説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に備えられ、転写部材と転写ベルトとを互いに離間することによる消費エネルギーや部材の経時劣化を抑制しながら、転写部材のクリーニング手段を用いずとも転写ベルト上のパターン像が転写部材に付着することによる記録媒体の汚れを防止ないし抑制可能な転写装置及びこれを有するかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】距離制御手段は、転写ベルト11に画像調整用のパターン像が担持される場合において、転写ベルト11におけるパターン像の担持位置が転写部材17に対向するときの距離である第1の距離T2を、転写ベルト11におけるパターン像の非担持位置が転写部材17に対向するときの距離である第2の距離T1よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に備えられ、像担持体上に担持された像を転写される転写ベルトを有する転写装置及びこれを有するかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置において、感光体等の像担持体上に担持されたトナー像をその表面側に転写される転写ベルトを有する転写装置を備えた画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。また、かかる転写装置であって、転写ベルト上に担持されたトナー像を用紙等の記録媒体に転写するために転写ベルトの表面側に対向して設けられた転写ローラ等の転写部材と、転写ベルトを挟んで転写部材に対向して設けられ転写ベルトの裏面側を巻き掛けたバックアップローラ等のバックアップ部材とを備えた転写装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。
【0003】
かかる画像形成装置は、画像位置や画像濃度の調整のためにパターン像を形成してこれをセンサで検知し画像形成条件を制御することによって高画質を担保するための、いわゆるプロセスコントロールを実施するように構成されている場合がある。このような画像形成装置であって、上述の転写ベルトを備えた画像形成装置にあっては、像担持体上に形成されたパターン像が転写ベルトに転写されることが多い。
【0004】
ところが、転写部材が転写ベルトに常時当接していると、パターン像が転写部材に接触するタイミングで通紙を行わない限り、パターン像が転写ベルトから転写部材に移動することとなり、転写部材に付着したトナー等の画像形成物質が、その後行われる画像形成時に記録媒体に付着して汚れを生じることとなる。かかるタイミングで通紙を行うと記録媒体の無駄が生じるため、この無駄を生じることなくかかる汚れを防止するには、転写部材のクリーニングを行うための手段を設けることを要する(たとえば、〔特許文献1〕参照)。
【0005】
しかしながら、かかる手段を設けると、コストの上昇、転写装置、画像形成装置の大型化、重量の増加を招く。
一方、記録媒体の先端が転写ベルトと転写部材との間に進入するときの衝撃によって生ずる、ショックジターなどといわれる異常画像を防止することを可能とする技術として、転写部材と転写ベルトとを、記録媒体の厚みに応じて互いに離間する機構を備えた画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。
そこで、かかる機構を用いて、パターン像が転写ベルトから転写部材に移動することを防止することが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる機構を用いても、かりに、たとえば記録媒体の先端が転写ベルトと転写部材との間に進入するタイミングで、転写部材と転写ベルトとを記録媒体の厚みに応じて互いに離間させても、上述の汚れが発生してしまう。またかりに、プロセスコントロールを行う場合に、転写部材と転写ベルトとを常時離間させるとすれば、離間のためにエネルギーを要する場合には消費エネルギーの増加を招く。さらに、パターン像が転写ベルトから転写部材に移動することを防止するのに十分な距離で転写部材と転写ベルトとを常時離間させるとすれば、離間のために転写ベルトの張力が増す場合など、部材にかかる負担が増加する場合には経時劣化の増加を招くなどの問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に備えられ、転写部材と転写ベルトとを互いに離間することによる消費エネルギーや部材の経時劣化を抑制しながら、転写部材のクリーニング手段を用いずとも転写ベルト上のパターン像が転写部材に付着することによる記録媒体の汚れを防止ないし抑制可能な転写装置及びこれを有するかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、像担持体上に担持された像をその表面側に転写される転写ベルトと、この転写ベルト上に担持された像を記録媒体に転写するために同転写ベルトの表面側に対向して設けられた転写部材と、前記転写ベルトを挟んで前記転写部材に対向して設けられ同転写ベルトの裏面側を巻き掛けたバックアップ部材と、前記転写部材と前記バックアップ部材とを互いに接離する方向に変位させることで同転写部材と前記転写ベルトとを互いに接離させる接離機構と、この接離機構の駆動を制御して前記転写部材と前記転写ベルトとの距離を制御する距離制御手段とを有し、この距離制御手段は、前記転写ベルトに画像調整用のパターン像が担持される第1の場合において、同転写ベルトにおける同パターン像の担持位置が前記転写部材に対向するときの前記距離である第1の距離を、同転写ベルトにおける同パターン像の非担持位置が前記転写部材に対向するときの前記距離である第2の距離よりも大きくする転写装置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、像担持体上に担持された像をその表面側に転写される転写ベルトと、この転写ベルト上に担持された像を記録媒体に転写するために同転写ベルトの表面側に対向して設けられた転写部材と、前記転写ベルトを挟んで前記転写部材に対向して設けられ同転写ベルトの裏面側を巻き掛けたバックアップ部材と、前記転写部材と前記バックアップ部材とを互いに接離する方向に変位させることで同転写部材と前記転写ベルトとを互いに接離させる接離機構と、この接離機構の駆動を制御して前記転写部材と前記転写ベルトとの距離を制御する距離制御手段とを有し、この距離制御手段は、前記転写ベルトに画像調整用のパターン像が担持される第1の場合において、同転写ベルトにおける同パターン像の担持位置が前記転写部材に対向するときの前記距離である第1の距離を、同転写ベルトにおける同パターン像の非担持位置が前記転写部材に対向するときの前記距離である第2の距離よりも大きくする転写装置にあるので、転写部材と転写ベルトとを互いに離間することによる消費エネルギーや部材の経時劣化を抑制可能であるとともに、パターン像が転写部材に付着することによる記録媒体の汚れの防止性を向上した転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の一例の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に備えられた転写装置の概略側断面図である。
【図3】図1に示した画像形成装置に備えられた像担持体及び転写装置並びに像担持体の周りの構成を示す概略正面図である。
【図4】図1に示した画像形成装置に備えられた転写装置において記録媒体に転写を行っている状態を模式的に示した概略正面図である。
【図5】図1に示した画像形成装置に備えられた転写装置において転写ベルトと転写部材との距離が、(a)第2の距離である場合と、(b)第1の距離である場合と、を模式的に示した概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機であってフルカラーの画像形成を行うことが可能になっているカラーデジタル複合機であるが、他の画像形成装置、すなわち、モノクロ機や、複写機、プリンタ、ファクシミリの単体、あるいは複写機とプリンタとの複合機等他の複合機であっても良い。画像形成装置100は、プリンタとして用いられる場合には、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。これは画像形成装置100がファクシミリとして用いられる場合も同様である。
【0012】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをも記録シートであるシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体としての記録体である記録紙たる転写紙の両面に画像形成可能な両面画像形成装置でもある。
【0013】
画像形成装置100は、上下方向において中央位置を占めプリンタ部として機能する本体101と、本体101の上側に位置し原稿を読み取るスキャナとしての読取装置21および原稿を積載され積載された原稿を読取装置21に向けて送り出すADFといわれる原稿自動搬送装置である自動原稿給紙装置22と、本体101の下側に位置し像担持体としての感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと被転写体としての中間転写体である転写ベルト11との間に向けて搬送される被転写体である転写紙を積載した給紙テーブルとしての給紙装置であるシート給送装置23とを有している。
【0014】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な複数の感光体である感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを並設したタンデム構造を採用したタンデム型の画像形成装置である。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、互いに同一径であり、画像形成装置100の本体101の内部のほぼ中央部に配設された無端ベルト状の中間転写体たる中間転写ベルトとしての転写ベルト11の表面側である外周面側すなわち作像面側に、等間隔で並んでいる。
【0015】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら図中時計方向である矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成され各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に担持された像である可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、転写紙に一括転写されるようになっている。このように画像形成装置100は中間転写方式である間接転写方式を採用している。よって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の電子写真装置となっている。
【0016】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKのそれぞれに対向する位置に配設され転写ベルト11の内周面に接触配置された転写チャージャとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの真下の位置すなわち1次転写位置である転写位置にて行われる。
【0017】
各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、A1方向の上流側からこの順で並設されている。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するための、画像形成手段である画像ステーション60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0018】
画像形成装置100は、4つの画像ステーション60Y、60M、60C、60BKによって構成される画像形成部としての作像部60と、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの下方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた中間転写ユニットであるベルトユニットとしての転写ユニットたる転写ベルトユニット10と、転写ベルト11を挟んで作像部60と反対の側において、中間転写ベルト11に担持されたトナー像を転写紙に転写するために転写ベルト11の表面側に対向して配設された転写部材である2次転写ローラ17を備えた転写装置としての2次転写装置51と、2次転写装置51によって転写ベルト11上のトナー像を転写されたシートを搬送する搬送装置76とを有している。
【0019】
画像形成装置100はまた、画像ステーション60Y、60M、60C、60BKの上方に対向して配設された書き込み手段である光書き込み装置としての光書き込みユニットたる露光装置である光走査装置8と、シート給送装置23から搬送されてきた転写紙を、画像ステーション60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、転写ベルト11と2次転写ローラ17との間に向けて繰り出すレジストローラ対13と、転写紙の先端がレジストローラ対13に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0020】
画像形成装置100はまた、搬送装置76によって転写ベルト11上のトナー像を転写された状態で搬送されてきた転写紙が進入し、転写紙にトナー像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての定着手段である定着装置6と、定着済みの転写紙を本体101外に排出する排紙経路と再度レジストローラ対13に向けて搬送する反転経路とを備え転写紙を何れかの経路に搬送する排紙ユニット79と、2次転写装置51、搬送装置76および定着装置6の下方に、作像部60と平行に配設され、転写紙の両面に画像を記録すべく、排紙ユニット79が一方の面に画像を形成された転写紙を反転経路に搬送した場合に、その転写紙をスイッチバックして上下反転させ、再度、レジストローラ対13に向けて搬送する再給紙ユニットとしてのシート反転装置である両面ユニット96とを有している。
【0021】
画像形成装置100はまた、本体101外部に配設され画像形成済みの転写紙を積載するスタック部としての排紙トレイ75と、図1における本体101の右側面に配設された手差し給紙装置33と、画像形成装置100の操作を行う図示しない操作パネルと、画像形成装置100全体の動作を制御する制御部としての制御手段99と、図示しないトナー回収用ボトルである廃トナータンクとを有している。
【0022】
図2に示すように、転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、転写ベルト11のループ内側に配設され転写ベルト11を転写ベルト11の裏側で感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧した1次転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられ転写ベルト11を同図に示されているように逆三角形状の形状になる姿勢で掛け回した第1ないし第3の支持ローラとしてのベルト支持ローラである、転写ベルト11を回転駆動する回転駆動ローラとしての張架ローラである駆動ローラ72、2次転写対向ローラとしての斥力ローラである転写入口ローラ73および従動ローラであるテンションローラ74と、テンションローラ74との間に転写ベルト11を挟み込み転写ベルト11表面をクリーニングするクリーニング手段としてのベルトクリーニング装置である中間転写体クリーニング装置たる中間転写ベルトクリーニング装置14とを有している。
【0023】
転写ベルトユニット10はまた、A1方向において作像部60よりも下流側且つ2次転写ローラ17よりも上流側、具体的には駆動ローラ72に対向する位置で転写ベルト11の外周面に対向して配設され転写ベルト11上のトナー像を光学的に検知するための検知部たる反射型光学センサである反射型濃度センサたる光学センサ50と、駆動ローラ72を回転駆動することで転写ベルト11をA1方向に無端移動させる第1の駆動源としてのモータである図示しないベルト駆動モータと、画像形成が2色以上の多色画像で行われるか黒色のみの単色画像すなわちモノクロ画像で行われるかに応じて転写ベルト11等を変位させる図示しない転写ベルトユニット駆動手段と、光学センサ50を転写ベルト11から離間した位置において所定距離を保つように保持した図示しない保持部材とを有している。
【0024】
転写入口ローラ73は、転写ベルト11を挟んで2次転写ローラ17に対向して設けられ転写ベルト11の裏面側を巻き掛けたバックアップ部材となっている。なお回転駆動ローラはテンションローラ74または転写入口ローラ73によって構成してもよく、この場合はその他のローラが従動回転する従動ローラとなる。
【0025】
転写ベルト11は、本形態では多層構造を採っている。具体的には、転写ベルト11は、伸びの少ないフッ素樹脂によって形成されたベース層と、フッ素系樹脂によって形成され表面を構成したコート層とを有している。ベース層は他にPVDFシート、ポリイミド系樹脂によって形成しても良い。コート層の材料はフッ素系樹脂に限らない。転写ベルト11は単層構造であっても良い。転写ベルト11を単層構造とする場合には、PVDF、PC、ポリイミド等の材質を用いる。なお転写ベルト11の材料として以上述べたものは例示であり、転写ベルト11の材料はこれらに特定されるものではない。
【0026】
転写ベルトユニット駆動手段は、画像形成が2色以上の多色画像で行われるときには、転写ベルト11が図1に示すように張架される態位としてこの上側の略水平な展張面に転写ベルト11を各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに接触させ、画像形成がモノクロ画像で行われるときには、同図左方を下側に変位させるようにして転写ベルト11を感光体ドラム20Y、20M、20Cから離間させ転写ベルト11が各感光体ドラム20BKのみに接触する態位とする。なお、画像形成がモノクロ画像で行われるときには、感光体ドラム20Y、20M、20Cの回転をはじめとして画像ステーション60Y、60M、60Cの各構成の動作が停止される。このような構成においては、4つの画像ステーション60Y、60M、60C、60BKは、A1方向上流から、画像ステーション60Y、60M、60C、60BKの順で横に並べ、後述のような現像を行うことが好ましいが、何れにしても、作像部60は、テンションローラ72と駆動ローラ74との間に張り渡した転写ベルト11上に配置される。また、このように、画像を形成する色の順番は、画像形成装置100の持つ狙いや特性によって異なってくるものであり、限定されるものではない。
【0027】
2次転写ローラ17は、転写ベルト11の下方に配設されており、転写入口ローラ73による転写ベルト11の掛け回し箇所において転写ベルト11の表面側から、転写入口ローラ73との間に転写ベルト11を挟み込むと、この挟み込みにより、転写ベルト11と2次転写ローラ17とが接触可能な状態となり2次転写部としての2次転写ニップを形成する。
【0028】
図2に示すように、2次転写装置51は、2次転写ローラ17の他、転写ベルト11及びこれを巻き掛けた転写入口ローラ73と、2次転写ローラ17を、転写ベルト11への当接位置において転写ベルト11と同方向に回転駆動する第2の駆動源としてのモータであるローラ駆動モータ91とを有している。
【0029】
2次転写装置51はまた、転写ベルト11上に担持されたトナー像を転写紙に転写するために転写入口ローラ73と2次転写ローラ17との間に電圧を印加することで転写ベルト11と2次転写ローラ17との間に転写バイアスである2次転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段としての2次転写バイアス印加手段である高圧電源52と、2次転写ローラ17と転写入口ローラ73とを互いに接離する方向に変位させることで2次転写ローラ17と転写ベルト11とを互いに接離させる接離機構61とを有している。
【0030】
2次転写装置51はその他、図2における図示は省略するが、転写入口ローラ73とともに転写ベルト11を巻き掛けた駆動ローラ72、テンションローラ74と、中間転写ベルトクリーニング装置14と、ベルト駆動モータとを有している。
なお、2次転写ローラ17をクリーニングする転写部材クリーニング手段としての2次転写クリーニング装置は画像形成装置100には備えられていない。
【0031】
2次転写ローラ17は、円柱状の本体部であるローラ部66と、ローラ部66の軸線方向の両端面からそれぞれ突出して回転軸線方向に延在する軸部67とを有している。ローラ部66は、接地された円筒状の中空芯金66aと、これの周面に固定された弾性材料からなる弾性層66bと、これの周面に固定された表面層66cとを具備している。
【0032】
中空芯金66aを構成する金属としては、ステンレス、アルミニウムなどが例示されるができるが、これらの材料に限定されるものではない。弾性層66bについては、JIS−A硬度で70[°]以下にすることが望ましく、ある程度の導電性を発揮するエピクロルヒドリンゴムにより、JIS−A硬度で50[°]程度の弾性層66bを形成している。導電性を発揮するゴム材料として、前述した導電性のエピクロルヒドリンゴムの代わりに、カーボンを分散せしめたEPDMやSiゴム、イオン導電機能を有するNBR、ウレタンゴムなどを使用してもよい。ゴム材料の多くがトナーに対して良好な化学的親和性を発揮したり、比較的大きな摩擦係数を発揮したりすることから、ゴムからなる弾性層66bの表面には、表面層66cを被覆している。これにより、ローラ部31表面に対するトナー付着を抑えている。表面層66cの材料としては、低摩擦係数で且つ良好なトナー離型性を発揮するフッ素樹脂系樹脂にカーボンやイオン導電剤などの抵抗調整材を含有させたものが好適である。
【0033】
2次転写ローラ17は、転写ベルト11と接触して回転する際に、転写ベルト11と微小な線速差をもつことがある。この線速差によって転写ベルト11をスリップさせないように、表面層66cは、摩擦係数を0.3以下に調整されている。転写ベルト11については、各色の画像を色ズレなく重ねて転写する狙いから、一定速度で駆動することが求められるため、2次転写ローラ17の表面層66cの表面摩擦抵抗を低くすることは重要である。
【0034】
転写入口ローラ73は、中空円柱状の本体部であるローラ部73bと、ローラ部73bの回転中心箇所に対して回転軸線方向に貫通しつつ、ローラ部73bを自らの表面上で空転させる軸部としての貫通軸部材73aとを有している。貫通軸部材73aは、金属からなり、導電性であって、その周面上でローラ部73bを自在に空転させる。ローラ部73bは、ドラム状の中空芯金73cと、これの周面上に固定された弾性材料からなる弾性層73dと、中空芯金73cの軸線方向両端にそれぞれ圧入された玉軸受け73eとを具備している。玉軸受け73eが中空芯金73cを支えながら、中空芯金73cとともに貫通軸部材73a上で回転する。弾性層73dは、中空芯金73cの外周面に圧入されている。
【0035】
貫通軸部材73aは、ローラ部73bが転写ベルト11に当接している状態において、転写ベルト11の無端移動に伴って連れ回ろうとするローラ部73bを、自らの周面上で自在に空転させる。
【0036】
弾性層73dは、7.5[LogΩ]以上の抵抗を発揮するように、イオン導電剤の添加によって抵抗値が調整された導電性ゴム材料から構成されている。弾性層73dの電気抵抗を所定の範囲に調整しているのは、A5サイズなどといった、2次転写対向ローラ73の軸線方向のサイズが比較的小さな転写紙を使用する際に、2次転写ニップ内において、転写紙の介在なしに転写ベルト11と2次転写ローラ17とが直接接触している箇所に転写電流を集中させてしまうのを防止する狙いからである。弾性層73dの電気抵抗を、転写紙の抵抗よりも大きな値にすることで、そのような転写電流の集中を抑えることが可能になる。
【0037】
弾性層73dを構成する導電性ゴム材料としては、Asker−C硬度で40[°]程度の弾性を発揮するように、発泡ゴムを用いている。このような発泡ゴムで弾性層73dを構成することで、2次転写ニップ内で弾性層73dを厚み方向に柔軟に変形させて、シート搬送方向にある程度の広さを有する2次転写ニップを形成する。
【0038】
接離機構61は、貫通軸部材73aの両端部に貫通軸部材73aと一体で回転するように固定された位置変位部材としての突き当て部材である偏心カムたる一対のカム68と、各カム68を貫通軸部材73aに固定した一対のネジ69と、貫通軸部材73aを各カム68より貫通軸部材73aの端部側で回転自在に受けている一対の軸受77と、各軸受77を介して貫通軸部材73aを回転自在に支持した一対の側板78とを有している。
【0039】
接離機構61はまた、貫通軸部材73aの軸線方向において図2における左側の軸受77よりも貫通軸部材73aの端部側で貫通軸部材73aに固定された駆動受入ギヤ83と、駆動受入ギヤ83の更に外側において貫通軸部材73aに固定された被検知円盤84と、貫通軸部材73aの軸線方向において図2における左側の側板78に固定されたモータブラケット54と、ブラケット54に固定され、貫通軸部材73aを回転駆動することにより各カム68を回転駆動するための駆動手段としてのカム駆動モータ85と、モータブラケット54の下端部に固定された光学センサ55とを有している。
【0040】
接離機構61はまた、カム駆動モータ85の駆動力により駆動受入ギヤ83を回転駆動させ貫通軸部材73aを介して各カム68を回転駆動させる入出力ギヤユニット86と、制御手段99の一機能として実現され、カム駆動モータ85の駆動を制御することで接離機構61の駆動を制御し、2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離を制御する距離制御手段とを有している。
【0041】
接離機構61はまた、軸部67を回転自在に受けている一対の軸受87と、各軸受87を介して軸部67を回転自在に支持した一対のローラユニット保持体88と、各軸受87より軸部67の端部側の、各カム68に対向し当接する位置で軸部67に回転自在に支持された当接部材としての一対の空転コロ89と、各ローラユニット保持体88を介して2次転写ローラ17を転写ベルト11及び転写入口ローラ73に向けて付勢した付勢手段としての付勢コイルバネである、加圧スプリングによって構成された一対のバネ53とを有している。
【0042】
各カム68は、空転コロ89に当接する偏心カム部68aと、ネジ69が貫通する態様で螺合することによって貫通軸部材73aに固定された真円形のコロ部68bとが、貫通軸部材73aの軸線方向に並ぶように一体形成された部材である。
【0043】
カム駆動モータ85が固定されている側の側板78に設けられた軸受77は玉軸受であり、もう一方の軸受77は導電性のすべり軸受であって高圧電源52を接続されている。これら一対の軸受77により、貫通軸部材73aが一対の側板78に回転自在に支持されている。
【0044】
玉軸受け73eによりローラ部73bは貫通軸部材73aに対して回転自在であるため、貫通軸部材73aは、その周面上で、転写ベルト11の無端移動に伴って連れ回ろうとするローラ部73bを自在に空転させる。よって、プリントジョブ時などにおける殆どの時間において、貫通軸受部材73aは転写ベルト11側の駆動によっては回転駆動されずに停止している。
【0045】
導電性のすべり軸受である軸受77は、高圧電源61から出力される2次転写バイアスを、転写入口ローラ73に導く。転写入口ローラ73において、高圧電源61からの出力は、何れも金属製の、貫通軸部材73a、玉軸受け73e、中空芯金73c、弾性層73dを順に伝わっていく。この2次転写バイアスは、中空芯金73cに対してトナーと同極性のバイアスを印加するものである。これにより、2次転写ニップ内に、トナーを転写入口ローラ73側から2次転写ローラ17側に向けて静電移動させる2次転写電界を、両ローラ間に形成する。
【0046】
このようにして、2次転写装置51は、高圧電源52により、2次転写ニップに2次転写バイアスを印加し、後述するようにして転写ベルト11上に担持された最大4色のトナー像を、転写ベルト11側から2次転写ローラ17側に向けて静電移動させる、2次転写電界を形成する。これにより、かかるトナー像は、後述するようにしてレジストローラ対13により転写ベルト11と2次転写ローラ17との間に搬送されてきた転写紙に、2次転写電界、ニップ圧によって転写される。
【0047】
高圧電源52は、本形態では、転写入口ローラ73に、トナーと同極性のバイアスを印加する斥力転写方式である斥力バイアス方式による転写を行うように構成されているが、2次転写ローラ17に、トナーと逆極性のバイアスを印加する引力転写方式である引力バイアス方式による転写を行うように構成しても良い。
【0048】
高圧電源52は、制御手段99により、電圧がモニターされ、その動作時であるバイアス印加時に流れる電流が一定となるように、制御手段99により印加する電圧を制御される。
【0049】
各空転コロ89は、軸部67に空転可能に設けられている。各空転コロ89は、ドーナッツ円盤状の形状をしており、それ自体が玉軸受けとしての機能を有し、軸部67の周面上で空転する。
【0050】
被検知円盤84は、貫通軸部材73aの軸線方向に立ち上がる被検部84aを有している。
光学センサ55は、図示しない発光素子と受光素子とを有しており、これらの間に被検知部84aが進入可能となっている。
【0051】
貫通軸部材73aが回転する過程において、貫通軸部材73aが所定の回転角度範囲に位置すると、被検部84aが、光学センサ60の発光素子と受光素子との間に入り込んで両者間の光路を遮断する。光学センサ60の受光素子は、発光素子からの光を受光すると受光信号を距離制御手段として機能する制御手段99に送信する。
【0052】
入出力ギヤユニット86は、カム駆動モータ85の出力軸に備えられているモータギヤ85aに噛み合ってカム駆動モータ85の駆動力を受け入れる入力ギヤ部86aと、駆動受入ギヤ83に噛み合って駆動力を伝達する出力ギヤ部86bとを、貫通軸部材73aの軸線方向に平行に並んだ態様で有している。
【0053】
カム駆動モータ85はステッピングモータであり、距離制御手段として機能する制御手段99によりパルス状の電流を入力されると、この電流のステップ数に応じた量だけ駆動され、貫通軸部材73aをかかるステップ数に応じた角度だけ回転させる。このように貫通軸部材73aが回転するとき、ローラ部73bについては貫通軸部材73a上で自在に空転させることが可能であるので、転写ベルト11によるローラ部73bの連れ回りが阻害されることはない。
【0054】
距離制御手段として機能する制御手段99は、受光素子からの受光信号が途絶えたタイミングや、そのタイミングからのカム駆動モータ85の駆動量に基づいて、偏心カム部68aの回転角度位置を把握する。
【0055】
貫通軸部材24aが所定の回転角度範囲で回転を停止されると、各カム68のそれぞれにおいて、偏心カム部68aが空転コロ89に突き当たり、2次転写ローラ17をバネ53の付勢力に抗して押し返す。このときの押し返し量である押し下げ量は、偏心カム部68aの回転角度位置によって決まる。2次転写ローラ17の押し下げ量が大きくなるほど、転写入口ローラ73と2次転写ローラ17との軸間距離が大きくなる。このように、2次転写ローラ17を2次転写対向ローラ24から離間する方向に変位させることで、転写入口ローラ73と2次転写ローラ17との軸間距離を調整し、2次転写ローラ17と転写ベルト11との間に形成されるギャップすなわち距離を設定する。
【0056】
よって、距離制御手段として機能する制御手段99は、カム駆動モータ85に入力されるステップ数言い換えるとパルス数を制御することによって、2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離を制御する。この際、かかるステップ数によってカム68の回転角度言い換えると位相が正確に制御されるため、かかる距離が精度良く制御される。
【0057】
接離機構61は、かかる距離を調整する距離調整手段として機能する。また、カム68は、2次転写ローラ17と転写ベルト11とを接離させることを含めてかかる距離を調整する接離カムとして機能する。カム駆動モータ85は、接離駆動モータとして機能する。
【0058】
各空転コロ89は、カム68の突き当てに伴って回転を阻止されるが、それによって2次転写ローラ17の回転が妨げられることはない。各空転コロ89が回転を停止しても、2次転写ローラ17は、各空転コロ89と独立して自在に回転するからである。各カム68の突き当てに伴って各空転コロ89の回転が停止されるため、各カム68及び各空転コロ89の摺擦の発生が回避されるとともに、摺擦によるベルト駆動モータやローラ駆動モータ91のトルク上昇の発生が回避される。
【0059】
接離機構61は、カム68と空転コロ89とをそれぞれ、転写入口ローラ73、2次転写ローラ17の両端部に一対有しているため、転写入口ローラ73と2次転写ローラ17との間に介在する部材を最小限としつつ、かかる距離を精度良く制御することが可能となっている。
【0060】
ただし、カム68と空転コロ89とはそれぞれ、転写入口ローラ73、2次転写ローラ17の一方の端部に備えられていても良い。また、カム68を転写入口ローラ73側でなく2次転写ローラ17側に設け、空転コロ89を2次転写ローラ17側でなく転写入口ローラ73側に設けても良い。さらに、本形態では2次転写ローラ17を変位させることでかかる距離を調整する構成となっているが、これに代えて、あるいはこれとともに、転写入口ローラ73を変位させることでかかる距離を調整する構成としても良い。
2次転写装置51については、後にさらに詳しく述べる。
【0061】
図1に示すように、搬送装置76は、その上面側で転写紙を搬送する用紙搬送ベルトとしての搬送ベルト5と、搬送ベルト5を巻き掛けた張架ローラである、駆動ローラ15及び従動ローラ16と、2次転写ベルト5に対向して配設され転写ベルト11を介して押圧された対向ローラとしてのバックアップローラである転写入口ローラ73と、トナーと逆極性の2次転写バイアスを駆動ローラ15に印加する図示しない電源とを有している。
【0062】
中間転写ベルトクリーニング装置14は、A1方向において2次転写ニップの下流側であって、1次転写が行われる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの対向領域のうちA1方向において最上流となる感光体ドラム20Yと1次転写ローラ12Yとの対向領域よりも上流側の位置において、転写ベルト11上に残留している残留トナー等を除去することで転写ベルト11をクリーニングするものである。
【0063】
中間転写ベルトクリーニング装置14は、図示を省略するが、転写ベルト11にかかる位置で当接したクリーニング部材としての導電性のブラシローラであるファーブラシと、このファーブラシに当接しファーブラシに付着した残留トナー等を掻き落とすブレードと、ファーブラシを随時転写ベルト11に接離させる当接・離間手段と、ファーブラシに、転写ベルト11上のトナーを移動させる向きの電圧を印加する電圧印加装置と、ブレードによってファーブラシから掻き落とされた残留トナー等を中間転写ベルトクリーニング装置14の奥側すなわち図1の紙面奥側に搬送する搬送部材とを有している。ファーブラシは、転写ベルト11に対して接触してカウンタ方向に回転するように設けられている。
【0064】
中間転写ベルトクリーニング装置14は、転写ベルト11のA1方向への回転とともに、ファーブラシを用いて転写ベルト11表面のクリーニングを静電的に行い、このクリーニングにより転写ベルト11からファーブラシ側に転移した残留トナー等をさらにブレードにより掻き落とす。掻き落とされた残留トナー等は、搬送部材によって搬送されて重力により下方へ落下して廃トナータンク内へと収容される。
【0065】
廃トナータンクは内部の残留トナー等の量を検知する回収トナー量検知手段を有しており、回収トナー量検知手段によって残留トナー等が廃トナータンク内部で満杯となったことが検知されると、画像形成装置100が停止され、残留トナー等が廃トナータンクからあふれることが防止されるようになっている。
【0066】
中間転写ベルトクリーニング装置14の構成はこれに限らず、クリーニング部材として、ウレタン等によって形成され、A1方向に対しカウンタ方向に当接されたブレード状の部材や、ローラを、上述のファーブラシに代えてあるいは上述のファーブラシとともに備え、静電的に残留トナー等を回収するものであっても良い。
【0067】
定着装置6は、搬送装置76による転写紙の搬送方向における2次転写装置51及び搬送装置76の下流側に配設されている。定着装置6は、熱源を内部に有する加熱ローラ62と、加熱ローラ62に巻き掛けられた定着ベルト64と、加熱ローラ62とともに定着ベルト64を巻き掛けた定着ローラ65と、定着ローラ65との間で定着ベルト64に圧接し圧接部である定着部としての定着ニップを形成する加圧ローラ63とを有している。加熱ローラ62と、定着ベルト64と、定着ローラ65とは、定着ベルト64が無端移動するベルトユニットを構成している。定着装置6は、トナー像を担持した転写紙を定着ニップに通すことで、熱と圧力との作用により、すなわち加圧や加熱の処理により、担持したトナー像を転写紙の表面に定着するようになっている。このように、定着装置6は、定着ベルト64を用いたベルト定着方式を採用しているが、定着ベルト64でなくローラ状の定着部材を用いたローラ定着方式を採用しても良い。
【0068】
光走査装置8は、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの表面によって構成された被走査面をそれぞれ走査して露光し、光書込処理を施して静電潜像を形成するための、画像信号に基づくレーザービームとしてのレーザー光であるビームLY、LM、LC、LBKを発する図示しない光源を有している。
【0069】
ビームLY、LM、LC、LBKは、読取装置21で読み取られた原稿、ファクシミリにおける受信データ、PC等の外部入力装置から入力される画像情報に基づいて生成される各色の版を構成する、形成すべき画像に対応した電子情報である画像信号が光情報に変換されたものである。
【0070】
光走査装置8は、制御手段99によって光源の駆動が制御されることで、光源からビームLY、LM、LC、LBKを出射し、かかる光情報を感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に潜像として固定するものである。なお、光源は、光走査装置8のようなレーザー方式に限定されず、LED方式など他の方式を用いた露光装置であっても良い。
【0071】
排紙ユニット79は、定着装置6から搬送されてきた定着済みの転写紙を、両面ユニット96に向けて搬送する搬送ローラ97と、本体101外に排出する排出ローラ対としての排紙ローラ98と、定着済みの転写紙を搬送ローラ97のある排紙経路に導いて本体101外に排出するか、排紙ローラ98のある反転経路に導いて両面ユニット96に進入させるかを切り換える切換爪94とを備えている。
【0072】
両面ユニット96は、排紙ユニット79から搬送されてきた、一方の面に画像形成された転写紙を一旦積載する給紙ボックスとしてのトレイ92と、トレイ92上の転写紙をスイッチバックさせる反転ローラ93と、反転ローラ93によってスイッチバックされた転写紙をレジストローラ対13に向けて送り出す給紙ローラ95等を有している。
【0073】
シート給送装置23は、複数枚の転写紙を紙束の状態で収容可能な給紙トレイとしての給紙カセット25を鉛直方向に複数重なるように多段に配設された給紙ボックスとしてのペーパーバンク26と、給紙カセット25に積載された転写紙のうち最上位の転写紙の上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ24と、給送ローラ24により繰り出された転写紙を1枚ずつ分離する分離ローラ27と、給紙ローラ24及び分離ローラ27により送り出された転写紙が通過する給紙路29とを有している。
【0074】
給紙路29は、給紙ローラ24及び分離ローラ27により送り出された転写紙をレジストローラ対13に向けて搬送する搬送手段としての搬送ローラ28と、転写紙の搬送方向下流端言い換えると末端の付近に位置するレジストローラ対13とを備え、搬送ローラ28によって搬送される転写紙シート給送装置23から本体101内に連続するように設けられており、本体101内の給紙路29にも搬送ローラ28が配設されている。
【0075】
シート給送装置23は、給送ローラ24が図中反時計回り方向に回転駆動され、分離ローラ27が作用することにより、最上位の転写紙を給紙路29内に導き、搬送ローラ28の回転によりレジストローラ対13に向けて給送し、搬送された転写紙がレジストローラ対13に突き当てて止められスキューが修正されるようになっている。
【0076】
手差し給紙装置33は、転写紙を積載する給紙ボックスとしての手差しトレイ34と、手差しトレイ34に積載された転写紙のうち最上位の転写紙の上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ35と、給送ローラ35により繰り出された転写紙を1枚ずつ分離する分離ローラ36と、手差しトレイ34上に転写紙が載置されたことを検知する図示しない用紙センサとを有している。
【0077】
手差し給紙装置33は、給送ローラ35が図中時計回り方向に回転駆動され、分離ローラ36が作用することにより、最上位の転写紙を、本体101内の、給紙路29に合流した手差し給紙路に送り出し、給紙路29内に導くとともにレジストローラ対13に向けて給送し、搬送された転写紙がレジストローラ対13に突き当てて止められるようになっている。
【0078】
読取装置21は、原稿を載置するコンタクトガラス21a、コンタクトガラス21aに載置された原稿に光を照射する図示しない光源及び光源から原稿に照射され反射された光を反射する図示しない第1の反射体を備え図1における左右方向に走行する第1走行体21b、第1走行体21bの反射体によって反射された光を反射する図示しない第2の反射体を備えた第2走行体21c、第2走行体21cからの光を結像するための結像レンズ21d、結像レンズ21dを経た光を受け原稿の内容を読み取る読み取りセンサ21e等を備えている。
【0079】
読取装置21は、読み取りセンサ21eで読み取った原稿の画像情報を制御手段99に送信する。
自動原稿給紙装置22は原稿を載置する原稿台22aを有している。自動原稿給紙装置22は読取装置21に対して回動自在であって、上方に向けて回動したときコンタクトガラス21aを露出させるようになっている。
【0080】
操作パネルは、液晶ディスプレイ、複写を開始するためのコピースタートスイッチ等として機能するスタートボタン、複写枚数等を入力するためのテンキー等の各種キーボタン等を有する操作表示部となっている。操作パネルにおいては、画像形成を多色画像で行うかモノクロ画像で行うかを指定可能となっているとともに、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードを設定可能となっている。片面プリントモードには、ダイレクト排出モード、反転排出モードが含まれ、このうちの1つが選択される。
制御手段99は、CPU、記憶手段としてのメモリであるROM、RAM等を備えている。
【0081】
画像ステーション60Y、60M、60C、60BKについて、そのうちの一つの、感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yの構成を代表して構成を説明する。なお、画像ステーション60Yを除く他の画像ステーション60M、60C、60BKの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像ステーション60M、60C、60BKの構成に付し、詳細な説明については適宜省略することとし、符号の末尾にY、M、C、BKが付されたものはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成を行うための構成であることを示すこととする。
【0082】
図3に示すように、感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yは、感光体ドラム20Yの周囲に、図中反時計方向であるその移動方向である回転方向B1に沿って、1次転写ローラ12Yを備えた転写装置である1次転写装置51Yと、クリーナ部たるクリーニング手段としての感光体クリーニング装置である1次転写クリーニング装置たるクリーニング装置70Yと、除電部たる除電手段としての除電装置90Yと、帯電部たる帯電手段である帯電ユニットとしての帯電器たる帯電装置30Yと、現像部たる現像手段としての現像ユニットである現像装置80Yとを有している。
【0083】
画像ステーション60Yはまた、感光体ドラム20Yの周囲のこれらの構成を一体化したカートリッジケース59Yと、感光体ドラム20YをB1方向に回転駆動する図示しない駆動手段とを有している。
【0084】
感光体ドラム20Yと、クリーニング装置70Yと、除電装置90Yと、帯電装置30Yと、現像装置80Yとはカートリッジケース59Yによって一体化されており、プロセスカートリッジとしての画像ステーション60Yを構成している。プロセスカートリッジとしての画像ステーション60Yは、カートリッジケース59Yを、本体101に固定された図示しないガイドレールに沿って本体101に対して引き出し自在であるとともに、本体101に押し込むことが可能であり、本体101に対して着脱自在に設置され、適時、交換可能となっている。
【0085】
プロセスカートリッジとしての画像ステーション60Yは、本体101に押し込むと、画像形成に適した所定の位置に装填され、位置決めされるようになっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことが可能であるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。またプロセスカートリッジの要素である各部の寿命が同等とされているため、不要な交換が防止、抑制され、さらに好ましい構成となっている。
【0086】
プロセスカートリッジとしての画像ステーション60Yは、感光体ドラム20Yと、クリーニング装置70Yと、除電装置90Yと、帯電装置30Yと、現像装置80Yとのうち、少なくとも感光体ドラム20Yが、クリーニング装置70Yと、除電装置90Yと、帯電装置30Yと、現像装置80Yとのうちの少なくとも1つと一体化されることによって構成され、本体101に着脱自在に設置されるユニットである。なお4つの画像ステーション60Y、60M、60C、60BKによって構成される作像部60全体をプロセスカートリッジとして、これらが一体で本体101に対して着脱自在となっていても良い。
【0087】
1次転写ローラ12Yが転写ベルト11を感光体ドラム20Yに向けて押圧して形成された、転写ベルト11と感光体ドラム20Yとの当接位置である1次転写ニップは、感光体ドラム20Y上のトナー像が転写ベルト11に転写される転写位置を構成している。
【0088】
1次転写装置51Yは、1次転写ローラ12Yの他、感光体ドラム20Y上に担持されたトナー像を転写ベルト11に転写するために感光体ドラム20Yと1次転写ローラ12Yとの間に電圧を印加することで感光体ドラム20Yと転写ベルト11との間に転写バイアスである1次転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段としての1次転写バイアス印加手段52Yを有している。1次転写バイアス印加手段52Yは、トナーの正規の帯電極性である負極性と逆極性である正極性の1次転写バイアスを、定電圧制御により1次転写ローラ12Yに印加するようになっている。
【0089】
よって、1次転写装置51Yは、1次転写バイアス印加手段52Yにより、1次転写ニップに1次転写バイアスを印加し、後述するようにして感光体ドラム20Y上に担持されたイエロー色のトナー像を、感光体ドラム20Y側から転写ベルト11側に向けて静電移動させる、1次転写電界を形成する。このようにして、かかるトナー像は、転写ベルト11に、1次転写電界、ニップ圧によって転写される。
【0090】
除電装置90Yは、感光体ドラム20Yの表面に近接して配設された図示しない除電ランプを備えており、感光体ドラム20Yの表面を除電して電気的に清浄な状態とすることでかかる表面の電位を初期化するものである。
【0091】
帯電装置30Yは、図示を省略するが、感光体ドラム20Yの表面に当接して従動回転する帯電部材としての帯電ローラと、帯電ローラに当接し従動回転する帯電クリーニング部材としてのクリーニングローラとを有している。
【0092】
帯電ローラには、直流に交流成分の帯電バイアスを重畳印加する図示しない電圧印加手段が接続されており、感光体ドラム20Yと対向する帯電領域において、除電装置90Yによって除電された感光体ドラム20Yの表面を所定の極性に一様に帯電するようになっている。
【0093】
クリーニングローラは帯電ローラに従動回転することで帯電ローラをクリーニングするようになっている。
このように、本形態では、接触ローラを用いた帯電システムを採用しているが、帯電システムは、近接ローラを用いたものであっても良いし、非接触のスコロトロンチャージャを採用したものであっても良い。
【0094】
現像装置80Yは、感光体ドラム20Yに近接対向して配設されたトナーとキャリアとを含む二成分現像剤である現像剤を担持する現像部材としての現像ローラ81Yと、現像ローラ81Yに直流成分の現像バイアスを印加する図示しないバイアス印加手段と、トナーを収容した図示しないトナーカートリッジと、現像装置80Y本体内の現像剤中のトナーのキャリアに対する重量パーセントであるトナー濃度を検知する図示しないトナー濃度検知手段と、トナー濃度検知手段によって検知されたトナー濃度が所定濃度となるようにすなわちトナー濃度検知手段による検知信号によって示される値が所定の制御目標値となるようにトナーカートリッジから現像装置80Y本体内にトナーを補給する図示しないトナー補給手段とを有している。現像剤は、磁性キャリアと、正規の帯電極性がマイナスのカラートナーであるイエロートナーとを含む二成分現像剤である。バイアス印加手段によって印加される現像バイアスは直流成分でなく交流成分であっても良いし、直流成分に交流成分を重畳したものであっても良い。
【0095】
感光体ドラム20Yの表面の、帯電装置30Yと現像装置80Yとの間には光走査装置8Yから出射されたビームLYが照射され、帯電装置30Yにより帯電された後の感光体ドラム20Yの表面の被走査面が露光され、現像装置80Yによってイエロートナー像として可視像化される、画像情報に応じた静電潜像を書き込まれるようになっており、このビームLYが照射される部分は露光部となっている。
【0096】
クリーニング装置70Yは、その先端が感光体ドラム20Yに当接し感光体ドラム20Y上の転写残留物である転写残トナー、キャリア、紙粉等の異物を掻き取って回収しクリーニングするクリーニング部材としての図示しないクリーニングブレードと、回収した転写残トナーを廃トナータンクに搬送して回収する図示しない廃トナー搬送手段とを有している。クリーニング装置70Yは、クリーニングブレードとともにあるいはクリーニングブレードに代えてファーブラシローラを用いてもよいし、磁気ブラシクリーニング方式を採用しても良い。
【0097】
以上のような構成の画像ステーション60Yにおいては、画像形成時において、感光体ドラム20Yは、B1方向への回転に伴い、帯電装置30Yにより表面を一様に帯電され、光走査装置8Yからの光の露光走査により、露光部言い換えると照射部における感光体ドラム20Yの電位が減衰してイエロー色に対応した静電潜像を形成され、この静電潜像を現像装置80Yによりイエロー色のトナーにより現像され、現像により得られたイエロー色のトナー像を1次転写装置51Yによって形成される一次転写電界、ニップ圧により、A1方向に移動する転写ベルト11に1次転写され、転写後に残留したトナーを含む不要物をクリーニング装置70Yにより除去されて除電装置90Y、帯電装置30Yによる次の除電、帯電に供される。
【0098】
このような構成の画像形成装置100において、複写を行うときには、自動原稿給紙装置22の原稿台22aに原稿をセットするか、自動原稿給紙装置22を上方に回動してコンタクトガラス21a上に原稿を載置したうえで自動原稿給紙装置22を下方に回動して閉じ原稿を押さえた状態としたうえで、操作パネルのスタートボタンを押下する。なお、自動原稿給紙装置22にセットされる原稿は、たとえば束状のシート原稿であり、コンタクトガラス21a上にセットされる原稿は、たとえば本状に綴じられている片綴じ原稿である。画像形成装置100をプリンタとして使用する場合には、画像形成装置100に接続したPC等の外部入力装置において画像形成を行う画像データを選択、入力等したうえで画像形成開始の操作を行う。
【0099】
複写を行う場合であって、原稿を原稿台22aにセットした場合には、セットした原稿がコンタクトガラス21a上に送り出されてから読取装置21による原稿の読み取りが行われ、また、原稿をコンタクトガラス21a上に載置したときにはスタートボタンの押下によって読取装置21による原稿の読み取りが行われ、画像データが生成される。
【0100】
読取装置21による原稿の読み取りは次のように行われる。スタートボタンの押下によって第1走行体21bおよび第2走行体21cがコンタクトガラス21aに載置された原稿の原稿面に沿って走行を開始し、第1走行体21bにより、光源から発した光を原稿面で反射させるとともに、得られた反射光を第2走行体21cに向けて反射する。この第1走行体21bからの折り返し光は、第2走行体21cによってさらに折り返された後、結像レンズ21dを通して読み取りセンサ21eに入射し、これにより原稿内容が読み取られる。
【0101】
生成された画像データ又は入力された画像データに基づいて、上述の構成の画像ステーション60Y、60M、60C、60BKが作動する。また、かかる原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジである画像ステーション60Y、60M、60C、60BK内の各機器や、転写ベルトユニット10、2次転写ユニット76、定着装置6等がそれぞれ駆動を開始する。
【0102】
画像ステーション60Yにおいては、上述したように、感光体ドラム20Yは、B1方向への回転に伴い、帯電装置30Yにより表面を一様に帯電されて一様帯電処理が行われ、光走査装置8により静電潜像を形成されて光書込処理が行われ、この静電潜像を現像装置80Yによりイエロー色のトナーにより現像されて現像処理が行われ、イエロー色のトナー像を1次転写ローラ12Yによって転写ベルト11に1次転写され、転写後に残留したトナーを含む不要物をクリーニング装置70Yにより除去されて除電装置90Y、帯電装置30Yによる次の除電、帯電に供される。
【0103】
他の感光体ドラム20C、20M、20BKにおいてもその状態が良好に保たれながら同様に各色のトナー像が良好に形成等され、形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ12M、12C、12BKにより、A1方向に移動する転写ベルト11上の同じ位置に順次1次転写される。このとき、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、トナーの正規の帯電極性である負極性とは逆の正極性の電圧が印加されるようになっている。
【0104】
転写ベルト11上に重ね合わされたトナー像によって構成された4色重ね合わせトナー像すなわち4色トナー像は、転写ベルト11のA1方向の回転に伴い、2次転写ローラ17との対向位置である2次転写ニップまで移動し、図4に示すように、転写ベルト11に密着した転写紙に、ニップ圧や転写用電界である2次転写電界の作用によって2次転写され、転写紙上にフルカラー画像が担持される。
【0105】
転写ベルト11と2次転写ローラ17との間に搬送されてきた転写紙は、スタートボタンの押下により、画像情報に応じたサイズに応じてシート給送装置23の1つの給送ローラ24が選択されこの回転によって対応する給紙カセット25から繰り出されてフィードされたものであるか、または、手差し給紙装置33の給送ローラ35の回転によって手差しトレイ34から繰り出されてフィードされたものであるか、または、両面ユニット96から給紙ローラ95によって繰り出されてフィードされたものであるかの何れかであって、レジストローラ対13によって、そのローラ間に挟み込まれ、センサによる検出信号に基づいて、転写ベルト11上のトナー像の先端部が2次転写ローラ17に対向するタイミングで送り出されたものである。かかるフィード動作は、上述の原稿読取動作と略同時に開始される。
【0106】
転写紙は、すべての色のトナー像を転写され、担持すると、搬送装置76によって搬送されて定着装置6に送り込まれ、定着ベルト64と加圧ローラ63との間の定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を定着され、転写紙上に良好なカラー画像が形成される。定着装置6を通過した定着済みの転写紙は、切換爪94の態位に応じて、排紙ローラ98を経由して排紙トレイ75上にスタックされるか、または搬送ローラ97を経て両面ユニット96に進入して再度レジストローラ対13に戻され、2次転写ニップおよび定着装置6を再経由する両面画像形成に備える。
【0107】
一方、1次転写を終えた感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、クリーニング装置70Y、70M、70C、70BKによってこれに残留する転写残トナー等を除去されてクリーニングされ、次の画像形成に備える。また、2次転写を終えた転写ベルト11は、中間転写ベルトクリーニング装置14によってこれに残留する残留トナー等といわれる転写残トナー等を除去されてクリーニングされ、次の画像形成に備える。
【0108】
このような画像形成動作を良好に行うにあたって、図4に示したように、2次転写のときに転写ベルト11と2次転写ローラ17とにより転写紙を密着した状態で挟むことは、転写ベルト11上のトナー像を転写紙に良好に転写するために重要である。その一方で、転写ベルト11と2次転写ローラ17とが互いに当接した状態で転写紙が2次転写ニップに供給されると、転写紙の先端が2次転写ニップに進入するときの衝撃によって、ショックジターなどといわれる異常画像が発生しうるなどの問題がある。
【0109】
そこで、距離制御手段として機能する制御手段99は、レジストローラ対13が駆動して転写紙を繰り出すタイミング言い換えると転写紙が転写ベルト11と2次転写ローラ17との間に進入するときに、図5(a)に示すように、2次転写ローラ17を転写ベルト11から離間させ、2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離をT1に設定する。
【0110】
このとき、カム68の、空転コロ89に当接する位置の径は、最小径と最大径との中間の中間径となっており、バネ53の付勢力に抗して、2次転写ローラ17を転写ベルト11から離間させている。T1は、転写紙の厚みによって可変であって、0<T1<1mmとされる。カム68の位相は、かかるT1が得られる中間径の部分が空転コロ89に当接するように、距離制御手段として機能する制御手段99によって制御される。T1は、0<T1<1mmの範囲で一定であっても良い。
【0111】
距離制御手段として機能する制御手段99は、転写紙の先端が転写ベルト11と2次転写ローラ17との間に進入すると、カム68の最小径の部分が空転コロ89に対向するようにカム68の位相を制御し、バネ53の付勢力により、2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離が0となるように2次転写ローラ17を転写ベルト11に向けて変位させ、図4に示したように、転写紙を転写ベルト11に密着させて、2次転写を行わせる。
これにより、ショックジター等の不具合が防止ないし抑制されつつ、2次転写が良好に行われる。
【0112】
ところで、画像形成装置100のように、異なる色のトナー像を重ね合わせて画像を形成する画像形成装置においては、各色のトナー像の濃度、位置を精度良く制御することが高画質の画像を得るうえで重要である。そこで、画像形成装置100は、ユーザ指定の画像とは別に、画像形成用のパターン像を形成するいわゆるプロセスコントロールを行い、各色の画像形成条件、画像形成タイミングを調整するように構成されている。なお、プロセスコントロールは、単色の画像形成を行う画像形成装置においても同様に行われる。
【0113】
画像形成装置100において、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成されたプロセスコントロール用のトナーパターンであるパターン像は、ユーザ指定の画像と同様に転写ベルト11に転写され、光学センサ50によって画像濃度、位置を検知される。このパターン像は、転写紙の無駄を防止するため2次転写されることなく、中間転写ベルトクリーニング装置14によってクリーニングされる。
【0114】
よって、転写ベルト11上のパターン像は、2次転写ローラ17と転写ベルト11との間を通過することとなるが、この通過の際に、2次転写ローラ17と転写ベルト11とが互いに当接しているとすれば、パターン像が2次転写ローラ17に転写されてしまい、その後の画像形成時に転写紙に移動してしまう。
【0115】
これを防止するために、接離機構61を利用し、図5(a)に示したように、2次転写ローラ17と転写ベルト11とを離間させ、この状態で、2次転写ローラ17と転写ベルト11との間を転写ベルト11上のパターン像が通過するようにすることが考えられるが、図5(a)に示した状態において、2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離であるT1は、0<T1<1mmの範囲であるため、パターン像が2次転写ローラ17側に移動するのを防止するには十分とはいえない場合があるという事情がある。とくに、2次転写バイアスが印加されている場合には2次転写ローラ17側へのパターン像の移動が生じやすい。
【0116】
ここで、以下、画像形成装置100において、プロセスコントロールが行われる場合、すなわち転写ベルト11に画像調整用のパターン像が担持される場合を第1の場合といい、ユーザ指定の画像を形成する場合など転写ベルト11に転写紙に転写するためのトナー像が担持される場合を第2の場合という。
【0117】
画像形成装置100において、第1の場合であるとともに第2の場合であるときが生じる。これは、ユーザ指定の画像を形成しているときに、転写ベルト11の、転写紙の後端と先端との間、いわゆる紙間に対応する領域に、パターン像が形成されるためである。ただし、画像形成装置100は、所定枚数の画像形成後等の所定のタイミングで、ユーザ指定の画像形成が不能となるプロセスコントロールモードとなるように設定されており、このプロセスコントロールモードにおいては、第1の場合と第2の場合の両立は成されない。
【0118】
上述の事情に鑑み、距離制御手段として機能する制御手段99は、プロセスコントロール時である第1の場合において、バネ53の付勢力に抗して、カム68の最大径の部分が空転コロ89に対向するようにカム68の位相を制御し、図5(b)に示すように、転写ベルト11におけるパターン像の担持位置が2次転写ローラ17に対向するときの2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離である第1の距離を、かかるパターン像が2次転写ローラ17側に移動することが防止されるT2とする。なお、ここでいう防止には実質的な防止すなわち2次転写ローラ17側へ移動するトナーの量が無視できる程度に抑制されている場合も含む。本形態においてはT2≧1mmとされているが、T2の値は適宜変更可能である。
【0119】
これにより、パターン像が2次転写ローラ17側に移動することが防止され、その後の転写紙の汚れが防止される。またこれにより、画像形成装置100は、すでに述べたように、2次転写ローラ17をクリーニングする転写部材クリーニング手段が省略されており、2次転写装置51、画像形成装置100のコストの上昇、大型化、重量の増加等の抑制がなされている。ただし、本発明の適用は転写部材クリーニング手段の配設を排除するものではない。
【0120】
一方、距離制御手段として機能する制御手段99は、プロセスコントロール時である第1の場合において、転写ベルト11におけるパターン像の非担持位置が2次転写ローラ17に対向するときの2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離である第2の距離を、図5(a)に示した場合、すなわち第2の場合において転写紙が2次転写ローラ17と転写ベルト11との間に進入する場合の、転写ベルト11と2次転写ローラ17との距離であるT1と同じとする。この距離T1を、以下、第3の距離という。
【0121】
第2の距離を第1の距離より小さくするのは、2次転写ローラ17と転写ベルト11との距離は、小さいほど、転写ベルト11等の部材にかかる負担が小さいためである。第1の距離を第2の距離より大きくすることで、2次転写装置51の経時劣化が抑制されている。また、カム駆動モータ85にかかる負荷トルクを低減することが可能となり、カム駆動モータ85の消費電力、発熱の軽減も可能となる。
【0122】
また、第1の距離と第3の距離との関係については、第1の距離を第3の距離より大きくしている。これにより、パターン像が2次転写ローラ17側に移動することが高度に防止される。
【0123】
なお、第2の距離は、0としても良いが、上述のように、画像形成装置100においては、第1の場合であるとともに第2の場合であるとき、すなわち紙間にパターン像が形成される場合があるため、この場合には第2の距離と第3の距離とを一致させることが望ましい。これにより、制御が容易となるとともに、距離の設定が完了するまでに要する時間が低減されるためである。ただし、プロセスコントロールモードの場合は、第2の距離を0とすれば、2次転写装置51の経時劣化の抑制がより高度に成されるという利点が得られる。
【0124】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0125】
たとえば、バックアップ部材、転写部材は、転写ベルトに当接する部分が、転写ベルトの劣化を抑制するように曲面形状等とされていれば、ローラ状でなくても良い。
像担持体上に担持され転写ベルトの表面側に転写される像は、トナー像に限らず、インクによって形成されたインク像であっても良い。
【0126】
画像形成装置は、近年では、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなど、カラーのものが多くなってきているが、画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
このような画像形成装置に用いる現像剤は、二成分現像剤に限らず、上述したのと同様のクリーニングレスとすることが可能な構成であれば一成分現像剤であっても良い。
【0127】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、プロッタであっても良く、また、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0128】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0129】
11 転写ベルト
17 転写部材
20Y、20M、20C、20BK 像担持体
51 転写装置
61 接離機構
68 位置変位部材、カム
73 バックアップ部材
85 ステッピングモータ
89 当接部材
99 距離制御手段
100 画像形成装置
T1 第2の距離、第3の距離
T2 第1の距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0130】
【特許文献1】特開2010−134142号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に担持された像をその表面側に転写される転写ベルトと、
この転写ベルト上に担持された像を記録媒体に転写するために同転写ベルトの表面側に対向して設けられた転写部材と、
前記転写ベルトを挟んで前記転写部材に対向して設けられ同転写ベルトの裏面側を巻き掛けたバックアップ部材と、
前記転写部材と前記バックアップ部材とを互いに接離する方向に変位させることで同転写部材と前記転写ベルトとを互いに接離させる接離機構と、
この接離機構の駆動を制御して前記転写部材と前記転写ベルトとの距離を制御する距離制御手段とを有し、
この距離制御手段は、前記転写ベルトに画像調整用のパターン像が担持される第1の場合において、同転写ベルトにおける同パターン像の担持位置が前記転写部材に対向するときの前記距離である第1の距離を、同転写ベルトにおける同パターン像の非担持位置が前記転写部材に対向するときの前記距離である第2の距離よりも大きくする転写装置。
【請求項2】
請求項1記載の転写装置において、
前記距離制御手段は、前記転写ベルトに記録媒体に転写するための像が担持される第2の場合において、記録媒体が同転写ベルトと前記転写部材との間に進入するときに同転写ベルトと同転写部材とを離間させ、このときの前記距離である第3の距離よりも、第1の距離を大きくすることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2記載の転写装置において、
前記距離制御手段は、第1の場合であるとともに第2の場合であるときに、第2の距離と第3の距離とを一致させることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の転写装置において、
前記接離機構は、前記転写部材と前記バックアップ部材との一方側に設けられた、前記距離を制御するために駆動される位置変位部材と、前記転写部材と前記バックアップ部材との他方側の、前記位置変位部材に当接する位置に設けられた当接部材とを有することを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4記載の転写装置において、
前記接離機構は、前記位置変位部材としてカムを有するとともに、このカムを駆動するステッピングモータを有し、
前記距離制御手段は、前記ステッピングモータに入力されるステップ数を制御することによって前記距離を制御することを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の転写装置において、
前記位置変位部材と前記当接部材とをそれぞれ、前記転写部材及び前記バックアップ部材の両端部に一対有することを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の転写装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−101208(P2013−101208A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244404(P2011−244404)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】