転写制御因子としてのTcl1
B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患の診断、予後および/または治療のための方法および組成物を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、その全開示が本明細書に明確に援用される、2008年11月21日出願の米国仮出願第61/116,786号の優先権を請求する。
【0002】
連邦が支援する研究に関する言及
[0002]本発明は、米国癌研究所助成金によって授与されるP01 CA081534の元で政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本発明の技術分野および産業適用性
[0003]本発明は、一般的に、分子生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、被験体における細胞中のTcl1の制御解除(deregulation)を阻害することによって、被験体において成熟B細胞白血病の発展を阻害するための方法に関する。
【0004】
[0004]本発明の特定の側面には、B細胞リンパ球性白血病関連障害の診断、療法、および予後における適用が含まれる。
【背景技術】
【0005】
[0005]本セクションに開示される背景技術が法的に先行技術を構成することは承認されない。
[0006]B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)のリンパ球は、大部分、成熟した外見およびB220+CD5+表現型を持つ休止細胞である。T細胞白血病/リンパ腫1(TCL1)癌遺伝子は、T細胞前リンパ球性白血病における14g31.2での染色体転位置および逆位のターゲットとして発見された。
【0006】
[0007]B細胞においてTCL1を過剰発現しているトランスジェニックマウスは、B−CLLの高悪性度型を発展させ、そして高悪性度ヒトB−CLLはTcl1を過剰発現することから、TCL1の制御解除は、B−CLLの高悪性度型の病因形成において非常に重要であることが示される。以前、本発明者らは、Tcl1が、T細胞における非常に重要な抗アポトーシス分子であるAkt腫瘍性タンパク質のコアクチベーターであることを立証した。より最近、T細胞において活性ミリスチル化(myristylated)Aktを恒常的に発現しているトランスジェニックマウスは、T細胞白血病を発展させることが報告された。これらの結果は、Aktが、T細胞において、Tcl1が仲介するリンパ腫形成に関与しうることを示唆する。Aktは、Ptenのホモ接合性欠失によってマウスB細胞において頑強に活性化されうる。驚くべきことに、これらのマウスは、B細胞悪性腫瘍を発展させず、B細胞におけるTcl1制御解除が、Akt活性化以外の機構によってB−CLLを引き起こすことが示唆される。
【0007】
[0008]トランスジェニックマウスモデルの最近の研究によって、B−CLLにおけるNF−KB経路の重要性が立証された。例えば、NF−KB活性化に関与するTNFスーパーファミリーのメンバーである増殖誘導TNFリガンド(APRIL)のトランスジェニック発現は、B220+CD5+細胞の有意な拡大を生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0009]これらの疾患を治療する療法に関してかなりの研究がなされているにも関わらず、これらを有効に診断しそして治療するのは困難なままであり、そして患者において観察される死亡率は、これらの疾患の診断、治療および防止において改善が必要であることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0010]最初の広い側面において、本明細書において、被験体において成熟B細胞白血病の発展を阻害するための方法であって、被験体において細胞中のTcl1の制御解除を阻害する工程を含む、前記方法を記載する。
【0010】
[0011]別の広い側面において、本明細書において、被験体において成熟B細胞慢性白血病(B−CLL)の発展を阻害するための方法であって:i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、被験体において細胞中のTcl1の過剰発現を阻害する工程を含む、前記方法を提供する。
【0011】
[0012]別の広い側面において、本明細書において、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患の被験体を治療する方法であって:i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、T細胞白血病/リンパ腫1(Tcl1)の過剰発現を阻害することが可能な組成物の療法的有効量を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0012】
[0013]別の広い側面において、本明細書において、被験体においてB細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)関連疾患を治療する方法であって:被験体において細胞中で発現される少なくともTcl1の量を、対照細胞Tcl1に比較して測定し;そして:i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によってTcl1の発現を阻害するための少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与することによって、被験体において発現されるTcl1の量を改変して、被験体におけるB−CLL関連疾患の増殖が阻害されるようにする工程を含む、前記方法を提供する。
【0013】
[0014]別の広い側面において、本明細書において、療法がB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を防止し、診断し、そして/または治療する有効性を評価する方法であって:有効性を評価している療法に、動物を供し、そしてTcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを評価することによって、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を治療するかまたは防止する際の、試験される治療の有効性レベルを決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0014】
[0015]特定の態様において、候補療法剤は:薬学的組成物、栄養補助組成物、およびホメオパシー組成物の1以上を含む。やはり、特定の態様において、評価される療法はヒト被験体で使用するためのものである。
【0015】
[0016]別の広い側面において、本明細書において、個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応シグナル伝達経路に干渉する剤の使用であって、該剤が、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用を提供する。
【0016】
[0017]別の広い側面において、本明細書において、その必要がある個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限する方法であって:少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤を個体に投与する工程を含み、ここで該剤は:i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/またはii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記方法を提供する。
【0017】
[0018]別の広い側面において、本明細書において、個体において癌関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤の使用であって、該剤が:i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/またはii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用を提供する。
【0018】
[0019]別の広い側面において、本明細書において、エピトープおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)間の相互作用の少なくとも1つを調節する、Tcl1上のエピトープに結合する抗体を提供する。別の広い側面において、本明細書において、こうした抗体を含む、薬学的組成物を提供する。
【0019】
[0020]別の広い側面において、本明細書において、哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって、Tcl1タンパク質上のエピトープに結合可能な抗体の療法的有効量を哺乳動物に投与し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を調節する工程を含む、前記方法を提供する。
【0020】
[0021]別の広い側面において、本明細書において、哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって:アクチベータータンパク質1(AP−1)のペプチド断片の療法的有効量を哺乳動物に投与する、ここで、該ペプチド断片がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を調節する工程を含む、前記方法を提供する。
【0021】
[0022]別の広い側面において、本明細書において、Tcl1模倣体を含む化合物であって、該Tcl1模倣体が、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を模倣するのに機能的に活性である、前記化合物を提供する。
【0022】
[0023]別の広い側面において、本明細書において、哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、疾患状態を治療する方法であって、Tcl1模倣体の療法的有効量を哺乳動物に投与する、ここで、該Tcl1模倣体がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を活性化する工程を含む、前記方法を提供する。
【0023】
[0024]別の広い側面において、本明細書において、Tcl1アンタゴニストを含む化合物であって、該Tcl1アンタゴニストが、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を調節するのに機能的に活性である、前記化合物を提供する。
【0024】
[0025]本発明の多様な目的および利点は、付随する図を踏まえて読むと、好ましい態様の以下の詳細な説明から、当業者には明らかとなるであろう。
[0026]特許または出願ファイルは、カラーおよび/または1以上の写真で作成される1以上の図を含有しうる。カラーの図(単数または複数)および/または写真(単数または複数)を含む本特許または特許出願刊行物のコピーは、要望があり、そして必要な料金の支払いがあれば、特許局によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】[0027]図1A〜1C: Tcl1はNF−κB依存性転写を活性化する:[0028]図1A:頬スワブ体質的(constitutional)DNA、B−CLL DNA、およびB−CLL細胞由来のRNAを用いたRT−PCR(T381突然変異体に関する)の結果の配列決定から得られた、T381、E40D、R52H突然変異を取り巻く配列のクロマトグラム。
【図1B】[0027]図1A〜1C: Tcl1はNF−κB依存性転写を活性化する:[0029]図1B: Tcl1はNF−κBを活性化する。NIH 3T3細胞を、50ngのpNF−kB−Lucレポーターおよび50ngのpRL−TKウミシイタケ属(Renilla)レポーター構築物で同時トランスフェクションした。さらに、1.5μgのCMV5空ベクター、あるいは0.75μgのCMV5空ベクターおよび0.75μgのCMV5−Tcl1 WT、またはCMV5−Tcl1 T381構築物の組み合わせを用いた。示す箇所で、5ナノグラムのpFC−MEKKを添加した。示す箇所で、細胞を200nmol/Lのワートマニンで一晩処理した。CMV5空ベクターでトランスフェクションしたNIH 3T3細胞におけるpNF−kB−Lucの標準化プロモーター活性を1に設定した。
【図1C】[0027]図1A〜1C: Tcl1はNF−κB依存性転写を活性化する:[0030]図1C: Tcl1はp300と相互作用する。(上部)いくつかの293細胞を、p300−HAおよびOmni−Fhitまたはp300−HAおよびOmni−Tcl1構築物で同時トランスフェクションした。溶解後、抗HA、IgG、または抗omni抗体で免疫沈降を行った。示すようにウェスタンブロット分析を行った。(下部)Daudi細胞を溶解し、そして抗Tcl1抗体、IgG、または抗p300抗体で免疫沈降を行った。Tcl1パネル中の標識されていないより高いバンドはIgGに相当する。示すようにウェスタンブロット分析を行った。
【図2A】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0032]図2A:いくつかの293細胞を、500ngのpAP−1−Lucレポーターおよび50ngのpRL−TKウミシイタケ属レポーター構築物で同時トランスフェクションした。さらに、1.5μgのCMV5空ベクター、CMV5−Tcl1WT、または突然変異体構築物および2.5ngのpFC−MEKK(示す箇所)を用いた。示す箇所で、細胞を200nmol/Lのワートマニンで一晩処理した。CMV5空ベクターでトランスフェクションしたHEK293細胞におけるpAP−1−Lucの標準化プロモーター活性を1に設定した。
【図2B】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0033]図2B: pFC−MEKK構築物の代わりに、示すように、5ngのc−Fos−V5、c−Jun、JunB、または5ngのc−Fos−V5およびSngのc−JunまたはJunBの組み合わせを添加した以外、図2Aと同様である。
【図2C】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0034]図2C:いくつかの293細胞を、c−Fos−V5およびCMV5−Tcl1 WTまたはc−Fos−V5およびCMV5−Tcl1 T381構築物で同時トランスフェクションした。溶解後、抗c−Fos、IgG、または抗TcI1抗体で免疫沈降を行った。示すようにウェスタンブロット分析を行った。
【図2D】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0035]図2D〜2F:示すように、いくつかの293細胞を、myc−Tcl1 T381またはmyc−Fhitと、cFos−V5(図2D)、c−Jun−HA(図2E)、またはJunB(図2F)で同時トランスフェクションした。溶解後、示すように、抗myc、IgG、および抗c−Fos(図2D)、抗HA(図2E)、および抗JunB(図2F)抗体で免疫沈降を行った。示す抗体でウェスタンブロット分析を行った。
【図2E】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0035]図2D〜2F:示すように、いくつかの293細胞を、myc−Tcl1 T381またはmyc−Fhitと、cFos−V5(図2D)、c−Jun−HA(図2E)、またはJunB(図2F)で同時トランスフェクションした。溶解後、示すように、抗myc、IgG、および抗c−Fos(図2D)、抗HA(図2E)、および抗JunB(図2F)抗体で免疫沈降を行った。示す抗体でウェスタンブロット分析を行った。
【図2F】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0035]図2D〜2F:示すように、いくつかの293細胞を、myc−Tcl1 T381またはmyc−Fhitと、cFos−V5(図2D)、c−Jun−HA(図2E)、またはJunB(図2F)で同時トランスフェクションした。溶解後、示すように、抗myc、IgG、および抗c−Fos(図2D)、抗HA(図2E)、および抗JunB(図2F)抗体で免疫沈降を行った。示す抗体でウェスタンブロット分析を行った。
【図2G】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0036]図2G:いくつかの293細胞をmyc−Tcl1でトランスフェクションし、そして溶解2時間前に、50ng/mL PMAおよび1μg/mLイオノマイシンで処理して、内因性c−Jun発現を増加させた。抗c−Jun、IgG、または抗myc抗体で免疫沈降を行った。
【図2H】[0037]図2H:溶解2時間前に、Daudi細胞を50ng/mL PMAおよび1μg/mLイオノマイシンで処理した。抗Tcl1、IgG、または抗c−Jun抗体で免疫沈降を行った。
【図3】[0038]c−Jun、c−Fos、およびTcl1の細胞内局在。いくつかの293細胞をc−Jun−HA、c−Fos−V5、およびOmni−Tcl1構築物で同時トランスフェクションした。16時間後、細胞を固定し、透過処理し、そしてラット抗HA、マウス抗c−Fos、およびウサギ抗omni抗体で免疫染色した。二次ヤギ抗ラットAlexa Fluor 647、ヤギ抗マウスAlexa Fluor 546、およびヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488抗体を用いて、c−Jun(青色)、c−Fos(赤)、およびTcl1(緑)の細胞間位置を視覚化した。c−FosおよびTcl1の共局在を黄色で示す。
【図4A】[0039]図4A−4: Tcl1はMEKK1が仲介する細胞死を阻害する:[0040]図4A:いくつかの293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、0.5μgのpFC−MEKKおよび1μgのpCMV5空、pCMV5−Tcl1 WT、またはpCMV5−Tcl1 T38I構築物でトランスフェクションした。本明細書に記載するようにウェスタンブロット分析を行った。
【図4B】[0041]図4B〜4C:いくつかの293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、あるいは0.5μgのpFC−MEKKおよび1μgのpCMV5空またはpCMV5−Tcl1 WT構築物でトランスフェクションした。16時間後、細胞を固定し、透過処理し、そしてHoechst33342で染色した。[0042]図4B:アポトーシス細胞の割合。各トランスフェクションに関して、死亡細胞(断片化された核によって示される)の割合を計測するため、少なくとも20視野を選択した。
【図4C】[0041]図4B〜4C:いくつかの293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、あるいは0.5μgのpFC−MEKKおよび1μgのpCMV5空またはpCMV5−Tcl1 WT構築物でトランスフェクションした。16時間後、細胞を固定し、透過処理し、そしてHoechst33342で染色した。[0043]図4C:共焦点顕微鏡を用いることによって、同じ実験の結果を視覚化した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0044]本開示全体で、同定する引用によって、多様な刊行物、特許および公開特許明細書に言及する。これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の到達水準をより詳細に記載するため、本開示内に援用される。
【0027】
[0045]本発明は、Tcl1が転写制御因子として働き、そして慢性リンパ球性白血病(CLL)の病因形成に直接関与するという、本発明者らの発見に、少なくとも部分的に基づく。
【0028】
[0046]B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)は、最も一般的なヒト白血病である。マウスB細胞におけるT細胞白血病/リンパ腫1(TCL1)癌遺伝子の制御解除は、高悪性度ヒトB−CLLに類似のCD5陽性白血病を引き起こす。Tcl1タンパク質がB細胞において発癌活性を発揮する機構を調べるため、本発明者らは、本明細書において、NF−κBおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)活性に対するTcl1発現の影響を調べた。
【0029】
[0047]本明細書において、ここで、Tcl1がc−Jun、JunB、およびc−Fosと物理的に相互作用し、そしてAP−1転写活性を阻害することが示されている。さらに、Tcl1は、p30O/CREB結合タンパク質と物理的に相互作用することによって、NF−κBを活性化する。
【0030】
[0048]600のB−CLL試料においてTCL1遺伝子を配列決定し、そして2つのヘテロ接合性突然変異を発見した:T38IおよびR52H。どちらの突然変異体も、AP−1阻害剤としての機能獲得を示したことに注目されたい。結果によって、Tcl1過剰発現が、NF−κB活性を直接増進し、そしてAP−1を阻害することによって、B−CLLを引き起こすことが示される。
【0031】
[0049]B−CLL特異的機能獲得型Tcl1突然変異体を発展させた。600のB−CLL試料においてTCL1遺伝子を配列決定した。すべてのコードTCL1エクソンの配列決定分析の結果、アミノ酸置換、T38IおよびR52Hを生じる2つのヘテロ接合性突然変異が同定された(図1A)。
【0032】
[0050]第一の患者の正常頬スワブDNAは、T38I突然変異を示さなかった(図1A)。R52H突然変異はまた、マッチした正常頬スワブDNAにも存在し(図1A、右)、体質的変動が示された。RT−PCRの結果、T38I突然変異体TCL1 mRNAは、元来のB−CLLにおいて主に発現されるアレルであり、TCL1 mRNAの80%を占め、そしてR52Hアレルは、発現される唯一のアレルであることが示される(図1A)。
【0033】
[0051]Tcl1発現がNF−κBのトランス活性化活性に影響を及ぼすかどうかを決定するため、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ1(MEKK1)の能力に基づく系を用いて、NF−KBレポーター構築物である、NF−κB応答配列の調節下でルシフェラーゼを発現するpNF−κB−Lucを活性化した。
【0034】
[0052]NIH 3T3細胞を、図1Bに示す構築物でトランスフェクションした。図1Bは、Tcl1がNF−κB活性を約4倍活性化し(50対13)、一方、2つの突然変異体は、活性を2〜3倍活性化したことを示す。
【0035】
[0053]Tcl1はAktのコアクチベーターであるため、このNF−κB活性化がTcl1によるAkt活性化によって引き起こされる可能性があった。この可能性を排除するため、PI3キナーゼ阻害剤であるワートマニンの存在下で同じ実験を行った(ワートマニンはAkt活性を完全に阻害する)。
【0036】
[0054]図1Bは、Tcl1がNF−κBを活性化する能力に、ワートマニンが影響を及ぼさなかったことを示す;ワートマニンの存在下で、Tcl1発現は、NF−κBを>4倍活性化し(78対16)、一方、Tcl1突然変異体の発現は、2.5〜3倍の活性化を生じた。
【0037】
[0055]さらに、野生型(WT)Tcl1およびT38I突然変異体は、Aktを用いた共免疫沈降実験において、いかなる相違も示さなかった(データ未提示)。これらのデータは、Tcl1が、Aktとは独立の機構によって、NF−κBを活性化することを示す。
【0038】
[0056]この活性化の分子機構を解明するため、293細胞の同時トランスフェクションを用いることによって、Tcl1ならびにNF−κB1、NF−κB2、RelA、RelB、およびc−Rel間の共免疫沈降を行った。Tcl1およびNF−κBファミリーメンバー間の物理的相互作用の証拠は見出されなかった(データ未提示)。
【0039】
[0057]転写活性化因子CREB結合タンパク質/p300は、NF−κB経路を含む、いくつかのシグナル伝達経路によって仲介されるトランス活性化に関与する遍在性の核転写因子である。p300はNF−κBのコアクチベーターであるため、本発明者らは、本明細書において、Tcl1がp300と相互作用するかどうかを調べた。まず、共免疫沈降実験を行い、タグ化Tcl1およびp300構築物を293細胞内に同時トランスフェクションした。
【0040】
[0058]図1C−上部は、p300がTcl1と共免疫沈降され、一方、Tcl1がp300免疫複合体中で検出されたことを示す。陰性対照として用いた、p300およびFhit間には共免疫沈降は検出されなかった。
【0041】
[0059]検出された相互作用が2つのタンパク質の過剰発現の結果ではないことを証明するため、中程度のレベルのTcl1発現を示す、Daudiバーキットリンパ腫細胞において、共免疫沈降実験を行った。
【0042】
[0060]図1C−下部は、p300がTcl1免疫複合体中で検出され、一方、Tcl1がp300と共免疫沈降されたことを示す。これは、Tcl1が、p300と相互作用することによって、おそらくコンホメーションを変化させ、そしてNF−κBコアクチベーターとして機能する能力を増進することによって、NF−κB依存性転写を誘導することを示す。
【0043】
[0061]結果によって、Tcl1突然変異体が、WT Tcl1より低い度合いまで、NF−κB依存性転写を活性化することを示す(〜3倍対4倍)。本発明者らは、本明細書において、ここで、NF−κBの活性化は、B−CLLの病因形成において重要であると考えている。また、本発明者らは、本明細書において、ここで、Tcl1突然変異体がNF−κBの活性化において機能獲得を示さないことを示す。さらに、Tcl1 T38I突然変異体タンパク質は、p300を用いた同時免疫沈降実験において、WT Tcl1と類似であった(データ未提示)。
【0044】
[0062]本発明者らは、Tcl1がAP−1依存性転写を阻害しうるかどうかを調べた。AP−1の活性を評価するため、MEKK1の能力に基づく系を用いて、AP−1レポーター構築物である、AP−1応答配列の調節下でルシフェラーゼを発現するpAP−1−Lucを活性化した。いくつかの293細胞を図2A〜2Hに示す構築物でトランスフェクションした。本発明者らは、本明細書において、Tcl1 WTおよび突然変異体が293細胞において内因性AP−1の活性を阻害するかどうかもまた調べた。293細胞をMEKK1でトランスフェクションして、AP−1を活性化した。
【0045】
[0063]図2Aは、AP−1活性がMEKK1によって652倍誘導されたことを示す。Tcl1発現は、AP−1依存性トランス活性化を〜2.5倍阻害し、一方、Tcl1 T38Iは、劇的な〜100倍の阻害を引き起こした(652対6.3)。R52H突然変異体もまた、WT Tcl1に比較してより強力な効果を示した(652と比較して、176対287)。ワートマニンで処理した細胞で、類似の結果が得られた(図2A)。Tcl1発現は、AP−1依存性トランス活性化を−2.5倍阻害し、一方、T38I突然変異体は、150倍阻害を引き起こした(981対6.5)。これらの結果は、Tcl1によるAP−1の阻害がAkt非依存性であることを示す。Tcl1がAP−1複合体の個々の構成要素を阻害するかどうかを決定するため、WT Tcl1およびT38I突然変異体を用いて、類似の実験を行った。AP−1は、MEKK1を用いることによるより、単一のAP−1構成要素の過剰発現によって活性化された。
【0046】
[0064]図2B−左図は、Tcl1が、c−Fos、c−Jun、およびJun−Bを別個に阻害し、一方、Tcl1 T38I突然変異体は、c−Fos、c−Jun、およびJun−Bを2倍より効果的に阻害したことを示す。c−Jun/c−FosおよびJunB/c−Fosヘテロ二量体で類似の結果が得られた(図2B−右図)。
【0047】
[0065]これらの場合すべてにおいて、Tcl1 T38I突然変異体はWT Tcl1よりもより強力に阻害した。これらの結果(図2Aおよび図2B)は、Tcl1突然変異体がAP−1阻害において機能獲得効果を示すことを強力に示す。
【0048】
[0066]この阻害の機構を解明するため、一連の共免疫沈降実験を行った。図2C〜2Fは、一過性に発現されるタンパク質を用いたこれらの実験の結果を示す。T38I突然変異体タンパク質は、WT Tcl1よりもc−Fosとはるかに頑強な共免疫沈降を示し(図2C−下部対図2C−上部)、WT Tcl1と比較して該突然変異体のAP−1阻害がより強力であることとの関連が示唆された。この相互作用の特異性を図2Dに示し;Tcl1はどちらの方向でもc−Fosと共免疫沈降され、一方、Fhit(陰性対照として用いる)およびc−Fos(図2D−下部対図2D−上部)間で陽性の共免疫沈降は検出されなかった。
【0049】
[0067]同様に、Tcl1はc−Junと共免疫沈降されたが、Fhitはされず(図2E)、そしてTcl1はJunBと共免疫沈降されたが、Fhitはされなかった(図2F)。
【0050】
[0068]図2Gは、293細胞において、内因性c−JunがトランスフェクションされたTcl1と共免疫沈降し、一方、Tcl1が内因性c−Junの免疫複合体中で検出されたことを示す。Daudi細胞における内因性Tcl1およびc−Junの物理的相互作用が図2Hに示される。Tcl1は内因性c−Junの免疫複合体中に存在し、そしてc−JunはTcl1と共免疫沈降された。これらの実験において(図2Gおよび図2H)、c−Junは非常に低レベルで発現されるため、細胞をホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)およびイオノマイシンで前処理した。こうした処理は、293およびDaudi細胞において、c−Jun発現を有意に誘導した。図2A〜2Hに記載する結果に少なくとも部分的に基づいて、本発明者らは現在、Tcl1がAP−1構成要素と物理的に相互作用して、そしてAP−1阻害剤として機能すると考えている。B−CLL患者で同定されたTcl1突然変異体はどちらも、この経路において機能獲得特性を示すという事実から、Tcl1がAP−1依存性転写を阻害する能力がB−CLLの病因形成に非常に重要であることが示唆される。
【0051】
[0069]Tcl1は核および細胞質の両方に局在する。しかし、c−Junおよびc−Fosは、大部分、核タンパク質である。Tcl1−AP−1複合体の細胞内局在を決定するため、293細胞において免疫蛍光実験を行った。図3は、4つの異なる視野における、Tcl1、c−Jun、およびc−Fosの細胞内位置を示す。c−Jun(青)およびc−Fos(赤)は、核に共局在した。しかし、Tcl1(緑)は、核および細胞質中に局在した。図3−右図は、Tcl1−AP−1複合体(黄色)が核内の別個の区画に局在したことを示す。これらのデータは、Tcl1が直接会合することによってAP−1機能を阻害するさらなる証拠として働く。
【0052】
[0070]Tcl1は、転写複合体に直接関与することによって、NF−KB依存性転写を誘導し、そしてAP−1依存性転写を抑制する(図1および図2);こうしたものとして、本発明者らは、本明細書において、ここで、Tcl1のこれらの作用が細胞死阻害を生じると考えている。MEKK1は、c−jun N末端キナーゼ(JNK)およびAP−1活性化によって、293細胞においてアポトーシスを誘導するため、本発明者らは、図2において、AP−1を誘導するのに用いたMEKK1のキナーゼドメインを発現する構築物を用いた。
【0053】
[0071]図4A〜Cは、293細胞においてAP−1が仲介するアポトーシスをTcl1が実際に阻害することを示す。ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)の116kDaの損なわれていない(intact)型がアポトーシス細胞および非アポトーシス細胞の両方に存在し、一方、85kDaの切断されたPARP1アイソフォームはアポトーシス細胞にのみ存在する。MEKK1発現は、切断された85kDa PARP1の出現を生じた(図4A)。
【0054】
[0072]Tcl1発現は、85kDaバンド強度の減少を引き起こし、一方、Tcl1 T38I突然変異体の発現は、85kDa PARP1発現のさらなる減少を生じた(図4A)。この知見は、293細胞においてMEKK1が誘導するアポトーシスをTcl1が阻害する一方、Tcl1 T38I突然変異体の発現がさらにより強い阻害を生じることを示す。アポトーシス細胞の数を評価するため、トランスフェクション20時間後の293細胞において、断片化された核の数を評価した。図4Bおよび図4Cは、MEKK1トランスフェクションが293細胞において30%アポトーシスを生じる一方、Tcl1発現が12.5%までのアポトーシスの減少を生じたことを示す。これらの結果は、Tcl1がAP−1活性化によって引き起こされたアポトーシスを阻害することを示唆する。
【0055】
[0073]Tcl1は、AP−1阻害剤として機能し、こうして、B−CLL発展に関与する分子機構に関わる重要な洞察を提供する。これらの結果の重要性は、体細胞T38I突然変異体が機能獲得特性を示す事実によって、非常に増進される。R52H突然変異は、同じ患者の体質的DNAに存在し、そしてまた、AP−1阻害の機能獲得を導いた。理論によって束縛することは望まないが、本発明者らは、本明細書において、この変化がB−CLLへの遺伝的素因を引き起こす稀な多型に相当すると考えている。Tcl1、ならびにp300およびAP−1構成要素などの転写因子間の物理的相互作用は、Tcl1機能の新規分子機構を提供し、そしてTcl1のこの機能がAktに独立であることを立証する。
【0056】
[0074]さらに、Tcl1は、異なる構造および機能の多数のタンパク質(例えばAkt、p300、c−Jun、およびc−Fos)に結合するため、本発明者らは、本明細書において、ここで、Tcl1が他の機能(例えば輸送体としての機能)を有すると考えている。
【0057】
[0075]本明細書に記載する本発明者らの発見は、ここで、NF−KBを阻害するかまたはAP−1を活性化する方法が、B−CLLの高悪性度型の治療に有用でありうることを示す。
【0058】
[0076]本発明は、以下の実施例においてさらに定義され、ここで、別に言及しない限り、すべての部分および割合は重量であり、そして度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示目的のためのみに提供されることを理解しなければならない。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認可能であり、そして本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多様な変化および修飾を作製して、多様な使用および条件に適応させることも可能である。本明細書において言及される特許および非特許文献を含むすべての刊行物は、本明細書に完全に援用される。
【実施例】
【0059】
[0077]実施例
[0078]方法
[0079]B−CLL試料、ゲノム配列決定、およびRT−PCR
[0080]CLL研究コンソーシアムから、B−CLLと診断された患者よりインフォームドコンセントを得た後、総数600のB−CLL試料を得た。オハイオ州立大学の施設内倫理委員会の認可を得て研究を行った。簡潔には、CLL患者から血液を得て、そしてFicoll/Hypaque勾配遠心分離(Amersham)を通じてリンパ球を単離し、そして標準的TRIzol法を用いることによって、RNA抽出のためにプロセシングした。
【0060】
[0081]ゲノムDNA PCRおよび配列決定で用いたオリゴヌクレオチドは:
[0082]TCL1_149F、5’−CATGCTGCCCGGATATAAAG−3’[配列番号1];
[0083]TCL1_539R、5’−TGCCTGGAGAACTCCTATTCAT−3’[配列番号2];
[0084]TCL13 1 F、5’−GAAGTGAGCTTCAGGGAACAGT−3’;[配列番号3];および
[0085]CL1_880R、5’−ACAGCCACTGTGGACTAAGAGG−3’[配列番号4]
であった。
【0061】
[0086]RT−PCRおよび配列決定で用いたオリゴヌクレオチドは:
[0087]TCL1D5、5’−CCTGTGGGCCTGGGAGAAGT−3’[配列番号5]および
[0088]TCL1R5、5’−TCCTCCACGCCGTCAATCTT−3’[配列番号6]
であった。
【0062】
[0089]DNA構築物
[0090]標準的プロトコルを用いて、全長ヒトTCL1およびFHIT ORFをpcDNA4−HisMaxCベクターにクローニングした(それぞれ、Omni−Tcl1、Omni−Fhit)(Invitrogen)。全長ヒトTCL1 ORFもまた、pCMV5ベクターにクローニングして、pCMV5−TCL1 WT構築物を得た。StratageneのPCRに基づく標準的突然変異誘発キットを用いることによって、pCMV5−TCL1 T381およびpCMV5−TCL1 R52H構築物を生成した。pCMV−Mycベクター(BD Biosciences)にMycタグを付加し、5’および3’末端両方にMycタグを生成して該ベクターを修飾した、pCMV−2xMycベクターに、WTおよび突然変異体TCL1ならびにFHIT ORFをクローニングした。生じた構築物を2xMyc−Tcl1 WT、2xMyc−Tcl1 T381、および2xMyc−Fhitと命名した。
【0063】
[0091]c−JunおよびJunBに関する哺乳動物発現構築物(pCMV−SPORT6ベクター中)をATCCから購入した。c−Jun ORFをpCMV−HAベクター(BD Biosciences)に挿入することによって、c−Jun−HAを構築した。c−Fos−V5構築物をInvitrogenから購入した。p300−HA構築物をUpstate Biotechnologyから購入した。Akt−HA構築物は先に記載されてきている(Pekarsky Y.ら(2000) Tcl1 enhances Akt kinase activity and mediates its nuclear translocation; Proc Nat/Acad Sci USA 97:3028−3033)。二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系およびウミシイタケ属ルシフェラーゼレポーターベクターpRL−TKをPromegaから購入した。AP−1レポーター構築物、pAP1−Luc、NF−KBレポーター構築物、pNF−kB−Luc、およびCMVプロモーターの調節下でMEKK1のキナーゼドメインをコードする構築物であるpFC−MEKKを、Stratageneから購入した。
【0064】
[0092]細胞培養、トランスフェクション、ウェスタンブロット分析、および免疫沈降
[0093]NIH3T3および293細胞を、10%FBSおよび100.sg/Lゲンタマイシンを含むRPMI培地1640中、37℃で増殖させた。FuGene6トランスフェクション試薬およびプロテアーゼ阻害剤混合物錠剤をRocheから得た。ルシフェラーゼアッセイ実験以外のトランスフェクション、細胞溶解物調製、およびウェスタンブロット分析を行った。Pierce ECLウェスタンブロット分析基質またはThermo ScientificのSuperSignal West Femto最高感度基質を用いることによって、免疫ブロットを現像した。用いた抗体は:抗Tcl1(ウェスタンブロット分析およびp300との免疫沈降のためのsc−32331;c−Junとの免疫沈降のためのsc−11156およびsc−11155)、抗Omni(免疫沈降およびウェスタンブロット分析のためのsc−7270;免疫蛍光のためのsc−499)、抗p300(sc−32244)、抗Myc(9E10)、抗Myc−HRP(9E10)、抗c−Jun(免疫沈降のためのsc−1694)、抗Jung(免疫沈降のためのsc−8051;ウェスタンブロット分析のためのsc−46)、抗c−Fos(免疫沈降および免疫蛍光のためのsc−447)(Santa Cruz Biotechnology)、抗c−Jun(ウェスタンブロット分析のための610326、BD Biosciences)、抗HA(HA.1 1)(Covance)、抗V5−HRP(Invitrogen)、ラット抗HA(免疫蛍光のため)、および抗HA−HRP(Roche)であった。
【0065】
[0094]免疫蛍光
[0095]HEK293細胞をヒト・フィブロネクチンCellware 2ウェル培養スライド(BD Biosciences)上で増殖させた。Zeiss LCM 510共焦点顕微鏡を用いて免疫蛍光実験を行った。免疫蛍光に用いた二次抗体は以下の通りであった:ヤギ抗マウスAlexa Fluor 546(赤)、ヤギ抗ラットAlexa Fluor 647(赤外)、およびヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488(緑)、すべてInvitrogenから購入。
【0066】
[0096]ルシフェラーゼアッセイ
[0097]NIH3T3細胞または293細胞を、示す構築物でトランスフェクションした。ホタル(firefly)およびウミシイタケ属ルシフェラーゼ活性を二重ルシフェラーゼアッセイ系(Promega)でアッセイし、そして製造者によって示唆されるように、ホタル・ルシフェラーゼ活性をウミシイタケ属ルシフェラーゼ活性に対して標準化した。すべての実験を3つ組で行い、そして3回反復して、一貫した結果を得た。
【0067】
[0098]細胞死分析
[0099]10.sg/mLのHoechst33342(Invitrogen)で染色して、断片化された核を示す細胞数を記録することによって、アポトーシスを評価した。アポトーシス検出の代替法もまた用いた。HEK293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、あるいは1μgのpCMV5空またはpCMV5−Tcl1 WTまたはpCMV5−Tcl1 T381構築物を伴う0.5μgのpFC−MEKKのいずれかでトランスフェクションした。24時間後、死亡細胞および生存細胞の両方を収集し、そして溶解した。これらの溶解物を抗PARP1抗体(556362; BD Biosciences)で探査した(probed)。PARP1の116kDaの損なわれていない型が非アポトーシス細胞およびアポトーシス細胞の両方に存在した。85kDa PARP1切断断片はアポトーシス細胞にのみ存在した。
【0068】
[00100]療法/予防法および組成物
[00101]本発明は、被験体に有効量の療法剤、すなわち本発明のモノクローナル(またはポリクローナル)抗体、ウイルスベクター、Tcl1模倣体またはTcl1アンタゴニストを投与することによる治療法および予防法を提供する。好ましい側面において、療法剤は実質的に精製される。被験体は好ましくは動物であり、限定されるわけではないが、ウシ、ブタ、ニワトリなどが含まれ、そして好ましくは哺乳動物であり、そして最も好ましくはヒトである。
【0069】
[00102]多様な送達系が知られ、そして本発明の療法剤の投与に用いられ、例えばリポソーム中の被包、微小粒子、微小カプセル、組換え細胞による発現、受容体が仲介するエンドサイトーシス、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての療法核酸の構築などがある。導入法には、限定されるわけではないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、および経口経路が含まれる。任意の好適な経路によって、例えば注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(mucocutaneous lining)(例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通じた吸収によって化合物を投与し、そして他の生物学的活性剤とともに投与してもよい。投与は全身または局所でもよい。さらに、脳室内およびクモ膜下腔内注射を含む、任意の適切な経路によって、本発明の薬学的組成物を中枢神経系に導入することが望ましい可能性もあり;例えばリザーバー、例えばオンマヤリザーバーに取り付けた脳室内カテーテルによって、脳室内注射を容易にしてもよい。
【0070】
[00103]特定の態様において、本発明の薬学的組成物を、治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましい可能性もある;これは、例えば、そして限定ではなく、手術中の局所注入、局部適用、例えば手術後の創傷包帯と組み合わせることによって、注射によって、カテーテルによって、座薬によって、または移植物によって達成可能であり、移植物は、多孔性、非多孔性、またはゼラチン性材料のものであり、膜、例えばシアラスティック(sialastic)膜、または繊維のものが含まれる。1つの態様において、投与は悪性腫瘍あるいは新生物または前新生物組織の部位(または以前の部位)での直接注射による。
【0071】
[00104]療法剤が、タンパク質療法剤をコードする核酸である、特定の態様において、該核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、そして細胞内になるように投与するか、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤でコーティングすることによって、あるいは核に進入することが知られるホメオボックス様ペプチドと連結して投与することによって、核酸をin vivoで投与して、コードされるタンパク質の発現を促進する。あるいは、核酸療法剤を細胞内に導入して、そして相同組換えによって、発現のため、宿主細胞DNA内に取り込ませてもよい。
【0072】
[00105]本発明はまた、薬学的組成物も提供する。こうした組成物は、療法的に有効な量の療法剤、および薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む。こうしたキャリアーには、限定されるわけではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせが含まれる。キャリアーおよび組成物は無菌であってもよい。配合物は、投与様式に適合するであろう。
【0073】
[00106]組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有してもよい。組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出配合物、または粉末であってもよい。組成物を座薬として、伝統的な結合剤およびキャリアー、例えばトリグリセリドとともに配合してもよい。経口配合物には、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的キャリアーが含まれてもよい。
【0074】
[00107]好ましい態様において、組成物を、ヒトへの静脈内投与に適した薬学的組成物として、ルーチンの方法にしたがって配合する。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物にはまた、可溶化剤、および注射部位での疼痛を和らげる、リグノカインなどの局所麻酔剤も含まれる。一般的に、成分は、単位投薬型で、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェ(sachette)などの密封容器中、乾燥凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、別個にまたは一緒に混合されて供給される。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌製薬等級水または生理食塩水を含有する注入瓶とともに分配される。組成物を注射によって投与する場合、注射用無菌水または生理食塩水のアンプルを提供し、成分を投与前に混合する。
【0075】
[00108]本発明の療法剤を中性または塩型で配合する。薬学的に許容されうる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するものなどの、未結合(free)アミノ基とともに形成されるもの、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するものなどの、未結合カルボキシル基とともに形成されるものが含まれる。
【0076】
[00109]特定の障害または状態の治療に有効であろう本発明の療法剤の量は、障害または状態の性質に応じ、そして標準的臨床技術によって決定される。さらに、in vitroアッセイを場合によって使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助してもよい。配合物中で使用すべき正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重篤性に応じるであろうし、そして医師の判断および各患者の状況にしたがって決定される。しかし、静脈内投与に適した投薬範囲は、一般的に、kg体重あたり、約20〜500マイクログラムの活性化合物である。鼻内投与に適した投薬範囲は、一般的に、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。in vitroまたは動物モデル試験系から得た用量反応曲線から有効用量を外挿してもよい。
【0077】
[00110]本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1以上の成分が充填された1以上の容器を含む薬学的パックまたはキットも提供する。こうした容器(単数または複数)に場合によって付随するのは、薬剤または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定される形式の通知であり、こうした通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売の、行政機関による認可を反映する。
【0078】
[00111]本発明は、多様なそして好ましい態様に言及して記載されてきているが、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、多様な変化を行ってもよく、そしてその要素を同等物で置換してもよいことが、当業者には理解されなければならない。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の解説に対して、特定の状況または物質を適応させるよう、多くの修飾を行ってもよい。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、その全開示が本明細書に明確に援用される、2008年11月21日出願の米国仮出願第61/116,786号の優先権を請求する。
【0002】
連邦が支援する研究に関する言及
[0002]本発明は、米国癌研究所助成金によって授与されるP01 CA081534の元で政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本発明の技術分野および産業適用性
[0003]本発明は、一般的に、分子生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、被験体における細胞中のTcl1の制御解除(deregulation)を阻害することによって、被験体において成熟B細胞白血病の発展を阻害するための方法に関する。
【0004】
[0004]本発明の特定の側面には、B細胞リンパ球性白血病関連障害の診断、療法、および予後における適用が含まれる。
【背景技術】
【0005】
[0005]本セクションに開示される背景技術が法的に先行技術を構成することは承認されない。
[0006]B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)のリンパ球は、大部分、成熟した外見およびB220+CD5+表現型を持つ休止細胞である。T細胞白血病/リンパ腫1(TCL1)癌遺伝子は、T細胞前リンパ球性白血病における14g31.2での染色体転位置および逆位のターゲットとして発見された。
【0006】
[0007]B細胞においてTCL1を過剰発現しているトランスジェニックマウスは、B−CLLの高悪性度型を発展させ、そして高悪性度ヒトB−CLLはTcl1を過剰発現することから、TCL1の制御解除は、B−CLLの高悪性度型の病因形成において非常に重要であることが示される。以前、本発明者らは、Tcl1が、T細胞における非常に重要な抗アポトーシス分子であるAkt腫瘍性タンパク質のコアクチベーターであることを立証した。より最近、T細胞において活性ミリスチル化(myristylated)Aktを恒常的に発現しているトランスジェニックマウスは、T細胞白血病を発展させることが報告された。これらの結果は、Aktが、T細胞において、Tcl1が仲介するリンパ腫形成に関与しうることを示唆する。Aktは、Ptenのホモ接合性欠失によってマウスB細胞において頑強に活性化されうる。驚くべきことに、これらのマウスは、B細胞悪性腫瘍を発展させず、B細胞におけるTcl1制御解除が、Akt活性化以外の機構によってB−CLLを引き起こすことが示唆される。
【0007】
[0008]トランスジェニックマウスモデルの最近の研究によって、B−CLLにおけるNF−KB経路の重要性が立証された。例えば、NF−KB活性化に関与するTNFスーパーファミリーのメンバーである増殖誘導TNFリガンド(APRIL)のトランスジェニック発現は、B220+CD5+細胞の有意な拡大を生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0009]これらの疾患を治療する療法に関してかなりの研究がなされているにも関わらず、これらを有効に診断しそして治療するのは困難なままであり、そして患者において観察される死亡率は、これらの疾患の診断、治療および防止において改善が必要であることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0010]最初の広い側面において、本明細書において、被験体において成熟B細胞白血病の発展を阻害するための方法であって、被験体において細胞中のTcl1の制御解除を阻害する工程を含む、前記方法を記載する。
【0010】
[0011]別の広い側面において、本明細書において、被験体において成熟B細胞慢性白血病(B−CLL)の発展を阻害するための方法であって:i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、被験体において細胞中のTcl1の過剰発現を阻害する工程を含む、前記方法を提供する。
【0011】
[0012]別の広い側面において、本明細書において、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患の被験体を治療する方法であって:i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、T細胞白血病/リンパ腫1(Tcl1)の過剰発現を阻害することが可能な組成物の療法的有効量を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0012】
[0013]別の広い側面において、本明細書において、被験体においてB細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)関連疾患を治療する方法であって:被験体において細胞中で発現される少なくともTcl1の量を、対照細胞Tcl1に比較して測定し;そして:i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によってTcl1の発現を阻害するための少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与することによって、被験体において発現されるTcl1の量を改変して、被験体におけるB−CLL関連疾患の増殖が阻害されるようにする工程を含む、前記方法を提供する。
【0013】
[0014]別の広い側面において、本明細書において、療法がB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を防止し、診断し、そして/または治療する有効性を評価する方法であって:有効性を評価している療法に、動物を供し、そしてTcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを評価することによって、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を治療するかまたは防止する際の、試験される治療の有効性レベルを決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0014】
[0015]特定の態様において、候補療法剤は:薬学的組成物、栄養補助組成物、およびホメオパシー組成物の1以上を含む。やはり、特定の態様において、評価される療法はヒト被験体で使用するためのものである。
【0015】
[0016]別の広い側面において、本明細書において、個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応シグナル伝達経路に干渉する剤の使用であって、該剤が、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用を提供する。
【0016】
[0017]別の広い側面において、本明細書において、その必要がある個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限する方法であって:少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤を個体に投与する工程を含み、ここで該剤は:i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/またはii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記方法を提供する。
【0017】
[0018]別の広い側面において、本明細書において、個体において癌関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤の使用であって、該剤が:i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/またはii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用を提供する。
【0018】
[0019]別の広い側面において、本明細書において、エピトープおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)間の相互作用の少なくとも1つを調節する、Tcl1上のエピトープに結合する抗体を提供する。別の広い側面において、本明細書において、こうした抗体を含む、薬学的組成物を提供する。
【0019】
[0020]別の広い側面において、本明細書において、哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって、Tcl1タンパク質上のエピトープに結合可能な抗体の療法的有効量を哺乳動物に投与し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を調節する工程を含む、前記方法を提供する。
【0020】
[0021]別の広い側面において、本明細書において、哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって:アクチベータータンパク質1(AP−1)のペプチド断片の療法的有効量を哺乳動物に投与する、ここで、該ペプチド断片がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を調節する工程を含む、前記方法を提供する。
【0021】
[0022]別の広い側面において、本明細書において、Tcl1模倣体を含む化合物であって、該Tcl1模倣体が、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を模倣するのに機能的に活性である、前記化合物を提供する。
【0022】
[0023]別の広い側面において、本明細書において、哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、疾患状態を治療する方法であって、Tcl1模倣体の療法的有効量を哺乳動物に投与する、ここで、該Tcl1模倣体がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を活性化する工程を含む、前記方法を提供する。
【0023】
[0024]別の広い側面において、本明細書において、Tcl1アンタゴニストを含む化合物であって、該Tcl1アンタゴニストが、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を調節するのに機能的に活性である、前記化合物を提供する。
【0024】
[0025]本発明の多様な目的および利点は、付随する図を踏まえて読むと、好ましい態様の以下の詳細な説明から、当業者には明らかとなるであろう。
[0026]特許または出願ファイルは、カラーおよび/または1以上の写真で作成される1以上の図を含有しうる。カラーの図(単数または複数)および/または写真(単数または複数)を含む本特許または特許出願刊行物のコピーは、要望があり、そして必要な料金の支払いがあれば、特許局によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】[0027]図1A〜1C: Tcl1はNF−κB依存性転写を活性化する:[0028]図1A:頬スワブ体質的(constitutional)DNA、B−CLL DNA、およびB−CLL細胞由来のRNAを用いたRT−PCR(T381突然変異体に関する)の結果の配列決定から得られた、T381、E40D、R52H突然変異を取り巻く配列のクロマトグラム。
【図1B】[0027]図1A〜1C: Tcl1はNF−κB依存性転写を活性化する:[0029]図1B: Tcl1はNF−κBを活性化する。NIH 3T3細胞を、50ngのpNF−kB−Lucレポーターおよび50ngのpRL−TKウミシイタケ属(Renilla)レポーター構築物で同時トランスフェクションした。さらに、1.5μgのCMV5空ベクター、あるいは0.75μgのCMV5空ベクターおよび0.75μgのCMV5−Tcl1 WT、またはCMV5−Tcl1 T381構築物の組み合わせを用いた。示す箇所で、5ナノグラムのpFC−MEKKを添加した。示す箇所で、細胞を200nmol/Lのワートマニンで一晩処理した。CMV5空ベクターでトランスフェクションしたNIH 3T3細胞におけるpNF−kB−Lucの標準化プロモーター活性を1に設定した。
【図1C】[0027]図1A〜1C: Tcl1はNF−κB依存性転写を活性化する:[0030]図1C: Tcl1はp300と相互作用する。(上部)いくつかの293細胞を、p300−HAおよびOmni−Fhitまたはp300−HAおよびOmni−Tcl1構築物で同時トランスフェクションした。溶解後、抗HA、IgG、または抗omni抗体で免疫沈降を行った。示すようにウェスタンブロット分析を行った。(下部)Daudi細胞を溶解し、そして抗Tcl1抗体、IgG、または抗p300抗体で免疫沈降を行った。Tcl1パネル中の標識されていないより高いバンドはIgGに相当する。示すようにウェスタンブロット分析を行った。
【図2A】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0032]図2A:いくつかの293細胞を、500ngのpAP−1−Lucレポーターおよび50ngのpRL−TKウミシイタケ属レポーター構築物で同時トランスフェクションした。さらに、1.5μgのCMV5空ベクター、CMV5−Tcl1WT、または突然変異体構築物および2.5ngのpFC−MEKK(示す箇所)を用いた。示す箇所で、細胞を200nmol/Lのワートマニンで一晩処理した。CMV5空ベクターでトランスフェクションしたHEK293細胞におけるpAP−1−Lucの標準化プロモーター活性を1に設定した。
【図2B】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0033]図2B: pFC−MEKK構築物の代わりに、示すように、5ngのc−Fos−V5、c−Jun、JunB、または5ngのc−Fos−V5およびSngのc−JunまたはJunBの組み合わせを添加した以外、図2Aと同様である。
【図2C】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0034]図2C:いくつかの293細胞を、c−Fos−V5およびCMV5−Tcl1 WTまたはc−Fos−V5およびCMV5−Tcl1 T381構築物で同時トランスフェクションした。溶解後、抗c−Fos、IgG、または抗TcI1抗体で免疫沈降を行った。示すようにウェスタンブロット分析を行った。
【図2D】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0035]図2D〜2F:示すように、いくつかの293細胞を、myc−Tcl1 T381またはmyc−Fhitと、cFos−V5(図2D)、c−Jun−HA(図2E)、またはJunB(図2F)で同時トランスフェクションした。溶解後、示すように、抗myc、IgG、および抗c−Fos(図2D)、抗HA(図2E)、および抗JunB(図2F)抗体で免疫沈降を行った。示す抗体でウェスタンブロット分析を行った。
【図2E】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0035]図2D〜2F:示すように、いくつかの293細胞を、myc−Tcl1 T381またはmyc−Fhitと、cFos−V5(図2D)、c−Jun−HA(図2E)、またはJunB(図2F)で同時トランスフェクションした。溶解後、示すように、抗myc、IgG、および抗c−Fos(図2D)、抗HA(図2E)、および抗JunB(図2F)抗体で免疫沈降を行った。示す抗体でウェスタンブロット分析を行った。
【図2F】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0035]図2D〜2F:示すように、いくつかの293細胞を、myc−Tcl1 T381またはmyc−Fhitと、cFos−V5(図2D)、c−Jun−HA(図2E)、またはJunB(図2F)で同時トランスフェクションした。溶解後、示すように、抗myc、IgG、および抗c−Fos(図2D)、抗HA(図2E)、および抗JunB(図2F)抗体で免疫沈降を行った。示す抗体でウェスタンブロット分析を行った。
【図2G】[0031]図2A〜2G: Tcl1はAP−1活性を阻害する:[0036]図2G:いくつかの293細胞をmyc−Tcl1でトランスフェクションし、そして溶解2時間前に、50ng/mL PMAおよび1μg/mLイオノマイシンで処理して、内因性c−Jun発現を増加させた。抗c−Jun、IgG、または抗myc抗体で免疫沈降を行った。
【図2H】[0037]図2H:溶解2時間前に、Daudi細胞を50ng/mL PMAおよび1μg/mLイオノマイシンで処理した。抗Tcl1、IgG、または抗c−Jun抗体で免疫沈降を行った。
【図3】[0038]c−Jun、c−Fos、およびTcl1の細胞内局在。いくつかの293細胞をc−Jun−HA、c−Fos−V5、およびOmni−Tcl1構築物で同時トランスフェクションした。16時間後、細胞を固定し、透過処理し、そしてラット抗HA、マウス抗c−Fos、およびウサギ抗omni抗体で免疫染色した。二次ヤギ抗ラットAlexa Fluor 647、ヤギ抗マウスAlexa Fluor 546、およびヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488抗体を用いて、c−Jun(青色)、c−Fos(赤)、およびTcl1(緑)の細胞間位置を視覚化した。c−FosおよびTcl1の共局在を黄色で示す。
【図4A】[0039]図4A−4: Tcl1はMEKK1が仲介する細胞死を阻害する:[0040]図4A:いくつかの293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、0.5μgのpFC−MEKKおよび1μgのpCMV5空、pCMV5−Tcl1 WT、またはpCMV5−Tcl1 T38I構築物でトランスフェクションした。本明細書に記載するようにウェスタンブロット分析を行った。
【図4B】[0041]図4B〜4C:いくつかの293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、あるいは0.5μgのpFC−MEKKおよび1μgのpCMV5空またはpCMV5−Tcl1 WT構築物でトランスフェクションした。16時間後、細胞を固定し、透過処理し、そしてHoechst33342で染色した。[0042]図4B:アポトーシス細胞の割合。各トランスフェクションに関して、死亡細胞(断片化された核によって示される)の割合を計測するため、少なくとも20視野を選択した。
【図4C】[0041]図4B〜4C:いくつかの293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、あるいは0.5μgのpFC−MEKKおよび1μgのpCMV5空またはpCMV5−Tcl1 WT構築物でトランスフェクションした。16時間後、細胞を固定し、透過処理し、そしてHoechst33342で染色した。[0043]図4C:共焦点顕微鏡を用いることによって、同じ実験の結果を視覚化した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0044]本開示全体で、同定する引用によって、多様な刊行物、特許および公開特許明細書に言及する。これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示は、本発明が属する技術分野の到達水準をより詳細に記載するため、本開示内に援用される。
【0027】
[0045]本発明は、Tcl1が転写制御因子として働き、そして慢性リンパ球性白血病(CLL)の病因形成に直接関与するという、本発明者らの発見に、少なくとも部分的に基づく。
【0028】
[0046]B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)は、最も一般的なヒト白血病である。マウスB細胞におけるT細胞白血病/リンパ腫1(TCL1)癌遺伝子の制御解除は、高悪性度ヒトB−CLLに類似のCD5陽性白血病を引き起こす。Tcl1タンパク質がB細胞において発癌活性を発揮する機構を調べるため、本発明者らは、本明細書において、NF−κBおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)活性に対するTcl1発現の影響を調べた。
【0029】
[0047]本明細書において、ここで、Tcl1がc−Jun、JunB、およびc−Fosと物理的に相互作用し、そしてAP−1転写活性を阻害することが示されている。さらに、Tcl1は、p30O/CREB結合タンパク質と物理的に相互作用することによって、NF−κBを活性化する。
【0030】
[0048]600のB−CLL試料においてTCL1遺伝子を配列決定し、そして2つのヘテロ接合性突然変異を発見した:T38IおよびR52H。どちらの突然変異体も、AP−1阻害剤としての機能獲得を示したことに注目されたい。結果によって、Tcl1過剰発現が、NF−κB活性を直接増進し、そしてAP−1を阻害することによって、B−CLLを引き起こすことが示される。
【0031】
[0049]B−CLL特異的機能獲得型Tcl1突然変異体を発展させた。600のB−CLL試料においてTCL1遺伝子を配列決定した。すべてのコードTCL1エクソンの配列決定分析の結果、アミノ酸置換、T38IおよびR52Hを生じる2つのヘテロ接合性突然変異が同定された(図1A)。
【0032】
[0050]第一の患者の正常頬スワブDNAは、T38I突然変異を示さなかった(図1A)。R52H突然変異はまた、マッチした正常頬スワブDNAにも存在し(図1A、右)、体質的変動が示された。RT−PCRの結果、T38I突然変異体TCL1 mRNAは、元来のB−CLLにおいて主に発現されるアレルであり、TCL1 mRNAの80%を占め、そしてR52Hアレルは、発現される唯一のアレルであることが示される(図1A)。
【0033】
[0051]Tcl1発現がNF−κBのトランス活性化活性に影響を及ぼすかどうかを決定するため、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ1(MEKK1)の能力に基づく系を用いて、NF−KBレポーター構築物である、NF−κB応答配列の調節下でルシフェラーゼを発現するpNF−κB−Lucを活性化した。
【0034】
[0052]NIH 3T3細胞を、図1Bに示す構築物でトランスフェクションした。図1Bは、Tcl1がNF−κB活性を約4倍活性化し(50対13)、一方、2つの突然変異体は、活性を2〜3倍活性化したことを示す。
【0035】
[0053]Tcl1はAktのコアクチベーターであるため、このNF−κB活性化がTcl1によるAkt活性化によって引き起こされる可能性があった。この可能性を排除するため、PI3キナーゼ阻害剤であるワートマニンの存在下で同じ実験を行った(ワートマニンはAkt活性を完全に阻害する)。
【0036】
[0054]図1Bは、Tcl1がNF−κBを活性化する能力に、ワートマニンが影響を及ぼさなかったことを示す;ワートマニンの存在下で、Tcl1発現は、NF−κBを>4倍活性化し(78対16)、一方、Tcl1突然変異体の発現は、2.5〜3倍の活性化を生じた。
【0037】
[0055]さらに、野生型(WT)Tcl1およびT38I突然変異体は、Aktを用いた共免疫沈降実験において、いかなる相違も示さなかった(データ未提示)。これらのデータは、Tcl1が、Aktとは独立の機構によって、NF−κBを活性化することを示す。
【0038】
[0056]この活性化の分子機構を解明するため、293細胞の同時トランスフェクションを用いることによって、Tcl1ならびにNF−κB1、NF−κB2、RelA、RelB、およびc−Rel間の共免疫沈降を行った。Tcl1およびNF−κBファミリーメンバー間の物理的相互作用の証拠は見出されなかった(データ未提示)。
【0039】
[0057]転写活性化因子CREB結合タンパク質/p300は、NF−κB経路を含む、いくつかのシグナル伝達経路によって仲介されるトランス活性化に関与する遍在性の核転写因子である。p300はNF−κBのコアクチベーターであるため、本発明者らは、本明細書において、Tcl1がp300と相互作用するかどうかを調べた。まず、共免疫沈降実験を行い、タグ化Tcl1およびp300構築物を293細胞内に同時トランスフェクションした。
【0040】
[0058]図1C−上部は、p300がTcl1と共免疫沈降され、一方、Tcl1がp300免疫複合体中で検出されたことを示す。陰性対照として用いた、p300およびFhit間には共免疫沈降は検出されなかった。
【0041】
[0059]検出された相互作用が2つのタンパク質の過剰発現の結果ではないことを証明するため、中程度のレベルのTcl1発現を示す、Daudiバーキットリンパ腫細胞において、共免疫沈降実験を行った。
【0042】
[0060]図1C−下部は、p300がTcl1免疫複合体中で検出され、一方、Tcl1がp300と共免疫沈降されたことを示す。これは、Tcl1が、p300と相互作用することによって、おそらくコンホメーションを変化させ、そしてNF−κBコアクチベーターとして機能する能力を増進することによって、NF−κB依存性転写を誘導することを示す。
【0043】
[0061]結果によって、Tcl1突然変異体が、WT Tcl1より低い度合いまで、NF−κB依存性転写を活性化することを示す(〜3倍対4倍)。本発明者らは、本明細書において、ここで、NF−κBの活性化は、B−CLLの病因形成において重要であると考えている。また、本発明者らは、本明細書において、ここで、Tcl1突然変異体がNF−κBの活性化において機能獲得を示さないことを示す。さらに、Tcl1 T38I突然変異体タンパク質は、p300を用いた同時免疫沈降実験において、WT Tcl1と類似であった(データ未提示)。
【0044】
[0062]本発明者らは、Tcl1がAP−1依存性転写を阻害しうるかどうかを調べた。AP−1の活性を評価するため、MEKK1の能力に基づく系を用いて、AP−1レポーター構築物である、AP−1応答配列の調節下でルシフェラーゼを発現するpAP−1−Lucを活性化した。いくつかの293細胞を図2A〜2Hに示す構築物でトランスフェクションした。本発明者らは、本明細書において、Tcl1 WTおよび突然変異体が293細胞において内因性AP−1の活性を阻害するかどうかもまた調べた。293細胞をMEKK1でトランスフェクションして、AP−1を活性化した。
【0045】
[0063]図2Aは、AP−1活性がMEKK1によって652倍誘導されたことを示す。Tcl1発現は、AP−1依存性トランス活性化を〜2.5倍阻害し、一方、Tcl1 T38Iは、劇的な〜100倍の阻害を引き起こした(652対6.3)。R52H突然変異体もまた、WT Tcl1に比較してより強力な効果を示した(652と比較して、176対287)。ワートマニンで処理した細胞で、類似の結果が得られた(図2A)。Tcl1発現は、AP−1依存性トランス活性化を−2.5倍阻害し、一方、T38I突然変異体は、150倍阻害を引き起こした(981対6.5)。これらの結果は、Tcl1によるAP−1の阻害がAkt非依存性であることを示す。Tcl1がAP−1複合体の個々の構成要素を阻害するかどうかを決定するため、WT Tcl1およびT38I突然変異体を用いて、類似の実験を行った。AP−1は、MEKK1を用いることによるより、単一のAP−1構成要素の過剰発現によって活性化された。
【0046】
[0064]図2B−左図は、Tcl1が、c−Fos、c−Jun、およびJun−Bを別個に阻害し、一方、Tcl1 T38I突然変異体は、c−Fos、c−Jun、およびJun−Bを2倍より効果的に阻害したことを示す。c−Jun/c−FosおよびJunB/c−Fosヘテロ二量体で類似の結果が得られた(図2B−右図)。
【0047】
[0065]これらの場合すべてにおいて、Tcl1 T38I突然変異体はWT Tcl1よりもより強力に阻害した。これらの結果(図2Aおよび図2B)は、Tcl1突然変異体がAP−1阻害において機能獲得効果を示すことを強力に示す。
【0048】
[0066]この阻害の機構を解明するため、一連の共免疫沈降実験を行った。図2C〜2Fは、一過性に発現されるタンパク質を用いたこれらの実験の結果を示す。T38I突然変異体タンパク質は、WT Tcl1よりもc−Fosとはるかに頑強な共免疫沈降を示し(図2C−下部対図2C−上部)、WT Tcl1と比較して該突然変異体のAP−1阻害がより強力であることとの関連が示唆された。この相互作用の特異性を図2Dに示し;Tcl1はどちらの方向でもc−Fosと共免疫沈降され、一方、Fhit(陰性対照として用いる)およびc−Fos(図2D−下部対図2D−上部)間で陽性の共免疫沈降は検出されなかった。
【0049】
[0067]同様に、Tcl1はc−Junと共免疫沈降されたが、Fhitはされず(図2E)、そしてTcl1はJunBと共免疫沈降されたが、Fhitはされなかった(図2F)。
【0050】
[0068]図2Gは、293細胞において、内因性c−JunがトランスフェクションされたTcl1と共免疫沈降し、一方、Tcl1が内因性c−Junの免疫複合体中で検出されたことを示す。Daudi細胞における内因性Tcl1およびc−Junの物理的相互作用が図2Hに示される。Tcl1は内因性c−Junの免疫複合体中に存在し、そしてc−JunはTcl1と共免疫沈降された。これらの実験において(図2Gおよび図2H)、c−Junは非常に低レベルで発現されるため、細胞をホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)およびイオノマイシンで前処理した。こうした処理は、293およびDaudi細胞において、c−Jun発現を有意に誘導した。図2A〜2Hに記載する結果に少なくとも部分的に基づいて、本発明者らは現在、Tcl1がAP−1構成要素と物理的に相互作用して、そしてAP−1阻害剤として機能すると考えている。B−CLL患者で同定されたTcl1突然変異体はどちらも、この経路において機能獲得特性を示すという事実から、Tcl1がAP−1依存性転写を阻害する能力がB−CLLの病因形成に非常に重要であることが示唆される。
【0051】
[0069]Tcl1は核および細胞質の両方に局在する。しかし、c−Junおよびc−Fosは、大部分、核タンパク質である。Tcl1−AP−1複合体の細胞内局在を決定するため、293細胞において免疫蛍光実験を行った。図3は、4つの異なる視野における、Tcl1、c−Jun、およびc−Fosの細胞内位置を示す。c−Jun(青)およびc−Fos(赤)は、核に共局在した。しかし、Tcl1(緑)は、核および細胞質中に局在した。図3−右図は、Tcl1−AP−1複合体(黄色)が核内の別個の区画に局在したことを示す。これらのデータは、Tcl1が直接会合することによってAP−1機能を阻害するさらなる証拠として働く。
【0052】
[0070]Tcl1は、転写複合体に直接関与することによって、NF−KB依存性転写を誘導し、そしてAP−1依存性転写を抑制する(図1および図2);こうしたものとして、本発明者らは、本明細書において、ここで、Tcl1のこれらの作用が細胞死阻害を生じると考えている。MEKK1は、c−jun N末端キナーゼ(JNK)およびAP−1活性化によって、293細胞においてアポトーシスを誘導するため、本発明者らは、図2において、AP−1を誘導するのに用いたMEKK1のキナーゼドメインを発現する構築物を用いた。
【0053】
[0071]図4A〜Cは、293細胞においてAP−1が仲介するアポトーシスをTcl1が実際に阻害することを示す。ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)の116kDaの損なわれていない(intact)型がアポトーシス細胞および非アポトーシス細胞の両方に存在し、一方、85kDaの切断されたPARP1アイソフォームはアポトーシス細胞にのみ存在する。MEKK1発現は、切断された85kDa PARP1の出現を生じた(図4A)。
【0054】
[0072]Tcl1発現は、85kDaバンド強度の減少を引き起こし、一方、Tcl1 T38I突然変異体の発現は、85kDa PARP1発現のさらなる減少を生じた(図4A)。この知見は、293細胞においてMEKK1が誘導するアポトーシスをTcl1が阻害する一方、Tcl1 T38I突然変異体の発現がさらにより強い阻害を生じることを示す。アポトーシス細胞の数を評価するため、トランスフェクション20時間後の293細胞において、断片化された核の数を評価した。図4Bおよび図4Cは、MEKK1トランスフェクションが293細胞において30%アポトーシスを生じる一方、Tcl1発現が12.5%までのアポトーシスの減少を生じたことを示す。これらの結果は、Tcl1がAP−1活性化によって引き起こされたアポトーシスを阻害することを示唆する。
【0055】
[0073]Tcl1は、AP−1阻害剤として機能し、こうして、B−CLL発展に関与する分子機構に関わる重要な洞察を提供する。これらの結果の重要性は、体細胞T38I突然変異体が機能獲得特性を示す事実によって、非常に増進される。R52H突然変異は、同じ患者の体質的DNAに存在し、そしてまた、AP−1阻害の機能獲得を導いた。理論によって束縛することは望まないが、本発明者らは、本明細書において、この変化がB−CLLへの遺伝的素因を引き起こす稀な多型に相当すると考えている。Tcl1、ならびにp300およびAP−1構成要素などの転写因子間の物理的相互作用は、Tcl1機能の新規分子機構を提供し、そしてTcl1のこの機能がAktに独立であることを立証する。
【0056】
[0074]さらに、Tcl1は、異なる構造および機能の多数のタンパク質(例えばAkt、p300、c−Jun、およびc−Fos)に結合するため、本発明者らは、本明細書において、ここで、Tcl1が他の機能(例えば輸送体としての機能)を有すると考えている。
【0057】
[0075]本明細書に記載する本発明者らの発見は、ここで、NF−KBを阻害するかまたはAP−1を活性化する方法が、B−CLLの高悪性度型の治療に有用でありうることを示す。
【0058】
[0076]本発明は、以下の実施例においてさらに定義され、ここで、別に言及しない限り、すべての部分および割合は重量であり、そして度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示目的のためのみに提供されることを理解しなければならない。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認可能であり、そして本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多様な変化および修飾を作製して、多様な使用および条件に適応させることも可能である。本明細書において言及される特許および非特許文献を含むすべての刊行物は、本明細書に完全に援用される。
【実施例】
【0059】
[0077]実施例
[0078]方法
[0079]B−CLL試料、ゲノム配列決定、およびRT−PCR
[0080]CLL研究コンソーシアムから、B−CLLと診断された患者よりインフォームドコンセントを得た後、総数600のB−CLL試料を得た。オハイオ州立大学の施設内倫理委員会の認可を得て研究を行った。簡潔には、CLL患者から血液を得て、そしてFicoll/Hypaque勾配遠心分離(Amersham)を通じてリンパ球を単離し、そして標準的TRIzol法を用いることによって、RNA抽出のためにプロセシングした。
【0060】
[0081]ゲノムDNA PCRおよび配列決定で用いたオリゴヌクレオチドは:
[0082]TCL1_149F、5’−CATGCTGCCCGGATATAAAG−3’[配列番号1];
[0083]TCL1_539R、5’−TGCCTGGAGAACTCCTATTCAT−3’[配列番号2];
[0084]TCL13 1 F、5’−GAAGTGAGCTTCAGGGAACAGT−3’;[配列番号3];および
[0085]CL1_880R、5’−ACAGCCACTGTGGACTAAGAGG−3’[配列番号4]
であった。
【0061】
[0086]RT−PCRおよび配列決定で用いたオリゴヌクレオチドは:
[0087]TCL1D5、5’−CCTGTGGGCCTGGGAGAAGT−3’[配列番号5]および
[0088]TCL1R5、5’−TCCTCCACGCCGTCAATCTT−3’[配列番号6]
であった。
【0062】
[0089]DNA構築物
[0090]標準的プロトコルを用いて、全長ヒトTCL1およびFHIT ORFをpcDNA4−HisMaxCベクターにクローニングした(それぞれ、Omni−Tcl1、Omni−Fhit)(Invitrogen)。全長ヒトTCL1 ORFもまた、pCMV5ベクターにクローニングして、pCMV5−TCL1 WT構築物を得た。StratageneのPCRに基づく標準的突然変異誘発キットを用いることによって、pCMV5−TCL1 T381およびpCMV5−TCL1 R52H構築物を生成した。pCMV−Mycベクター(BD Biosciences)にMycタグを付加し、5’および3’末端両方にMycタグを生成して該ベクターを修飾した、pCMV−2xMycベクターに、WTおよび突然変異体TCL1ならびにFHIT ORFをクローニングした。生じた構築物を2xMyc−Tcl1 WT、2xMyc−Tcl1 T381、および2xMyc−Fhitと命名した。
【0063】
[0091]c−JunおよびJunBに関する哺乳動物発現構築物(pCMV−SPORT6ベクター中)をATCCから購入した。c−Jun ORFをpCMV−HAベクター(BD Biosciences)に挿入することによって、c−Jun−HAを構築した。c−Fos−V5構築物をInvitrogenから購入した。p300−HA構築物をUpstate Biotechnologyから購入した。Akt−HA構築物は先に記載されてきている(Pekarsky Y.ら(2000) Tcl1 enhances Akt kinase activity and mediates its nuclear translocation; Proc Nat/Acad Sci USA 97:3028−3033)。二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系およびウミシイタケ属ルシフェラーゼレポーターベクターpRL−TKをPromegaから購入した。AP−1レポーター構築物、pAP1−Luc、NF−KBレポーター構築物、pNF−kB−Luc、およびCMVプロモーターの調節下でMEKK1のキナーゼドメインをコードする構築物であるpFC−MEKKを、Stratageneから購入した。
【0064】
[0092]細胞培養、トランスフェクション、ウェスタンブロット分析、および免疫沈降
[0093]NIH3T3および293細胞を、10%FBSおよび100.sg/Lゲンタマイシンを含むRPMI培地1640中、37℃で増殖させた。FuGene6トランスフェクション試薬およびプロテアーゼ阻害剤混合物錠剤をRocheから得た。ルシフェラーゼアッセイ実験以外のトランスフェクション、細胞溶解物調製、およびウェスタンブロット分析を行った。Pierce ECLウェスタンブロット分析基質またはThermo ScientificのSuperSignal West Femto最高感度基質を用いることによって、免疫ブロットを現像した。用いた抗体は:抗Tcl1(ウェスタンブロット分析およびp300との免疫沈降のためのsc−32331;c−Junとの免疫沈降のためのsc−11156およびsc−11155)、抗Omni(免疫沈降およびウェスタンブロット分析のためのsc−7270;免疫蛍光のためのsc−499)、抗p300(sc−32244)、抗Myc(9E10)、抗Myc−HRP(9E10)、抗c−Jun(免疫沈降のためのsc−1694)、抗Jung(免疫沈降のためのsc−8051;ウェスタンブロット分析のためのsc−46)、抗c−Fos(免疫沈降および免疫蛍光のためのsc−447)(Santa Cruz Biotechnology)、抗c−Jun(ウェスタンブロット分析のための610326、BD Biosciences)、抗HA(HA.1 1)(Covance)、抗V5−HRP(Invitrogen)、ラット抗HA(免疫蛍光のため)、および抗HA−HRP(Roche)であった。
【0065】
[0094]免疫蛍光
[0095]HEK293細胞をヒト・フィブロネクチンCellware 2ウェル培養スライド(BD Biosciences)上で増殖させた。Zeiss LCM 510共焦点顕微鏡を用いて免疫蛍光実験を行った。免疫蛍光に用いた二次抗体は以下の通りであった:ヤギ抗マウスAlexa Fluor 546(赤)、ヤギ抗ラットAlexa Fluor 647(赤外)、およびヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488(緑)、すべてInvitrogenから購入。
【0066】
[0096]ルシフェラーゼアッセイ
[0097]NIH3T3細胞または293細胞を、示す構築物でトランスフェクションした。ホタル(firefly)およびウミシイタケ属ルシフェラーゼ活性を二重ルシフェラーゼアッセイ系(Promega)でアッセイし、そして製造者によって示唆されるように、ホタル・ルシフェラーゼ活性をウミシイタケ属ルシフェラーゼ活性に対して標準化した。すべての実験を3つ組で行い、そして3回反復して、一貫した結果を得た。
【0067】
[0098]細胞死分析
[0099]10.sg/mLのHoechst33342(Invitrogen)で染色して、断片化された核を示す細胞数を記録することによって、アポトーシスを評価した。アポトーシス検出の代替法もまた用いた。HEK293細胞を、1.5μgのpCMV5空ベクター、あるいは1μgのpCMV5空またはpCMV5−Tcl1 WTまたはpCMV5−Tcl1 T381構築物を伴う0.5μgのpFC−MEKKのいずれかでトランスフェクションした。24時間後、死亡細胞および生存細胞の両方を収集し、そして溶解した。これらの溶解物を抗PARP1抗体(556362; BD Biosciences)で探査した(probed)。PARP1の116kDaの損なわれていない型が非アポトーシス細胞およびアポトーシス細胞の両方に存在した。85kDa PARP1切断断片はアポトーシス細胞にのみ存在した。
【0068】
[00100]療法/予防法および組成物
[00101]本発明は、被験体に有効量の療法剤、すなわち本発明のモノクローナル(またはポリクローナル)抗体、ウイルスベクター、Tcl1模倣体またはTcl1アンタゴニストを投与することによる治療法および予防法を提供する。好ましい側面において、療法剤は実質的に精製される。被験体は好ましくは動物であり、限定されるわけではないが、ウシ、ブタ、ニワトリなどが含まれ、そして好ましくは哺乳動物であり、そして最も好ましくはヒトである。
【0069】
[00102]多様な送達系が知られ、そして本発明の療法剤の投与に用いられ、例えばリポソーム中の被包、微小粒子、微小カプセル、組換え細胞による発現、受容体が仲介するエンドサイトーシス、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての療法核酸の構築などがある。導入法には、限定されるわけではないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、および経口経路が含まれる。任意の好適な経路によって、例えば注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(mucocutaneous lining)(例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通じた吸収によって化合物を投与し、そして他の生物学的活性剤とともに投与してもよい。投与は全身または局所でもよい。さらに、脳室内およびクモ膜下腔内注射を含む、任意の適切な経路によって、本発明の薬学的組成物を中枢神経系に導入することが望ましい可能性もあり;例えばリザーバー、例えばオンマヤリザーバーに取り付けた脳室内カテーテルによって、脳室内注射を容易にしてもよい。
【0070】
[00103]特定の態様において、本発明の薬学的組成物を、治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましい可能性もある;これは、例えば、そして限定ではなく、手術中の局所注入、局部適用、例えば手術後の創傷包帯と組み合わせることによって、注射によって、カテーテルによって、座薬によって、または移植物によって達成可能であり、移植物は、多孔性、非多孔性、またはゼラチン性材料のものであり、膜、例えばシアラスティック(sialastic)膜、または繊維のものが含まれる。1つの態様において、投与は悪性腫瘍あるいは新生物または前新生物組織の部位(または以前の部位)での直接注射による。
【0071】
[00104]療法剤が、タンパク質療法剤をコードする核酸である、特定の態様において、該核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、そして細胞内になるように投与するか、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤でコーティングすることによって、あるいは核に進入することが知られるホメオボックス様ペプチドと連結して投与することによって、核酸をin vivoで投与して、コードされるタンパク質の発現を促進する。あるいは、核酸療法剤を細胞内に導入して、そして相同組換えによって、発現のため、宿主細胞DNA内に取り込ませてもよい。
【0072】
[00105]本発明はまた、薬学的組成物も提供する。こうした組成物は、療法的に有効な量の療法剤、および薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む。こうしたキャリアーには、限定されるわけではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせが含まれる。キャリアーおよび組成物は無菌であってもよい。配合物は、投与様式に適合するであろう。
【0073】
[00106]組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有してもよい。組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出配合物、または粉末であってもよい。組成物を座薬として、伝統的な結合剤およびキャリアー、例えばトリグリセリドとともに配合してもよい。経口配合物には、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的キャリアーが含まれてもよい。
【0074】
[00107]好ましい態様において、組成物を、ヒトへの静脈内投与に適した薬学的組成物として、ルーチンの方法にしたがって配合する。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物にはまた、可溶化剤、および注射部位での疼痛を和らげる、リグノカインなどの局所麻酔剤も含まれる。一般的に、成分は、単位投薬型で、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェ(sachette)などの密封容器中、乾燥凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、別個にまたは一緒に混合されて供給される。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌製薬等級水または生理食塩水を含有する注入瓶とともに分配される。組成物を注射によって投与する場合、注射用無菌水または生理食塩水のアンプルを提供し、成分を投与前に混合する。
【0075】
[00108]本発明の療法剤を中性または塩型で配合する。薬学的に許容されうる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するものなどの、未結合(free)アミノ基とともに形成されるもの、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するものなどの、未結合カルボキシル基とともに形成されるものが含まれる。
【0076】
[00109]特定の障害または状態の治療に有効であろう本発明の療法剤の量は、障害または状態の性質に応じ、そして標準的臨床技術によって決定される。さらに、in vitroアッセイを場合によって使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助してもよい。配合物中で使用すべき正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重篤性に応じるであろうし、そして医師の判断および各患者の状況にしたがって決定される。しかし、静脈内投与に適した投薬範囲は、一般的に、kg体重あたり、約20〜500マイクログラムの活性化合物である。鼻内投与に適した投薬範囲は、一般的に、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。in vitroまたは動物モデル試験系から得た用量反応曲線から有効用量を外挿してもよい。
【0077】
[00110]本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1以上の成分が充填された1以上の容器を含む薬学的パックまたはキットも提供する。こうした容器(単数または複数)に場合によって付随するのは、薬剤または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定される形式の通知であり、こうした通知は、ヒト投与のための製造、使用または販売の、行政機関による認可を反映する。
【0078】
[00111]本発明は、多様なそして好ましい態様に言及して記載されてきているが、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、多様な変化を行ってもよく、そしてその要素を同等物で置換してもよいことが、当業者には理解されなければならない。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の解説に対して、特定の状況または物質を適応させるよう、多くの修飾を行ってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において成熟B細胞慢性白血病(B−CLL)の発展を阻害するための方法であって:
i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、被験体において細胞中のTcl1の過剰発現を阻害する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
B−CLLの高悪性度型の治療に有用な、NF−κBを阻害し、そして/またはAP−1を活性化する組成物を含む、薬学的組成物。
【請求項3】
B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患の被験体を治療する方法であって:
i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、T細胞白血病/リンパ腫1(Tcl1)の過剰発現を阻害することが可能な組成物の療法的有効量を投与する
工程を含む、前記方法。
【請求項4】
T細胞白血病/リンパ腫1(Tcl1)の過剰発現を阻害することが可能な組成物を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
被験体においてB細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)関連疾患を治療する方法であって:
被験体において細胞中で発現される少なくともTcl1の量を、対照細胞Tcl1に比較して測定し;そして
i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によってTcl1の発現を阻害するための少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与することによって、被験体において発現されるTcl1の量を改変して、
被験体におけるB−CLL関連疾患の増殖が阻害されるようにする
工程を含む、前記方法。
【請求項6】
療法がB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を防止し、診断し、そして/または治療する有効性を評価する方法であって:
有効性を評価している療法に、動物を供し、そして
Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを評価することによって、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を治療するかまたは防止する際の、試験される治療の有効性レベルを決定する
工程を含む、前記方法。
【請求項7】
候補療法剤が:薬学的組成物、栄養補助組成物、およびホメオパシー組成物の1以上を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
評価される療法がヒト被験体で使用するためのものである、請求項7の方法。
【請求項9】
個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応シグナル伝達経路に干渉する剤の使用であって、該剤がTcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用。
【請求項10】
その必要がある個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限する方法であって:
少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤を個体に投与する工程を含み、ここで該剤は:
i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/または
ii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する
Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記方法。
【請求項11】
個体において癌関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤の使用であって、該剤が:i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/またはii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用。
【請求項12】
エピトープおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)間の相互作用の少なくとも1つを調節する、Tcl1上のエピトープに結合する抗体。
【請求項13】
請求項12の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって:
Tcl1タンパク質上のエピトープに結合可能な抗体の療法的有効量を哺乳動物に投与し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を調節する
工程を含む、前記方法。
【請求項15】
哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって:
アクチベータータンパク質1(AP−1)のペプチド断片の療法的有効量を哺乳動物に投与する
ここで、該ペプチド断片がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を調節する
工程を含む、前記方法。
【請求項16】
Tcl1模倣体を含む化合物であって、該Tcl1模倣体が、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を模倣するのに機能的に活性である、前記化合物。
【請求項17】
哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、疾患状態を治療する方法であって:
Tcl1模倣体の療法的有効量を哺乳動物に投与する
ここで、該Tcl1模倣体がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を活性化する
工程を含む、前記方法。
【請求項18】
Tcl1アンタゴニストを含む化合物であって、該Tcl1アンタゴニストが、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を調節するのに機能的に活性である、前記化合物。
【請求項1】
被験体において成熟B細胞慢性白血病(B−CLL)の発展を阻害するための方法であって:
i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、被験体において細胞中のTcl1の過剰発現を阻害する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
B−CLLの高悪性度型の治療に有用な、NF−κBを阻害し、そして/またはAP−1を活性化する組成物を含む、薬学的組成物。
【請求項3】
B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患の被験体を治療する方法であって:
i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によって、T細胞白血病/リンパ腫1(Tcl1)の過剰発現を阻害することが可能な組成物の療法的有効量を投与する
工程を含む、前記方法。
【請求項4】
T細胞白血病/リンパ腫1(Tcl1)の過剰発現を阻害することが可能な組成物を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
被験体においてB細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)関連疾患を治療する方法であって:
被験体において細胞中で発現される少なくともTcl1の量を、対照細胞Tcl1に比較して測定し;そして
i)細胞においてNF−κB経路を阻害する工程、およびii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)を活性化する工程の1以上によってTcl1の発現を阻害するための少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与することによって、被験体において発現されるTcl1の量を改変して、
被験体におけるB−CLL関連疾患の増殖が阻害されるようにする
工程を含む、前記方法。
【請求項6】
療法がB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を防止し、診断し、そして/または治療する有効性を評価する方法であって:
有効性を評価している療法に、動物を供し、そして
Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを評価することによって、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患を治療するかまたは防止する際の、試験される治療の有効性レベルを決定する
工程を含む、前記方法。
【請求項7】
候補療法剤が:薬学的組成物、栄養補助組成物、およびホメオパシー組成物の1以上を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
評価される療法がヒト被験体で使用するためのものである、請求項7の方法。
【請求項9】
個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、B細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応シグナル伝達経路に干渉する剤の使用であって、該剤がTcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用。
【請求項10】
その必要がある個体においてB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限する方法であって:
少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤を個体に投与する工程を含み、ここで該剤は:
i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/または
ii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する
Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記方法。
【請求項11】
個体において癌関連疾患合併症を治療し、防止し、逆転させるかまたはその重症度を制限するための薬剤製造のための、少なくともB細胞慢性リンパ球性白血病関連疾患反応カスケードに干渉する剤の使用であって、該剤が:i)細胞においてNF−κB経路を阻害し、そして/またはii)細胞においてアクチベータータンパク質1(AP−1)発現を活性化する、Tcl1に関する少なくとも1つのバイオマーカーを含む、前記使用。
【請求項12】
エピトープおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)間の相互作用の少なくとも1つを調節する、Tcl1上のエピトープに結合する抗体。
【請求項13】
請求項12の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって:
Tcl1タンパク質上のエピトープに結合可能な抗体の療法的有効量を哺乳動物に投与し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を調節する
工程を含む、前記方法。
【請求項15】
哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、B−CLL疾患状態を治療する方法であって:
アクチベータータンパク質1(AP−1)のペプチド断片の療法的有効量を哺乳動物に投与する
ここで、該ペプチド断片がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を調節する
工程を含む、前記方法。
【請求項16】
Tcl1模倣体を含む化合物であって、該Tcl1模倣体が、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を模倣するのに機能的に活性である、前記化合物。
【請求項17】
哺乳動物においてアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性を改変する、疾患状態を治療する方法であって:
Tcl1模倣体の療法的有効量を哺乳動物に投与する
ここで、該Tcl1模倣体がアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、それによって、Tcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)のキナーゼ活性を活性化する
工程を含む、前記方法。
【請求項18】
Tcl1アンタゴニストを含む化合物であって、該Tcl1アンタゴニストが、いかなる細胞においてもアクチベータータンパク質1(AP−1)に結合し、そしてTcl1が増進するアクチベータータンパク質1(AP−1)の活性化を調節するのに機能的に活性である、前記化合物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【公表番号】特表2012−509886(P2012−509886A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537606(P2011−537606)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/065072
【国際公開番号】WO2010/059779
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(510149460)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/065072
【国際公開番号】WO2010/059779
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(510149460)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【Fターム(参考)】
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