説明

転炉絞り部のライニング構造

【課題】転炉絞り部のウエア煉瓦の脱落を効果的に防止できるようにする。
【解決手段】転炉4の鉄皮11とウエア煉瓦13の間に不定形耐火物14を流し込み施工する転炉絞り部のライニング構造である。ウエア煉瓦13と不定形耐火物14の間に間隙16を設ける。
【効果】転炉の鉄皮とウエア煉瓦の間に不定形耐火物を流し込み施工する転炉絞り部のライニング構造において、ウエア煉瓦と不定形耐火物の間に間隙を設けることで、炉内の熱サイクルによるウエア煉瓦の膨張・収縮を前記間隙で吸収することができ、ウエア煉瓦に発生する亀裂が抑制できて脱落を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉絞り部におけるライニング構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、炉底部1、直胴部2、絞り部3を有する転炉4において、絞り部3の煉瓦積み構造は、図4に示すように、鉄皮11の内面にパーマ煉瓦12を施工し、パーマ煉瓦12の内面にウエア煉瓦13を施工するのが一般的である。なお、図3中の5は交換炉底部、6は出鋼口を示す。
【0003】
しかしながら、このような構造の場合、鉄皮11が変形すると、パーマ煉瓦12、ウエア煉瓦13の施工が困難になる。仮に煉瓦積みができたとしても、図5に示すように、ウエア煉瓦13の稼動面(炉内側)に凹凸が発生する。このような施工状態では、短期間の使用でウエア煉瓦の脱落が頻繁に発生する。
【0004】
このようなことから、転炉絞り部の鉄皮変形対策として、水冷等が実施されているが、鉄皮の変形を完全に防止できていないのが実情である。
【0005】
そこで、パーマ煉瓦とウエア煉瓦の間に不定形耐火物を流し込んだ構造(例えば特許文献1)や、図6に示すように、パーマ煉瓦の代わりに不定形耐火物14を流し込む構造が提案されている(例えば特許文献2、3)。
【特許文献1】特開平1−309915号公報
【特許文献2】実開平5−37950号公報
【特許文献3】実開平5−45057号公報
【0006】
これらの特許文献1〜3で提案された構造では、鉄皮11が変形した場合でも、流し込む不定形耐火物14の厚みを調整することにより、例えば図7に示すように、ウエア煉瓦13の稼動面を凹凸なく施工することができる。なお、図6及び図7中の15は、不定形耐火物14の固定のため、鉄皮11やウエア煉瓦13に設けられたスタッドである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3で提案された構造でも、転炉操業における稼動面の加熱・冷却の繰返しによるウエア煉瓦の膨張・収縮によって、図8に示すように、ウエア煉瓦13に亀裂Cが発生して脱落する場合がある。
【0008】
これらの特許文献1〜3におけるウエア煉瓦の亀裂発生の原因は次のように考えられる。ウエア煉瓦は流し込んだ不定形耐火物と一体化されており、炉内の加熱・冷却の繰り返しによってウエア煉瓦と不定形耐火物がそれぞれ膨張・収縮する。しかしながら、膨張量が異なることにより内部に応力が発生し、その発生応力が煉瓦の許容値を超えることによりウエア煉瓦に亀裂が生じる。
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の転炉絞り部のライニング構造では、ウエア煉瓦の亀裂による脱落を効果的に防止することができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の転炉絞り部のライニング構造は、
ウエア煉瓦の脱落を効果的に防止するために、
転炉の鉄皮とウエア煉瓦の間に不定形耐火物を流し込み施工する転炉絞り部のライニング構造において、
前記のウエア煉瓦と不定形耐火物の間に、例えば0.1mm以上、10mm以下の間隙を設けたことを最も主要な特徴としている。
【0011】
本発明において、ウエア煉瓦にもスタッドが取り付けられている場合は、当該スタッドと不定形耐火物の間にも前記と同様の間隙を設けることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、転炉の鉄皮とウエア煉瓦の間に不定形耐火物を流し込み施工する転炉絞り部のライニング構造において、ウエア煉瓦と不定形耐火物の間に間隙を設けるので、炉内の熱サイクルによるウエア煉瓦の膨張・収縮を前記間隙で完全に吸収することができる。従って、ウエア煉瓦と不定形耐火物の膨張差原因による亀裂はなくなる。その結果、ウエア煉瓦の脱落は減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の転炉絞り部のライニング構造の第1の例を説明する要部断面図、図2は第2の例を説明する図1と同様の図である。
【0014】
図1は本発明のライニング構造を有する絞り部3の縦断面図であり、ウエア煉瓦13と不定形耐火物14の間に、例えば3mmの間隙16を設け、不定形耐火物14とウエア煉瓦13を分離している。
【0015】
このような構造の本発明では、転炉操業によってウエア煉瓦13の稼動面が繰り返し加熱・冷却され、ウエア煉瓦13が炉内高さ方向に膨張・収縮しても、前記間隙16の存在によって当該膨張・収縮が自由に行える。
【0016】
従って、前記間隙16は、稼動面の加熱・冷却の繰り返しによってウエア煉瓦13の炉内高さ方向の膨張・収縮代を吸収できるものであることが必要で、0.1mm以上、10mm以下の範囲が望ましい。
【0017】
間隙16が10mmを超えると、ウエア煉瓦13の緩み等の原因となる可能性がある。一方、間隙16が0.1mm未満の場合は、ウエア煉瓦13と不定形耐火物14が干渉する可能性があり、炉内高さ方向の膨張・収縮を完全に吸収できない可能性がある。
【0018】
前記間隙16を形成する手段は、図1に示すような鉄皮11にのみスタッド15を取り付けた場合は、ウエア煉瓦13の鉄皮11側にボール紙、発泡スチロール等の仕切り板を配置した後、不定形耐火物14を流し込み施工すれば良い。
【0019】
このような施工を行った場合、転炉4の稼動時には、熱によって仕切り板が焼失するか、焼失しなくても体積が減少して、ウエア煉瓦13と不定形耐火物14の間に間隙16が形成される。
【0020】
一方、図2に示すようにウエア煉瓦13にもスタッド15を取り付けた場合は、ウエア煉瓦13のスタッド15には、ビニールテープやクラフトテープなどを貼り付けたり、塗料を厚く塗った後、不定形耐火物14を流し込み施工すれば良い。
【0021】
このような施工を行った場合、転炉4の稼動時には、熱によって仕切り板やビニールテープやクラフトテープ、塗料が焼失するか、焼失しなくても体積が減少して、ウエア煉瓦13・スタッド15と不定形耐火物14の間に間隙16が形成される。
【0022】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0023】
例えば、鉄皮11にのみスタッド15を取り付けた場合のウエア煉瓦13と不定形耐火物14の間に間隙16を設ける手段は、仕切り板を配置するものに限らず、塗料を厚く塗ったものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の転炉絞り部のライニング構造の第1の例を説明する要部断面図である。
【図2】本発明の転炉絞り部のライニング構造の第2の例を説明する要部断面図である。
【図3】本発明の適用対象である転炉の概略縦断面図である。
【図4】転炉絞り部の従来の煉瓦積み構造を説明する断面図である。
【図5】図4において鉄皮が変形した場合の煉瓦積み構造を説明する断面図である。
【図6】特許文献2,3で提案された転炉絞り部の煉瓦積み構造を説明する断面図である。
【図7】図6において鉄皮が変形した場合の煉瓦積み構造を説明する断面図である。
【図8】特許文献で提案された転炉絞り部の煉瓦積み構造の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
3 絞り部
4 転炉
11 鉄皮
13 ウエア煉瓦
14 不定形耐火物
16 間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉の鉄皮とウエア煉瓦の間に不定形耐火物を流し込み施工する転炉絞り部のライニング構造において、
前記のウエア煉瓦と不定形耐火物の間に間隙を設けたことを特徴とする転炉絞り部のライニング構造。
【請求項2】
前記のウエア煉瓦と不定形耐火物の間の間隙は0.1mm以上、10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の転炉絞り部のライニング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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