説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】ギャップ放電起因するムラの無いトナー像を記録媒体へ転写させる。
【解決手段】二次転写装置20は、中間転写ベルト14と、記録用紙PにトナーTを転写させる転写ロール64及び転写搬送ベルト62と、転写ロール64と対向配置された対向ロール72と、対向ロール72に巻き掛けられた対向ベルト68と、巻き掛けられた対向ベルト68を接触部71から上流側の中間転写ベルト14の内側に接触させる補助ロール74とを有している。ここで、トナーTが転写された中間転写ベルト14が接触部71に移動するとき、中間転写ベルト14には対向ベルト68が密着した状態で移動する。これにより、対向ロール72と対向ベルト68の間でギャップ放電が発生しても、中間転写ベルト14の帯電状態が保持されて、ギャップ放電起因するムラの無いトナー像を記録媒体へ転写させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタや複写機等の画像形成装置において、各色のトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写して重ね合わせ、重ね合ったトナー像を中間転写ベルトから記録媒体上に二次転写する転写装置が用いられている。
【0003】
しかしながら、電気抵抗が高い中間転写ベルトを用いて画像形成を行った場合に、用紙に転写された画像中に魚のうろこ状の画質欠陥(以下、うろこ状ディフェクトという)が生じてしまうという技術的課題がみられた。この画質欠陥について本発明者が検討を行ったところ、うろこ状ディフェクトは、用紙が中間転写ベルトと二次転写ロールとのニップ域(転写ニップ域)に突入する直前のプレニップ域において、中間転写ベルトとバックアップロールとの間に生じるギャップ放電に伴って発生していることが判明した。
【0004】
このギャップ放電はプラス放電であり、プラス放電は丸いうろこ状の電荷パターンが形成されることが知られている。中間転写ベルト裏面に形成されたうろこ電荷パターンは、中間転写ベルトの電気抵抗が高いほど保持されやすい。そして中間転写ベルトから用紙へトナーが移動するときに、ベルト裏面のうろこ状電荷パターンが作用し、用紙上にうろこ模様が形成される。
【0005】
特に、トナーとして転写効率の高い所謂球形トナーを用いた場合には、トナーの付着力が低くなる分、微弱な放電によってもトナーが中間転写ベルトから離脱しやすくなってしまうため、このようなうろこ状ディフェクトが生じやすい。
【0006】
中間転写ベルトを用いた画像形成装置として、中間転写ベルトの外周面に接触する二次転写ロールと、二次転写ロールと対向する位置で中間転写ベルトの内周面に接触するバックアップロールを設け、さらに、二次転写ロールとバックアップロールで形成されるニップ領域の手前側(中間転写ベルトの移動方向の上流側)に中間転写ベルトと対向部材とに接触配置される除電部材を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−333521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の画像形成装置では、除電部材でニップ領域手前側の空隙を塞ぐことで、ギャップ放電を防ぐねらいである。しかしながら実際のプリント動作中には、装置の振動、中間転写ベルト面の振れ、電界、除電部材に作用する摩擦力などにより、空隙を安定して塞ぐことができずに、除電部材が中間転写ベルト側または対向部材側に偏ってしまう。その結果、ニップ領域の手前側において、バックアップロールと中間転写ベルト、又は除電部材と中間転写ベルトとの間にギャップが生じるため、バックアップロールと二次転写ロールの間にバイアス電圧を印加したとき、ギャップ放電することがあった。そして中間転写ベルト裏面もしくは、中間転写ベルト裏面に接触した除電部材に、うろこ状電荷パターンが形成され、用紙への転写時にうろこ模様の画質ディフェクトとなってしまう。
【0008】
本発明は、ギャップ放電起因するムラの無いトナー像を記録媒体へ転写させる転写装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る転写装置は、外周面に転写されたトナー像を保持して搬送する転写ベルトと、前記外周面に接触し、接触部へ搬送された記録媒体に前記トナー像を転写させる転写部材と、前記転写ベルトの内側で前記転写部材と対向配置された対向ロールと、前記対向ロールに巻き掛けられた対向ベルトと、前記対向ロールより前記転写ベルトの搬送方向上流側に設けられ、巻き掛けられた前記対向ベルトを前記接触部から上流側の前記転写ベルトの内側に接触させる張架部材と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に係る転写装置は、前記張架部材を前記対向ベルトに向けて付勢するばね材を設けたことを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項3に係る転写装置は、前記張架部材が、前記対向ベルトと従動して回転する第1張架ロールであることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項4に係る転写装置は、前記転写部材は、前記対向ロールと対向配置された転写ロールと、前記転写ロールより記録媒体搬送方向の下流側に設けられた第2張架ロールと、前記転写ロールと前記第2張架ロールに巻き掛けられ前記接触部で前記転写ベルトと接触する搬送ベルトと、を有することを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項5に係る転写装置は、前記転写ベルトの表面抵抗率が12Log(Ω/□)以上であり、且つ前記対向ベルトの表面抵抗率が前記転写ベルトの表面抵抗率よりも低いことを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項6に係る転写装置は、前記対向ベルトが弾性体であることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の転写装置と、前記転写装置に記録媒体を搬送する搬送手段と、前記転写部材への電圧印加を制御して、前記転写ベルトから記録媒体にトナー像を転写させる制御手段と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、本構成を有していない場合に比較して、ギャップ放電によるムラの無いトナー像を記録媒体へ転写させることができる。
【0017】
請求項2の発明は、本構成を有していない場合に比較して、対向ベルトと転写ベルトとの押圧力を一定にすることができる。
【0018】
請求項3の発明は、本構成を有していない場合に比較して、構成部品を増やすことなく対向ベルトを確実に転写ベルトに押し当てることができる。
【0019】
請求項4の発明は、本構成を有していない場合に比較して、安定して記録媒体を転写および搬送することができる。
【0020】
請求項5の発明は、本構成を有していない場合に比較して、転写ベルトの抵抗を高くすることで表面側に電荷が保持されるのでトナー飛び散りが抑えられるとともに、対向ベルトの抵抗を低くすることで、ベルト裏面側のギャップ放電の影響を抑えてうろこ状のムラの無いトナー像をつくることができる。
【0021】
請求項6の発明は、本構成を有していない場合に比較して、対向ベルトと転写ベルトの密着度が上がる。
【0022】
請求項7の発明は、本構成を有していない場合に比較して、うろこ等の画像むらの発生を抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の転写装置及び画像形成装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。
【0024】
プリンタ10は、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット12(12Y、12M、12C、12K)と、各画像形成ユニット12にて形成された各色成分トナー像を順次転写(一次転写)して保持する中間転写ベルト14と、中間転写ベルト14上に転写されて重ねられたトナー像を記録媒体としての記録用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写装置20と、記録用紙P上に二次転写されたトナー像を定着させる定着部16とを備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御装置18を有している。
【0025】
各画像形成ユニット12(12Y、12M、12C、12K)は、矢印A方向に回転する感光体ドラム22の周囲に、感光体ドラム22を帯電させる帯電器24と、感光体ドラム22上に露光ビームBmによって静電潜像を形成するレーザ露光器26と、各色成分トナーが収容され感光体ドラム22上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置28と、感光体ドラム22上に形成された各色成分のトナー像を中間転写ベルト14に転写する一次転写ロール30と、感光体ドラム22上の残留トナーを除去するクリーニングユニット32とが順次配設されている。これらの画像形成ユニット12は、中間転写ベルト14の移動方向上流側から、イエロー(Y色)、マゼンタ(M色)、シアン(C色)、黒(K色)の順に、略直線状に配置されている。
【0026】
各色のトナーは、負極性に帯電するものであり、懸濁重合法、乳化凝集合一法、溶解懸濁法等により、ポリエステルやスチレンアクリルなどのバインダ樹脂に着色剤、ワックスを内添して形成された微粒子である。粒径は、コールターカウンター(コールター社製)による測定結果で体積平均粒径が約5.8μmであり、粒度分布指標(GSD)は1.23である。
【0027】
中間転写ベルト14は、樹脂材料から構成されるものであっても、ゴム材料から構成されるものであってもよい。また樹脂材料とゴム材料とからなる複数層構成でもよい。中間転写ベルト14には、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を付与する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加することが好適である。
【0028】
電子伝導性を付与する導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化錫−酸化インジウム又は酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物などを挙げることができる。
【0029】
イオン伝導性を付与する導電剤としては、スルホン酸塩やアンモニア塩など、また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などの各種の界面活性剤や、さらには導電性ポリマーをブレンドする方法がある。
【0030】
中間転写ベルト14は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の導電剤を適当量含有させたものが用いられ、トナーを保持しやすいように表面抵抗率が12Log(Ω/□)以上、厚さが80μmのフィルム状の無端ベルトで構成されている。
【0031】
中間転写ベルト14の抵抗測定方法を下記に示す。
【0032】
測定器に(株)アドバンテスト社製微少電流計R8340A、プローブに三菱油化(株)社製HRプローブ(主電極外径d=Φ1.6cm、ガード電極内径D=3.0cm)、測定テーブルに三菱油化(株)社製(表面抵抗率測定時:絶縁面、体積抵抗率測定時:導電面)を用い、印加電圧100V、荷重2kg、測定時間30秒での抵抗値RΩを測定し、表面抵抗率Rs(Ω/□)は、Rs=2×π×R /ln(D/d)、体積抵抗率Rv(Ω・cm)は、Rv=π×(d^2)×R /tで算出した。ここで、tは試料(中間転写ベルト14)の厚さ(cm)である。
【0033】
また、中間転写ベルト14は、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト14を循環駆動させる駆動ロール34と、各感光体ドラム22の配列方向に沿った中間転写ベルト14の直線部を支持する支持ロール36と、中間転写ベルト14に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト14の蛇行を防止するテンションロール38と、中間転写ベルト14上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール40とが設けられている。なお、二次転写装置20の部位のロールの説明は後述する。中間転写ベルト14は、これらの各種ロールによって張架され、矢印B方向に所定の速度で循環駆動(回転)されている。
【0034】
各感光体ドラム22と対向する各一次転写ロール30には、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム22上のトナー像が中間転写ベルト14に順次、静電吸引され、中間転写ベルト14上に重ねられたトナー像が形成されるようになっている。
【0035】
また、中間転写ベルト14の二次転写装置20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト14上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト14の表面をクリーニングするベルトクリーナ42が設けられている。
【0036】
一方、画像形成ユニット12Yの上流側には、各画像形成ユニット12(12Y、12M、12C、12K)における画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)44が配置され、画像形成ユニット12Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ46が配設されている。基準センサ44は、中間転写ベルト14に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生している。この基準信号の認識に基づく制御装置18からの指示により、各画像形成ユニット12が画像形成を開始するようになっている。
【0037】
プリンタ10の下部には、記録用紙Pを収容する用紙トレイ50A、50Bが配設されている。用紙トレイ50A、50Bの一方の端部には、集積された記録用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送する給紙ロール52が設けられており、給紙ロール52にて繰り出された記録用紙Pは、複数の一対の搬送ロール54によって二次転写装置20へ送り込まれるようになっている。二次転写装置20の記録用紙Pの搬送方向下流側には、搬送ベルト56が設けられている。搬送ベルト56は、トナー像が二次転写された記録用紙Pを定着部16に搬送する。
【0038】
次に、プリンタ10の基本的な画像形成プロセスについて説明する。まず、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ(PC)等から出力された画像データが、プリンタ10に入力される。プリンタ10では、図示しない画像処理装置で所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット12等によって作像が行われる。
【0039】
ここで、図示しない画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等、所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器26に出力される。
【0040】
レーザ露光器26では、入力された色材階調データに応じて半導体レーザから出射された露光ビームBmが、画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの各々の感光体ドラム22に照射される。画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの感光体ドラム22では、帯電器24によって表面が帯電された後、レーザ露光器26によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kにて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色トナー像として現像される。
【0041】
画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの感光体ドラム22上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム22と中間転写ベルト14とが当接する一次転写部において、中間転写ベルト14の表面に順次重ね合せられ、一次転写が行われる。一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト14の回転に伴って二次転写装置20に搬送される。
【0042】
一方、用紙搬送系では、画像形成のタイミングに合せて給紙ロール52が回転し、用紙トレイ50A又は用紙トレイ50Bから所定サイズの記録用紙Pが供給される。給紙ロール52により送り出された記録用紙Pは、搬送ロール54により搬送され、二次転写装置20に到達する。記録用紙Pは、二次転写装置20に到達する前に一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト14の移動タイミングに合せてレジストロール(図示せず)が回転することで、記録用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合せが行われる。
【0043】
続いて、二次転写装置20において中間転写ベルト14からトナー像が静電転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト14から剥離されて、搬送ベルト56まで搬送される。搬送ベルト56では、定着部16における最適な搬送速度に合せて、記録用紙Pを定着部16まで搬送する。記録用紙P上の未定着トナー像は、定着部16によって熱および圧力で定着処理を受けることにより記録用紙P上に定着され、定着画像が形成された記録用紙Pは、排出ロール(図示せず)によってプリンタ10の外部に排出される。
【0044】
記録用紙Pへのトナー像の転写が終了した後、中間転写ベルト14上に残った残留トナーは、中間転写ベルト14の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール40およびベルトクリーナ42によって中間転写ベルト14上から除去される。
【0045】
次に、二次転写装置20について説明する。
【0046】
図2(a)に示すように、二次転写装置20は、中間転写ベルト14のトナー像保持面側に接触して配置される転写搬送ベルト62と、中間転写ベルト14の内面側に接触して配置される対向ベルト68とを有している。
【0047】
転写搬送ベルト62は、体積抵抗率が10〜1010Ωcmの半導電性の無端状ベルトであり、二次転写電界を形成する一方の電極として回転可能に設けられた転写ロール64と、中間転写ベルト14の搬送方向下流側で転写ロール64と並列配置され回転可能に設けられた従動ロール66とに巻き掛けられている。
【0048】
転写ロール64は、表面にカーボンを分散したウレタンゴムのチューブ、内部はカーボンを分散した発泡ウレタンゴムからなり、表面にはフッ素コートが施されている。また、転写ロール64は、体積抵抗が10^5〜10^7Ω、ロール径が28mm、硬度が20度〜50度(アスカーC)で形成されており、ここでは硬度35度に設定されている。なお、転写ロール64は、SUS等の金属からなる回転軸70を備えており、回転軸70の端部には、図示しないギア及びモータからなる駆動機構が取付けられている。
【0049】
転写ロール64の駆動機構は、制御装置18(図1参照)によって駆動制御され、転写ロール64を回転して転写搬送ベルト62を移動させる。また、従動ロール66の回転軸(図示せず)と転写ロール66の回転軸70は、転写搬送ベルト62を張架して張るための一定距離をとって固定されている。さらに、回転軸70は、配線が接続されて接地されている。
【0050】
対向ベルト68は、中間転写ベルト14よりも表面抵抗率が小さく、例えば表面抵抗率が10.5Log(Ω/□)の無端状ベルトであり、クロロプレンゴムからなる弾性体で構成されている。
【0051】
対向ベルト68は、樹脂材料から構成されるものであっても、ゴム材料から構成されるものであってもよい。また樹脂材料とゴム材料とからなる複数層構成でもよい。
【0052】
樹脂材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも、強度と屈曲疲労性の両面に優れている点で、ポリイミド樹脂が好適に用いられる。
【0053】
ゴム材としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、SBR、NBR、EPDM、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、これらのブレンドゴム等が挙げられる。中でも、イソプレンゴム、シリコーンゴム、EPDMが好ましく用いられる。
【0054】
これにより、対向ベルト68は、弾性変形して中間転写ベルト14に倣い、中間転写ベルト14との密着度を上げている。
【0055】
また、対向ベルト68は、二次転写電界を形成する他方の電極として回転可能に設けられた対向ロール72と、中間転写ベルト14の搬送方向上流側で対向ロール72と並列配置され、回転可能に設けられた補助ロール74とに巻き掛けられている。さらに、対向ベルト68は、中間転写ベルト14に従動して回動するようになっている。
【0056】
対向ロール72は、表面側がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブで内側がEPDMゴムからなり、表面抵抗率が7〜11Log(Ω/□)、ロール径が28mm、硬度が50度〜70度(アスカーC)で形成されている。ここでは、硬度が60度に設定され、転写ロール64よりも硬くなっている。
【0057】
また、転写ロール64と対向ロール72の間には、転写搬送ベルト62、中間転写ベルト14、及び対向ベルト68が圧接配置されている。ここで、転写搬送ベルト62と中間転写ベルト14が圧接されている部分(領域)を接触部71とする。また、対向ベルト68と対向ロール72で囲まれた領域をくさび領域Cとする。なお、対向ロール72は、接地されていない。
【0058】
補助ロール74には、対向ロール72から離れる方向で、且つ対向ベルト68を中間転写ベルト14に接触させる方向に、図示しないばね等により付勢力が付与されている。これにより、補助ロール74は、巻き掛けられた対向ベルト68を接触部71から上流側の中間転写ベルト14の内側に接触させている。また、補助ロール74は、対向ベルト68の移動により従動するようになっており、対向ベルト68との摩擦による新たな帯電を抑え、対向ベルト68の帯電状態を保持するようにしている。さらに、補助ロール74は、図示しない配線が接続され接地されている。
【0059】
対向ベルト68を挟んで対向ロール72と反対側には、SUS等の金属性ロールからなる給電ロール76が接触配置されている。給電ロール76は、両端部が軸支されて回転可能となっており、対向ベルト68と連れ回りする。また、給電ロール76には、制御装置18(図1参照)によって、図示しないバイアス印加部としての二次転写バイアス電源からトナーと同極性の二次転写バイアス(本実施形態では負極性)が印加される。二次転写バイアスは、−6kVとしている。
【0060】
接触部71の記録用紙Pの搬送方向上流側には、搬送されてきた記録用紙Pを接触部71に案内する搬送ガイド78が設けられている。
【0061】
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
【0062】
図1及び図2(a)、図2(b)に示すように、プリンタ10において前述の帯電、露光、現像、一次転写の各工程が行われ、一次転写された未定着のトナーTは、中間転写ベルト14の回転に伴って二次転写装置20に搬送される。また、記録用紙Pが、用紙トレイ50A又は50Bから二次転写装置20に搬送される。
【0063】
二次転写装置20では、給電ロール76から対向ベルト68を介して対向ロール72が負極性に帯電されており、接地された転写ロール64と対向ロール72との間の電位差によって、二次転写電界が形成されている。なお、二次転写電界は、転写ロール64側を高電位、対向ロール72側を低電位(負極性)とする電界である。
【0064】
続いて、接触部71では、対向ロール72と転写ロール64との間の二次転写電界によって、中間転写ベルト14上のトナーTが、転写ロール64側に静電吸引され、記録用紙P上に転写される。
【0065】
ここで、中間転写ベルト14の帯電状態について説明する。なお、図3は、本発明との比較例として、転写搬送ベルト62及び対向ベルト68を用いず、転写ロール64と対向ロール72のみを用いたときの接触部近傍の模式図である。
【0066】
図3(a)に示すように、一次転写によって負極性のトナーTが転写された中間転写ベルト14の内面は、正極性に帯電している。一方、対向ロール72の表面は、負極性に帯電されている。ここで、転写ロール64と対向ロール72の間には数kVの高電圧が印加されており、さらに、中間転写ベルト14の抵抗が高いため、対向ロール72と中間転写ベルト14の間(ギャップ)の電位差がパッシェンの放電限界電圧以上になり、このギャップにおいて正極性の放電が発生する。
【0067】
続いて、図3(b)に示すように、対向ロール72と中間転写ベルト14のギャップ放電により、中間転写ベルト14の内面は局所的に帯電して電荷分布が発生するが、中間転写ベルト14の抵抗が高いために電荷が移動しにくく、中間転写ベルト14の内面に沿って沿面電界が形成される。この沿面電界によって、中間転写ベルト14の表面に電界Eが発生し、電界Eによって、中間転写ベルト14の表面に保持されていたトナーTが移動し、中間転写ベルト14上のトナーTの分布に疎又は密の領域が形成される。
【0068】
中間転写ベルト14の内面では、沿面電界が発生しているため、対向ロール72との間の電界が低くなっており、しばらくはギャップ放電が発生しない。なお、ギャップ間の電界が再度強くなると、ギャップ放電が発生して、中間転写ベルト14上のトナーTの分布に疎又は密の領域が形成される。
【0069】
続いて、図3(c)に示すように、対向ロール72と転写ロール64の接触部に記録用紙Pが進入する。そして、対向ロール72と転写ロール64の間の二次転写電界ESによって、トナーTに静電引力Fが作用し、中間転写ベルト14から記録用紙P上にトナーTが二次転写される。なお、説明上、中間転写ベルト14と記録用紙Pを離しているが、実際は両者にトナーTが接触している。
【0070】
記録用紙P上のトナーTの画像は、本来トナーTが配置されるべき場所に無く、疎密状態に偏りがあるため、外見上、うろこ状のムラとして現れる。特に、トナーTとして形状係数が小さい球形トナーを使用しているときは、転写性がよい反面、放電などによる僅かな電界の変化で、トナーTが中間転写ベルト14上又は記録用紙P上で乱れる可能性が高くなり、うろこ状のムラが目立つようになる。
【0071】
次に、本発明の二次転写装置20における中間転写ベルト14の帯電状態について説明する。図4は、接触部71近傍の模式図である。
【0072】
図4(a)に示すように、一次転写によって負極性のトナーTが転写された中間転写ベルト14の内面は、正極性に帯電している。中間転写ベルト14と接触して接触部71に搬送される対向ベルト68の内面も正極性に帯電している。一方、対向ロール72の表面は、負極性に帯電されている。
【0073】
ここで、転写ロール64と対向ロール72の間には数kVの高電圧が印加されており、くさび領域Cにおいて、対向ロール72と対向ベルト68のギャップの電位差がパッシェンの放電限界電圧以上になり、正極性の放電が発生する。
【0074】
続いて、図4(b)に示すように、対向ロール72と対向ベルト68のギャップ放電により、対向ベルト68の内面は局所的に帯電して電荷分布が発生する。ここで、対向ベルト68は低抵抗のため、対向ベルト68の内面に沿って電荷が分散する。これにより、対向ベルト68の電荷分布は、図3の中間転写ベルト14と比較して疎密状態のムラが少なく、また、中間転写ベルト14の内面の電荷分布にもほとんど影響しなくなる。このようにして、一次転写時と同様に、中間転写ベルト14の内面の電荷分布が保持され、トナーTの分布も保持される。
【0075】
続いて、図4(c)に示すように、対向ロール72と転写ロール64の接触部71に記録用紙Pが進入する。そして、対向ロール72と転写ロール64の間の二次転写電界ESによって、トナーTに静電引力Fが作用し、中間転写ベルト14から記録用紙P上にトナーTが二次転写される。記録用紙P上のトナーTの画像は、本来トナーTが配置されるべき場所にあり、うろこ状のムラはほとんど観測されなくなる。
【0076】
続いて、図2(b)に示すように、トナーTが二次転写された記録用紙Pが、接触部71から送出される。ここで、転写搬送ベルト62の表面が、記録用紙Pとの接触により帯電し、静電引力により記録用紙Pを保持しようとするため、記録用紙Pは、中間転写ベルト14から剥離され、転写搬送ベルト62に沿って搬送される。この後、記録用紙Pは、定着部16(図1参照)にて定着され、画像形成が完了する。
【0077】
次に、記録用紙P上のトナーTの画像のうろこ発生の有無、及びトナーTの転写性について、本発明と比較例を評価した結果を表1に示す。なお、うろこ発生と合わせて転写性を評価したのは、二次転写バイアスを低くするほど放電発生の可能性が減少してうろこ発生を抑えられるが、二次転写バイアスを低くしすぎると転写しなくなるためである。
【0078】
うろこ発生評価は、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)下において、画像濃度が10%刻みに100%から10%まで段階的に設定された階調パターンを、単色、二次色、三次色で、24時間調湿された記録用紙Pにそれぞれプリントし、うろこ状ムラの発生の有無を目視確認することによって行った。評価は、目視でうろこムラが確認されないものを○、画像全体には影響しないが一部に僅かにうろこムラが見られるものを△、目視で複数のうろこムラが確認されるものを×として評価した。
【0079】
転写性評価は、うろこ発生評価と同じ環境において、二次転写後の記録用紙P上のトナーTの濃度を測定し、予め設定した濃度の許容値と比較して○、△、×として評価した。
【0080】
なお、各評価において、プリントを行う際に多重色(二次色、三次色)のトナー像が転写できるように、接触ロール(転写ロール64及び対向ロール72)に印加する二次転写バイアスを−3.0〜−7.0kVの範囲で調整した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示すように、うろこ発生評価において、二次転写バイアスが−3.0〜−7.0kVの範囲では、本発明の二次転写装置20による二次転写時のうろこ発生は見られなかった。比較例では、−5.0〜−7.0kVの範囲でうろこ発生が見られた。一方、転写性評価においては、本発明も比較例も同様の傾向であり、−5.0〜−7.0kVの二次転写バイアスにおいて、転写性が実用レベルであった。
【0083】
次に、本発明の転写装置及び画像形成装置の第2実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0084】
図5(a)には、二次転写装置80が示されている。二次転写装置80は、第1実施形態の二次転写装置20において、補助ロール74に換えて押圧部材82及びスプリング84が設けられている。
【0085】
押圧部材82は、略半円形状で、対向ベルト68の内面と接触する接触部82Aと、スプリング84が取付けられる平坦な取付部82Bとで構成されている。取付部82Bには、取付面方向と付勢方向が略直交するように、スプリング84の一端が取付けられている。スプリング84の他端は、図示しない二次転写装置80の筐体に固定されている。
【0086】
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
【0087】
スプリング84によって付勢された押圧部材82は、対向ベルト68を張架させると共に、対向ベルト68を中間転写ベルト14の内面に所定の押圧力で圧接させる。これにより、対向ベルト68の中間転写ベルト14と対向する側の面が略直線状となり、中間転写ベルト14の張力が一定となって、対向ベルト68と中間転写ベルト14の密着性が上がる。
【0088】
続いて、トナーTが一次転写された中間転写ベルト14が接触部71に進入すると、転写ロール64と対向ロール72の間には数kVの高電圧が印加されているため、くさび領域Cにおいて、対向ロール72と対向ベルト68のギャップの電位差がパッシェンの放電限界電圧以上になり、正極性の放電が発生する。
【0089】
この放電により、対向ベルト68の内面は局所的に帯電して電荷分布が発生するが、対向ベルト68は低抵抗のため、対向ベルト68の内面に沿って電荷が分散する。これにより、対向ベルト68の電荷分布は疎密状態のムラが少なく、また、中間転写ベルト14の内面の電荷分布にもほとんど影響しなくなる。
【0090】
さらに、対向ベルト68と中間転写ベルト14とが密着しており、これらの間に新たなギャップが存在しないため、対向ベルト68と中間転写ベルト14との間で放電が発生することがない。このようにして、一次転写時と同様に、中間転写ベルト14の内面の電荷分布が保持され、トナーTの分布も保持される。
【0091】
続いて、図5(b)に示すように、対向ロール72と転写ロール64の接触部71に記録用紙Pが進入する。そして、対向ロール72と転写ロール64の間の二次転写電界によって、トナーTに静電引力が作用し、中間転写ベルト14から記録用紙P上にトナーTが二次転写される。記録用紙P上のトナーの画像は、本来トナーが配置されるべき場所にあり、うろこ状のムラはほとんど観測されなくなる。
【0092】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0093】
プリンタ10は、中間転写ベルト14を用いるものであれば、1つの感光体に複数の現像器で現像を行うリボルバー式のプリンタであってもよい。また、転写搬送ベルト62と同様の抵抗を有する抵抗層を転写ロール64の表面に形成し、1本の転写ロールとして中間転写ベルト14に接触させてもよい。
【0094】
また、対向ベルト68との摺動摩擦に影響が出ない範囲で、給電ロール76に換えて棒状の固定された電極部材を対向ベルト68に接触させてもよい。さらに、二次転写バイアスの印加において、転写ロール64を接地するだけでなく、転写ロール64に対向ロール72よりも高電位となる電圧を印加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る二次転写装置の断面図である。
【図3】本発明との比較例における中間転写ベルトの帯電状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る二次転写装置における中間転写ベルトの帯電状態を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る二次転写装置の断面図である。
【符号の説明】
【0096】
10 プリンタ(画像形成装置)
14 中間転写ベルト(転写ベルト)
18 制御装置(制御手段)
54 搬送ロール(搬送手段)
20 二次転写装置(転写装置)
62 転写搬送ベルト(転写部材、搬送ベルト)
64 転写ロール(転写部材、転写ロール)
66 従動ロール(転写部材、第2張架ロール)
68 対向ベルト(対向ベルト)
71 接触部(接触部)
72 対向ロール(対向ロール)
74 補助ロール(張架部材、第1張架ロール)
80 二次転写装置(転写装置)
82 押圧部材(張架部材)
84 スプリング(ばね材)
P 記録用紙(記録媒体)
T トナー(トナー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に転写されたトナー像を保持して搬送する転写ベルトと、
前記外周面に接触し、接触部へ搬送された記録媒体に前記トナー像を転写させる転写部材と、
前記転写ベルトの内側で前記転写部材と対向配置された対向ロールと、
前記対向ロールに巻き掛けられた対向ベルトと、
前記対向ロールより前記転写ベルトの搬送方向上流側に設けられ、巻き掛けられた前記対向ベルトを前記接触部から上流側の前記転写ベルトの内側に接触させる張架部材と、
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記張架部材を前記対向ベルトに向けて付勢するばね材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記張架部材が、前記対向ベルトと従動して回転する第1張架ロールであることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項4】
前記転写部材は、前記対向ロールと対向配置された転写ロールと、
前記転写ロールより記録媒体搬送方向の下流側に設けられた第2張架ロールと、
前記転写ロールと前記第2張架ロールに巻き掛けられ前記接触部で前記転写ベルトと接触する搬送ベルトと、
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項5】
前記転写ベルトの表面抵抗率が12Log(Ω/□)以上であり、且つ前記対向ベルトの表面抵抗率が前記転写ベルトの表面抵抗率よりも低いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項6】
前記対向ベルトが弾性体であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の転写装置と、
前記転写装置に記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記転写部材への電圧印加を制御して、前記転写ベルトから記録媒体にトナー像を転写させる制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−192839(P2009−192839A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33695(P2008−33695)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】