説明

転写シート

【課題】 耐汚染性等の表面物性に優れたケイ素系有機無機複合高分子による表面保護層を、転写後の転写層上に密着良く積層する。
【解決手段】 転写シートSは、支持体シート1上に装飾層2が転写層3として積層されており、この装飾層のうち少なくとも支持体シートに接する層に、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いる。化粧材は、この転写シートで基材に装飾層を転写する。その後、ケイ素系有機無機複合高分子の表面保護層を塗工形成する。転写圧は、表面凹凸が大きければ固体粒子衝突圧、小さいか平坦ならば弾性体ローラによる加圧が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の外装及び内装材等の各種用途に用いる転写シート、及びそれを用いた化粧材の製造方法、またその製造方法で得るに適した化粧材に関する。特に、表面物性等に優れたケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を、転写後の転写層上に設ける場合に、密着良く形成できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転写法により各種の化粧材が製造されている。その場合、転写層として形成する装飾層には、そのバインダーの樹脂に有機高分子(例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アルキド樹脂等)を用いていた。例えば、装飾層を印刷形成する場合、これら有機高分子をバインダーの樹脂としたビヒクル中に、着色剤を含有させた着色インキを用いていた。
【0003】
また、転写後の転写層の表面物性(例えば、耐擦傷性等)を向上させる為に、転写層自体にその様な物性を有する樹脂を用いる事もあるが、転写適性との両立を図る必要があることから、転写層を一旦転写した後、その上に塗装等で表面保護層を形成する事もある。例えば、被転写面が凹凸面の場合には、転写層には凹凸面に追従して延びる凹凸追従性が要求されるが、表面保護層を転写形成し且つ表面物性の為に硬質塗膜とする場合等では、凹凸追従性と表面物性の両立にそれなりの工夫(例えば架橋硬化を転写時までは進めず、転写後に完全硬化させて硬質塗膜とする等)を要するからである。これに対して、転写後に表面保護層を形成すれば、表面保護層には転写適性を考慮する必要が無くなり、硬化反応の転写工程中制御が要らず製造も容易となり、且つ樹脂系の選択範囲は広くなり、より高性能の樹脂を使用する事も可能となる。
【0004】
そして、表面保護層を設ける場合、密着良く積層できる様にと、例えば特開平9−65946号公報では、表面保護層、及び下地樹脂層(装飾層と基材との間に設ける層)に、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子を用いる事を提案している。更に、同号公報では、装飾層のバインダーの樹脂も、表面保護層及び下地樹脂層と同種の樹脂として、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子を用いる事も提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−65946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ケイ素系の有機無機複合高分子は、表面保護層に優れた耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等を付与できる反面、該ケイ素系の高分子を表面保護層に用いた場合、表面保護層と装飾層との密着性が劣るという問題があった。すなわち、初期密着性は良好であっても、耐熱試験や耐水試験、及び耐候性試験後の二次密着性が不十分な水準となる。また、密着性向上を目的として、装飾層と表面保護層との間に、両者との密着が良いプライマ剤による中塗り層を設けると、工程数の増加によりコストアップ仕様となってしまい、好ましいことではなかった。
【0007】
一方、表面保護層の装飾層に対する密着性向上を目的として、装飾層のバインダーの樹脂にも、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子等を用いると、ケイ素系樹脂特有の撥液作用によって、装飾層の印刷適性が劣ることがあった。しかも、被転写面が凹凸面の場合に要求される凹凸に追従するための十分な伸び性(凹凸追従性)を転写層に付与できないことがあった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、表面物性等に優れたケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を、転写後の転写層上に設ける場合に、密着良く形成できると共に、装飾層の印刷適性及び凹凸追従性も良好な転写シートを提供する事である。また、表面物性及び密着性が良好となる化粧材と、その為の製造方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の転写シートでは、支持体シート上に、装飾層が転写層として積層された転写シートにおいて、装飾層のうち少なくとも支持体シートに接する層が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる構成とした。
【0010】
この様に、装飾層のうち支持体シートに接する層、すなわち転写後に最表面となる層を、特定の樹脂からなる層とすることで、転写後の転写層表面にケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を形成する場合に、前記加水分解性シリル基が装飾層の構成材料と表面保護層の構成材料とを結合させる橋渡しの役目を担い、表面保護層を密着良く形成できる様になる。その結果、該表面保護層が有する耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等の優れた表面物性を、化粧材等の転写製品に与えられる。しかも、転写後の転写層(装飾層)の表面に表面保護層を形成する前に、表面保護層の密着性を良くする為にプライマー剤による中塗り層の形成も不要となる。また、密着を良くする為の樹脂は熱可塑性のアクリルウレタン系樹脂である為に、撥液性も少なく装飾層の印刷適性も良好であり、その上、転写シートの凹凸追従性、耐アルカリ性を良くすることも可能となる。なお、装飾層のうち転写後に最表面となる層は、転写層となる装飾層の構成によって変わるが、例えば表面保護層に対するプライマー層として用いる剥離層等である。
【0011】
また、本発明の転写シートは、上記転写シートに於いて、上記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の加水分解性シリル基が尿素結合を介して樹脂骨格に結合している構成とした。
この様な構成とすることで、使用する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂は、例えば、分子中にイソシアネート基(又はアミノ基)を有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂に、アミノ基(又はイソシアネート基)とメトキシ基等の加水分解性シリル基とを有するシリル化合物(例えばシランカップリング剤)を反応させた樹脂として容易に得られる。
【0012】
また、本発明の化粧材は、基材上に、少なくとも表面側が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる装飾層と、該装飾層の表面にアルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を積層した構成とした。
この様な構成とすることで、化粧材は、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性、表面保護層と装飾層との密着性が、ともに優れたものとなる。また、装飾面が凹凸面でも可能となる。
【0013】
また、本発明の化粧材の別の形態では、基材上に、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる下地樹脂層と、該下地樹脂層の表面に、少なくとも表面側及び裏面側が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる装飾層と、該装飾層の表面に、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を、積層してなる構成とした。
この様な特定材料からなる下地樹脂層も設け且つ該層に接する側の装飾層も特定材料からなる層とした構成の化粧材とすることで、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性がより優れるとともに、表面保護層、装飾層等の基材上の各層の密着性がより優れたものとできる。また、装飾面が凹凸面でも可能となる。
【0014】
また、本発明の化粧材の製造方法は、転写方法として、圧又は熱圧を利用して被転写体となる基材上に、前記いずれかの本発明の転写シートの転写層を転写する様にした。
この様にすることで、転写後の転写層の表面に、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を設けて、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性を向上させる場合に、その表面保護層を転写層に密着良く形成できる。また、被転写面が凹凸面の場合でも対応可能である。
【0015】
また、本発明の化粧材の製造方法では、上記製造方法に於いて、転写圧として、固体粒子衝突圧を利用する様にした。
この結果、表面物性及び密着性に優れた表面保護層を転写後に形成できる上に、更に、弾性体ローラを用いる等の従来の転写法では不可能な様な凹凸面でも、容易に転写によって化粧材を製造できる。
【0016】
また、本発明の化粧材の製造方法では、前記製造方法に於いて、転写圧として、弾性体ローラの加圧を利用する様にした。
この結果、表面物性及び密着性に優れた表面保護層を転写後に形成できる上に、更に、基材の被転写面が比較的平坦な場合では平易に化粧材が製造できる。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明の転写シートによれば、転写後の転写層表面にケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を形成する場合に、密着良く形成できる。その結果、該表面保護層が有する耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等の優れた表面物性を、化粧材等の転写製品に与えられる。しかも、転写後の転写層(装飾層)の表面に表面保護層を形成する前に、表面保護層の密着性を良くする為の中塗り層の形成工程も不要となる。従って、コストダウンもできる。
(2)また、上記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の加水分解性シリル基が尿素結合を介して樹脂骨格に結合している構造の樹脂ならば、該樹脂は、例えば樹脂中にイソシアネート基を有する熱可塑性アクリル系ウレタン系樹脂と、アミノ基と加水分解性シリル基とを有するシリル化合物としてシランカップリング剤とを反応させれば容易に得られる。
【0018】
(3)本発明の化粧材によれば、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性と表面保護層の密着性がともに優れる。
(4)更に、基材上の装飾層の下側にもケイ素系有機無機複合高分子の下地樹脂層を設ければ、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性が優れるとともに、表面保護層等の基材上の各層の密着性をより優れたものとできる。また、密着性の耐水性もより良い。
【0019】
(5)本発明の化粧材の製造方法によれば、転写後の転写層の表面に、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を設けて、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性を向上させる場合に、その表面保護層を密着良く転写層上に形成できる。また、被転写面が凹凸面の場合でも対応可能である。
(6)更に、転写圧として固体粒子衝突圧を利用すれば、弾性体ローラを転写圧に用いる等の従来の転写法では不可能な様な凹凸面でも、前記の如き表面物性及び密着性に優れた化粧材を容易に製造できるので、高意匠の化粧材が得られる。
(7)或いは、転写圧として弾性体ローラによる加圧を利用すれば、基材の被転写面が平坦乃至は比較的平坦な場合に、前記の如き表面物性及び密着性に優れた化粧材を平易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の転写シートの一形態を例示する断面図。
【図2】本発明の化粧材の形態例を例示する断面図。
【図3】本発明の化粧材の製造方法の一形態を例示する説明図(断面図)。
【図4】本発明の化粧材の製造方法にて、転写圧に弾性体ローラによる加圧を利用する転写方法を示す概念図。
【図5】本発明の化粧材の製造方法にて、転写圧に固体粒子衝突圧を利用する転写方法を示す概念図。
【図6】固体粒子の噴出手段として、羽根車を用いた噴出器の一例を概念的に説明する斜視図。
【図7】図6の羽根車内部を説明する概念図。
【図8】吹出ノズルによる噴出器の一例を概念的に説明する断面図。
【図9】基材の一例を示す斜視図。
【図10】本発明の転写シートの別の形態例を例示する断面図。
【図11】本発明の化粧材の別の形態例を例示する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の転写シート、化粧材、及び化粧材の製造方法について、実施の形態を説明する。
【0022】
転写シート
先ず、図1は本発明の転写シートSの一形態を例示する断面図である。図1に示す如く、本発明の転写シートSは、支持体シート1上に、装飾層2が転写層3として積層され、この装飾層2のうち少なくとも支持体シート1に接する層を、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とした転写シートである。そして、図1に例示する形態では、転写層3となる装飾層2は、支持体シート1に接する側がプライマー層4、他方の側が装飾主体層5の2層構成からなる。装飾主体層5は、装飾層の装飾目的に対してそれ無くしては装飾層が装飾層となり得ない最低限必要な必須の層であり、例えば絵柄による装飾目的に対して絵柄を印刷形成した絵柄層等である。そして、本発明の転写シートSでは、図1の場合では、少なくともこのプライマー層4に上記特定材料からなる樹脂を用いる。なお、このプライマー層4は、支持体シート1に接する層であるので、剥離層とも呼べる。しかし、この剥離層は転写後の転写層上に表面保護層を形成する場合に、表面保護層と装飾層との密着性を向上する目的で形成されるので、プライマー層とここでは呼ぶことにする。なお、図示はしないが、装飾層2は装飾主体層5のみの構成の形態もあり得る。また、図1の形態の場合、装飾主体層5は支持体シート1に接しないので、装飾主体層5もプライマー層4同様に特定材料からなる樹脂の層としても良いが、他の樹脂等のその他材料を用いた層(例えば金属薄膜層等)としても良い。
【0023】
〔支持体シート〕
支持体シート1としては、転写層と剥離性が有り、また基材の被転写面が凹凸である場合には更に、凹凸への追従性を有するもので有れば、従来公知のもので良く特に制限は無い。従って、被転写面が平面或いは二次元的凹凸表面の場合には、延伸性が無い紙等でも良いが、三次元的凹凸表面の場合には、少なくとも転写時には延伸性の有る支持体シートを用いる。延伸性のある支持体シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂フィルム(シート)を用いる。また、これら樹脂フィルムは、低延伸又は無延伸のものが延伸性の点で好ましい。また、支持体シートはこれらの単層又は異種材料からなる複層構成としても良い。例えば、被転写面が平面的な場合には、上質紙にポリプロピレンを積層した構成の支持体シートは転写性に優れ且つ安価である点で好ましい支持体シートの一つである。また、被転写面が凹凸面の場合にも適用できるものとして、厚み50〜120μmのポリプロピレン系シートは好ましい支持体シートの一つである。なお、支持体シートの厚みは、通常は20〜200μm程度である。
【0024】
なお、支持体シートには必要に応じ、転写層側に転写層との剥離性を向上させる為、支持体シートの構成要素として離型層を設けても良い。この離型層は支持体シートを剥離時に、支持体シートの一部として転写層から剥離除去される。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。例えば上記した上質紙にポリプロピレンを離型層として積層した支持体シートである。
【0025】
また、本発明の転写シートでは、転写層となる装飾層のうちプライマー層等の支持体シートに接する層は、支持体シートとの剥離性を調整する為の剥離層としても兼用できる場合もあるが、装飾層のうち支持体シートに接する層は表面保護層との密着性向上を最低限の目的として有する層あるので、支持体シートについて、その転写層側面の剥離性を濡れ指数等で調整するのも好ましい。濡れ性が低いと剥離力が小さくなり、濡れ性が高いと剥離力は大きくなる。また、支持体シートに、装飾層を転写層として印刷(或いは塗工)形成するときの印刷(或いは塗工)適性等も調整できる。例えば、濡れ指数を35以下とするのが良い。
【0026】
〔装飾層〕
転写シートに於いて転写層3として形成される装飾層2は、装飾層のうち少なくとも支持体シートに接する層(すなわち、転写後は最表面となって表面保護層と接する層)が、分子中に加水分解性シリル基を有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とする。
【0027】
この装飾層2としては、例えば、絵柄等を表現する為の絵柄層等がある。また、本発明で言う装飾とは、例えば導電性、磁性等の各種機能を付与することも包含する。したがって、装飾層としては、導電層、磁性体層等の機能付与層でも良い。なお、絵柄層や機能付与層は、装飾層の装飾目的に対して、それなくしては装飾層が装飾層となり得ない最低限必要な必須の層であり、これらを「装飾主体層」と本発明では呼ぶことにする。一方、装飾層には、必須では無く必要に応じ適宜設ける層(例えばプライマー層、接着剤層等)もある。そして、これら装飾層のうち、少なくとも支持体シートに接する層は上記特定材料からなる層とする。
【0028】
なお、前記の加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の一例としては、例えば、アクリルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、末端や側鎖にイソシアネート基を有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を先ず合成し、次にこの樹脂に対して、アルコキシ基等の加水分解性シリル基と共にアミノ基等を分子中に有するシリル化合物を反応させると、前記イソシアネート基と上記シリル化合物のアミノ基とが反応して尿素結合を生じ、この尿素結合を介して加水分解性シリル基が樹脂骨格に導入された構造で、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂が得られる。なお、前記シリル化合物は、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のいわゆるシランカップリング剤を使用することができる。
【0029】
ここで、加水分解性シリル基とは、加水分解性のシリル基であり、例えば、一般式(R13-m −Si(R2m − で表される基である。但し、式中、R1 は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、置換アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等の加水分解性の基であり、R2 は、アルキル基、アリール基、アラルキル基等の一価の有機基である。mは0〜2の整数である。
【0030】
この様な加水分解性シリル基の具体例としては、例えば、アルコキシシリル基、ハロシリル基、ヒドロシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシシリル基、イミノオキシシリル基、アルケニルオキシシリル基等が挙げられる。
【0031】
上記の様な加水分解性シリル基を、熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の分子に持たせる方法は、特に限定は無い。例えば、前述した様な、先ず樹脂側にイソシアネート基を導入してから、のイソシアネート基に対して、アミノ基と加水分解性シリル基とを有するシリル化合物をそのアミノ基で反応させて、最終的に加水分解性シリル基を樹脂骨格に導入する方法である。この方法によれば、シリル化合物として、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のいわゆる市販のシランカップリング剤を使用して容易に目的の樹脂を得ることができる。この方法の他にも、逆に、樹脂側はアミノ基として、シリル化合物側をイソシアネート基としても良い。また、シリル化合物側はイソシアネート基だが、樹脂側は水酸基として、イソシアネート基と水酸基とを反応させてウレタン結合を介して、加水分解性シリル基を樹脂骨格に導入する方法でも良い。また、アクリルウレタン系樹脂自体の合成時に、アクリル系モノマー等と共に加水分解性シリル基を有するアクリレート等のビニル系モノマー(例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)を共重合させて加水分解性シリル基を有するアクリルポリオールとして、これをポリイソシアネートと反応させて、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂とする方法等でも良い。
【0032】
なお、アクリルウレタン系樹脂にイソシアネート基(又は水酸基)を持たせるには、アクリルポリオールとポリイソシアネートとの反応時にポリイソシアネート(又はアクリルポリオール)を過剰配合して、ウレタン化反応の残留基として、未反応のイソシアネート基(又は水酸基)を残存させれば良い。なおもちろんの事、上記反応で得るものは熱可塑性樹脂であるので、2官能化合物と3官能化合物との反応等の様に架橋硬化する様な、ポリオールとポリイソシアネートとの組み合わせは使用しない。また、その組み合わせを使用したとしても、架橋しない程度に止める。
【0033】
また、アクリルウレタン系樹脂にアミノ基を持たせるには、例えば、イソシアネート基を持たせたアクリルウレタン系樹脂の該イソシアネート基に、更にジアミン等を反応させれば良い。
【0034】
この様に、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂は、架橋構造を持たないアクリルウレタン系樹脂であり、通常その骨格構造は直線状であるが、枝分かれした構造でも良い。
【0035】
なお、上記熱可塑性アクリルウレタン樹脂は、加水分解性シリル基を分子中に有するので、加水分解性シリル基を反応させない状態ではもちろん熱可塑性を呈し熱可塑性樹脂であるが、加水分解性シリル基は反応させて架橋硬化反応を生じさせる事ができるので、この硬化反応性に着目すれば、もちろん硬化性樹脂と言える。しかし、本発明では、少なくとも転写シートの段階に於いては硬化反応前の熱可塑性状態であるので、こちらに注目して「熱可塑性」アクリルウレタン樹脂と呼ぶ。
【0036】
また、加水分解性シリル基を分子中に導入する為に使用し得る、加水分解性シリル基を有するシリル化合物としては、例えば、加水分解性シリル基として例えばアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基等を有すると共に、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基の反応性官能基を有する化合物が挙げられる。この様な加水分解性シリル化合物としては、いわゆるシランカップリング剤を使用できる。
【0037】
なお、シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどがある。これらは、樹脂側に例えばイソシアネート基を先ず導入しておき、これと反応させれば良い。
【0038】
また、前記アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と、更に必要に応じ、スチレン単量体等とを共重合させて得られるもの等が使用できる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。
【0039】
また、前記ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネートとして、(1)芳香族ジイソシアネート〔例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m−或いはp−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等〕、(2)脂肪族ジイソシアネート〔例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等〕、(3)脂環式ジイソシアネート〔例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等〕等が使用される。ポリイソシアネートは単独使用又は2種以上使用される。なお、良好な耐候性を与える点では、脂肪族乃至は脂環式イソシアネートが好ましい。或いは、これらのイソシアネートの多量体、又は付加体を用いても良い。
【0040】
また、熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の一具体例として、ポリオール成分にはポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートからなるウレタン部分と、側鎖と末端に水酸基を有するアクリル部分とのブロック共重合体で平均分子量が25,000程度のポリオールを使用し、イソシアネート成分には、水添MDIを使用してイソシアネート基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂に対して、アミノ基と加水分解性シリル基とを有するシリル化合物を反応させて得られる、加水分解性シリル基を導入した熱可塑性アクリルウレタン系樹脂等も好ましい。
【0041】
なお、ポリイソシアネートの反応させるポリオール成分としては、物性調整の為の副成分の範囲内で、アクリルポリオール以外のポリオール、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、シリコーンポリオール等を用いても良い。
【0042】
なお、熱可塑性アクリルウレタン系樹脂分子が有する加水分解性シリル基の数は、最低限1個であり、分子両末端に各1個有すれば2個であり、これら更に側鎖にも有すれば3個以上となる。1分子中の加水分解性シリル基の数は、樹脂の分子量、要求物性等に応じて適宜な値の物を使用すれば良い。
【0043】
そして、加水分解性シリル基を分子中に有する特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を、装飾層に使用することで、装飾層を熱可塑性として、凹凸面に対しても伸びて追従する性質を装飾層に付与でき、凹凸面への転写にも対応可能とできる他、耐アルカリ性を良くすることも可能となる。
また、該特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を、装飾層の支持体シートに接する層、すなわち、転写後の最表面層、に使用することで、転写後の転写層上に形成する表面保護層として、ケイ素系有機無機複合高分子を使用した場合に、表面保護層を密着良く形成できる事になる。それは、前記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂が有する加水分解性シリル基を、表面保護層のケイ素系有機無機複合高分子の水酸基との脱水反応によって結合させることができるからである(なお、もちろんだが、加水分解性シリル基が例えばメトキシ基ならば、それは脱アルコール反応である)。したがって、転写後の装飾層上に表面保護層を密着良く積層できる。
【0044】
(装飾層の層構成)
次に、装飾層の構成層について説明する。先ず、装飾主体層5は、装飾層2として必須の層である。装飾主体層5が支持体シートに接する層となる場合には、もちろん、上記特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とする。しかし、支持体シート1と装飾主体層5との間にプライマー層4(図1参照)等が介在する構成の装飾層2の構成に於いては、装飾主体層は支持体シートに接触せず、装飾主体層の内容としては本発明では特別の制約は無く、転写シートに於ける従来公知の絵柄層等からなる装飾主体層を用途に応じて採用すれば良い。
【0045】
(装飾主体層)
装飾主体層5の代表的なものは、前述の如く、絵柄の意匠表現の為に印刷形成した絵柄層である。この絵柄層を印刷形成する場合には、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなるインキが使用される。そして、装飾主体層(絵柄層)を支持体シートに接する層として形成する場合には、このバインダーとして用いる樹脂に、前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いる。その為、アルコキシシランの加水分解縮合物やシリル基含有ビニル系樹脂等の従来使用されていたケイ素系有機無機複合高分子に比べて撥液性も少なく、通常の印刷(乃至は塗工)法で欠点の無い印刷(乃至は塗工)が可能である。
また、上記着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドン、イソインドリノン、フタロシアニンブルー等の有機顔料、アルミニウム箔粉、二酸化チタン被覆雲母の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等の公知の着色剤を用いることができる。
【0046】
また、絵柄層の絵柄は任意であり、用途に応じて、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベタ等を用いる。
【0047】
なお、装飾主体層としては、意匠表現以外に、例えば、磁性体層、蛍光体層、導電層等の各種機能を付与する為の機能付与層でも良い。例えば、導電層には黒鉛や銀等の粉末又は箔粉からなる公知の導電剤を、バインダーの樹脂中に含有させたりすれば良い。また、これら装飾主体層は、意匠表現用の絵柄層と兼用させる場合もある。
【0048】
この様に、装飾主体層はバインダーの樹脂中に着色剤や各種機能付与の為の材料を含有させ、且つ装飾主体層を支持体シートに接する層とする場合には、バインダーの樹脂として、前述した特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を使用することになる。
一方、(バインダーの樹脂を使用する場合に於いて)装飾主体層を支持体シートに接しない層として形成する場合では、バインダーの樹脂には、該特定の樹脂を使用しなくても良い。従来公知の樹脂から適宜選択すれば良い。例えば、シランカップリング剤を添加しないで用いる熱可塑性アクリルウレタン樹脂、或いは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を用いる。
【0049】
但し、いずれにしろ装飾層のうち支持体シートに接する層には、前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂が使用されるので、該支持体シートに接する層が例えばプライマー層等で装飾主体層と接する場合には、装飾主体層には前述熱可塑性アクリルウレタン系樹脂と同類の、(加水分解性シリル基の無い)アクリルウレタン系樹脂、或いは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等は、装飾主体層と前記プライマー層等の支持体シートに接する層との層間密着力の点で好ましい樹脂である。これらの中でも、特にアクリルウレタン系樹脂は他の樹脂よりも特に同一系統の樹脂である為に層間密着性が得易い点で、より好ましい。なお、これら樹脂等のバインダーに用いる樹脂は、基本的には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂どちらでも良い。但し、凹凸面転写に於ける凹凸追従性、使い易さの点では、熱可塑性樹脂が好ましい。(もちろん、硬化性樹脂でも、凹凸面転写用途では、硬化が進行していても、転写シートを被転写体に圧接時点では、所望の凹凸追従性が確保できる程度の半硬化、或いは未硬化状態で使用して、圧接後に完全硬化させる等の工夫をすれば、凹凸追従性は十分に確保できる。)
【0050】
例えば、熱可塑性ウレタン樹脂としては、アクリルウレタン系樹脂の他に、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等が使用できる。
【0051】
以上、バインダーとして樹脂を用いた装飾主体層の場合は、その形成は、従来公知の印刷法や塗工法、或いは手描き等の任意の形成手段で形成すれば良い。例えば、印刷は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等によれば良い。
【0052】
なお、機能付与層や絵柄層等の装飾主体層が支持体シートに接しない場合は、バインダー樹脂を使用しない装飾主体層でも良い。例えば、導電体層、磁性体層等の機能付与層や絵柄層として金属薄膜層等も使用できる。金属薄膜層は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、コバルト、ニッケル、鉄等の金属を公知の蒸着法等を用いて部分的或いは全面に形成される。
【0053】
(プライマー層、接着剤層)
次に、装飾主体層以外の装飾層の例として、プライマー層と接着剤層を説明する。
【0054】
プライマー層4は、転写層3とする装飾層2のうち常に支持体シートに接する層として形成される層であるので、いわゆる剥離層に類似しているが、このプライマー層はその第一の目的が、転写後の転写層上に設ける表面保護層の密着性向上という易接着目的であり、この為に、本発明ではプライマー層と呼ぶ。もちろん、プライマー層は、転写シートに於ける従来の剥離層としての機能を兼用させた層としても良い。例えば、その機能とは、支持体シートと転写層との剥離性を適度なものとする為の剥離性の調整等である。
そして、このプライマー層4は、常に支持体シートに接する装飾層として形成されるので、このプライマー層4には前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いる。
【0055】
なお、プライマー層の形成は、ロールコート等の塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成方法で形成すれば良い。
【0056】
なお、プライマー層には、表面保護層を形成時の後塗装適性の向上、箔切れ性の向上、或いはその密着性をより向上させる為に、必要に応じ適宜、体質顔料を含有させても良い。体質顔料としては具体的には、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、アルミナ(α−アルミナ等)、タルク、クレー等の無機質体質顔料からなる粒径0.1〜10μm程度の粉末を使用すると良い。粉末の形状は、球形、多角形、不定形、鱗片形等である。なかでも、後塗装による表面保護層とプライマー層との(楔効果による)密着性向上の点で、硫酸バリウムが好ましい。体質顔料の添加量は、質量基準で樹脂100部に対して5〜100部の範囲で使用する。添加量が100部を超えると転写適性(剥離性、凹凸追従性)が低下し、5部未満では表面保護層との密着性向上効果を得難い。
【0057】
接着剤層は、転写層となる装飾層において、支持体シートに最も遠い層、すなわち、支持体シートの反対側の最表面として形成する層で、転写層を被転写体に接着させる為に設ける層である。また、装飾層を被転写体等の基材に形成して化粧材等とした状態では、装飾層の裏面側となる層でもある。
この接着剤層には、熱可塑性アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の公知の樹脂を使用すれば良い。なお、接着剤層は、ロールコート等の塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成方法で形成すれば良い。
【0058】
なお、被転写体となる基材側に、後述する如く予め転写層と接する様に、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子を用いた下地樹脂層を設けてから装飾層を転写層として転写する場合には、前述表面保護層と装飾層の場合と同様に、前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を、装飾層のうち下地樹脂層に接する側(化粧材に於いて裏面側)にも用いた装飾層(後述図2(B)の装飾層2Aに該当)とするのが、下地樹脂層と装飾層との密着性向上の点で好ましい。また、このことは、接着剤層を構成要素として持たない装飾層の場合でも同様である。例えば、装飾主体層として形成する全ベタ層が下地樹脂層と接する場合には、この全ベタ層に前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いるのが密着性向上の点で好ましい。なお、図10に例示の如く、装飾主体層5として全ベタ層5Bを用いる場合、全ベタ層5Bに柄パターンを表現する柄パターン層5Aを併用する事も多い。この場合、柄パターン層3Aは前記下地樹脂層に接しない層となるので、もちろん他の樹脂を使用するのも良い。
【0059】
なお、装飾層としては、プライマー層4、装飾主体層5、接着剤層の他に、これら層間に介在して層間密着力を向上させる接着強化層(一般にはこれもプライマー層と呼ぶことがある)等を更に必要に応じ適宜設けても良い。
【0060】
化粧材
先ず、図2に本発明の化粧材の基本的な形態例を示す。
図2(A)の断面図で例示する化粧材Dは、基材B上に装飾層2と該装飾層2の表面に(すなわち装飾層に接する様に)表面保護層6が積層され、且つ装飾層2は少なくとも表面側が加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層として、表面保護層6はアルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる層とした構成の化粧材である。
一方、図2(B)の断面図で例示する化粧材Dは、基材B上に下地樹脂層7と、該下地樹脂層7の表面に装飾層2Aと、該装飾層の表面に表面保護層6が積層され、且つ下地樹脂層7及び表面保護層6はアルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる層として、装飾層2Aは少なくとも表面側及び裏面側が加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とした構成の化粧材である。
【0061】
以上の様な構成の本発明の化粧材は、その装飾層2或いは2Aの形成に、好ましくは、前述した本発明の転写シートを利用することで得る事ができる。なお、基材B上の各層の形成方法は限定されるものではないが、表面保護層6及び下地樹脂層7の形成は、通常は転写以外の方法、例えば塗工法で形成する。もちろん、本発明の化粧材に於いては、その装飾層2或いは2Aも転写以外の方法、例えば印刷法や塗工法等で形成することも可能である。特に、形成面が平面の場合には、なおさらである。
【0062】
以下、更に各層について説明する。
【0063】
〔表面保護層〕
表面保護層6は、ケイ(珪)素系有機無機複合高分子から構成する。ケイ素系有機無機複合高分子としては、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合物、シリル基含有ビニル系樹脂等のケイ素樹脂を使用できる。表面保護層に、該高分子を使用することで、耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等を優れたものにできる上、装飾層2或いは2Aとの密着性も良好にできる。装飾層2或いは2Aは、少なくとも表面側が加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層となっており、該加水分解性シリル基がこれら両層の分子的結合の橋渡しの役目を担い、その結果、表面保護層6と装飾層2或いは2Aとの密着が良くなるからである。
【0064】
なお、前記加水分解縮合物の基になるアルコキシシランは、一般式:Rn Si(OR′)4-n で表される化合物であり、nは0〜2の整数である。このうち、nが0又は1であるアルコキシシランを主成分とするものが、耐擦傷性、耐候性に優れ好ましい。また、Rは炭素数1〜8、好ましくは1〜3の有機基であり、R′は炭素数1〜5、好ましくは1〜4の有機基である。そして、これらアルコキシシランの加水分解縮合物は、例えば、アルコール等の溶液中で必要量の水及び酸触媒を用いてアルコキシシランを反応させれば得られる。
【0065】
また、前記シリル基含有ビニル系樹脂は、一般式:Xn −Si(R13-n −CHR2 −で表されるシリル基を少なくとも1つ有するビニル系樹脂である。Xは、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ケトキシメート、アミノ、酸アミド、アミドオキシ、メルカプト、アルケニルオキシ、フェノキシ等の加水分解性基である。また、R1 、及びR2 はそれぞれ、水素、炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基である。nは1〜3の整数である。また、このシリル基は、加水分解性基Xを1以上有するので、加水分解性シリル基でもある。
なお、ビニル系樹脂は、ビニル系モノマーの重合物であり、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等である。
【0066】
そして、表面保護層は、上記特定高分子を含む塗液を塗工すれば形成できる。塗工はスプレー塗装、カーテンコート、軟質ゴムローラやスポンジローラを使用したロールコート等の公知の塗工法で行えば良い。表面保護層の厚さは通常1〜100μm程度である。
なお、該塗液中には、用途、要求物性に応じて、ベンゾトリアゾール、超微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、シリカ、球状α−アルミナ、鱗片状α−アルミナ等の粒子からなる減摩剤、着色顔料、体質顔料、滑剤、防黴剤、抗菌剤等を添加しても良い。
【0067】
〔下地樹脂層〕
下地樹脂層7は、ケイ素系有機無機複合高分子から構成する。該ケイ素系有機無機複合高分子としては、上記した表面保護層で述べた如き高分子を使用できる。したがって、ここでは該高分子に関する更なる説明は省略する。そして、下地樹脂層に該高分子を使用することで、その上に転写等によって形成する装飾層2Aとして、その裏面側(下地樹脂層に面する側)を加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた装飾層とする場合に、該加水分解性シリル基がこれら両層の分子的結合の橋渡しの役目を担い、その結果、これら両層を密着良く積層できる。
そして、下地樹脂層は、上記特定高分子を含む塗液を塗工すれば形成できる。塗工はスプレー塗装、カーテンコート、軟質ゴムローラやスポンジローラを使用したロールコート等の公知の塗工法で行えば良い。下地樹脂層の厚さは、通常5〜100μm程度である。
【0068】
〔化粧材に於ける装飾層〕
化粧材に於ける装飾層2或いは2Aは、塗工等の転写以外の方法で形成しても良いが、好適には前述した本発明の転写シートによって形成する。化粧材に於いて少なくとも表面側(基材から遠い側)を加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン樹脂を用いた層としたのが装飾層2であり、裏面側(基材に近い側)にも該樹脂を用いた層としたのが装飾層2Aである。なお、化粧材に於ける装飾層の表面側は転写シートに於ける装飾層の支持体シートに接する側であり、化粧材に於ける装飾層の裏面側は転写シートに於ける装飾層の支持体シートに遠い側である。このことを踏まえて、前述の本発明の転写シートを使用して、装飾層2或いは2Aを転写形成すれば良い。
【0069】
〔基材〕
なお、基材Bとしては特に限定は無い。例えば、材質としては、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の基材を使用できる。具体的には、ケイ酸カルシウム、中空押し出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、石綿セメント、木片セメント、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、杉、檜、樫、ラワン、チーク等の各種樹種からなる木材単板や木材合板、パーティクルボード、集成材、木質中密度繊維板(MDF)等の木質材料、また、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の無機質材料、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料等である。
【0070】
また、基材の形状は、その化粧面に転写層等として装飾層を形成できれば、平板や屈曲した板、柱状物、成形品等の立体物等と任意である。例えば、基材は全体として(包絡面形状が)平板状の板材の他、断面が円弧状に凸又は凹に1方向に湾曲した二次元的凹凸を有する基材等でも良い。転写形成する場合でも、化粧面としては、平面以外にも、転写シート及び採用する転写法が、凹凸追従性(形状追従性)の有るものであれば、凹凸表面でも良い。特に転写法に後述する固体粒子衝突圧を用いる場合には、なおさらである。表面凹凸形状は任意だが、例えば、複数のタイルや煉瓦を平面に配置した場合の目地、花崗岩の劈開面、砂目等の石材表面の凹凸、木材羽目板、浮造木目等の木材板表面凹凸、簓の無い下見張板の表面凹凸、リシン調、スタッコ調等の吹付塗装面の凹凸等である。
【0071】
〔下塗り層〕
なお、基材の化粧面には、必要に応じて適宜、下塗り層(べースコート層)を設けておいても良い。下塗り層は、基材(セメント等のアルカリ性基材)からのアルカリ成分溶出の防止(所謂シーラー)したり、或いは、基材(無機系基材等)の表面の凹凸を埋めて表面を平滑にし、転写性等を向上させて転写層の転写に適した表面性を付与したりする(所謂目止め)、等の目的で設ける。また、下塗り層を着色不透明とする事により隠蔽性を持たせて、基材自体の色や模様が絵柄層等の装飾層の模様に悪影響するのを防ぐ(所謂下地塗装)目的でも使用できる。なお、これらの場合、下塗り層の機能は、接着剤層に兼用させて接着剤層のみで足らす事もできる。下塗り層は用途により1層又は多層で用いる。
下塗り層は、基材の材質や表面状態及びその目的に応じて、樹脂等からなる従来公知の塗液を塗工し形成すれば良い。例えば、該樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液湿気硬化型ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられる。特に、基材が、セメント等のアルカリ性基材の場合は、耐アルカリ性に優れた樹脂が好ましい。耐アルカリ性に優れた樹脂としては、例えば、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。
【0072】
また、前述下地用樹脂層で、この下塗り層の機能を兼用させても良い。もちろん、下地用樹脂層と下塗り層の両方を別々に形成する場合は、この下塗り層は下地用樹脂層形成前に基材に形成する。
【0073】
なお、下塗り層の形成方法は、スプレーコート、フローコート等の塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成方法の中から、基材の表面凹凸形状等により適宜選択する。
【0074】
〔接着剤層〕
なお、下地樹脂層7を設けない図2(A)の形態に於いて、装飾層2と基材Bとの所望の接着性が期待できない場合では、図3(B)で例示する化粧材Dの如く、基材Bと装飾層2との間に接着剤層Aを設けても良い。特に被転写面が凹凸面で転写抜けが起きやすい様な場合には、この接着剤層Aは、図3(A)で示す如く、予め基材B側に形成しておくと接着の点で効果的である。これに於ける接着剤層Aに使用する接着剤としては、特に制限は無く用途に応じて、公知の接着剤の中から適宜選択すれば良い。例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂による従来公知の感熱溶融型接着剤、2液硬化型ウレタン樹脂接着剤やウレタン系湿気硬化型接着剤等の硬化化接着剤、或いはゴム系接着剤等である。また、接着剤は有機溶剤系、水系、ホットメルト系等、いずれでも良い。また、耐水性を考慮すると、硬化型接着剤等が好ましい。
なお、基材上に接着剤を施して接着剤層Aを基材上に形成するには、スプレーコート、フローコート等の塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成方法の中から、基材の表面凹凸形状等によって適宜選択すれば良い。
【0075】
なお、この接着剤層Aにケイ素系有機無機複合高分子を使用した層が、下地樹脂層7である。
【0076】
化粧材の製造方法
本発明の化粧材の製造方法では、前述した本発明の転写シートを用いて被転写体となる基材に装飾層を転写層として転写移行させて、化粧材を製造する。そして、本発明の化粧材の製造方法の一つ形態では、図3(A)の断面図にその一例を示す如く、先ず、支持体シート1に前述特定の装飾層2を転写層3として積層した転写シートSを基材B(同図の場合は予め接着剤層Aが被転写面に施してある)に圧接後、その支持体シート1を剥離して、装飾層2を転写層3として基材Bに転写する。このままで化粧材としても良いが、好ましくはその後更に、転写後の転写層3である装飾層2の表面に、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層6を設けて表面保護層付きの化粧材Dを得る〔図3(B)〕。なお、基材B上に予め設けた接着剤層Aは、装飾層2や基材B自体に接着性があれば省略できる。
【0077】
この様な製造方法によって、耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性に優れる表面保護層と装飾層とが密着の良い化粧材を容易に製造できる。また、被転写面が凹凸面の場合でも対応可能な製造方法となる。
【0078】
なお、上記接着剤層Aとして、その樹脂成分にケイ素系有機無機複合高分子を使用すれば下地樹脂層7となり(両層は使用する樹脂の違いに応じて呼称を使い分けている)、転写シートの装飾層2を、該下地樹脂層に接する側も分子中に加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とすれば(装飾層2Aとなる)、図2(B)の形態の化粧材を得ることができる。
【0079】
この様にすれば、耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性に優れる表面保護層と装飾層及び基材とが密着の良い化粧材を容易に製造できる。また、被転写面が凹凸面の場合でも対応可能な製造方法となる。なお、この方法は、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層に対する密着性向上技術を、該高分子の良好なる耐水性を活かして、装飾層である転写層と基材との密着性及びその耐水性向上に応用した事例である。
【0080】
〔転写方法〕
本発明の化粧材の製造方法で採用する転写方法としては、基本的には特に制限は無い。用途に応じ、例えば次の様な従来公知の転写方法を採用すれば良い。その場合、必要に応じて、熱、圧、或いは熱圧(熱と圧の併用)の作用も利用する。特に、基材の被転写面が三次元凹凸形状の場合には、圧力、より好ましくは熱圧の利用が好ましい。
そして、以下に例示する各種転写方法のなかでも、本発明の化粧材の製造方法に於ける転写圧の押圧方法として、特に採用するのは、(1)の弾性体ローラによる転写方法と、(5)の固体粒子衝突圧を利用する転写方法である。(1)は所謂ローラ転写方法であり平易に転写でき、また弾性体ローラを軟質とすることで、基材に多少の表面凹凸が有っても転写できる方法として好ましい。一方、(5)は平面はもちろん、弾性体ローラ等によっては、従来は不可能であった大きな表面凹凸にも転写できる方法として好ましい。
【0081】
(1)弾性体ローラによる転写方法:弾性体ローラは、例えば、特開平6−99550号公報、特開平8−286599号公報等に記載の様な従来公知のローラ転写法で用いる弾性体ローラで良い。
図4は、弾性体ローラによる転写圧を加圧をして転写する様子を概念的に説明する概念図である。なお、同図は転写圧押圧方法自体の概念図であり、基材Bの上に適宜形成する下地樹脂層や接着剤層は図示していない。使用する弾性体ローラRとしては、通常、鉄等の剛体の回転軸芯R1の表面周囲を軟質の弾性体R2で被覆したローラを用いる。弾性体R2としては、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム等のゴムを用いる。特に、耐熱性、耐久性、弾性等の点からシリコーンゴムが好ましい。また特に、基材の被転写面が凹凸形状(三次元形状)をなす場合は、弾性体として、JIS規格のゴム硬度が60°以下のものを使用することが、転写シートを凹凸面に追従成形させる為に好ましい。弾性体ローラの直径は、通常5〜20cm程度である。また、通常、弾性体ローラは加熱ローラとしても用いる。弾性体ローラの加熱は、ローラ内部の電熱ヒータや、ローラ外部の赤外線輻射ヒータ等の加熱源によって加熱する。
【0082】
(2)真空成形転写方法:特公昭56−45768号公報(オーバーレイ法)、特公昭60−58014号公報(真空プレス法)等に記載されるように、立体形状の基材上に転写シートを対向又は載置し、少なくとも基材側からの真空吸引による圧力差により転写シートの転写層を基材に転写する、所謂真空成形積層法を利用した転写方法。
【0083】
(3)射出成形同時絵付け転写方法:特開平6−315950号公報に記載されるように、転写シートをその転写層側が射出樹脂側を向く様にして、射出成形の雌雄両金型間に配置した後、加熱溶融等で流動状態の樹脂を型内に射出充填し、基材である樹脂成型品の成形と同時にその基材表面に転写シートから転写層を転写させる転写方法。
【0084】
(4)ラッピング転写方法:特公昭61−5895号公報、特開平5−330013号公報等に記載されるように、円柱、多角柱等の柱状の基材の長軸方向に、転写シートを供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、基材を構成する複数の側面に順次転写シートを加圧接着して転写層を転写してゆく、所謂ラッピング加工方法による転写方法。
【0085】
(5)固体粒子衝突圧を利用する転写方法:特許第2844524号公報、特開平10−193893号公報等に開示された新規な転写方法である。すなわち、図5の概念図で示す如く、基材Bの被転写面(表面)側に、支持体シートと転写層とからなる転写シートSの転写層側を対向させ、該転写シートの支持体シート側に多数の固体粒子Pを衝突させ、その衝突圧を利用して、基材の被転写面への転写シートの圧接を行う。そして、転写層が基材に接着後、転写シートの支持体シートを剥離除去すれば、転写が完了する。なお、固体粒子Pに付記した矢印は、固体粒子の速度ベクトルを表す。また、同図は転写圧押圧方法自体の概念図であり、基材Bの上に適宜形成する下地樹脂層や接着剤層は図示していない。
【0086】
(6)その他、BMC(Bulk Molding Compound)成形法、SMC(Sheet Molding Compound)成形法、ハンドレイアップ成形法等のFRP(Fiber Reinforced Plastics)における各種成形法、或いは、RIM(Reaction Injection Molding)、マッチドモールド成形法等の成形と同時に行う転写方法、等がある。
【0087】
なお、上記(1)、(2)、(4)及び(5)は既に形状を有する基材に転写する方法であり、(3)及び(6)は、樹脂成形品として基材の形状発現と同時に転写する方法である。また、上記(3)の方法では、樹脂の成形型、又は別の型により転写シートを予備成形した後に、樹脂を射出成形して成形と同時に転写する方法もある。これと同様に、(6)に列記の方法においても、転写シートの成形は樹脂成形と同時の場合と、樹脂成形の前に予備成形する場合がある。なお、ハンドレイアップ法では、転写シートの成形は予備成形となる。
【0088】
次に、上記各種転写方法の中から、更に(5)の固体粒子衝突圧を転写圧の加圧に利用する転写方法について、更に説明しておく。
【0089】
固体粒子Pとしては、セラミックビーズ、ガラスビーズ等の非金属無機粒子、亜鉛、鉄等の金属粒子、ナイロンビーズや架橋ゴムビーズ等の樹脂ビーズ等の有機粒子、或いは金属等の無機粒子と樹脂とからなる無機物・樹脂複合粒子等を使用する。粒子形状は球形状が好ましいが、その他の形状でも用い得る。粒径は通常10〜1000μm程度である。
固体粒子は噴出器から転写シートに向かって噴出させ、転写シートに衝突したその衝突圧が転写圧となる。噴出器には、代表的には羽根車や吹出ノズルを用いる。羽根車はその回転により固体粒子を加速し、吹出ノズルは高速の流体流で固体粒子を加速する。羽根車や吹出ノズルには、サンドブラスト或いはショットブラスト、ショットピーニング等とブラスト分野にて使用されているものを流用できる。例えば羽根車には遠心式ブラスト装置、吹出ノズルには加圧式や吸引式ブラスト装置、ウェットブラスト装置等である。遠心式ブラスト装置は羽根車の回転力で固体粒子を加速し噴出する。加圧式ブラスト装置は、圧縮空気に混合しておいて固体粒子を、空気と共に噴出する。吸引式ブラスト装置は、圧縮空気の高速流で生ずる負圧部に固体粒子を吸い込み、空気と共に噴出する。ウェットブラスト装置は、固体粒子を液体と混合して噴出する。
【0090】
図6及び図7は、羽根車による噴出器の一例を示す概念図である。羽根車812は、複数の羽根813がその両側を2枚の側面板814で固定され、且つ回転中心部は羽根813が無い中空部815となっている。更に、この中空部815内に方向制御器816を内在する(図7参照)。方向制御器816は、外周の一部が円周方向に開口した開口部817を有し中空筒状で羽根車812の回転軸芯と同一回転軸芯で、羽根車とは独立して回動自在となっている。羽根車使用時は、方向制御器の開口部を適宜の方向に向くように固定して、固体粒子の噴出方向を調整する。更に、この方向制御器の内部に、内部中空で羽根車812の回転軸芯と同一回転軸芯のもう一つの羽根車が散布器818として内在する(図7参照)。散布器818は外側の羽根車812と共に回転する。そして、前記側面板814の回転中心には回転軸819が固定され、回転軸819は、軸受820で回転自在に軸支され電動機等の回転動力源(図示略)によって駆動回転され、羽根車812が回転する。また回転軸819は、羽根813を間に有する2枚の側面板814間には貫通しておらず、軸無しの空間を形成している。
そして、散布器818の内部に固体粒子Pがホッパ等から輸送管を通って供給される。通常、固体粒子は、羽根車の上方(直上又は斜上方)から供給する。散布器内に供給された固体粒子は散布器の羽根車で外側に飛び散る。飛び散った固体粒子は、方向制御器816の開口部817によって許された方向にのみ放出され、外側の羽根車812の羽根813と羽根813との間に供給される。そして、羽根813に衝突し、羽根車812の回転力で加速され、羽根車から噴出する。
羽根車812の寸法は、通常直径5〜60cm程度、羽根の幅は5〜20cm程度、羽根の長さは、ほぼ羽根車の直径程度、羽根車の回転速度は500〜5000〔rpm〕程度である。固体粒子の噴出速度は10〜50〔m/s〕程度、投射密度(基材単位面積当たりに衝突させる固体粒子の総質量)は10〜150〔kg/m2 〕程度である。
【0091】
次に、図8は吹出ノズルを用いた噴出器の一例を示す概念図である。同図の噴出器840は固体粒子加速流体として空気等の気体を用い、固体粒子噴出時に該気体と固体粒子を混合して噴出する形態の噴出器の一例である。噴出器840は、固体粒子Pと流体Fを混合する誘導室841と、誘導室内に流体を噴出する内部ノズル842と、ノズル開口部843から固体粒子及び流体を噴出する吹出ノズル部844からなる。圧縮機等からの加圧状態の流体Fを、内部ノズル842から噴出し誘導室841を経てノズル844のノズル開口部843から噴出する際に、噴出器内の誘導室841にて、高速で流れる流体流の作用で負圧を作り、この負圧により固体粒子を流体流に導き混合し、流体流で固体粒子を加速、搬送して、ノズル844のノズル開口部843から流体流と共に噴出するものである。なお、固体粒子加速流体に液体を用いる吹出ノズル等もある。
流体圧は吹付圧力で通常0.01〜1MPa程度である。流体流の流速は、液流では通常1〜20m/秒程度、気流では通常5〜80m/秒程度である。
【0092】
噴出器は、1個のみでは加圧領域を所望の形状、大きさに出来ない場合は、複数用いる。また、実際に固体粒子を用いて転写する際は、固体粒子は周囲の雰囲気中に飛散させずに且つ循環再利用するのが好ましく、転写する空間を周囲空間と隔離するチャンバ内で、固体粒子を転写シートに衝突させると良い。支持体シートの剥離は、チャンバ外でも良い。
【0093】
また、好ましくは、予め熱可塑性樹脂の支持体シートからなる転写シートは、赤外線輻射ヒータ等で加熱軟化させて延伸性を付与し、基材が熱容量の大きい場合は予め予熱して、初期接着を熱融着させる場合の層(装飾層や基材側の接着剤層等)は、加熱活性化させた状態で固体粒子を転写シートに衝突させる様にする。
なお、熱融着する層を活性化して熱融着させる場合に加熱するタイミングは、衝突圧印加前、衝突圧印加中、或いは衝突圧印加前及び印加中などのいずれでも良い。一方、転写シートが基材が凹凸表面の場合はその表面形状に追従し、成形され、転写層が基材に十分に接触すれば、冷風等の冷却手段で熱融着した層の冷却を促進しても良い。冷風は、例えば、転写シート側や基材側から吹き付ける。
【0094】
発明品の用途
本発明の転写シートを用いて得られる化粧材等の転写製品、或いは本発明の化粧材、或いは本発明の化粧材の製造方法で得られる化粧材等の物品の用途は、特に制限は無い。例えば、化粧材として、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装、壁面、天井、床等の建築物の内装、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具類の表面化粧、箪笥等の家具やテレビ受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車、航空機、船舶等の乗物内装材等の各種分野で用いられ得る。なお、化粧材や転写製品等の物品の形状は、平板以外にも、曲面板、棒状体、立体物等でも良い。平板や曲面板では化粧材は化粧板として用いられる。なかでも、本発明では、耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性、及び密着性が要求される用途は好適であり、また耐水性も良い事から、例えば、キッチン、浴室等の水廻り用途は好適である。
【実施例】
【0095】
次に実施例及び比較例により本発明を更に説明する。なお、文中、「部」とあるのは、全て質量基準である。
【0096】
〔実施例1〕
図9(A)の斜視図で示す如き、被転写面が凹凸面の基材Bを用いて、図11(A)の断面図で示す如き化粧材Dを次の様にして製作した。基材Bは、(底面の)幅8mm、深さ3mmの縦目地11と、(底面の)幅6mm、深さ3mmの横目地12とを有し、これら縦目地11と横目地12とで区画された天面部(凸部)上に高さが0.1〜2mmに分布する山状の突起を多数有する凹凸面を有する、厚さ18mmの押出セメント板である。なお、天面部は煉瓦積み模様で配置されている。また、縦目地11及び横目地12の側面は図9(B)の断面図で示す如く、約30°で底面に行くにしたがって幅が狭くなる斜面となっている。転写領域は天面部とし、非転写領域を縦目地及び横目地とした。
【0097】
そして、この基材の被転写面に予め、下塗り層8として、目止めの為のシーラー層(アクリル系水性エマルションからなるシーラー剤をスプレー塗装)と、下地色調整の為のべースコート層(チタン白で着色されたアクリル系水性エマルション塗料をスプレー塗装)とを形成した。
【0098】
そして更に転写層として転写する装飾層の接着の為に、上記の基材上に、アクリルウレタン系ポリオール100部に対して、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを8部添加した2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を、スプレー塗装で塗布量がウェットで45g/m2 となる様に塗布後、150℃の熱風乾燥炉(ノズルジェット乾燥機)で60秒間加熱して揮発成分を乾燥して、(イソシアネートは未硬化の)(基材に施す)接着剤層Aを、基材B上の下塗り層8の上に形成した。
【0099】
一方、転写シートは図10の断面図で示す如き転写シートSとして、厚さ80μmの表面未処理エチレン−プロピレンランダム共重合体(エチレンが3質量%)フィルム(濡れ指数32以下)からなる支持体シート1上に、転写層3とする装飾層2として、プライマー層4と装飾主体層5を順次形成した。装飾層2のうち支持体シートに接する層はプライマー層4であり、このプライマー層4としては、加水分解性シリル基としてトリエトキシシリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の有機溶剤溶液(塗工安定化の為に硫酸バリウムを10%添加)を塗液として、グラビア塗工して乾燥時厚さ2μmの塗膜をプライマー層として形成した。一方、装飾主体層5としては、バインダーの樹脂がガラス転移温度−20℃で熱軟化温度(貯蔵弾性率から測定)120℃で、分子中に加水分解性シリル基或いは水酸基やイソシアネート基も含有しない飽和の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂で、着色剤にキナクリドン、イソインドノリン、フタロシアニンブルー、及びカーボンブラックを使用した着色インキを用いて、グラビア印刷の多色刷で、大理石調の石目柄の柄パターン層5Aと、柄パターン層の上に柄パターン層と同じバインダー樹脂中にチタン白を着色顔料として添加してなるインキによる白ベタの全ベタ層5B(厚さ3μm)とを形成した。
【0100】
なお、上記の加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン樹脂は、アクリル成分として、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート及びその他の(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネート、更に低分子量グリコールとを反応させて熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を合成する時に、同時にシランカップリング剤であるγ−アミノプロピルトリエトシキシランも添加(前記加水分解性シリル基が含有されない状態での熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の理論上の100部に対して5部添加)して反応させることで、加水分解性シリル基を尿素結合を介して樹脂骨格に結合させた構造の樹脂を使用した。
【0101】
そして、接着剤層が形成された前記基材を、熱風乾燥炉で基材(接着剤層)を100℃に予熱した後、上記転写シートを転写層側が基材側を向くようにして置き、搬送速度30m/分で転写シート及び基材を搬送しつつ、転写シートの支持体シート側に、多数の固体粒子を衝突させて、転写を行った。なお、固体粒子としては、80℃に加熱された平均粒径0.4mmの球状形状の亜鉛球を、図6及び図7の如き羽根車で35m/秒の速度に加速して、転写シートに衝突させた。そして、25℃の冷風で冷却して、転写層が基材に密着後、支持体シートを剥離した。
【0102】
更に、表面保護層6として、転写後の(プライマー層4が装飾層の表面側となる)装飾層2の上に、アルコキシシランの加水分解縮合物溶液と硬化触媒とからなる塗液を、基材温度40℃に加熱した状態で、5g/m2 (固形分基準)スプレー塗布後、180℃の熱風乾燥炉で4分間加熱乾燥して固化させて透明な表面保護層を形成し、また基材に施した接着剤層は完全硬化させて、図11(A)の如き化粧材Dとして、外装サイディングとする化粧板を得た。
【0103】
表1に、装飾層のうち特定樹脂を用いる対象とした層と、その樹脂内容を、他の実施例及び比較例と共に纏めて示し、性能評価は表2に纏めて示す。
【0104】
〔実施例2〕
図11(B)の断面図で示す如き、下地樹脂層7付きの化粧材Dを次の様にして製作した。基材は、実施例1と同じ物を使用した。そして、実施例1同様に下塗り層8を形成した。そして、該下塗り層の上に、実施例1で表面保護層形成に用いた塗液を45g/m2 スプレー塗工して、下地樹脂層7を形成した。そして、転写シートは、実施例1で使用した転写シートに於いて、装飾層のうち、化粧材に於いて裏面側となる全ベタ層5Bについても、プライマー層に用いたものと同じ樹脂を使用し(て装飾層2Aとし)た他は、実施例1と同様にして作製した。
そして、この転写シートを、実施例1と同様にして、上記の下地用樹脂層形成済みの基材に転写後、表面保護層6を形成して、化粧材を作製した。
【0105】
〔比較例1〕
表1に示す如く、実施例1に於いて、装飾層のうちのプライマー層の樹脂を、装飾主体層と同じ樹脂(飽和の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂で加水分解性シリル基、水酸基、及びイソシアネート基が分子中に無い樹脂)に変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0106】
〔比較例2〕
表1に示す如く、実施例1に於いて、装飾層のうちのプライマー層に用いた樹脂を、分子中に加水分解性シリル基は持たないがイソシアネート基は有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂に代えて、この樹脂100部に対してシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン5部を配合した樹脂組成物に変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0107】
〔比較例3〕
表1に示す如く、実施例1に於いて、装飾層のうちのプライマー層に用いた樹脂として、分子中に加水分解性シリル基は持たないがイソシアネート基は有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を合成後の樹脂溶液に、更に引き続き、前記樹脂100部に対してシランカップリング剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部を添加した樹脂組成物を使用した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0108】
〔性能評価結果〕
性能評価結果は表2に纏めて示す。各性能の評価は次の様にして行った。
【0109】
(1)塗液安定性:特定樹脂を用いた剥離層を形成する為の塗液の安定性を評価した。なお、実施例2は特定樹脂を使用する全ベタ層を形成する為のインキも、この塗液安定性として評価した。塗液安定性は、塗液を調整後72時間室温放置して、異常無きものを良好、凝固、分離等の異常有りものを不良とした。
【0110】
(2)初期密着性:化粧材の表面保護層の表面に2mm間隔で碁盤目状に縦横に、深さが基材にまで達する切り込みを入れて、縦横で10×10個の合計100個の枡目を作った後、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、「セロテープ」(登録商標)24mm幅、産業用)を貼り付け、その上から消しゴムで加圧して良く密着させて2分後に、室温20℃のもとで勢い良くセロハン粘着テープを引き剥がして、枡目部分で表面保護層や転写層等の基材上の層がテープと共に剥がれるか否かで評価した。全ての枡目に於いて剥がれ無きものを良好、1つの枡目でも剥がれ有りのものを不良とした。
【0111】
(3)二次密着性:上記密着性の耐温水性を評価した。60℃の温水中に化粧材を10日間浸漬後取り出して、40℃で3日間乾燥した後、室温20℃に於いて上記(2)の密着性について評価した。また、60℃温水中の浸漬を30日間とした条件でも同様に評価した。
【0112】
(4)耐汚染性:化粧材の表面保護層の表面に、油性赤マジックインキで線を描き、2時間放置した後、ウエスを用いてエタノールで拭き取り、描いた線が残らないものは良好、残るものは不良として評価した。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表2の如く、先ず、耐汚染性は、各実施例及び各比較例の全てで良好であった。また、表には示さないが、基材の(天面部の)凹凸面への転写に必要な凹凸追従性も、各実施例及び各比較例の全てで良好で、転写抜け無く転写層は転写されていた。但し、塗液安定性は、塗液使用時にシランカップリング剤を添加した比較例2では、シランカップリング剤が極性が高く、加水分解しやすい為、塗液保存時に分離し不良となった。
【0116】
一方、密着性は、実施例1及び2は初期密着性及び二次密着性の両方で全て良好となった。しかし、比較例1は初期密着性及び二次密着性の両方で表面保護層と装飾層間で層間剥離して不良となり、比較例2及び比較例3は初期密着性は良いものの、比較例2は温水浸漬10日間の二次密着性で、比較例3は温水浸漬30日間の二次密着性で、それぞれ表面保護層と装飾層間で層間剥離して不良となった。
【0117】
各実施例はいずれも、加水分解性シリル基を分子中に有する特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を、装飾層のうちの特定の層に用いており、その加水分解性シリル基は、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層或いは下地樹脂層と、装飾層との間で層間の分子的結合に十分に関与させることができ、その結果、初期及び二次密着性が良好な性能を示したと考えられる。
【0118】
これに対して、比較例では、密着性はいずれも不良であった。すなわち、比較例1では、同じ樹脂系だが加水分解性シリル基、水酸基及びイソシアネート基を分子中に持たない樹脂を使用し、しかもシランカップリング剤の添加も行わなかった為か、初期密着性から不良で、もちろん二次密着性も不良となった。
また、シランカップリング剤を塗液使用時に添加した比較例2では、初期密着性は良好となったものの、二次密着性は不良であった。これは、比較例2では、添加したシランカップリング剤は装飾層の樹脂及び表面保護層の樹脂と反応して分子的結合に関与したとは考えられるが、単なる添加では、その分子的結合の関与度合いが少ない為に、加水分解性シリル基による層間の分子的結合の形成が十分に満足した形にまで至らずに、密着性向上が効果が十分に得られなかった思われる。
【0119】
また、比較例3では、比較例2同様にシランカップリング剤を添加して使用したが、それが樹脂側と反応するアミノ基の代わりにメタクリロキシ基を有する為、装飾層の樹脂側とは反応して結合しないが、表面保護層の樹脂側とは反応する為に初期密着性は良好で、二次密着性で不良となったと思われる。なお、この比較例3に対して、装飾層及び表面保護層の両層の樹脂に反応するシランカップリング剤が添加されている比較例2の方が、二次密着性が劣ったのは、添加量が多すぎた為に、シランカップリング剤自体の加水分解を生じて耐水性が低下する、逆効果が起きてしまった為と考えられる。
【0120】
以上の結果、総合判定は、各実施例は全て良好となったが、加水分解性シリル基を分子中に有する特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いなかった各比較例は不良となった。
【符号の説明】
【0121】
1 支持体シート
2 装飾層(少なくとも支持体シート側が特定材料)
2A 装飾層(表面側及び裏面側が特定材料)
3 転写層
4 プライマー層
5 装飾主体層
5A 柄パターン層
5B 着色ベタ層
6 表面保護層
7 下地樹脂層
8 下塗り層
11 縦目地
12 横目地
812 羽根車
813 羽根
814 側面板
815 中空部
816 方向制御器
817 開口部
818 散布器
819 回転軸
820 軸受
840 吹出ノズルを用いた噴出器
841 誘導室
842 内部ノズル
843 ノズル開口部
844 ノズル
A 接着剤層
B 基材
D 化粧材
F 流体
P 固体粒子
R 弾性体ローラ
R1 回転軸芯
R2 弾性体
S 転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体シート上に、装飾層が転写層として積層された転写シートにおいて、装飾層のうち少なくとも支持体シートに接する層が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる、転写シート。
【請求項2】
上記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の加水分解性シリル基が尿素結合を介して樹脂骨格に結合している、請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
基材上に、少なくとも表面側が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる装飾層と、該装飾層の表面にアルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を積層した化粧材。
【請求項4】
基材上に、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる下地樹脂層と、該下地樹脂層の表面に、少なくとも表面側及び裏面側が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる装飾層と、該装飾層の表面に、アルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を、積層してなる化粧材。
【請求項5】
転写方法として、圧又は熱圧を利用して被転写体となる基材上に、請求項1又は2記載の転写シートの転写層を転写する、化粧材の製造方法。
【請求項6】
転写圧として、固体粒子衝突圧を利用する、請求項5記載の化粧材の製造方法。
【請求項7】
転写圧として、弾性体ローラの加圧を利用する、請求項5記載の化粧材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−149095(P2009−149095A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8493(P2009−8493)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【分割の表示】特願平11−339584の分割
【原出願日】平成11年11月30日(1999.11.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】