説明

転圧機

【課題】既設の構造物を傷付けることがなく、走行可能、かつ転圧可能な転圧機を提供すること。
【解決手段】転圧機本体2に、自走式の走行装置と、土質材料を転圧する転圧装置5を備え、走行可能、かつ転圧可能な転圧機1において、転圧機本体2および転圧装置5の側方に突出するように、転圧機本体2にガイド車輪32を備えたので、ガイド車輪32は既設の構造物の側壁を転動し、転圧機1は既設の構造物の側壁と離隔して走行する。したがって、転圧機1が既設の構造物を傷付けることない。また、転圧装置5を構成する転圧体55の側部を覆う防護カバー6を転圧装置5に取り付けたので、転圧体55が既設の構造物に近接するように、転圧装置5を配設しても、転圧体55が既設の構造物の側壁を傷付けることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質材料を締め固める転圧機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設が計画されている。埋設処分施設は、掘削した地下坑道の内部に底部埋戻部と底部低透水層とを敷設した後に、躯体コンクリートを構築したものであり、躯体コンクリートの内部に低レベル放射性廃棄物を密閉収容した放射性廃棄物格納躯体を埋設可能となっている。そして、躯体コンクリートの内部に放射性廃棄物格納躯体を収容した状態でモルタルを打設することにより、躯体コンクリートの内部に放射性廃棄物が封止される。その後、躯体コンクリートの周りに低拡散層を構築した後、別途構築した側部埋戻部と低拡散層との間にベントナイト系粘土材料を転圧施工することにより、側部低透水層を構築することにしている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−12356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、側部埋戻部と低拡散層との間は、幅が略1メートル、高さが略10メートル、奥行きが略300メートルの狭隘な空間であるため、操向操作を誤った場合には、転圧機本体、あるいは、転圧装置が、低拡散層あるいは側部埋戻部を傷付けてしまう可能性があった。このように、低拡散層あるいは側部埋戻部を傷付けた場合には、補修の必要が生じ、施工者の負担が大きなものとなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、転圧機本体、あるいは転圧装置が既設の構造物を傷付けることがなく、走行可能、かつ転圧可能な転圧機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる転圧機は、転圧機本体に、自走式の走行装置と、土質材料を転圧する転圧装置とを備え、走行可能、かつ転圧可能な転圧機において、前記転圧機本体および前記転圧装置の側方に突出するように、前記転圧機本体にガイド部材を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2にかかる転圧機は、上記請求項1において、前記ガイド部材を回転自在なガイド車輪で構成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3にかかる転圧機は、上記請求項1または2において、前記転圧装置は、転圧装置を構成する転圧体の側部を覆う防護カバーを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4にかかる転圧機は、上記請求項3において、前記転圧体の前部を覆い、土質材料を敷き均す敷均板を前記防護カバーに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる転圧機は、転圧機本体および転圧装置の走行方向側方に突出するように、転圧機本体にガイド部材を備えたので、転圧機本体および転圧装置は既設の構造物の側壁と離隔して走行する。したがって、転圧機本体および転圧装置が既設の構造物を傷付けることがなく、効率的な転圧施工が可能である。
【0011】
また、本発明にかかる転圧機は、ガイド部材を回転自在なガイド車輪で構成したので、ガイド車輪が既設の構造物の側壁を転動する。したがって、ガイド車輪が既設の構造物の側壁を傷付けることがない。
【0012】
また、本発明にかかる転圧機は、転圧装置を構成する転圧体の側部を覆う防護カバーを備えたので、転圧体が既設の構造物に近接するように、転圧装置を配設しても、転圧体が既設の構造物の側壁を傷付けることがない。
【0013】
また、本発明にかかる転圧機は、転圧体の前部を覆い、土質材料を敷き均す敷均板を防護カバーに備えたので、敷均板と転圧体とを近接して配置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態にかかる転圧機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明の実施の形態にかかる転圧機を示す側面図、図2は図1に示した転圧機本体の正面図、図3は図1に示した転圧機本体の平面図、図4は図1に示した転圧装置の正面図、図5は図1に示した転圧装置の平面図である。
【0016】
本発明の実施の形態にかかる転圧機1は、自走式の転圧機であって、転圧機本体2は走行装置を備えている。本発明の実施の形態にかかる転圧機1の走行装置は、図1に示すように、車輪タイプの走行装置であって、リモートコントローラ11(図10参照)等を操作することにより、前後の方向に任意の速度で走行可能である。なお、走行装置は、車輪タイプの走行装置に限られるものではなく、履帯タイプの走行装置であっても良い。
【0017】
転圧機本体2は、転圧機本体2および後述する転圧装置5の側方に突出するように、ガイド部材3を備えている。図1〜図3に示すように、ガイド部材3は、ガイド車輪支持部材31に回動自在に支承されたガイド車輪32であって、図1および図3に示すように、転圧機本体2の一側部の前部と後部、他側部の前部と後部とに配設してある。なお、ガイド車輪32は、ゴム車輪、タイヤ車輪等任意のものを採用可能である。
【0018】
図2および図3に示すように、転圧機本体2とガイド車輪支持部材31との間には、調整シム板33が挿入可能であって、任意の厚みの調整シム板33を任意の枚数挿入することにより、ガイド車輪32の突出量を微調整可能である。なお、転圧機本体2の前部に配設したガイド車輪32と転圧機本体2の後部に配設したガイド車輪32とは、同一の高さに配設する必要はなく、図1および図2に示すように、前部に配設したガイド車輪32が後部に配設したガイド車輪32よりも高くなるように配設しても良い。
【0019】
図1に示すように、転圧機本体2の後部には、左右一対となるベース41が設けてある。これらベース41の上部には、それぞれアーム42が回動可能に支承してある。各アームは、転圧機本体2の前方斜め上方に延在した腕部42aと、腕部42aから前方斜め下方に延在した作用部42bとを有している。一方のアーム42の作用部42bと他方のアーム42の作用部42bとは、ビーム(図示せず)により接続してあり、同時に回動するようになっている。
【0020】
各アーム42の腕部42aの下方には、アーム回動用の油圧シリンダ43が配設してある。油圧シリンダ43は、基端(シリンダ側)がベース41の基部に接続してあり、先端(ロッド側)がアーム42の腕部42aに接続してある。したがって、この油圧シリンダ43を駆動すると、アーム42が回動するので、後述する転圧装置5が任意の高さとなるように回動させることが可能である。
【0021】
転圧機本体2の前部であって、各アーム42の下方となる位置には、左右一対となるストッパ44が立設してある。ストッパ44は、下降したアーム42を支持するものであり、アーム42を支持することにより、後述する転圧装置5の下降位置を規制可能である。
【0022】
アーム42の作用部42bの先端には、転圧装置取付部材45が回動可能に取り付けてある。各アーム42の作用部42bの上方には、転圧装置取付部材回動用の油圧シリンダ46が配設してある。油圧シリンダ46は、基端(シリンダ側)がアーム42の腕部42aに接続してあり、先端(ロッド側)が転圧装置取付部材45に接続してある。したがって、この油圧シリンダ46を駆動すると、転圧装置取付部材45が回動するので、後述する転圧装置5が任意の傾きとなるように、回動させることが可能である。
【0023】
転圧装置取付部材45には、断面コの字状のチャンネル部材47が間隔を開けて背中合わせとなるように取り付けてある。チャンネル部材47には、転圧機本体2の走行方向と直交する左右方向に移動可能となるように、転圧装置5(ビーム52)が取り付けてある。転圧装置取付部材45と転圧装置5との間には、図1および図4に示すように、転圧装置移動用の油圧シリンダ51が配設してある。したがって、油圧シリンダ51を駆動すると、転圧装置5を走行方向と直交する左右方向の任意の位置に移動させることが可能である。
【0024】
図1および図4に示すように、転圧装置5は、ビーム52と、複数基の転圧ユニット53とを有している(本実施の形態にかかる転圧機は、12基の転圧ユニット53を有している)。ビーム52は、板状体であり、その長手方向が転圧機本体2の走行方向と直交するように、チャンネル部材47に移動可能に取り付けてある。複数基の転圧ユニット53は、ビーム52の短手方向が複数列となるように取り付けてある(本実施の形態にかかる転圧機1は、ビーム52の短手方向が2列となるように、12基の転圧ユニット53が取り付けてある)。したがって、転圧ユニット53は、転圧機本体2の走行方向と直交する方向に配設される。そして、ビーム52が昇降すると、全ての転圧ユニット53が昇降する。
【0025】
各転圧ユニット53は、駆動部54と転圧体55とを有している。駆動部54は、転圧体55を下方に繰り出す部分であり、転圧体55は、ベントナイト系粘土材料等の土質材料を転圧する部分である。転圧体55は、土質材料を転圧する面(以下「転圧面」という)が、走行方向前方から走行方向後方に漸次側方に延在するように形成してある(図5参照)。このように構成した転圧体は、転圧面が平行四辺形(ひし形を含む)となるように形成した立方体、あるいは、転圧面が台形(二角が直角である直角台形を含む)となるように形成した立方体である。図5に示す例では、転圧面がひし形となるように形成した同一形状の転圧体55aを中央部に複数配設する一方、転圧面が直角台形となるように形成した転圧体55bを両側部に配設してある。
【0026】
したがって、このように形成した転圧体55を用いて転圧すると、施工面に筋状の未施工部分が生じることはない。これは、転圧機1が施工方向に走行しながら転圧し、転圧体55の相互間に形成される隙間によって生じる未転圧部分が漸次転圧されることによるものである。
【0027】
駆動部54は、供給された圧縮空気により独立して駆動可能であり、各転圧体55が異なるタイミングで土質材料を転圧するように構成してある。したがって、転圧体55が異なるタイミングで土質材料を転圧し、全ての転圧体55が同時に転圧することはない。また、転圧体55の繰り出し方向長さは、転圧体55の繰り出しストロークよりも大きく形成してあり、隣り合う転圧体55の一方の転圧体55が上死点に位置し、他方の転圧体55が下死点に位置する場合であっても、転圧体55が重なり合うことはない。
【0028】
ビーム52には、吊り下げた状態で防護カバー6が取り付けてある。防護カバー6は、両側部に配設した転圧体55の側部を覆うものであり、平面視コの字状を呈している。
【0029】
防護カバー6には、敷均板61が取り付けてある。敷均板61は、転圧体55の前部を覆い、土質材料を敷き均すものである。敷均板61には、長穴が形成してあり、敷き均し高さを任意に調整可能となっている。したがって、敷均板61は、図示せぬ撒出機から撒き出された土質材料を敷き均し、所定の厚みの土質材料を転圧装置5に供給可能である。なお、敷均板61は、任意の高さに設定できるように、油圧シリンダ等により昇降可能なものとしても良い。
【0030】
上述した本実施の形態にかかる転圧機は、転圧機本体2および転圧装置5の側方に突出するように、ガイド部材3を転圧機本体2に備えたので、転圧機本体2および転圧装置5が既設の構造物の側壁と離隔して走行する。したがって、転圧機本体2および転圧装置5が既設の構造物を傷付けることがない。
【0031】
また、ガイド部材3を回転自在に支承されたガイド車輪32で構成したので、ガイド車輪32は既設の構造物の側壁を転動する。したがって、ガイド車輪32が既設の構造物の側壁を傷付けることがない。
【0032】
また、転圧装置5は、両側部に配設した転圧体55の側部を覆う防護カバー6を備えたので、転圧体55が既設の構造物と近接するように、転圧装置5を配設しても、転圧体55が既設の構造物の側壁を傷付けることがない。
【0033】
また、防護カバー6に、転圧体55の前部を覆い、土質材料を敷き均す敷均板61を取り付けたので、敷均板61と転圧体55とを近接して配置できる。
【0034】
本実施の形態にかかる転圧機1は、図6に示した低レベルの放射性廃棄物の埋設処分施設7の狭隘部71に敷設する低透水層の施工に好適である。埋設処分施設7は、掘削した地下坑道の内部に底部埋戻部72と底部低透水層73とを敷設した後に、躯体コンクリート76を構築したものであり、躯体コンクリート76の内部に放射性廃棄物格納躯体75を埋設可能となっている。底部埋戻部72は、コンクリート、モルタル、あるいは、ベントナイト系粘土材料等の埋戻材料を敷設したものであり、底部低透水層73は、ベントナイト系粘土材料を転圧施工したものである。そして、躯体コンクリート76の内部に放射性廃棄物格納躯体75を収容した状態で、モルタル78を打設することにより、放射性廃棄物格納躯体75は、躯体コンクリート76の内部に封止される。その後、躯体コンクリート76の周りに低拡散層74を構築したものであって、低拡散層74は、無筋のセメント系モルタルを打設することにより構築される。狭隘部71は、低拡散層74と別途構築した側部埋戻部77との間に構成される。狭隘部71は、例えば、幅略1メートル、高さ略10メートル、奥行き略300メートルの狭隘な空間である。なお、側部埋戻部77は、底部埋戻部と同様に、コンクリート、モルタル、あるいは、ベントナイト系粘土材料等の埋戻材料により構築される。
【0035】
本実施の形態にかかる転圧機1は、図7に示すように、転圧機本体2の一側部に備えたガイド車輪32が低拡散層74の側壁を転動し、転圧機本体2の他側部に備えたガイド車輪32が側部埋戻部77の側壁を転動することにより、案内される。したがって、転圧機1は、自律走行が可能となり、転圧機1が低拡散層74および側部埋戻部77を傷付けることがなく、低透水層を構成するベントナイト系粘土材料を効率的に転圧可能である。
【0036】
また、転圧機1が低拡散層74の側壁と側部埋戻部77の側壁とに案内されるので、図8に示すように、転圧装置5を低拡散層74の側壁と側部埋戻部77の側壁とに近接して配置できる。したがって、ベントナイト系粘土材料の転圧が不十分となる箇所が生じることがない。
【0037】
さらに、図9に示すように、防護カバー6の前部に備えた敷均板61がベントナイト系粘土材料を転圧装置5の直前で敷き均すので、地下坑道の最奥部までベントナイト系粘土材料を敷き均すことができる。そして、最奥部で残留したベントナイト系粘土材料は、図示せぬ吸引装置等により、吸引される。
【0038】
本実施の形態にかかる転圧機1は、図7に示すように、転圧機本体2の一側部の前部と後部とに備えたガイド車輪32が低拡散層74の側壁を転動し、転圧機本体2の他側部の前部と後部とに備えたガイド車輪32が側部埋戻部77の側壁を転動することにより、転圧機本体2が案内され、転圧機1が自律走行するので、オペレータが転圧機1に乗車して走行方向を微妙に調整する必要がない。したがって、図10に示すように、オペレータは、低拡散層74の上から転圧機1をコントロールすれば良く、オペレータは、振動、騒音、粉塵等の厳しい作業環境を免れ、安全性が大幅に改善される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる転圧機は、土質材料の転圧施工に有用であり、特に、狭隘部における転圧施工に適している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態にかかる転圧機の側面図である。
【図2】図1に示した転圧機本体の正面図である。
【図3】図1に示した転圧機本体の平面図である。
【図4】図1に示した転圧装置の正面図である。
【図5】図1に示した転圧装置の平面図である。
【図6】低レベル放射性廃棄物の地下埋設処分施設を示す横断面図である。
【図7】側部埋戻部と低拡散層との間に構成された狭隘部を施工する転圧機を示した平面図である。
【図8】図7に示した転圧機の部分拡大平面図である。
【図9】図7に示した転圧機の部分拡大側面図である。
【図10】側部埋戻部と低拡散層との間に構成された狭隘部を施工する転圧機を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 転圧機
11 リモートコントローラ
2 転圧機本体
3 ガイド部材
31 ガイド車輪支持部材
32 ガイド車輪
33 調整シム板
5 転圧装置
51 油圧シリンダ
52 ビーム
53 転圧ユニット
54 駆動部
55 転圧体
6 防護カバー
61 敷均板
7 埋設処分施設
71 狭隘部
72 底部埋戻部
73 底部低透水層
74 低拡散層
75 放射性廃棄物格納躯体
76 躯体コンクリート
77 側部埋戻部
78 モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧機本体に、自走式の走行装置と、土質材料を転圧する転圧装置とを備え、
走行可能、かつ転圧可能な転圧機において、
前記転圧機本体および前記転圧装置の側方に突出するように、前記転圧機本体にガイド部材を備えたことを特徴とする転圧機。
【請求項2】
前記ガイド部材を回転自在なガイド車輪で構成したことを特徴とする請求項1に記載の転圧機。
【請求項3】
前記転圧装置は、転圧装置を構成する転圧体の側部を覆う防護カバーを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の転圧機。
【請求項4】
前記転圧体の前部を覆い、土質材料を敷き均す敷均板を前記防護カバーに備えたことを特徴とする請求項3に記載の転圧機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−38338(P2008−38338A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209848(P2006−209848)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】