説明

軸状部品の成形方法及び成形用金型及び軸状成形体

【課題】軸状の成形品を、反り、変形を少なく高精度に生産できる、軸状部品の成形方法を提供する。
【解決手段】中空状の軸状部品を成形するための軸状部品の成形方法であって、金型のキャビティ15,16内に、軸状部品の中空部を成形するための中心ピン21を挿入する挿入工程と、キャビティ内に溶融樹脂を射出する射出工程と、中空部A,B,Cに圧縮ガスを注入する注入工程と、中心ピン21を中空部から退避させながら、ガスを中空部に充填する充填工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂から成形されるローラーやスクリュー等の軸状の成形品を、反り、変形を少なく高精度に生産できる、軸状部品の成形方法及び成形用金型及び軸状成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ローラーやスクリューなど熱可塑性樹脂によって形成される軸状の部品は、通常射出成形法によって成形される。この場合、軸の直径がφ5以上であるときには、軸部の樹脂の冷却の不均衡によって軸部が反り、寸法精度が悪化する上、反りを低減させるために成形サイクルを長くする傾向になり生産性の低下も生ずる。
【0003】この対策として、例えば特開平7−100961号公報に開示されているように、軸の中心部に加圧流体を充填する中空射出成形法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この方法は、図7に示すように、成形機のノズル当接部11から樹脂を射出し、その後、成形機のノズル当接部11から加圧流体を充填させると、スプルー・ランナー12、ゲート13を通過して製品の軸部15の中心部である高温部A、B、Cに中空部が形成される中空射出成形法であるが、加圧流体の充填末端部D部の先にA、B、C、Dに溜まっていた樹脂が溜り、末端部G部にボテ肉として残る。
【0005】A、B、C、Dに充填された加圧流体によって軸は均圧状態になり、寸法精度も向上する傾向になるが、ボテ肉部G部との冷却の不均衡が増大するため、軸部が反り、寸法精度が悪化する。
【0006】このボテ肉部G部との冷却の不均衡を解消するために、図8のような捨てキャビ18を形成し、そこにA、B、C、Dに溜まっていた樹脂が溜まる様にし、軸部にボテ肉部ができないようにする方法も提案されている。
【0007】しかしながら、どちらの方法でもローラー部16ではローラー軸部15より中空内部のヒケ部が安定しないことや、ローラー軸15の円周上の肉厚が金型温度の不均衡によって安定しないことなどから、軸部の反り寸法精度が悪化する傾向がある。また、成形サイクル的にもボテ肉形状Gがあるため成形サイクルが短縮されないという問題もある。
【0008】従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸状の成形品を、反り、変形を少なく高精度に生産できる、軸状部品の成形方法及び成形用金型及び軸状成形体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる軸状部品の成形方法は、中空状の軸状部品を成形するための軸状部品の成形方法であって、金型のキャビティ内に、前記軸状部品の中空部を成形するための中心ピンを挿入する挿入工程と、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出する射出工程と、前記中空部に圧縮ガスを注入する注入工程と、前記中心ピンを前記中空部から退避させながら、前記ガスを前記中空部に充填する充填工程とを具備することを特徴としている。
【0010】また、この発明に係わる軸状部品の成形方法において、前記注入工程では、前記金型のスプルー及びランナーを介して前記中空部に圧縮ガスを注入することを特徴としている。
【0011】また、この発明に係わる軸状部品の成形方法において、前記注入工程では、前記中心ピン内に形成された流体通路を介して前記中空部に圧縮ガスを注入することを特徴としている。
【0012】また、この発明に係わる軸状部品の成形方法において、前記中心ピンの先端部に形成され、前記流体通路に接続された開口部から前記中空部に圧縮ガスを注入することを特徴としている。
【0013】また、本発明に係わる成形用金型は、中空状の軸状部品を成形するための成形用金型であって、前記軸状部品を成形するためのキャビティと、該キャビティ内に挿入されるところの、中空部を成形するための中心ピンと、該中心ピンを前記キャビティ内に進入及び退避させるための駆動手段と、前記中空部に圧縮ガスを注入するための流体通路とを具備することを特徴としている。
【0014】また、この発明に係わる成形用金型において、前記流体通路は、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出するためのスプルー及びランナーから構成されていることを特徴としている。
【0015】また、この発明に係わる成形用金型において、前記流体通路は、前記中心ピンの内部に形成されていることを特徴としている。
【0016】また、この発明に係わる成形用金型において、前記中心ピンの先端部には、前記流体通路に接続され、前記中空部内に圧縮ガスを注入するための開口部が設けられていることを特徴としている。
【0017】また、本発明に係わる軸状成形体は、請求項1に記載の軸状部品の成形方法により成形されたことを特徴としている。
【0018】また、本発明に係わる軸状成形体は、請求項5に記載の成形用金型により成形されたことを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明するのであるが、その前に、本実施形態の概要について説明する。
【0020】本実施形態においては、、図1のようなローラー軸15を成形するキャビティの中心に金型ピン21を設置して、金型に成形機のノズル当接部11から樹脂を射出し、その後、成形機のノズル当接部11から加圧ガスを充填させ、加圧ガスの圧力が増加したと同時に油圧シリンダー23を後退させながら、更に加圧ガスの圧力が安定するように充填し、ローラー軸15の端部から金型ピン21が抜けきらない状態で加圧ガスでローラー軸15の中空内部を加圧させることでA、B、C、D(図7参照)に溜まっていた樹脂を押しのける。これにより、余分な樹脂残りが生じにくいのでローラー部16(図2参照)での中空内部のヒケ部が安定し易くなる。また金型ピン21によりローラー軸15の中空内部を形成するため、ローラー軸15の円周上の肉厚が金型温度の不均衡によって安定しないなどの問題による軸部の反り寸法精度の悪化を防止できる。
【0021】以下に、一実施形態の軸状部品の成形方法について説明する。
【0022】図1は、ローラーやスクリュー等の軸状の部品を成形するための金型の構成図である。固定側は固定側取り付け板1と固定側型板2を備え、可動側は可動側取り付け板4と、可動側型板3と、ローラー軸製品15を金型から取り出すためのエジェクターピン7と、それを移動可能に固定しているエジェクタープレート5,6と、スペーサー8とを備えている。ローラー軸15を成形するためのキャビティは、その中心部に金型ピン21が出入り可能になされており、そのピンを移動させるために油圧シリンダー23と接続ピン22が配置されている。
【0023】図2は、キャビティ内に樹脂が充填された状態を示した図である。成形機のノズル当接部11からスプルー・ランナー12とゲート13を経由して、ローラー軸15とローラー部16に、熱可塑性樹脂が、金型ピン21が軸の中心部に挿入されている状態で充填される。
【0024】その後、図3のように、成形機のノズル当接部11から加圧ガスをスプル・ランナーA、ローラー軸の端部B、ローラー軸部Cに順次充填する。その時加圧ガスの充填圧力が増大してから、金型ピン21を、油圧シリンダー23を動作させてゆっくり後退させる。金型ピン21がローラー軸15の端部まで移動したら、図4R>4に示すようにローラー軸15の内径部から外れない位置で停止させ、ローラー軸15の中空の内面部を加圧ガスで保圧する。これにより、寸法精度の安定した中空射出成形品が成形できる。
【0025】また、成形機のノズル当接部11から加圧ガスを充填させるのではなく、図5に示すように、金型ピン21の内部に加圧ガスが通過できる加圧流体通路34とスリット形状33(図6参照)を金型ピン21とガス通路ピン32によって形成し、熱可塑性樹脂が充填されてから金型ピン21の先端部のスリット部33より加圧ガスを充填させながら、油圧シリンダー23によって金型ピン21を後退させ中空の内面部に加圧ガスを保圧させるようにしてもよい。そして、寸法精度の安定した中空射出成形品を形成する。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ローラーやスクリューなど熱可塑性樹脂によって形成される軸状部品の内部を中空に形成し、部品の軽量化を図ると共に、軸方向の反りを低減し、寸法の安定化を図り、肉厚の均肉化による成形サイクル短縮が図れる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の金型の構造を示す側断面図である。
【図2】金型のキャビティ内に樹脂が充填された様子を示す図である。
【図3】金型ピンを後退させる途中を示す図である。
【図4】金型ピンが完全に後退した状態を示す図である。
【図5】金型の変形例を示す図である。
【図6】変形例の金型の金型ピンの先端部を拡大した断面図である。
【図7】従来の中空射出成形を示す図である。
【図8】従来の中空射出成形を示す図である。
【符号の説明】
1 固定側取り付け板
2 固定側型板
3 可動側型板
4 可動側取り付け板
5 エジェクタープレート(上)
6 エジェクタープレート(下)
7 エジェクターピン
8 スペーサーブロック
11 成形機のノズル当接部
12 スプルー・ランナー
13 ゲート
14 ローラ軸の端部
15 ローラ軸
16 ローラ部
17 捨てキャビのゲート
18 捨てキャビ
21 ローラー部の金型ピン
22 ローラー部の金型ピン接続軸
23 油圧シリンダー
24 ローラー部の端部
31 加圧流体通路ピンの先端部
32 加圧流体通路ピン
33 加圧流体通路スリット
34 加圧流体通路
35 加圧流体注入装置
A スプルー・ランナーの中空部
B 軸端部の中空部
C ローラー軸部の中空部
D 加圧流体充填端末部
G ボテ肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 中空状の軸状部品を成形するための軸状部品の成形方法であって、金型のキャビティ内に、前記軸状部品の中空部を成形するための中心ピンを挿入する挿入工程と、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出する射出工程と、前記中空部に圧縮ガスを注入する注入工程と、前記中心ピンを前記中空部から退避させながら、前記ガスを前記中空部に充填する充填工程とを具備することを特徴とする軸状部品の成形方法。
【請求項2】 前記注入工程では、前記金型のスプルー及びランナーを介して前記中空部に圧縮ガスを注入することを特徴とする請求項1に記載の軸状部品の成形方法。
【請求項3】 前記注入工程では、前記中心ピン内に形成された流体通路を介して前記中空部に圧縮ガスを注入することを特徴とする請求項1に記載の軸状部品の成形方法。
【請求項4】 前記中心ピンの先端部に形成され、前記流体通路に接続された開口部から前記中空部に圧縮ガスを注入することを特徴とする請求項3に記載の軸状部品の成形方法。
【請求項5】 中空状の軸状部品を成形するための成形用金型であって、前記軸状部品を成形するためのキャビティと、該キャビティ内に挿入されるところの、中空部を成形するための中心ピンと、該中心ピンを前記キャビティ内に進入及び退避させるための駆動手段と、前記中空部に圧縮ガスを注入するための流体通路とを具備することを特徴とする成形用金型。
【請求項6】 前記流体通路は、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出するためのスプルー及びランナーから構成されていることを特徴とする請求項5に記載の成形用金型。
【請求項7】 前記流体通路は、前記中心ピンの内部に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の成形用金型。
【請求項8】 前記中心ピンの先端部には、前記流体通路に接続され、前記中空部内に圧縮ガスを注入するための開口部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の成形用金型。
【請求項9】 請求項1に記載の軸状部品の成形方法により成形されたことを特徴とする軸状成形体。
【請求項10】 請求項5に記載の成形用金型により成形されたことを特徴とする軸状成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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