説明

転写ローラ及び画像形成装置

【課題】簡単な構成で用紙とローラ表面との速度差を低減し、用紙のスキューを防止することのできる転写ローラ及び画像形成装置を得る。
【解決手段】感光体ドラム11に所定の圧力で接触して従動回転し、感光体ドラム11との間で用紙を搬送しつつ転写電圧を印加する転写ローラ13。転写ローラ13は、芯金61と、該芯金61に回転自在に装着された複数の軸方向に分割された弾性体ローラ13a〜13eとからなる。弾性体ローラ13a〜13eはそれぞれ独立した回転速度で従動回転可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ローラ及び画像形成装置、特に、感光体ドラムなどのトナー像担持体に接触して用紙を搬送しつつ該用紙に転写電圧を印加する転写ローラ及び該転写ローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなど、電子写真方式による画像形成装置にあっては、搬送される用紙のスキュー(横ずれ)を防止する必要がある。特に、感光体などのトナー像担持体と転写ローラとの間を搬送される用紙に対しては、トナー像の転写性能の劣化を抑制するために、用紙のスキューを防止する必要性が高い。通常は、感光体ドラムと転写ローラの平行度や転写ローラの外径精度を管理することにより、用紙の搬送直進性を確保しているが、煩雑であるしコストも高くなる。
【0003】
特許文献1には、スキューの防止策として、用紙の搬送経路にサイド規制板を設け、搬送方向に対して傾斜した短いローラにて用紙をサイド規制板で規制しつつ搬送する構成が記載されている。この用紙搬送装置において、傾斜ローラは用紙をサイド規制板に沿わせて進行させる押圧力を保持しているものの、用紙を確実にグリップしているわけではない。即ち、傾斜ローラの回転方向と用紙搬送方向にはずれが存在するため、微視的には傾斜ローラと用紙との間でスリップが発生している。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の構成を転写ローラに適用することは困難である。即ち、転写ローラは感光体ドラムに対して、用紙幅の全域で接触しているため、用紙搬送力を保持しながら微視的に用紙とスリップさせることは極めて困難である。
【0005】
また、転写ローラは芯金と弾性体とが一体的に構成されているために回転速度は軸方向に一様である。しかも、転写ローラの外径精度を精度よく管理したとしても外径における製造上の誤差は避けられない。従って、用紙の幅方向(ローラの軸方向)に用紙と転写ローラの表面との速度差が生じ、スキューの発生は不可避である。
【0006】
特許文献2には、弾性体に複数の半径方向の溝を形成して見かけ上短いローラとした転写ローラが記載されている。但し、この転写ローラは、複数の溝を形成することによって軸方向の抵抗値を平均化することを目的としており、用紙のスキューを防止することは考慮されていない。
【特許文献1】特開2002−370850号公報
【特許文献2】特開平11−52765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成で用紙とローラ表面との速度差を低減し、用紙のスキューを防止することのできる転写ローラ及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である転写ローラは、
一方向に回転駆動されるトナー像担持体に所定の圧力で接触してトナー像担持体に従動回転し、トナー像担持体との間で用紙を搬送しつつ該用紙に転写電圧を印加する転写ローラであって、
芯金と、該芯金に回転自在に装着された複数の軸方向に分割された弾性体ローラとからなること、
を特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の形態である画像形成装置は、前記転写ローラを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記転写ローラにおいて、軸方向に分割された各弾性体ローラは、芯金に対して回転自在であるために用紙に対して互いに独立した回転速度で従動回転することが可能である。従って、各弾性体ローラの外径に微差が生じていたとしても、用紙と各弾性体ローラとの間に速度差が発生することはなく、用紙のスキューが抑制される。しかも、芯金に複数の弾性体ローラを回転自在に装着するという簡単な構成からなり、一体型のローラに比べて各弾性体ローラの外径をそれほど厳密に管理する必要はなく、コスト的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る転写ローラ及び画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各実施例において、同じ部材、部分には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(画像形成装置の概略構成、図1参照)
図1に本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す。この画像形成装置は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の画像を形成するための画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkを下段から順次上段へと配置したものである。各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkは、感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bk、現像器12Y,12M,12C,12Bk、図示しない帯電チャージャなどを備えている。各感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkに対向して、それらと対になる転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkが配置されている。
【0013】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkにおいて、用紙は感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkと転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkとで形成されるニップ部を上方に搬送される。なお、ここでの用紙搬送経路は図1に点線で示すように僅かに湾曲している。
【0014】
また、レーザ走査光学ユニット15からは、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkの隙間から画像データに基づくレーザビームが、各感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkに向けて放射され、各感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkの表面に静電潜像が形成される。なお、この種の画像形成プロセスは周知であり、その詳細な説明は省略する。
【0015】
用紙は自動給紙トレイ20に複数枚が積層状態で収容されており、1枚ずつ上方に給紙され、前記搬送経路を搬送中に、カラー画像形成時には各感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkからイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を転写され、モノクロ画像形成時には感光体ドラム11Bkからブラックの画像を転写される。画像が転写された後、用紙は定着ユニット30にてトナーの定着を施され、排出ローラ対31からトレイ32上に排出される。
【0016】
画像形成時において、各転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkは感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkに所定の圧力で接触するとともに、それぞれの画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Bkが駆動され、用紙は回転駆動される各感光体ドラム11Y,11M,11C,11Bkと、従動回転する各転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkとで形成されるニップ部にて搬送される。
【0017】
(転写ローラの一実施例、図2及び図3参照)
次に、前記転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkの一実施例の構成、作用について説明する。なお、以下の説明では、各部材にY,M,C,Bkの符号は省略する。
【0018】
感光体ドラム11は、芯金51とフランジ52と表面に感光体層を形成したドラム53とで構成され、矢印a方向に所定の速度で回転駆動される。転写ローラ13は、芯金61と、該芯金61に軸受け部材62を介して装着された複数の軸方向に分割された弾性体ローラ13a〜13eとで構成されている。弾性体ローラ13a〜13eは、発泡ゴム、EPDM、シリコンゴムなどの弾性体からなり、導電性を有している。
【0019】
芯金61は図示しないフレームに固定されている。弾性体ローラ13a〜13eは軸受け部材62に固定されている。軸受け部材62は芯金61に対して回転自在に装着されている。また、軸受け部材62は、芯金61の端部においてEリングなどの止め部材63にて、軸方向の外方への移動を規制されている。
【0020】
即ち、弾性体ローラ13a〜13eのそれぞれは、感光体ドラム11に従動して矢印b方向に回転する。用紙は感光体ドラム11と転写ローラ13とのニップ部を矢印c方向に搬送される。転写ローラ13の全長は搬送される最大サイズの用紙の横幅(搬送方向と直交する方向の長さ)に対応している。また、この搬送時において、各弾性体ローラ13a〜13eには芯金61及び軸受け部材62を介して所定値の転写電圧が印加される。
【0021】
以上の構成において、用紙が矢印c方向に搬送される際、各弾性体ローラ13a〜13eは、感光体ドラム11の回転速度に応じてそれぞれ独立した回転速度で従動回転する。そして、軸方向に分割された各弾性体ローラ13a〜13eは、それぞれ用紙に対して互いに独立した回転速度で従動回転する。従って、各弾性体ローラ13a〜13eの外径に微差が生じていたとしても、用紙と各弾性体ローラ13a〜13eとの間に速度差が発生することはなく、用紙のスキューが抑制される。しかも、芯金61に複数の弾性体ローラ13a〜13eを回転自在に装着するという簡単な構成からなり、一体型のローラに比べて各弾性体ローラ13a〜13eの外径をそれほど厳密に管理する必要はなく、安価に製造できる。
【0022】
なお、各弾性体ローラ13a〜13eは、互いの間に僅かな隙間が形成されており、感光体ドラム11に圧接することで弾性変形して隙間が埋められる。隙間は必ずしも埋められなくてもよい。
【0023】
(転写ローラの他の実施例、図4参照)
図4に他の実施例である転写ローラ13の要部を示す。弾性体ローラ13a〜13eは摩擦係数が大きく、隣接する端面どうしが接触すると回転速度に影響を与えてしまう。そこで、図4に示すように、隣接する弾性体ローラ13a,13b間(他のローラ間も同じ)に、ドーナツ形状の摺動部材64を芯金61に対して回転自在に配置した。摺動部材64は、ポリエステルフィルムなど摩擦係数の小さい素材で形成することが好ましい。
【0024】
(他の実施例)
なお、本発明に係る転写ローラ及び画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0025】
特に、画像形成装置の基本的な構成は任意であり、プリンタや複写機であってもよく、ファクシミリなどの機能が付加されていてもよい。また、弾性体ローラの軸方向の分割個数は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】転写ローラの一実施例を示す縦断面図である。
【図3】転写ローラの一実施例を示す横断面図である。
【図4】転写ローラの他の実施例の要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
11…感光体ドラム
13…転写ローラ
13a〜13e…弾性体ローラ
61…芯金
62…軸受け部材
64…摺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転駆動されるトナー像担持体に所定の圧力で接触してトナー像担持体に従動回転し、トナー像担持体との間で用紙を搬送しつつ該用紙に転写電圧を印加する転写ローラであって、
芯金と、該芯金に回転自在に装着された複数の軸方向に分割された弾性体ローラとからなること、
を特徴とする転写ローラ。
【請求項2】
前記複数の弾性体ローラの間に摺動部材が前記芯金に対して回転自在に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の転写ローラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の転写ローラを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
複数のトナー像担持体が互いに平行に配置されるとともに、各トナー像担持体に対応して前記転写ローラが配置されており、各トナー像担持体と各転写ローラとの間を用紙が連続して搬送されること、を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107868(P2010−107868A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281726(P2008−281726)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】