説明

転圧機械

【課題】機体総質量の値を迅速に把握することができ、運搬車両の最大積載質量を遵守しつつ、水タンクにできるだけ多くの水を給水することができる転圧機械を提供する。
【解決手段】前後の車輪の少なくとも一方を兼用する転圧ローラ(2)と、この転圧ローラにより走行する車体(4)と、車体の一部を形成し、水が貯留される水タンク(16)とを備えた機体からなる転圧機械(1)において、車体に設けられ、水タンク内に水が貯留されていない空状態と、水タンク内に水が完全に貯留されている満水状態との間で水タンク内に貯留されている水の貯留量を認識するための認識部(20)と、認識部の近傍、又は前記認識部と一体的に設けられ、水タンクが空状態であるときの最小機体総質量と、水タンクが満水状態であるときの最大機体総質量との間で規定される機体総質量の値を表示する表示部(34)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面を締め固めるための転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
転圧機械に関する発明が特許文献1に開示されている。この転圧機械は、前後の車輪を兼用する転圧ローラ及び路面のそれぞれに散水しながら路面の締め固めを実施するものである。
【0003】
この転圧機械は、前後の転圧ローラにより走行する車体フレームと、この車体フレーム内にそれぞれ設けられ、転圧ローラ及び路面にそれぞれ散水するための水を貯留する車輪用及び路面用散水タンク(水タンク)とを備えている。水タンクには、タンク内に貯留された水の水位を判別するための水位計が取り付けられている。転圧作業の現場では水源の確保が難しいため、転圧機械は水タンクを予め満水にした状態でトラック等の運搬車両に積載されて作業現場に運搬されることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−345509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような運搬車両にはそれぞれ最大積載質量が規定されている。転圧機械の水タンクを満水にすると、水タンク内の水の質量を含む機体総質量がこの最大積載質量を超える場合がある。一方で、上述したように現場での水源確保の難しさから、水タンクにはできるだけ水を貯留しておきたいという要求がある。
【0006】
この場合、作業者は水タンク内に貯留される水の水位を調節しながら水タンク内へ給水する必要があるが、上述した水位計では、機体総質量の値を迅速に把握することができない。また、運搬車両の最大積載質量は車両の大きさ等によりそれぞれ異なるため、水タンクに給水すべき水の質量を運搬車両毎に計算することは大変な手間がかかる。したがって、運搬車両の最大積載質量を遵守しつつ上記要求を満たすことは困難であった。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、機体総質量の値を迅速に把握することができ、運搬車両の最大積載質量を遵守しつつ、水タンクにできるだけ多くの水を給水することができる転圧機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1の発明では、前後の車輪の少なくとも一方を兼用する転圧ローラと、該転圧ローラにより走行する車体と、該車体の一部を形成し、水が貯留される水タンクとを備えた機体からなる転圧機械において、前記車体に設けられ、前記水タンク内に水が貯留されていない空状態と、前記水タンク内に水が完全に貯留されている満水状態との間で前記水タンク内に貯留されている水の貯留量を認識するための認識部と、前記認識部の近傍、又は前記認識部と一体的に設けられ、前記水タンクが空状態であるときの最小機体総質量と、前記水タンクが満水状態であるときの最大機体総質量との間で規定される機体総質量の値を表示する表示部とを備えたことを特徴とする転圧機械を提供する。
【0009】
請求項2の発明では、前記認識部は、前記車体の側面にて前記表示部に対応して配置され、前記水タンク内に通じる開口部と、該開口部を閉塞すべき取り外し可能なキャップとを有することを特徴としている。
請求項3の発明では、前記キャップの少なくとも一部は透明又は半透明であることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明では、前記機体は、前記車体の側面より内側に入り込んで形成されたステップをさらに備え、前記表示部は、前記ステップの側方に位置する前記車体の側面であるステップ側面に形成され、前記認識部は、前記水タンクの上側及び下側にそれぞれ接続され、前記ステップ側面にて前記表示部に沿って延びる透明管を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、車体に設けられ、水タンク内に水が貯留されていない空状態と、水タンク内に水が完全に貯留されている満水状態との間で水タンク内に貯留されている水の貯留量を認識するための認識部と、認識部の近傍、又は認識部と一体的に設けられ、水タンクが空状態であるときの最小機体総質量と、水タンクが満水状態であるときの最大機体総質量との間で規定される機体総質量の値を表示する表示部とが備わる。このため、作業者は認識部を通じて水タンク内に貯留されている水の貯留量(水位)を認識することができるとともに、この貯留量に対応した表示部を参照することにより、機体総質量の値を迅速に把握することができる。運搬車両の最大積載質量を遵守しつつ水タンクにできるだけ多くの水を給水することができる。したがって、給水作業における利便性が高まる。
【0012】
請求項2の発明によれば、認識部は、車体の側面にて表示部に対応して配置され、水タンク内に通じる開口部と、開口部を閉塞すべき取り外し可能なキャップとを有する。このため、作業者はキャップを取り外し、開口部を通じて水タンク内に貯留されている水の貯留量を認識することができるとともに、この開口部に対応した目盛りを参照することにより、機体総質量の値を迅速に把握することができる。
【0013】
また、開口部を水タンク内へ給水するための給水口として使用すれば、開口部に対応する目盛り、即ち、機体総質量の値まで容易に給水することができる。一方、水タンク内の水の貯留量を減らしたい際に開口部を水タンクから排水するための排水口として使用すれば、開口部に対応する機体総質量の値まで容易に調節することができる。したがって、給水作業の利便性がさらに高まる。
【0014】
請求項3の発明によれば、キャップの少なくとも一部は、透明又は半透明であるため、作業者は開口部がキャップにより閉塞された状態であってもキャップを取り外すことなく水タンク内の貯留量を認識することができる。即ち、キャップと開口部とは協働して水タンク内に貯留されている水の水位を示すための水位ゲージとして使用される。これにより、給水作業の必要性と、給水作業が必要な場合には水タンクに貯留すべき水量を迅速に把握することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、機体は車体の側面より内側に入り込んで形成されたステップをさらに備え、表示部は、ステップの側方に位置する車体の側面であるステップ側面に形成され、認識部は、水タンクの上側及び下側にそれぞれ接続され、ステップ側面にて表示部に沿って延びる透明管を有する。このため、透明管に水タンク内の貯留量に応じて水が流入し、この透明管における水の水位に対応した目盛りを参照することにより、作業者は機体総質量の値を迅速に把握することができる。また、これら表示部及び透明管は、車体の側面より内側に入り込んで形成されたステップ側面に形成されているので、転圧機械が壁際に沿って転圧作業を実施する場合であっても転圧作業の妨げになることはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る転圧機械の側面図である。
【図2】図1のII-II線図である。
【図3】開口部及び一部が透明なキャップの概略図である。
【図4】図1の矢印A方向から視た透明管及び表示部の概略図である。
【図5】認識部及び表示部の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るに転圧機械ついて図面を参照して説明する。
図1を参照すれば、転圧機械(機体)の一種であるタイヤローラ車両1は、前後の車輪を兼用する転圧ローラ2と、この転圧ローラ2により走行する車体4とを備えている。
車体4の上部中央にはキャノピー型の運転席6が設けられている。この運転席6に対しては、車体4の側面40から入り込んで形成されたステップ8を利用して昇降することができる(図4参照)。運転席6の前方には操作スタンド10が設けられており、この操作スタンド10には車体4を操向させるためのハンドル12や計器類が設けられている。
【0018】
また、車体4の後部にはタンク装置(図示しない)が設けられており、このタンク装置は燃料タンク及び作動油タンクから構成されている。一方、車体4の前部にはエンジンルームが設けられており、このエンジンルームは開閉可能なエンジンカバー14により覆われている。エンジンルーム内にはエンジン(図示しない)及び油圧ポンプ(図示しない)が配置されている。油圧ポンプはエンジンにより駆動され、転圧ローラ2の走行用モータ等に向けて作動油タンクに貯留されている作動油を供給する。
【0019】
車体4の一部は水が貯留されるための水タンク16として形成されている。この水タンク16の内部には車体4の外部から通じる給水管路が接続されており、この給水管路には水を吸い上げるための給水ポンプ(図示しない)が設けられている。また、給水管路における水タンク16と反対側、即ち、車体4の外部側の端部にはストレーナ(図示しない)が設けられており、このストレーナは車体4の後部に収容されている。したがって、給水ポンプが駆動されると、給水ポンプはストレーナ及び給水管路を介して水を吸い上げ、水タンク16に向けて送り出す。この結果、水タンク16内に水が貯留される。
【0020】
また、車体4の上面には、水道又は他の転圧機械から水タンク30内へ給水するための給水口18が設けられており、この給水口18から水タンク30内に給水することもできる。なお、水タンク16には水タンク16に貯留されている水を排水するための排水管(図示しない)も設けられている。
【0021】
車体4の前端部及び後端部には、前後の転圧ローラ2及び路面に向けて散水するための散水ノズル50が取り付けられている。散水ノズル50は散水管路を介して水タンク16に接続されており、この散水管路には水タンク16から水を吸い上げるためのポンプ(図示しない)が設けられている。したがって、ポンプが駆動されると、水タンク16内の水は散水管路を介して吸い上げられ、散水ノズル50に向けて送り出される。この結果、散水ノズル50から転圧ローラ2及び路面に向けて水が散水される。
【0022】
なお、水タンク16内に貯留された水は転圧作業の際に転圧効率を高めるためのバラストとして機能し、また、他の転圧機械の水タンクに給水するための水源としても使用することができる。
車体4には、水タンク16内に水が貯留されていない空状態と、水タンク16内に水が完全に貯留されている満水状態との間で水タンク16内に貯留されている水の貯留量を認識するための認識部20が設けられている。図1の例では、認識部20は車体4の側面40にて上下方向に延びている。
【0023】
また、認識部20の近傍には、水タンク16が空状態であるときの最小機体総質量と、水タンク16が満水状態であるときの最大機体総質量との間で規定される機体総質量の値を表示する表示部34が設けられている。この表示部34は認識部22によって認識される水の貯留量、即ち、水タンク16内に貯留されている水の貯留量に対応して目盛り状に付されている。図の例では、表示部34は、車体4の側面40にて認識部20に沿い、最小機体総質量が9t、最大機体総質量が13tとして1t毎に表示されている。
【0024】
このため、作業者は認識部20を通じて水タンク16内に貯留されている水の貯留量(水位)を認識することができるとともに、この貯留量に対応した表示部34を参照することにより、機体総質量の値を迅速に把握することができる。また、運搬車両の最大積載質量を遵守しつつ水タンク16にできるだけ多くの水を給水することができる。したがって、給水作業における利便性が高まる。
【0025】
認識部20は、車体4の側面40にて表示部34に対応して配置され、水タンク16内に通じる開口部22を有している。図の例では、開口部22は、機体総質量の値が10t、11t、12tを表示する表示部34のそれぞれに対応した高さに設けられている。これら開口部22は、給水口18の下側にて上下方向に延び、直径が略60mmであるねじ孔として形成されている。
【0026】
開口部22は、取り外し可能なキャップ24によりそれぞれ閉塞されている。このキャップ24は略円柱形状の本体部28を有し、本体部28の外周面には開口部22のねじ孔と螺合するねじが形成されている。また、キャップ24の一方の端面には作業者が摘むための摘み部26が形成されている。摘み部26が車体4の側方に向けた状態で開口部22にねじ込まれることにより、開口部22はキャップ24により閉塞される。なお、開口部22の水タンク16側の端部にはシール部材32が設けられており、このシール部材32は開口部22がキャップ24により閉塞された際に密閉性を高める。開口部22がキャップ24により閉塞された状態から作業者が摘み部26を摘んで回転させ、開口部22からキャップ24を取り外すことができる。これにより、作業者は開口部22を通じて水タンク16内に貯留されている水の貯留量を認識することができるとともに、この開口部22に対応した表示部34(目盛り)を参照することにより、機体総質量の値を迅速に把握することができる。
【0027】
また、図2に示すように、車体4の外側における開口部22の開口面は車体4の側面と面一に形成されており、キャップ24が開口部22にねじ込まれて開口部22を閉塞しているとき、キャップ24は車体4の側面40から側方に突出することなく開口部22内に完全に収まっている。このため、タイヤローラ車両1が壁際に沿って転圧作業を実施する場合であっても開口部22及びキャップ24が転圧作業の妨げになることはない。
【0028】
さらに、開口部22を水タンク16内へ給水するための給水口として使用すれば、開口部22に対応する目盛り、即ち、機体総質量の値まで容易に給水することができる。一方、水タンク16内の水の貯留量を減らしたい際に、水タンク16から排水するための排水口として前述した排水管の代わりに開口部22を使用すれば、開口部22に対応する機体総質量の値まで容易に調節することができる。したがって、給水作業の利便性がさらに高まる。
【0029】
図3に示すように、キャップ24の少なくとも一部は透明又は半透明であることが好ましい。図の例では、キャップ24の中心部に透明部28が形成されており、この透明部28はキャップ24の軸方向に延び、その外周を本体部26により囲まれている。この場合、作業者は開口部22がキャップ24により閉塞された状態であっても、キャップ24を取り外すことなくキャップ24の透明部28を通じて水タンク16内の貯留量を認識することができる。即ち、キャップ24と開口部22とは協働して水タンク16内に貯留されている水の水位を示すための水位ゲージとして使用される。これにより、作業者は給水作業を行う前に予め水タンク30内に貯留されている水の貯留量を確認することができる。したがって、給水作業の必要性と、給水作業が必要な場合には水タンク16に貯留すべき水量とを迅速に把握することができる。
【0030】
さらに、図4を参照すれば、表示部34は、ステップ8の側方に位置する車体4の側面40であるステップ側面38に一体的に形成され、上下方向に延びている。ここでの表示部34は、最小機体総質量9tと最大機体総質量13tとの間にて1t毎の値が表示されている。
また、認識部20は水タンク16の上側及び下側にそれぞれ接続された透明管36を有している。この透明管36は透明なビニール製のチューブ形状を有し、ステップ側面38にて表示部34に沿って延びている。
【0031】
このため、透明管36内には水タンク16内の貯留量に応じて水が流入し、この透明管36における水の水位に対応した表示部34(目盛り)を参照することにより、作業者は機体総質量の値を迅速に把握することができる。また、これら表示部34及び透明管36は、車体4の側面40より内側に入り込んで形成されたステップ側面38に形成されているので、タイヤローラ車両1が壁際に沿って転圧作業を実施する場合であっても転圧作業の妨げになることはない。
【0032】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
例えば、認識部20と表示部34とを一体的に設け、水タンク16内を外部から視認可能とし、機体総質量の値に対応した形状を有する窓42としてもよい。図5を参照すれば、窓42はステップ側面38にて上下方向に互いに間隔を存して配置され、タイヤローラ車両1の最小機体総質量9tと最大機体総質量13tとの間で1t毎の値を表示している。これにより、作業者は窓42を通して水タンク16内の貯留量を認識することができるとともに、水タンク16内の貯留量に対応する窓42の形状、即ち、機体総質量の値を迅速に把握することができる。なお、窓42は車体4の側面40に設けられていてもよい。
【0033】
また、機体総質量の値はキャップ24の摘み部26が形成されている端面に表示されていてもよい。この場合、キャップ24は開口部22を閉塞したときに機体総質量の値を表示することができる。
さらに、認識部20及び表示部34は、車体4の側面40又はステップ側面38にて鉛直方向に対して斜め方向に延びていてもよい。
【0034】
また、開口部22は水平方向に並べて配置されていてもよい。この場合、1つの開口部22を給水口として使用し、その他の開口部22を水タンク16内の水の貯留量を認識するために使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 タイヤローラ車両(転圧機械)
2 転圧ローラ
4 車体
6 運転席
8 ステップ
10 操作スタンド
12 ハンドル
14 エンジンカバー
16 水タンク
18 給水口
20 認識部
22 開口部
24 キャップ
26 摘み部
28 本体部
30 透明部
32 シール部材
34 表示部
36 透明管
38 ステップ側面
40 側面
42 窓
50 散水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の車輪の少なくとも一方を兼用する転圧ローラと、
該転圧ローラにより走行する車体と、
該車体の一部を形成し、水が貯留される水タンクと
を備えた機体からなる転圧機械において、
前記車体に設けられ、前記水タンク内に水が貯留されていない空状態と、前記水タンク内に水が完全に貯留されている満水状態との間で前記水タンク内に貯留されている水の貯留量を認識するための認識部と、
前記認識部の近傍、又は前記認識部と一体的に設けられ、前記水タンクが空状態であるときの最小機体総質量と、前記水タンクが満水状態であるときの最大機体総質量との間で規定される機体総質量の値を表示する表示部と
を備えたことを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記認識部は、
前記車体の側面にて前記表示部に対応して配置され、前記水タンク内に通じる開口部と、
該開口部を閉塞すべき取り外し可能なキャップとを有することを特徴とする請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記キャップの少なくとも一部は透明又は半透明であることを特徴とする請求項2に記載の転圧機械。
【請求項4】
前記機体は、前記車体の側面より内側に入り込んで形成されたステップをさらに備え、
前記表示部は、前記ステップの側方に位置する前記車体の側面であるステップ側面に形成され、
前記認識部は、前記水タンクの上側及び下側にそれぞれ接続され、前記ステップ側面にて前記表示部に沿って延びる透明管を有することを特徴とする請求項1に記載の転圧機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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