説明

軽量セメントパネル及びこの軽量セメントパネルの壁面取付け方法

【課題】 基布材とモルタル類を組み合わせて形成することで、パネルの板厚を薄く形成させて軽量化を達成させながらモルタル類層の強度的脆さを補強してモルタル類層の割れを防止できると共に、難燃性を有する軽量セメントパネルの提供。
【解決手段】 基布材の表面全面にモルタル類を塗布することで形成した全面モルタル類層が形成されている。前記全面モルタル類層の表面に塗装を施すことができる。施工に際しては、取付け対象となる壁面にモルタル類を塗布させ、この壁面側モルタル類層が乾燥しないうちに軽量セメントパネルの裏面を接着貼付させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に取付けて使用する軽量セメントパネル及びこの軽量セメントパネルの壁面取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート擁壁等の壁面に取付けて使用するパネルとしては、コンクリートにより形成されたコンクリートパネルが知られている(特許文献1参照)。
このコンクリートパネルは、一定の強度は有するが、重量が重く、運搬や壁面への取付け作業に多くの労力を必要とする。
【0003】
そこで、パネルの軽量化を目的としてモルタル類を用いてパネルを形成することが考えられる。
このように、モルタル類を用いて形成されたパネルは、軽量に形成できるため持ち運びが楽であり、しかも壁面への取付け作業が簡単にできるという利点がある。
しかしながら、単にモルタル類だけで形成されたパネルは、強度的に脆いという問題があり、その強度を補うためにはパネルの板厚を厚くする必要があり、これでは軽量化とは逆行してしまう。
【0004】
又、モルタル類だけで形成されたパネルは、軽量化のために板厚を薄く形成させると、どうしても反り変形が生じる。
その反り変形をフラットな状態に矯正しようとすると、パネルにヒビ割れが生じ、このヒビ割れによってバラバラに破壊してしまうという問題が生じる。
【特許文献1】特開2004−162435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基布材を用いることで、パネルの板厚を薄く形成させて軽量化を達成させながらモルタル類層の強度的脆さを補強してモルタル類層の割れを防止できると共に、難燃性を有する軽量セメントパネルを提供することを第1の課題とし、この軽量セメントパネルを壁面に取付ける作業が簡単かつ確実にできるようにした軽量セメントパネルの壁面取付け方法を提供することを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
なお、本発明でいう「モルタル類」には、セメントと砂を水で練ったモルタル(以下「砂モルタル」という)、セメントと微細砂(例えば7号)を水で練ったモルタル(以下「微細砂モルタル」という)、セメントを水で練ったセメントペーストを含むものとする。
【0007】
上記の第1の課題を解決するために、本発明(請求項1)の軽量セメントパネルは、
基布材の表面全面にモルタル類を塗布することで形成した全面モルタル類層が形成されている構成とした。
【0008】
又、本発明(請求項2)の軽量セメントパネルは、
請求項1記載の軽量セメントパネルにおいて、前記全面モルタル類層の表面に塗装が施されている構成とした。
【0009】
又、本発明(請求項3)の軽量セメントパネルは、
基布材の表面にモルタル類を部分的に塗布することで形成した複数の部分モルタル類層が形成され、
隣り合う部分モルタル類層の間に目地部が形成されている構成とした。
【0010】
又、本発明(請求項4)の軽量セメントパネルは、
請求項3記載の軽量セメントパネルにおいて、前記部分モルタル類層又は/及び目地部の表面に塗装が施されている構成とした。
【0011】
又、本発明(請求項5)の軽量セメントパネルは、
基布材の内部に含浸してモルタル類含浸部が形成されると共に、このモルタル類含浸部と一体のモルタル類層が基布材の表面に形成されている構成とした。
【0012】
又、本発明(請求項6)の軽量セメントパネルは、
請求項5記載の軽量セメントパネルにおいて、前記モルタル類層の表面に塗装が施されている構成とした。
【0013】
上記の第2の課題を解決するために、本発明(請求項7)の軽量セメントパネルの壁面取付け方法は、
請求項1〜6のいずれかに記載の軽量セメントパネルを壁面に取付けるための方法であって、
取付け対象となる壁面にモルタル類を塗布させ、この壁面側モルタル類層が乾燥しないうちに軽量セメントパネルの裏面を接着貼付させる構成とした。
【0014】
又、本発明(請求項8)の軽量セメントパネルの壁面取付け方法は、
請求項1〜6のいずれかに記載の軽量セメントパネルを壁面に取付けるための方法であって、
軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布させ、このパネル側モルタル類層が乾燥しないうちに取付け対象となる壁面に接着貼付させる構成とした。
【0015】
又、本発明(請求項9)の軽量セメントパネルの壁面取付け方法は、
請求項1〜6のいずれかに記載の軽量セメントパネルを壁面に取付けるための方法であって、
取付け対象となる壁面にモルタル類を塗布させ、前記軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布させ、前記壁面側モルタル類層及びパネル側モルタル類層が乾燥しないうちに壁面側モルタル類層にパネル側モルタル類層を接着貼付させる構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軽量セメントパネル(請求項1)は、基布材とモルタル類を組み合わせて形成したもので、基布材によって引っ張りに対する十分な強度を持たせることができるし、基布材の繊維間に形成された多数の隙間にモルタル類が侵入することで、基布材とモルタル類層との一体性を強固にすることができる。
これにより、強度的に脆いモルタル類層にひび割れが生じたとしても基布材によってモルタル類層がバラバラ分解してしまうのを防止することができる。
本発明の軽量セメントパネル(請求項1)は、パネルの板厚を薄く形成させて軽量化を達成させることができるもので、従来のようにモルタル類だけを用いて形成したパネルが軽量パネルであるとすれば、本発明の軽量セメントパネルは基布材とモルタル類を組み合わせて形成したものであるため超軽量パネルといっても過言ではない。不織布とモルタル類の物性を相互に補完した超軽量パネルである。
このようにパネルの板厚を薄く形成させながらもモルタル類層の強度的脆さを補強してモルタル類層の割れを防止できると共に、モルタル類を用いたパネルであるため難燃性を有する。
又、表面に形成されたモルタル類層によって基布材が隠されるため、見た目において基布材を用いていることが判らないように仕上げることができる。
【0017】
又、本発明の軽量セメントパネル(請求項3)は、隣り合う部分モルタル類層の間に目地部が形成されているため、前記部分モルタル類層を、目地部によって区画されたタイル模様や石積・石垣・玉石状模様等に形成することができるし、目地部において屈曲可能になり、反りを容易に矯正できる。
【0018】
本発明の軽量セメントパネル(請求項5)は、基布材の内部に含浸してモルタル類含浸部が形成されているため、基布材とモルタル類とを強固に一体化させることができる。
これにより、強度的に脆いモルタル類層にひび割れが生じたとしても基布材によってモルタル類層がバラバラ分解してしまうのを防止することができるし、微細砂モルタルやセメントペーストを用いると、モルタル類層の表面をきめ細かく仕上げることができる。
このように、本発明の軽量セメントパネル(請求項5)は、パネルの板厚を薄く形成させて軽量化を達成させながらモルタル類層の強度的脆さを補強してモルタル類層の割れを防止できると共に、モルタル類を用いたパネルであるため難燃性を有する。
又、表面に形成されたモルタル類層によって基布材が隠されるため、見た目において基布材を用いていることが判らないように仕上げることができる。
【0019】
従来のように、モルタル類だけによって薄く形成されたセメントパネルは、壁面に取付けた場合に、乾燥や収縮によって変形が生じ、大きなクラックが生じて破壊することが懸念されるが、本発明のように基布材とモルタル類を組み合わせて形成した軽量セメントパネルによれば、壁面に取付けた後の変形を防止することができる。
【0020】
本発明の軽量セメントパネル(請求項2,4,6)は、前記モルタル類層、又は部分モルタル類層の表面に塗装を施したもので、この塗装によって、色合いや模様(例えば、御影石模様)等を表現させることができ、見た目においてセメントパネルであることが判らないように仕上げることができる。
【0021】
本発明の軽量セメントパネルの壁面取付け方法(請求項7)は、壁面にモルタル類を塗布して形成した壁面側モルタル類層を接着剤として用い、この上に軽量セメントパネルの裏面を貼り付けるだけの簡単な作業で軽量セメントパネルを壁面に確実に取付けることができる。
【0022】
本発明の軽量セメントパネルの壁面取付け方法(請求項8)は、軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布して形成したパネル側モルタル類層を接着剤として用い、これを取付け対象としての壁面に貼り付けるだけの簡単な作業で軽量セメントパネルを壁面に確実に取付けることができる。
【0023】
本発明の軽量セメントパネルの壁面取付け方法(請求項9)は、壁面にモルタル類を塗布して形成した壁面側モルタル類層と、軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布して形成したパネル側モルタル類層を接着剤として用いたもので、このように、壁面側モルタル類層とパネル側モルタル類層との同一材料同士の接着であるため、軽量セメントパネルを簡単かつ強固に取付けることができる。
【0024】
又、本発明の軽量セメントパネルの壁面取付け方法(請求項7、8、9)のように、モルタル類を接着剤として用いると、軽量セメントパネルに反りが生じた場合、その軽量セメントパネルを壁面(壁面側モルタル類層)の上で押え付けて平面状に矯正させながら接着させると、軽量セメントパネルをモルタル類層によって保持した状態で、軽量セメントパネルの反りを矯正したまま接着することができる。
このように、軽量セメントパネルがモルタル類によって固められているため、軽量セメントパネルが変形することに伴うクラックや大きな割れが生じることがなく、長期に亘って安定した状態を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の軽量セメントパネルの第1実施例を示す斜視図で、請求項1及び請求項2に対応している。
この軽量セメントパネルAは、基布材1の表面(片面)にモルタル類(実施例では砂モルタル)を全面的に塗布して形成した全面モルタル類層20が形成され、この全面モルタル類層20の表面に塗料を全面的に塗布して形成した全面塗膜層30が形成されている。
【0026】
前記全面モルタル類層20は、基布材1の表面にモルタル類をスプレーガン等で吹き付けることにより塗布させたのち乾燥させたもので、基布材1と一体に形成されている。
前記全面塗膜層30は、全面モルタル類層20の表面に塗料をスプレーガン等で吹き付けることにより塗装させたのち乾燥させたもので、全面モルタル類層20と一体に形成されている。
【0027】
この軽量セメントパネルAにおいて、基布材1の厚みは3.0〜25.0mm、全面モルタル類層20の厚みは1.0〜5.0mm、全面塗膜層30の厚みは0.1〜5.0mmに形成するのが軽量化及び強度保持のために適当と考える。
【0028】
前記基布材1は、屈曲可能な柔軟性を有し、しかも引っ張りに対する強度を有するものが用いられる。
例えば、不織布(天然繊維不織布、合成繊維不織布)、毛布等の起毛布、フェルト、織布(天然繊維織布、合成繊維織布)、編布(天然繊維編布、合成繊維編布)等を用いることができる。
又、前記基布材1は、モルタル類が侵入できる多数の空隙が繊維間に形成されたもので、この空隙にモルタル類や塗料が侵入することで、全面モルタル類層20や後述する部分モルタル類層21、モルタル類層72、目地部塗膜層32、壁面側モルタル類層5、パネル側モルタル類層6との一体性を強固にすることができる。
【0029】
基布材1の材質は問わないが、不織布やフェルトや毛羽立ちの多い起毛布等を用いると、モルタル類や塗料との絡みが良好になり、一体性を強固にすることができる。
【0030】
塗膜層(全面塗膜層30、部分塗膜層31、目地部塗膜層32)は塗料により形成されるもので、その塗料としては、基布材1の屈曲に追従できる柔軟性を有し、その際ヒビが生じたとしても、それが目で見ても判らない程度の小さなヒビであるようなものであり、例えば、アクリル系樹脂塗料(例えば、大日精化工業株式会社製:ローンコート等)、その他の油性塗料や水溶性塗料等を用いることができる。
【0031】
塗料に透湿性を有する塗料を用いると、この塗料を通して水分を逃がすことができ、水分が塗膜層やモルタル類層に残ることにより生じる塗膜層やモルタル類層の剥離を抑制することができる。
なお、塗料の色は顔料で任意の色に着色して用いることができるし、透明のままでもよい。
【0032】
塗料としては市販の塗料を単独で用いたものでもよく、塗料と粒体(例えば、珪砂、パーライト、珪藻土、シラス、パミス:商標)を所定の割合(例えば、1:1)で混合したものでもよく、本発明で言う塗料にはこれらを含むものとする。
特に、塗料と粒体を混合した混合塗料を用いると、塗膜層の表面にザラザラ感を出すことができ、自然石の風合いを持たせることができる。
【0033】
又、塗膜層は、塗料を二度塗りや三度塗り等の塗り重ね、吹き付け時のエアー強弱調整等によって色合いや模様(例えば、御影石模様)等を表現させることができる。
前記塗り重ねに際し、粒体を混合した混合塗料と、単独塗料を組み合わせて使用することができる。
【0034】
又、軽量セメントパネルの表面全面は、最終的にクリアコート(コーティング剤、表面保護剤)を塗布するようにしている。
又、軽量セメントパネルの形状は、例えば、円形、角形、多角形、星形、帯状等、任意に決定することができる。
【0035】
図2は本発明の軽量セメントパネルの第2実施例を示す斜視図で、請求項1及び請求項2に対応している。
この軽量セメントパネルBは、基布材1の表面(片面)にモルタル類(実施例では砂モルタル)をコテ塗りによって全面的に塗布して形成した全面モルタル類層20が中高隆起形状に形成されたもので、モルタル類層を設けることによって、このように厚みを持たせることが可能になるし、モルタル類層の表面に凹凸等を付けて自然石の風合いを出すなど、立体的に表現することができる。
なお、全面モルタル類層20の表面に引っ掻き傷等をデザインとして付すことは任意である。
【0036】
図3は本発明の軽量セメントパネルの第3実施例を示す斜視図、図4はその軽量セメントパネルの部分断面図で、請求項3及び請求項4に対応している。
この軽量セメントパネルCは、基布材1の表面にモルタル類(実施例では微細砂モルタル)を部分的に塗布して形成した複数の部分モルタル類層21がタイル状に形成され、隣り合う部分モルタル類層21,21の間にシート目地部11が形成されたものである。
【0037】
なお、実施例では、シート目地部11を除いて各部分モルタル類層21の表面に塗料を全面的に塗布して形成した部分塗膜層31が形成されている。
この場合の塗装は、前記部分モルタル類層21又は/及びシート目地部11の表面に施すようにしてもよい。
【0038】
この軽量セメントパネルCは、基布材1の表面にシート目地部11を覆うようにマスキングテープを貼り付け、このマスキングテープの上から基布材1の表面にモルタル類を塗布させ、このモルタル類が乾燥したのち上から塗料を塗布させ、この塗料が乾燥したのちマスキングテープを剥ぎ取ることにより、部分モルタル類層21及びシート目地部11を形成させるようにした製造方法によって製造される。
なお、部分モルタル類層を形成する場合、この部分モルタル類層を形成する部分に不織布等のシート材を重ね合わせて縫合することで厚みを厚くさせ、この上に部分モルタル類層を形成することができる。これにより複数の部分モルタル類層の中で厚みが厚い部分モルタル類層と厚みが薄い部分モルタル類層とを形成でき、厚みの変化によってデザインに変化を持たせることができる。
【0039】
図5は本発明の軽量セメントパネルの第4実施例を示す部分断面図で、請求項3及び請求項4に対応している。
この軽量セメントパネルDは、基布材1の表面にモルタル類(実施例では砂モルタル)をコテ塗りにより部分的に塗布して形成した複数の部分モルタル類層21が石垣状に形成され、隣り合う部分モルタル類層21,21の間にシート目地部11が形成されたものである。
この場合、部分モルタル類層21及びシート目地部11の表面に塗料を塗布して形成した部分塗膜層31及び目地塗膜層32が形成されている。
この場合の塗装は、前記部分モルタル類層21又は/及びシート目地部11の表面に施すようにしてもよい。
【0040】
なお、前記第3実施例は部分モルタル類層21をタイル形状に形成し、第4実施例は部分モルタル類層21を石垣形状に形成しているが、その他、ストライプ形状や幾何学模様に形成することもできる。
【0041】
図6は本発明の軽量セメントパネルの第5実施例を示す部分断面図、図7はその軽量セメントパネルの製造方法を示す概略工程図で、請求項5及び請求項6に対応している。
この軽量セメントパネルEは、基布材1の内部にモルタル類(実施例では、微細砂モルタル又はセメントペースト)を含浸させたモルタル類含浸部70が形成されると共に、このモルタル類含浸部70と一体のモルタル類層71が基布材1の表面に形成され、このモルタル類層71の表面に塗料を全面的に塗布して形成した全面塗膜層30が形成されている。
【0042】
この軽量セメントパネルEの製造方法は、まず、平型枠7内にモルタル類7aを入れ(図7−イ)、次に基布材1を平型枠7内に入れてモルタル類7a中に沈めていくもので(図−ロ)、このとき、基布材1の上面部分にモルタル類7aが含浸しない非含浸部分72が残るように、基布材1の上面部分を残して浸漬させていく。
そして、この状態で適度に乾燥させたのち、平型枠7内から取り出すことにより(図−ハ)、基布材1の内部にモルタル類が含浸したモルタル類含浸部70が形成されると共に、このモルタル類含浸部70と一体のモルタル類層71が基布材1の下面(図6では上面)に形成され、かつ非含浸部分72が基布材1の上面(図6では下面)に形成された軽量セメントパネルEを製造することができる。なお、この状態では全面塗膜層30は形成されていない。
【0043】
非含浸部分72を形成する理由は、後述する図8、図9、図10のように、軽量セメントパネルを壁面に取付ける場合、軽量セメントパネルの裏面を基布材1のままに露出しておくことで接着剤としてのモルタル類との絡みを良好にさせるためであり、これにより軽量セメントパネルの接着貼付を強固にすることができる。
【0044】
又、実施例では非含浸部分72を形成するために、基布材1の上面部分を残してモルタル類7a中に浸漬させるようにしたが、基布材1を全面的にモルタル類中に浸漬させ、基布材の上面部分に付着したモルタル類を水により洗い出すことで非含浸部分を形成することもできる。
【0045】
次に、前記軽量セメントパネルを壁面に取付けるための壁面取付け方法を説明する。
図8は本発明の壁面取付け方法の第1実施例を示す斜視図で、請求項7に対応している。
この実施例では、L形コンクリートブロック4の壁面40を取付け対象とし、この壁面40にモルタル類を満遍なく塗布させ、この壁面側モルタル類層5が乾燥しないうちに軽量セメントパネルA(軽量セメントパネルB又は軽量セメントパネルC又は軽量セメントパネルD又は軽量セメントパネルEでもよい)の裏面を接着貼付させるようにしている。
【0046】
なお、施工において、壁面40にモルタル類を塗布させる際に、モルタル類の接着性を良好にさせるための前処理として、壁面に下地材(例えば、「商標:ハイフレックス1000:日本化成社製」、「商標:ユニレックス:二瀬窯業社製」等)を満遍なく塗布するようにしている。
又、軽量セメントパネルの裏面を壁面側モルタル類層5に接着貼付させる際には、この軽量セメントパネルの基布材を水によって濡らしておく。
【0047】
このように、モルタル類を接着剤(水和反応による接着)として用い、この上に軽量セメントパネルAの裏面を貼り付けるだけの簡単な作業で、軽量セメントパネルAを壁面40に取付けることができる。
【0048】
なお、この第1実施例において、軽量セメントパネルの基布材の内部に、この基布材の裏面を露出させる状態でモルタル類を含浸させ、この含浸させたモルタル類が乾燥したのち、壁面側モルタル類層に接着貼付させるようにしてもよい。
このようにすると、基布材による壁面側モルタル類層からの吸水量が少なくなり、接着貼付を強固にさせることができる。
前記モルタル類を含浸させるか否かの判断、モルタル類の含浸厚さ等は、基布材の厚さや軽量セメントパネルの重量等を勘案して決定する。
【0049】
本発明の軽量セメントパネルは、不織布等の基布材1の両面を利用したもので、即ち、片面にモルタル類層によるパネル面を形成させ、他面に接着剤としてのモルタル類を全面的に満遍なく塗布させる接着貼付面を形成させたことに特徴がある。このように軽量セメントパネルの裏面を基布材が露出した接着貼付面に形成させたので、壁面と基布材の接着貼付状態が密着し、そこに空間やすき間ができない。
【0050】
図9は本発明の壁面取付け方法の第2実施例を示す斜視図で、請求項8に対応している。
この実施例では、軽量セメントパネルE(軽量セメントパネルA、軽量セメントパネルB又は軽量セメントパネルC又は軽量セメントパネルDでもよい)の裏面にモルタル類を塗布させてパネル側モルタル類層6を形成させ、このパネル側モルタル類層6が乾燥しないうちに取付け対象となるL形コンクリートブロック4の壁面40に接着貼付させるようにしたものである。
なお、軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布させる際には、この軽量セメントパネルの基布材を水によって濡らしておく。
又、施工において、壁面40に軽量セメントパネルのパネル側モルタル類層6を接着貼付させる際に、このパネル側モルタル類層6の接着性を良好にさせるための前処理として、壁面に下地材(例えば、「商標:ハイフレックス1000:日本化成社製」、「商標:ユニレックス:二瀬窯業社製」等)を満遍なく塗布するようにしている。
【0051】
図10は本発明の壁面取付け方法の第3実施例を示す斜視図で、請求項9に対応している。
この実施例では、取付け対象となるL形コンクリートブロック4の壁面40にモルタル類を塗布させる一方、軽量セメントパネルC(軽量セメントパネルA又は軽量セメントパネルB又は軽量セメントパネルD又は軽量セメントパネルEでもよい)の裏面にもモルタル類を満遍なく塗布させ、壁面側モルタル類層5及びパネル側モルタル類層6が乾燥しないうちに壁面側モルタル類層5の上にパネル側モルタル類層6の裏面を接着貼付させるようにしている。
【0052】
このように、軽量セメントパネルCの裏面にもモルタル類を塗布させると、パネル側モルタル類層6と壁面側モルタル類層5との同一材料同士の接着になるため、軽量セメントパネルBを壁面40に強固に取付けることができる。
【0053】
なお、この第3実施例において、軽量セメントパネルの基布材の内部に、この基布材の裏面を露出させる状態でモルタル類を含浸させ、この含浸させたモルタル類が乾燥したのち基布材の裏面にモルタル類を塗布してパネル側モルタル類層を形成させてもよい。
【0054】
前記壁面側モルタル類層やパネル側モルタル類層の厚みは適宜に決定できるが、通常、壁面側モルタル類層は2.0〜5.0mm厚、パネル側モルタル類層は1.0〜5.0mm厚程度としている。
壁面側モルタル類層やパネル側モルタル類層の塗布は、スプレーガンによる吹き付け塗布以外に、刷毛塗りやコテ塗りでもよい。
モルタル類層を形成するための吹き付け塗布やコテ塗り等は、壁面や基布材に対して満遍なく行なうものである。
【0055】
又、壁面側モルタル類層及びパネル側モルタル類層は、モルタル類に樹脂(例えば、アクリル系樹脂)を混合して強度を向上させた樹脂モルタル類で形成したものを含む。
【0056】
なお、本発明の軽量セメントパネルは、L形コンクリートブロック壁面だけでなく、積みブロック壁面、現場打ちコンクリート擁壁壁面、石膏ボード壁面、カーテンウォール壁面、鉄骨(H型鋼)壁面、その他の建築物や構築物の壁面に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の軽量セメントパネルの第1実施例を示す斜視図。
【図2】本発明の軽量セメントパネルの第2実施例を示す斜視図。
【図3】本発明の軽量セメントパネルの第3実施例を示す斜視図。
【図4】その軽量セメントパネルの部分断面図。
【図5】本発明の軽量セメントパネルの第4実施例を示す部分断面図。
【図6】本発明の軽量セメントパネルの第5実施例を示す部分断面図である。
【図7】その軽量セメントパネルの製造方法を示す概略工程図である。
【図8】本発明の壁面取付け方法の第1実施例を示す斜視図。
【図9】本発明の壁面取付け方法の第2実施例を示す斜視図。
【図10】本発明の壁面取付け方法の第3実施例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 基布材
11 シート目地部
20 全面モルタル類層
21 部分モルタル類層
30 全面塗膜層
31 部分塗膜層
32 目地部塗膜層
4 L形コンクリートブロック
5 壁面側モルタル類層
40 壁面
6 パネル側モルタル類層
7 平型枠
7a セメントペースト
70 セメントペースト含浸部
71 セメントペースト層
72 非含浸部分
A 軽量セメントパネル
B 軽量セメントパネル
C 軽量セメントパネル
D 軽量セメントパネル
E 軽量セメントパネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布材の表面全面にモルタル類を塗布することで形成した全面モルタル類層が形成されていることを特徴とする軽量セメントパネル。
【請求項2】
請求項1記載の軽量セメントパネルにおいて、前記全面モルタル類層の表面に塗装が施されている軽量セメントパネル。
【請求項3】
基布材の表面にモルタル類を部分的に塗布することで形成した複数の部分モルタル類層が形成され、
隣り合う部分モルタル類層の間に目地部が形成されていることを特徴とする軽量セメントパネル。
【請求項4】
請求項3記載の軽量セメントパネルにおいて、前記部分モルタル類層又は/及び目地部の表面に塗装が施されている軽量セメントパネル。
【請求項5】
基布材の内部に含浸してモルタル類含浸部が形成されると共に、このモルタル類含浸部と一体のモルタル類層が基布材の表面に形成されていることを特徴とする軽量セメントパネル。
【請求項6】
請求項5記載の軽量セメントパネルにおいて、前記モルタル類層の表面に塗装が施されている軽量セメントパネル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の軽量セメントパネルを壁面に取付けるための方法であって、
取付け対象となる壁面にモルタル類を塗布させ、この壁面側モルタル類層が乾燥しないうちに軽量セメントパネルの裏面を接着貼付させることを特徴とした軽量セメントパネルの壁面取付け方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の軽量セメントパネルを壁面に取付けるための方法であって、
軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布させ、このパネル側モルタル類層が乾燥しないうちに取付け対象となる壁面に接着貼付させることを特徴とした軽量セメントパネルの壁面取付け方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の軽量セメントパネルを壁面に取付けるための方法であって、
取付け対象となる壁面にモルタル類を塗布させ、前記軽量セメントパネルの裏面にモルタル類を塗布させ、前記壁面側モルタル類層及びパネル側モルタル類層が乾燥しないうちに壁面側モルタル類層にパネル側モルタル類層を接着貼付させることを特徴とした軽量セメントパネルの壁面取付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−327318(P2007−327318A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200708(P2006−200708)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(391032864)
【Fターム(参考)】