説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】本発明は、転写部材上のワックス塊によるクリーニング不良及び転写部材上の潤滑性低下によるブレードの捲れを防止可能にする、クリーニング装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、像担持体とともに形成する用紙転写部で用紙の裏面に当接しながら回動し、当該像担持体上のワックスが含有されたトナーにより現像されたトナー像を用紙に転写させる転写部材と、転写部材上に対し第1の圧接強さで圧接して転写部材上に残余するトナーを除去する第1ブレードと、転写部材に対し第1の圧接強さより小さい第2の圧接強さで圧接して転写部材上のワックス塊を除去する第2ブレードを第1ブレードに対し上流側に配設することにより、ワックス塊によるクリーニング不良を防止可能にする、クリーニング装置及び画像形成装置の提供を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は像担持体上のトナーを用紙上に転写する転写装置及び転写装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低融点のオフセット防止剤(ワックスと仮称する)をトナーに多量に含有させて、鮮やかなカラー画像を作成したり、加熱ローラ等の温度を低温度にして画像形成装置の省電力化を図っている。そのため、画像形成装置内において用紙が定着装置から排出される段階では用紙上のトナー像は溶けたワックスで覆われることになり、定着装置の下流側に位置する各種部材は用紙上のトナー像から転着したワックスで次第に汚染される。そして、各種部材から汚染されたワックスが用紙上に転移する。
【0003】
両面記録時に片面印刷済みの用紙面を媒介して大きなワックス塊が転写装置に至り、ワックス塊の混入により転写部材上の残トナーが除去できないというクリーニング問題が発生した。つまり、大きなワックス塊がローラ状、あるいはベルト状の転写部材上に転着して最終的に転写部材上の残トナーを除去するブレードに捕獲されると、ワックスの捕獲された部分ではクリーニングブレードの先端が捲れ、残トナーが全くクリーニングできない状態になる。
【0004】
一方、用紙を媒介にして混入された異物をクリーニング対象物から除去する異物除去部材を有するクリーニング装置に関し、特許文献1及び2に開示されている。
【0005】
特許文献1に記載のクリーニング装置は、クリーニングブレードに対し中間転写体の移動方向における上流側に回転するブラシローラで構成される異物除去部材を配設して、紙粉除去と同時にトナーの回収も可能にし、クリーニングブレードの負荷を軽減しクリーニングブレードの寿命を延ばすことを可能にしている。
【0006】
また、特許文献2に記載のクリーニング装置は、特許文献1と同様にクリーニングブレードに対し上流側にブラシローラの異物除去部材を配設して、紙粉によるクレーニング不良を防止している。更に、クリーニングブレードに対し下流側に中間転写体上に潤滑剤を塗布するローラ状の塗布ブラシを配設して中間転写体上の摩擦係数の変動によるクレーニング不良を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−215938号公報
【特許文献2】特開2007−121965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1及び2に記載のクリーニング装置は異物除去部材としてブラシローラを用いており、ワックスを効果的に除去できない。また、ワックス塊によるクリーニング不良が防止可能なブラシローラ機構(高密度ブラシ、高速回転、大型化)にすると、中間転写体上に付与されている潤滑剤が過度に失われクリーニングブレードの捲れ等の新たな問題を発生させる。
【0009】
本発明は、転写部材上のワックス塊によるクリーニング不良及び転写部材上の潤滑性低下によるブレードの捲れを防止可能にする、クリーニング装置及び画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
【0011】
1.像担持体とともに形成する用紙転写部で用紙の転写面と反対側の面に当接しながら回動し、当該像担持体上のワックスが含有されたトナーにより現像されたトナー像を用紙に転写させる転写部材と、
前記転写部材に対し第1の圧接強さで圧接して前記転写部材上に残余するトナーを除去する第1ブレードと、
前記第1ブレードに対し前記転写部材の回動方向における上流側に配設し、前記転写部材に対し前記第1の圧接強さより小さい第2の圧接強さで圧接して前記転写部材上のワックス塊を除去する第2ブレードと、
を有することを特徴とする転写装置。
【0012】
2.前記第2の圧接強さは、前記転写部材に残余するトナーが前記第2ブレードで除去されずすり抜けるような範囲の強さであることを特徴とする前記1に記載の転写装置。
【0013】
3.前記第2の圧接強さは、前記第2ブレードによってトナーの平均粒子径より大きなワックス塊が除去できるような範囲の強さであることを特徴とする前記1又は2に記載の転写装置。
【0014】
4.前記第1ブレードに対し前記転写部材の回動方向における下流側に位置し前記転写部材上に滑剤を均して塗布する滑剤塗布手段を有することを特徴とする前記1から3までの何れか1項に記載の転写装置。
【0015】
5.前記回動方向に直交する幅方向における前記第1ブレードの長さをW1とし、前記幅方向における第2ブレードの長さをW2とし、前記滑剤塗布手段の長さをW3とする場合に、W1、W2及びW3には次式の関係が成立することを特徴とする前記4に記載の転写装置。
W3>W2>W1
6.前記1から5までの何れか1項に記載の転写装置と、
用紙に形成されたトナー像を定着させる定着装置と、
前記定着装置で処理され表面にトナー像が形成された用紙を表裏反転させて前記用紙転写部に搬送させる両面搬送路と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ワックス塊の混入によるクリーニング不良の防止を可能にする転写装置及び画像形成装置の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は本発明に係るクリーニング装置が用いられた画像形成装置を示す構成図である。
【図2】は本発明の第1実施形態に係る二次転写装置90の概要を示す拡大断面図である。
【図3】は転写ベルト91上に転移したトナー及びワックス塊Wの推移を示す模式図である。
【図4】は本発明の第2実施形態に係る二次転写装置90の概要を示す拡大断面図である。
【図5】は転写ベルト91上に転移したトナー及びワックス塊W、更に滑剤塗布手段95で塗布された滑剤の推移を示す模式図である。
【図6】は、二次転写装置の主要部材に関する転写ベルト91の回動方向に直交する幅方向の位置関係を示す模式図である。
【図7】は、本発明に係る第1及び第2の実施形態における第1ブレード94、第2ブレード93、及び第3ブレード955の当接条件(一例)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0019】
《電子写真方式の画像形成装置》
図1は本発明に係るクリーニング装置を備えた画像形成装置Aを示す構成図である。
【0020】
画像形成装置Aは装置本体の上部に載置される画像読取装置Bを備えている。
【0021】
画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと、本発明に係る像担持体としての中間転写体6を有する画像形成部100、給紙搬送部20及び定着装置30等からなる。
【0022】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFと原稿画像走査露光装置SCから成る画像読取装置Bが設置されている。自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは、搬送手段により搬送され原稿画像走査露光装置SCの光学系により原稿の片面、又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0023】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0024】
イエロー(Y)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段5Yを配置している。マゼンタ(M)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Mは、感光体1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段5Mを配置している。シアン(C)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Cは、感光体1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段5Cを配置している。黒(K)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Kは、感光体1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段5Kを配置している。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0025】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0026】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、図示しない駆動手段により回動可能に支持されている。
【0027】
定着装置30は、加熱された定着部材(定着ベルトともいう。)31と加圧ベルト32との間に形成された定着ニップ部で用紙P上の未定着トナー像を加熱、加圧して定着する。
【0028】
上記の実施形態に使用されるトナーは、樹脂100質量部に対し、10質量部のオフセット防止剤が含有されている。
【0029】
オフセット防止剤は、トナーの主樹脂に比較して低分子量であり且つ融点も低いために、定着装置の定着ニップを通過する際に粘弾性状態に留まる主樹脂と異なり溶融状態となり、トナー層の表面を覆うように展開し、定着部材31の表面層とトナー層の界面に占有し、定着部材31の表面層に対するトナー層の離型性を飛躍的に高めること可能するものである。
【0030】
ここではオフセット防止剤(後述においてワックスと称する)として低分子量ポリプロピレンのワックスが用いられているが、以下に示すワックス類を用いることができる。
【0031】
具体的には、低分子量ポリエチレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス;ベヘン酸エステル、モンタン酸エステル、ステアリン酸エステル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、等が例示される。
【0032】
一次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより、画像形成手段10Y、10M、10C、10Kより形成された各色のトナー像は本発明に係る像担持体としての中間転写体6上に逐次転写されて各色トナーで成るトナー像が中間転写体6上に形成される(1次転写)。
【0033】
他方、用紙Pが給紙搬送部20の給紙カセット21から給紙手段22により給紙され、給紙ローラ23、24、25、26、レジストローラ27等を経て二次転写装置90に搬送される。二次転写装置90で中間転写体6上に形成されたトナー像は用紙P上に転写される。
【0034】
トナー像が転写された用紙Pは、曲率分離により中間転写体6より分離され、定着装置30に搬送される。そして、用紙P上のトナー像は定着装置30で加熱、加圧され、用紙P上に定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ29上に載置される。
【0035】
一方、中間転写体6は二次転写装置90で用紙Pにトナー像が転写された後にクリーニング手段8に至り、クリーニング手段8により中間転写体6上の残留トナーが除去されて、中間転写体6は像形成が再度可能な状態に清掃される。
【0036】
定着処理された用紙Pを反転排紙する場合には、用紙Pは定着装置30と排紙ローラ28の中間に配置された分岐板28Aの図示右側の搬送路を通過し、下方の第1搬送路Saに搬送された後、逆転搬送されて分岐板28Bの図示左側の第2搬送路Sbを通過し、排紙ローラ28により装置外に排出される。
【0037】
用紙Pの両面に画像形成する場合には、表面にトナー像が形成された用紙Pは、定着装置90で処理された後に、第1搬送路Sa、第4搬送路Sd、及び第3搬送路Scで構成される両面搬送路S内を経由して用紙転写部Ptに搬送させる。そして、両面搬送路SS内を経由する間に用紙Pは表裏反転搬送される。以下に詳しく説明する。
【0038】
用紙Pの第1面に形成した画像を定着処理した後、用紙Pは第1搬送路Sa、更に分岐板28Bの下方の第4搬送路Sdに導入された後に逆転搬送されて表裏反転される。表裏反転された用紙Pは分岐板28Bの図示右側の搬送路を通過し、第3搬送路Scに搬送した後に上方に迂回して給紙ローラ26により用紙転写部Ptに搬送する。
【0039】
そして、用紙転写部Ptにおいて用紙Pの第2面に中間転写体6上のカラー画像が転写されて用紙Pの第2面上にカラー画像が形成される。更に用紙Pは定着装置30により加熱定着処理され、排紙ローラ28によって装置外に排出される。
【0040】
本発明の実施形態ではワックスが添加されたトナーを用いており、定着装置30の下流側の第1搬送路Saから第4搬送路Sdに至る搬送路を構成するローラ等の部材は用紙P上からのワックスの転着により汚染される。ワックス汚染は定着装置30に近いほど激しくなり、第1搬送路Sa、第2搬送路Sbの状態は第3搬送路Sc、第4搬送路Sdより激しい。特に、定着装置に近い両面搬送路Sに配設されたローラ等の部材がより激しく汚染される。
【0041】
[二次転写装置]
図2は本発明の第1実施形態に係る二次転写装置90の概要を示す拡大断面図である。
【0042】
二次転写装置90は、転写部材としての転写ベルト91、第1ブレード94及び第2ブレード93を有している。
【0043】
転写ベルト91は駆動ローラ92A及び転写ローラ92Bで懸架され矢印aの方向に回動され、用紙Pの裏面に当接しながら矢印aの方向に回動し、用紙転写部Ptで用紙Pを介して中間転写体6に接触している。転写ローラ92Bは、用紙転写部Ptで中間転写体6を懸架する支持ローラ61に対し付勢され、転写ベルト91を中間転写体6に接触させ、更に高圧電源E1に接続されバイアス電圧Vtが印加可能になっている。そして、少なくとも用紙Pが用紙転写部Ptを通過する際にはバイアス電圧Vtが出力され、中間転写体6上のトナー像は用紙P上に転写される。
【0044】
第1ブレード94は用紙転写部Ptに対し転写ベルト91の移動方向における下流側(図示のPcで示す位置)に配設されており、転写ベルト91上に残余したトナーをその先端で掻き取って回収するものである。
【0045】
第1ブレード94はウレタンゴム製であり、ブレード支持部材94aに熱溶着されている。ブレード支持部材94aは二次転写装置90のケーシングに固設された支持軸94bに回転可能に支持されている。ブレード支持部材94aの他端94cに圧縮バネ94dが付勢しており、ブレード支持部材94aの他端94cは矢印cの方向に付勢される。
【0046】
結果として、第1ブレード94は転写ベルトに対し所定強さF1で押圧されている。ここでは、F1=40N/mであり、F1は第1ブレード94の幅方向における単位メートル(m)当たり法線方向圧接力(N)である。法線方向圧接力は回動する転写ベルト91に対する圧接力の法線方向成分である。
【0047】
第2ブレード93は、転写ベルト91の移動方向における第1ブレード94の上流側(図示のPwで示す位置)に配設され、転写ベルト91上に残余するトナーを除去することより、用紙Pから転写ベルト91上に転移したワックス塊Wを転写ベルト91上から除去すること狙いとするもので、第2ブレード93が転写ベルト91に対し圧接する第2の圧接強さF2は、第1ブレード94が転写ベルト91に対し圧接する第1の圧接強さF1より小さく設定されている。
【0048】
第2ブレード93は0.1mm厚のポリエチレンテレフタノール樹脂シートで作成されており、第2ブレード93の先端は、転写ベルト91の内周面に接触している従動ローラで位置規定された転写ベルト91上に当接し、第2ブレード93の他端側は支持部材93aに熱溶着される。第2ブレード93が撓み、その先端部は転写ベルト91の回動方向におけて転写ベルト91に概ね平行になっているニップ長さLnを有する。
【0049】
第2ブレード93の圧接強さF2に対応するニップ長さLnは、矢印fで示すように支持部材93aの固設位置を上下に調整することによって適宜設定可能である。ここでは、Ln=1mmである。
【0050】
支持部材93aの固設位置の調整により、用紙Pの非通紙時に中間転写体6から転写ベルト91に転写されたトナーの過半紙以上がすり抜け、且つトナーの粒径以上の大きなワックス塊Wを除去できるような第2ブレード93の圧接強さF2の範囲に設定して、以下に示す長所を有する二次転写装置の実現を可能にする。
【0051】
トナーは固体潤滑剤としての特性を備えており、第2の圧接強さF2が上記範囲にあると、クリーニング不良に関係するようなワックスを除去できると共に、第1ブレード94の先端に所定量以上のトナーが常に滞留されて第1ブレード94の捲れが防止される。また、転写ベルト91上の潤滑性が長期に渡り維持されるために第1ブレード94及び転写ベルト91の長寿命化が図れ、二次転写装置90自体の長寿命化が実現できる。
【0052】
つぎに、第2ブレード93の圧接強さF2の適正な設定をどのように求めたかについて説明する。
【0053】
支持部材93aの固設位置を可変して、搬送経路から種々のサイズのワックス塊Wが用紙P上に付与される状態を強制的に発生させながら連続1000枚の強制実写テストを実行する。その結果から、第1ブレード94においてワックス塊によるクリーニング不良、及びトナー枯渇によるブレード捲れの両方が起きない、『支持部材93aの固設位置における許容範囲』を取得する。
【0054】
上記のように実験的に得られた『支持部材93aの固設位置における許容範囲』は『第2ブレード93の圧接強さF2における許容範囲』に対応するものであり、圧接強さF2の適正な設定が実現可能になる。
【0055】
図3は、転写ベルト91上に転移したトナー及びワックス塊Wの推移を示す模式図である。△印はトナー粒子より大きなワックス塊Wであり、●印はトナーである。
【0056】
△印のような大きなワックス塊Wが第1ブレード94の先端で捕獲されると、このワックス塊Wはブレード先端に滞留されたトナー及び新たに捕獲されたトナーを順次取り込み、多数のトナーで成る大きなトナー群の塊として次第に成長する。そして、トナー群塊により第1ブレード94の先端が捲れてクリーニング不良が発生するものと推定される。
【0057】
図示のように用紙転写部Ptでトナー及びワックス塊Wが矢印gの方向に搬送される用紙Pから矢印aの方向に回動する転写ベルト91に転移され、Pwの位置で第2ブレード93によってトナーより大きなワックス塊Wが矢印hに示すように転写ベルト91から選択的に除去される。一方、トナーの多数は第2ブレード93で除去されずに第1ブレード94によって捕獲されて、第1ブレード94の先端部に滞留され、先端の滞留部から溢れたトナーが下方に降下して回収される。
【0058】
なお、用紙転写部Ptで転写ベルト91に転移したワックスのうち、トナー粒径以下のワックスの多数は、第2ブレード93で除去されず第1ブレード94に捕獲されるが、ブレード捲れを起こすようなトナー群塊に成長せず、小さなトナー群塊として第1ブレード94の当接部から降下して回収される、あるいは転写ベルト91上に薄く被覆される。
【0059】
トナー粒径以下のワックスは第2ブレード93で除去されなくても支障がないものと推察する。
【0060】
図4は本発明の第2実施形態に係る二次転写装置90の概要を示す拡大断面図である。
【0061】
二次転写装置90は、第1実施形態と異なり、転写ベルト91の移動方向における第1ブレード94の下流側に滑剤塗布手段95を配設している。
【0062】
滑剤塗布手段95は転写ベルト91上に滑剤Kを付与するもので、滑剤塗布ローラ951と第3ブレード955を有する。
【0063】
滑剤塗布ローラ951は二次転写装置90のケーシングに固設された支持部材954に回転可能に取付けられている。そして、滑剤塗布ローラ951の先端は転写ベルト91の移動方向におけるPkで示す位置で転写ベルト91に当接し、非図示の駆動機構により矢印bの方向に回転している。その表面には滑剤Kが塗られており、転写ベルト91上に滑剤Kを常時供給している。
【0064】
滑剤塗布ローラは、直径10mmの芯金の周囲に線径6デニールのナイロン(密度120kF/(inch)、抵抗値1×1011〜1×1012Ω)が植設された、外径18mmのブラシローラである。
【0065】
滑剤ブロック952は滑剤Kで成る四角柱の固体であり、図示のように圧縮バネ953の付勢力により四角柱の1面が滑剤塗布ローラ951に当接されている。以上のような構成により滑剤塗布ローラ951上に滑剤Kが塗布される。
【0066】
ここでは滑剤Kとして脂肪酸金属塩が用いられる。ここで用いられる脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムが挙げられるが、本発明で使用される脂肪酸金属塩は、これらに限定されるものではない。
【0067】
第3ブレード955は転写ベルト91の移動方向における滑剤塗布ローラ951の下流側(図示のPmで示す位置)に配設され、転写ベルト上に塗布された過剰な滑剤Kを均し転写ベルト91の表面に薄層の滑剤Kとして被覆している。従って、第3ブレード955は、回動する転写ベルト91に対しブレード先端がくい込まないトレール方式で当接している。
【0068】
滑剤塗布手段95の配設により、第1ブレード94の先端に滞留するトナーが枯渇することによる転写ベルト91と第1ブレード94との間の潤滑性が損なわれるという課題を考慮する必要がなくなる。但し、転写ベルト91上の滑剤Kを適度な厚さに維持することが必要になる。例えば、滑剤Kが厚すぎると、転写ムラや画像ボケ等の画像問題が発生する。
【0069】
従って、第3ブレード955が滑剤塗布ローラ951に対し転写ベルト91の回動方向における下流側(Pmで示す)に配設されており、第3ブレード955は滑剤塗布ローラ951により転写ベルト91上に塗布された過剰な滑剤Kを薄く伸ばして均している。
【0070】
第3ブレード955は、厚さ1.6mmのウレタンゴム樹脂(硬度74°、自由長6mm)製で、その先端は転写ベルト91に当接し、他端側は支持部材954に固設された支持板956に熱溶着されている。
【0071】
図5は、転写ベルト91上に転移したトナー及びワックス塊W、更に滑剤塗布手段95で塗布された滑剤Kの推移を示す模式図である。□印は、滑剤塗布ローラ951及びPkで転写ベルト91上に塗布された滑剤Kを示している。
【0072】
転写ベルト91上の滑剤Kは、転写ムラや画像ボケ等が発生しない程度以下に第3ブレード955によって薄く被覆されている。そして、転写ベルト91上に被覆された滑剤Kは第1ブレード94によって一緒に除去されるものであり、これを補うように滑剤塗布手段95は適量の滑剤Kを補充している。第1ブレード94及び滑剤塗布手段95による滑剤Kの塗布及び除去のバランスによって二次転写装置の安定性と耐久性が維持されている。
【0073】
従って、用紙転写部Ptで転写ベルト91に転移した大きなワックス塊Wによるクリーニング不良を防止するために、第2ブレード93が転写ベルト91の移動方向における第1ブレード94の上流側(図示のPwで示す位置)に配設さているが、第2ブレード93が転写ベルト91に対し圧接する圧接強さF2は、第1ブレード94及び滑剤塗布手段95による滑剤の塗布及び除去のバランスが崩れない範囲に設定する必要がある。
【0074】
つぎに、本発明に係る第2の実施形態において、第2ブレード93の圧接強さF2の適正な設定を簡易に得る実験方法を以下説明する。
【0075】
支持部材93aの固設位置を可変して、二次転写装置90単体を連続1000枚相当の空運転する強制稼働テストを行い、転写ベルト91上の潤滑性低下による第1ブレード94の捲れが起きない『支持部材93aの固設位置における第1許容範囲』を得る。更に、支持部材93aの固設位置を可変して、搬送経路から種々のサイズのワックス塊Wが用紙P上に付与される状態を強制的に発生させながら連続1000枚の強制実写テストを実行して、第1ブレード94においてワックス塊によるクリーニング不良が起きない、『支持部材93aの固設位置における第2許容範囲』を得る。
【0076】
上記のように実験的に得られた『第1許容範囲』と『第2許容範囲』の両方が含まれる『支持部材93aの固設位置における許容範囲』を取得する。
【0077】
上記のように実験的に得られた『支持部材93aの固設位置における許容範囲』は『第2ブレード93の圧接強さF2における許容範囲』に対応するものであり、圧接強さF2の適正な設定が実現可能になる。
【0078】
つまり、図4の二次転写装置90は、長期に渡り全くトナーが転移されない場合でも、転写ベルト91上に被覆された滑剤Kは、第1ブレード94の捲れが発生しない範囲に常に維持される。
【0079】
本発明に係る第2の実施形態は、固体潤滑剤としてのトナーが転写ベルト91上に全く存在しないような状況が長期渡って継続しても転写ベルト91上の潤滑性を常に安定的に維持しながら、用紙Pを媒介にして転写ベルト91上に転移された大きなワックス塊Wを転写ベルト91上から確実に除去しており、ワックス塊Wによるクリーニング不良及びブレード捲れを未然に防止すること出来ると共に、第1ブレード94及び転写ベルト91の長寿命化に優れる二次転写装置、及び画像形成装置を実現できる。
【0080】
図6は、二次転写装置の主要部材に関する転写ベルト91の回動方向に直交する幅方向の位置関係を示す模式図である。Wtは転写ベルト91の幅方向の長さである。W1は第1ブレード94の幅方向の長さで、用紙転写部Ptを通過する用紙Pの幅方向における最大長さに等しい。W2は第2ブレード93の幅方向おける長さである。W3は滑剤塗布ローラの幅方向における長さで、W3の幅に渡り転写ベルト91に滑剤が塗布される。W4は第3ブレード955の幅方向における長さである。
【0081】
Wt、W1、W2、W3及びW4は、転写ベルト91の幅方向の中央Lcに対し概ね均等に配設されており、次のような関係が好ましい。
【0082】
Wt>W4>W3>W2>W1
特に、W4>W3の関係にあり、滑剤塗布ローラ951の幅方向位置は常に第3ブレード955の幅方向位置の内側にあるために、滑剤塗布ローラ951で塗られた滑剤Kは第3ブレード955で確実に均すことが出来る。
【0083】
また、W3>W2の関係により、第1ブレード94の幅方向位置は常に滑剤塗布ローラ951の幅方向位置の内側にあるために、第1ブレード94は側端においてもブレード捲れが確実に防止される。
【0084】
更に、W2>W1の関係により、第2ブレード93の幅方向位置は常に第1ブレード94の幅方向位置の内側にあるために、第1ブレード94の端部にトナー及び滑剤Kを確実に供給されるようになり、第1ブレード94の側端で生じるブレード捲れを一層確実に防止可能にしている。
【0085】
図7は、本発明に係る第1及び第2の実施形態における第1ブレード94、第2ブレード93、及び第3ブレード955の当接条件(一例)を示す模式図である。
【0086】
L1は第1ブレード94の自由端の長さで、9mmである。L2は第2ブレード93の自由端の長さで、7mmである。L3は第3ブレード955の自由端の長さで、6mmである。
【0087】
そして、αは第2ブレード93の当接角度で、21°である。βは第1ブレード94の当接角度で、28°である。θは第3ブレード955の当接角度で、52°である。
【0088】
なお、本発明の実施形態は中間転写体を用いた画像形成装置であるが、これに限定されるものでなく、本発明は感光体上に画像形成し当該画像を用紙上に転写する画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
6 中間転写体(像担持体)
90 二次転写装置(転写装置)
91 転写ベルト(転写部材)
93 第2ブレード
94 第1ブレード
95 滑剤塗布手段
955 第3ブレード
P 用紙
A 画像形成装置
K 滑剤
W ワックス塊
Pt 用紙転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体とともに形成する用紙転写部で用紙の転写面と反対側の面に当接しながら回動し、当該像担持体上のワックスが含有されたトナーにより現像されたトナー像を用紙に転写させる転写部材と、
前記転写部材に対し第1の圧接強さで圧接して前記転写部材上に残余するトナーを除去する第1ブレードと、
前記第1ブレードに対し前記転写部材の回動方向における上流側に配設し、前記転写部材に対し前記第1の圧接強さより小さい第2の圧接強さで圧接して前記転写部材上のワックス塊を除去する第2ブレードと、
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記第2の圧接強さは、前記転写部材に残余するトナーが前記第2ブレードで除去されずすり抜けるような範囲の強さであることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記第2の圧接強さは、前記第2ブレードによってトナーの平均粒子径より大きなワックス塊が除去できるような範囲の強さであることを特徴とする請求項1又は2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記第1ブレードに対し前記転写部材の回動方向における下流側に位置し前記転写部材上に滑剤を均して塗布する滑剤塗布手段を有することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の転写装置。
【請求項5】
前記回動方向に直交する幅方向における前記第1ブレードの長さをW1とし、前記幅方向における第2ブレードの長さをW2とし、前記滑剤塗布手段の長さをW3とする場合に、W1、W2及びW3には次式の関係が成立することを特徴とする請求項4に記載の転写装置。
W3>W2>W1
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1項に記載の転写装置と、
用紙に形成されたトナー像を定着させる定着装置と、
前記定着装置で処理され表面にトナー像が形成された用紙を表裏反転させて前記用紙転写部に搬送させる両面搬送路と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−227180(P2011−227180A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94816(P2010−94816)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】