説明

軽量モルタル

【課題】 鏝塗付け性を始めとする左官施工時の施工性が良好な軽量モルタルであって、高い水密性や曲げ強度といった耐久性並びに変形やひび割れに対する抵抗性を備え、また住居用施工物に適う断熱性や防音性も得易い軽量モルタルの提供を課題とする。
【解決手段】 (A)セメント100質量部、(B)軽量細骨材14〜36質量部、(C)粒径150μm以下の普通細骨材28〜64質量部、(D)セルロース誘導体と澱粉を有効成分とする保水剤0.15〜0.3質量部及び(E)ポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂7〜28質量部を含有してなる軽量モルタル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅外壁などの建築物の外装用やその下塗りなどに使用するセメント系の軽量モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅の外壁などの建築物の外装施工は、一般にモルタルで下塗りを行い、またモルタル硬化後の表面に、例えば樹脂系又はセメント系の仕上材を施工する。使用するモルタルは、良好な防火性、断熱性及び防音性が得られ、また施工時の自重による垂れや剥落等が起こり難く、建築物全体としての荷重負荷も軽減できることから、例えば高い空隙率の構造にした軽量骨材を用い、軽量化されたセメント系のモルタルが使用されている。軽量骨材使用のモルタルは、一般に普通骨材使用のモルタルに比べて単位水量が多くなるため、水密性が低く、さらに曲げ強度も低くなる。その結果、施工物として高い耐久性が得られない。高い水密性を得ることが可能な軽量モルタルとして、再乳化粉末樹脂やポリマーディスパージョンを混和させたポリマーモルタルが知られている。(例えば、特許文献1参照。)ポリマーモルタルでは曲げ強度の低下も抑制可能である。また、モルタルやコンクリートを緻密化するための混和成分としてポゾラン反応性物質やスラグ微粉の使用が従来より行われてきたが、このような成分をポリマーと併用したモルタル(例えば、特許文献2参照。)では、水密性を著しく高くすることができる。
【特許文献1】特開2004−189569号公報
【特許文献2】特開平8−151251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、ポリマーの導入によって高い水密性のモルタルを得ようとすると、ポリマーの配合割合を多くする必要があり、水密性と共に曲げ強度をより高めようとすると、ポリマー配合した上で、軽量骨材の使用量を低減する必要がある。ポリマー配合量を増大させるとモルタルの厚付け施工が困難になる。軽量骨材の使用量低減は断熱性や防音性の低下やモルタル重量の増加をもたらし、骨材含有割合自体の低減は収縮変形とひび割れ発生の増加をきたす。スラグ微粉やポゾラン物質の使用も収縮量を増大させ、収縮亀裂が起こり易くなる他、流動性が低下するため、塗り施工性に支障が生じることがあった。本発明は、かかる状況を鑑み、厚付け性を始めとする左官施工時の施工性が良好な軽量モルタルであって、高い水密性や曲げ強度といった耐久性並びに変形やひび割れに対する抵抗性を備え、また住居用施工物に適う断熱性や防音性も得易い軽量モルタルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、検討を重ねた結果、細骨材に軽量骨材と微粒普通骨材を用いたポリマーモルタルに、特定の成分からなる保水剤を混和させることによって、前記課題を解決した軽量モルタルが得られたことから本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)で表す軽量モルタルである。(1)(A)セメント100質量部、(B)軽量細骨材14〜36質量部、(C)粒径150μm以下の普通細骨材28〜64質量部、(D)セルロース誘導体と澱粉を有効成分とする保水剤0.15〜0.3質量部及び(E)ポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂7〜28質量部を含有してなる軽量モルタル。(2)保水剤がセルロース誘導体100質量部と澱粉8.3〜42.5質量部からなる前記(1)の軽量モルタル。(3)さらに、膨張材を含有してなる前記(1)又は(2)の軽量モルタル。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば住居用建築施工物用に適した軽量モルタルであって、鏝塗り等の施工に適した良好な左官施工性を有し、初期〜長期に渡ってひび割れ等が発生し難い、高耐久性の軽量モルタルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の軽量モルタルは、細骨材に少なくとも軽量骨材を用いて軽量化したモルタルである。使用する軽量骨材は特に限定されるものではない。好ましくはより確実な断熱性及び防音性を付与する上で、気孔率の高い軽量骨材を使用する。より好ましくは、気孔率が40〜90%程度の軽量骨材を使用する。気孔率が40%未満のものでは、このような効果が十分得難く、また90%を超えると脆弱なため、混合中に破損したり所望の耐久性が得られないことがあるので適当ではない。骨材の成分としては特に限定されない。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体と炭酸カルシウムの発泡複合体、発泡ポリスチレン系樹脂、天然又は人工の多孔質無機系骨材、概ね中空状の無機系骨材であるパーライト等を挙げることができる。より好ましくは、左官施工性に優れたモルタル組成物が得られ易いことから、エチレン酢酸ビニル共重合体と炭酸カルシウムの発泡複合体、発泡ポリスチレン系樹脂及びパーライトの3種の混合細骨材とする。この場合の各細骨材の混合割合は、エチレン酢酸ビニル共重合体と炭酸カルシウムの発泡複合体100体積部に対し、発泡ポリスチレン系樹脂76〜140体積部及びパーライト36〜250体積部が望ましい。軽量骨材全体の使用量は、本モルタル中のセメント含有量100質量部に対し、30〜40質量部が好ましい。30質量部未満では、モルタルの軽量化が困難となる他、左官施工性の低下や建築物に必要な耐火・耐熱性並びに防音性を確保し難くなるので適当ではない。また40質量部を超えると強度低下や仕上げ材との付着性が低下するので適当ではない。
【0008】
また、本発明の軽量モルタルは、最大粒径150μm以下の普通骨材を含有する。使用する普通骨材は、モルタルやコンクリートに使用できる最大粒径150μm以下の普通骨材であれば特に限定されない。好ましくは無機系材質からなる最大粒径150μm以下の普通骨材、より好ましくは無機系材質からなる最大粒径100μm以下の普通骨材であれば何れのものでも良い。無機系材質は、水に実質不活性な成分からなるものであれば、特に限定されない。該普通骨材の具体的な例示として、珪石、石灰石、寒水石等の粉砕粒、天然砂の分級物、その他成岩砕石粉等を挙げることができる。また、150μmを超える粒径の普通骨材では、鏝伸びや鏝切れ等の塗り施工性が低下するため好ましくない。最大粒径150μm以下の普通骨材の使用で、塗り施工性の向上及び施工物の体積収縮抑制等を向上させることができる。該骨材の使用量は、モルタル中のセメント100質量部に対し、28〜64質量部が好ましい。28質量部未満では所望の作用が実質得られず、また64質量部を超えるとモルタル容重が上がり過ぎて軽量化できないことがあるので適当ではない。
【0009】
本発明の軽量モルタルはセメント系のモルタルである。使用されるセメントは、水硬性のものならば制限されない。具体的には、普通、早強、超早強、中庸等、低熱等の各種ポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメントのような各種混合セメント、白色セメントやエコセメントのような特殊セメントを例示することができる。ここに例示した以外のセメントや2種以上のセメントを併用しても良い。本モルタル中でのセメントの含有量は特に制限されないが、好ましくは45〜53質量%とする。セメント含有量が45質量%未満では結合相が不足し強度が低迷するので適当ではない。また53質量%を超えると、左官施工に適した流動性が得難くなる他、施工物の収縮が大きくなり過ぎ、亀裂発生の可能性が高まるので適当ではない。
【0010】
本発明の軽量モルタルに使用する保水剤は、セルロース誘導体と澱粉を有効成分とする保水剤とする。これ以外の成分を有効成分とする保水剤の使用は好ましくない。使用するセルロース誘導体は、実質水溶性のものであれば特に限定されない。具体的には、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等を挙げることができる。セルロース誘導体の保水作用によって注水後比較的長い時間左官施工に適した流動性が維持されると共に、急激な乾燥化に伴うひび割れ発生を抑制できる。また、デンプンは何れのものでも使用でき、起源となる植物種は制限されず、例えばトウモロコシ、馬鈴薯、小麦、米、餅米、甘藷等から得られたデンプンの何れでも良い。また、βデンプンのみならず、αデンプンであっても良い。デンプンは、セメント等によって高pH化したスラリー中では、常温近傍でも吸水膨張を起こすと共に粘性も増すことから、付着力の強化や厚付け性の向上といった優れた左官施工性が得られることに加え、収縮ひび割れ発生を抑制できる。セルロース誘導体及び澱粉以外の成分を有効成分とする保水剤の使用は、かかる効果が得られないことがあるので好ましくない。また、保水剤としてセルロース誘導体又は澱粉の何れか一方のみの使用も、乾燥収縮と硬化収縮に伴うそれぞれのひび割れ発生を十分抑制できないので好ましくない。使用する保水剤中のセルロース誘導体と澱粉の配合割合は、セルロース誘導体100質量部に対し、澱粉8.3〜42.5質量部が好ましい。澱粉8.3質量部未満では配合効果が実質得られず、また42.5質量部を超えると粘性が上昇し過ぎて施工作業性が低下したり、凝結の進み難くなることがあるので好ましくない。保水剤自体の使用量は、モルタル中のセメント100質量部に対し、0.15〜0.3質量部が好ましく、0.18〜0.26質量部がより好ましい。0.15質量部未満では、前記の作用が十分得られず、また0.3質量部を超えると粘性が上昇し過ぎて施工作業性が低下するので適当ではない。
【0011】
また、本発明の軽量モルタルは、ポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂を含む。ポリマーディスパージョンや再乳化粉末樹脂は、モルタルやコンクリートに使用できるものなら特に限定されない。具体的には、ポリマーディスパージョンとして例えばJIS A 6203に規定されているポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン又はエチレン酢酸ビニルを有効成分とするものが挙げられ、再乳化粉末樹脂として例えばJIS A 6203に規定されているポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステルを有効成分とするものを挙げることができる。ポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂の含有により水密性、曲げ強度、付着力、ひび割れ抵抗及び耐食性等を付与又は向上することができる。このために必要なポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂の含有量は、本モルタル中のセメント100質量部に対し、固形分換算で0.15〜1.8質量部が好ましい。0.15質量部未満では配合効果が殆ど得らない。また1.8質量部を超えると強度が向上せず、粘性も増大し、施工性が低下するので適当ではない。
【0012】
また、本発明の軽量モルタルは、前記成分に加えて、膨張材を含むのが好ましい。膨張材は、水和反応等によって反応前より体積増加した固形状生成物となるものであれば特に限定されない。具体的には生石灰を膨張有効成分とするものやカルシウムサルホアルミネート等のエトリンガイト相形成物質を有効成分とするものが例示される。膨張材の含有により収縮亀裂の発生を抑制できる。膨張材の含有量は、本モルタル中のセメント100質量部に対し、3.7〜4.4質量部が好ましい。3.7質量部未満ではモルタル施工物の体積減少や亀裂発生を抑制し難くなる。また4.4質量部を超えると、過膨張や低温下で遅れ膨張を起こしたり、注水混練後に短時間で流動性が低下し過ぎることがあるので適当ではない。
【0013】
また、本発明の軽量モルタルには、本発明の効果を実質喪失させない限り、前記以外の成分を含むものでも良く、このような成分として、例えば、減水剤(高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、分散剤と称されるものを含む。)、収縮低減剤、消泡剤、繊維、凝結調整剤、ポゾラン反応性物質、撥水剤、白華防止剤、抗菌剤、浄化剤、増粘剤、顔料等を挙げることができるが、表記例に限定されるものではない。
【0014】
また、本発明の軽量モルタルの製造方法は特に限定されず、例えば一般的なセメント系のモルタルと概ね同様の方法で製造できる。具体的な一例を示すと、市販のモルタルミキサーに前記のような各使用材料を一括投入し、水を加えて混合する。水の量は特に制限されないが、良好な施工性を安定して得るには、本発明のモルタル100質量部に対し、概ね10〜44質量部加えることが推奨される。10質量部未満では、施工可能な可使時間が十分確保し難く、また左官施工に適したコンシステンシーのモルタルが得られ難くなるため適当ではない。また44質量部を超える量では強度低下に加え、施工完了からの強度発現が遅延する傾向が強く、また厚付け性も低下するので適当ではない。
【0015】
また、本発明の軽量モルタルの施工方法は特に限定されるものではないが、鏝やパテ等を使用した塗り付けによる左官施工が特に好適である。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明するが、本発明はここで表す実施例に限定されるものではない。
【0017】
[モルタルの作製] 次に表すA1〜F4から選定される材料と水を、表1に表した配合量となるよう容量100リットルのパン型ミキサに投入し、温度約20℃湿度60%の環境下で約5分間混練し、モルタル(本発明品1〜10、参考品11〜18)を作製した。
【0018】
A1;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
A2;早強ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
B1;パーライトI(黒曜石発泡体;最大粒径2mm、平均粒径0.8mm、嵩比重0.24)
B2;パーライトII(真珠岩発泡体;最大粒径1.2mm、平均粒径0.6mm、嵩比重0.2)
B3;エチレン酢酸ビニル共重合体と発泡状炭酸カルシウムの複合体の細骨材I(最大粒径2mm、平均粒径0.8mm、嵩比重0.11)
B4;発泡スチロール(最大粒径2mm、平均粒径0.8mm、嵩比重0.023)
C1;普通微粒骨材(JIS8号砂相当山形珪砂;最大粒径90μm、嵩比重1.3)
C2;普通細骨材(JIS5号砂相当山形珪砂;最大粒径1.2mm、嵩比重1.4)
D1;セルロース系保水剤(商品名「チローゼMH6002P4」、SEタイロース社製)
D2;デンプン粒(コーンスターチ;市販品)
D3;ポリビニルアルコール系保水剤(ケンカ度88モル%)
E1;再乳化粉末樹脂(商品名「LL5055」、旭化成ケミカルズ株式会社製)
E2;スチレンブタジエンゴム系エマルジョン(商品名「太平洋CX−B」、太平洋マテリアル株式会社製)
F1;膨張材(商品名「太平洋エクスパン構造用」、太平洋マテリアル株式会社製)
F2;フライアッシュ(ブレーン比表面積4200cm2/g;JIS A 6201規定のフライアッシュII相当品)
F3;アクリル繊維(繊維長約12mm;市販品)
F4;高炉スラグ(ブレーン比表面積4000cm2/g;市販品)
【0019】
【表1】

【0020】
[コンシステンシーの評価] 作製したモルタルについて、JIS R 5201に準拠した方法で、温度20℃、湿度約60%の屋内で練り上がった直後のモルタルフロー値を測定し、左官施工に適ったコンシステンシーが得られているかの評価指標とした。尚、コンシステンシーは一般に、フロー値が概ね165〜175mmであれば左官施工に適うとされているため、本発明ではこれを判断基準とした。その結果を表2に表す。
【0021】
【表2】

【0022】
[鏝塗り施工性(左官施工性)の評価] 作製したモルタルについて、温度約20℃、湿度約60%の屋内に、戸建住宅の外壁下地を模擬し、900×1800×12mmの合板2枚を40×50×2000mmの角材3で繋げて固定し、継ぎ目のある1800×1800mmの平板に防水シート、メタルラスをステープルで留め、施工性を確認するために下地とした。この1800×1800mmの平板面に対する鏝塗りによる温度5℃での施工性を次の(a)〜(d)の4種の方法で評価した。(a)〜(d)の何れか一の方法による評価でも「不良」と判定されれば、20℃での鏝塗り施工に不適なモルタルと評価した。この評価結果も表2に表す。
【0023】
(a)鏝伸び性;設置した平板面に、市販の金鏝で作製したフレッシュ状態のモルタルを塗り付け、塗り斑なくモルタルを広く伸ばし、1800×1800mmの平板面全部に20分以内で塗り付けできたものを鏝伸び性「良好」と判定した。また、これ以外の状況となったものは鏝伸び性「不良」と判定した。
【0024】
(b)鏝切れ性;塗付け後の金鏝に付着残存するモルタルが実質見られなかったものを鏝切れ性「良好」と判定し、モルタルが付着残存していたものを鏝切れ性「不良」と判定した。
【0025】
(c)施工物の表面平滑性;金鏝でモルタルを塗り付け、塗り付けたモルタルに数回金鏝を当てて表面を整えることで、概ね平滑な面が得られたものを、施工物の表面平滑性「良好」と判定した。これ以外の状況になったものや金鏝での塗り付け自体が困難であったモルタルは、施工物の表面平滑性「不良」と判定した。
【0026】
(d)厚付け性;設置した平板面に、作製したフレッシュ状態のモルタルを約10mm程度の厚さとなるよう鏝で塗付けた。24時間経過後に塗付けられたモルタルの垂れが見られなかったものを、厚付け施工性「良好」と判定し、これ以外の状況になったモルタルは全て厚付け施工性「不良」と判定した。
【0027】
[ひび割れ抵抗性の評価] 前記試験で、平板に塗り付けたモルタルをそのままの状態で温度約20℃、湿度60%の環境下に7日間静置させた。静置後、平板上の施工物の表面を目視で観察し、ひび割れ発生の有無を確認した。ひび割れ発生が全く見られなかったものをひび割れ抵抗性「良好」と判断し、ひび割れ発生が少しでも見られたものをひび割れ抵抗性「不良」と判断した。この評価結果も表2に表す。
【0028】
[曲げ強度の評価] 作製したモルタルから、JASS 15M−102に準拠した方法で4×4×16cmの供試体を、48時間湿空養生(温度20℃、湿度80%)した後、温度約20℃、湿度約60%の屋内で材齢28日まで大気養生して得た。該供試体に対し、JIS R 5201に準拠した方法で曲げ強度を測定した。この曲げ強度評価結果も表2に表す。
【0029】
[水密性の評価] 作製したモルタルについて、温度約20℃、湿度約60%の屋内で、材齢28日まで養生し、JIS A 1404に規定する方法に準じて、但し、時間経過測定開始前のモルタルの乾燥は行わずに、24時間後の吸水量を求め、この値をもって水密性評価の指標とした。即ち、吸水量の多いものほど水密性が低いことを表す。この結果も表2に表す。
【0030】
[防火性の評価] 試験体は600×600×9mmの構造用合板1級を用い中央部の表面と裏面に、CC熱電対の熱接点を設置した後、防水シート、メタルラスをステープルで留め、モルタルを16mm塗り付けて試験体とした。試験体側面の片方には10mm厚の石膏ボートを貼り、モルタル表面の石膏ボートとの接合部は市販の耐火性モルタルで被覆した。この試験体を温度約20℃、湿度約60%に保った屋内で28日間養生し、JIS A 1301に準拠した方法で小型炉を用い、2級加熱で防火試験を実施した。試験は次の(イ)〜(ニ)の4種の項目を施工モルタルがそれぞれ充当しているか否かを調べ、全て充当しているものに対してのみ防火性良好と判断した。(イ)建築駆体に火災被害を及ぼすような変形、破壊又は脱落の何れも確認されないこと。(ロ)試験体裏面に、発炎が確認されないこと。(ハ)試験終了時点から30秒以内に試験体からの残炎が全て消失され、且つ試験終了時点から5分以上残存する火気が確認されないこと。(ニ)試験体裏面の温度が260℃を超えなかったこと。ただし、装着金物などの接触による局部的な木材部分は260℃を超えても着火が確認されなければ良いこと。尚、各項目は原則的に目視により調べた。この評価結果も表2に表す。
【0031】
表2の結果より、本発明品は左官施工に適したコンシステンシーを有すると共に鏝塗り施工性も全般に良好であり、また施工後のひび割れも見られず、優れた曲げ強度を呈し、長期間に渡り優れた耐久性を有する軽量モルタルが得られたことがわかる。これに対し、本発明外の参考品では鏝塗りに関わる左官施工性が不良であるか、良好であっても水密性や曲げ強度の低下、ひび割れ発生等の少なくとも耐久性に関する何れかの特性が著しく劣る状況であったことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント100質量部、(B)軽量細骨材14〜36質量部、(C)粒径150μm以下の普通細骨材28〜64質量部、(D)セルロース誘導体と澱粉からなる保水剤0.15〜0.3質量部及び(E)ポリマーディスパージョン又は再乳化粉末樹脂7〜28質量部を含有してなる軽量モルタル。
【請求項2】
保水剤がセルロース誘導体100質量部と澱粉8.3〜42.5質量部からなる請求項1記載の軽量モルタル。
【請求項3】
さらに、膨張材を含有してなる請求項1又は2記載の軽量モルタル。

【公開番号】特開2009−155192(P2009−155192A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338670(P2007−338670)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】