説明

軸受の保守装置

【課題】軸受の保守装置及び方法において、潤滑剤の劣化を容易に且つ正確に判断することで長期間にわたる適正な軸受の動作を可能とする。
【解決手段】軸受11にグリスを供給する供給ポンプ21と、この供給ポンプ21によるグリスの供給圧力を検出する圧力センサ22と、この圧力センサ22が検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較してグリスの劣化を判定する制御装置(劣化判定装置)23とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車、原動機、船舶などに使用される軸受の保守装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、風力発電設備にあって、翼が支持されるロータヘッドは、回転軸が軸受を介してナセルに支持されている。この場合、軸受は、その潤滑性を確保するために潤滑剤としてのグリスが塗布されており、このグリスは、設備の据付時に塗布されると共に、設備の定期点検時に塗布される。しかし、風力発電設備は、周囲環境が良好とは言えず、グリスの劣化が促進されてしまう場合がある。軸受におけるグリスが劣化すると、成分の分離(粘度の低下)、固化(粘度の上昇)が起こり、そのままグリスを使用してしまった場合、摩耗粉の増加、異音の発生などが起こる。このような摩耗粉の増加や異音の発生が繰り返し起こることで、最終的に装置が損傷してしまうおそれがある。
【0003】
そのため、軸受におけるグリスの潤滑性が確保されない場合、風車発電設備を適正に運転することが困難となる。そのため、風車発電設備における軸受に対して、定期的なグリスの交換が必要となる。しかし、風力発電設備は、洋上などに設置されていることが多く、このため、定期的なグリスの交換では、設備維持が適切になされない可能性があることが懸念されている。また、環境によってグリスの劣化度合が異なる可能性が高い。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載された潤滑剤補給装置では、軌道面や転動面の性状の変化及び潤滑剤の劣化を、パッシブ型センサを用いてモニタリングしながら最適に潤滑剤を補給するようにしており、メンテナンス性や運転信頼性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−351363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した従来の潤滑剤補給装置には、パッシブ型センサにより軌道面や転動面の性状の変化及び潤滑剤の劣化をモニタリングするものであり、グリスの劣化判定が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、潤滑剤の劣化を容易に且つ正確に判断することで長期間にわたる適正な軸受の動作を可能とする軸受の保守装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の軸受の保守装置は、軸受に潤滑剤を供給する供給ポンプと、該供給ポンプによる潤滑剤の供給圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサが検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、供給ポンプにより潤滑剤を軸受に供給する圧力に基づいて潤滑剤の劣化を判定することで、簡単な構成で潤滑剤の劣化を容易に、且つ、正確に判断することができ、その結果、長期間にわたる適正な軸受の動作を可能とすることができる。
【0010】
本発明の軸受の保守装置では、前記劣化判定装置は、圧力センサが検出した供給圧力が予め設定された適正供給圧力領域より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときに潤滑剤を劣化と判定することを特徴としている。
【0011】
従って、軸受に対する潤滑剤の供給圧力が適正供給圧力領域より小さいときには、潤滑剤が分離しつつあると判断し、また、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときには、潤滑剤が固化しつつあると判断することとなり、それぞれ潤滑剤の劣化を容易に判定することができる。
【0012】
本発明の軸受の保守装置では、前記劣化判定装置が潤滑剤の劣化を判定したときに前記供給ポンプを所定時間作動して前記軸受の潤滑剤を交換する制御装置を設けることを特徴としている。
【0013】
従って、制御装置は、潤滑剤の劣化を判定したときには、供給ポンプを所定時間作動することで軸受に所定量の潤滑剤を供給して交換することとなり、軸受の健全性を確保するための早期の対応が可能となり、軸受の損傷を防止することができる。
【0014】
本発明の軸受の保守装置では、前記軸受から排出された潤滑剤中に含まれる磨耗粉の大きさを検出する磨耗粉検出センサを設け、前記制御装置は、該磨耗粉検出センサが検出した磨耗粉の大きさが予め設定された所定の大きさより大きいときに前記軸受の作動を停止することを特徴としている。
【0015】
従って、制御装置は、軸受から排出された潤滑剤中に含まれる磨耗粉の大きさが大きいときには、軸受に何らかの異常があったとしてこの軸受の作動を停止することとなり、軸受の損傷を最小限に抑えることができ、安全性を向上することができる。
【0016】
本発明の軸受の保守装置では、前記軸受から排出された潤滑剤を受け止める廃剤タンクと、該廃剤タンク内に潤滑剤を溶解させる溶解剤を供給する溶解剤供給装置と、溶解した潤滑剤と磨耗粉とを分離する分離装置とを設け、前記磨耗粉検出センサは、前記分離装置で分離された磨耗粉の大きさを検出することを特徴としている。
【0017】
従って、潤滑剤と磨耗粉とを分離してから磨耗粉の大きさを検出することで、検出精度を向上することができる。
【0018】
本発明の軸受の保守装置では、前記分離装置で分離された溶解済の潤滑剤を前記廃剤タンクに戻す溶解済潤滑剤循環装置を設けることを特徴としている。
【0019】
従って、溶解済の潤滑剤を溶解剤として再利用することで、廃潤滑剤の大量廃棄を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の軸受の保守装置によれば、軸受に潤滑剤を供給する供給ポンプと、供給ポンプによる潤滑剤の供給圧力を検出する圧力センサと、圧力センサが検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置とを設けるので、潤滑剤の劣化を容易に且つ正確に判断することで長期間にわたる適正な軸受の動作を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例2に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施例3に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施例4に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る軸受の保守装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。
【0024】
実施例1において、図1に示すように、軸受(例えば、ボール軸受)11は、リング形状をなす内側ケース12と、同じくリング形状をなす外側ケース13と、内側ケース12と外側ケース13との間に転動自在に収容される複数のボール14とを有して構成されている。駆動装置15は、回転軸16がこの軸受11によりハウジング17に回転自在に支持されている。
【0025】
実施例1の軸受の保守装置は、軸受11にグリス(潤滑剤)を供給する供給ポンプ21と、この供給ポンプ21によるグリスの供給圧力を検出する圧力センサ22と、圧力センサ22が検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置としての制御装置23とを有している。そして、制御装置23は、劣化判定装置がグリスの劣化を判定したときに供給ポンプ21を所定時間だけ作動して軸受11のグリスを交換する。
【0026】
また、制御装置(劣化判定装置)23は、圧力センサ21が検出した供給圧力が予め設定された適正供給圧力領域より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときにグリスを劣化と判定する。
【0027】
詳細に説明すると、供給ポンプ21は、中空形状をなして前部に吐出口31aを有するハウジング31と、このハウジング31内に移動自在に嵌合する押圧ピストン32と、この押圧ピストン32に押圧シャフト33を介して連結される駆動部34とから構成されている。そして、供給ポンプ21は、ハウジング31内における押圧ピストン32の前方にグリスが充填されている。従って、制御装置23が駆動部34を駆動制御すると、押圧シャフト33を介して押圧ピストン32が前進し、グリスを押圧して吐出口31aから押し出すことができる。この場合、制御装置23は、駆動部34を駆動制御することで、押圧ピストン32の押圧力、つまり、グリスの吐出圧を調整することができる。
【0028】
貯留タンク35は、グリスを貯留可能であって、補充通路36を介してハウジング31内における押圧ピストン32の前方側の空間に連結されており、補充通路36に開閉弁37が装着されている。従って、制御装置23は、開閉弁37を開閉制御することで、貯留タンク35のグリスを補充通路36からハウジング31に補充することができる。
【0029】
供給ポンプ21は、吐出口31aから軸受11に向けてグリス供給通路38が設けられており、グリス供給通路38に開閉弁39が装着されている。従って、制御装置23は、開閉弁39を開閉制御することで、ハウジング31内のグリスをグリス供給通路38から軸受11に供給することができる。この場合、供給ポンプ21は、軸受11における内側ケース12と外側ケース13との間に収容されるボール14に対してグリスを供給することができる。
【0030】
圧力センサ22は、供給ポンプ21に装着され、ハウジング31内における押圧ピストン32の前方空間に充填されたグリスの圧力を検出するものである。そのため、圧力センサ22は、駆動部34により押圧ピストン32が作動したときに、吐出口31aからグリス供給通路38を通して軸受11に供給されるグリスの供給圧力を検出することができる。そして、圧力センサ22は、検出したグリスの供給圧力を制御装置23に出力している。
【0031】
制御装置23は、圧力センサ22が検出した供給圧力と適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する。この場合、適正供給圧力とは、軸受11に既に充填されているグリスの粘度に依存するものであり、この軸受11内のグリスが経年劣化により分離していれば粘度が低くなり、固化していれば粘度が高くなる。そのため、軸受11内のグリスが潤滑剤として使用可能な適正粘度領域に対応して、供給ポンプ21による適正供給圧力領域が設定されている。従って、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域(グリスの適正粘度領域)より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域(グリスの適正粘度領域)より大きいときにグリスを劣化と判定する。
【0032】
軸受11は、前述したように、グリス供給通路38が連結されると共に、グリス排出通路40が連結されており、このグリス排出通路40は、開閉弁41が装着され、廃剤タンク42に連結されている。この廃剤タンク42は、軸受11から排出された劣化したグリスを受け止めて貯留することができる。
【0033】
そして、制御装置23は、グリスの供給圧力に基づいて軸受11内のグリスが劣化していると判定したときには、供給ポンプ21を継続して所定時間だけ作動することで、軸受11のグリスを交換する。即ち、供給ポンプ21により軸受11に新たなグリスを供給することで、このグリスの供給により、軸受11内に既に充填されていた劣化したグリスを押し出すことで、この劣化したグリスを廃剤タンク42にて排出する。
【0034】
なお、制御装置23は、所定期間(例えば、1ヶ月、半年、1年など)ごとに上述した保守点検作業を行う。即ち、制御装置23は、供給ポンプ21を作動して軸受11にグリスを供給し、圧力センサ22は、その供給圧力を検出する。ここで、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域にあれば、供給ポンプ21の作動を停止し、軸受11へのグリスの供給をやめる。一方、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域になければ、供給ポンプ21の作動を所定時間だけ継続し、軸受11のグリスを交換する。
【0035】
この場合、グリスの劣化を判定したときに作動する供給ポンプ21の作動時間は、軸受11に充填できるグリスの容量に応じて設定されるものであり、例えば、タイマにより計測時間、グリス供給通路38に設けた流量センサの検出結果に基づいて、供給ポンプ21の作動停止を行えばよいものである。
【0036】
このように実施例1の軸受の保守装置にあっては、軸受11にグリスを供給する供給ポンプ21と、この供給ポンプ21によるグリスの供給圧力を検出する圧力センサ22と、この圧力センサ22が検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較してグリスの劣化を判定する制御装置(劣化判定装置)23とを設けている。
【0037】
従って、供給ポンプ21によりグリスを軸受11に供給する圧力に基づいてグリスの劣化を判定することで、簡単な構成でグリスの劣化を容易に、且つ、正確に判断することができ、その結果、長期間にわたる適正な軸受11の動作を可能とすることができる。
【0038】
また、実施例1の軸受の保守装置では、制御装置23は、圧力センサ22が検出した供給圧力が予め設定された適正供給圧力領域より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときにグリスを劣化と判定している。従って、軸受11に対するグリスの供給圧力が適正供給圧力領域より小さいときには、グリスが分離しつつあると判断し、また、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときには、グリスが固化しつつあると判断することとなり、それぞれグリスの劣化を容易に判定することができる。
【0039】
また、実施例1の軸受の保守装置では、制御装置23がグリスの劣化を判定したときに、供給ポンプ21を所定時間作動して軸受11のグリスを交換している。従って、軸受11の健全性を確保するための早期の対応が可能となり、軸受11の損傷を防止することができる。
【実施例2】
【0040】
図2は、本発明の実施例2に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
実施例2の軸受の保守装置は、図2に示すように、軸受11にグリスを供給する供給ポンプ21と、供給ポンプ21によるグリスの供給圧力を検出する圧力センサ22と、圧力センサ22が検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置としての制御装置23とを有している。そして、制御装置23は、劣化判定装置がグリスの劣化を判定したときに供給ポンプ21を所定時間だけ作動して軸受11のグリスを交換する。
【0042】
詳細に説明すると、供給ポンプ21は、ハウジング31内に押圧ピストン32が移動自在に支持され、この押圧ピストン32に押圧シャフト33を介して駆動部34が連結されて構成されている。貯留タンク35は、補充通路36を介してハウジング31内における押圧ピストン32の前方側の空間に連結されている。また、供給ポンプ21は、吐出口31aから軸受11に向けてグリス供給通路38が設けられている。
【0043】
圧力センサ22は、駆動部34により押圧ピストン32が作動したときに、吐出口31aからグリス供給通路38を通して軸受11に供給されるグリスの供給圧力を検出することができ制御装置23は、圧力センサ22が検出した供給圧力と適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する。この場合、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときにグリスを劣化と判定する。
【0044】
軸受11は、グリス供給通路38が連結されると共に、グリス排出通路40が連結されており、このグリス排出通路40は、廃剤タンク42に連結されている。この廃剤タンク42は、軸受11から排出された劣化したグリスを受け止めて貯留することができる。
【0045】
そして、実施例2では、軸受11から排出されたグリス中に含まれる磨耗粉の大きさを検出する磨耗粉検出センサとしてカメラ51を設け、制御装置23は、カメラ51が撮影した画像に基づいて検出した磨耗粉の大きさが予め設定された所定の大きさより大きいときに軸受11の作動を停止する。
【0046】
この場合、軸受11から排出されたグリスを受け止める廃剤タンク42と、この廃剤タンク42内にグリスを溶解させる溶解剤を供給する溶解剤供給装置52と、溶解したグリスと磨耗粉とを分離する分離装置53とを設け、カメラ51は、分離装置53で分離された磨耗粉を撮影する。
【0047】
詳細に説明すると、廃剤タンク42は、上方が開口した容器であり、下部に回転子54aを回転可能なスターラ54が設けられている。また、廃剤タンク42は、モータ55により旋回可能な攪拌翼55aが設けられている。更に、廃剤タンク42は、外周部にヒータ56が設けられている。
【0048】
溶解剤供給装置52は、溶剤タンク52aと、溶剤供給通路52bと、開閉弁52cから構成され、制御装置23が開閉弁52cを開閉することで、所定量の溶剤を廃剤タンク42に供給可能となっている。分離装置53は、中空状をなすハウジング53aと、グリス噴射機53bと、メッシュからなるコンベア53cと、ブレード53dと、分離したと磨耗粉を受け止めるケース53eとから構成されている。そして、分離装置53は、廃剤タンク42で溶解剤により溶解したグリスをグリス噴射機53bに供給するグリス搬送通路57が設けられ、開閉弁58が装着されており、制御装置23が開閉弁58を開閉することで、所定量の溶解したグリスを分離装置53に供給可能となっている。
【0049】
従って、制御装置23は、保守点検作業を行うとき、供給ポンプ21を作動して軸受11にグリスを供給し、圧力センサ22は、その供給圧力を検出する。ここで、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域にあれば、供給ポンプ21の作動を停止し、軸受11へのグリスの供給をやめる。一方、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域になければ、供給ポンプ21の作動を所定時間だけ継続し、軸受11のグリスを交換する。
【0050】
このとき、制御装置23は、グリスの供給圧力に基づいて軸受11内のグリスの劣化を判定すると、供給ポンプ21を継続して所定時間だけ作動し、軸受11にグリスを供給する。すると、軸受11内に既に充填されていた劣化したグリスが押し出されることで、この劣化したグリスが廃剤タンク42にて排出される。制御装置23は、廃剤タンク42に排出されたグリスの量に応じて、溶解剤供給装置52により所定量の溶解剤を廃剤タンク42に供給する。このとき、ヒータ56が作動して廃剤タンク42内のグリス及び溶解剤を加熱すると共に、スターラ54により回転子54aが作動し、モータ55により攪拌翼55aが作動することで、廃剤タンク42内のグリス及び溶解剤が攪拌され、良好に混合される。
【0051】
この廃剤タンク42内で良好に混合して溶解したグリスは、グリス搬送通路57を通して分離装置53に搬送され、グリス噴射機53bからケース53e内に噴射される。すると、コンベア53cはメッシュであることから、溶解したグリスはこのコンベア53cを通過して落下する一方、混在していた軸受11の磨耗粉は、コンベア53c上に分離され、ブレード53dにより掻き落とされてケース53eに受け止められる。
【0052】
カメラ51は、この分離装置53で分離された磨耗粉を撮影しており、撮影画像を制御装置23に出力する。制御装置23は、このカメラ51が撮影した画像に基づいて検出された磨耗粉の大きさを画像処理により計測する。そして、制御装置23は、計測した磨耗粉の大きさ(粒径)が予め設定された所定の大きさ(粒径)より大きいときには、軸受11の作動を停止する。具体的に、制御装置23は、駆動装置15の作動を停止するが、このとき、アラーム59を作動するようにしてもよい。なお、軸受11の磨耗粉は、一般的に、鉄、銅などであり、粒径が1mmより大きいときに軸受11(駆動装置15)の作動を停止する。また、所定量のグリス内に、粒径が1mmより大きい磨耗粉が1つでも検出されたら軸受11(駆動装置15)の作動を停止するようにしてもよい。
【0053】
このように実施例2の軸受の保守装置にあっては、軸受11から排出されたグリス中に含まれる磨耗粉の大きさを検出するカメラ51を設け、制御装置23は、カメラ51が撮影した画像に基づいて磨耗粉の大きさが予め設定された所定の大きさより大きいときに軸受11の作動を停止している。従って、制御装置23は、軸受11から排出されたグリス中に含まれる磨耗粉の大きさが大きいときには、軸受11に何らかの異常があったとし、この軸受11の作動(駆動装置15の作動)を停止することとなり、軸受11の損傷を最小限に抑えることができ、安全性を向上することができる。
【0054】
実施例2の軸受の保守装置では、軸受11から排出されたグリスを受け止める廃剤タンク42と、廃剤タンク42内にグリスを溶解させる溶解剤を供給する溶解剤供給装置52と、溶解した潤滑剤と磨耗粉とを分離する分離装置53とを設け、カメラ51は、分離装置53で分離された磨耗粉を撮影するようにしている。従って、グリスと磨耗粉とを分離してから磨耗粉の大きさを検出することで、検出精度を向上することができる。
【実施例3】
【0055】
図3は、本発明の実施例3に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
実施例3の軸受の保守装置は、図3に示すように、軸受11にグリスを供給する供給ポンプ21と、供給ポンプ21によるグリスの供給圧力を検出する圧力センサ22と、圧力センサ22が検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置としての制御装置23とを有している。そして、制御装置23は、劣化判定装置がグリスの劣化を判定したときに供給ポンプ21を所定時間だけ作動して軸受11のグリスを交換する。
【0057】
詳細に説明すると、供給ポンプ21は、ハウジング31内に押圧ピストン32が移動自在に支持され、この押圧ピストン32に押圧シャフト33を介して駆動部34が連結されて構成されている。貯留タンク35は、補充通路36を介してハウジング31内における押圧ピストン32の前方側の空間に連結されている。また、供給ポンプ21は、吐出口31aから軸受11に向けてグリス供給通路38が設けられている。
【0058】
圧力センサ22は、駆動部34により押圧ピストン32が作動したときに、吐出口31aからグリス供給通路38を通して軸受11に供給されるグリスの供給圧力を検出することができ制御装置23は、圧力センサ22が検出した供給圧力と適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する。この場合、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときにグリスを劣化と判定する。
【0059】
軸受11は、グリス供給通路38が連結されると共に、グリス排出通路40が連結されており、このグリス排出通路40は、廃剤タンク42に連結されている。この廃剤タンク42は、軸受11から排出された劣化したグリスを受け止めて貯留することができる。そして、軸受11から排出されたグリス中に含まれる磨耗粉の大きさを検出する磨耗粉検出センサとしてカメラ51を設け、制御装置23は、カメラ51が撮影した画像に基づいて検出した磨耗粉の大きさが予め設定された所定の大きさより大きいときに軸受11の作動を停止する。
【0060】
また、実施例3では、分離装置53で分離された溶解済のグリスを廃剤タンク42に戻す溶解済潤滑剤循環装置61を設けている。この溶解済潤滑剤循環装置61は、溶解済グリス貯留タンク61aと、溶解済グリス供給通路61bと、開閉弁61cから構成され、制御装置23が開閉弁61cを開閉することで、所定量の溶解済グリスを廃剤タンク42に供給可能となっている。
【0061】
また、分離装置43は、ハウジング53aの下部に排出通路62が連結され、この排出通路62は、2つに分岐され、一方は廃棄通路62aとなり、開閉弁63が装着され、他方は、循環通路62bとなって溶解済グリス貯留タンク61aに連結され、開閉弁64が装着されている。なお、この開閉弁63,64は、制御装置23により開閉可能となっている。
【0062】
従って、制御装置23は、保守点検作業を行うとき、供給ポンプ21を作動して軸受11にグリスを供給し、圧力センサ22は、その供給圧力を検出する。ここで、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域にあれば、供給ポンプ21の作動を停止し、軸受11へのグリスの供給をやめる。一方、制御装置23は、グリスの供給圧力が適正供給圧力領域になければ、供給ポンプ21の作動を所定時間だけ継続し、軸受11のグリスを交換する。
【0063】
このとき、制御装置23は、グリスの供給圧力に基づいて軸受11内のグリスの劣化を判定すると、供給ポンプ21を継続して所定時間だけ作動し、軸受11にグリスを供給する。すると、軸受11内に既に充填されていた劣化したグリスが押し出されることで、この劣化したグリスが廃剤タンク42にて排出される。制御装置23は、廃剤タンク42に排出されたグリスの量に応じて、溶解剤供給装置52により所定量の溶解剤を廃剤タンク42に供給する。このとき、ヒータ56が作動して廃剤タンク42内のグリス及び溶解剤を加熱すると共に、スターラ54により回転子54aが作動し、モータ55により攪拌翼55aが作動することで、廃剤タンク42内のグリス及び溶解剤が攪拌され、良好に混合される。
【0064】
この廃剤タンク42内で良好に混合して溶解したグリスは、グリス搬送通路57を通して分離装置53に搬送され、グリス噴射機53bからケース53e内に噴射される。すると、コンベア53cはメッシュであることから、溶解したグリスはこのコンベア53cを通過して落下する一方、混在していた軸受11の磨耗粉は、コンベア53c上に分離され、ブレード53dにより掻き落とされてケース53eに受け止められる。
【0065】
カメラ51は、この分離装置53で分離された磨耗粉を撮影しており、撮影画像を制御装置23に出力する。制御装置23は、このカメラ51が撮影した画像に基づいて検出された磨耗粉の大きさを画像処理により計測する。そして、制御装置23は、計測した磨耗粉の大きさ(粒径)が予め設定された所定の大きさ(粒径)より大きいときには、軸受11の作動を停止する。具体的に、制御装置23は、駆動装置15の作動を停止するが、このとき、アラーム59を作動するようにしてもよい。
【0066】
その後、分離装置53で分離された溶解済グリスは、排出通路62、循環通路62b、開閉弁64を通って溶解済潤滑剤循環装置61の溶解済グリス貯留タンク61aに戻される。そして、制御装置23は、溶解剤供給装置52に変えて、この溶解済潤滑剤循環装置61を作動することで、廃剤タンク42内の劣化したグリスを溶解する。そして、溶解済グリスを所定回数循環したら、排出通路62、廃棄通路62a、開閉弁63を通して廃棄処分とする。
【0067】
このように実施例3の軸受の保守装置にあっては、分離装置53で分離された溶解済グリスを廃剤タンク42に戻す溶解済潤滑剤循環装置61を設けている。従って、溶解済グリスを溶解剤として再利用することで、廃棄するグリス量を低減することができる。
【実施例4】
【0068】
図4は、本発明の実施例4に係る軸受の保守装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
実施例4の軸受の保守装置は、図4に示すように、グリスの溶解剤として、廃棄グリスを使用可能としている。即ち、廃棄グリス貯留タンク71は、油圧機器72から供給通路73を介して廃棄グリスを供給可能となっており、開閉弁74が装着されている。また、廃棄グリス貯留タンク71は、廃剤タンク42に延びる供給通路75が設けられ、開閉弁76が設けられている。制御装置23は、開閉弁74を開閉することで、所定量の廃棄グリスを廃棄グリス貯留タンク71に供給可能であり、開閉弁76を開閉することで、所定量の廃棄グリスを廃剤タンク42に供給可能となっている。
【0070】
なお、この廃棄グリス貯留タンク71は、溶解剤供給装置52や溶解済潤滑剤循環装置61と併用して使用することが望ましい。
【0071】
このように実施例4の軸受の保守装置にあっては、廃棄グリス貯留タンク71を設け、グリスの溶解剤として、廃棄グリスを使用可能としている。従って、廃棄するグリス量を低減することができる。
【0072】
なお、上述した各実施例にて、磨耗粉検出センサをカメラとしたが、この構成に限定されるものではなく、レーザセンサや超音波センサなどを用いて磨耗粉の大きさを検出してもよい。また、グリスを溶解してから磨耗粉を分離してその大きさを検出したが、例えば、グリス排出通路40などの通路を配管とし、この配管内のグリスに含まれる磨耗粉をレーザセンサや超音波センサなどによりその大きさを検出してもよい。
【符号の説明】
【0073】
11 軸受
21 供給ポンプ
22 圧力センサ
23 制御装置(劣化判定装置)
42 廃剤タンク
51 カメラ(磨耗粉検出センサ)
52 溶解剤供給装置
53 分離装置
61 溶解済潤滑剤循環装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受に潤滑剤を供給する供給ポンプと、
該供給ポンプによる潤滑剤の供給圧力を検出する圧力センサと、
該圧力センサが検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置と、
を備えることを特徴とする軸受の保守装置。
【請求項2】
前記劣化判定装置は、圧力センサが検出した供給圧力が予め設定された適正供給圧力領域より小さいとき、または、供給圧力が適正供給圧力領域より大きいときに潤滑剤を劣化と判定することを特徴とする請求項1に記載の軸受の保守装置。
【請求項3】
前記劣化判定装置が潤滑剤の劣化を判定したときに前記供給ポンプを所定時間作動して前記軸受の潤滑剤を交換する制御装置を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の軸受の保守装置。
【請求項4】
前記軸受から排出された潤滑剤中に含まれる磨耗粉の大きさを検出する磨耗粉検出センサを設け、前記制御装置は、該磨耗粉検出センサが検出した磨耗粉の大きさが予め設定された所定の大きさより大きいときに前記軸受の作動を停止することを特徴とする請求項3に記載の軸受の保守装置。
【請求項5】
前記軸受から排出された潤滑剤を受け止める廃剤タンクと、該廃剤タンク内に潤滑剤を溶解させる溶解剤を供給する溶解剤供給装置と、溶解した潤滑剤と磨耗粉とを分離する分離装置とを設け、前記磨耗粉検出センサは、前記分離装置で分離された磨耗粉の大きさを検出することを特徴とする請求項4に記載の軸受の保守装置。
【請求項6】
前記分離装置で分離された溶解済の潤滑剤を前記廃剤タンクに戻す溶解済潤滑剤循環装置を設けることを特徴とする請求項5に記載の軸受の保守装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−154472(P2012−154472A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16656(P2011−16656)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】