説明

転写媒体製造方法、転写媒体

【課題】着色層と樹脂層との密着力を高めて、ターゲットに対して良好な転写が可能な転写媒体製造方法、転写媒体を提供する。
【解決手段】ターゲットに対して転写可能な色材をフィルム13に付着させた転写媒体58を製造するための転写媒体製造方法において、フィルム13に対して色材を含むインクを付着させて着色層51を形成する段階と、フィルム13に付着されたインク上に当該インクが乾燥する前段階において樹脂を含む接着液を付着させて接着層64を形成すると共にインクと接着液とが混ざり合った第2中間層63を形成する段階とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成されたパターンをターゲットに対して転写可能な転写媒体、及び転写媒体を製造するための転写媒体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク(第1液体)を基材上に付着させて形成した文字や画像などのパターン(着色層)をターゲットに転写する転写媒体が知られている。すなわち、パターンを転写する場合には、シート(基材)上に転写可能に形成されたパターンを該パターン上に塗布された接着剤(樹脂層)によってターゲットに接着することにより、パターンがシートから剥離してターゲットに転写される。
【0003】
そして、こうした転写媒体において、近時は、例えば特許文献1に記載されるように、パターンの形状に合わせて、該パターン上に接着剤(第2液体)を塗布するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−314879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、スクリーン印刷版を使用してパターンを印刷すると共に、該パターンの印刷に用いたスクリーン印刷版を用いて接着剤をパターン上に塗布させている。すなわち、接着材を塗布する場合には、シートに形成された未乾燥のパターンに触れて該パターンを壊してしまわないように、パターンが乾燥して固化した状態において接着剤を塗布する必要がある。
【0006】
そのため、転写媒体は、パターンと接着剤とが、互いに表面で接触するように形成されるため、該パターンと接着剤との密着力が弱く、被写体(ターゲット)にパターンを転写する場合にパターンと接着剤とが剥離して転写ができない虞があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、着色層と樹脂層との密着力を高めて、ターゲットに対して良好な転写が可能な転写媒体製造方法、転写媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の転写媒体製造方法は、ターゲットに対して転写可能な色材を基材に付着させた転写媒体を製造するための転写媒体製造方法において、前記基材に対して前記色材を含む第1液体を付着させて着色層を形成する第1液体付着段階と、該第1液体付着段階で前記基材に付着された前記第1液体上に当該第1液体が乾燥する前段階において樹脂を含む第2液体を付着させて樹脂層を形成すると共に前記第1液体と前記第2液体とが混ざり合った着色樹脂層を形成する第2液体付着段階とを備えた。
【0009】
この構成によれば、第1液体が基材に付着して乾燥する前の流動性を有した状態において、第1液体上に第2液体を付着させることにより、第1液体と第2液体とが混ざり合った着色樹脂層を有する転写媒体を製造することができる。すなわち、第1液体により形成された着色層と第2液体により形成された樹脂層は、第1液体と第2液体とが混ざり合った着色樹脂層が形成されることにより、例えば着色層と樹脂層とが表面的に接触した場合の密着力に比べて密着力が強い。したがって、着色層と樹脂層との密着力を高めて、ターゲットに対して良好な転写が可能な転写媒体を製造することができる。
【0010】
本発明の転写媒体製造方法において、前記ターゲットに前記色材が転写された場合に当該色材の表面を保護するための透明な第3液体を、前記基材における前記第1液体が付着される領域に対して、前記第1液体付着段階よりも前段階において付着させて保護層を形成する第3液体付着段階をさらに備え、前記第1液体付着段階は、前記第3液体付着段階によって前記基材上に付着された前記第3液体上に当該第3液体が乾燥する前段階において前記第1液体を付着させて前記着色層を形成すると共に前記第1液体と前記第3液体とが混ざり合った着色保護層を形成する。
【0011】
この構成によれば、第3液体が付着した領域に第1液体を付着させることにより、着色層の表面を保護層により保護し、ターゲットに転写された着色層の耐久性を向上させることができる。また、第3液体が基材に付着して乾燥する前の流動性を有した状態において、第1液体を付着させることにより、第3液体と第1液体とが混ざり合った着色保護層を有する転写媒体を製造することができる。すなわち、第1液体により形成された着色層と第3液体により形成された保護層は、第1液体と第3液体とが混ざり合った着色保護層が形成されることにより、例えば着色層と保護層とが表面的に接触するように形成された場合の着色層と保護層に比べて密着力を強くすることができる。
【0012】
本発明の転写媒体は、ターゲットに対して転写可能な色材を基材に付着させた転写媒体において、前記色材を含む第1液体による着色層と、樹脂を含む第2液体による樹脂層と、前記第1液体と前記第2液体とが混ざり合った着色樹脂層とが前記基材上に形成されている。
【0013】
この構成によれば、第1液体と第2液体とが混ざり合った着色樹脂層が形成されていることにより、例えば第1液体による着色層と第2液体による樹脂層とが表面的に接触するように形成された場合の着色層と樹脂層に比べて密着力が強くなる。したがって、着色層と樹脂層との密着力を高めて、ターゲットに対して良好な転写が可能となる。
【0014】
本発明の転写媒体において、前記ターゲットに前記色材が転写された場合に当該色材の表面を保護するための透明な第3液体による保護層と、前記第1液体による前記着色層と、前記第3液体と前記第1液体とが混ざり合った着色保護層とが前記基材上に形成されている。
【0015】
この構成によれば、第3液体と第1液体とが混ざり合った着色保護層が形成されていることにより、例えば第1液体による着色層と第3液体による保護層とが表面的に接触するように形成された場合の着色層と保護層に比べて密着力を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の転写媒体製造装置の正面模式図。
【図2】記録ヘッドのノズル形成面を示す模式図。
【図3】制御構成のブロック図。
【図4】転写媒体の平面模式図。
【図5】(a)〜(d)は図4における5−5矢視断面であって、転写媒体の製造過程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をフィルム上にインクを噴射して転写媒体を製造する転写媒体製造装置に具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。なお、以下における明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1等の図面に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0018】
図1に示すように、転写媒体製造装置11は、直方体状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、長尺状の基材としてのフィルム13を繰り出す繰り出し部14と、そのフィルム13に第1液体としてのインクの噴射により印刷が施される印刷室15と、その印刷によりインクが付着したフィルム13に乾燥処理を施す乾燥装置16と、そのように乾燥処理が施されたフィルム13を巻き取る巻き取り部17が設けられている。
【0019】
すなわち、本体ケース12内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18が設けられており、この基台18よりも上側の領域が矩形板状のプラテン19を基台18上に支持してなる印刷室15となっている。そして、基台18よりも下側の領域において、フィルム13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に、繰り出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に、乾燥装置16及び巻き取り部17が配設されている。
【0020】
図1に示すように、繰り出し部14には、前後方向に延びる巻き軸20が回転自在に設けられ、その巻き軸20に対してフィルム13が予めロール状に巻かれた状態で巻き軸20と一体回転可能に支持されている。すなわち、フィルム13は、巻き軸20が搬送モーター55(図3参照)の駆動力に基づき回転することにより、繰り出し部14から繰り出されて搬送方向の下流側に搬送されるようになっている。そして、巻き軸20から繰り出されたフィルム13は、第1ローラー21、第2ローラー22、第3ローラー23、及び第4ローラー24に順次巻き掛けられて搬送方向を変換された後、巻き取り部17に設けられて搬送モーター55(図3参照)の駆動力に基づき回転する巻き取り軸25により巻き取られるようになっている。
【0021】
なお、印刷室15内においてプラテン19を挟んで左右方向で対向する第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部がプラテン19の上面と同一高さとなるように各々の設置される位置が調整されている。そのため、印刷室15内において第2ローラー22と第3ローラー23との間を下流側に搬送されるフィルム13は、その裏面がプラテン19の上面に摺接するようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、印刷室15内におけるプラテン19の前後両側には、左右方向に延びるガイドレール26(図1では2点鎖線で示す)が対をなすように設けられている。ガイドレール26の上面はプラテン19の上面よりも高くなっており、両ガイドレール26の上面には、矩形状のキャリッジ27が図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール26に沿って左右方向への往復移動可能な状態で支持されている。そして、このキャリッジ27の下面側には支持板28を介して記録ヘッド29が支持されている。
【0023】
この記録ヘッド29は、プラテン19に支持されたフィルム13に対してインクを噴射することにより印刷(記録)を施すと共に、第2液体としての接着液と第3液体としての保護液を噴射してフィルム13に付着させる液体付着手段として機能する。また、印刷室15内において、第3ローラー23よりも右側となる領域には、非印刷時に記録ヘッド29のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構30が設けられている。
【0024】
図2に示すように、キャリッジ27の下面側に支持された支持板28には複数個(本実施形態では6個)の記録ヘッド29がフィルム13の搬送方向(図2において白抜き矢印で示す方向)と直交する幅方向(前後方向)に亘って千鳥状の配置態様となるように支持されている。そして、各記録ヘッド29の下面となるノズル形成面39には、多数のノズル40により前後方向に沿う複数列(本実施形態では8列)の第1〜第8ノズル列41〜48が左右方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。そして、このように構成された第1〜第8ノズル列41〜48には、各ノズル列41〜48に対応するカートリッジ(図示略)から複数種類の液体がそれぞれ供給されると共に、各ノズル40に対応するように設けられた圧電素子49(図3参照)の振動に伴ってノズル40ごとに噴射されるようになっている。
【0025】
すなわち、第1〜第5ノズル列41〜45には、搬送方向において最も上流側(左側)に位置する第1ノズル列41から順に、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック,ホワイトの各色の色材を含むインクが供給されるようになっている。さらに、左側から6番目に位置する第6ノズル列46には、メタルインクが供給されるようになっている。そして、第1〜第6ノズル列41〜46から噴射されたインクがフィルム13に付着することにより、パターンとしての着色層51(図5参照)が形成されるようになっている。なお、メタルインクとは、色材としての金属性顔料を液体中に分散させたインクであって、フィルム13に付着させることにより金属箔状の着色層51を形成可能なインクである。
【0026】
また、左側から7番目に位置する第7ノズル列47には、接着液が供給されるようになっている。なお、本実施形態における接着液は、樹脂を含む接着剤成分を内包したマイクロカプセルを液体中に分散させたものであり、加熱処理や加圧処理などの付加処理を施してマイクロカプセルを破壊することによって接着性が向上する液体である。そして、フィルム13の搬送方向において最も下流側(右側)に位置する第8ノズル列48には、透明な保護液が供給されるようになっている。
【0027】
図3に示すように、転写媒体製造装置11には、該転写媒体製造装置11の駆動を統括制御するマイクロコンピューター等からなる制御部53が設けられている。この制御部53は、ユーザーにより操作される操作部54からの入力に基づき、圧電素子49、搬送モーター55の駆動を制御する。
【0028】
そこで次に、以上のような転写媒体製造装置11を用いて転写媒体58を製造する場合の製造方法について図4,図5に基づき以下説明する。
なお、図5(a)に示すように、本実施形態におけるフィルム13は、上面13aと下面13bとがそれぞれシリコン等の離型剤でコーティングされ、それらのコーティング層により上側離型層59と下側離型層60とが形成されている。そして、フィルム13は、転写媒体58の製造開始時点において搬送方向の下流側端が巻き取り軸25に巻きつけられた状態で搬送経路にセットされているものとする。
【0029】
図4及び図5(a)に示すように、転写パターンを形成する文字や画像などの印刷データとして、例えばアルファベットのRという印刷データが入力されると、まず制御部53は、インクを付着させる転写領域Aを設定する。なお、本実施形態において製造する転写媒体58は、該転写媒体58に形成された転写画像をターゲット(図示略)に左右反転して転写する。そのため、制御部53は、転写された転写画像に対して左右反転した転写領域Aを設定する。なお、ターゲットは、プラスチック、金属、布等、様々な材質で形成されたもの、あるいは、様々な材質を複合させたものである。また、ターゲットは、柔軟性や可撓性を有していても良い。さらに、ターゲットの転写面は平坦でも良いし、立体的な形状のものでも良い。
【0030】
さて、ユーザーによって操作部54が操作されて転写媒体58の製造が開始されると、制御部53は、圧電素子49を振動させてフィルム13に対して保護液、インク、接着液をそれぞれ付着させる。
【0031】
具体的には、まず制御部53は、キャリッジ27の移動に合わせて第8ノズル列48に対応する圧電素子49を振動させ、図5(b)に示すように、転写領域Aに保護液を付着させる。すると、フィルム13上には保護層61が形成される(第3液体付着段階)。
【0032】
続いて制御部53は、キャリッジ27の移動に合わせて第1〜第6ノズル列41〜46に対応する圧電素子49を振動させ、図5(c)に示すように、保護層61が形成された転写領域Aにインクを噴射して着色層51を形成する(第1液体付着段階)。すなわち、例えば箔転写のための転写媒体58を製造する場合には、メタルインクを用いて着色層51を形成する。具体的には、まずメタルインクを転写領域Aに付着させ、その後ホワイトインクを転写領域Aに付着させることで、銀色の着色層51を形成する。
【0033】
なお、制御部53は、保護液が乾燥して固化する前段階の流動性を有した状態においてインクを付着させる。すると、保護液とインクが混ざり合って着色保護層としての第1中間層62が形成される。すなわち、フィルム13上には、保護液からなる保護層61と、保護液及びインクが混合した第1中間層62と、インクからなる着色層51とが積層状に形成される。
【0034】
そして次に、制御部53は、キャリッジ27の移動に合わせて第7ノズル列47に対応する圧電素子49を振動させ、図5(d)に示すように、転写領域Aに接着液を付着させる(第2液体付着段階)。
【0035】
なお、制御部53は、インクが乾燥して固化する前段階の流動性を有した状態において接着液を付着させる。すると、インクと接着液が混ざり合って着色樹脂層としての第2中間層63が形成される。すなわち、着色層51上には、インク及び接着液が混合した第2中間層63と、接着液からなる樹脂層としての接着層64とが積層状に形成される。
【0036】
さて、フィルム13に対する印刷が終了すると、制御部53は搬送モーター55を駆動してフィルム13を搬送方向の下流側へ搬送し、乾燥装置16において乾燥処理を施す。すると、溶媒が蒸発して保護層61、第1中間層62、着色層51、第2中間層63、接着層64がフィルム13上に定着する。その後、フィルム13は、接着層64が下側離型層60に接触するように巻き取り軸25に巻き取られるようになっている。
【0037】
なお、乾燥装置16の温度は、接着層64中のマイクロカプセルを破壊しない程度の温度に設定されている。そのため、下側離型層60と接着層64との密着力は、第1中間層62及び第2中間層63を形成して積層状に形成された保護層61と着色層51と接着層64との密着力よりも弱い。したがって、巻き取られたフィルム13を解いた場合には、下側離型層60と接着層64とが剥離し、フィルム13の上面13aに該フィルム13側から順に保護層61、第1中間層62、着色層51、第2中間層63、接着層64が積層状に形成された状態となる。
【0038】
また、第1中間層62及び第2中間層63を形成して積層状に形成された保護層61と着色層51と接着層64との密着力は、保護層61と上側離型層59との密着力よりも強い。そのため、ターゲットに着色層51を転写する場合には、まず接着層64に付加処理を施してマイクロカプセルを破壊する。そして、接着性が発現した接着層64をターゲットに接着させてフィルム13を剥離することにより、上側離型層59と保護層61とが剥離され、着色層51は該着色層51の表面が保護層61に保護された状態でターゲットに転写される。
【0039】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インクがフィルム13に付着して乾燥する前の流動性を有した状態において、インク上に接着液を付着させることにより、インクと接着液とが混ざり合った第2中間層63を有する転写媒体58を製造することができる。すなわち、インクにより形成された着色層51と接着液により形成された接着層64は、インクと接着液とが混ざり合った第2中間層63が形成されることにより、例えば着色層51と接着層64とが表面的に接触した場合の密着力に比べて密着力が強い。したがって、着色層51と接着層64との密着力を高めて、ターゲットに対して良好な転写が可能な転写媒体58を製造することができる。
【0040】
(2)保護液が付着した転写領域Aにインクを付着させることにより、着色層51の表面を保護層61により保護し、ターゲットに転写された着色層51の耐久性を向上させることができる。また、保護液がフィルム13に付着して乾燥する前の流動性を有した状態において、インクを付着させることにより、保護液とインクとが混ざり合った第1中間層62を有する転写媒体58を製造することができる。すなわち、インクにより形成された着色層51と保護液により形成された保護層61は、インクと保護液とが混ざり合った第1中間層62が形成されることにより、例えば着色層51と保護層61とが表面的に接触するように形成された場合の着色層51と保護層61に比べて密着力を強くすることができる。
【0041】
(3)インクと接着液とが混ざり合った第2中間層63が形成されていることにより、例えばインクによる着色層51と接着液による接着層64とが表面的に接触するように形成された場合の着色層51と接着層64に比べて密着力が強くなる。したがって、着色層51と接着層64との密着力を高めて、ターゲットに対して良好な転写が可能となる。
【0042】
(4)フィルム13と着色層51との間に保護層61を形成することにより、フィルム13とインクの相性に関わらず着色層51を形成することができる。すなわち、例えば、撥水性を有する樹脂製のフィルム13上に染料や顔料といった色材によって着色された液体(インク)で印刷を行う場合でも、シリカなどの無機微粒子や膨潤性樹脂を含む透明なコート剤を用いて保護層61を形成することにより、インクの定着性を高めることができる。
【0043】
(5)圧電素子49を振動させて接着液を噴射することにより、マイクロカプセルが維持された状態で接着液をフィルム13に付着させることができる。すなわち、接着液の接着力が低減された状態で接着液を噴射することができるため、ノズル40の目詰まりを抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・プラテン19に埋設されて該プラテンを加熱するヒーターや、プラテン19上に電磁波を放射して加熱する放射式のヒーター、また、風(温風)を吹き付ける送風装置などの乾燥手段を設け、プラテン19上に支持されたフィルム13に乾燥処理を施してもよい。すなわち、フィルム上に付着した保護液とインク、及びインクと接着液は、互いの流動性に応じて混ざり合う。そのため、フィルム上に付着したインクの溶媒の蒸発を促進させた場合には、保護液とインクの流動性の低下が促進され、保護液とインク、及びインクと接着液の混ざり合う量が減少する。したがって、乾燥処理を施すことにより、第1中間層62,第2中間層63の厚みを調整することができる。
【0045】
・インク、保護液、接着液を噴射するヘッドを個別に備えてもよい。
・保護液を付着させず、保護層61を形成しなくてもよい。また、保護層が形成されたフィルムを用いてもよい。
【0046】
・記録ヘッド29に離型材を噴射する機構をさらに備え、フィルム13に対して離型材を噴射して上側離型層59を形成してもよい。なお、この場合、転写領域Aに対して離型材を噴射し、着色層51の形状に合わせて上側離型層59を形成してもよい。
【0047】
・熱硬化性の樹脂や、熱を加えると軟化し、冷えると硬化する熱可逆性の樹脂などを接着液として用いてもよい。
具体的に、熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・変性ロジン及びその誘導体、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂等を用いることができる。
【0048】
・接着液として紫外線硬化接着剤を用い、付加処理として紫外線を照射してもよい。また、接着液として、粘着性付与剤、フィラー、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、難燃剤、老化防止剤、熱安定剤等を含む液体を用いてもよい。
【0049】
・保護液として、例えば、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を含む液体を用いてもよい。
【0050】
・インクとして、例えば、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリルポリオール樹脂等を含む液体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
13…フィルム(基材)、51…着色層、58…転写媒体、61…保護層、62…第1中間層(着色保護層)、63…第2中間層(着色樹脂層)、64…接着層(樹脂層)、A…転写領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに対して転写可能な色材を基材に付着させた転写媒体を製造するための転写媒体製造方法において、
前記基材に対して前記色材を含む第1液体を付着させて着色層を形成する第1液体付着段階と、
該第1液体付着段階で前記基材に付着された前記第1液体上に当該第1液体が乾燥する前段階において樹脂を含む第2液体を付着させて樹脂層を形成すると共に前記第1液体と前記第2液体とが混ざり合った着色樹脂層を形成する第2液体付着段階と
を備えたことを特徴とする転写媒体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写媒体製造方法において、
前記ターゲットに前記色材が転写された場合に当該色材の表面を保護するための透明な第3液体を、前記基材における前記第1液体が付着される領域に対して、前記第1液体付着段階よりも前段階において付着させて保護層を形成する第3液体付着段階をさらに備え、
前記第1液体付着段階は、前記第3液体付着段階によって前記基材上に付着された前記第3液体上に当該第3液体が乾燥する前段階において前記第1液体を付着させて前記着色層を形成すると共に前記第1液体と前記第3液体とが混ざり合った着色保護層を形成することを特徴とする転写媒体製造方法。
【請求項3】
ターゲットに対して転写可能な色材を基材に付着させた転写媒体において、
前記色材を含む第1液体による着色層と、樹脂を含む第2液体による樹脂層と、前記第1液体と前記第2液体とが混ざり合った着色樹脂層とが前記基材上に形成されていることを特徴とする転写媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の転写媒体において、
前記ターゲットに前記色材が転写された場合に当該色材の表面を保護するための透明な第3液体による保護層と、前記第1液体による前記着色層と、前記第3液体と前記第1液体とが混ざり合った着色保護層とが前記基材上に形成されていることを特徴とする転写媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−73437(P2011−73437A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157046(P2010−157046)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】