転写紙特性測定方法及び測定装置並びに画像形成装置
【課題】画像形成装置の転写紙の特性を簡単な構成で検出することができ、且つ転写紙の特性検出以外の用途にも応用可能な転写紙特性測定方法及び測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の転写紙特性測定方法及び測定装置では、転写紙Pの表面近傍に、転写紙Pを加熱させることが可能な加熱手段(加熱部)14と、転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段(検出センサ)11とを設け、加熱手段14の非加熱時に転写紙Pの表面近傍に設けられた検知手段11によって検知した空気の温度と湿度の変化量から転写紙Pの含水分状態を推測し、含水分状態の推測後、転写紙Pを加熱手段14で暖めることによって増加した水分蒸散量を検知手段11によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、転写紙の含水分量と厚みを計測する。
【解決手段】本発明の転写紙特性測定方法及び測定装置では、転写紙Pの表面近傍に、転写紙Pを加熱させることが可能な加熱手段(加熱部)14と、転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段(検出センサ)11とを設け、加熱手段14の非加熱時に転写紙Pの表面近傍に設けられた検知手段11によって検知した空気の温度と湿度の変化量から転写紙Pの含水分状態を推測し、含水分状態の推測後、転写紙Pを加熱手段14で暖めることによって増加した水分蒸散量を検知手段11によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、転写紙の含水分量と厚みを計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成動作によりトナー像が転写され、加熱溶融定着される転写紙から自然発生又は熱を加えることによって強制発生する水蒸気変化を捉え、その水分変化から転写紙特性情報を推測する技術を有した転写紙特性測定方法及び転写紙特性測定装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどや、これらを備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置では、画像形成動作により感光体ドラム上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体である転写用の用紙(以下、転写紙と言う)に転写し、定着装置により未定着のトナー像を加熱することによって溶融させ、転写紙に定着させて外部に出力(排紙)する。これらの画像形成装置においては、転写紙の含水分や厚みが転写特性や定着特性に大きく関与する。転写紙の含水分が多いほど又は、厚みが厚いほど、転写に関しては転写電流を増大させる必要があり、また定着に関しては熱量を増大させる必要がある。言い換えれば、一定の電流、熱量で転写、定着可能な転写紙の種類は限られてしまう。このため、厚みに関しては外部スイッチにより転写紙の厚みを指定し転写電流と定着温度を調整したり、定着速度を調整したりするなどの対応をしている。
【0003】
ところが転写工程と定着工程は、画像品質に大きく影響を及ぼす工程であり、特に画質については厳しいフルカラー複写機においては、使用する転写紙の種類も多く、外部スイッチによる記録媒体の指定だけでは、高画質を維持することができない。さらには、転写紙の厚みによって、転写紙の反り(カール)量に違いが生じる為、定着装置通過後に転写紙が熱によって反り上がり、定着装置部に巻き付いて装置内に転写紙が詰まるなどの搬送不良を起こす虞もあるので、転写紙の厚みに応じて、各プロセス条件等を設定、制御し、画像品質不良や搬送不良が生じないようにする必要もある。
【0004】
また、近年の画像形成装置は、複合多機能化されているものが多くあり、中でもパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと言う)を通じて印刷処理を行うプリンタ機能を利用することが多く、パソコンにて設定された条件を画像形成装置に送り、その条件に基づいて装置内の制御を行い印刷する。転写紙の設定もこの時行なわれることが多いが、設定するのは転写紙のサイズや明らかに異なる紙種(例えば、普通紙、OHPシート、はがき、特殊紙、など)のみの設定を行い、設定内容に応じて、印刷条件を変更するのが大半であるが、転写紙の厚みについては、「厚紙」というだけの設定をする場合はあるが、その厚さが何μmなのかという条件までは設定されない。また、組み合せて条件を設定する事も難しく、例えば、普通紙の厚紙などという条件を設定することは、設定するパラメータ数が増加する事になり、操作性が低下し、機能拡大に伴うコスト高に繋がってしまうため、あまり採用されていない。
そのため、転写紙の厚みに応じた画像形成条件の自動制御や転写紙の搬送制御を行うために、転写紙の厚みを検出する検出手段を備えた画像形成装置が従来から数多く提案されている。そして、このような画像形成装置の従来例としては、以下の(1)〜(3)のような特徴を持ったものが提案されている。
【0005】
(1)転写紙を挟むように超音波発信装置と受信装置を配置して超音波を照射、透過した超音波信号を受信装置にて受信し、受信した信号の変化量によって転写紙の厚みを算出する。
(2)転写紙に赤外線又は、LEDレーザーを照射し反射信号を受信装置にて検出した信号の変化に基づいて、転写紙の厚みを算出する。
(3)転写紙に可動磁性体を当接させ、可動磁性体が作る磁界の大きさを転写紙の厚みとして検出する。
【0006】
しかしながら、上記の(1)の超音波は空気を伝達媒体としている為、周囲の環境(温度や湿度、風)変化により、予期せぬ屈折や反射が起きたり、発信部又は、受信部の表面に水滴や紙粉が付着することによって、検出距離や検出領域が変化してしまうなど、検出動作が不安定になる虞がある。
(2)は原理が超音波信号と光学信号の違いはあるものの、装置構成などは(1)とほとんど変わらないと言え、また光学信号も周囲環境の影響を受け易いことから、(1)と同様の課題が発生する。また、結露などによって、発光素子や受光素子に水滴などが付着すると、正しく発光、受光できなくなる為、正確に検出できなくなる虞もある。さらに、発光素子側に多く用いられる、LED光源の発光強度は、累積発光時間に反して減衰する特性があるので、減衰が進行すると被測定物からの反射光が弱くなり受光素子からの出力が不安定になり、検出精度が悪化する。
(3)は磁気量センサによって転写紙の厚みを検出しているが、転写紙の含水分によって磁気量が変化する為、同じ厚みの転写紙でも含水分が異なると検出値が変わってしまう虞がある。また、画像形成装置に用いられる最近の転写紙は、画像品質を高めるために表面に薬剤によるコーティングがされているものや、特殊な表面処理が施されているものがあり、このような転写紙に対しても磁気量は変化するので、転写紙の厚みを正確に検出することは困難である。
【0007】
このように、従来例の(1)〜(3)では上記のような課題が予想でき、いずれにおいても検出するための装置構成が複雑であり、高価になるため、転写紙の厚みを検出するだけの装置としては、コストパフォーマンスが悪い。
【0008】
また最近では、本発明者らが提案しているような、転写紙近傍の湿度測定手段を用いて転写紙特性を検出する創案もされているが、どれも主となる発明は含水分検知を取上げており、その応用作用として厚み情報も把握できると記載されている。また、含水分検知と厚み検知をそれぞれ別の検知手段によって検出するといった方法を提案しているものもあるが、それらのほとんどが含水分検知に関してはある程度詳細な説明が記されているが、厚み特性の取得に関しては、詳細な検出方法や装置の説明はなく、あいまいな表現になっているものが多い。
【0009】
例えば従来技術の一例として、特許文献1(特開2007−205693号公報)に記載の「用紙厚検出方法及び画像形成装置」では、画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成されたトナー像が転写される転写紙の含水分量から転写紙の厚みを検出する方法であって、転写紙搬送路上を搬送される転写紙表面と近接して対向する位置に湿度検出センサを設置し、転写紙が前記湿度検出センサと対向する位置を通過している時間と、この通過時間内に前記湿度検出センサによる湿度検出によって得られる湿度の変化量とから、転写紙の厚みを検出するステップを備え、転写紙の厚み条件を、簡単な構成で正確に検出することができ、且つ転写紙厚の検出以外の用途にも応用可能な転写紙厚検出方法及び画像形成装置の提供を実現している。しかしながら、この従来技術では、転写紙の通過中に変化する湿度の最大変化量を検知し、さらに最大変化値から終息する値の変化傾向と転写紙の厚みとの関係を照合して厚み特性を求めるため、湿度変化の最大到達値を見極める時間が必要となる。
したがって、日々印刷速度が向上している画像形成装置へ採用するには、この方法では限界があるため印刷速度が更に高速化しても追従可能な測定方法が必要となる。
【0010】
特許文献2(特開平09−204080号公報)に記載の「記録紙水分量検知方法及び画像形成装置」では、熱定着制御を行う画像形成装置の定着部及び、転写紙搬送部において転写紙が通過する部分に加熱することが可能なヒートローラを用いて転写紙を加熱し、発生した水蒸気を転写紙の水分量として湿度センサにて検出し、さらに、厚み検知又は、入力手段として転写紙の厚みを検知する検知手段から検出した情報に基づいて画像形成における転写プロセス(転写、分離)及び定着プロセス(ニップ幅、温度)の制御条件を変化させることにより良質な画像形成を行うことができる画像形成装置の実現を提案している。しかしながら、この従来技術では、転写紙を加熱した場合、転写紙の持つ水分量によって発生する水蒸気量が変化する。例えば、水分を多く含んだ転写紙を加熱した場合、大量の水蒸気が発生してしまう。特に熱定着処理を行う定着部などにおいては、水蒸気が発生すると、装置周囲に水滴となって付着し、結露状態になることが予想される。そして、この付着した水滴が装置内に残留し、画像不良や搬送不良、さらには、装置不良を招くそれがあるため、別途水滴を除去するための排気機能などが必要になってくる。また、転写紙には画像形成時に最適な含水率(4〜6%前後)がある。そのため、画像形成前の転写紙搬送部における転写紙の加熱制御を行ってしまうと、この含水率が崩れてしまい、転写紙の含水率を低下させることになるため、画像品質を悪化させる可能性があり、また、転写紙の部分的な加熱を行ない、発生した水蒸気量を捉えるとされているが、転写紙から発生する水蒸気量は転写紙の持つ水分量によっては、微量な時もある。
【0011】
この場合、発生した水蒸気は周囲環境に馴染み易くなってしまい周辺環境との違いを見極められなくなってしまう他、検知(詳細不図示)又は、入力した厚み情報との整合も取れない可能性があるため、転写紙に対する正確なプロセス制御、特に定着制御は不可能である。
従って、転写紙の水分計測は、転写紙に接触させて熱を与えることなく、転写紙の持つ本来の水分状態を検出することが好ましく、厚み特性も事前に入力するような、あいまいな情報ではなく、印刷が行われる転写紙の厚みを直接計測することが正確である。
【0012】
特許文献3(特開2007−322558号公報)に記載の「水分量推定装置、シート材処理装置、水分量推定方法、及びシート材処理方法」では、「シート材に接触または近接する位置でシート材の水分量に関する第1の情報を検知する、第1の検知手段を有する水分量推定装置において、シート材に含まれる水分に関する第1の情報を検知する工程と、シート材に含まれる水分に関する情報に影響を与える要因に関する第2の情報を検知する工程と、第1の情報と第2の情報とに基づいてシート材の水分量を予測的に推定演算し、推定演算した水分量に基づいて画像形成の処理条件を調整する工程を備え第1の検知手段には、MEMS技術によって形成された、熱伝導式の湿度センサを設ける」ことを特徴とした提案がされている。この従来技術では、シート材(以下、転写紙とする)に近接した位置で湿度を検出する第1の検出手段によって検出された値と、装置内の搬送路周辺に設置された第2の検出手段によって検出された情報に基づいて、画像形成プロセス処理が行なわれる転写紙の情報を推定するとされているが、第2の検出手段は、搬送路周辺つまり、装置内の環境を計測しており、その環境影響によって、変化するであろう転写紙の情報を推定している。しかしながら、装置内又は、搬送路周辺の環境(温度、湿度)には、必ず分布がある。例えば、加熱定着を行う定着装置近傍の搬送路周辺に検知手段を設置すれば、比較的高温環境となる。また逆に転写紙が収納される給紙部に近い搬送路周辺に設置した場合、低温環境となる。さらに、トナー材を転写紙に転写する転写部においても、前述した場所とでは環境が異なることが考えられる。また、連続印刷動作が行われているような場合においても、連続印刷が行なわれる枚数と時間によって、各画像形成プロセス部の環境は刻々と変化する。
【0013】
従って、検知手段を設置する場所によって、転写紙の情報は、大きく変わってくるため、推定された情報によって、各画像形成プロセス制御を行うことは、好ましいとは言えず、この方法を用いてこれらの課題を解決するには、画像形成プロセス毎(現像、転写、定着等)に、第3、第4、第5の検出手段を設けることが必要となり、部品点数が増え必然的にコストが上昇するので、実用化には不向きな方法と考えられる。
また、特許文献3の実施形態2では、第1の検知手段を移動させ、第1、第2の検知手段を兼用するとしているが、
(1)移動距離によっては、転写紙近傍との検出値に違いが見られない可能性がある。
(2)検知手段が移動することによって、移動前の環境を移動後の位置に、連れ回す可能性がある。
(3)検知手段を移動させた際に発生する空気の流れによって、検出値が乱れることが予想でき、これを防止するために、ゆっくり移動させようとした場合、近年高速印刷化が進んでいる画像形成装置では、転写紙搬送速度に検出が追いつかない。
(4)(1)の課題を解決するために移動距離を長くした場合、移動するのに時間がかかるので、(3)の課題が生じる。
(5)(1)〜(4)の課題は、本出願人が指定しているMEMS技術にて形成された熱伝導式湿度センサなどの、検知応答性が高いセンサほど、顕著に現れる。
などの課題が容易に予想でき、転写紙のどの情報も正確には把握できないので、実用化には不向きと考えられる。
【0014】
特許文献4(特開2007−86054号公報)に記載の「非接触結露検出方法と非接触結露検出装置及びそれを使用した用紙変形抑制方法並びに画像形成装置」では、測定対象物に結露センサを直接取り付けずに、測定対象物に接する連続空間である周囲雰囲気の物理的状態変化から測定対象物表面への気体の凝集ならびに蒸散を、物体表面に非接触で遠隔個所で検出することができるとともに、測定対象物表面への結露が形成される過程を迅速に検出して測定対象物表面の結露をより正確に予測することができる非接触結露検出方法及び非接触結露検出装置を提供することを目的とし、また、この非接触結露検出装置を使用して画像を形成する記録用紙に含まれる水分の蒸散速度をリアルタイムで検出して、急激に乾燥することにより引き起こされる記録用紙のカール等の変形を高精度で予測し、記録用紙の変形を防止することができる用紙変形抑制方法並びに画像形成装置を提供することを目的とするものであり、その解決手段として、この従来技術の非接触結露検出方法では、物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度と流方向又は流速と圧力及び成分の各要素のいずれか又は各要素を組み合わせて周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を測定し、測定した周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程により、物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出することを特徴としている。
【0015】
また、特許文献4では、「図30(a)の斜視図と(b)の断面図に示すように、センサ基板22の上面22aに記録用紙39の搬送方向に沿ってサーモパイルや焦電構造の赤外線センサ等の焦電素子54と温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置し、センサ基板22の下面22bの焦電素子54と対向する位置に放熱素子55を配置し、センサ基板22の中央をエッチング等により除去して記録用紙39の側端部を通す空隙56を設けた計測手段12gを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用しても良い。この計測手段12gを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用した場合、放熱素子55から放射された熱は空隙56を横切って焦電素子54で検出される。この空隙56に記録用紙39が搬送されていると、放熱素子55から短時間例えば数10msec放射された微小熱量例えば数10mW程度の熱により、記録用紙39の端部の微小範囲で僅かな温度例えば0.1℃程度上昇し、微小範囲の水分が蒸散する。この蒸散の挙動を温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5で測定することにより蒸散量や温度を測定することができる。また、空隙56に記録用紙39が搬送されたとき、焦電素子54で記録用紙39を透過する赤外線量を検出することにより、記録用紙39の質(繊維密度)や含有水分量が測定でき、用紙変形の予知精度を高めることができる。」としている。
【0016】
しかしながら、この特許文献4に記載の従来技術では、
(1)ひとつの計測手段に複数の温度、湿度センサとフローセンサが配置されており、且つ、それらを構成した計測手段を3つ必要としているが、センサの電気的特性に違いが生じる為、それぞれの検出値において検出誤差が現実問題として生じる虞がある。よって、それらの検出値を用いて蒸散速度を算出した場合、算出結果に対して、更なる誤差が生じることになるので、最終的に算出された値の精度が低下する。
(2)第2の計測手段は、転写装置の下流側つまり定着装置の傍に設置することになる。この場合、定着装置からの温度影響によって、水分の蒸散量が変化すると考えられるため、下流側と上流側の偏移量が本来の蒸散量よりも値が大きくなるため、蒸散速度に誤差が生じる。
(3)記録用紙(以下、転写紙とする)の蒸散挙動を検出する位置は、搬送される転写紙の先端部としているが、移動している転写紙表面には空気の流れが生じている。いくら端部の換気性がよく蒸散量が多くてもその水分は、流れに乗って転写紙後方に流れていくので、端部の蒸散挙動を検出しても本来の蒸散量にはならない。
(4)転写紙の変形を推測するのに複数の計測手段を必要としているため、構成が複雑になる他、コスト的に見ても好ましい構成とは言い難い。
(5)また、図30のような本発明と酷似した測定方法を採用しているが、本発明とは目的と得られる効果が明らかに違う他、検知部を構成するセンサ基板が温度、湿度センサ及び、赤外線センサなどの焦電素子、さらに放熱素子を含んだ一体形成となっているため、焦電素子や放熱素子の駆動時の発熱による熱が基板を伝わり、温度センサ及び、湿度センサへ影響するため温度、湿度センサの検知結果が不正確となり、変形の予知精度が悪くなる。また、この構成だと転写紙の端部表面しか測定することができず、画像形成装置内などに設置しようとした場合、転写紙端部を通過する箇所にしか設置することができないため、サイズの異なる転写紙を同一の搬送路上で検出を行うには、サイズに合わせて検知部を移動させる手段が必要となるなど、設置箇所が限定されてしまう。
などの課題が発生する。
【0017】
よって、
(1)計測手段は、1種類で構成することで、電気的特性による検出誤差を抑え、
(2)定着装置の影響を受け難い、転写装置より上流側つまり、転写紙が収納される給紙トレイ寄りの位置に設置し、
(3)搬送されてくる転写紙表面の端部から端部までの両端間の蒸散挙動を捉える、
ことが必要となる。
これにより、構成が簡易となり、コスト的な観点からみても好ましい構成となる。
また、焦電素子や放熱素子などの発熱する素子と温度、湿度などの検知素子は、同一の基板上に形成せず、熱の影響を受け難くするため、それぞれ別の基板に形成し独立させ、転写紙表面のどの部分でも検出できる構成とすることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述した通り、画像形成装置においては、転写紙の含水分や厚みが定着特性に大きく関与している。従って、画像形成装置における加熱定着装置を転写紙に対して正確に制御するには、定着を行う転写紙の水分状態と厚みを把握する必要があるため、転写紙ごとに測定する必要がある。
従来の加熱手段を転写紙に接触させた状態で加熱させ、転写紙から蒸散する水蒸気の湿度を検出する方法では、転写紙の含水分が奪われ過ぎてしまい、画像形成時に最適な水分状態(4%〜6%)を保てなくなるほか、転写紙の組成をも変化させてしまう。さらにトナーが転写紙に転写される前に上述のような測定を行ってしまうと、転写紙が暖められ高温状態となり、この状態でトナーが転写されてしまうと、定着プロセスを通過する前にトナーが溶融してしまい、画像品質不良の原因となってしまうので、転写紙自体は高温状態にしないように測定する方法が必要である。
また、転写紙全面を加温することなく局所部を加温することが可能な加熱手段を用いることで含水分を奪い過ぎないようにする新たな測定方法が必要となる。
【0019】
複数の高速な湿度センサなどによって、転写紙の含水分を測定する手段を用いた方法があるが、その方法によって転写紙の特性を測定することに関しては、センサの電気的特性や検知個所の違いによる測定誤差が大きく発生する虞があるため、複数の検知手段による構成では困難となる。よって、測定誤差を容易に抑えることが可能で且つ、微小な水分変化を精度よく捉える検知部を用いた単一の検知手段による新たな検出方法が必要となる。
また、近年の画像形成装置内を移動する転写紙の搬送速度は200mm/sec以上となる。従って、高速に搬送される1枚ごとの転写紙の特性を短時間で見極め、高速に測定することが必要となる。
【0020】
転写紙の紙面近傍の温度及び、湿度変化から転写紙の特性を測定する装置によって、加熱定着装置の加熱温度制御を有する画像形成装置において、転写紙の表面近傍に加熱させることが可能な加熱手段を設け、該加熱手段の非加熱時に転写紙表面からの水分蒸散量を転写紙表面近傍に設けられた検知手段によって検知した空気の湿度変化量から転写紙の含水分状態を推測し、前記含水分状態推測後、転写紙を該加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を空気の温度並びに湿度変化量として該検知手段で検知した転写紙の含水分量と厚みに応じて、転写紙一枚毎に加熱定着装置の定着条件を適正に制御する必要がある。
また、前記加熱手段の加熱部を接触させてしまうと、転写紙自体が必要以上に高温状態となったり、転写紙の組成を壊したりするので、転写紙表面に対して、効率よく伝熱させることができ、且つ接触することなく加熱できる方法が必要となる。
【0021】
液体や固体の物体の表面から空気中に水分が蒸散すると、その表面に近い空間の湿度が変化し、分布ができる。表面の形状や気温、湿度、風速などによって分布はさまざまであるが、湿度が大きく変化する範囲は、一般に表面から1cm以内の狭い空間とされ、数cm以上離れると対流により、蒸散した水蒸気が周囲の空気と混合しほぼ一様な分布になる。適切に水分調節された転写紙に含まれる水分は、4〜6%とされており、その水分量は数百ミリグラムと僅かな量となる。よって転写紙表面から放出される水分も微量である為、この微量の水分を検知するには、転写紙からの距離が離れるほど、その場の環境に馴染み易くなってしまい、周辺環境との違いを見極められなくなってしまう為、従来のような装置周辺や転写紙収納トレイ近傍など転写紙との距離が明確にされていないような位置に装着された湿度センサでは、転写紙自体から発生する水分を見極めることは困難であるため、転写紙との検出距離を、規定して検知することが必要となる。
【0022】
転写紙を連続給紙して連続印字(連続画像形成)する場合などのように、複数の転写紙が転写紙搬送路を連続して通過する場合には、転写紙の含水分量によって画像形成装置内の環境が変化する。例えば、含水分量の多い転写紙を連続して連続印字する場合には、画像形成装置内は高湿度状態となることで、加熱定着を行う定着装置などで結露が発生し、現像装置などでは、感光体ドラム表面に付着した放電生成物が水分を吸着することによってフィルミング現象が発生し、画像品質不良の原因となったりするのを回避するため、装置内が高湿度状態であることを検知することが可能な検知手段が必要となる。
【0023】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、画像形成装置に用いられる転写紙の特性を、簡単な構成で検出することができ、且つ転写紙の特性検出以外の用途にも応用可能な、転写紙特性測定方法及び転写紙特性測定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、その転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置を用いて良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定方法であって、前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを設け、前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測することを特徴とする(請求項1)。
【0025】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする(請求項2)。
本発明の第3の解決手段は、第1または第2の解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする(請求項3)。
本発明の第4の解決手段は、第1乃至第3のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする(請求項4)。
本発明の第5の解決手段は、第1乃至第4のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする(請求項5)。
本発明の第6の手段は、第1乃至第5のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする(請求項6)。
本発明の第7の解決手段は、第1乃至第6のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする(請求項7)。
【0026】
本発明の第8の解決手段は、画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定装置であって、前記転写紙の表面近傍に設けられ該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙の表面近傍に設けられ前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段と、前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測する手段と、前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測する手段と、を有することを特徴とする(請求項8)。
【0027】
本発明の第9の解決手段は、第8の解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする(請求項9)。
本発明の第10の解決手段は、第8または第9の解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする(請求項10)。
本発明の第11の解決手段は、第8乃至第10のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする(請求項11)。
本発明の第12の解決手段は、第8乃至第11のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする(請求項12)。
本発明の第13の解決手段は、第8乃至第12のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする(請求項13)。
本発明の第14の解決手段は、第8乃至第13のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする(請求項14)。
【0028】
本発明の第15の解決手段は、画像形成動作により像担持体上に形成された画像を転写紙に転写し、定着する画像形成装置において、第1乃至第7のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法、または第8乃至第14のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置を用い、前記転写紙の紙面近傍の温度及び湿度変化から該転写紙の特性を測定することによって加熱定着装置の加熱温度を制御する手段を備えることを特徴とする(請求項15)。
【0029】
本発明の第16の解決手段は、第15の解決手段の画像形成装置において、前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを有する転写紙特性測定部を設け、前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測し、該計測した前記転写紙の含水分量と厚みに応じて前記加熱定着装置の定着条件を制御する手段を備えることを特徴とする(請求項16)。
【0030】
本発明の第17の解決手段は、第16の解決手段の画像形成装置において、画像形成装置全体の動作を制御する制御手段は、前記転写紙が前記転写紙特性測定部を通過していない時には、前記転写紙特性測定部によって得られる温度測定値並びに湿度測定値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定することを特徴とする(請求項17)。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、転写紙を表面近傍にて加熱し、加熱されたことによって発生した水蒸気の湿度を検出し、その変化量と転写紙の厚み特性とを関連つけることによって、転写紙の厚み特性を推測することが可能となる。
また、本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、加熱手段にMEMS技術を用いた熱伝導方式の感温抵抗体を用いることによって、少ないエネルギー量で瞬時に規定の加熱温度に到達することができるので、転写紙内に含まれる水分を短時間で暖め蒸散させることができるので転写紙が検知手段を通過移動するような場合であっても、転写紙の厚みを短時間で正確に推測することが可能となる。
さらに本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、検知手段をMEMSを用いて極めて熱容量の小さな感温抵抗体で形成した構成としたため、出力応答性能を非常に高くすることができ、且つ高速応答も実現できるので、高速移動する転写紙の移動速度に追従した検出が可能となる。また、外観形状を数mm単位に小さくすることができるので、装置内に配置しても他の装置レイアウトの妨げにならずに設置が可能となる。
【0032】
本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、検知手段の検知部、及び加熱手段の加熱部を非接触で検知、加熱するので、転写紙を傷めることなく、転写紙の特性情報を取得することが可能となる。
また、本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、検知手段のセンサ部と加熱手段のヒータ部の転写紙表面との間の距離を規定することにより、周囲環境の影響を受け難くし、且つ転写紙から発生する水分状態をより正確に検出することが可能となり、高速搬送される転写紙一枚毎における画像形成装置の定着制御を精度よく、良好に行うことが可能となる。
【0033】
本発明に係る画像形成装置によれば、上記の構成及び効果を有する転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置を用い、「含水分値と加熱時の湿度変化量と厚み特性の関係」に基づいた判定基準(後述の図5)を用いることによって、転写紙の含水分及び厚みを推測し、推測した情報に応じて、定着制御条件を設定、制御することで、良質な画像を常に保つことが可能な画像形成装置を実現することができる。
また、本発明に係る画像形成装置によれば、連続印字時における転写紙と転写紙の合間や、画像形成装置の電源オン時などにおいて、転写紙が検知手段(例えば温・湿度検出センサ)と対向する位置を通過していない時の検知手段(温・湿度検出センサ)による温・湿度検出によって得られた温度、湿度値から画像形成装置内の環境を把握することができるので、得られた温度、湿度値に応じて画像形成装置内の環境を制御することによって、画像形成装置内を最適な画像形成制御状態に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の制御系を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る含水分量が同一の転写紙における加熱有無による湿度検出変化の違いを示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る含水分量が同一で厚み特性の異なる転写紙の湿度検出変化の違いを示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る含水分値と加熱時の湿度変化量と厚み特性の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る測定方法を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施例2に係る制御部を示す概略ブロック図である。
【図8】加熱による転写紙からの水分移動を検出センサが捉えている様子を示す模式図である。
【図9】湿度検出センサのセンサ出力と時間との関係を示した図である。
【図10】本発明の実施例2に係る検出ユニット構造の一例を示す図であって、(イ)は斜視図、(ロ)は分解図、(ハ)は測定形態図である。
【図11】本発明の実施例2における検出ユニット構造の別の例を示す図であって、(イ)は斜視図、(ロ)は分解図、(ハ)は測定形態図である。
【図12】本発明の実施例3に係る検出ユニット構造の一例を示す図であって、図10、図11に示す検出ユニット構造に対し先端部が異なる形状を持つユニットの斜視図である。
【図13】(a)及び(b)は本発明の実施例4に係る検出ユニット構造の一例を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施例4に係る検出ユニットにおける、画像形成装置などの装置内で測定を行う際の別構成となる斜視図である。
【図15】本発明の実施例5に係る検出ユニット構造の一例を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施例5に係る検出ユニット構造の別の例を示す図であって、(イ)は斜視図、(ロ)は測定形態図である。
【図17】本発明の実施例6に係る測定装置を示す概略ブロック図である。
【図18】本発明の実施例6に係る測定方法を示すフローチャート図である。
【図19】本発明の実施例7に係る測定方法を示すフローチャート図である。
【図20】本発明の実施例7に係る定着制御条件を決定する条件設定テーブルの一例を示す図であり、(a)は定着温度、(b)はニップ幅の条件設定テーブルを示す図である。
【図21】本発明の実施例8に係る動作を示すフローチャート図である。
【図22】湿度検出センサと転写紙との距離を変化させた時における相対湿度変化量と時間との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明に係る転写紙特性測定方法及び転写紙特性測定装置が適用される画像形成装置の一実施形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置(例えば、電子写真方式の複写機)を示す概略構成図である。
図1に示す本実施形態7に係る画像形成装置1は、像担持体としての感光体ドラム2の周囲に帯電装置3、書き込み装置(露光装置)4、現像装置5、転写装置6、クリーニング装置7が配置され、転写装置6の下流側には定着装置8が配置されている。
【0037】
この画像形成装置1の画像形成動作時においては、所定のプロセススピードで回転駆動される感光体ドラム2の表面を帯電装置3により一様に帯電させ、読取り装置(不図示)で読取った原稿の画像情報に応じて書き込み装置4により露光を行って静電潜像を形成した後、現像装置5のトナー(現像剤)で現像を行うことにより、トナー像が感光体ドラム2上に形成される。
そして、給紙カセット9から所定のタイミングで給紙され、転写紙搬送路10を通して転写部位(感光体ドラム2と転写装置6との間)に搬送される転写紙Pに、転写装置6により感光体ドラム2上に担持されているトナー像が転写される。
【0038】
トナー像が転写された転写紙Pは定着装置8に搬送されて、定着ローラ8aと加圧ローラ8b間で加熱・加圧されることにより、転写紙P上にトナー像が定着される。トナー像が定着された転写紙Pは、排紙ローラ(不図示)により外部に排出される。なお、感光体ドラム2上のトナー像が転写紙Pに転写された後に感光体ドラム2の表面はクリーニング装置7のクリーニングブレード7aにより残トナーが除去されて、次の作像に供される。
【0039】
この画像形成装置1には、給紙カセット9付近の転写紙が搬送される搬送路上部に検知手段である検出センサ11が配置されており、検出センサ11と対面する位置となる下部に加熱手段である加熱部14が、転写紙Pがその間を通過するように配置されている。
そして、給紙カセット9から給紙される転写紙P一枚に対し、非加熱時に反対面に設置された検出センサ(例えば温・湿度検出センサ)11によって、転写紙Pから自然蒸散してきた空気の温度と湿度を検出し、検出結果に基づいて転写紙Pの水分量を推測し、さらに加熱手段となる加熱部14によって転写紙近傍を加熱し反対面に設置された温・湿度検出センサ11によって、転写紙Pを透過してきた空気の温度と湿度を検出し検出結果に基づいて転写紙の厚みを推測する。尚、図1において、12aは給紙ローラ、12bはレジストローラである。
【0040】
図2は、前記画像形成装置1の制御系を示す概略ブロック図である。
図2に示すように、制御部(計測手段)13は、厚み検出装置(検出センサ)11から入力されるセンサ出力とメモリ15に予め記憶されている、図5に示すような「水分値と加熱時の湿度変化量と転写紙の厚みとの関係を示すデータ」に基づいて、給紙カセット9から給紙される転写紙Pの厚みを計測(算出)する(詳細は後述する)。画像形成装置1の動作全体を制御する制御手段としてのCPU16は、制御部13から出力される転写紙Pの厚み情報に基づいて、転写紙Pの厚みに応じた加熱定着制御部17の定着温度及びニップ幅を制御する。
【0041】
また、前記CPU16は、制御部13から出力される環境湿度値に基づいて、環境制御部18を制御し、装置内に設けているファン(不図示)を回転させるファンモータ(不図示)を制御する(詳細は後述する)。
【0042】
本発明は、以上のような構成の画像形成装置1において用いられる転写紙の特性(含水分量、厚み等)を、簡単な構成で検出することができ、且つ転写紙の特性検出以外の用途にも応用可能な、転写紙特性測定方法及び測定装置を提供するものである。
【0043】
前述の解決手段に記載のように、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置では、転写紙(例えば図1の転写紙P)の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段(図1、図の加熱部14)と、転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段(図1、図2の検出センサ11)とを設け、加熱手段14の非加熱時に転写紙の表面近傍に設けられた検知手段11によって検知した空気の温度と湿度の変化量から転写紙の含水分状態を推測し、含水分状態の推測後、転写紙を加熱手段14で暖めることによって増加した水分蒸散量を検知手段11によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、転写紙の含水分量と厚みを計測する。
【0044】
ここで、画像形成装置による転写紙の厚み特性を測定する方法において、加熱手段で転写紙の表面近傍を加熱すると、転写紙内に吸収されている水分が強制的に蒸散する。
これは、加熱によって熱移動が起こるためであって、熱移動と共に水分が転写紙から外部へ水蒸気となって蒸散される。
その蒸散される量は、転写紙が持つ水分量によって異なり、また転写紙の厚みによっても異なり、例えば同じ含水分率の転写紙でも厚みが異なると含まれる水分量も異なる。つまり水分を含むことができる容積が、厚みが増すことで増えるので、同一の含水分率であっても、厚い方が転写紙に含まれる水分量は多いことになる。
よって、それらの転写紙を加熱することにより、含まれる水分が蒸散する際の水分蒸散量が変化することから転写紙の含水分状態と加熱による水分蒸散量との関係を照合することで転写紙の厚みを計測することが可能となる。
【0045】
前記加熱手段14の加熱源は、ジュール熱によって自己発熱する感温抵抗体から成り、転写紙の表面近傍雰囲気の湿度を計測するMEMS(Micro Electronics Mechanical System)技術(集積回路加工技術を応用した微細加工技術)を利用した構成で、湿度変化に応じて発熱エネルギーを可変させ加熱温度を一定に保つことが可能な熱伝導方式の構造を持ち、感温抵抗体部は、MEMS技術を用いた極めて熱容量の小さな感温抵抗体が形成されたものであるため、極めて少ないエネルギー量で高い発熱量を得られるほか、出力応答性が著しく高いという特徴を有しており、また、その発熱領域は数μm2と微小な領域で発熱するため、転写紙全体を暖めてしまうこともなく、また加熱体によって装置内を暖めてしまうようなこともない。したがって、転写紙表面に対して、効率よく伝熱させることができ、且つ接触することなく加熱できる。
【0046】
前記検知手段(検出センサ)11は、ジュール熱によって自己発熱する感温抵抗体から成り、周囲の温度変化に応じて抵抗値が変化することを利用して温度を測定し、且つ熱放散が湿度に応じて変化することを利用して湿度を測定する熱伝導方式の温・湿度センサ構造を持ち、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)技術(集積回路加工技術を応用した微細加工技術)を用いて極めて熱容量の小さな感温抵抗体が形成された構成であるため、出力応答性が著しく高く速い。さらに外観形状を数mm単位に小さくすることができる。
【0047】
前記加熱手段14の加熱部は、接触によって転写紙表面や加熱部を損傷させることがないよう、転写紙表面に対し非接触によって加熱する。
また、前記検知手段11の検知部は、接触によって転写紙表面や検知部を損傷させることがないよう転写紙表面に対し非接触によって検知する。
【0048】
さらに、前記加熱手段14の加熱部は、転写紙表面を効率よく高速に且つ、転写紙の表面を損傷させることなく熱を伝える必要があるため、転写紙表面に対し非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱する。
また、前記検知手段11の検知部は、転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知する。
【0049】
ここで、図22は、転写紙表面からの計測距離(転写紙表面とセンサ部との間の距離)の違いによる、相対湿度変化量の差を示したグラフである。
図22に示すように、転写紙表面に対して計測距離が3mmや5mmの場合には、室内環境との差はほとんど見られず、転写紙からの水分移動(湿度変化量)を捉えることができていないが、転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の場合、転写紙からの湿度変化を捉えることが出来ている。
【0050】
また、前述の通り、水分が蒸散する際、その蒸散が開始される位置から、水分(水蒸気)移動が線形的に行なわれている拡散層の存在が非特許文献1および非特許文献2によって説明されている。
例えば、水が張られた水面の場合、水は定常的に定量の水蒸気移動が可能なので、拡散層の厚さは風などの影響がない時には水面から垂直方向に10mm程度の高さ領域まで存在が可能で、風の影響があっても2〜3mm位までは問題ないとされている。
【0051】
しかし、転写紙の場合、まず転写紙の持つ水分量が周囲環境によって変化し、さらに転写紙の厚さによっても変化するため、定常的な水蒸気移動にはならずまた、水蒸気量も一定ではないため、微量な水分の場合、拡散層の厚さ領域は小さくなる。さらに、転写紙の水分状態と周囲環境とのバランス状態によっては、周囲環境の水分を転写紙へ吸収してしまう逆の水分移動が起こる。この場合も拡散層は存在し、このときの領域の厚さが転写紙と周囲環境の場合、2mm以下の領域となっているため、2mmを超えると非線形的な動きに変化してしまい、周囲環境の影響を受け易くなり、正確な転写紙の水分状態が把握できなくなると考えられる。
【0052】
従って、同じ条件であっても、水分移動(湿度変化量)状態変化を大きく捉えられることができる、転写紙表面から2mm以下となる空間に検出センサ部11を配置することが最も好ましい。また、センサ部を転写紙表面に接触させた状態でも検知は可能だが、画像形成装置内を200mm/sec以上の速度で高速搬送される転写紙表面に接触させてしまうと、転写紙表面を傷つける他、センサ部11が破損する恐れがあり、また搬送時における転写紙のばたつき動作なども考慮する必要がある。よって、転写紙表面から離れて検知する必要があると考えられる。
【0053】
従って、転写紙表面からの計測距離範囲は、転写紙から発生する水蒸気を効率よく且つ、高速に検知することが可能な、転写紙表面と検知部が非接触となる距離から2mm以下とする。
【0054】
本発明に係る画像形成装置では、上記のような転写紙特性測定方法及び測定装置を用い、転写紙の紙面近傍の温度及び湿度変化から該転写紙の特性を測定することによって加熱定着装置8の加熱温度を制御する手段(図2の制御系)を備えている。
より具体的には、本発明に係る画像形成装置においては、転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段14と、転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段(検出センサ)11とを有する転写紙特性測定部を設け、加熱手段14の非加熱時に転写紙の表面近傍に設けられた検知手段(検出センサ)11によって検知した空気の温度と湿度の変化量から転写紙の含水分状態を推測し、含水分状態の推測後、転写紙を加熱手段14で暖めることによって増加した水分蒸散量を検知手段(検出センサ)11によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、転写紙の含水分量と厚みを計測し、該計測した転写紙の含水分量と厚みに応じて加熱定着装置8の定着条件を制御する手段(図2の制御部13、CPU16、定着制御部17)を備えているので、検知手段(検出センサ)11で検知した転写紙の含水分量と厚みに応じて加熱定着装置8の加熱温度やニップ幅を制御することができる。
【0055】
また、本発明に係る画像形成装置では、画像形成装置全体の動作を制御する制御手段(図2のCPU16)は、転写紙が転写紙特性測定装置部(検出センサ部11)を通過していない時には、転写紙特性測定装置よって得られる温度測定値並びに湿度測定値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定するので、画像形成装置内を最適な画像形成制御状態に保つことが可能となる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置の具体的な実施例について説明する。
【0057】
[実施例1]
図3は、転写紙の一方の面から加熱し、もう一方の対向する面にて加熱された際の表面近傍の湿度変化と加熱しない状態で捉えた湿度変化を比較したグラフである。
測定に使用した転写紙は画像形成装置でよく利用される、連量単位の呼称で55k紙と呼ばれる厚さ約68μmの普通紙を一定の環境(23℃50%RH)にて水分調節された状態のものであり、その含水分率は転写紙に対して約6%となっている。
グラフAは、加熱しない状態の湿度変化であり、グラフBは、加熱した状態の湿度変化であり、加熱温度は約700℃である。
【0058】
図3のグラフに示す通り、非加熱時の湿度変化より、加熱時の湿度変化の方が大きい変化を捉えることができている。
また、図示していないが非加熱時の湿度変化は、転写紙の厚みが異なった場合でもその変化量はグラフAとほとんど変わらないことが本発明者らの実験調査でわかっている。これは、表面からの水分蒸散分による湿度検出を行っているため、厚みに関係なく変化を捉えることができていると考えられる。
【0059】
また、非加熱時の転写紙の水分測定方法については、本出願人の先願である特許文献5(特開2008−209905号公報(特願2008−007819))の原理・現象に基づいた測定方法を用いることができる。
【0060】
次に、厚みが異なる転写紙を表面近傍より加熱し、加熱する反対面の湿度変化を捉えたのが、図4のグラフである。このときの転写紙の水分調節条件(含水分率)は、すべて同じ(≒6%)で、加熱温度は700℃である。
図4のグラフに記載のaは、連量単位の呼称で110k紙と呼ばれる、厚みが約128μmある転写紙で、bは90k紙と呼ばれる、厚さ約126μmの転写紙である。さらにcは、市場で最も利用頻度の高い55k紙と呼ばれる厚さ約68μmの転写紙である。
【0061】
図4のグラフに示す通り、厚みが厚い転写紙a,bの変化量は、転写紙cに比べ大きく変化する。
これは、加熱作用によって、転写紙内に含まれる水分が暖められ、水蒸気となって転写紙外に放出された分を検知したためと考えられ、同じ含水分率であっても、転写紙の厚み分、つまり容積の違いによって含まれる水分量が異なるため、暖めることによってその水分量差が検出結果となって現れており、図5のような関係が成り立つ。
図5は、3パターンの含水分状態時における湿度変化と厚み特性の関係を示したグラフだが、それぞれの含水分パターン(例えば1%単位毎など)を持つことによって、詳細に転写紙の情報を取得することが可能となる。
【0062】
従って、転写紙の表面近傍に加熱させることが可能な加熱手段14を設け、該加熱手段14の非加熱時に転写紙の反対面近傍の該加熱手段と対面する位置に設けられた検知手段11によって、検知した空気の湿度変化と、その変化に掛かる時間に基づいて、転写紙の水分状態を推測し、前記水分状態と該加熱手段14による加熱によって暖められた転写紙内に存在する水分が転写紙から蒸散し、転写紙の加熱源とは反対面から現れてきた空気を、転写紙の反対面近傍の該加熱手段14と対面する位置に設けられた検知手段11によって検知した空気の温度並びに湿度変化と、その変化に掛かる時間に基づく関係から転写紙の厚みを推測する方法が成立する。
【0063】
[実施例2]
図6(a)は、本発明の実施例2に係る測定方法及び装置の構成例を示す図であり、検出手段である検出センサ11と加熱手段14が、転写紙Pの表面近傍に対し、転写紙Pが通過する間隔を保持して並列に配置された状態を示す断面図と、検出センサ11と加熱手段14のそれぞれが信号線22、23を通じて制御部(図2に示した制御部)13に電気的に接続する様子を併せて示す概略構成図である。
また、図6(b)は、本発明の実施例2に係る測定方法及び装置の別の構成例を示す図であり、検出センサ11と加熱手段14は転写紙Pが通過する間隔を保持して対向する位置に配置された状態を示す断面図と、検出センサ11と加熱手段14のそれぞれが信号線22、23を通じて制御部(図2に示した制御部)13に電気的に接続する様子を併せて示す概略構成図である。
【0064】
図6(a)、(b)に示す本実施例に係る検知手段となる検出センサ11は、転写紙Pの湿度(水分蒸散)を検出するセンサ部11aと、センサ部11aを電気的に接続した基板部11bとを有し、信号線22を介して基板部11bと制御部13が電気的に接続されている。
検出センサ11のセンサ部11aには、MEMS技術を応用した熱伝導方式型のセンサを採用している。
その測定方法は、雰囲気ガスの熱伝導率が、水蒸気の濃度(湿度)に応じて変化することを利用したもので、例えば、特許文献6(特許第2889909号公報)の段落[0081]に開示されている、単体構成で温度検出も可能な、温・湿度センサを用いることができる。
【0065】
検出センサ(温・湿度センサ)11の基板部11bはセンサ部11aを固定でき、そこから電気信号が取り出すことができればなんでもよいが、一般的に利用されるガラスエポキシ基材やポリイミド基材等で加工された電子回路基板などを用いることが好ましく、センサ部11aを基板部11bに接着し、微細な金属線(不図示)又は溶着にて基板部11bと接合し、信号線22を通じて制御部13に電気的に接続する。
このときセンサ部11aが、検出センサ(温・湿度センサ)11の構成の中で転写紙Pの表面に一番近くなるよう突出した状態で装着する。これによって、転写紙Pからの水分移動の流れがセンサ部11aに一番早く到達することになるので、検出センサ11の構成部材(基板部11b等)によって阻害されることなく、転写紙Pと周囲環境との間で起きる水分移動を良好に検出できる。
【0066】
また、センサ部11aには、MEMS技術を応用した熱伝導方式型のセンサを使用することで、センサ自体の形状を数mm単位の大きさまで小さく、そして薄くでき、それに合わせて検出センサ11全体も小さくできるので、狭いスペースでも設置が可能になるため、最も好ましい。
【0067】
尚、加熱手段14の構成は、図6(a)、(b)に示す検出センサ11と同様であり、加熱部14aと、加熱部14aを電気的に接続した基板部14bとを有し、信号線23を介して基板部14bと制御部13が電気的に接続されている。
加熱手段14の加熱部14aはジュール熱によって自己発熱する感温抵抗体から成り、検出部11aと同様にMEMS技術を応用した構成で、湿度変化に応じて発熱エネルギーを可変させ加熱温度を一定に保つことが可能な熱伝導方式の構造を持ち、加熱部14aは、MEMS技術を用いた極めて熱容量の小さな感温抵抗体が形成されたものである。
この加熱部14aが検出部11aと異なる点は、制御部13における制御方法であり、加熱部14aに形成されている感温抵抗体に加えるエネルギー量の違いである。
【0068】
検知手段となる側のセンサ部11aへは、抵抗体の発熱温度が100℃〜300℃位になるようにエネルギーを加え水分変化を捉えるが、加熱手段となる側の加熱部14aへは、発熱温度が500℃〜800℃くらいになるようにエネルギーを加えることになるが、そのエネルギー量は数十mWで、最大でも数百mWと極めて少ない電力で対応できる。
【0069】
図7は、図2に示した制御系の制御部13の構成例を示す概略ブロック図である。この制御部13では、ドライブ回路Aにて駆動した検出センサ(温・湿度センサ)11によって検出された検出信号をA/D変換回路によって受信し、デジタル信号に変換した後、温湿度演算回路によって温度、湿度値に変換され、水分変換パラメータ部によって水分値に変換される。
同時に検出タイミング回路の判断で、ドライブOn/Off切替回路によって加熱部のドライブ回路Bに通電して、加熱部14をドライブし、加熱時の温・湿度検出を順次行い、加熱時の温度、湿度の変化量を検出し、メモリ領域にそれぞれ格納する。
それぞれのデータが格納され後、差分演算回路によって温度、湿度データの差分値を算出する。算出された差分値を、判定パラメータ部に格納されている、水分値と加熱時の変化量と厚み特性との関係とを照合し、転写紙の厚み特性を出力する。
【0070】
図8(a),(b)は、転写紙Pに近接するようにして設置した熱伝導方式の温・湿度検出センサ部が加熱されている際に発生している転写紙Pからの水分移動を、隣接して設置された、または反対面に設置された検出センサで捉える様子を示した模式図である。
尚、図8(a),(b)の検出センサ11のセンサ部11a並びに加熱手段14の加熱部(加熱ヒータ)14aは、それぞれ転写紙表面との間の距離(間隔)が、センサ部11aは0.5mm以上2mm以下、加熱部14aは0.5mm以上1mm以下の範囲となるようにして設定されている。
【0071】
図9は、図8(a),(b)に示した検出センサのセンサ部11aの湿度出力と時間との関係を示したグラフであり、転写紙を外気環境(周囲環境)へ放置した場合に起きる転写紙近傍の水分挙動を、転写紙表面近傍の所定の空間で検出した状態を示したものである。
まず、転写紙が検出部を通過開始したA点から特定時間t1までのB点における、非加熱時の転写紙表面の自然蒸散による湿度変化を捉える。この周囲環境湿度値を基準としたときの湿度変化量(Δv1)から転写紙の含水分状態を推測する。
次に、B点から加熱部による加熱を開始し、特定時間t2までのC点における、加熱によって転写紙内部に吸収されている水分が外部に蒸散したことによる、湿度変化量(Δv2)が増大する状態を捉えることができる。
【0072】
この加熱時の湿度変化が転写紙の水分量と厚みに応じて変化する。従って、このB点からC点までの湿度変化量Δv2とA−B点間の湿度変化量Δv1を加算した湿度変化量は転写紙の厚みとの相関が成立する。
よって、転写紙から蒸散する水分変化割合を特定の時間間隔で所得することで、転写紙の含水分と厚み特性が把握することができる。
【0073】
図10は、本発明の実施例2の図6(a)に係る、本発明を所謂、計測装置として利用することを考慮したときの代表的な検出ユニット構造の一例を示す図であって、イ)は検出ユニットの斜視図,ロ)は分解図,ハ)は測定形態図である。
ユニット全体は、周囲の温度や湿度環境に影響しにくいプラスチック系樹脂で構成されており、上ユニットの先端部に検出センサ部11及び加熱部14が隣合わさるように並列に埋め込まれて設置されている。
【0074】
また、図11は、本発明の実施例2の図6(b)に係る、本発明を所謂、計測装置として利用することを考慮したときの代表的な検出ユニット構造の別の例を示す図であって、イ)は検出ユニットの斜視図,ロ)は分解図,ハ)は測定形態図である。
ユニット全体は、周囲の温度や湿度環境に影響しにくいプラスチック系樹脂で構成されており、ユニットの先端部上ユニット側に検出センサ部11が埋め込まれ、下ユニット側に加熱部14が埋め込まれ、両者は上下対称となる位置に設置されている以外の構成は、図10、図11ともに同じなので共通する部分の説明は省略する。
【0075】
埋め込まれている検出センサ11及び加熱部14の検出面並びに加熱面は、埋め込まれた面から、非接触となる距離から2mm以下とすることが好ましいが、転写紙の水分状態が周囲環境湿度によって飽和した状態の場合、検知する湿度変化が小さくなる場合などを考慮すると、変化を極めて大きく捉えることが可能な1mm以下とすることが最も好ましい。
ユニットの全体構成は、上ユニット、下ユニットの2つで構成されており、それらは中央部で連結され、てこの原理によって、後方の部分を上下に摘むことによって先端部が開口し、離すと中央部に装着されているバネ材(不図示)によって、先端部が閉口する、いわゆる、洗濯バサミのような構成となっているので先端部で転写紙を挟みこみ、測定を行う。
【0076】
この構成により、転写紙表面と検出センサ部11と加熱部(加熱ヒータ)14との距離を正確に規定でき、また測定箇所は密閉空間となるので、周囲環境の影響を受け難い状態となるため、転写紙からの水分蒸散を良好に検知、取得することが可能となる。
【0077】
[実施例3]
図12は、本発明の実施例3に係る検出ユニット構造の別の例を示す図であって、図10、図11に対し、別の形状を持つ下ユニットの斜視図である。
尚、基本的な構成は、図10や図11と同様なので重複する説明及び、図は省略する。また、図は下ユニットのみ図示しているが、上ユニットも同様の形状である。
【0078】
図12の構成で図10や図11と異なるのは、先端形状を転写紙表面に密着させる図10や図11のような平面形状と異なり、転写紙と接触する部分は、弧を描いた形状のガイド部を形成し、ユニット端部は丸みを帯びた形状となっていることである。
これは、例えば転写紙を挟んだ状態で、転写紙を移動させたときの測定を行いたい場合などに、図10、図11のような平面形状だと転写紙がユニットに密着し、摩擦抵抗が大きくなるため移動できない恐れがあるので、図12に示すような形状にすることによって、移動により転写紙がユニットに密着してしまうのを防止する役割を持たせている。これにより転写紙を挟んだ状態で検出ユニットを動かす場合なども、接触面積が小さく摩擦抵抗も小さくなるのでスムーズな動作が可能となる。
尚、このときの検出部並びに加熱部は、埋め込まれる面に対して水平となる位置に埋め込まれ、転写紙に接触するガイド部は、検出部面並びに、加熱部面との距離が1mm以下となるような形状としている。
【0079】
尚、これらは、あくまで代表図であり、転写紙表面との測定距離を一定に保つことができ、且つ、転写紙の移動の妨げにならなければ、どのような形状でも良い。例えば、先端部上下にローラを具備し、容易に転写紙表面上を移動可能な形状にしても良いし、また、測定距離を微調整するための測定距離調整機構などを付与してもよい。
【0080】
[実施例4]
図13(a)、(b)は、本発明の実施例4に係る、画像形成装置などの装置内で測定を行う際の代表的な検出ユニット形状の斜視図であり、検出ユニットの基本的な構成は図10、図11(または図12)と同様である。
構成するユニットの材料及び、検出センサ11、加熱部14の配置などは、図10、図11とそれぞれ同じ構成なので重複する説明は省略する。
【0081】
上ユニット、下ユニットはそれぞれ、3つの部品から構成されており、稼動部aと稼動部bの部分で連結され、ユニット先端部が上下に稼動する構造であり、稼動部aと相対する側に棒状のシャフトなどに挿通して画像形成装置内の搬送路近傍へ固定する。
また、上下ユニットを固定するシャフトは、機械的に同じ位置関係になるように配置されており、上下ユニットが対称位置になるように設置されている。
さらに稼動部a及び、稼動部bには、負荷の軽いバネ材(不図示)が具備されており、それぞれ特定方向にのみ稼動し、稼動範囲を制限している。
尚、図13(a)、(b)では、わかりやすくするため、上下ユニット間を離して記載しているが、実際はガイド部が接近した距離で設置されているものとする。
【0082】
ユニットの動作は、ユニット端部に転写紙が接触すると上下ユニットは、転写紙の厚み分上下に拡がって転写紙を挟み込み、ガイド部と転写紙表面をバネ材(不図示)の応力によって密着させた状態で、転写紙はガイド部を摺動するように移動していく。このとき、バネ材の負荷を軽くしているので、転写紙が挟まれても停止することなく移動が可能となるので、転写紙の先端から終端までを確実に密着させた状態で転写紙表面と加熱部14及び、検出センサ11との測定距離を一定に保ちながら測定を行うことができる。
【0083】
また、本実施例は、上下が同じ機構を持つユニット構成で説明しているが、必ずしもそうする必要はなく、転写紙表面に加熱部14及び検出センサ11が密着して測定できれば良い。例えば、図14に記載するように上ユニットのみ本実施例と同じ構成にし、下ユニットは、ガイド部を持つ先端部分のみで構成された部材を転写紙の搬送路などに接着又は、埋め込んで装着しても良く、装着場所によっては下ユニットを無くしても良い。
【0084】
また、これらはあくまで代表図であり、転写紙表面と加熱部14及び検出センサ11の測定距離を一定に保つことができ、且つ、転写紙の移動の妨げにならなければ、どのような形状でも良い。例えば、先端部上下にローラを具備し、容易に転写紙表面上を移動可能な形状にしても良いし、また、測定距離を微調整するための測定距離調整機構などを付与してもよい。
さらに、ユニット先端部のガイド部の構造を90°回転させ、ユニットの配置を転写紙に対し平行となるように配置しても良い。
【0085】
[実施例5]
図15、図16は、本発明の実施例5に係る、画像形成装置などの装置内で測定を行う際の簡易的なユニット形状を示す図であり、図15は図10に対応する検出ユニットの斜視図、図16は図11に対応する検出ユニットの、イ)斜視図とロ)測定形態図である。
構成するユニットの材料及び、検出センサ11、加熱部14の配置などは、図10、図11とそれぞれ同じ構成なので重複する説明は省略する。
【0086】
先端形状は、図12と同様の構成形状となっており、後方は装置内への固定を可能にするため、コの字形になる様に上ユニットと下ユニットが一体となる形状とし、転写紙が通過する搬送路の側面などに設置する。
また、先端部上下は、完全密着しておらず、転写紙が通り抜けられる程度の数μm隙間が開いてあり、転写紙が引っ掛かることなくスムーズに通過できるようにしてある。
また、隙間よりも厚い転写紙が通過する場合は、転写紙の厚みに合わせてF点から先端部が応力によって開く構造を持たせているので、常にガイド部と転写紙が密着した状態で測定を行うことができる。
【0087】
尚、これらは、あくまで代表図であり、転写紙表面との測定距離を一定に保つことができ且つ、転写紙の移動の妨げにならなければ、どのような形状でも良い。例えば、先端部上下にローラを具備し、容易に転写紙表面上を移動可能な形状にしても良いし、また、測定距離を微調整するための測定距離調整機構などを付与してもよい。
【0088】
[実施例6]
図17は、本発明の実施例6に係る転写紙特性測定装置を示す概略ブロック図である。尚、測定方法やその構成が前述の実施例2と重複する部分については省略する。また、制御部13は、実施例2の図7に示した制御部13と同一の構成及び機能を有するので、重複する説明は省略する。また、装置を駆動させる電源やそれに付随する電源スイッチなど、装置構成上、必要不可欠な構成ブロックは図示を省略する。
【0089】
まずスイッチからなる信号を発信し、一連の測定を行い測定結果が制御部13の所定ブロックへ送られる。制御部13で算出された結果を、表示パネルに厚み特性値表示する処理を行う。伝達手段は何でもよく、表示パネル上にLED発光素子を設けて対象数値のLEDを点灯させたり、又は、液晶パネルを設けて、測定結果を表示したりしても良い。
【0090】
次に、本実施例における厚み測定方法を、図18に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、検出センサ11(センサ部11a)と対向する位置に転写紙がない場合の環境湿度値を取得(測定)する(ステップS1)。そして、検出センサ11(センサ部11a)と対向する位置に転写紙があるとき、転写紙表面近傍の任意の時間における検出湿度値1を取得(測定)する(ステップS2及び、ステップS3)。このとき、転写紙の存在を判断するための電気的に反応するスイッチや光学的に反応するフォトインタラプタ(不図示)などを具備することで、より正確に転写紙の存在を確認できるようにすることが望ましい。
そして、制御部13により、前記環境湿度値と前記転写紙検出湿度値を減算して湿度変化分xを算出し(ステップS4)、環境湿度値と検出湿度値及び、湿度変化分xとから転写紙の含水分量mを算出する(ステップS5)。
【0091】
次に加熱部14を加熱し(ステップS6)、加熱してから転写紙表面近傍の任意の時間における検出湿度値2を取得(測定)する(ステップS7及び、ステップS8)。
そして、制御部13により、前記転写紙検出湿度値2と前記転写紙検出湿度値1を減算して湿度変化分yを算出し(ステップS9)、含水分量mと湿度変化分yとの関係から転写紙の厚みを推測する(ステップS10)。
【0092】
[実施例7]
次に、実施例7における転写紙厚み測定方法を、図19に示すフローチャートを参照して説明する。
参照する図19のフローチャートでは、ステップS1からステップS9までは、実施例6にて説明した図18に示すフローチャートと同様の処理なので、重複する説明と図は省略する。
【0093】
図2に示す画像形成装置の制御系のCPU16は、制御部13により、図18に示すフローチャートのステップS10までに推測された、転写紙の含水分と厚み情報を定着装置8の図20に示す制御条件テーブルa、bと照合して、定着温度、ニップ幅のそれぞれの制御条件を決定する(ステップS11)。
そして、決定された制御条件を定着装置の定着制御部16へフィードバックし、定着処理を実施する(ステップS12)。
【0094】
このように、本発明に係る転写紙特性測定装置では、転写紙の含水分量及び、厚みを正確に且つ同時に測定することができるので、CPU16は、制御部13から出力される転写紙の含水分量並びに厚み情報に基づいて、定着制御部17を制御し、定着温度及び、ニップ幅を適切に制御することができる。
【0095】
[実施例8]
転写紙を連続給紙して連続印字(連続画像形成)する場合などのように、複数の転写紙が転写紙搬送路を連続して通過する場合には、転写紙の含水分量によって画像形成装置内の環境が変化する。
そこで、本実施例では、転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過していない時には、検出センサ11による温度・湿度検出によって得られる値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定するようにした。
【0096】
本実施例における動作を、図21に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS13で、画像形成装置の電源がオン状態になった時(電源がオンされたとき)かそうでない時かの判断を行い、電源がオンされた時の場合は(ステップS13:YES)、そのときの環境湿度値を取得し、その環境湿度値を用いて環境制御を行う(ステップS14)。
【0097】
具体的には、図2に示した制御系において、制御部13は、検出センサ11からのセンサ出力に基づいて装置内の環境湿度値を取得する。そして、CPU16は、制御部13から出力される環境湿度値に基づいて環境制御部17を制御し、装置内に設けているファン(不図示)を回転させるファンモータ(不図示)を制御する。
これにより、所定の回転数で回転するファン(不図示)による気流によって装置内の環境が制御される。
【0098】
次に、電源がオンされた時ではなく(ステップS13:NO)、印字動作(画像形成動作)が開始された時かそうでない時かを判断し(ステップS15)、印字動作が開始されている場合は(ステップS15:YES)、転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過中かどうか判断する(ステップS16)。
ステップS16で、転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過中の場合は(ステップS16:YES)、実施例4の図18に示したフローチャートのステップS2の処理(転写紙検出湿度値1の取得)を行い、以降は、同フローチャートの次のステップと同様の処理を実行する。
【0099】
また、ステップS16で転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過していない場合(ステップS16:NO)、ステップS15で印字動作が開始されていない時(ステップS15:NO)、およびステップS14で装置内の環境制御を行った後においては、実施例6の図18に示したフローチャートのステップS1の処理(転写紙がない時の環境湿度値の取得)を行い、同フローチャートの次ステップと同様の処理を実行する。
【0100】
尚、転写紙の検出センサ11と対向する位置の通過の判断は、例えば、検出センサ11と対向する位置を通過するときに反応する電気的なスイッチを設けることで行うことができる。また、転写紙通過の合間における環境温・湿度の検出については、毎回検出する必要はなく、連続印字枚数を規定して、規定された枚数が印字された後の転写紙通過の合間における環境温・湿度を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置の具体的な実施例について説明したが、各実施例では、画像形成装置のトナー像が転写される転写紙の厚み検出について説明した。しかし、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置は、これ以外にも、例えば紙の抄紙工程や、食用の乾燥海苔などの水分に影響するシート材の製造工程等において、これらの厚みを測定する場合においても、同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム
5 現像装置
6 転写装置
8 定着装置
9 給紙カセット
10 転写紙搬送路
11 検出手段(検出センサ)
11a センサ部
13 制御部
14 加熱手段(加熱部)
14a 加熱部(加熱ヒータ)
15 メモリ
16 CPU
17 定着制御部
18 環境制御部
P 転写紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2007−205693号公報
【特許文献2】特開平09−204080号公報
【特許文献3】特開2007−322558号公報
【特許文献4】特開2007−86054号公報
【特許文献5】特開2008−209905号公報
【特許文献6】特許第2889909号公報
【非特許文献】
【0104】
【非特許文献1】応用物理 第25巻 第4号 145ページ、「水蒸気勾配および拡散係数の測定」
【非特許文献2】応用物理 第29巻 第7号 443ページ、「強制対流による水の蒸発速度」
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成動作によりトナー像が転写され、加熱溶融定着される転写紙から自然発生又は熱を加えることによって強制発生する水蒸気変化を捉え、その水分変化から転写紙特性情報を推測する技術を有した転写紙特性測定方法及び転写紙特性測定装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどや、これらを備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置では、画像形成動作により感光体ドラム上に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体である転写用の用紙(以下、転写紙と言う)に転写し、定着装置により未定着のトナー像を加熱することによって溶融させ、転写紙に定着させて外部に出力(排紙)する。これらの画像形成装置においては、転写紙の含水分や厚みが転写特性や定着特性に大きく関与する。転写紙の含水分が多いほど又は、厚みが厚いほど、転写に関しては転写電流を増大させる必要があり、また定着に関しては熱量を増大させる必要がある。言い換えれば、一定の電流、熱量で転写、定着可能な転写紙の種類は限られてしまう。このため、厚みに関しては外部スイッチにより転写紙の厚みを指定し転写電流と定着温度を調整したり、定着速度を調整したりするなどの対応をしている。
【0003】
ところが転写工程と定着工程は、画像品質に大きく影響を及ぼす工程であり、特に画質については厳しいフルカラー複写機においては、使用する転写紙の種類も多く、外部スイッチによる記録媒体の指定だけでは、高画質を維持することができない。さらには、転写紙の厚みによって、転写紙の反り(カール)量に違いが生じる為、定着装置通過後に転写紙が熱によって反り上がり、定着装置部に巻き付いて装置内に転写紙が詰まるなどの搬送不良を起こす虞もあるので、転写紙の厚みに応じて、各プロセス条件等を設定、制御し、画像品質不良や搬送不良が生じないようにする必要もある。
【0004】
また、近年の画像形成装置は、複合多機能化されているものが多くあり、中でもパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと言う)を通じて印刷処理を行うプリンタ機能を利用することが多く、パソコンにて設定された条件を画像形成装置に送り、その条件に基づいて装置内の制御を行い印刷する。転写紙の設定もこの時行なわれることが多いが、設定するのは転写紙のサイズや明らかに異なる紙種(例えば、普通紙、OHPシート、はがき、特殊紙、など)のみの設定を行い、設定内容に応じて、印刷条件を変更するのが大半であるが、転写紙の厚みについては、「厚紙」というだけの設定をする場合はあるが、その厚さが何μmなのかという条件までは設定されない。また、組み合せて条件を設定する事も難しく、例えば、普通紙の厚紙などという条件を設定することは、設定するパラメータ数が増加する事になり、操作性が低下し、機能拡大に伴うコスト高に繋がってしまうため、あまり採用されていない。
そのため、転写紙の厚みに応じた画像形成条件の自動制御や転写紙の搬送制御を行うために、転写紙の厚みを検出する検出手段を備えた画像形成装置が従来から数多く提案されている。そして、このような画像形成装置の従来例としては、以下の(1)〜(3)のような特徴を持ったものが提案されている。
【0005】
(1)転写紙を挟むように超音波発信装置と受信装置を配置して超音波を照射、透過した超音波信号を受信装置にて受信し、受信した信号の変化量によって転写紙の厚みを算出する。
(2)転写紙に赤外線又は、LEDレーザーを照射し反射信号を受信装置にて検出した信号の変化に基づいて、転写紙の厚みを算出する。
(3)転写紙に可動磁性体を当接させ、可動磁性体が作る磁界の大きさを転写紙の厚みとして検出する。
【0006】
しかしながら、上記の(1)の超音波は空気を伝達媒体としている為、周囲の環境(温度や湿度、風)変化により、予期せぬ屈折や反射が起きたり、発信部又は、受信部の表面に水滴や紙粉が付着することによって、検出距離や検出領域が変化してしまうなど、検出動作が不安定になる虞がある。
(2)は原理が超音波信号と光学信号の違いはあるものの、装置構成などは(1)とほとんど変わらないと言え、また光学信号も周囲環境の影響を受け易いことから、(1)と同様の課題が発生する。また、結露などによって、発光素子や受光素子に水滴などが付着すると、正しく発光、受光できなくなる為、正確に検出できなくなる虞もある。さらに、発光素子側に多く用いられる、LED光源の発光強度は、累積発光時間に反して減衰する特性があるので、減衰が進行すると被測定物からの反射光が弱くなり受光素子からの出力が不安定になり、検出精度が悪化する。
(3)は磁気量センサによって転写紙の厚みを検出しているが、転写紙の含水分によって磁気量が変化する為、同じ厚みの転写紙でも含水分が異なると検出値が変わってしまう虞がある。また、画像形成装置に用いられる最近の転写紙は、画像品質を高めるために表面に薬剤によるコーティングがされているものや、特殊な表面処理が施されているものがあり、このような転写紙に対しても磁気量は変化するので、転写紙の厚みを正確に検出することは困難である。
【0007】
このように、従来例の(1)〜(3)では上記のような課題が予想でき、いずれにおいても検出するための装置構成が複雑であり、高価になるため、転写紙の厚みを検出するだけの装置としては、コストパフォーマンスが悪い。
【0008】
また最近では、本発明者らが提案しているような、転写紙近傍の湿度測定手段を用いて転写紙特性を検出する創案もされているが、どれも主となる発明は含水分検知を取上げており、その応用作用として厚み情報も把握できると記載されている。また、含水分検知と厚み検知をそれぞれ別の検知手段によって検出するといった方法を提案しているものもあるが、それらのほとんどが含水分検知に関してはある程度詳細な説明が記されているが、厚み特性の取得に関しては、詳細な検出方法や装置の説明はなく、あいまいな表現になっているものが多い。
【0009】
例えば従来技術の一例として、特許文献1(特開2007−205693号公報)に記載の「用紙厚検出方法及び画像形成装置」では、画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成されたトナー像が転写される転写紙の含水分量から転写紙の厚みを検出する方法であって、転写紙搬送路上を搬送される転写紙表面と近接して対向する位置に湿度検出センサを設置し、転写紙が前記湿度検出センサと対向する位置を通過している時間と、この通過時間内に前記湿度検出センサによる湿度検出によって得られる湿度の変化量とから、転写紙の厚みを検出するステップを備え、転写紙の厚み条件を、簡単な構成で正確に検出することができ、且つ転写紙厚の検出以外の用途にも応用可能な転写紙厚検出方法及び画像形成装置の提供を実現している。しかしながら、この従来技術では、転写紙の通過中に変化する湿度の最大変化量を検知し、さらに最大変化値から終息する値の変化傾向と転写紙の厚みとの関係を照合して厚み特性を求めるため、湿度変化の最大到達値を見極める時間が必要となる。
したがって、日々印刷速度が向上している画像形成装置へ採用するには、この方法では限界があるため印刷速度が更に高速化しても追従可能な測定方法が必要となる。
【0010】
特許文献2(特開平09−204080号公報)に記載の「記録紙水分量検知方法及び画像形成装置」では、熱定着制御を行う画像形成装置の定着部及び、転写紙搬送部において転写紙が通過する部分に加熱することが可能なヒートローラを用いて転写紙を加熱し、発生した水蒸気を転写紙の水分量として湿度センサにて検出し、さらに、厚み検知又は、入力手段として転写紙の厚みを検知する検知手段から検出した情報に基づいて画像形成における転写プロセス(転写、分離)及び定着プロセス(ニップ幅、温度)の制御条件を変化させることにより良質な画像形成を行うことができる画像形成装置の実現を提案している。しかしながら、この従来技術では、転写紙を加熱した場合、転写紙の持つ水分量によって発生する水蒸気量が変化する。例えば、水分を多く含んだ転写紙を加熱した場合、大量の水蒸気が発生してしまう。特に熱定着処理を行う定着部などにおいては、水蒸気が発生すると、装置周囲に水滴となって付着し、結露状態になることが予想される。そして、この付着した水滴が装置内に残留し、画像不良や搬送不良、さらには、装置不良を招くそれがあるため、別途水滴を除去するための排気機能などが必要になってくる。また、転写紙には画像形成時に最適な含水率(4〜6%前後)がある。そのため、画像形成前の転写紙搬送部における転写紙の加熱制御を行ってしまうと、この含水率が崩れてしまい、転写紙の含水率を低下させることになるため、画像品質を悪化させる可能性があり、また、転写紙の部分的な加熱を行ない、発生した水蒸気量を捉えるとされているが、転写紙から発生する水蒸気量は転写紙の持つ水分量によっては、微量な時もある。
【0011】
この場合、発生した水蒸気は周囲環境に馴染み易くなってしまい周辺環境との違いを見極められなくなってしまう他、検知(詳細不図示)又は、入力した厚み情報との整合も取れない可能性があるため、転写紙に対する正確なプロセス制御、特に定着制御は不可能である。
従って、転写紙の水分計測は、転写紙に接触させて熱を与えることなく、転写紙の持つ本来の水分状態を検出することが好ましく、厚み特性も事前に入力するような、あいまいな情報ではなく、印刷が行われる転写紙の厚みを直接計測することが正確である。
【0012】
特許文献3(特開2007−322558号公報)に記載の「水分量推定装置、シート材処理装置、水分量推定方法、及びシート材処理方法」では、「シート材に接触または近接する位置でシート材の水分量に関する第1の情報を検知する、第1の検知手段を有する水分量推定装置において、シート材に含まれる水分に関する第1の情報を検知する工程と、シート材に含まれる水分に関する情報に影響を与える要因に関する第2の情報を検知する工程と、第1の情報と第2の情報とに基づいてシート材の水分量を予測的に推定演算し、推定演算した水分量に基づいて画像形成の処理条件を調整する工程を備え第1の検知手段には、MEMS技術によって形成された、熱伝導式の湿度センサを設ける」ことを特徴とした提案がされている。この従来技術では、シート材(以下、転写紙とする)に近接した位置で湿度を検出する第1の検出手段によって検出された値と、装置内の搬送路周辺に設置された第2の検出手段によって検出された情報に基づいて、画像形成プロセス処理が行なわれる転写紙の情報を推定するとされているが、第2の検出手段は、搬送路周辺つまり、装置内の環境を計測しており、その環境影響によって、変化するであろう転写紙の情報を推定している。しかしながら、装置内又は、搬送路周辺の環境(温度、湿度)には、必ず分布がある。例えば、加熱定着を行う定着装置近傍の搬送路周辺に検知手段を設置すれば、比較的高温環境となる。また逆に転写紙が収納される給紙部に近い搬送路周辺に設置した場合、低温環境となる。さらに、トナー材を転写紙に転写する転写部においても、前述した場所とでは環境が異なることが考えられる。また、連続印刷動作が行われているような場合においても、連続印刷が行なわれる枚数と時間によって、各画像形成プロセス部の環境は刻々と変化する。
【0013】
従って、検知手段を設置する場所によって、転写紙の情報は、大きく変わってくるため、推定された情報によって、各画像形成プロセス制御を行うことは、好ましいとは言えず、この方法を用いてこれらの課題を解決するには、画像形成プロセス毎(現像、転写、定着等)に、第3、第4、第5の検出手段を設けることが必要となり、部品点数が増え必然的にコストが上昇するので、実用化には不向きな方法と考えられる。
また、特許文献3の実施形態2では、第1の検知手段を移動させ、第1、第2の検知手段を兼用するとしているが、
(1)移動距離によっては、転写紙近傍との検出値に違いが見られない可能性がある。
(2)検知手段が移動することによって、移動前の環境を移動後の位置に、連れ回す可能性がある。
(3)検知手段を移動させた際に発生する空気の流れによって、検出値が乱れることが予想でき、これを防止するために、ゆっくり移動させようとした場合、近年高速印刷化が進んでいる画像形成装置では、転写紙搬送速度に検出が追いつかない。
(4)(1)の課題を解決するために移動距離を長くした場合、移動するのに時間がかかるので、(3)の課題が生じる。
(5)(1)〜(4)の課題は、本出願人が指定しているMEMS技術にて形成された熱伝導式湿度センサなどの、検知応答性が高いセンサほど、顕著に現れる。
などの課題が容易に予想でき、転写紙のどの情報も正確には把握できないので、実用化には不向きと考えられる。
【0014】
特許文献4(特開2007−86054号公報)に記載の「非接触結露検出方法と非接触結露検出装置及びそれを使用した用紙変形抑制方法並びに画像形成装置」では、測定対象物に結露センサを直接取り付けずに、測定対象物に接する連続空間である周囲雰囲気の物理的状態変化から測定対象物表面への気体の凝集ならびに蒸散を、物体表面に非接触で遠隔個所で検出することができるとともに、測定対象物表面への結露が形成される過程を迅速に検出して測定対象物表面の結露をより正確に予測することができる非接触結露検出方法及び非接触結露検出装置を提供することを目的とし、また、この非接触結露検出装置を使用して画像を形成する記録用紙に含まれる水分の蒸散速度をリアルタイムで検出して、急激に乾燥することにより引き起こされる記録用紙のカール等の変形を高精度で予測し、記録用紙の変形を防止することができる用紙変形抑制方法並びに画像形成装置を提供することを目的とするものであり、その解決手段として、この従来技術の非接触結露検出方法では、物体表面の周囲雰囲気における気体の温度と湿度と流方向又は流速と圧力及び成分の各要素のいずれか又は各要素を組み合わせて周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程を測定し、測定した周囲雰囲気の物体表面に対する分布状態及び輸送過程により、物体表面上に対する周囲雰囲気の気体が吸着して凝集する挙動及び物体表面上に凝集した液体が蒸散する挙動を検出することを特徴としている。
【0015】
また、特許文献4では、「図30(a)の斜視図と(b)の断面図に示すように、センサ基板22の上面22aに記録用紙39の搬送方向に沿ってサーモパイルや焦電構造の赤外線センサ等の焦電素子54と温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5を配置し、センサ基板22の下面22bの焦電素子54と対向する位置に放熱素子55を配置し、センサ基板22の中央をエッチング等により除去して記録用紙39の側端部を通す空隙56を設けた計測手段12gを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用しても良い。この計測手段12gを第1の計測手段42a〜第3の計測手段42cに使用した場合、放熱素子55から放射された熱は空隙56を横切って焦電素子54で検出される。この空隙56に記録用紙39が搬送されていると、放熱素子55から短時間例えば数10msec放射された微小熱量例えば数10mW程度の熱により、記録用紙39の端部の微小範囲で僅かな温度例えば0.1℃程度上昇し、微小範囲の水分が蒸散する。この蒸散の挙動を温度湿度センサ4a,4b及びフローセンサ5で測定することにより蒸散量や温度を測定することができる。また、空隙56に記録用紙39が搬送されたとき、焦電素子54で記録用紙39を透過する赤外線量を検出することにより、記録用紙39の質(繊維密度)や含有水分量が測定でき、用紙変形の予知精度を高めることができる。」としている。
【0016】
しかしながら、この特許文献4に記載の従来技術では、
(1)ひとつの計測手段に複数の温度、湿度センサとフローセンサが配置されており、且つ、それらを構成した計測手段を3つ必要としているが、センサの電気的特性に違いが生じる為、それぞれの検出値において検出誤差が現実問題として生じる虞がある。よって、それらの検出値を用いて蒸散速度を算出した場合、算出結果に対して、更なる誤差が生じることになるので、最終的に算出された値の精度が低下する。
(2)第2の計測手段は、転写装置の下流側つまり定着装置の傍に設置することになる。この場合、定着装置からの温度影響によって、水分の蒸散量が変化すると考えられるため、下流側と上流側の偏移量が本来の蒸散量よりも値が大きくなるため、蒸散速度に誤差が生じる。
(3)記録用紙(以下、転写紙とする)の蒸散挙動を検出する位置は、搬送される転写紙の先端部としているが、移動している転写紙表面には空気の流れが生じている。いくら端部の換気性がよく蒸散量が多くてもその水分は、流れに乗って転写紙後方に流れていくので、端部の蒸散挙動を検出しても本来の蒸散量にはならない。
(4)転写紙の変形を推測するのに複数の計測手段を必要としているため、構成が複雑になる他、コスト的に見ても好ましい構成とは言い難い。
(5)また、図30のような本発明と酷似した測定方法を採用しているが、本発明とは目的と得られる効果が明らかに違う他、検知部を構成するセンサ基板が温度、湿度センサ及び、赤外線センサなどの焦電素子、さらに放熱素子を含んだ一体形成となっているため、焦電素子や放熱素子の駆動時の発熱による熱が基板を伝わり、温度センサ及び、湿度センサへ影響するため温度、湿度センサの検知結果が不正確となり、変形の予知精度が悪くなる。また、この構成だと転写紙の端部表面しか測定することができず、画像形成装置内などに設置しようとした場合、転写紙端部を通過する箇所にしか設置することができないため、サイズの異なる転写紙を同一の搬送路上で検出を行うには、サイズに合わせて検知部を移動させる手段が必要となるなど、設置箇所が限定されてしまう。
などの課題が発生する。
【0017】
よって、
(1)計測手段は、1種類で構成することで、電気的特性による検出誤差を抑え、
(2)定着装置の影響を受け難い、転写装置より上流側つまり、転写紙が収納される給紙トレイ寄りの位置に設置し、
(3)搬送されてくる転写紙表面の端部から端部までの両端間の蒸散挙動を捉える、
ことが必要となる。
これにより、構成が簡易となり、コスト的な観点からみても好ましい構成となる。
また、焦電素子や放熱素子などの発熱する素子と温度、湿度などの検知素子は、同一の基板上に形成せず、熱の影響を受け難くするため、それぞれ別の基板に形成し独立させ、転写紙表面のどの部分でも検出できる構成とすることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述した通り、画像形成装置においては、転写紙の含水分や厚みが定着特性に大きく関与している。従って、画像形成装置における加熱定着装置を転写紙に対して正確に制御するには、定着を行う転写紙の水分状態と厚みを把握する必要があるため、転写紙ごとに測定する必要がある。
従来の加熱手段を転写紙に接触させた状態で加熱させ、転写紙から蒸散する水蒸気の湿度を検出する方法では、転写紙の含水分が奪われ過ぎてしまい、画像形成時に最適な水分状態(4%〜6%)を保てなくなるほか、転写紙の組成をも変化させてしまう。さらにトナーが転写紙に転写される前に上述のような測定を行ってしまうと、転写紙が暖められ高温状態となり、この状態でトナーが転写されてしまうと、定着プロセスを通過する前にトナーが溶融してしまい、画像品質不良の原因となってしまうので、転写紙自体は高温状態にしないように測定する方法が必要である。
また、転写紙全面を加温することなく局所部を加温することが可能な加熱手段を用いることで含水分を奪い過ぎないようにする新たな測定方法が必要となる。
【0019】
複数の高速な湿度センサなどによって、転写紙の含水分を測定する手段を用いた方法があるが、その方法によって転写紙の特性を測定することに関しては、センサの電気的特性や検知個所の違いによる測定誤差が大きく発生する虞があるため、複数の検知手段による構成では困難となる。よって、測定誤差を容易に抑えることが可能で且つ、微小な水分変化を精度よく捉える検知部を用いた単一の検知手段による新たな検出方法が必要となる。
また、近年の画像形成装置内を移動する転写紙の搬送速度は200mm/sec以上となる。従って、高速に搬送される1枚ごとの転写紙の特性を短時間で見極め、高速に測定することが必要となる。
【0020】
転写紙の紙面近傍の温度及び、湿度変化から転写紙の特性を測定する装置によって、加熱定着装置の加熱温度制御を有する画像形成装置において、転写紙の表面近傍に加熱させることが可能な加熱手段を設け、該加熱手段の非加熱時に転写紙表面からの水分蒸散量を転写紙表面近傍に設けられた検知手段によって検知した空気の湿度変化量から転写紙の含水分状態を推測し、前記含水分状態推測後、転写紙を該加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を空気の温度並びに湿度変化量として該検知手段で検知した転写紙の含水分量と厚みに応じて、転写紙一枚毎に加熱定着装置の定着条件を適正に制御する必要がある。
また、前記加熱手段の加熱部を接触させてしまうと、転写紙自体が必要以上に高温状態となったり、転写紙の組成を壊したりするので、転写紙表面に対して、効率よく伝熱させることができ、且つ接触することなく加熱できる方法が必要となる。
【0021】
液体や固体の物体の表面から空気中に水分が蒸散すると、その表面に近い空間の湿度が変化し、分布ができる。表面の形状や気温、湿度、風速などによって分布はさまざまであるが、湿度が大きく変化する範囲は、一般に表面から1cm以内の狭い空間とされ、数cm以上離れると対流により、蒸散した水蒸気が周囲の空気と混合しほぼ一様な分布になる。適切に水分調節された転写紙に含まれる水分は、4〜6%とされており、その水分量は数百ミリグラムと僅かな量となる。よって転写紙表面から放出される水分も微量である為、この微量の水分を検知するには、転写紙からの距離が離れるほど、その場の環境に馴染み易くなってしまい、周辺環境との違いを見極められなくなってしまう為、従来のような装置周辺や転写紙収納トレイ近傍など転写紙との距離が明確にされていないような位置に装着された湿度センサでは、転写紙自体から発生する水分を見極めることは困難であるため、転写紙との検出距離を、規定して検知することが必要となる。
【0022】
転写紙を連続給紙して連続印字(連続画像形成)する場合などのように、複数の転写紙が転写紙搬送路を連続して通過する場合には、転写紙の含水分量によって画像形成装置内の環境が変化する。例えば、含水分量の多い転写紙を連続して連続印字する場合には、画像形成装置内は高湿度状態となることで、加熱定着を行う定着装置などで結露が発生し、現像装置などでは、感光体ドラム表面に付着した放電生成物が水分を吸着することによってフィルミング現象が発生し、画像品質不良の原因となったりするのを回避するため、装置内が高湿度状態であることを検知することが可能な検知手段が必要となる。
【0023】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、画像形成装置に用いられる転写紙の特性を、簡単な構成で検出することができ、且つ転写紙の特性検出以外の用途にも応用可能な、転写紙特性測定方法及び転写紙特性測定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、その転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置を用いて良好な画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定方法であって、前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを設け、前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測することを特徴とする(請求項1)。
【0025】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする(請求項2)。
本発明の第3の解決手段は、第1または第2の解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする(請求項3)。
本発明の第4の解決手段は、第1乃至第3のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする(請求項4)。
本発明の第5の解決手段は、第1乃至第4のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする(請求項5)。
本発明の第6の手段は、第1乃至第5のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする(請求項6)。
本発明の第7の解決手段は、第1乃至第6のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする(請求項7)。
【0026】
本発明の第8の解決手段は、画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定装置であって、前記転写紙の表面近傍に設けられ該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙の表面近傍に設けられ前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段と、前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測する手段と、前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測する手段と、を有することを特徴とする(請求項8)。
【0027】
本発明の第9の解決手段は、第8の解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする(請求項9)。
本発明の第10の解決手段は、第8または第9の解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする(請求項10)。
本発明の第11の解決手段は、第8乃至第10のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする(請求項11)。
本発明の第12の解決手段は、第8乃至第11のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする(請求項12)。
本発明の第13の解決手段は、第8乃至第12のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする(請求項13)。
本発明の第14の解決手段は、第8乃至第13のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置において、前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする(請求項14)。
【0028】
本発明の第15の解決手段は、画像形成動作により像担持体上に形成された画像を転写紙に転写し、定着する画像形成装置において、第1乃至第7のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定方法、または第8乃至第14のいずれか一つの解決手段の転写紙特性測定装置を用い、前記転写紙の紙面近傍の温度及び湿度変化から該転写紙の特性を測定することによって加熱定着装置の加熱温度を制御する手段を備えることを特徴とする(請求項15)。
【0029】
本発明の第16の解決手段は、第15の解決手段の画像形成装置において、前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを有する転写紙特性測定部を設け、前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測し、該計測した前記転写紙の含水分量と厚みに応じて前記加熱定着装置の定着条件を制御する手段を備えることを特徴とする(請求項16)。
【0030】
本発明の第17の解決手段は、第16の解決手段の画像形成装置において、画像形成装置全体の動作を制御する制御手段は、前記転写紙が前記転写紙特性測定部を通過していない時には、前記転写紙特性測定部によって得られる温度測定値並びに湿度測定値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定することを特徴とする(請求項17)。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、転写紙を表面近傍にて加熱し、加熱されたことによって発生した水蒸気の湿度を検出し、その変化量と転写紙の厚み特性とを関連つけることによって、転写紙の厚み特性を推測することが可能となる。
また、本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、加熱手段にMEMS技術を用いた熱伝導方式の感温抵抗体を用いることによって、少ないエネルギー量で瞬時に規定の加熱温度に到達することができるので、転写紙内に含まれる水分を短時間で暖め蒸散させることができるので転写紙が検知手段を通過移動するような場合であっても、転写紙の厚みを短時間で正確に推測することが可能となる。
さらに本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、検知手段をMEMSを用いて極めて熱容量の小さな感温抵抗体で形成した構成としたため、出力応答性能を非常に高くすることができ、且つ高速応答も実現できるので、高速移動する転写紙の移動速度に追従した検出が可能となる。また、外観形状を数mm単位に小さくすることができるので、装置内に配置しても他の装置レイアウトの妨げにならずに設置が可能となる。
【0032】
本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、検知手段の検知部、及び加熱手段の加熱部を非接触で検知、加熱するので、転写紙を傷めることなく、転写紙の特性情報を取得することが可能となる。
また、本発明に係る転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置によれば、検知手段のセンサ部と加熱手段のヒータ部の転写紙表面との間の距離を規定することにより、周囲環境の影響を受け難くし、且つ転写紙から発生する水分状態をより正確に検出することが可能となり、高速搬送される転写紙一枚毎における画像形成装置の定着制御を精度よく、良好に行うことが可能となる。
【0033】
本発明に係る画像形成装置によれば、上記の構成及び効果を有する転写紙特性測定方法または転写紙特性測定装置を用い、「含水分値と加熱時の湿度変化量と厚み特性の関係」に基づいた判定基準(後述の図5)を用いることによって、転写紙の含水分及び厚みを推測し、推測した情報に応じて、定着制御条件を設定、制御することで、良質な画像を常に保つことが可能な画像形成装置を実現することができる。
また、本発明に係る画像形成装置によれば、連続印字時における転写紙と転写紙の合間や、画像形成装置の電源オン時などにおいて、転写紙が検知手段(例えば温・湿度検出センサ)と対向する位置を通過していない時の検知手段(温・湿度検出センサ)による温・湿度検出によって得られた温度、湿度値から画像形成装置内の環境を把握することができるので、得られた温度、湿度値に応じて画像形成装置内の環境を制御することによって、画像形成装置内を最適な画像形成制御状態に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の制御系を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る含水分量が同一の転写紙における加熱有無による湿度検出変化の違いを示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る含水分量が同一で厚み特性の異なる転写紙の湿度検出変化の違いを示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る含水分値と加熱時の湿度変化量と厚み特性の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る測定方法を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施例2に係る制御部を示す概略ブロック図である。
【図8】加熱による転写紙からの水分移動を検出センサが捉えている様子を示す模式図である。
【図9】湿度検出センサのセンサ出力と時間との関係を示した図である。
【図10】本発明の実施例2に係る検出ユニット構造の一例を示す図であって、(イ)は斜視図、(ロ)は分解図、(ハ)は測定形態図である。
【図11】本発明の実施例2における検出ユニット構造の別の例を示す図であって、(イ)は斜視図、(ロ)は分解図、(ハ)は測定形態図である。
【図12】本発明の実施例3に係る検出ユニット構造の一例を示す図であって、図10、図11に示す検出ユニット構造に対し先端部が異なる形状を持つユニットの斜視図である。
【図13】(a)及び(b)は本発明の実施例4に係る検出ユニット構造の一例を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施例4に係る検出ユニットにおける、画像形成装置などの装置内で測定を行う際の別構成となる斜視図である。
【図15】本発明の実施例5に係る検出ユニット構造の一例を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施例5に係る検出ユニット構造の別の例を示す図であって、(イ)は斜視図、(ロ)は測定形態図である。
【図17】本発明の実施例6に係る測定装置を示す概略ブロック図である。
【図18】本発明の実施例6に係る測定方法を示すフローチャート図である。
【図19】本発明の実施例7に係る測定方法を示すフローチャート図である。
【図20】本発明の実施例7に係る定着制御条件を決定する条件設定テーブルの一例を示す図であり、(a)は定着温度、(b)はニップ幅の条件設定テーブルを示す図である。
【図21】本発明の実施例8に係る動作を示すフローチャート図である。
【図22】湿度検出センサと転写紙との距離を変化させた時における相対湿度変化量と時間との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明に係る転写紙特性測定方法及び転写紙特性測定装置が適用される画像形成装置の一実施形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置(例えば、電子写真方式の複写機)を示す概略構成図である。
図1に示す本実施形態7に係る画像形成装置1は、像担持体としての感光体ドラム2の周囲に帯電装置3、書き込み装置(露光装置)4、現像装置5、転写装置6、クリーニング装置7が配置され、転写装置6の下流側には定着装置8が配置されている。
【0037】
この画像形成装置1の画像形成動作時においては、所定のプロセススピードで回転駆動される感光体ドラム2の表面を帯電装置3により一様に帯電させ、読取り装置(不図示)で読取った原稿の画像情報に応じて書き込み装置4により露光を行って静電潜像を形成した後、現像装置5のトナー(現像剤)で現像を行うことにより、トナー像が感光体ドラム2上に形成される。
そして、給紙カセット9から所定のタイミングで給紙され、転写紙搬送路10を通して転写部位(感光体ドラム2と転写装置6との間)に搬送される転写紙Pに、転写装置6により感光体ドラム2上に担持されているトナー像が転写される。
【0038】
トナー像が転写された転写紙Pは定着装置8に搬送されて、定着ローラ8aと加圧ローラ8b間で加熱・加圧されることにより、転写紙P上にトナー像が定着される。トナー像が定着された転写紙Pは、排紙ローラ(不図示)により外部に排出される。なお、感光体ドラム2上のトナー像が転写紙Pに転写された後に感光体ドラム2の表面はクリーニング装置7のクリーニングブレード7aにより残トナーが除去されて、次の作像に供される。
【0039】
この画像形成装置1には、給紙カセット9付近の転写紙が搬送される搬送路上部に検知手段である検出センサ11が配置されており、検出センサ11と対面する位置となる下部に加熱手段である加熱部14が、転写紙Pがその間を通過するように配置されている。
そして、給紙カセット9から給紙される転写紙P一枚に対し、非加熱時に反対面に設置された検出センサ(例えば温・湿度検出センサ)11によって、転写紙Pから自然蒸散してきた空気の温度と湿度を検出し、検出結果に基づいて転写紙Pの水分量を推測し、さらに加熱手段となる加熱部14によって転写紙近傍を加熱し反対面に設置された温・湿度検出センサ11によって、転写紙Pを透過してきた空気の温度と湿度を検出し検出結果に基づいて転写紙の厚みを推測する。尚、図1において、12aは給紙ローラ、12bはレジストローラである。
【0040】
図2は、前記画像形成装置1の制御系を示す概略ブロック図である。
図2に示すように、制御部(計測手段)13は、厚み検出装置(検出センサ)11から入力されるセンサ出力とメモリ15に予め記憶されている、図5に示すような「水分値と加熱時の湿度変化量と転写紙の厚みとの関係を示すデータ」に基づいて、給紙カセット9から給紙される転写紙Pの厚みを計測(算出)する(詳細は後述する)。画像形成装置1の動作全体を制御する制御手段としてのCPU16は、制御部13から出力される転写紙Pの厚み情報に基づいて、転写紙Pの厚みに応じた加熱定着制御部17の定着温度及びニップ幅を制御する。
【0041】
また、前記CPU16は、制御部13から出力される環境湿度値に基づいて、環境制御部18を制御し、装置内に設けているファン(不図示)を回転させるファンモータ(不図示)を制御する(詳細は後述する)。
【0042】
本発明は、以上のような構成の画像形成装置1において用いられる転写紙の特性(含水分量、厚み等)を、簡単な構成で検出することができ、且つ転写紙の特性検出以外の用途にも応用可能な、転写紙特性測定方法及び測定装置を提供するものである。
【0043】
前述の解決手段に記載のように、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置では、転写紙(例えば図1の転写紙P)の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段(図1、図の加熱部14)と、転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段(図1、図2の検出センサ11)とを設け、加熱手段14の非加熱時に転写紙の表面近傍に設けられた検知手段11によって検知した空気の温度と湿度の変化量から転写紙の含水分状態を推測し、含水分状態の推測後、転写紙を加熱手段14で暖めることによって増加した水分蒸散量を検知手段11によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、転写紙の含水分量と厚みを計測する。
【0044】
ここで、画像形成装置による転写紙の厚み特性を測定する方法において、加熱手段で転写紙の表面近傍を加熱すると、転写紙内に吸収されている水分が強制的に蒸散する。
これは、加熱によって熱移動が起こるためであって、熱移動と共に水分が転写紙から外部へ水蒸気となって蒸散される。
その蒸散される量は、転写紙が持つ水分量によって異なり、また転写紙の厚みによっても異なり、例えば同じ含水分率の転写紙でも厚みが異なると含まれる水分量も異なる。つまり水分を含むことができる容積が、厚みが増すことで増えるので、同一の含水分率であっても、厚い方が転写紙に含まれる水分量は多いことになる。
よって、それらの転写紙を加熱することにより、含まれる水分が蒸散する際の水分蒸散量が変化することから転写紙の含水分状態と加熱による水分蒸散量との関係を照合することで転写紙の厚みを計測することが可能となる。
【0045】
前記加熱手段14の加熱源は、ジュール熱によって自己発熱する感温抵抗体から成り、転写紙の表面近傍雰囲気の湿度を計測するMEMS(Micro Electronics Mechanical System)技術(集積回路加工技術を応用した微細加工技術)を利用した構成で、湿度変化に応じて発熱エネルギーを可変させ加熱温度を一定に保つことが可能な熱伝導方式の構造を持ち、感温抵抗体部は、MEMS技術を用いた極めて熱容量の小さな感温抵抗体が形成されたものであるため、極めて少ないエネルギー量で高い発熱量を得られるほか、出力応答性が著しく高いという特徴を有しており、また、その発熱領域は数μm2と微小な領域で発熱するため、転写紙全体を暖めてしまうこともなく、また加熱体によって装置内を暖めてしまうようなこともない。したがって、転写紙表面に対して、効率よく伝熱させることができ、且つ接触することなく加熱できる。
【0046】
前記検知手段(検出センサ)11は、ジュール熱によって自己発熱する感温抵抗体から成り、周囲の温度変化に応じて抵抗値が変化することを利用して温度を測定し、且つ熱放散が湿度に応じて変化することを利用して湿度を測定する熱伝導方式の温・湿度センサ構造を持ち、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)技術(集積回路加工技術を応用した微細加工技術)を用いて極めて熱容量の小さな感温抵抗体が形成された構成であるため、出力応答性が著しく高く速い。さらに外観形状を数mm単位に小さくすることができる。
【0047】
前記加熱手段14の加熱部は、接触によって転写紙表面や加熱部を損傷させることがないよう、転写紙表面に対し非接触によって加熱する。
また、前記検知手段11の検知部は、接触によって転写紙表面や検知部を損傷させることがないよう転写紙表面に対し非接触によって検知する。
【0048】
さらに、前記加熱手段14の加熱部は、転写紙表面を効率よく高速に且つ、転写紙の表面を損傷させることなく熱を伝える必要があるため、転写紙表面に対し非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱する。
また、前記検知手段11の検知部は、転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知する。
【0049】
ここで、図22は、転写紙表面からの計測距離(転写紙表面とセンサ部との間の距離)の違いによる、相対湿度変化量の差を示したグラフである。
図22に示すように、転写紙表面に対して計測距離が3mmや5mmの場合には、室内環境との差はほとんど見られず、転写紙からの水分移動(湿度変化量)を捉えることができていないが、転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の場合、転写紙からの湿度変化を捉えることが出来ている。
【0050】
また、前述の通り、水分が蒸散する際、その蒸散が開始される位置から、水分(水蒸気)移動が線形的に行なわれている拡散層の存在が非特許文献1および非特許文献2によって説明されている。
例えば、水が張られた水面の場合、水は定常的に定量の水蒸気移動が可能なので、拡散層の厚さは風などの影響がない時には水面から垂直方向に10mm程度の高さ領域まで存在が可能で、風の影響があっても2〜3mm位までは問題ないとされている。
【0051】
しかし、転写紙の場合、まず転写紙の持つ水分量が周囲環境によって変化し、さらに転写紙の厚さによっても変化するため、定常的な水蒸気移動にはならずまた、水蒸気量も一定ではないため、微量な水分の場合、拡散層の厚さ領域は小さくなる。さらに、転写紙の水分状態と周囲環境とのバランス状態によっては、周囲環境の水分を転写紙へ吸収してしまう逆の水分移動が起こる。この場合も拡散層は存在し、このときの領域の厚さが転写紙と周囲環境の場合、2mm以下の領域となっているため、2mmを超えると非線形的な動きに変化してしまい、周囲環境の影響を受け易くなり、正確な転写紙の水分状態が把握できなくなると考えられる。
【0052】
従って、同じ条件であっても、水分移動(湿度変化量)状態変化を大きく捉えられることができる、転写紙表面から2mm以下となる空間に検出センサ部11を配置することが最も好ましい。また、センサ部を転写紙表面に接触させた状態でも検知は可能だが、画像形成装置内を200mm/sec以上の速度で高速搬送される転写紙表面に接触させてしまうと、転写紙表面を傷つける他、センサ部11が破損する恐れがあり、また搬送時における転写紙のばたつき動作なども考慮する必要がある。よって、転写紙表面から離れて検知する必要があると考えられる。
【0053】
従って、転写紙表面からの計測距離範囲は、転写紙から発生する水蒸気を効率よく且つ、高速に検知することが可能な、転写紙表面と検知部が非接触となる距離から2mm以下とする。
【0054】
本発明に係る画像形成装置では、上記のような転写紙特性測定方法及び測定装置を用い、転写紙の紙面近傍の温度及び湿度変化から該転写紙の特性を測定することによって加熱定着装置8の加熱温度を制御する手段(図2の制御系)を備えている。
より具体的には、本発明に係る画像形成装置においては、転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段14と、転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段(検出センサ)11とを有する転写紙特性測定部を設け、加熱手段14の非加熱時に転写紙の表面近傍に設けられた検知手段(検出センサ)11によって検知した空気の温度と湿度の変化量から転写紙の含水分状態を推測し、含水分状態の推測後、転写紙を加熱手段14で暖めることによって増加した水分蒸散量を検知手段(検出センサ)11によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、転写紙の含水分量と厚みを計測し、該計測した転写紙の含水分量と厚みに応じて加熱定着装置8の定着条件を制御する手段(図2の制御部13、CPU16、定着制御部17)を備えているので、検知手段(検出センサ)11で検知した転写紙の含水分量と厚みに応じて加熱定着装置8の加熱温度やニップ幅を制御することができる。
【0055】
また、本発明に係る画像形成装置では、画像形成装置全体の動作を制御する制御手段(図2のCPU16)は、転写紙が転写紙特性測定装置部(検出センサ部11)を通過していない時には、転写紙特性測定装置よって得られる温度測定値並びに湿度測定値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定するので、画像形成装置内を最適な画像形成制御状態に保つことが可能となる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置の具体的な実施例について説明する。
【0057】
[実施例1]
図3は、転写紙の一方の面から加熱し、もう一方の対向する面にて加熱された際の表面近傍の湿度変化と加熱しない状態で捉えた湿度変化を比較したグラフである。
測定に使用した転写紙は画像形成装置でよく利用される、連量単位の呼称で55k紙と呼ばれる厚さ約68μmの普通紙を一定の環境(23℃50%RH)にて水分調節された状態のものであり、その含水分率は転写紙に対して約6%となっている。
グラフAは、加熱しない状態の湿度変化であり、グラフBは、加熱した状態の湿度変化であり、加熱温度は約700℃である。
【0058】
図3のグラフに示す通り、非加熱時の湿度変化より、加熱時の湿度変化の方が大きい変化を捉えることができている。
また、図示していないが非加熱時の湿度変化は、転写紙の厚みが異なった場合でもその変化量はグラフAとほとんど変わらないことが本発明者らの実験調査でわかっている。これは、表面からの水分蒸散分による湿度検出を行っているため、厚みに関係なく変化を捉えることができていると考えられる。
【0059】
また、非加熱時の転写紙の水分測定方法については、本出願人の先願である特許文献5(特開2008−209905号公報(特願2008−007819))の原理・現象に基づいた測定方法を用いることができる。
【0060】
次に、厚みが異なる転写紙を表面近傍より加熱し、加熱する反対面の湿度変化を捉えたのが、図4のグラフである。このときの転写紙の水分調節条件(含水分率)は、すべて同じ(≒6%)で、加熱温度は700℃である。
図4のグラフに記載のaは、連量単位の呼称で110k紙と呼ばれる、厚みが約128μmある転写紙で、bは90k紙と呼ばれる、厚さ約126μmの転写紙である。さらにcは、市場で最も利用頻度の高い55k紙と呼ばれる厚さ約68μmの転写紙である。
【0061】
図4のグラフに示す通り、厚みが厚い転写紙a,bの変化量は、転写紙cに比べ大きく変化する。
これは、加熱作用によって、転写紙内に含まれる水分が暖められ、水蒸気となって転写紙外に放出された分を検知したためと考えられ、同じ含水分率であっても、転写紙の厚み分、つまり容積の違いによって含まれる水分量が異なるため、暖めることによってその水分量差が検出結果となって現れており、図5のような関係が成り立つ。
図5は、3パターンの含水分状態時における湿度変化と厚み特性の関係を示したグラフだが、それぞれの含水分パターン(例えば1%単位毎など)を持つことによって、詳細に転写紙の情報を取得することが可能となる。
【0062】
従って、転写紙の表面近傍に加熱させることが可能な加熱手段14を設け、該加熱手段14の非加熱時に転写紙の反対面近傍の該加熱手段と対面する位置に設けられた検知手段11によって、検知した空気の湿度変化と、その変化に掛かる時間に基づいて、転写紙の水分状態を推測し、前記水分状態と該加熱手段14による加熱によって暖められた転写紙内に存在する水分が転写紙から蒸散し、転写紙の加熱源とは反対面から現れてきた空気を、転写紙の反対面近傍の該加熱手段14と対面する位置に設けられた検知手段11によって検知した空気の温度並びに湿度変化と、その変化に掛かる時間に基づく関係から転写紙の厚みを推測する方法が成立する。
【0063】
[実施例2]
図6(a)は、本発明の実施例2に係る測定方法及び装置の構成例を示す図であり、検出手段である検出センサ11と加熱手段14が、転写紙Pの表面近傍に対し、転写紙Pが通過する間隔を保持して並列に配置された状態を示す断面図と、検出センサ11と加熱手段14のそれぞれが信号線22、23を通じて制御部(図2に示した制御部)13に電気的に接続する様子を併せて示す概略構成図である。
また、図6(b)は、本発明の実施例2に係る測定方法及び装置の別の構成例を示す図であり、検出センサ11と加熱手段14は転写紙Pが通過する間隔を保持して対向する位置に配置された状態を示す断面図と、検出センサ11と加熱手段14のそれぞれが信号線22、23を通じて制御部(図2に示した制御部)13に電気的に接続する様子を併せて示す概略構成図である。
【0064】
図6(a)、(b)に示す本実施例に係る検知手段となる検出センサ11は、転写紙Pの湿度(水分蒸散)を検出するセンサ部11aと、センサ部11aを電気的に接続した基板部11bとを有し、信号線22を介して基板部11bと制御部13が電気的に接続されている。
検出センサ11のセンサ部11aには、MEMS技術を応用した熱伝導方式型のセンサを採用している。
その測定方法は、雰囲気ガスの熱伝導率が、水蒸気の濃度(湿度)に応じて変化することを利用したもので、例えば、特許文献6(特許第2889909号公報)の段落[0081]に開示されている、単体構成で温度検出も可能な、温・湿度センサを用いることができる。
【0065】
検出センサ(温・湿度センサ)11の基板部11bはセンサ部11aを固定でき、そこから電気信号が取り出すことができればなんでもよいが、一般的に利用されるガラスエポキシ基材やポリイミド基材等で加工された電子回路基板などを用いることが好ましく、センサ部11aを基板部11bに接着し、微細な金属線(不図示)又は溶着にて基板部11bと接合し、信号線22を通じて制御部13に電気的に接続する。
このときセンサ部11aが、検出センサ(温・湿度センサ)11の構成の中で転写紙Pの表面に一番近くなるよう突出した状態で装着する。これによって、転写紙Pからの水分移動の流れがセンサ部11aに一番早く到達することになるので、検出センサ11の構成部材(基板部11b等)によって阻害されることなく、転写紙Pと周囲環境との間で起きる水分移動を良好に検出できる。
【0066】
また、センサ部11aには、MEMS技術を応用した熱伝導方式型のセンサを使用することで、センサ自体の形状を数mm単位の大きさまで小さく、そして薄くでき、それに合わせて検出センサ11全体も小さくできるので、狭いスペースでも設置が可能になるため、最も好ましい。
【0067】
尚、加熱手段14の構成は、図6(a)、(b)に示す検出センサ11と同様であり、加熱部14aと、加熱部14aを電気的に接続した基板部14bとを有し、信号線23を介して基板部14bと制御部13が電気的に接続されている。
加熱手段14の加熱部14aはジュール熱によって自己発熱する感温抵抗体から成り、検出部11aと同様にMEMS技術を応用した構成で、湿度変化に応じて発熱エネルギーを可変させ加熱温度を一定に保つことが可能な熱伝導方式の構造を持ち、加熱部14aは、MEMS技術を用いた極めて熱容量の小さな感温抵抗体が形成されたものである。
この加熱部14aが検出部11aと異なる点は、制御部13における制御方法であり、加熱部14aに形成されている感温抵抗体に加えるエネルギー量の違いである。
【0068】
検知手段となる側のセンサ部11aへは、抵抗体の発熱温度が100℃〜300℃位になるようにエネルギーを加え水分変化を捉えるが、加熱手段となる側の加熱部14aへは、発熱温度が500℃〜800℃くらいになるようにエネルギーを加えることになるが、そのエネルギー量は数十mWで、最大でも数百mWと極めて少ない電力で対応できる。
【0069】
図7は、図2に示した制御系の制御部13の構成例を示す概略ブロック図である。この制御部13では、ドライブ回路Aにて駆動した検出センサ(温・湿度センサ)11によって検出された検出信号をA/D変換回路によって受信し、デジタル信号に変換した後、温湿度演算回路によって温度、湿度値に変換され、水分変換パラメータ部によって水分値に変換される。
同時に検出タイミング回路の判断で、ドライブOn/Off切替回路によって加熱部のドライブ回路Bに通電して、加熱部14をドライブし、加熱時の温・湿度検出を順次行い、加熱時の温度、湿度の変化量を検出し、メモリ領域にそれぞれ格納する。
それぞれのデータが格納され後、差分演算回路によって温度、湿度データの差分値を算出する。算出された差分値を、判定パラメータ部に格納されている、水分値と加熱時の変化量と厚み特性との関係とを照合し、転写紙の厚み特性を出力する。
【0070】
図8(a),(b)は、転写紙Pに近接するようにして設置した熱伝導方式の温・湿度検出センサ部が加熱されている際に発生している転写紙Pからの水分移動を、隣接して設置された、または反対面に設置された検出センサで捉える様子を示した模式図である。
尚、図8(a),(b)の検出センサ11のセンサ部11a並びに加熱手段14の加熱部(加熱ヒータ)14aは、それぞれ転写紙表面との間の距離(間隔)が、センサ部11aは0.5mm以上2mm以下、加熱部14aは0.5mm以上1mm以下の範囲となるようにして設定されている。
【0071】
図9は、図8(a),(b)に示した検出センサのセンサ部11aの湿度出力と時間との関係を示したグラフであり、転写紙を外気環境(周囲環境)へ放置した場合に起きる転写紙近傍の水分挙動を、転写紙表面近傍の所定の空間で検出した状態を示したものである。
まず、転写紙が検出部を通過開始したA点から特定時間t1までのB点における、非加熱時の転写紙表面の自然蒸散による湿度変化を捉える。この周囲環境湿度値を基準としたときの湿度変化量(Δv1)から転写紙の含水分状態を推測する。
次に、B点から加熱部による加熱を開始し、特定時間t2までのC点における、加熱によって転写紙内部に吸収されている水分が外部に蒸散したことによる、湿度変化量(Δv2)が増大する状態を捉えることができる。
【0072】
この加熱時の湿度変化が転写紙の水分量と厚みに応じて変化する。従って、このB点からC点までの湿度変化量Δv2とA−B点間の湿度変化量Δv1を加算した湿度変化量は転写紙の厚みとの相関が成立する。
よって、転写紙から蒸散する水分変化割合を特定の時間間隔で所得することで、転写紙の含水分と厚み特性が把握することができる。
【0073】
図10は、本発明の実施例2の図6(a)に係る、本発明を所謂、計測装置として利用することを考慮したときの代表的な検出ユニット構造の一例を示す図であって、イ)は検出ユニットの斜視図,ロ)は分解図,ハ)は測定形態図である。
ユニット全体は、周囲の温度や湿度環境に影響しにくいプラスチック系樹脂で構成されており、上ユニットの先端部に検出センサ部11及び加熱部14が隣合わさるように並列に埋め込まれて設置されている。
【0074】
また、図11は、本発明の実施例2の図6(b)に係る、本発明を所謂、計測装置として利用することを考慮したときの代表的な検出ユニット構造の別の例を示す図であって、イ)は検出ユニットの斜視図,ロ)は分解図,ハ)は測定形態図である。
ユニット全体は、周囲の温度や湿度環境に影響しにくいプラスチック系樹脂で構成されており、ユニットの先端部上ユニット側に検出センサ部11が埋め込まれ、下ユニット側に加熱部14が埋め込まれ、両者は上下対称となる位置に設置されている以外の構成は、図10、図11ともに同じなので共通する部分の説明は省略する。
【0075】
埋め込まれている検出センサ11及び加熱部14の検出面並びに加熱面は、埋め込まれた面から、非接触となる距離から2mm以下とすることが好ましいが、転写紙の水分状態が周囲環境湿度によって飽和した状態の場合、検知する湿度変化が小さくなる場合などを考慮すると、変化を極めて大きく捉えることが可能な1mm以下とすることが最も好ましい。
ユニットの全体構成は、上ユニット、下ユニットの2つで構成されており、それらは中央部で連結され、てこの原理によって、後方の部分を上下に摘むことによって先端部が開口し、離すと中央部に装着されているバネ材(不図示)によって、先端部が閉口する、いわゆる、洗濯バサミのような構成となっているので先端部で転写紙を挟みこみ、測定を行う。
【0076】
この構成により、転写紙表面と検出センサ部11と加熱部(加熱ヒータ)14との距離を正確に規定でき、また測定箇所は密閉空間となるので、周囲環境の影響を受け難い状態となるため、転写紙からの水分蒸散を良好に検知、取得することが可能となる。
【0077】
[実施例3]
図12は、本発明の実施例3に係る検出ユニット構造の別の例を示す図であって、図10、図11に対し、別の形状を持つ下ユニットの斜視図である。
尚、基本的な構成は、図10や図11と同様なので重複する説明及び、図は省略する。また、図は下ユニットのみ図示しているが、上ユニットも同様の形状である。
【0078】
図12の構成で図10や図11と異なるのは、先端形状を転写紙表面に密着させる図10や図11のような平面形状と異なり、転写紙と接触する部分は、弧を描いた形状のガイド部を形成し、ユニット端部は丸みを帯びた形状となっていることである。
これは、例えば転写紙を挟んだ状態で、転写紙を移動させたときの測定を行いたい場合などに、図10、図11のような平面形状だと転写紙がユニットに密着し、摩擦抵抗が大きくなるため移動できない恐れがあるので、図12に示すような形状にすることによって、移動により転写紙がユニットに密着してしまうのを防止する役割を持たせている。これにより転写紙を挟んだ状態で検出ユニットを動かす場合なども、接触面積が小さく摩擦抵抗も小さくなるのでスムーズな動作が可能となる。
尚、このときの検出部並びに加熱部は、埋め込まれる面に対して水平となる位置に埋め込まれ、転写紙に接触するガイド部は、検出部面並びに、加熱部面との距離が1mm以下となるような形状としている。
【0079】
尚、これらは、あくまで代表図であり、転写紙表面との測定距離を一定に保つことができ、且つ、転写紙の移動の妨げにならなければ、どのような形状でも良い。例えば、先端部上下にローラを具備し、容易に転写紙表面上を移動可能な形状にしても良いし、また、測定距離を微調整するための測定距離調整機構などを付与してもよい。
【0080】
[実施例4]
図13(a)、(b)は、本発明の実施例4に係る、画像形成装置などの装置内で測定を行う際の代表的な検出ユニット形状の斜視図であり、検出ユニットの基本的な構成は図10、図11(または図12)と同様である。
構成するユニットの材料及び、検出センサ11、加熱部14の配置などは、図10、図11とそれぞれ同じ構成なので重複する説明は省略する。
【0081】
上ユニット、下ユニットはそれぞれ、3つの部品から構成されており、稼動部aと稼動部bの部分で連結され、ユニット先端部が上下に稼動する構造であり、稼動部aと相対する側に棒状のシャフトなどに挿通して画像形成装置内の搬送路近傍へ固定する。
また、上下ユニットを固定するシャフトは、機械的に同じ位置関係になるように配置されており、上下ユニットが対称位置になるように設置されている。
さらに稼動部a及び、稼動部bには、負荷の軽いバネ材(不図示)が具備されており、それぞれ特定方向にのみ稼動し、稼動範囲を制限している。
尚、図13(a)、(b)では、わかりやすくするため、上下ユニット間を離して記載しているが、実際はガイド部が接近した距離で設置されているものとする。
【0082】
ユニットの動作は、ユニット端部に転写紙が接触すると上下ユニットは、転写紙の厚み分上下に拡がって転写紙を挟み込み、ガイド部と転写紙表面をバネ材(不図示)の応力によって密着させた状態で、転写紙はガイド部を摺動するように移動していく。このとき、バネ材の負荷を軽くしているので、転写紙が挟まれても停止することなく移動が可能となるので、転写紙の先端から終端までを確実に密着させた状態で転写紙表面と加熱部14及び、検出センサ11との測定距離を一定に保ちながら測定を行うことができる。
【0083】
また、本実施例は、上下が同じ機構を持つユニット構成で説明しているが、必ずしもそうする必要はなく、転写紙表面に加熱部14及び検出センサ11が密着して測定できれば良い。例えば、図14に記載するように上ユニットのみ本実施例と同じ構成にし、下ユニットは、ガイド部を持つ先端部分のみで構成された部材を転写紙の搬送路などに接着又は、埋め込んで装着しても良く、装着場所によっては下ユニットを無くしても良い。
【0084】
また、これらはあくまで代表図であり、転写紙表面と加熱部14及び検出センサ11の測定距離を一定に保つことができ、且つ、転写紙の移動の妨げにならなければ、どのような形状でも良い。例えば、先端部上下にローラを具備し、容易に転写紙表面上を移動可能な形状にしても良いし、また、測定距離を微調整するための測定距離調整機構などを付与してもよい。
さらに、ユニット先端部のガイド部の構造を90°回転させ、ユニットの配置を転写紙に対し平行となるように配置しても良い。
【0085】
[実施例5]
図15、図16は、本発明の実施例5に係る、画像形成装置などの装置内で測定を行う際の簡易的なユニット形状を示す図であり、図15は図10に対応する検出ユニットの斜視図、図16は図11に対応する検出ユニットの、イ)斜視図とロ)測定形態図である。
構成するユニットの材料及び、検出センサ11、加熱部14の配置などは、図10、図11とそれぞれ同じ構成なので重複する説明は省略する。
【0086】
先端形状は、図12と同様の構成形状となっており、後方は装置内への固定を可能にするため、コの字形になる様に上ユニットと下ユニットが一体となる形状とし、転写紙が通過する搬送路の側面などに設置する。
また、先端部上下は、完全密着しておらず、転写紙が通り抜けられる程度の数μm隙間が開いてあり、転写紙が引っ掛かることなくスムーズに通過できるようにしてある。
また、隙間よりも厚い転写紙が通過する場合は、転写紙の厚みに合わせてF点から先端部が応力によって開く構造を持たせているので、常にガイド部と転写紙が密着した状態で測定を行うことができる。
【0087】
尚、これらは、あくまで代表図であり、転写紙表面との測定距離を一定に保つことができ且つ、転写紙の移動の妨げにならなければ、どのような形状でも良い。例えば、先端部上下にローラを具備し、容易に転写紙表面上を移動可能な形状にしても良いし、また、測定距離を微調整するための測定距離調整機構などを付与してもよい。
【0088】
[実施例6]
図17は、本発明の実施例6に係る転写紙特性測定装置を示す概略ブロック図である。尚、測定方法やその構成が前述の実施例2と重複する部分については省略する。また、制御部13は、実施例2の図7に示した制御部13と同一の構成及び機能を有するので、重複する説明は省略する。また、装置を駆動させる電源やそれに付随する電源スイッチなど、装置構成上、必要不可欠な構成ブロックは図示を省略する。
【0089】
まずスイッチからなる信号を発信し、一連の測定を行い測定結果が制御部13の所定ブロックへ送られる。制御部13で算出された結果を、表示パネルに厚み特性値表示する処理を行う。伝達手段は何でもよく、表示パネル上にLED発光素子を設けて対象数値のLEDを点灯させたり、又は、液晶パネルを設けて、測定結果を表示したりしても良い。
【0090】
次に、本実施例における厚み測定方法を、図18に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、検出センサ11(センサ部11a)と対向する位置に転写紙がない場合の環境湿度値を取得(測定)する(ステップS1)。そして、検出センサ11(センサ部11a)と対向する位置に転写紙があるとき、転写紙表面近傍の任意の時間における検出湿度値1を取得(測定)する(ステップS2及び、ステップS3)。このとき、転写紙の存在を判断するための電気的に反応するスイッチや光学的に反応するフォトインタラプタ(不図示)などを具備することで、より正確に転写紙の存在を確認できるようにすることが望ましい。
そして、制御部13により、前記環境湿度値と前記転写紙検出湿度値を減算して湿度変化分xを算出し(ステップS4)、環境湿度値と検出湿度値及び、湿度変化分xとから転写紙の含水分量mを算出する(ステップS5)。
【0091】
次に加熱部14を加熱し(ステップS6)、加熱してから転写紙表面近傍の任意の時間における検出湿度値2を取得(測定)する(ステップS7及び、ステップS8)。
そして、制御部13により、前記転写紙検出湿度値2と前記転写紙検出湿度値1を減算して湿度変化分yを算出し(ステップS9)、含水分量mと湿度変化分yとの関係から転写紙の厚みを推測する(ステップS10)。
【0092】
[実施例7]
次に、実施例7における転写紙厚み測定方法を、図19に示すフローチャートを参照して説明する。
参照する図19のフローチャートでは、ステップS1からステップS9までは、実施例6にて説明した図18に示すフローチャートと同様の処理なので、重複する説明と図は省略する。
【0093】
図2に示す画像形成装置の制御系のCPU16は、制御部13により、図18に示すフローチャートのステップS10までに推測された、転写紙の含水分と厚み情報を定着装置8の図20に示す制御条件テーブルa、bと照合して、定着温度、ニップ幅のそれぞれの制御条件を決定する(ステップS11)。
そして、決定された制御条件を定着装置の定着制御部16へフィードバックし、定着処理を実施する(ステップS12)。
【0094】
このように、本発明に係る転写紙特性測定装置では、転写紙の含水分量及び、厚みを正確に且つ同時に測定することができるので、CPU16は、制御部13から出力される転写紙の含水分量並びに厚み情報に基づいて、定着制御部17を制御し、定着温度及び、ニップ幅を適切に制御することができる。
【0095】
[実施例8]
転写紙を連続給紙して連続印字(連続画像形成)する場合などのように、複数の転写紙が転写紙搬送路を連続して通過する場合には、転写紙の含水分量によって画像形成装置内の環境が変化する。
そこで、本実施例では、転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過していない時には、検出センサ11による温度・湿度検出によって得られる値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定するようにした。
【0096】
本実施例における動作を、図21に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS13で、画像形成装置の電源がオン状態になった時(電源がオンされたとき)かそうでない時かの判断を行い、電源がオンされた時の場合は(ステップS13:YES)、そのときの環境湿度値を取得し、その環境湿度値を用いて環境制御を行う(ステップS14)。
【0097】
具体的には、図2に示した制御系において、制御部13は、検出センサ11からのセンサ出力に基づいて装置内の環境湿度値を取得する。そして、CPU16は、制御部13から出力される環境湿度値に基づいて環境制御部17を制御し、装置内に設けているファン(不図示)を回転させるファンモータ(不図示)を制御する。
これにより、所定の回転数で回転するファン(不図示)による気流によって装置内の環境が制御される。
【0098】
次に、電源がオンされた時ではなく(ステップS13:NO)、印字動作(画像形成動作)が開始された時かそうでない時かを判断し(ステップS15)、印字動作が開始されている場合は(ステップS15:YES)、転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過中かどうか判断する(ステップS16)。
ステップS16で、転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過中の場合は(ステップS16:YES)、実施例4の図18に示したフローチャートのステップS2の処理(転写紙検出湿度値1の取得)を行い、以降は、同フローチャートの次のステップと同様の処理を実行する。
【0099】
また、ステップS16で転写紙が検出センサ11と対向する位置を通過していない場合(ステップS16:NO)、ステップS15で印字動作が開始されていない時(ステップS15:NO)、およびステップS14で装置内の環境制御を行った後においては、実施例6の図18に示したフローチャートのステップS1の処理(転写紙がない時の環境湿度値の取得)を行い、同フローチャートの次ステップと同様の処理を実行する。
【0100】
尚、転写紙の検出センサ11と対向する位置の通過の判断は、例えば、検出センサ11と対向する位置を通過するときに反応する電気的なスイッチを設けることで行うことができる。また、転写紙通過の合間における環境温・湿度の検出については、毎回検出する必要はなく、連続印字枚数を規定して、規定された枚数が印字された後の転写紙通過の合間における環境温・湿度を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置の具体的な実施例について説明したが、各実施例では、画像形成装置のトナー像が転写される転写紙の厚み検出について説明した。しかし、本発明に係る転写紙特性測定方法及び測定装置は、これ以外にも、例えば紙の抄紙工程や、食用の乾燥海苔などの水分に影響するシート材の製造工程等において、これらの厚みを測定する場合においても、同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 画像形成装置
2 感光体ドラム
5 現像装置
6 転写装置
8 定着装置
9 給紙カセット
10 転写紙搬送路
11 検出手段(検出センサ)
11a センサ部
13 制御部
14 加熱手段(加熱部)
14a 加熱部(加熱ヒータ)
15 メモリ
16 CPU
17 定着制御部
18 環境制御部
P 転写紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2007−205693号公報
【特許文献2】特開平09−204080号公報
【特許文献3】特開2007−322558号公報
【特許文献4】特開2007−86054号公報
【特許文献5】特開2008−209905号公報
【特許文献6】特許第2889909号公報
【非特許文献】
【0104】
【非特許文献1】応用物理 第25巻 第4号 145ページ、「水蒸気勾配および拡散係数の測定」
【非特許文献2】応用物理 第29巻 第7号 443ページ、「強制対流による水の蒸発速度」
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定方法であって、
前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを設け、
前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、
前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項8】
画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定装置であって、
前記転写紙の表面近傍に設けられ該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、
前記転写紙の表面近傍に設けられ前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段と、
前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測する手段と、
前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測する手段と、
を有することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項15】
画像形成動作により像担持体上に形成された画像を転写紙に転写し、定着する画像形成装置において、
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法、または請求項8乃至14のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置を用い、前記転写紙の紙面近傍の温度及び湿度変化から該転写紙の特性を測定することによって加熱定着装置の加熱温度を制御する手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項15に記載の画像形成装置において、
前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを有する転写紙特性測定部を設け、
前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、
前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測し、
該計測した前記転写紙の含水分量と厚みに応じて前記加熱定着装置の定着条件を制御する手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像形成装置において、
画像形成装置全体の動作を制御する制御手段は、前記転写紙が前記転写紙特性測定部を通過していない時には、前記転写紙特性測定部によって得られる温度測定値並びに湿度測定値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定方法であって、
前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを設け、
前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、
前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする転写紙特性測定方法。
【請求項8】
画像形成装置による画像形成動作により像担持体上に形成された画像が転写される転写紙の特性を測定する転写紙特性測定装置であって、
前記転写紙の表面近傍に設けられ該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、
前記転写紙の表面近傍に設けられ前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段と、
前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測する手段と、
前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測する手段と、
を有することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段と前記検知手段は、それぞれ独立した構成で、前記転写紙の片面に対峙する配置、または、前記加熱手段と前記検知手段が、前記転写紙が通過する個所を介して対峙する配置、であることを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段と前記検知手段は、MEMS(Micro Electronics Mechanical System)機構からなるマイクロヒータとマイクロセンサであることを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって加熱することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触によって検知することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記加熱手段の加熱部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から1mm以下の位置にて加熱することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置において、
前記検知手段の検知部は、前記転写紙の表面に対し、非接触となる距離から2mm以下の位置にて検知することを特徴とする転写紙特性測定装置。
【請求項15】
画像形成動作により像担持体上に形成された画像を転写紙に転写し、定着する画像形成装置において、
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の転写紙特性測定方法、または請求項8乃至14のいずれか一つに記載の転写紙特性測定装置を用い、前記転写紙の紙面近傍の温度及び湿度変化から該転写紙の特性を測定することによって加熱定着装置の加熱温度を制御する手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項15に記載の画像形成装置において、
前記転写紙の表面近傍に、該転写紙を加熱させることが可能な加熱手段と、前記転写紙表面からの水分蒸散量を空気の温度と湿度の変化量から検知する検知手段とを有する転写紙特性測定部を設け、
前記加熱手段の非加熱時に前記転写紙の表面近傍に設けられた前記検知手段によって検知した空気の温度と湿度の変化量から前記転写紙の含水分状態を推測し、
前記含水分状態の推測後、前記転写紙を前記加熱手段で暖めることによって増加した水分蒸散量を前記検知手段によって空気の温度と湿度の変化量として検知することにより、前記転写紙の含水分量と厚みを計測し、
該計測した前記転写紙の含水分量と厚みに応じて前記加熱定着装置の定着条件を制御する手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像形成装置において、
画像形成装置全体の動作を制御する制御手段は、前記転写紙が前記転写紙特性測定部を通過していない時には、前記転写紙特性測定部によって得られる温度測定値並びに湿度測定値に応じて、画像形成装置内の環境制御条件を決定することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−197535(P2010−197535A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40277(P2009−40277)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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