスク付きエッジシール75に開口部751を形成し(図6(c))、エッジシール72側に基材71を接着させる(図6(d))。そして、このマスク付きエッジシール75が接着した基材71に対して、触媒ペーストをマスク74側から塗工し、乾燥させた後(図6(e))、マスク74を剥離して転写シート7が完成する(図6(f))。なお、この触媒ペーストは、マスク74側から全体に塗工してもよいし、開口部751を狙ってパターン塗工を行うこともできる。また、その他にも、マスク74自体を使用せずに、基材71上に開口部が形成されたエッジシール72を形成し、このエッジシール72の開口部から露出した基材71上に、間欠塗工で触媒層73を形成することもできる。
【0051】
また、上記実施形態では、転写シート7は、触媒層73を長手方向に一列に並べて形成しているが、図7に示すように、複数列に並べて形成することもできる。
【0052】
また、上記実施形態では、加圧部4で加圧することで電解質膜6に転写シート7を仮着し、これを巻取部5にて一旦巻き取った後、ホットプレスを行うことにより電解質膜6に転写シート7のエッジシール72と触媒層73とを転写させているが、例えば、加圧部4においてホットプレスを行うことにより、電解質膜6に転写シート7のエッジシール72と触媒層73とを転写させることもできる。
【0053】
また、上記実施形態では、電解質膜6の両面に転写シート7を仮着させているが、電解質膜6の一方面のみに転写シート7を形成することもできる。
【0054】
また、上記実施形態では、電解質膜6は、第1駆動機構によって第1回転軸21を回転させることで送り出されるとともに、巻取部5の第3駆動機構によって第3回転軸51を回転させることで巻き取られていることによって搬送されているが、この電解質膜6の搬送方法はこれに限定されるものではない。例えば、第1駆動機構を省略して第1回転軸21を自由に回転するように構成し、第3駆動機構による第3回転軸51の回転による巻き取りのみによって電解質膜6を搬送するような構成とすることもできる。これと同様に、転写シート7の搬送も、第2駆動機構を省略して第2回転軸を自由に回転するように構成し、第3駆動機構による第3回転軸51の回転による巻き取りのみによって行うこともできる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
電解質膜6は、63×63mmの大きさに切断された膜厚53μmのNRE212CS
(Dupont社製)を使用した。
【0057】
次に、転写シート7を次の要領で作製した。まず、白金触媒担持カーボン(白金担持量:45.7wt%、田中貴金属社製、TEC10E50E)2gに、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、触媒ペーストを調製した。
【0058】
次に、基材71としてケイ素酸化物から成る蒸着層を設けたポリエステルフィルムを準備し、この基材71上に、50×50mmの開口部を持つポリエステルフィルムのマスクを載せた。そして、触媒層乾燥後の触媒層厚さが20μmとなるように上記触媒ペーストをマスクの開口部を介して基材71上に塗工、乾燥し、マスクを剥離して、基材71上に触媒層73を作製した。
【0059】
続いて、溶融押出し法により、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリプロピレンを20μmの厚さで押し出し、エッジシール72を形成した。このエッジシール72を63×63mmの大きさに切断し、その中央部に50×50mmの大きさの開口部を形成した。そして、エッジシール72を開口部内に触媒層73が収まるように基材71上に配置し、転写シート7を作製した。
【0060】
この転写シート7を、電解質膜6の両面それぞれに触媒層73及びエッジシール72が電解質膜6側を向くように配置し、各転写シート7の触媒層が電解質膜6を介して合致するように整列させた。そして、135℃、5.0MPa、150秒の条件で熱プレスすることで、電解質膜6の両面に触媒層73を形成し、エッジシール付き触媒層−電解質膜積層体10を作製した。
【0061】
さらに続いて、開口部から露出している触媒層73上に、導電性多孔質基材9として、50×50mmの大きさに切断されたカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−090、厚さ280μm)を積層し、エッジシール付き電極−電解質膜積層体20を形成した。
【0062】
(実施例2)
電解質膜6は、63×63mmの大きさに切断された膜厚53μmのNRE212CS(Dupont社製)を使用した。
【0063】
次に、転写シート7を次の要領で作製した。なお、転写シート7として、アノード用転写シート7aとカソード用転写シート7bの2種類を作製した。
【0064】
まず、アノード用転写シート7aについて説明する。基材71aとしてポリエステルフィルムを準備し、この基材71a上に50×50mmの開口部を持つポリエステルフィルムのマスクを載せた。そして、触媒層乾燥後の触媒層厚さが16μmとなるように上記実施例1と同じ触媒ペーストをマスクの開口部を介して基材71a上に塗工、乾燥し、マスクを剥離し、アノード触媒層73aを作製した。そして、溶融押出し法により、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリエチレンを20μmの厚さで押し出し、エッジシール72aを形成した。このエッジシール72aを63×63mmの大きさに切断し、その中央部に50×50mmの大きさの開口部を形成した。このエッジシール72aを開口部内に触媒層73aが収まるように基材71a上に接着させて、アノード用転写シート7aを作製した。
【0065】
続いて、カソード用転写シート7bを作製した。基材71bとしてポリエステルフィルムを準備し、この基材71b上に48×48mmの開口部を持つポリエステルフィルムのマスクを載せた。そして、触媒層乾燥後の触媒層厚さが16μmとなるように触媒ペーストをマスクの開口部を介して基材71b上に塗工、乾燥し、マスクを剥離し、カソード触媒層73bを作製した。また、アノード用転写シート7aのエッジシール72aと同様のエッジシール72bを63×63mmの大きさに切断し、その中央部に48×48mmの大きさの開口部を形成した。そして、エッジシール72bを開口部内に触媒層73bが収まるように基材71b上に接着させてカソード用転写シート7bを作製した。
【0066】
これらアノード用転写シート7a及びカソード用転写シート7bを電解質膜の両面それぞれに触媒層73が電解質膜6側を向くよう配置し、各転写シート7の触媒層73が電解質膜6を介して合致するように整列させた。そして、135℃、5.0MPa、150秒の条件で熱プレスすることで、電解質膜6の一方面にアノード触媒層73aを、他方面にカソード触媒層73bを形成し、エッジシール付き触媒層−電解質膜積層体10を作製した。なお、このエッジシール付き触媒層−電解質膜積層体は、アノード触媒層73aの方がカソード触媒層73bよりも大きく形成されている。
【0067】
さらに続いて、開口部から露出しているアノード触媒層73a上に、アノード用導電性多孔質基材9aとして、50×50mmの大きさに切断されたカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−090、厚さ280μm)を積層した。また、開口部から露出しているカソード触媒層73b上には、カソード用導電性多孔質基材9bとして、48×48mmの大きさに切断されたカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−090、厚さ280μm)を積層して、エッジシール付き電極−電解質膜積層体20を形成した。
【0068】
(実施例3)
電解質膜6として、ロール状に巻かれた幅63mm、長さ60m、膜厚53μmのNRE212CS(Dupont社製)を使用した。
【0069】
次に転写シート7を以下の要領で作製した。まず、図6に示すように、ケイ素酸化物からなる蒸着層741と、ポリエステルフィルムからなるマスク本体742とから構成されたマスク74を準備した(図6(a))。なお、このマスク74は幅63mm、長さ60mである。このマスク74の蒸着層741側に、不飽和カルボン酸グラフト変性ポリプロピレンを溶融押出し法により25μmの厚さのエッジシール72を形成した(図6(b))。そして、このマスク付きエッジシール75の幅方向中央において、長手方向に13mmの間隔dをあけて、50×50mmの大きさの開口部751を複数形成した(図6(c))。
次に、基材71として幅63mm×長さ60mのロール状に巻かれたポリエステルフィルムを準備し、上記マスク付エッジシール75のエッジシール72側が基材71と接合するようにロール加圧接合を行った(図6(d))。そして、実施例1と同じ要領で調整した触媒ペーストを、基材71上に接合されたマスク付きエッジシール75のマスク74側から乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工、乾燥し(図6(e))、その後、マスク74を剥がし、転写シート7を作製した(図6(f))。
【0070】
以上のように作製した転写シート7をロール状にし、図1に示すように、ロール状の転写シート7を転写シート供給部3の第2回転軸31にセットするとともに、電解質膜6を電解質膜供給部2の第1回転軸21にセットした。そして、第1駆動機構及び第2駆動機構によって第1及び第2回転軸21,31を回転させて電解質膜6と転写シート7とを巻出し、そして、各触媒層73の中心が合うように各転写シート7を配置し、ロールで送り出した。そして110度に熱した加圧ロール41で加熱加圧接合を行い、電解質膜6の両面に転写シート7を接着させ、固体高分子形燃料電池用部材8を作製した。このときの圧力は3MPaとした。
【0071】
続いて、上記で作製した長尺の固体高分子形燃料電池用部材8を、各触媒層73の間で63mm毎に切断し、枚葉シート状の固体高分子形燃料電池用部材8’を作製した。この枚葉シート状の固体高分子形燃料電池用部材8’を両面から135℃、5.0MPa、150秒の条件で熱プレスすることで、電解質膜6の両面にエッジシール72及び触媒層73を転写形成した。
【0072】
そして、この固体高分子形燃料電池用部材8’から基材71を剥離し、開口部から露出している触媒層73上に、導電性多孔質基材9として、50×50mmの大きさに切断されたカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−090、厚さ280μm)を積層し、エッジシール付き電極−電解質膜積層体20を形成した。
【0073】
(実施例4)
触媒ペーストの塗工方法が異なる以外は実施例3と同様の方法でエッジシール付き電極−電解質膜積層体20を形成した。なお、触媒ペーストは、基材71上に接合されたマスク付きエッジシール75のマスク74側から、開口部から露出する基材71上にのみ乾燥後の厚さが20μmとなるようにパターン塗工した。
【0074】
(実施例5)
電解質膜6として、ロール状に巻かれた幅63mm、長さ60m、膜厚53μmのNRE212CS(Dupont社製)を使用した。
【0075】
次に転写シート7を以下の要領で作製した。なお、転写シート7はアノード用転写シート7aとカソード用転写シート7bの2種類を作成した。
【0076】
まず、アノード用転写シート7aについて説明する。なお、このアノード用転写シート7aは、エッジシール72aの厚さが21μmである点、基材71aとしてマットポリエステルフィルム(ルミラーX44、東レ社製)を使用する点以外は、実施例3の転写シート7と同様に作製した。また、カソード用転写シート7bは、エッジシール72bの厚さが21μmである点、エッジシール72bの開口部の大きさ委が48×48mmである点、基材71bとしてマットポリエステルフィルム(ルミラーX44、東レ社製)を使用する点以外は、実施例3の転写シート7と同様に作製した。
【0077】
以上の電解質膜6と、転写シート7とから実施例3と同様にエッジシール付き電極−電解質膜積層体20を作製した。なお、カソード側のエッジシール72bの開口部の大きさが48×48mmであるため、カソード側の触媒層73bと導電性多孔質基材9bの大きさは48×48mmである。
【0078】
(比較例1)
エッジシールの開口部を60×60mmとした点、及び基材71上に接合されたマスク付きエッジシール75のマスク74側から実施例1と同じ要領で調整した触媒ペーストを触媒層の大きさが50×50mm、乾燥後の厚さが20μmとなるように間欠塗工により塗工、乾燥した点以外は実施例3と同様にしてエッジシール付き膜電極接合体を形成した。
【0079】
(評価方法)
実施例1〜5及び比較例1のエッジシール付き電極−電解質膜積層体について、ガスケット11及びセパレータ12を設置して固体高分子形燃料電池30をそれぞれ作製して負荷変動サイクル試験を実施した。このときの測定条件は、セル温度80℃、燃料利用率70%、酸化剤利用率40%、加湿温度50℃とした。また、負荷変動サイクル試験は、電流密度0.3A/cm2にて1分間発電した後、電流密度0.01A/cm2にて1分間発電するサイクルを繰返した。この負荷変動サイクル試験の結果、実施例1〜5の燃料電池セルは1500時間経過しても電圧が低下することはなかった。また、この負荷変動サイクル試験後に電解質膜を確認したところ、全ての実施例において電解質膜の破損は見られなかった。これに対して比較例1の固体高分子形燃料電池は300時間経過した段階で電圧が低下し、また、この電解質膜を確認したところ破損が確認された。
【符号の説明】
【0080】
1 固体高分子形燃料電池用部材の製造装置
2 電解質膜供給部
3 転写シート供給部
4 加圧部
6 電解質膜
7 転写シート
71 基材
72 エッジシール
73 触媒層
8 固体高分子形燃料電池用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成されており、開口部を有するエッジシールと、
前記開口部内において前記基材上に形成された触媒層と、
を備えた、転写シート
【請求項2】
長尺の基材と、
前記基材上に形成されており、前記基材の長さ方向に並ぶ複数の開口部を有するエッジシールと、
前記各開口部内において前記基材上に形成された触媒層と、
を備えた、転写シート。
【請求項3】
電解質膜と、
前記電解質膜の少なくとも一方面に接着された請求項1又は2に記載の転写シートと、を備え、
前記転写シートは、前記触媒層及びエッジシールが前記電解質膜に接着している、固体高分子形燃料電池用部材。
【請求項4】
電解質膜と、
前記電解質膜の両面に接着された請求項1又は2に記載の転写シートと、を備え、
前記各転写シートは、前記触媒層及びエッジシールが前記電解質膜に接着しており、
前記各転写シートは、その触媒層の大きさが互いに異なる、固体高分子形燃料電池用部材。
【請求項5】
電解質膜を供給する電解質膜供給工程と、
開口部を有するエッジシールが基材上に接着された転写シートであって、前記開口部内において前記基材上に触媒層が形成された前記転写シートを供給する転写シート供給工程と、
前記エッジシール及び触媒層が前記電解質膜と対向するように前記転写シートを前記電解質膜の少なくとも一方面上に配置し、前記転写シートのエッジシール及び触媒層が前記電解質膜に接着するよう圧力を掛けるプレス工程と、
を含む、固体高分子形燃料電池用部材の製造方法。
【請求項6】
長尺の電解質膜を供給する電解質膜供給工程と、
長手方向に並ぶ複数の開口部が形成された長尺のエッジシールが長尺の基材上に接着された転写シートであって、前記各開口部内において前記基材上に触媒層が形成された前記転写シートを供給する転写シート供給工程と、
前記エッジシール及び各触媒層が前記電解質膜に対向するように前記転写シートを前記電解質膜の少なくとも一方面上に配置し、前記転写シートのエッジシール及び触媒層が前記電解質膜に接着するよう圧力を掛けるプレス工程と、
を含む、固体高分子形燃料電池用部材の製造方法。
【請求項7】
前記電解質膜供給工程において、前記電解質膜を長手方向に搬送し、
前記転写シート供給工程において、前記転写シートを前記電解質膜と同一方向に搬送し、
前記プレス工程において、搬送中の前記電解質膜と転写シートとを一対のローラで挟むことにより前記転写シートを前記電解質膜に接着させる、請求項6に記載の固体高分子形燃料電池用部材の製造方法。
【請求項8】
前記転写シートが接着された長尺の電解質膜を、各開口部の間において切断する工程をさらに含む、請求項6又は7に記載の固体高分子形燃料電池用部材の製造方法。
【請求項9】
請求項5又は8に記載の固体高分子形燃料電池用部材の製造方法と、
前記転写基材の基材を剥離する工程と、
前記触媒層上に導電性多孔質基材を積層する工程と、
を含む、エッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のエッジシール付き電極−電解質膜積層体の製造方法と、
前記エッジシール上にガスケットを設置する工程と、
前記ガスケットが設置されたエッジシール付き電極−電解質膜積層体をセパレータによって両側から挟持する工程と、
を含む、固体高分子形燃料電池の製造方法。
【請求項11】
長尺の電解質膜を供給する電解質膜供給部と、
長手方向に並ぶ複数の開口部が形成された長尺のエッジシールが長尺の基材上に接着された転写シートであって、前記各開口部内において前記基材上に触媒層が形成された前記転写シートを供給する転写シート供給部と、
前記エッジシール及び各触媒層が前記電解質膜に対向するように前記転写シートを前記電解質膜の少なくとも一方面上に配置した状態で、前記電解質膜と転写シートとを挟んで圧力を掛ける加圧部と、
を備えた、固体高分子形燃料電池用部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14403(P2011−14403A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157991(P2009−157991)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】