説明

転写ロールおよびその製法

【課題】弾性積層体の左右両端部をテーパー形状にすることなく、リークを防止することができる転写ロールおよびその製法を提供する。
【解決手段】型面が軸方向の一端から他端まで均一内径に形成された、中空円柱状成形空間を有する金型内に、抵抗制御層3となる円筒状のチューブと、発泡材料を付着させた軸体1とを同軸的にセットし、その状態で加熱して発泡材料を発泡させて発泡層2を形成するとともに、その発泡層2の外周面にチューブ(抵抗制御層3)を一体化させる。脱型後、抵抗制御層3の外周面に、保護層4を形成し、発泡層2と抵抗制御層3と保護層4とからなる弾性積層体の左右両端面を絶縁層5で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター等の電子写真機器に用いられる転写ロールおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1色刷りの電子写真機器では、通常、図3(a)に模式的に示すように、感光ドラム32上のトナー像は、転写ロール31への電圧印加により、用紙P上に転写される。また、フルカラー電子写真機器では、通常、図3(b)に模式的に示すように、各色用の感光ドラム32上の各色のトナー像は、一旦中間転写ベルト34に転写された後、転写ロール31への電圧印加により、用紙P上に転写される。なお、図3(a),(b)において、符号33は現像ロールである。
【0003】
上記転写ロール31は、通常、図4に示すように、軸体1の外周面に発泡層42が形成され、その発泡層42の表面に抵抗制御層や保護層等の薄い被覆層43が1層または2層以上(図4では1層)形成されている。そして、上記発泡層42と被覆層43とからなる弾性積層体の左右両端部は、縮径され、テーパー形状に形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
このような転写ロール31に印加される電圧は、通常、1000V以上と高く、そのため、転写ロール31にとって、耐リーク性は必須である。リークは、上記発泡層42と被覆層43とからなる弾性積層体の左右両端部で発生し易い。そこで、左右両端部でのリークを防止するために、弾性積層体の左右両端部の外径が、先に述べたように、軸方向両端縁に向かって徐々に縮径したテーパー形状に形成されているのである。
【0005】
上記テーパー形状を有する転写ロール31は、例えば、つぎのようにして作製される。すなわち、まず、図5(a)に示すような、中空円柱状成形空間を有する金型50を準備する。この金型50は、型面(内周面)の軸方向両端部がその両端縁に向かって徐々に縮径してテーパー形状になっている。ついで、図5(b)に示すように、抵抗制御層等の被覆層43となる円筒状のチューブ43aを、上記金型50内に同軸的にセットする。つぎに、図5(c)に示すように、軸体1の外周面に、発泡層42となる発泡材料42aを付着させ、それを、上記チューブ43a内に同軸的に挿入する。そして、それを加熱することにより、発泡材料42aを発泡させて発泡層42を形成するとともに、その発泡層42の外周面に上記チューブ43a(被覆層43)を一体化させる。この工程において、上記金型50の型面により、発泡層42と被覆層43とからなる弾性積層体の左右両端部が上記テーパー形状に形成される。そして、その後、脱型する。このようにして、上記転写ロール31を作製することができる。なお、脱型後、必要に応じて、他の被覆層をコーティングにより形成してもよい。
【特許文献1】特開2005−77539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように左右両端部をテーパー形状にした転写ロール31を用いると、画像にすじや白抜け等が発生することがあった。そこで、本発明者らは、その原因について研究を重ねた結果、その原因は、被覆層43の外周面に発生した皺や凹みであることを突き止めた。すなわち、上記皺や凹みの部分では、用紙Pへのトナーの転写が完全に行われず、画像にすじや白抜け等が発生するのである。そして、上記皺や凹みの原因についてさらに研究を重ねた。その結果、上記皺や凹みは、被覆層43の縮径開始部に発生していることがわかり、その原因は、転写ロール31の作製過程において、被覆層43となるチューブ43aの左右両端部を上記金型50で縮径させることにあることがわかった。また、上記のように左右両端部をテーパー形状にした転写ロール31では、発泡により発生したエアーが発泡層42から抜け難く、発泡層42の外周面部分に残留することがあり、その残留エアー部分に対応する被覆層43部分が後に凹むことかわかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、弾性積層体の左右両端部をテーパー形状にすることなく、リークを防止することができる転写ロールおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸体と、この軸体の外周面に形成された発泡層と、この発泡層の外周に形成された1層以上の被覆層とを有する転写ロールであって、上記発泡層および被覆層が軸方向の一端から他端まで均一厚に形成され、転写ロールの、軸体を除く左右両端面が絶縁層で被覆されている転写ロールを第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、中空円柱状成形空間を有する金型の成形空間内に、被覆層形成用の円筒状チューブを同軸的にセットし、そのチューブ内に、発泡層形成用の発泡材料がその外周面に付着された軸体を同軸的に挿入し、その状態で、加熱することにより上記発泡材料を発泡させ、発泡層を形成するとともに、その発泡層の外周面に上記円筒状チューブからなる被覆層を一体形成する工程を備え、上記金型として、中空円柱状成形空間が一端から他端まで均一内径に形成されたものを用い、脱型後、軸体を除く左右両端面に絶縁層を被覆形成する転写ロールの製法を第2の要旨とする。
【0010】
本発明者らは、上記すじや白抜け等の画像不具合の原因究明結果に基づき、さらに研究を重ねた。その結果、軸体を除く左右両端面を絶縁層で被覆すると、発泡層および被覆層を軸方向の一端から他端まで均一厚に形成しても、リークを防止できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転写ロールは、軸体を除く左右両端面が絶縁層で被覆されているため、その左右両端部でのリークを防止することができる。これにより、リーク防止のために、左右両端部をテーパー形状に形成する必要がなく、発泡層および被覆層を軸方向の一端から他端まで均一厚に形成することができる。その結果、被覆層となるチューブの左右両端部を縮径させる必要がないため、被覆層に皺が発生しない。また、発泡層の形成(発泡)の際に発生するエアーは発泡層の左右両端面から抜け易く、発泡層の外周面部分に残留しなくなるため、被覆層に凹みも発生しない。したがって、本発明の転写ロールを用いると、すじや白抜け等の画像不具合が発生せず、良好な画像を得ることができる。
【0012】
また、本発明の転写ロールの製法では、被覆層となる円筒状チューブを挿入した状態で発泡層を形成する際に用いる金型として、中空円柱状成形空間が一端から他端まで均一内径に形成されたものを用いているため、被覆層に皺が発生しない。また、発泡層の形成(発泡)の際に発生するエアーは発泡層の左右両端面から抜け易く、発泡層の外周面部分に残留しなくなるため、被覆層に凹みも発生しない。また、本発明の転写ロールの製法では、脱型後、軸体を除く左右両端面に絶縁層を被覆形成するため、その絶縁層により、リークを防止することができる。したがって、本発明の転写ロールの製法により得られた転写ロールを用いると、すじや白抜け等の画像不具合が発生せず、良好な画像を得ることができる。
【0013】
特に、上記絶縁層が、ウレタンゴム組成物,フッ素ゴム組成物またはアクリルゴム組成物からなり、その絶縁層の厚みが0.1〜1.0mmの範囲内に設定されている場合には、リーク防止がより一層確実なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0015】
図1は、本発明の転写ロールの一実施の形態を示している。この実施の形態の転写ロールは、軸体1の外周面に発泡層2が形成され、この発泡層2の外周面に抵抗制御層(第1被覆層)3が形成され、この抵抗制御層3の外周面に保護層(第2被覆層)4が形成されている。これら発泡層2,抵抗制御層3および保護層4は、いずれも軸方向の一端から他端まで均一厚に形成されている。そして、上記発泡層2,抵抗制御層3および保護層4からなる弾性積層体の左右両端面が、絶縁層5で被覆されている。
【0016】
より詳しく説明すると、上記軸体1は、特に限定されるものではなく、中実でも中空でもよい。また、上記軸体1の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄,鉄にめっきを施したもの,ステンレス,アルミニウム,銅等があげられる。そして、上記軸体1の表面には、通常、接着剤やプライマー等が塗布される。また、上記軸体1の寸法は、通常、外径6〜15mmの範囲内、長さ250〜500mmの範囲内に設定される。
【0017】
上記発泡層2は、発泡材料2aを加熱することにより発泡させて形成される。この発泡材料2aは、主剤に発泡剤を混合させたものであり、その主剤としては、EPDM,SBR,NBR,ヒドリンゴム,イソプレンゴム,シリコーンゴム等があげられる。また、上記発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(PPT)、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アソジロルボンアミド(ADCA)等があげられ、上記主剤100重量部に対して1〜10重量部混合させる。さらに、上記主剤100重量部に対して、導電化するためにカーボンブラックを2〜100重量部添加し、発泡性を確保するための可塑剤としてパラフィンオイル,ナフテンオイルを必要に応じて5〜100重量部添加する。また、上記主剤には、加硫剤として、特に限定されないが、硫黄を0.3〜5重量部添加し、加硫助剤として酸化亜鉛を1〜10重量部添加し、加硫促進剤として、特に限定されないが、チアゾール類,ジチオカルバミン酸塩類,チウラム類の中から0.5〜3重量部が適宜配合されたものを添加する。さらに、必要に応じて、滑剤,無機充填剤,整泡剤等の各種の添加剤を適宜に配合してもよい。そして、上記発泡層2の寸法は、通常、厚み5〜10mmの範囲内、長さ300〜400mmの範囲内に設定される。
【0018】
上記抵抗制御層3の形成材料は、円筒状のチューブ3aに形成されており、そのチューブ3aの形成材料としては、NBR,ヒドリンゴム,ウレタンゴム,アクリルゴム,クロロプレンゴム等があげられる。また、必要に応じて、各種の添加剤を適宜に配合してもよい。そして、上記チューブ3aの寸法は、形成される抵抗制御層3と同程度に設定され、通常、外径12〜30mmの範囲内、厚み0.5〜1.0mmの範囲内に設定され、長さは上記発泡層2の長さと同じ値に設定される。
【0019】
上記保護層4の形成材料としては、アクリル樹脂,ウレタン樹脂,アルキッド樹脂,アミド樹脂,フェノール樹脂,フッ素樹脂,シリコーン樹脂,およびそれらが変性された樹脂等があげられる。また、必要に応じて、導電剤,レベリング剤,架橋剤,離型性付与剤等の各種の添加剤を適宜に配合してもよい。上記保護層4の形成材料は、液状材料であり、保護層4は、その液状材料をコーティングにより塗布した後、硬化させることにより、通常、厚み0.01〜0.05mmの範囲内に設定され、長さは上記発泡層2の長さと同じ値に設定される。
【0020】
上記絶縁層5の形成材料としては、ウレタンゴム組成物,フッ素ゴム組成物またはアクリルゴム組成物等があげられる。また、必要に応じて、無機充填剤,架橋剤等の各種の添加剤を適宜に配合してもよい。これら形成材料は、液状材料であり、絶縁層5は、その液状材料をはけ等を用いて塗布した後、硬化させることにより、通常、厚み0.1〜1.0mmの範囲内に設定される。この厚みは、リークをより確実に防止する観点から、0.5〜1.0mmの範囲内に設定することが好ましい。なお、厚みを厚くする程、リーク防止の確実性が増し、1.0mmよりも厚くしてもよいが、リーク防止の観点からは、厚み1.0mmで充分である。
【0021】
本発明の転写ロールは、つぎのようにして、作製することができる。すなわち、まず、図2(a)に示すように、型面(内周面)が軸方向の一端から他端まで均一内径に形成された、中空円柱状成形空間有する円筒状金型10を準備する。ついで、図2(b)に示すように、抵抗制御層3となる円筒状のチューブ3aを、上記円筒状金型10内に同軸的にセットする。つぎに、図2(c)に示すように、軸体1の外周面に、発泡層2となる発泡材料2aを付着させ、それを、上記円筒状金型10内にセットしたチューブ3a内に同軸的に挿入する。そして、それを加熱(通常、120〜200℃の範囲内)することにより、発泡材料2aを発泡させて発泡層2を形成するとともに、その発泡層2の外周面に上記チューブ3a(抵抗制御層3)を一体化させる。その後、脱型し、軸体1の外周に発泡層2と抵抗制御層3とが積層されたロール体を得る。さらに、その抵抗制御層3の外周面に、上記保護層4の形成材料(液状材料)をコーティングにより塗布した後、加熱(通常、100〜140℃の範囲内)することにより硬化させ、保護層4を形成する。つぎに、上記発泡層2と抵抗制御層3と保護層4とからなる弾性積層体の左右両端面全面に上記絶縁層5の形成材料(液状材料)を、はけ等を用いて塗布した後、加熱(通常、100〜180℃の範囲内)することにより硬化させ、絶縁層5を形成する。このようにして、本発明の転写ロール(図1参照)を得ることができる。
【0022】
このように、上記発泡層2および抵抗制御層3を形成する際に用いる円筒状金型10として、型面(内周面)が軸方向の一端から他端まで均一内径に形成された、中空円柱状成形空間を有するものを用いるため、チューブ3aの左右両端部を縮径させる必要がなく、抵抗制御層3の縮径開始部に皺が発生しない。しかも、チューブ3aの左右両端部を縮径させないため、発泡により発生したエアーが発泡層2から抜け易く、発泡層2の外周面部分に残留しなくなり、その残留エアー部分が後に凹むこともない。
【0023】
また、上記発泡層2と抵抗制御層3と保護層4とからなる弾性積層体の左右両端面が上記絶縁層5で被覆されているため、その弾性積層体の左右両端部でのリークを防止することができる。
【0024】
したがって、本発明の転写ロールを用いると、すじや白抜け等の画像不具合が発生せず、良好な画像を得ることができる。
【0025】
なお、上記実施の形態では、最外層に保護層4を形成したが、この保護層4は不要であれば形成しなくてもよい。また、上記抵抗制御層3や保護層4に加えて、他の被覆層を形成してもよい。
【0026】
つぎに、実施例について比較例および従来例と併せて説明する。
【実施例1】
【0027】
転写ロールの作製に際し、まず、下記の軸体および各層の形成材料を準備した。
【0028】
〔軸体〕
外径8mm、長さ400mmの鉄製の中実円柱状の軸体を準備した。
【0029】
〔発泡層形成用の発泡材料〕
EPT4045を100重量部,酸化亜鉛を6重量部,ルナックS30を2重量部,ケッチェンブラックEC300Jを12重量部,ダイアナプロセスPW−380を70重量部,加硫促進剤として大内新興化学工業社製のノクセラーTSを1重量部,ノクセラーZを1.5重量部,ノクセラーTETを1.5重量部,ノクセラーBZを1.5重量部,硫黄を1重量部,およびセルマイクRUBを6重量部を、押出しすることにより、発泡層形成用の発泡材料を調製した。
【0030】
〔抵抗制御層形成用のチューブ〕
ニポールDN212(日本ゼオン社製)100重量部,シーストSO(東海カーボン社製)80重量部,ニプシールDR(東ソーシリカ社製)36重量部,酸化亜鉛5重量部,ステアリン酸1重量部,ジベンゾチアゾールジスルフィド1重量部,硫黄1重量部,およびテトラメチルチウラムモノサルフィド1重量部を押出しすることにより、抵抗制御層形成用のチューブ(外径24mm、厚み0.6mm、長さ342mm)を形成した。
【0031】
〔保護層形成用の液状材料〕
LR−216(三菱レイヨン社製)50重量部,カイナー7201(アトフィナジャパン社製)50重量部,およびチタンブラックBM−C(三菱マテリアル社製)100重量部を配合,攪拌することにより、保護層形成用の液状材料を調製した。
【0032】
〔絶縁層形成用の液状材料〕
タケネートE−553(三井成田ケミカル社製)100重量部,バーノックDB980K(大日本インキ化学工業社製)10.5重量部,およびスペシャルブラック4(デグサジャパン社製)4重量部をペイントシェーカーにて混合することにより、絶縁層形成用の液状材料を調製した。
【0033】
〔転写ロールの作製〕
上記軸体および各層の形成材料を用いて、つぎのようにして転写ロールを作製した。すなわち、まず、上記実施の形態と同様にして、円筒状金型として、型面(内周面)が軸方向の一端から他端まで均一内径に形成された、中空円柱状成形空間を有するものを準備した。ついで、上記抵抗制御層形成用のチューブを上記円筒状金型内に同軸的にセットした。つぎに、上記軸体の外周面に、上記発泡層形成用の発泡材料を付着させ、それを、上記円筒状金型内にセットしたチューブ内に同軸的に挿入した。そして、それを加熱(160℃)することにより、発泡材料を発泡させて発泡層を形成し、その発泡層の外周面に上記チューブ(抵抗制御層)を一体化させた。その後、脱型し、軸体の外周に発泡層(厚み15mm、長さ342mm)と抵抗制御層(厚み0.6mm)とが積層されたロール体を得た。さらに、その抵抗制御層の外周面に、上記保護層形成用の液状材料をコーティングにより塗布した後、加熱(120℃)することにより硬化させ、保護層(厚み0.05mm)を形成した。つぎに、上記発泡層と抵抗制御層と保護層とからなる弾性積層体の左右両端面全面に、上記絶縁層の形成材料(液状材料)を、はけを用いて塗布した後、加熱(120℃)することにより硬化させ、絶縁層(厚み0.1mm)を形成した。これにより、各層が均一厚に形成され、その両端面に絶縁層が形成された転写ロールを得た。
【実施例2】
【0034】
上記実施例1において、絶縁層の厚みを0.5mmに形成した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0035】
〔比較例1〕
上記実施例1において、絶縁層を形成しないもの作製した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0036】
〔従来例1〕
発泡層と抵抗制御層と保護層とからなる弾性積層体の左右両端部がテーパー形状に形成された転写ロール(図4参照)を作製した。円筒状金型として、型面(内周面)の軸方向両端部がその両端縁に向かって徐々に縮径したもの〔図5(a)参照〕を準備した。縮径開始位置は、型面(内周面)の軸方向両端面からそれぞれ5mmの位置とし、テーパー形状の傾斜角度を30°とした。なお、各層の形成材料は、上記実施例1と同様のものを用いた。
【0037】
〔リーク評価〕
このようにして得られた実施例1,2ならびに比較例1および従来例1の各転写ロールを実機に組み込み、その転写ロールに1000V,2000V,3000Vの電圧を印加した。その結果、リークが発生していないものは○、リークが発生したものは×と評価し、下記の表1に併せて表記した。なお、この評価は、目視にて行った。
【0038】
〔すじ,白抜けの有無〕
上記各転写ロールを実機に組み込み、黒べたの画出しを行った。そして、その画出しの画像について、すじ,白抜けの有無を目視にて確認した。その結果、すじも白抜けも確認されなかったものを○と評価し、すじも白抜けも確認されたものを×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1の結果から、実施例1,2と比較例1とを比較すると、左右両端面の絶縁層がリーク防止効果を有していることがわかる。また、実施例1,2と従来例1とを比較すると、実施例1,2では、画像にすじも白抜けも確認されないことから、外周面に皺の発生がなく、また、発泡層に残留エアー部分もないことがわかる。これに対して、従来例1では、画像にすじも白抜けも確認されることから、外周面に皺が発生し、発泡層に残留エアー部分があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の転写ロールの一実施の形態を示す、一部が破断した正面図である。
【図2】(a)〜(c)は、上記転写ロールの製法を模式的に示す説明図である。
【図3】(a),(b)は、電子写真機器における転写機構の一部を模式的に示す説明図である。
【図4】従来の転写ロールを示す、一部が破断した正面図である。
【図5】(a)〜(c)は、従来の転写ロールの製法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 軸体
2 発泡層
3 抵抗制御層
4 保護層
5 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周面に形成された発泡層と、この発泡層の外周に形成された1層以上の被覆層とを有する転写ロールであって、上記発泡層および被覆層が軸方向の一端から他端まで均一厚に形成され、転写ロールの、軸体を除く左右両端面が絶縁層で被覆されていることを特徴とする転写ロール。
【請求項2】
上記絶縁層が、ウレタンゴム組成物,フッ素ゴム組成物またはアクリルゴム組成物からなり、その絶縁層の厚みが0.1〜1.0mmの範囲内に設定されている請求項1記載の転写ロール。
【請求項3】
中空円柱状成形空間を有する金型の成形空間内に、被覆層形成用の円筒状チューブを同軸的にセットし、そのチューブ内に、発泡層形成用の発泡材料がその外周面に付着された軸体を同軸的に挿入し、その状態で、加熱することにより上記発泡材料を発泡させ、発泡層を形成するとともに、その発泡層の外周面に上記円筒状チューブからなる被覆層を一体形成する工程を備え、上記金型として、中空円柱状成形空間が一端から他端まで均一内径に形成されたものを用い、脱型後、軸体を除く左右両端面に絶縁層を被覆形成することを特徴とする転写ロールの製法。
【請求項4】
上記絶縁層の被覆形成が、液状ウレタンゴム組成物,液状フッ素ゴム組成物または液状アクリルゴム組成物を塗布した後に硬化させることによって行われ、その厚みを0.1〜1.0mmの範囲内に形成する請求項3記載の転写ロールの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−147996(P2007−147996A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342195(P2005−342195)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】