説明

転写装置、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】画像形成装置における画像欠陥のない良質な画像を形成するための、簡便な転写装置3、特に粗面紙や、シワの発生した用紙にも良質な画像を形成するための転写装置3の提供。
【解決手段】感光体1と、該感光体表面を帯電させる帯電装置19と、帯電した前記感光体表面に光ビームを照射して潜像を形成する光照射装置45と、前記感光体表面に形成された潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置21と、前記感光体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置3と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着装置35とを備えた画像形成装置において記録媒体14を感光体1に押圧する押圧部を有する転写装置3であって、前記押圧部は、弾性を有する湾曲した帯状の押圧部材51からなることを特徴とする転写装置3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、所謂レーザプリンタと呼ばれ大型装置から小型装置まで非常に多く使用されている。更に、プリンタだけでなく、複写機、ファクシミリ装置などの複合機能を持つ装置としても使用されている。
【0003】
電子写真方式を用いた画像形成装置の例として、連続紙プリンタとその印刷方法の概要を、図11に示した連続紙プリンタの概略構成図を参照にして説明する。図11においては、図示されていないコントローラからの印刷動作開始信号に基づいて、感光体1が回転を始める。感光体1は、印刷速度に相当する速度で回転し、印刷動作が終了するまで回転を続ける。感光体1が回転を開始すると、帯電器19に高電圧が印加され、感光体1表面に例えば正の電荷が均一に帯電される。
【0004】
一方、光照射装置45に備えられた回転多面鏡42は、連続紙プリンタに電源が投入されると直ちに回転を開始し、電源が投入されている間、高精度に定速回転を維持する。半導体レーザや発光ダイオードなどで構成された光源41から出射したレーザ光は、回転多面鏡42で反射し、レンズ系で集光され反射鏡43で反射してレーザビーム44として感光体1上を走査しながら照射する。
【0005】
コントローラから文字データや図形データが光照射装置45に送られると、光照射装置45でレーザビーム44のオン/オフ信号として感光体1の表面に照射される。感光体1の表面では、レーザビーム44が照射された部分と照射されなかった部分とが形成され、照射された部分にいわゆる静電潜像が形成される。この静電潜像が形成された感光体表面が回転して現像装置21を臨む位置に到達すると、静電潜像にトナーが供給され、レーザビーム44の照射により感光体1上に形成された静電潜像に、例えば正電荷を帯電したトナーが、静電作用により吸引されてトナー像を形成する。
【0006】
連続紙の記録媒体であるウェブ14は、ウェブ搬送装置22、23、24によって、感光体1上に形成されたトナー像が転写位置に到達するタイミングと同期させて、感光体1とコロナ転写器3の間に搬送される。
【0007】
感光体1上に形成されたトナー像は、ウェブ14の背面側に配置されたトナー像と逆極性の電荷を付与するコロナ転写器3の作用によって、ウェブ14上に吸引され付着した後、定着装置35に搬送される。定着装置35に搬送されたウェブ14は、プレヒータ25で予熱された後、加熱ローラ26とバックアップローラ27からなる一対の定着ローラによって形成されるニップ部によって加熱加圧されながら挟持搬送され、トナー像がウェブ14に溶融して定着される。
【0008】
連続紙プリンタは、従来は、帳票へのコンピュータ出力印刷に使用されることが多かったが、最近では高速可変情報印刷装置としての機能を活かし、ダイレクトメールや請求書、マニュアル、書籍等の多用途の印刷に使用されるようになってきた。使用される用途の拡大に伴い、使用ウェブも薄紙から厚紙まで、また材質の種類も上質紙から粗面紙まで多種多様となり、印刷装置にもこれらのウェブに対応する厳しい印刷条件が生じている。
【0009】
一方、省資源の観点から、連続紙プリンタを2台用いて連結して、1台目で第1面を印刷し、ウェブ面を反転させてそのまま続けて2台目で第2面を印刷する、所謂タンデム印刷による両面印刷を行うニーズが増加してきている。このようないろいろな用途に対応する印刷装置の場合、画像欠陥のない画質を得るためには転写装置の転写性能が特に重要になる。
【0010】
しかしながら、一般にタンデム印刷の場合、1台目の定着工程でウェブが熱によりダメージを受け、熱収縮による凹凸を生じるため、2台目の転写部において、ウェブと感光体面との密着性が悪くなり、ウェブ表面の凹部領域ではトナー像の転写不良による画像欠陥が生じやすくなるという問題が生じている。
【0011】
図12は、連続紙の両面印刷が可能なタンデム印刷方式の概念図を示すもので、連続したウェブ14の第1面に画像30aを形成する第1の連続紙プリンタP1と、第2面に画像30bを形成する第2の連続紙プリンタP2とを備えている。
【0012】
連続紙プリンタP1,P2は、ミシン目のあるボックス紙やミシン目のないロール紙を高速(0.5〜2m/秒)で搬送して印刷を行う。ウェブ14はカット紙と異なり、ウェブに切れ目はなく連続したウェブを形成している。
【0013】
連続したウェブ14は、感光体1aや現像機21a等の画像形成部を有する第1のプリンタP1で画像30aを印刷した後、ターンバーTによりウェブ14を反転させ、更に感光体1b及び現像機21b等の画像形成部を有する第2のプリンタP2でウェブ14の裏面に画像30bを印刷する。
【0014】
このようにしてウェブ14の両面に画像を印刷する場合、例えば第1画像30aをウェブ14に定着させる定着装置がある、図12のB部で停止したウェブ部分の裏面に、2台目のプリンタで画像を形成する場合、画像欠陥を生じる恐れがある。
【0015】
図13は、B部を拡大した定着装置付近のウェブ停止状態を示す概略図である。定着部は図のようにウェブ14を接触させて予熱するプレヒータ25と、ヒータを内装した加熱ローラ26及び加熱ローラ26とともにウェブ14を加圧するバックアップローラ27により構成されている。
【0016】
定着部では、連続印刷中は連続的に搬送されてくるウェブ14を加熱しているが、定着走査が終わればウェブ14は搬送されて定着部から排出される。印刷を停止すると加熱も停止するが、印刷停止直後にプレヒータ25や加熱ローラ26の温度が下がるわけではない。ウェブ14の搬送も停止するため、印刷停止時にウェブ14のプレヒータ25や加熱ローラ26に接している部分は、過熱され、図中の矢印方向に熱収縮したり、熱ダメージによりウェブに凹凸を生じたりすることがある。このように表面に欠陥を生じたウェブ14は、印刷を再スタートしたときに、1台目のプリンタP1の定着部に停止していた部分が、2台目のプリンタP2で画像形成されるときに画像欠陥を生じやすくなる。
【0017】
図14は、2台目のプリンタP2の転写部におけるトナーの転写状態を示す模式図である。通常は、ウェブ14には凹凸やしわがないので、感光体1b上に形成されたトナー像29は、正極性で感光体1bに静電気的に吸着されており、コロナ転写器3のコロナ放電によりウェブ14が負極性に帯電し、トナー像29が平坦なウェブ14側に転写される。しかしながら、例えば、ウェブ14が図中C部のように熱によって凹状に変形していると、トナー像29が転写されずに感光体1bに残ってしまうことがある。このため、ウェブ14の一部に転写抜けという現象が発生する。
【0018】
転写抜けのような問題を解決するために、従来から、転写アシストブレードを設けて、ウェブを感光体表面に押し付け、凹凸を矯正する方法が知られている。図9は、転写部に、転写アシストブレード8を採用した構成を示す。ウェブ搬送方向から見て、コロナ転写器3の上流側に、プラスチック製の板からなる転写アシストブレード8を設けたものである。なお、図8中の2は転写器ハウジング、7は下部セパレータ、16はペーパガイドを示す。
【0019】
転写アシストブレード8によりウェブ14を感光体1の表面に押し付け、ウェブ14が感光体1に密着した状態でコロナ転写器3に臨む位置に来ると、コロナ転写器3からの電荷付与によりトナー像29はウェブ14に良好に転写され、更に、ウェブ搬送装置により定着装置35に送られる。このように転写アシストブレード8でウェブ14を感光体1の表面に押し付けることにより、ウェブ14表面の凹凸と感光体1間の空隙を低減することが可能となり、トナー像の良好な転写が行われる。
【0020】
一方、前述のように連続紙プリンタは多用途に対応するため多種類のウェブに対応することも求められており、使用されるウェブの幅も用途によって使い分けられる。例えば、長尺(21〜22インチ)の感光体を備えた大型の印刷装置においては、印刷するウェブの幅は12インチ、16インチ、22インチと多岐にわたる。帳票では12から16インチ、マニュアル、書籍等の印刷では、A4サイズの2面取り可能な17ンチ幅、B5サイズの3面取りの22インチのウェブが使用される。この際、幅が狭いウェブを印刷する際には、少なくともウェブ幅の長さ以下の転写アシストブレード8を用いないと、転写アシストブレード8が、直接感光体1に接触し感光体1を傷付けてしまう。また、感光体1に付着しているトナーを転写アシストブレード8が掻き落としたり、転写アシストブレード8に付着させたりして、これをウェブ14に付着させ、印刷品質の劣化を来してしてしまうことがある。
【0021】
このような問題を解決するため、図10に示すような転写アシストローラを用いる方法が提案されている。この方法では、ゴム等で被覆されたローラからなる転写アシストローラ17を、ウェブ搬送方向から見て、コロナ転写器3の上流側に設け、この転写アシストローラ17に高圧電源18を接続しておく。そして、転写アシストローラ17をスプリング31により感光体ドラム1側に押し付け、転写アシストローラ17がウェブ14の走行に従動回転する構造としている。
【0022】
ウェブ14は、転写アシストローラ17によって感光体1に密着した状態でコロナ転写器3を臨む位置に移動し、コロナ転写器3からの電荷付与によりトナー像が転写され、ウェブ搬送装置により定着装置(図示せず)に送られる。
【0023】
このような構造にすると、転写アシストローラ17はウェブ14に対し、従動回転しているため、転写アシストブレードを用いた場合に比較してウェブ14の汚れは少なくなる。また、転写アシストローラ17は、ゴム等で被覆されているため、感光体1に対しても、傷をつけることはない。このため、転写アシストローラ17より狭い幅を有するウェブに対しても使用することができる。さらに、この転写アシストローラ17には、芯金を介して高圧電源18からトナーと逆極性の電荷を印加しているため、転写アシストローラ17の一部が感光体1と直接接触しても、感光体1上に付着しているトナーが転写アシストローラ17に付着することがないとされている。
【0024】
転写アシストブレードを利用する方法として、特許文献1では、複数の転写アシストブレードを設け、ウェブ幅に応じて転写アシストブレードを組み合わせて、常にウェブ幅より狭い転写アシストブレードの組み合わせを使用する方法を提案している。
【特許文献1】特開平9−171308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上述のような帯電した転写アシストローラ17を用いるウェブの押圧方法は、原理的には感光体の損傷やウェブへのトナー汚染を防止できるが、装置構成が複雑となり、経済的ではないだけでなく、故障の原因にもなりやすい。
【0026】
また、特許文献1に提案されている方法においても、所定のウェブ幅に対応できる反面、やはり、装置構成が複雑となり、転写アシスト機構が大型且つ高価になるという問題を生じやすい。
【0027】
本発明は上記のような従来の問題に鑑みなされたもので、画像形成装置における画像欠陥のない良質な画像を形成するための、信頼性の高い転写装置を提供することを目的としている。特に粗面紙や、シワの発生した用紙にも良質な画像を形成するための転写装置を提供することを目的としている。また、前記の転写装置を備えた画像形成装置や前記の転写装置を利用した画像形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の手段により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
本発明は、感光体と、該感光体表面を帯電させる帯電装置と、帯電した前記感光体表面に光ビームを照射して潜像を形成する光照射装置と、前記感光体表面に形成された潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置と、前記感光体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において前記記録媒体を感光体に押圧する押圧部を有する転写装置であって、
前記押圧部は、弾性を有する湾曲した帯状の押圧部材からなることを特徴とする転写装置を含む。
【0030】
本発明は、前記押圧部材は、無端ベルト又は長尺シートからなることを特徴とする前記転写装置を含む。
【0031】
本発明は、前記押圧部は、押圧部材の長さ方向に移動可能であることを特徴とする前記転写装置を含む。
【0032】
本発明は、前記押圧部材は、長さ方向における幅が可変であることを特徴とする前記転写装置を含む。
【0033】
本発明は、前記押圧部材は、長さ方向における位置を示すマークを備えといることを特徴とする前記転写装置を含む。
【0034】
本発明は、前記転写装置は、押圧部材の押圧部を記録媒体と離着させ、又は押圧部材の記録媒体に対する押圧力を変化させる押圧部移動手段を備えたことを特徴とする前記転写装置を含む。
【0035】
本発明は、前記転写装置を備えた画像形成装置を含む。
【0036】
本発明は、感光体表面を帯電装置により帯電させる帯電工程と、帯電した前記感光体表面に光照射装置からの光ビームを照射して潜像を形成する潜像形成工程と、前記感光体表面に形成された潜像に現像装置によりトナーを付着させてトナー像を形成するトナー像形成工程と、前記感光体表面に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着装置により定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、
転写工程は、弾性を有する湾曲した帯状の押圧部材により記録媒体を感光体に押圧する押圧工程を含み、押圧工程において記録媒体の幅よりも短い幅の押圧部材により記録媒体を押圧することを特徴とする画像形成方法を含む。
【発明の効果】
【0037】
本発明の転写装置は、簡単な構造で、画像形成装置における画像欠陥のない良質な画像を形成することができる。特に粗面紙や、シワの発生した用紙にも良質な画像を形成することができる。また、本発明の画像形成装置及び本発明の画像形成方法においても、同様の効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の転写装置は、印刷装置などの電子写真方式の画像形成装置に使用される。通常、画像形成装置は、図11に示すように、感光体1と、該感光体表面を帯電させる帯電装置19と、帯電した前記感光体表面に光ビームを照射して潜像を形成する光照射装置45と、前記感光体表面に形成された潜像にトナー付着させてトナー像を形成する現像装置21と、前記感光体表面に形成されたトナー像を記録媒体14に転写する転写装置3と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着装置35とを備えている。
【0039】
本発明の転写装置3は、感光体1から記録媒体14へのトナー像の転写時に記録媒体14を感光体1に押圧する押圧部を有する。そして、押圧部は、弾性を有する湾曲した帯状の押圧部材からなっている。押圧部材は、例えば図1に示す転写アシストシート51のように、シート状の弾性を有する無端ベルトであり、その転写アシストシート51の一部が、転写アシストシートハウジング61、及び転写アシストシートハウジング61を兼ねる転写装置の下部セパレータ7から、湾曲して突き出している。通常は、転写アシストシート51の突き出し部分はアイドラローラ52と転写アシストシートハウジング61及び下部セパレータ7とにより固定されている。弾性を有する無端ベルトである転写アシストシート51は、突き出し部分の湾曲した形状を保ったまま、転写アシストシートハウジング61内側とアイドラローラ52,53,54に沿って回転してもよい。そして、感光体から記録媒体へのトナー像の転写動作中には、転写アシストシート51の突き出し部分がその弾性力によって記録媒体を感光体表面に押圧する位置に配置されている。すなわち、転写アシストシート51の突き出し部分の先端部付近が、記録媒体の押圧部として機能する。
【0040】
押圧部材は、転写アシストシートハウジング61から湾曲して突きだしているので、ある程度の剛性を備えている。そして、この押圧部材は弾性、厳密には曲げ弾性を有する材料からなる。このため、この押圧部材の湾曲した突き出し部は、記録媒体を押圧する際に、押圧前の形状を維持しようとして記録媒体を押圧することになる。なお、この押圧部材は、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系など各種の樹脂やある程度剛性のあるゴム、金属などのベルト、或いは、繊維と樹脂やゴムとの複合材料のベルトを用いればよい。なお、押圧部材の記録媒体と接触する面は、記録媒体を摩耗したり損傷したりさせないため、滑らかで摩擦を少なくすることが好ましい。
【0041】
図1においては、押圧部材として無端ベルトを示したが、本発明における押圧部材としては、転写アシストシートハウジング61から湾曲して突きだしている部分さえあればよい。この押圧部材を備えた転写装置は、非常に構造が単純で簡便である。また、図8に示すような長尺のシートも押圧部材として好ましい材料である。
【0042】
図1に示すような湾曲して突き出している部分の湾曲角度は、180度程度が好ましい。図1に示すような無端ベルトであれば、通常は、湾曲角度は180度程度になる。湾曲角度が180度程度のときには、転写アシストシート51は押圧部において断面が円弧状になり、安定したむらのない押圧力を発揮する。通常、弾性のある転写アシストシート51を転写アシストシートハウジング61から湾曲して突きださせれば、湾曲角度は180度程度になる。しかし、転写アシストシートハウジング61の先端の転写アシストシート51の突き出し部の幅に対して、突き出している転写アシストシート51が短すぎると湾曲角度は小さくなり、長すぎると湾曲角度は大きくなり過ぎることがある。転写アシストシート51の突き出し部の湾曲角度は、120〜240度程度、好ましくは150〜210度程度であれば押圧部の押圧力の安定性に問題はない。
【0043】
転写アシストシート51は、突き出し部分の形状を保ったまま、転写アシストシートハウジング61内側とアイドラローラ52,53,54に沿って回転することができる。無端ベルトや長尺シート製の押圧部材は、その突き出し部分を長さ方向に移動することにより、記録媒体を押圧している押圧部材の位置を変化させることができる。これにより、状況に応じて押圧部材における押圧部の位置を長さ方向に移動させて適宜変更できるので、押圧部材の寿命維持や記録媒体の種類変更に対する対応力の点で優れている。
【0044】
また、押圧部材は、長さ方向の位置によって幅を変化させておくことが好ましい。記録する記録媒体の幅に対応して、押圧部材の幅を変更できるようにしておくためである。押圧部材の幅は、すでに説明したように、記録媒体の幅と同じか、およそ1〜5cm程度短くしておくことが好ましい。ひとつの画像形成装置で数種類の幅の記録媒体を使用する場合、押圧部材の幅を可変にしておけば、常に記録媒体に適した幅の押圧部材として使用できる。そこで、押圧部材を長さ方向の位置によって幅を変化させておき、押圧部を長さ方向に移動可能としておけば、常に記録媒体に適した幅の押圧部材として使用できる。
【0045】
さらに、押圧部材の長さ方向における位置を示すマークを付けておけば、その位置に対応した押圧部の幅が判るので、記録媒体の幅に適した押圧部を容易に探知して使用することができる。
【0046】
なお、これまでの説明で、押圧部材の幅方向とは、押圧部付近の記録媒体の幅方向と同じ方向をいい、押圧部材の長さ方向とは、押圧部材の表面における幅方向に垂直な方向をいう。
【0047】
この転写装置は、押圧部材の押圧部を記録媒体と離着させ、又は押圧部材の記録媒体に対する押圧力を変化させる押圧部移動手段を備えることが好ましい。通常、印刷装置では、印刷中は記録媒体を感光ドラムに押圧しているが、印刷停止中は記録媒体と感光ドラムとは離間させておくことが好ましい。本発明の転写装置においても、印刷停止中は、記録媒体を感光ドラムから離間させておくことが好ましい。そこで、本発明の転写装置には、押圧部移動手段を設けて、印刷停止中は記録媒体と感光ドラムとが離間できるように、押圧部材の押圧部が感光ドラムを臨む位置から後退させる押圧部移動手段を設けることが好ましい。この押圧部移動手段は、例えば図1に示す転写器ハウジング2に対して転写アシストシートハウジング61が後退、前進できるような装置であればよい。また、この押圧部移動手段は、転写装置の移動手段と一体化していてもよい。
【0048】
さらに、押圧部移動手段のもう一つの機能は、押圧部材が記録媒体を感光ドラムに押圧している印刷中において、押圧力を変化させることである。記録媒体の種類、幅、記録媒体表面のしわや凹凸の程度などに対応して、記録媒体を感光ドラムに押圧する押圧力を変化させることにより、良質な印刷と、押圧部材、感光ドラム等の機器への負荷を減らし、長寿命化が図れる。さらに、記録媒体の損傷のリスクも低減できる。すなわち、幅の広い記録媒体には比較的大きな押圧力で押圧し、単位面積あたりの押圧力を一定とする。また、厚手の記録媒体に対しては、押圧部をその厚さ分だけ後退させて押圧力を調整する。両面印刷における裏面印刷工程においては、記録媒体にしわや凹凸が生じている恐れがあるので、押圧部移動手段を調整して強めの押圧力で記録媒体を押圧することが好ましい。しかし、常に必要以上の押圧力で記録媒体を押圧していると、破損しやすい記録媒体においては破断する恐れがあるので押圧力を下げることが好ましい。また、押圧部材や感光ドラムの疲労もその分大きくなり、機器寿命への影響が考えられる。印刷中の押圧力を変化させる押圧部移動手段の構造としては、転写装置全体と一体として押圧部を移動させるのではなく、上述のように押圧部材をそのハウジングと共にのみ移動できる構造とすればよい。あるいは、押圧部のみを移動させることもできる。例えば、押圧部材のハウジングから突き出した押圧部材の突き出し量を多くして、大きな湾曲部を作れば、押圧部は感光ドラム側へ移動しようとする応力が働き、押圧力が増加する。
【0049】
画像形成装置、特に両面印刷や連続紙に対する印刷装置においては、上述の本発明の転写装置を備え得ることにより、記録媒体の種類、幅、記録媒体表面のしわや凹凸に対応でき、良質な画像形成が可能である。さらに、この本発明の画像形成装置は、上述の画像形成方法従って使用すれば、寿命が長く、印刷中の記録媒体の破損などのトラブルも少なく好適な印刷が可能である。
【0050】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施形態により説明する。
[実施形態1]
本発明の第一の実施形態である画像形成装置における転写装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の転写装置を含む画像形成装置の転写部40の構成を示す。1は感光体ドラムで、例えばセレン感光体やプラスOPC、a−Si等のプラス帯電感光体を用いている。感光体1の現像方式は反転現像方式であり、トナーの帯電極性はプラス極性である。
【0051】
転写部40は転写器ハウジング2と、その内部に格納された転写アシストシート51及び負帯電のコロナ転写器3を備えている。転写アシストシート51はプラスチック或いは金属製のシートで製作されている。例えば、転写アシストシート51をカプトン等のマイラーシート(商品名、デュポン社製)を用いて形成し、厚みを0.1〜1.0mm程度とすればよい。
【0052】
転写アシストシート51の形状は無端ベルトとなっており、転写装置付近の記録媒体の幅方向と平行に配置したアイドラシャフト52、53、54に架けられている。転写アシストシート51は、アイドラシャフト54とドライブシャフト55に挟持され、ドライブシャフト55により回転させることができる。転写アシストシート51の周長は、アイドラシャフト52、53、54を結ぶ周長よりも長く設定されている。また、下部セパレータ7には、転写アシストシートハウジング61が設けられ、アイドラシャフト52、53、54に巻かれた転写アシストシート51を覆っている。転写アシストシート51は、転写アシストシートハウジングを兼ねる下部セパレータ7と転写アシストシートハウジング61に案内されるため、転写アシストシート51のアイドラシャフト52の先の部分は、感光体1側に湾曲しながら突き出している構成となっており、この突き出し部がウェブ14を感光体1に押し付けている。
【0053】
この転写アシストシート51は、コロナ転写器3に近接した位置にあって、コロナ転写器3からのコロナ放電に影響を与えず、且つウェブ14をガイドする上部セパレータ6と下部セパレータ7の間に配置されている。そして、転写アシストシート51がウェブ14を押圧する押圧部は、ウェブ14と感光体ドラム1が接触する、いわゆるニップ領域内にある。
【0054】
図1における5は転写装置の駆動用の駆動モータで、その回転動力がリンク4を介して連結された転写器ハウジング2を感光体1から離間させることができる。すなわち駆動モータ5が回転すると、転写ハウジング2は図1の回転中心68を中心に回動する。転写ハウジング2が回動すると、転写器ハウジング2に取り付けられた上部セパレータ6と下部セパレータ7により案内されて、ウェブ14が感光体ドラム1に対して接触する状態(図1)から感光体ドラム1の面から離間した状態(図2に示した状態)まで移動する。
【0055】
図3〜5は、図1中のAの方向から、転写アシストシート51のウェブ14に対する押圧状態を見た模式図である。この場合、転写アシストシート51は、周方向の位置によってその幅が異なっている。転写アシストシート51は、画像形成装置で印刷する最大幅の記録媒体より1〜5cm狭い幅から、最小幅の記録媒体より1〜5cm狭い幅まで変化している。図3はウェブ14の幅が最大である印刷状態の場合を示す。アイドラローラ52の先端から突き出した転写アシストシート51の押圧部が、ウェブ14を感光体1に押しつけている。ウェブ14の幅は、転写アシストシート51の幅より少し大きくなっており、転写アシストシート51が直接感光体1に接触しないようになっている。図4は、ウェブ14の幅が最少である場合の転写アシストシート51の配置を示す。図3に示した状態から、ドライブローラ55により無端ベルトである転写アシストシート51を半周させて、最も狭い幅の部分を押圧部としてウェブ14を押しつけている。この場合も押圧部の転写アシストシート51の幅は、ウェブ14の幅より少し狭いことが好ましい。同様に、図5は、ウェブ14の幅が、最大と最少のほぼ中間である場合を示す。
【0056】
図3、図4、図5に示す押圧部おいて、ドライブモータ56を駆動してドライブシャフト55を回転させることにより、転写アシストシート51が回転し、感光体1と接触する部分の転写アシストシート51の幅が変化する。転写アシストシート51の幅は、ドライブシャフト55の回転数または、ドライブモータの回転数をカウントすることで制御することができる。また、図5、図6に示すように転写アシストシート51の端部に位置検出マーク58を設け、マーク検出センサ57によって検出することにより、転写アシストシート51における押圧部の幅の設定精度を向上させることができる。
【0057】
また、図7に示すように転写アシストシート51に送り穴59を設け、アイドラシャフト52、53、54にドライブピン60を設けて駆動することで、転写アシストシート51の幅長設定の精度を向上することができる。尚、この場合には、転写アシストシート51の送り穴59が感光体1と接触しない位置に制御することが好ましい。また、転写アシストシート51は、ウェブ14との接触により磨耗するため、転写アシストシート51が一定期間使用された場合は、転写アシストシート51の押圧部の位置を少し移動させることにより、転写アシストシート51の寿命を延長することができる。
【0058】
[実施形態2]
転写アシストシート51を無端ベルトではなく、両端をロールに巻きつけた状態の長尺シートとした転写装置の例を実施形態2として図8に示す。転写アシストシート51は、シートの長手方向の一方の端部が上ロール62に巻いて固定され、もう一方の端部が下ロール63に巻いて固定されている。転写アシストシート51の幅は、上ロール62側の端部で最小となっており、下ロール63側に行くほど広くなって、下ロール63側の端部で最大となっている。印刷中のウェブ14の幅に対応して、上ロール62と下ロール63を回転させて転写アシストシート51を出し入れして、押圧部の幅がウェブ14の幅よりもやや短くなるよう設定する。なお、転写アシストシート51の幅は、画像形成装置で印刷可能なウェブの最小幅から最大幅に対応して、それより少し(1〜5cm程度)狭い幅の範囲としておくことが好ましい。使用するウェブの幅が決まっているのであれば、それに対応した転写アシストシート51の幅のみとしておいてもよい。
【0059】
下ロール63から出た転写アシストシート51は、転写アシストシートガイドの一部である転写装置の下部セパレータ7を兼ねる転写アシストシート下側ガイド64と転写アシストシート中間ガイド66とによって案内され、その先端から湾曲しながら突きだして押圧部を形成している。さらに、転写アシストシート51は、押圧部から湾曲しながら転写アシストシート上側ガイド65と転写アシストシート中間ガイド66とによって案内され上ロール62に接続して巻き取られている。言い換えれば、転写アシストシート51は、転写アシストシート下側ガイド64、転写アシストシート中間ガイド66及び転写アシストシート上側ガイド65からなる転写アシストシートガイドの先端部から突きだした湾曲した押圧部を備えている。転写アシストシート51の材質は、上述の実施形態1と同じである。
【0060】
この実施形態においても、転写アシストシート51がその弾性力によりウェブ14を感光体1に押しつけている。印刷するウェブ14の幅に対応して転写アシストシート51の幅を変更するときは、上ロール62と下ロール63を適宜巻いたり戻したりして、押圧部の転写アシストシート51の幅が所望の幅となるように調整する。
【0061】
また、上ロール62と下ロール63を適宜巻いたり戻したりして、転写アシストシート51の転写アシストシートガイド64,65,66の先端から突きだしている部分の長さを変化させることにより、ウェブ14に対する押圧部の押圧力を変更することができる。例えば、転写アシストシート51の突きだしている部分の長さを長くすれば、ウェブ14に対する押圧部の押圧力は大きくなる。転写アシストシート51の突きだしている部分の長さを短くすれば、ウェブ14に対する押圧部の押圧力は小さくなる。突きだしている部分の長さを、更に短くすれば、転写アシストシート51がウェブ14から離間した状態にすることもできる。実施形態2の場合も、転写アシストシート51における押圧部を長期間使用したら、押圧部の位置を少しずらすことにより、転写アシストシート51の寿命を延ばすことができる。そして、押圧が不必要なときには、簡単に押圧しない状態にすることもできるのでさらに寿命に好影響を与える。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る画像形成装置における転写部の説明図(印刷中)
【図2】本発明に係る画像形成装置における転写部の説明図(待機状態)
【図3】アシストシートの押圧状態の模式図(最大幅)
【図4】アシストシートの押圧状態の模式図(最小幅)
【図5】アシストシートの押圧状態の模式図(中間幅)
【図6】アシストシートの位置検出マークを示す模式図(図5のB部の拡大図)
【図7】送り穴を設けたアシストシートを備えた転写部の説明図
【図8】長尺シート製のアシストシートを備えた転写部の説明
【図9】従来の転写部の構成を示す概略図(アシストブレードタイプ)
【図10】従来の転写部の構成を示す概略図(アシストローラタイプ)
【図11】画像形成装置の概略構成図
【図12】タンデム印刷の説明図
【図13】ウェブの定着装置上での滞留状態を示す説明図(しわ発生) (図12のB部の詳細図)
【図14】ウェブの転写不良状態を示す説明図(転写抜け)
【符号の説明】
【0063】
1,1a,1b:感光体 2:転写器ハウジング
3:コロナ転写器 4:リンク
5:駆動モータ 6:上部セパレータ
7:下部セパレータ 8:転写アシストブレード
14:ウェブ 18:高圧電源
19:帯電器 20:露光装置
21,21a,21b:現像機 22,23,24:ウェブ搬送装置
25:プレヒータ 26:加熱ローラ
27:バックアップローラ 29:トナー像
30a:第1面印刷画像 30b:第2面印刷画像
31:スプリング 35:定着装置
40:転写部 41:光源
42:回転多面鏡 43:反射鏡
44:レンズ系 45:光照射装置
51:転写アシストシート 52,53,54:アイドラローラ
55:ドライブローラ 56:ドライブモータ
57:マーク検出センサ 58:位置検出マーク
59:送り穴 60:ドライブピン
61:転写アシストシートハウジング 62:上ロール
63:下ロール 64:転写アシストシート下側ガイド
65:転写アシストシート上側ガイド 66:転写アシストシート中間ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、該感光体表面を帯電させる帯電装置と、帯電した前記感光体表面に光ビームを照射して潜像を形成する光照射装置と、前記感光体表面に形成された潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置と、前記感光体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において前記記録媒体を感光体に押圧する押圧部を有する転写装置であって、
前記押圧部は、弾性を有する湾曲した帯状の押圧部材からなることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、無端ベルト又は長尺シートからなることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記押圧部は、押圧部材の長さ方向に移動可能であることを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、長さ方向における幅が可変であることを特徴とする請求項3に記載の転写装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、長さ方向における位置を示すマークを備えといることを特徴とする請求項2乃至3のいずれか一項に記載の転写装置。
【請求項6】
前記転写装置は、押圧部材の押圧部を記録媒体と離着させ、又は押圧部材の記録媒体に対する押圧力を変化させる押圧部移動手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の転写装置を備えた画像形成装置。
【請求項8】
感光体表面を帯電装置により帯電させる帯電工程と、帯電した前記感光体表面に光照射装置からの光ビームを照射して潜像を形成する潜像形成工程と、前記感光体表面に形成された潜像に現像装置によりトナーを付着させてトナー像を形成するトナー像形成工程と、前記感光体表面に形成されたトナー像を転写装置により記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着装置により定着させる定着工程とを有する画像形成方法において、
転写工程は、弾性を有する湾曲した帯状の押圧部材により記録媒体を感光体に押圧する押圧工程を含み、押圧工程において記録媒体の幅よりも短い幅の押圧部材により記録媒体を押圧することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−158201(P2008−158201A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346085(P2006−346085)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】