軽量保水性ブロック
【課題】ヒートアイランド現象の緩和に有効な運搬性、作業性および保水性能に優れた軽量保水性ブロックを提供する。
【解決手段】セメントと、ペーパースラッジ灰と、パーライトとを含む水硬性組成物に混練水を加えて加圧成型する。配合における単位セメント量を190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量を80〜120kg/cm3、単位パーライト量を100〜125kg/cm3とし、耐アルカリ性天然セルロースの短繊維を4〜6kg/cm3混合する。
【解決手段】セメントと、ペーパースラッジ灰と、パーライトとを含む水硬性組成物に混練水を加えて加圧成型する。配合における単位セメント量を190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量を80〜120kg/cm3、単位パーライト量を100〜125kg/cm3とし、耐アルカリ性天然セルロースの短繊維を4〜6kg/cm3混合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてヒートアイランド現象の緩和を目的として使用される比較的低強度の軽量保水性ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市内の気温が周辺地域に比べて上昇するというヒートアイランド現象が顕著化している。それに伴いビルの屋上においても、日中に大量の熱を蓄積するため、夜間になっても表面温度が外気温より高いとともにビル内温度も高くなるという現象が確認されている。
【0003】
これに基づいて、都市における熱環境の悪化を緩和する手段の一つとして、高層ビル等における屋上の熱的特性を改善することが有効であると考えられている。これを具体化する方策の1つとして、ビルの屋上を保水性を有するブロックで覆う方法があり、この方法に適した保水性ブロックの開発が必要である。
【0004】
従来のヒートアイランド現象を緩和するための保水性ブロックに関する技術として、例えば特許文献1には、セメントと、骨材と、水と、保水材とを含む保水性ブロックであって、保水材が、オートクレーブ養生した気泡コンクリートの粒体からなり、かつ、保水性ブロック中の保水材の配合量を、0.16〜0.20m3/m3とした保水性ブロックが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、水硬性組成物からなる多孔質の保水性ブロックにおいて、絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量が0.15g/cm3以上、絶乾状態のブロックの下端部を水に浸し30分経過した後のブロックの質量M30と十分に湿潤状態としたときのブロックの質量Mcwの比の百分率(M30/Mcw)×100%としての吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上であり、十分に湿潤状態とした状態から100〜110℃で加熱して絶乾状態となるまでの湿潤−絶乾時間が48時間以上である保水性ブロックが開示されている。
【0006】
また、その具体的な配合例として、水硬性組成物が、セメント、パーライトくずおよびペーパースラッジ灰が配合された超硬練りの即脱可能なコンクリートであり、ペーパースラッジ灰について単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3とする場合、パーライトくずについて単位パーライトくず量を300kg/m3以上とする場合、単位セメント量を150kg/m3以上、かつ単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3のである場合などが開示されている。
【0007】
その他、特許文献3には、廃棄物であるペーパースラッジ焼却灰の有効利用を図った道路舗装用インターロッキングブロックとして、セメント、ペーパースラッジ焼却灰、および少なくとも一部が軽量骨材からなる骨材を含む保水性ブロックであり、軽量骨材として軽石の破砕物あるいはパーライト粒などを用い、単位セメント量は250〜450kg/m3、単位ペーパースラッジ焼却灰量は30〜700kg/m3、単位軽量骨材量は、150〜700kg/m3がとしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開第3535862号公報
【特許文献2】特開2007−230827号公報
【特許文献3】特開2008−075270号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ヴォンタンヴァン、藤原博巳、川島顕、「軽量屋上保水ブロックの開発に関する研究」、第36回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集、2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3記載の発明では、ヒートアイランド現象の緩和を目的としつつ、同時に廃材の有効利用を図ったものであるが、歩道など路面に用いられるインターロッキングブロックを対象としている。
【0011】
そのため、インターロッキングブロックとしての強度も要求され、軽量骨材の使用などによりブロックの軽量化を図っているものの、保水性の面でも軽量化の面でも限度がある。
【0012】
これに対し、本発明は、保水性によるヒートアイランド現象の緩和効果の向上に主眼を置いたものであり、例えばビルの屋上に設置する場合など荷重条件が緩い条件のもと、荷重、運搬コスト、作業性を考慮し、より軽量で保水性能に優れた保水性ブロックを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る軽量保水性ブロックは、セメントと、ペーパースラッジ灰と、パーライトとを含む水硬性組成物に混練水を加えて加圧成型してなり、配合における単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3、単位パーライト量が100〜125kg/cm3であることを特徴とするものである。
【0014】
セメントとしては、普通ポルトランドセメントを用いることができるが、それ以外のセメントでもよい。
【0015】
単位セメント量が増すにつれて強度が増す反面、ブロックの密度が大きくなる。本発明ではビルの屋上に設置する場合などを考慮し、荷重、運搬コスト、作業性の面から軽量で保水性能に優れた保水性ブロックを目的としており、後述する各実験結果から単位セメント量を190〜220kg/cm3とした。
【0016】
ペーパースラッジ灰(以下、「PS灰」という。)は、製紙業から出る廃棄物のうちの大部分であるペーパースラッジと呼ばれる製紙汚泥を焼却処理した後に残る灰である。製紙原料のうち紙とならない微細繊維や、タルク、カオリンなどの填料、および古紙混入異物などが含まれている。
【0017】
多孔質であるため保水性に優れ、このPS灰を用いることで、コンクリートに保水、吸水性能を付与できることが確認されている。また、PS灰は軽量であり、ポゾラン反応が期待できることから、軽量でありながら、一般的な軽量ブロックと同等の強度を有する軽量保水性ブロックを開発可能と考えられたため、これを使用した。
【0018】
産業廃棄物の処理および有効利用の観点からは、できるだけ多く用いることが考えられるが、大量使用は密度の増加につながり、後述する各実験において、軽量化や保水性能の向上の面で本発明の期待する効果が得られなかったため、下限を80kg/cm3とし、上限を120kg/cm3とした。
【0019】
パーライトは非常に軽量であり、高い吸水性を有することから本発明で用いることとしたが、後述する各実験結果より、単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3との相対的な関係からは、単位パーライト量を125kg/cm3以下としたときに、保水性ブロックとしての期待される高い保水性能が得られた。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る軽量保水性ブロックにおいて、さらに繊維材料を含むことを特徴とするものである。
【0021】
この場合の繊維材料は、保水性ブロックの補強の役割と繊維材料自体の保水能力を期待したものであり、保水能力の面からは天然繊維が望ましい。
【0022】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る軽量保水性ブロックにおいて、配合における密度を0.6g/cm3以下としたことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の軽量保水性ブロックは、加圧成型により締め固められることで、実密度は一般に配合密度より大きくなるが、本発明ではブロックの圧縮強度1N/mm2以上、実密度1.0g/cm3以下程度を目標としており、後述する実験結果では、セメント、ペーパースラッジ灰、パーライトなどを含む配合において、密度を0.6g/cm3以下となる配合としたときに、これらの目標を達成しつつ、高い保水性能が確保できた。
【0024】
請求項4に係る発明は、請求項1、2または3に係る軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトがパーライトくずであることを特徴とするものである。
【0025】
パーライトくずとしては、真珠岩等水分を含むガラス質流紋岩類を粉砕後、高温で焼成発泡させたものであるパーライトを製造する際に、発泡せずに製品とならなかったものなどを使用することができる。
【0026】
製品のパーライトは非常に軽量であり、膨張させると多孔質構造、高い吸水性、断熱性などの特性を有する。パーライトくずについても同様に高い吸水性が確認されており、産業廃棄物の有効利用といった面の効果も得られる。
【0027】
請求項5に係る発明は、請求項1、2または3に係る軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトが、真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が2.5mm以下で密度が0.15kg/m3のもの、または真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が50mm以下で密度が0.17kg/m3のもの、またはこれらを所定の割合で加えたものであることを特徴とするものである。
【0028】
これらは、製品のパーライトとして市販されているものであり、後述の実験結果において、期待する良好な保水性能が得られたものである。
【0029】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5に係る軽量保水性ブロックにおいて、前記繊維材料が木材から抽出した耐アルカリ性天然セルロースの短繊維であること特徴とする水硬性組成物。
【0030】
市販品として、例えばバッカイ社の製品名「ウルトラファイバー500」があり、コンクリートやモルタルに添加することにより、ひび割れ低減に効果を発揮し、強度、耐久性の向上が可能であることが知られている。
【0031】
この製品は、木材から抽出した、耐アルカリ性天然系セルロースを100%使用したものであり、繊維長が短く、直径が小さく、繊維数が多く、見掛け密度も大きいことにより、優れた分散性を発揮することができる。
【0032】
また、繊維の形状が導管状であるため、繊維質量に対して約80%の質量の水分を保持することができるため、セメントとの親和性に富み、セメント水和物と直接結合することができることから、ブロックの保水性を向上させることができる。配合量としては、「ウルトラファイバー500」の場合で、4〜6kg/cm3の範囲で、高い保水性が得られることを確認している。
【発明の効果】
【0033】
本発明の軽量保水性ブロックは、低強度であるが、非常に軽量で高い保水性能を有するため、荷重が作用しない条件あるいは低荷重条件での使用において、ヒートアイランド現象の緩和に非常に高い効果を発揮することができる。
【0034】
また、非常に軽量であることから、運搬性、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実験1の保水性試験に用いた湿潤状態にする装置の説明図である。
【図2】実験1の吸水試験に用いた吸水性試験装置の説明図である。
【図3】実験1の締め固め性試験における単位セメント量220kg/m3でのCi図である。
【図4】実験1の締め固め性試験における単位セメント量270kg/m3でのCi図である。
【図5】実験1の締め固め性試験における単位セメント量320kg/m3でのCi図である。
【図6】実験1の圧縮強度試験におけるNo.18、No.19およびNo.20の配合での1日強度と14日強度比較図である。
【図7】実験1の圧縮強度試験における密度−圧縮強度分布図(材齢14日シリーズ)である。
【図8】実験1の圧縮強度試験における密度−圧縮強度分布図(材齢1日シリーズ)である。
【図9】実験1におけるセメント量毎の密度−吸水率分布図である。
【図10】実験1におけるパーライト体積置換率毎の密度−吸水率分布図である。
【図11】実験1における単位PS灰量毎の密度−吸水率分布図である。
【図12】実験1における密度−保水量分布図である。
【図13】実験1における吸上高さ分布図である。
【図14】実験2における密度−吸水率分布図である。
【図15】実験2における吸水率比較図である。
【図16】実験2における密度−圧縮強度分布図である。
【図17】実験2における密度比較図である。
【図18】実験2における保水量比較図である。
【図19】実験2における密度−保水量分布図である。
【図20】実験2における吸上げ高さ図である。
【図21】実験3における圧縮強度比較図である。
【図22】実験3における吸水率比較図である。
【図23】実験3における密度比較図である。
【図24】実験3における密度分布図である。
【図25】実験3における圧縮強度分布図である。
【図26】実験3における吸水率分布図である。
【図27】実験4における密度比較図である。
【図28】実験4における圧縮強度比較図である。
【図29】実験4における保水量比較図である。
【図30】実験4における吸上げ高さ図である。
【図31】実験4における吸水率比較図である。
【図32】実験5における試験手順を示す図である。
【図33】実験5における照射試験装置の図である。
【図34】実験5における照射試験表面温度の図である。
【図35】実験5における照射試験底面温度の図である。
【図36】実験5におけるブロック水分蒸発量測定結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明における配合を求めるために行った予備的実験を含む実験結果と好ましい実施形態について述べる。
【0037】
既往の研究より、リサイクル材料であるペーパースラッジ灰(PS灰)をコンクリート用混和材料として使用する際、PS灰の主成分であるシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)によるポゾラン反応によって強度増加が期待できることが確認されている。また、保水性を有するPS灰を使用することによって、ブロックに保水・吸水性を付与させることが可能であることも確認されている。
【0038】
本発明の目的は、屋上等に設置する高い保水性を有するブロックを提供することであり、この保水性ブロックに求められる性能としては、屋上に設置し、荷重を受けないブロックであることから、圧縮強度は一般コンクリートより小さくても問題が発生しないと考えられる。
【0039】
それに加え、温度低減効果を一般的なものよりさらに高くすること、屋上という場所や運搬・作業性を考え、ブロック重量をより軽いものとすることが望ましいと考えられる。よって、実験における保水性ブロックの仮の目標値を以下のように定めた。
【0040】
1) 密度1.0g/cm3
2) 吸水率80%
3) 圧縮強度1N/mm2
【0041】
また、これらの実験を行うことにより、リサイクル材料およびコンクリート用補強天然繊維(バッカイ社の商品名「ウルトラファイバー500」、以下、「UF500」という。)を使用した軽量保水性ブロックを試作し、軽量・保水特性について把握した。
【0042】
〔実験1〕セメント量・PS灰量の選定
(1) 概要
【0043】
上述の仮の目標値である密度1.0g/cm3、吸水率80%、圧縮強度1N/mm2の軽量ブロックの開発のため、実験1では、単位セメント量・単位PS灰量を強度増加領域内で変化させ、強度・吸水量・密度の変化傾向を確認し、その使用量の最適値を選出することとした。
【0044】
(2) 使用材料
実験1における使用材料を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実験1では目的のブロックを試作するにあたり、リサイクル材料と保水性の有する天然コンクリート補強繊維を用いた。
【0047】
(3) 配合条件および示方配合
実験1では、既往のインターロッキングブロックに関する研究結果より、最適とされた配合に基づき、単位セメント量は320kg/m3、単位水量は160kg/m3、単位PS灰量を200kg/m3としたものを基本配合とし、その他の骨材に関しては軽量化のため全量パーライトくずに置換した。
【0048】
基本配合を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表3、表4にそれぞれ材齢14日のシリーズおよび1日のシリーズの示方配合を示す。単位セメント量を320、270、220kg/m3の3水準、単位PS灰量を160、200、240kg/m3の3水準、軽量化・強度増加のため、パーライトくず−硬質パーライトの体積置換率(体積割合)を100−0、50−50、0−100の3水準、組み合わせ計27配合について試験を行い、吸水率、強度、密度について確認した。ここで、UF500の混入量はモルタルに対する最大添加量である5kg/m3とした。
【0051】
【表3】
【0052】
注:No.18は材齢一日で圧縮試験を行った。
【0053】
【表4】
【0054】
ただし、ここで養生は製品工場で行われているものと同様とし、以下の通りとする。
前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃を4h保持、以下自然降下。
【0055】
なお、製品工場における製品の出荷までの日数が14日程度であることに準じ、材齢14日において強度を測定したが、試験の進行速度を考慮し、表4では1日材齢で実験を行った。
【0056】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
練り混ぜには、公称容量10Lのオムニミキサーを用いた。練り混ぜ方法は、材料投入後30秒間空練りし、練り混ぜ水投入後1分間練混ぜた。
【0057】
練り混ぜ後の材料は、十分な剛性を持った型枠を基層投入し、振動を加え、1日養生後、即時脱型を行った。
【0058】
(5) 試験項目および試験方法
試験項目を以下に示す。
【0059】
(5)-1 締め固め性試験
締め固め性試験は「JSCE-F 508 締め固め性試験方法」に準じて行った。試験方法を以下に示す。
【0060】
1.変位計の調整:非接触型変位計の0点を、試料高さ200mmに調整する。
【0061】
2.試料の計量:コンクリートの示方配合に基づいて、試料容器の内高200mmの容器(3.534l)に相当する試料を正しく計り取る。
【0062】
3.試料の投入:試料は、手練り用さじを用い、粗骨材が集中しないよう均等性に注意し、こぼさないようにしながら3層に詰め、各層を直径16mmの突き棒で10回均等に突き、試料上面がほぼ平らとなるよう突き棒で均す。
【0063】
4.試料容器の装着:試料を詰めた試料容器を振動台に装着して固定し、滑り棒を滑動させて静かに上載板を試料上面まで降ろす。
【0064】
5.初期データの入力:試料名、コンクリートの単位容積質量、振動条件(加速度、振動数、振幅のうち、振動台の振動を制御するのに必要な任意の2条件と計測時間間隔および振動時間)を入力する。
【0065】
6.計測の開始:スイッチを投入し、データ処理系および機会振動系を駆動させる。
【0066】
データ処理方法
7.データ処理プログラムは、計測開始の入力により、機会振動系を駆動させるとともに、所定の計測時間間隔Δtで試料上面の変位xiの電気信号を取り込むようになっていなければならない。
【0067】
8.任意の時間tiにおける試料の充填率γtiは、次式によって計算する。
γti=h/(h+xi)×100
ここに、h:試料の充填率100%における高さ(=100mm)
【0068】
9.任意の締め固め仕事量Etiは、次式によって計算する。ただし、試料の密度mtiは直前の計測時間における充填率と示方配合から求めた単位容積質量から計算する。
Eti=mti・αmax2・ti/(2π)2f
ここに、Eti:締め固め仕事量(J/l)、mti:試料の密度(kg/l)、αmax:正弦波振動の最大加速度(m/s2)、ti:振動時間(s)、f:振動数(s-1)
【0069】
10. 締め固め関数は、充填率と締め固め仕事量に関する1組のデータを、最小自乗法によって次式に近似する。
γt=Ci+(Cf−Ci){1−exp(−bEtd)}
ここに、γt:締め固め時間tにおける充填率(%)、Et:締め固め時間tにおける締め固め仕事(J/l)、Ci:初期充填率(%)、Cf:達成可能充填率(%)、bおよびd:実験係数
【0070】
11. 締め固め効率Ceは、締め固め仕事量1J/lにおける締め固め関数の勾配として、次式によって計算される。
Ce=bd(Cf−Ci)E(d−1)exp(−bEd)
【0071】
12. 締め固め完了仕事量E98は、締め固め関数に充填率98%を代入したときの締め固め仕事量として、計算によって求める。
【0072】
(5)-2 保水性試験
保水量を求めるため保水性試験を行った。保水量は、湿潤質量と絶乾質量および供試体の体積を求めて、以下の式で算出する。
保水量(g/cm3)=(湿潤質量(g)−絶乾質量(g))/供試体の体積(cm3)
ここに、
【0073】
湿潤質量:15〜25℃の静水中で24時間吸水させた後、供試体を取り出して図1のような密閉式のプラスチック容器に入れて、15〜30℃の室温で30分間水を切り、絞った濡れウエスで目に見える水分をぬぐった後、直ちに計測した時の質量。
【0074】
絶乾質量:温度105±5℃の乾燥機内において一定質量となるまで乾燥した後、常温まで冷却したときの質量。
【0075】
(5)-3 吸水試験
吸水性試験は、30分間の水の吸い上げ高さを求めるものであり、試験方法を以下に記す。
【0076】
1.ブロックを温度105±5℃の乾燥機内で一定質量になるまで乾燥した後、常温まで冷却する。
【0077】
2.ブロックを図2に示す吸水性試験装置に設置する。設置後の水位はブロック底面から5mmの高さとなるようにし、水は15〜25℃の清水とする。供試体設置台の上面には、金網などのブロック底面に水が回るような材料を用いるか、吸水性のスポンジを挟む。
【0078】
3.30分経過後にブロックを取り出し、水が滴り落ちない程度まで水を切り、絞ったウエスで目に見える水滴をぬぐう。この時の質量を30分後の吸い上げ質量とする。
【0079】
4.ブロックを湿潤状態とし、湿潤質量を量る。
【0080】
5.吸い上げ高さは、以下の計算式より求める。
吸い上げ高さ(%)=(30分後の吸い上げ質量(g)−絶乾質量(g))/(湿潤質量(g)−絶乾質量(g))×100
【0081】
保水性舗装用コンクリートブロック品質規格による各項目の製品の規格値を表5に示す。
【0082】
【表5】
【0083】
(5)-4 圧縮強度試験
「JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。ただし供試体の成型方法は加圧振動による成型とした。養生は蒸気養生とし、養生条件は製品工場における製品の出荷までの日数が14日程度であることに準じ、材齢14日において強度を測定した。また、供試体寸法および質量を測定し、見かけ密度の算出を行った。
【0084】
(6) 試験結果および考察
(6)-1 締め固め試験結果
一般的に、粉体量が少なすぎる場合、達成可能充填率は100%以下となり、良好な締め固めを行うことができなくなるとされる。しかし、すべて27配合の達成可能充填率Cfおよび締め固め効率Ceについては、使用した材料に係わらずほぼ100%に達し、100%を超える場合もあった。
【0085】
これは、基本配合において軽量化を図るため細骨材の全量を粉体としたことが原因だと考えられる。また、充填率が100%を超える配合があった原因は試験を行った際に振動加圧により水分がコンクリート表面に出て、型枠から抜けたことであると考えられる。
締め固め性試験結果を、図3〜図5に示す。
【0086】
既往の研究より、初期充填率(Ci)は、容器に試料を詰めたときの充填率で、単位水量およびモルタル骨材空隙比の増加にしたがって大きくなる傾向がある。
【0087】
単位セメント量220、270および320kg/m3の場合ともに、単位PS灰量160kg/m3を用いた配合のCiが比較的大きかった。よって、単位PS灰量が小さい時、より締め固めが容易であることが分かった。また、本実験では、初期充填率が90%を超える配合が多く見られ、今回用いた配合においてはブロックの締め固めが容易であることが確認された。
【0088】
試作したブロックでは一般コンクリート用の骨材を使用せず、粉体であり粒径の細かいPS灰、パーライトくずを多量に使用していることから、締め固め後、骨材間の空隙が小さく、組織が密となったためCiが大きくなったと考えられる。
【0089】
(6)-2 ブロック各種性状試験結果。
試験結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
材齢14日の圧縮強度はすべて目標値を満足する結果となった。
【0092】
試験を行っている中で、材齢14日の強度が目標値を明らかに上回る大きな値となったため、試験の進行速度を考慮し、材齢1日の強度においても目標値を満足する場合、材齢1日の強度の測定でブロック性能を十分検討できると考えられる。
【0093】
ここで、No.18、No.19,およびNo.20の配合において、1日強度、14日強度を測定したものを表7に示す。
【0094】
【表7】
【0095】
それら強度の関係を図6に示す。
【0096】
表7より、3配合の強度において、1日強度と14日強度ともに3N/mm2 以上であり、目標値を大きく上回ったことが確認された。14日強度が1日強度より大きいと予想できると考えられるため、後は1日強度を測定することとした。
【0097】
1日強度を測定した配合の試験結果を表8に示す。
【0098】
【表8】
【0099】
密度と圧縮強度分布を図7、図8に示す。
【0100】
図7、図8に示すように、1日強度が14日強度に比べ、多少小さい値となったが、1日強度、14日強度ともに目標値1N/mm2を上回ったことが確認された。1日強度も目標値の3倍の大きな値となった。
【0101】
これは、既往の研究と同様に、本研究では単位セメント量200kg/m3以上かつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲でコンクリートを配合したため、水和反応の際に水酸化カルシウムが多く生成され、PS灰によりポゾラン反応が十分に生じたことより、圧縮強度が増大したと考えられる。
【0102】
全27配合ともに1日養生で密度、吸水率、保水量、吸上げ高さ試験を行ったため、ブロック性状の変化傾向をより把握しやすくするため以下、全27配合の試験結果を同時にグラフに示す。
密度−吸水率分布を図9、図10および図11に示す。
【0103】
図9に単位セメント量毎の密度‐吸水率分布を示し、図10にパーライトくずと硬質パーライトの体積置換率(割合)が100-0(パーライトくず100%に対して硬質パーライト0%)、50−50(パーライトくず50%に対して硬質パーライト50%)、0−100(パーライトくず0%に対して硬質パーライト100%)の場合の試験結果を表した。
【0104】
図9より、単位セメント量が220、270kg/m3の場合は単位セメント量320kg/m3の場合と比べ、吸水率が高く、密度が小さいことが分かる。単位セメント量が320kg/m3における密度は目標値より大きい傾向が多く見られ、単位セメント量が大きくなるにつれてブロックの密度は大きくなることが分かる。
【0105】
単位セメント量が320kg/m3における吸水率が比較的劣る結果となった。これは、密度が大きくなったことより、試験体に含む空隙が減少し、間隙内に含むことのできる水分が減少したことが原因と考えられる。
【0106】
図10より、パーライトくずと硬質パーライトの体積割合が100−0の場合、ブロックの密度が目標値を満足した。吸水率に関しても体積置換が100%の場合は、吸水率の目標値(80%)を満足しないものの良好な傾向を示した。これは、パーライトくずの吸水率が硬質パーライトのそれより高いことが原因だと考えられる。
【0107】
したがって、単位セメント量が220kg/m3かつパーライトくずを100%用いた組み合わせの場合、ブロックの密度が小さく、吸水率が高い傾向が得られたため、実験1の範囲では最も好ましい値であると考えられる。
【0108】
また、図11に単位PS灰量毎の密度‐吸水率分布を示す。単位PS灰量が160、200、240kg/m3の配合では類似した分布が見られ、近似直線でも著しく変化の傾向が見当たらないため、今回の範囲ではまだ単位PS灰量を選定することは難しいと考えられる。また、全27配合の吸水率は最大でも55%以下であり、目標値を大きく下回っているため、その後の実験において、単位PS灰量を種々変化させてブロック性状に及ぼす傾向を把握することとした。
【0109】
図12に密度−保水量分布を示す。
パーライトくずと硬質パーライトの体積割合(PA−PW)が0−100の場合では、保水量の最大値が0.45g/cm3、最小値が0.33g/cm3であり、また密度の最大値が1.52g/cm3、最小値が1.10g/cm3であるため、最大値・最小値の差が大きく、製品の製造に良くないと考えられる。
【0110】
逆に、パーライトくず100%に対して硬質パーライト0%の場合では、密度が小さいとともに、保水量が大きい、最大値・最小値の差が小さいため、ブロックは軽量で吸水率・保水性が良いことが確認された。したがって、以後の実験においては、パーライトくずを100%使用した配合を使用することとした。
【0111】
また、全27配合ともに保水量の規格値を満足した。こらは、今回用いたリサイクル材料およびコンクリート補強用繊維は保水性に優れる材料であるため、保水性を友試体に付与したことが原因だと考えられる。
図13に吸上げ高さ−密度の図を示す。
【0112】
吸上げ高さについても図13に示すように吸上げ高さの規格値(70%)を満足し、非常に良好な結果が得られた。これは、本研究ではリサイクル材料であるPS灰、パーライトくずを用いたことと、繊維数が多く繊維自重の約80%が保水性を有するコンクリート用補強天然繊維(UF500)を導入したことが原因で、吸上げ高さが向上されたと考えられる。
【0113】
〔実験2〕 パーライトの選定
(1) 概要
実験1でのセメント量・PS灰量の選定の結果より、単位セメント量220kg/m3でパーライトくずを100%混入した場合に、保水量・密度ともに最も良好な結果が得られた。しかし、吸水率については最大でも50%前後と目標値は満足していない。よって、吸水率が目標の80%に達するように、更にパーライトの種類を変え、その吸水率の変化傾向を得ることとした。本節では3種類のパーライトを用いて実験を行い、吸水率の目標を満足する配合を提案するとともにブロックの軽量・保水性状を把握した。
【0114】
(2) 使用材料
使用材料を表9に示す。
【0115】
【表9】
【0116】
ここで使用したパーライトは東興パーライト社製の硬質パーライト(P5B)、太平洋パーライト社製のパーライト細(P2)およびパーライト粗(P3)とした。P2とP3は真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させたものであり、軽量かつ白色の建設材料用パーライトである。軽量性、保水性など優れた特徴がある。P2は粒度が2.5mm以下、密度が0.15kg/m3のものであり、P3は粒度が5mm以下、密度が0.17kg/m3のものである。また、P5Bは、真珠岩等水分を含むガラス流紋岩類を粉砕後、高温で焼成発泡させたものであり、粒度が5mm以下で密度が0.20kg/m3のものである。
【0117】
これらは非常に軽量な材料であり、高い吸水性の特性を有する材料でもある。このため、これらを使用することにより、より高い吸水率を有するブロックの開発が期待できると考えられる。本章では、各配合の実験を行い、試作されたブロックの性状を比較し、本研究に最も適用する配合かつパーライトの種類を選定する。
【0118】
(3) 示方配合
セメント量・PS灰量の選定の結果より、単位セメント量220kg/m3、パーライトくずが100%の組み合わせにおいて密度・吸水率のよい結果が得られている。よって、単位セメント量220kg/m3の場合において、パーライトを3種類変化させ、性状に及ぼす傾向を把握し、目的値達成可能なパーライトを選定することとした。
【0119】
また、PS灰は実験1よりブロックの性状の大きな変化の傾向が見られなかったため、単位PS灰量を160、200、240kg/m3の3水準を変化させた。よって、PS灰の3水準、パーライトをP2、P3、P5Bの3種類を組み合わせた9配合、さらに単位PS灰量160kg/m3、P2、P3を50%ずつ混合した配合を加えた。合計10配合について実験を行った。
示方配合を表10に示す。
【0120】
【表10】
【0121】
*ただし養生は実験1と同様とした。
【0122】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
実験1と同様とした。
(5)-5 試験項目
実験1と同様とした。
【0123】
(6) 試験結果
試験結果を表11に示す。圧縮強度は実験1で述べた理由から1日強度で評価するものとした。
【0124】
【表11】
【0125】
図14に密度−吸水率の関係について示し、図15に各種のパーライトにおける吸水率の比較を示す。P2およびP3を用いた場合、吸水率は目標の80%に近い値を示している。P5Bを使用した場合、密度と吸水率ともに目標値を満足しなかった。これは、P5BがP2、P3より硬質であり、細かいため、閉め固めおよび振動加圧により材料が密となり、試験体の空隙が減少し、毛細管現象が発生しにくく、水を吸い込まれることが困難であることが原因だと考えられる。
【0126】
図16、図17に密度と圧縮強度の関係および各種パーライトにおける密度比較について示す。
【0127】
図16より、P5Bを使用した場合、P2、P3を用いた場合と比べ、圧縮強度は減少する結果となった。図17より、P5Bを用いた配合はP2,P3を用いた配合より密度は大きな値となった。これは、P2、P3の密度と比べ、P5Bは大きいため、これを用いた試験体の密度も大きくなるものと考えられる。よって、P2、P3を用いることが好ましいと考えられる。
【0128】
図18に保水量の結果を示し、図19に密度−保水量の分布図を示す。
図18より、P2を使用した配合は、保水量が0.52g/cm3以となり、最大でも0.50g/cm3を超えていないP3およびP5Bを使用した配合と比較すると、良好な結果が得られた。
また、図19より、全配合の保水量が規格ラインを超える結果となった。
【0129】
吸上げ高さについても、図20に示すように全配合の吸上げ高さが90%を超え、規格値の70%より大きく上回った。保水量と吸上げ高さともに規格を満足したことが確認された。
【0130】
実験1で述べたように、今回試作したブロックでは一般コンクリート用の骨材を使用せず、粉体であり、粒径の細かい保水性を有するPS灰、パーライトくずを多量に使用したとともに吸水率80%を有するコンクリート用補強天然繊維を混入したため、保水性と吸水性が良好な結果を得られたものと考えられる。
【0131】
実験1、実験2のまとめ
単位セメント量が増加するにつれ、ブロック密度も増加した。
【0132】
今回の配合において、各種ブロック性状の目標を満足するためには、単位セメント量は220kg/m3以下である必要がある。
【0133】
PS灰、パーライトくずのリサイクル材料を用いてのブロック吸水率は50%が最大であった。
【0134】
単位セメント量270±50kg/m3、単位PS灰量200±40kg/m3の強度増加レベル内であれば材料1日においても圧縮強度1N/mm2以上のブロックの作製が可能である。
【0135】
リサイクル材料を用いる事により、低強度レベルであれば、保水性舗装用コンクリートブロック品質規格に決まれる保水量の規格値を満足し、かつ2倍以上の性能を得る事ができる。
【0136】
リサイクル材料を用いることにより、低強度であれば、保水性および吸上げ高さの規格値を十分満足するブロックの作製が可能である。
【0137】
製品のパーライト細又パーライト粗を用いることで、70%程度の吸水率を持つブロックの作製が可能である。
【0138】
〔実験3〕 実機試験
(1) 概要
【0139】
実験1、2の結果より、吸水の目標値は満足しないのもの良好な性状を持つブロックの作製ができた。そこで、これらの室内実験結果から、製品工場実験を行った。
【0140】
ここで、実験1、実験2において良好であった配合に加え、工場の実機を用いることによる傾向を把握するため、種々の配合を選出し、実験を行った。
【0141】
(2) 使用材料
使用材料を表12に示す。
【0142】
【表12】
【0143】
(3) 配合条件
配合を表13に示す。
【0144】
実験1、実験2の結果より、目標の軽量保水性ブロック性状に最も近い配合をもとに、5配合について実機実験を行った。また、同配合において、室内試験も行い、実機のものとの比較を行った。養生は実験1と同様とした。
【0145】
【表13】
【0146】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
今回比較用に実製品製造ラインについてブロックを作製しての諸性状把握実験の他に、室内実験にて、締め固め性試験を行っており、工場と室内実験では練り混ぜ方法が異なるため、以下に記す。
【0147】
ミキサーはオムニ型ミキサーを用い、セメントと粉体を入れて30秒まぜた後,水と混和剤を入れて1分間練り混ぜた。
【0148】
練り混ぜ後の材料はベルトコンベアーで運ばれ、十分な剛性を持った型枠にテーブルバイブレーター(振幅1.5mm、振動数90Hz)を用い、30kN/m2のプレスと振動(振幅0.3mm、振動数110Hz)を基層投入後2秒間、表層投入後7秒間の計9秒間加え、振動締め固め後、即時脱型を行った。
【0149】
作製した供試体は、平面寸法198×98mm、厚さ5mmの着色可能な表層部と55mmの基層部にて構成される。
【0150】
(5) 試験項目
(5)- 保水性試験
【0151】
保水量を求めるため保水性試験を行った。保水量は、湿潤質量と絶乾質量および供試体の体積を求めて、実験1と同様、以下の式で算出した。
保水量(g/cm3)=(湿潤質量(g)−絶乾質量(g))/供試体の体積(cm3)
【0152】
(5)-2 吸水試験
吸水性試験は、30分間の水の吸い上げ高さを求めるものであり、試験方法は実験1と同様である。
(5)-3 圧縮強度試験
「JIS A 1106 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。
【0153】
(6) 試験結果
試験結果を表14に示す。
【0154】
【表14】
【0155】
また、圧縮強度、吸水率、密度の結果を図にまとめたものを図21〜図23に示す。ただし、実験1の実験結果より、全配合における保水量および吸上げ高さが規格値を満足したため、ここで目標のブロックの性能の密度、圧縮強度および吸水率のみについて検討することとした。
【0156】
図21より、圧縮強度はほぼすべての配合において室内試験の配合よりも大きな値となった。これは、実機試験におけるプレスが室内試験のものより大きく、締め固めによる試験体が密となったため、強度が増加したものと考えられる。
【0157】
図22より、吸水率については、実機試験のものと室内試験のもので同様の傾向を示した。しかし、すべての配合において吸水率は室内試験のものより減少し、40%以下となった。これは、前述の通り、試験体が密となったため、空隙が減少し、空隙内に含むことのできる水分が減少したことが原因と考えられる。また、空隙が減少したため、毛細管現象が阻まれてしまったことも原因の一つであると考えられる。
【0158】
図23より、密度については、実機試験のものは室内試験のものと比べ、大きくなった。これは、前述の通り、試験体が密になり、残存空隙が少なくなってしまったため、密度が大きくなってしまったものと考えられる。
【0159】
また、図21、図22の結果より、全配合において、実機試験の強度は室内試験のものより大きい、また実機試験の吸水率は室内試験のものより小さい結果が得られたため、密度についても実機試験のものは室内試験のものより大きい結果となるはずが、図23に示すように、No.2、No.3では、実機のものは室内のものより小さい結果となってしまった。これは、パーライト(P2、P3)が非常にもろい材料であり、締め固めの際、実機のプレスによりパーライトがつぶされてしまい、パーライトの粒径が変化し、試験体の体積が大きくなってしまったためではないかと考えられる。
【0160】
(7) 成型機試験の条件を変化し、実機試験結果を再現
(7)-1 概要
実機試験では室内実験と比べ、吸水率が減少し、40%以下となった。
【0161】
実機および室内試験の締め固めにおけるプレス条件が異なるためブロックの性状が異なったと考えられ、ここで、室内においても実機試験の条件を再現するため、室内にて簡易型ブロック成型機を用いて5秒〜30秒プレス時間を変化させ、試験を行った。これより、ブロックの各種性状を把握し、実機試験を再現できるプレス時間を求める。
【0162】
(7)-2 使用材料
(1)-2と同様とした。
【0163】
(7)-3 配合条件
【0164】
表13のNo.2が実機試験と室内試験ともに吸水率が最も高い結果が得られた。よって、ここでは、単位セメント量220kg/m3、単位パーライト細(P2)量118kg/m3、単位PS灰量160kg/m3とした配合No.2について、それぞれのプレス時間で試験を行った。
【0165】
(7)-4 練り混ぜ方法および供試体作製方法
【0166】
締め固め試験については、公称容量10Lのオムニミキサーを用いた。材料投入後30秒間空練りし、練り混ぜ水投入後1分間練混ぜた。練り混ぜ後の材料は、十分な剛性を持った型枠を基層投入し、振動を加え、1日養生後、即時脱型を行った。
【0167】
供試体は簡易型ブロック成型機(以下成型機)を用いて、平面寸法198×98mm、高さ55mmにて構成される。
【0168】
(7)-5 試験項目および試験方法
実験1と同様とした。
【0169】
(7)-6 試験結果
試験結果を表15、表16に示す。
【0170】
【表15】
【0171】
【表16】
【0172】
図24に密度分布を示す。プレス時間を30秒追加した後、得られる密度の結果が目標の値を下回ったが、近似直線がやや上に傾いていることが分かった。近似直線の方程式が単調増加であるため、時間を増やすことにより、密度が増加する傾向が確認された。これは、プレス時間を増やすことにより、フレッシュコンクリートに含まれる空気量がだんだん減少するため、試験体がより密となった現象であると考えられる。
【0173】
図25より、密度と同様に圧縮強度についてもこれらの現象が確認された。プレス時間が増えることより、空気量が減少し、試験体がより密となるため、圧縮強度も大きくなったと考えられる。
【0174】
図26に吸水率分布を示す。プレス時間を増やすことより、吸水率が減少し、近時直線が下に傾いている。これは、試験体に含まれる空気量が減少し、試験体が密となったため、空隙内に含むことのできる水分が減少したことが原因と考えられる。また、空隙が減少したため、毛細管現象が発生しにくくなったことも原因の一つであると考えられる。
【0175】
これまでの実験結果より、密度は本研究の目標値1g/cm3を満足しており、また、圧縮強度についても、全体的に本研究の目標値1N/mm2を満足した。したがって、問題となった実機試験における吸水率の減少の解決方法を探すため、簡易型ブロック成型機試験における吸水率の結果から近似直線を用いることにより、実機試験を再現する簡易型ブロック成型機におけるプレス時間を暫定的に求めることとする。
【0176】
実機試験における吸水率の値を得られるために必要なプレス時間は近似直線により以下の関数から求めることができると考えられる。
y=−0.1748x+53.457
ただし、
yは吸水率(%)、
xはプレス時間(s)
を示す。
【0177】
ここで、実機試験から得られた吸水率の目標値は表15に示したように40.2(%)である。したがって、上式を用いて、実機試験結果を同等の吸水率を得ることのできるプレス時間を算出すると、必要なプレス時間は1分15秒と求めることができる。
【0178】
このプレス時間は推測値であるが、今回は暫定的にこのプレス時間1分15秒を室内における簡易型ブロック成型機を用いて、実機試験結果と同等の性能のブロックを作製することのできるプレス時間と設定した。この条件において後の、吸水率の目標値を満足する配合を選出するためブロック性能の改良試験を行うこととした。
【0179】
(8) まとめ
実機試験において、プレスが大きいため、圧縮強度が室内試験より増大結果となった。
密度についても室内より大きい結果となったが、目標値を満足したことが確認された。
実機試験において、プレスが大きいため、吸水率が室内試験と比べ、低い結果となった。
【0180】
簡易型ブロック成型機試験において、圧縮強度および密度ともに目標値を満足したブロックの作製が可能である。
【0181】
暫定的にプレス時間1分15秒を室内における簡易型ブロック成型機を用いて、実機試験結果と同等の性能のブロックを作製することのできるプレス時間と設定した。この条件において後の、吸水率の目標値を満足する配合を選出するためブロック性能の改良試験を行うこととした。
【0182】
〔実験4〕
(1) 概要
【0183】
これまでの試験結果より、単位セメント量220kg/m3およびパーライト細(P2)またパーライト粗(P3)を使用した場合、試験体の性能が良い傾向であることが分かった。また、実験2より、プレスを1分15秒とすることにより、実機試験を室内で再現できることが分かった。
【0184】
そこで、実験4ではプレスを1分15秒とし、各種ブロック性状を満足する配合を選出するため実験を行った。
【0185】
(2) 使用材料
使用材料を表17に示す。
【0186】
【表17】
【0187】
(3) 示方配合
配合を表18に示す。
【0188】
PS灰はパーライトに比べ密度が大きく、吸水率も小さい。今回、目標を満足する配合を選出するにあたり、強度の目標値は満足していること、プレスにより室内実験よりも材料が密となり強度が増加すること考察し単位PS灰量を100kg/m3とした。また、P3はP2より粒度の粗いものであり、これを段階的にP2に置換することにより、粒度分布を変化させ、最も毛細管現象の効果が大きくなる比率を選出するため、P2に対するP3の体積置換率を0〜100%変化させた6配合について実験を行った。
【0189】
【表18】
【0190】
養生は実験1と同様とした。
【0191】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
実験1と同様とした。
(5) 試験項目
実験1と同様とした。
【0192】
(6) 試験結果
試験結果を表19に示す。
【0193】
【表19】
【0194】
図27より、全6配合ともに密度が目標値を満足したことが確認された。特に、パーライト粗置換率が80%および100%の場合において、密度が比較的小さかったため、ブロックの軽量性をより改善できると考えられる。これは、P3の粒子がP2のものより大きく、硬質であるため、締め固めにおけるプレスによって、P2を多く使用する場合の方が密となり供試体の残存空隙が少なくなり、体積が小さくなったため密度が大きくなったことが原因であると考えられる。
【0195】
また、表18および表19より、配合上の計算される配合密度と実密度を比較するとすべての配合において、実密度の方が配合密度より大きくなった。これは、振動加圧成型により、空気量は5%以下となっていること、およびPS灰、繊維の吸水率が高く、余剰水を吸水していることが原因であると考えられる。
【0196】
図28より、パーライト粗P3の体積置換率が80%および100%を用いた場合、圧縮強度がP2を用いた場合と比べ、減少する結果となった。これは、前述の通り、P2を多く使用する場合、供試体が密となったため、強度が増大したものと考えられる。P3をまったく用いない配合No.1において、P2を使用することで、プレスより供試体が密になり、圧縮強度は最も大きい値となるはずが、図28に示したように劣る結果となってしまった。これは、P3をまったく用いなかったため、P3の硬質性による強度がないことが原因であると考えられる。
【0197】
図29に保水量比較図を示す。上述より、P2を使用することで供試体が密となり、水分が含めることのできる残存空隙が減少するため、保水量が小さいと考えられるが、図29に示すように、その傾向が見られなかった。全6配合において、保水量及が規格値を大きく上回った。これは、PS灰およびパーライトを多く用いたため、水分が多く含まれると考えられる。
【0198】
図30より、吸上げ高さが全6配合ともに90%を超え、非常に良好な結果となった。この結果が得られた原因は保水性に優れる材料を使用したこと、それに加えコンクリート補強用天然繊維を使用したことであると考えられる。繊維の形状が導管状であるため、供試体がより多くの水分をより早く吸上げることができると考えられる。
【0199】
図31より、実験3の結果と比べ、吸水率が多少改良されたが、仮の目標値の80%をまだ満足していない結果となった。吸水率の目標値を満足していない配合の中、パーライト粗(P3)の体積置換率が80%を用いた場合、最も高い吸水率が得られた。
【0200】
これは、締め固めのプレス圧より、P2を使用した場合、残存空隙が少ないため、水分を多く含むことができない、逆に、P3を多く使用した場合、P3粒子の性状が粗いものなので、供試体の空隙における毛細管現象が発生しやすいことが原因と考えられる。P3の体積置換率が60%の配合No.3の場合において、吸水率が劣る結果となった。これは、図27に示したように、P3の体積置換率が60%の場合、密度が最も大きかったため、プレスにより、供試体が密となり、空隙率が減少してしまったことが原因であると考えられる。
【0201】
図27〜図31より、圧縮強度の目標値を満足した配合No.1〜4の中、パーライトP3の体積置換率が40%を配合したNo.3の場合、比較的に吸水率が大きく、密度が小さい結果が得られたため、目標の軽量保水性ブロックの開発には最も望ましい配合であると考えられる。
【0202】
(7) まとめ
【0203】
ペーパースラッジ灰量を100kg/m3、パーライト細P2を40%パーライト粗P3に置換する配合において、密度および圧縮強度が目標値を満足した。
【0204】
ペーパースラッジ灰量を100kg/m3とすると供に、パーライト細P2を40%パーライト粗P3に置換することによりブロックの吸水率を改善することが可能である。
【0205】
したがって、リサイクル材料およびコンクリート補強用天然繊維ウルトラファイバーを用いることにより、それらの特徴を生かし、軽量保水性ブロックへの適用することが可能であることが確認された。
【0206】
〔実験5〕
(1) 概要
実験4の結果より、圧縮強度の目標値を満足したもののP3の体積置換率が40%場合、比較的良好な結果が得られたことが確認された。そこで、試作されたブロックの温度上昇性能(供試体表面温度)と水分蒸発性能(供試体表面からの水分蒸発量)を相対評価し、ヒートアイランド現象に効果があるかどうか確認のため、照射試験を行った。
【0207】
(2) 供試体
ブロック配合条件を表20に示す。
【0208】
【表20】
【0209】
実験4の試験結果より、ブロック性状を表21に示す。
【0210】
【表21】
【0211】
(3) 試験方法
(3)-1 試験手順
試験手順を図32に示す。
【0212】
(3)-2 試験器具
図33に示す構造の照射試験装置を使用する。照射試験装置と供試体の条件は表21に示す。
【0213】
(3)-3 試験室
雰囲気温度20±3℃、雰囲気湿度65±15%に保持できる恒温恒湿室に照射試験装置を設置する。
【0214】
(3)-4 照射試験法
(3)-4−1 密粒度アスファルト試験体によるランプ高さ(H)の決定
1.図33に示すように、密粒度アスファルト供試体表面の中心に縦20mm×横20mmのアルミテープを貼着する。アルミテープには熱電対を差し込む隙間を空けておく。
2.密粒度アスファルト供試体を15〜25℃の清水中で24時間浸水させる。
【0215】
3.密粒度アスファルト供試体を取り出して、絞った濡れウエスで目に見える水膜をぬぐった後、図33に示すような密閉式のプラスッチック容器に入れ、試験室内で30分間水を切る。
【0216】
4.密粒度アスファルト供試体を取り出して、絞った濡れウエスで目に見える水膜をぬぐった後、図32に示すように断熱材にはめ込む。供試体表面と断熱材の隙間には幅10mm程度のアルミテープを貼着し、隙間から水分が蒸発しないようにする。
【0217】
5.密粒度アスファルト供試体表面のアルミテープの隙間に熱電対を差し込み、アルミテープを押し付けて熱電対と供試体表面を密着させる。温度記録はパソコンに温度データを送信することで記録する。
6.ランプの中心直下に供試体中心を合わせて照射試験装置を設置する。
7.ランプを点灯し、照射を開始する。表面温度の記録は、照射開始から10分毎とする。
【0218】
8.照射時間2〜4時間で供試体表面温度が60℃以上となるようにランプ高さ(H)を決定する。照射開始から2時間以内に表面温度が60℃を超えた場合、または4時間照射しても表面温度が60℃以下の場合は、再度手順を繰り返し、ランプ高さ(H)を調整し直す。
【0219】
(3)-4−2 供試体の準備及び照射試験装置の調整
1.〜5.について、密粒度アスファルトの場合と同様とする
ただし、ランプ高さ(H)は、密粒度アスファルト供試体で調整した高さに合わせる。
【0220】
6.密粒度アスファルト供試体の熱電対の上に放射照時計を設置した後、直ちにランプを消灯する。
【0221】
7.他の供試体におけるランプ高さ(H)は、密粒度アスファルト供試体の放射照度になるように調整する。
【0222】
(3)-4−3 照射試験
1.はかりのゼロ調整を行う。
【0223】
2.ランプを点灯し、照射を開始する。表面温度の記録は、照射開始から10分毎とする。質量減量(すなわち水分蒸発量)の記録は、照射開始から10分毎とする。
3.昼夜の日照を再現するため、12時間ごとにランプの点灯・消灯を行うものとする。
【0224】
(4) 照射試験結果及び考察
照射試験結果は、照射試験条件を表22に、表面温度、底面温度及び水分蒸発量を図34、図35および図36に示す。
【0225】
【表22】
【0226】
図34より、試作軽量保水性ブロックにおける表面温度はほかのブロックと比べ、低い結果であることが確認された。これは、試作軽量保水性ブロックの使用した材料はほかのブロックのものと違い、保水性に優れるものがほとんどであるからだと考えられる。
【0227】
多孔質であるため保水性に優れるペーパースラッジ灰を用いることで、ブロックに保水、吸水性能を付与できる。また、パーライトは非常に軽量であり、膨張させると多孔質構造、高い吸水性、断熱性などの特性を有するため、ブロックの保水性を高めることができる。
【0228】
さらに、コンクリート補強用天然繊維を用いたことより、ブロックの強度が改善できると他に、繊維の形状が導管状であるため、繊維質量に対して約80%の質量の水分を保持することができ、ブロックの保水性を向上することができる。
【0229】
これらの材料を用いたため、ブロックが保持できる水量が非常に多く、ランプ光の影響より、水分が蒸発し、試作ブロックの表面温度は最も低く、3日間通じても60℃以下を保つことができた。製作方法及び用いる材料の違いから、密粒度アスファルトは3日間ともに90℃を超える値を示した。
【0230】
保持できる水量がほとんどないため水分の蒸発散があまりなかったことが原因と考えられる。普通ブロックについても、保持水量が少ないため他のブロックより高い温度となった。市販のセラミック系保水性ブロックは初日に水分を多量に含んでいるため温度が低く、表面温度低減効果が表れている。
【0231】
しかし、間隙のみに水分を保持しているとガラス質であるため水分の抜けが急速であり、2日目以降は90℃近くまで温度が上昇してしまうことも確認された。よって、試作軽量保水ブロックは最も温度低減効果を有すると考えられる。
【0232】
図35より、底面温度の結果では表面温度の結果より全体的に低い結果となった。これはブロックの底面では直接熱を受けないことと、ブロック中の水分が重力により底面に集中するためと考えられる。密粒度アスファルトと普通ブロックにおいては保持できる水量が少ないため温度低減効果はほとんど見られなかった。
【0233】
市販のセラミック系保水性ブロックについては、表面温度と同様に初日に水分が残留しているため低い結果となったが、初日で水分を放出しきっているため2日目からは温度が上昇し、温度低減効果がなく、80℃を超える結果となった。試作軽量保水性ブロックでは、3日間を通じても、保持水量が多く残留し、水分の蒸発散ため、温度低減効果が顕著に表れ、50℃程度の低い結果となった。
【0234】
図36より、表面温度測定間の水分蒸発量は、密粒度アスファルト及び普通ブロックについては、水分の保持がほとんど行わなかったため、水分蒸発散による表面温度及び底面温度の温度低減効果が見られなかった。市販のセラミック系保水性ブロックについては、初日の保持水量が大きいが2日目以降、水分がなくなっているため、密粒度アスファルト及び普通ブロックと同様に温度低減効果が見られなかった。
【0235】
比較的に軽量保水性ブロックにおける保持水量が非常に多く、3日間通じて他のブロックにおける水分がほとんどなくなってしまったが、試作軽量保水性ブロッにおいては、まだ大量に残っている。
【0236】
そのため、図34、図35に示すように試作軽量保水性ブロックは他のブロックより温度低減効果が表れ、長期にわたる水分を保持することができるため、長期間温度低減効果が期待できると考えられる。
【0237】
(5) まとめ
試作した軽量保水性ブロックにおいて、表面温度低減効果が確認された。
【0238】
ブロックの底面においては、表面と異なり、熱を直接受けないこと、ブロックの水分が重力により底面に集中することにより表面より低い温度を示す。
【0239】
試作した軽量保水性ブロックは、長期にわたり水分を保持することが可能なため、温度低減効果が長期間期待できる。
【0240】
試作した軽量保水性ブロックは長期にわたる表面温度低減効果の持続が期待でき、外部からの水分の供給がある状態であれば、更に長期の蒸発散が可能であると考えられるため、ヒートアイランド現象に有効である。
【0241】
〔配合調整〕
以上の各実験結果をもとに、目標値を
1) 実密度0.9g/cm3以下
2) 吸水率50%以上
3) 圧縮強度1N/mm2以上
に置き換えて、表20の配合を基準として、配合における単位セメント量、単位ペーパースラッジ灰量、単位パーライト量の範囲を決めるための配合調整を行った。
【0242】
その結果、単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3、単位パーライト量が100〜125kg/cm3との範囲であれば、上記の新たな目標値をほぼ満足できることが分かった。
【0243】
なお、この配合調整においては、UF500については、4〜6kg/cm3の範囲で配合し、その性能を確認した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてヒートアイランド現象の緩和を目的として使用される比較的低強度の軽量保水性ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市内の気温が周辺地域に比べて上昇するというヒートアイランド現象が顕著化している。それに伴いビルの屋上においても、日中に大量の熱を蓄積するため、夜間になっても表面温度が外気温より高いとともにビル内温度も高くなるという現象が確認されている。
【0003】
これに基づいて、都市における熱環境の悪化を緩和する手段の一つとして、高層ビル等における屋上の熱的特性を改善することが有効であると考えられている。これを具体化する方策の1つとして、ビルの屋上を保水性を有するブロックで覆う方法があり、この方法に適した保水性ブロックの開発が必要である。
【0004】
従来のヒートアイランド現象を緩和するための保水性ブロックに関する技術として、例えば特許文献1には、セメントと、骨材と、水と、保水材とを含む保水性ブロックであって、保水材が、オートクレーブ養生した気泡コンクリートの粒体からなり、かつ、保水性ブロック中の保水材の配合量を、0.16〜0.20m3/m3とした保水性ブロックが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、水硬性組成物からなる多孔質の保水性ブロックにおいて、絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量が0.15g/cm3以上、絶乾状態のブロックの下端部を水に浸し30分経過した後のブロックの質量M30と十分に湿潤状態としたときのブロックの質量Mcwの比の百分率(M30/Mcw)×100%としての吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上であり、十分に湿潤状態とした状態から100〜110℃で加熱して絶乾状態となるまでの湿潤−絶乾時間が48時間以上である保水性ブロックが開示されている。
【0006】
また、その具体的な配合例として、水硬性組成物が、セメント、パーライトくずおよびペーパースラッジ灰が配合された超硬練りの即脱可能なコンクリートであり、ペーパースラッジ灰について単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3とする場合、パーライトくずについて単位パーライトくず量を300kg/m3以上とする場合、単位セメント量を150kg/m3以上、かつ単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3のである場合などが開示されている。
【0007】
その他、特許文献3には、廃棄物であるペーパースラッジ焼却灰の有効利用を図った道路舗装用インターロッキングブロックとして、セメント、ペーパースラッジ焼却灰、および少なくとも一部が軽量骨材からなる骨材を含む保水性ブロックであり、軽量骨材として軽石の破砕物あるいはパーライト粒などを用い、単位セメント量は250〜450kg/m3、単位ペーパースラッジ焼却灰量は30〜700kg/m3、単位軽量骨材量は、150〜700kg/m3がとしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開第3535862号公報
【特許文献2】特開2007−230827号公報
【特許文献3】特開2008−075270号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ヴォンタンヴァン、藤原博巳、川島顕、「軽量屋上保水ブロックの開発に関する研究」、第36回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集、2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3記載の発明では、ヒートアイランド現象の緩和を目的としつつ、同時に廃材の有効利用を図ったものであるが、歩道など路面に用いられるインターロッキングブロックを対象としている。
【0011】
そのため、インターロッキングブロックとしての強度も要求され、軽量骨材の使用などによりブロックの軽量化を図っているものの、保水性の面でも軽量化の面でも限度がある。
【0012】
これに対し、本発明は、保水性によるヒートアイランド現象の緩和効果の向上に主眼を置いたものであり、例えばビルの屋上に設置する場合など荷重条件が緩い条件のもと、荷重、運搬コスト、作業性を考慮し、より軽量で保水性能に優れた保水性ブロックを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る軽量保水性ブロックは、セメントと、ペーパースラッジ灰と、パーライトとを含む水硬性組成物に混練水を加えて加圧成型してなり、配合における単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3、単位パーライト量が100〜125kg/cm3であることを特徴とするものである。
【0014】
セメントとしては、普通ポルトランドセメントを用いることができるが、それ以外のセメントでもよい。
【0015】
単位セメント量が増すにつれて強度が増す反面、ブロックの密度が大きくなる。本発明ではビルの屋上に設置する場合などを考慮し、荷重、運搬コスト、作業性の面から軽量で保水性能に優れた保水性ブロックを目的としており、後述する各実験結果から単位セメント量を190〜220kg/cm3とした。
【0016】
ペーパースラッジ灰(以下、「PS灰」という。)は、製紙業から出る廃棄物のうちの大部分であるペーパースラッジと呼ばれる製紙汚泥を焼却処理した後に残る灰である。製紙原料のうち紙とならない微細繊維や、タルク、カオリンなどの填料、および古紙混入異物などが含まれている。
【0017】
多孔質であるため保水性に優れ、このPS灰を用いることで、コンクリートに保水、吸水性能を付与できることが確認されている。また、PS灰は軽量であり、ポゾラン反応が期待できることから、軽量でありながら、一般的な軽量ブロックと同等の強度を有する軽量保水性ブロックを開発可能と考えられたため、これを使用した。
【0018】
産業廃棄物の処理および有効利用の観点からは、できるだけ多く用いることが考えられるが、大量使用は密度の増加につながり、後述する各実験において、軽量化や保水性能の向上の面で本発明の期待する効果が得られなかったため、下限を80kg/cm3とし、上限を120kg/cm3とした。
【0019】
パーライトは非常に軽量であり、高い吸水性を有することから本発明で用いることとしたが、後述する各実験結果より、単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3との相対的な関係からは、単位パーライト量を125kg/cm3以下としたときに、保水性ブロックとしての期待される高い保水性能が得られた。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る軽量保水性ブロックにおいて、さらに繊維材料を含むことを特徴とするものである。
【0021】
この場合の繊維材料は、保水性ブロックの補強の役割と繊維材料自体の保水能力を期待したものであり、保水能力の面からは天然繊維が望ましい。
【0022】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る軽量保水性ブロックにおいて、配合における密度を0.6g/cm3以下としたことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の軽量保水性ブロックは、加圧成型により締め固められることで、実密度は一般に配合密度より大きくなるが、本発明ではブロックの圧縮強度1N/mm2以上、実密度1.0g/cm3以下程度を目標としており、後述する実験結果では、セメント、ペーパースラッジ灰、パーライトなどを含む配合において、密度を0.6g/cm3以下となる配合としたときに、これらの目標を達成しつつ、高い保水性能が確保できた。
【0024】
請求項4に係る発明は、請求項1、2または3に係る軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトがパーライトくずであることを特徴とするものである。
【0025】
パーライトくずとしては、真珠岩等水分を含むガラス質流紋岩類を粉砕後、高温で焼成発泡させたものであるパーライトを製造する際に、発泡せずに製品とならなかったものなどを使用することができる。
【0026】
製品のパーライトは非常に軽量であり、膨張させると多孔質構造、高い吸水性、断熱性などの特性を有する。パーライトくずについても同様に高い吸水性が確認されており、産業廃棄物の有効利用といった面の効果も得られる。
【0027】
請求項5に係る発明は、請求項1、2または3に係る軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトが、真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が2.5mm以下で密度が0.15kg/m3のもの、または真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が50mm以下で密度が0.17kg/m3のもの、またはこれらを所定の割合で加えたものであることを特徴とするものである。
【0028】
これらは、製品のパーライトとして市販されているものであり、後述の実験結果において、期待する良好な保水性能が得られたものである。
【0029】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5に係る軽量保水性ブロックにおいて、前記繊維材料が木材から抽出した耐アルカリ性天然セルロースの短繊維であること特徴とする水硬性組成物。
【0030】
市販品として、例えばバッカイ社の製品名「ウルトラファイバー500」があり、コンクリートやモルタルに添加することにより、ひび割れ低減に効果を発揮し、強度、耐久性の向上が可能であることが知られている。
【0031】
この製品は、木材から抽出した、耐アルカリ性天然系セルロースを100%使用したものであり、繊維長が短く、直径が小さく、繊維数が多く、見掛け密度も大きいことにより、優れた分散性を発揮することができる。
【0032】
また、繊維の形状が導管状であるため、繊維質量に対して約80%の質量の水分を保持することができるため、セメントとの親和性に富み、セメント水和物と直接結合することができることから、ブロックの保水性を向上させることができる。配合量としては、「ウルトラファイバー500」の場合で、4〜6kg/cm3の範囲で、高い保水性が得られることを確認している。
【発明の効果】
【0033】
本発明の軽量保水性ブロックは、低強度であるが、非常に軽量で高い保水性能を有するため、荷重が作用しない条件あるいは低荷重条件での使用において、ヒートアイランド現象の緩和に非常に高い効果を発揮することができる。
【0034】
また、非常に軽量であることから、運搬性、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実験1の保水性試験に用いた湿潤状態にする装置の説明図である。
【図2】実験1の吸水試験に用いた吸水性試験装置の説明図である。
【図3】実験1の締め固め性試験における単位セメント量220kg/m3でのCi図である。
【図4】実験1の締め固め性試験における単位セメント量270kg/m3でのCi図である。
【図5】実験1の締め固め性試験における単位セメント量320kg/m3でのCi図である。
【図6】実験1の圧縮強度試験におけるNo.18、No.19およびNo.20の配合での1日強度と14日強度比較図である。
【図7】実験1の圧縮強度試験における密度−圧縮強度分布図(材齢14日シリーズ)である。
【図8】実験1の圧縮強度試験における密度−圧縮強度分布図(材齢1日シリーズ)である。
【図9】実験1におけるセメント量毎の密度−吸水率分布図である。
【図10】実験1におけるパーライト体積置換率毎の密度−吸水率分布図である。
【図11】実験1における単位PS灰量毎の密度−吸水率分布図である。
【図12】実験1における密度−保水量分布図である。
【図13】実験1における吸上高さ分布図である。
【図14】実験2における密度−吸水率分布図である。
【図15】実験2における吸水率比較図である。
【図16】実験2における密度−圧縮強度分布図である。
【図17】実験2における密度比較図である。
【図18】実験2における保水量比較図である。
【図19】実験2における密度−保水量分布図である。
【図20】実験2における吸上げ高さ図である。
【図21】実験3における圧縮強度比較図である。
【図22】実験3における吸水率比較図である。
【図23】実験3における密度比較図である。
【図24】実験3における密度分布図である。
【図25】実験3における圧縮強度分布図である。
【図26】実験3における吸水率分布図である。
【図27】実験4における密度比較図である。
【図28】実験4における圧縮強度比較図である。
【図29】実験4における保水量比較図である。
【図30】実験4における吸上げ高さ図である。
【図31】実験4における吸水率比較図である。
【図32】実験5における試験手順を示す図である。
【図33】実験5における照射試験装置の図である。
【図34】実験5における照射試験表面温度の図である。
【図35】実験5における照射試験底面温度の図である。
【図36】実験5におけるブロック水分蒸発量測定結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明における配合を求めるために行った予備的実験を含む実験結果と好ましい実施形態について述べる。
【0037】
既往の研究より、リサイクル材料であるペーパースラッジ灰(PS灰)をコンクリート用混和材料として使用する際、PS灰の主成分であるシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)によるポゾラン反応によって強度増加が期待できることが確認されている。また、保水性を有するPS灰を使用することによって、ブロックに保水・吸水性を付与させることが可能であることも確認されている。
【0038】
本発明の目的は、屋上等に設置する高い保水性を有するブロックを提供することであり、この保水性ブロックに求められる性能としては、屋上に設置し、荷重を受けないブロックであることから、圧縮強度は一般コンクリートより小さくても問題が発生しないと考えられる。
【0039】
それに加え、温度低減効果を一般的なものよりさらに高くすること、屋上という場所や運搬・作業性を考え、ブロック重量をより軽いものとすることが望ましいと考えられる。よって、実験における保水性ブロックの仮の目標値を以下のように定めた。
【0040】
1) 密度1.0g/cm3
2) 吸水率80%
3) 圧縮強度1N/mm2
【0041】
また、これらの実験を行うことにより、リサイクル材料およびコンクリート用補強天然繊維(バッカイ社の商品名「ウルトラファイバー500」、以下、「UF500」という。)を使用した軽量保水性ブロックを試作し、軽量・保水特性について把握した。
【0042】
〔実験1〕セメント量・PS灰量の選定
(1) 概要
【0043】
上述の仮の目標値である密度1.0g/cm3、吸水率80%、圧縮強度1N/mm2の軽量ブロックの開発のため、実験1では、単位セメント量・単位PS灰量を強度増加領域内で変化させ、強度・吸水量・密度の変化傾向を確認し、その使用量の最適値を選出することとした。
【0044】
(2) 使用材料
実験1における使用材料を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実験1では目的のブロックを試作するにあたり、リサイクル材料と保水性の有する天然コンクリート補強繊維を用いた。
【0047】
(3) 配合条件および示方配合
実験1では、既往のインターロッキングブロックに関する研究結果より、最適とされた配合に基づき、単位セメント量は320kg/m3、単位水量は160kg/m3、単位PS灰量を200kg/m3としたものを基本配合とし、その他の骨材に関しては軽量化のため全量パーライトくずに置換した。
【0048】
基本配合を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表3、表4にそれぞれ材齢14日のシリーズおよび1日のシリーズの示方配合を示す。単位セメント量を320、270、220kg/m3の3水準、単位PS灰量を160、200、240kg/m3の3水準、軽量化・強度増加のため、パーライトくず−硬質パーライトの体積置換率(体積割合)を100−0、50−50、0−100の3水準、組み合わせ計27配合について試験を行い、吸水率、強度、密度について確認した。ここで、UF500の混入量はモルタルに対する最大添加量である5kg/m3とした。
【0051】
【表3】
【0052】
注:No.18は材齢一日で圧縮試験を行った。
【0053】
【表4】
【0054】
ただし、ここで養生は製品工場で行われているものと同様とし、以下の通りとする。
前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃を4h保持、以下自然降下。
【0055】
なお、製品工場における製品の出荷までの日数が14日程度であることに準じ、材齢14日において強度を測定したが、試験の進行速度を考慮し、表4では1日材齢で実験を行った。
【0056】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
練り混ぜには、公称容量10Lのオムニミキサーを用いた。練り混ぜ方法は、材料投入後30秒間空練りし、練り混ぜ水投入後1分間練混ぜた。
【0057】
練り混ぜ後の材料は、十分な剛性を持った型枠を基層投入し、振動を加え、1日養生後、即時脱型を行った。
【0058】
(5) 試験項目および試験方法
試験項目を以下に示す。
【0059】
(5)-1 締め固め性試験
締め固め性試験は「JSCE-F 508 締め固め性試験方法」に準じて行った。試験方法を以下に示す。
【0060】
1.変位計の調整:非接触型変位計の0点を、試料高さ200mmに調整する。
【0061】
2.試料の計量:コンクリートの示方配合に基づいて、試料容器の内高200mmの容器(3.534l)に相当する試料を正しく計り取る。
【0062】
3.試料の投入:試料は、手練り用さじを用い、粗骨材が集中しないよう均等性に注意し、こぼさないようにしながら3層に詰め、各層を直径16mmの突き棒で10回均等に突き、試料上面がほぼ平らとなるよう突き棒で均す。
【0063】
4.試料容器の装着:試料を詰めた試料容器を振動台に装着して固定し、滑り棒を滑動させて静かに上載板を試料上面まで降ろす。
【0064】
5.初期データの入力:試料名、コンクリートの単位容積質量、振動条件(加速度、振動数、振幅のうち、振動台の振動を制御するのに必要な任意の2条件と計測時間間隔および振動時間)を入力する。
【0065】
6.計測の開始:スイッチを投入し、データ処理系および機会振動系を駆動させる。
【0066】
データ処理方法
7.データ処理プログラムは、計測開始の入力により、機会振動系を駆動させるとともに、所定の計測時間間隔Δtで試料上面の変位xiの電気信号を取り込むようになっていなければならない。
【0067】
8.任意の時間tiにおける試料の充填率γtiは、次式によって計算する。
γti=h/(h+xi)×100
ここに、h:試料の充填率100%における高さ(=100mm)
【0068】
9.任意の締め固め仕事量Etiは、次式によって計算する。ただし、試料の密度mtiは直前の計測時間における充填率と示方配合から求めた単位容積質量から計算する。
Eti=mti・αmax2・ti/(2π)2f
ここに、Eti:締め固め仕事量(J/l)、mti:試料の密度(kg/l)、αmax:正弦波振動の最大加速度(m/s2)、ti:振動時間(s)、f:振動数(s-1)
【0069】
10. 締め固め関数は、充填率と締め固め仕事量に関する1組のデータを、最小自乗法によって次式に近似する。
γt=Ci+(Cf−Ci){1−exp(−bEtd)}
ここに、γt:締め固め時間tにおける充填率(%)、Et:締め固め時間tにおける締め固め仕事(J/l)、Ci:初期充填率(%)、Cf:達成可能充填率(%)、bおよびd:実験係数
【0070】
11. 締め固め効率Ceは、締め固め仕事量1J/lにおける締め固め関数の勾配として、次式によって計算される。
Ce=bd(Cf−Ci)E(d−1)exp(−bEd)
【0071】
12. 締め固め完了仕事量E98は、締め固め関数に充填率98%を代入したときの締め固め仕事量として、計算によって求める。
【0072】
(5)-2 保水性試験
保水量を求めるため保水性試験を行った。保水量は、湿潤質量と絶乾質量および供試体の体積を求めて、以下の式で算出する。
保水量(g/cm3)=(湿潤質量(g)−絶乾質量(g))/供試体の体積(cm3)
ここに、
【0073】
湿潤質量:15〜25℃の静水中で24時間吸水させた後、供試体を取り出して図1のような密閉式のプラスチック容器に入れて、15〜30℃の室温で30分間水を切り、絞った濡れウエスで目に見える水分をぬぐった後、直ちに計測した時の質量。
【0074】
絶乾質量:温度105±5℃の乾燥機内において一定質量となるまで乾燥した後、常温まで冷却したときの質量。
【0075】
(5)-3 吸水試験
吸水性試験は、30分間の水の吸い上げ高さを求めるものであり、試験方法を以下に記す。
【0076】
1.ブロックを温度105±5℃の乾燥機内で一定質量になるまで乾燥した後、常温まで冷却する。
【0077】
2.ブロックを図2に示す吸水性試験装置に設置する。設置後の水位はブロック底面から5mmの高さとなるようにし、水は15〜25℃の清水とする。供試体設置台の上面には、金網などのブロック底面に水が回るような材料を用いるか、吸水性のスポンジを挟む。
【0078】
3.30分経過後にブロックを取り出し、水が滴り落ちない程度まで水を切り、絞ったウエスで目に見える水滴をぬぐう。この時の質量を30分後の吸い上げ質量とする。
【0079】
4.ブロックを湿潤状態とし、湿潤質量を量る。
【0080】
5.吸い上げ高さは、以下の計算式より求める。
吸い上げ高さ(%)=(30分後の吸い上げ質量(g)−絶乾質量(g))/(湿潤質量(g)−絶乾質量(g))×100
【0081】
保水性舗装用コンクリートブロック品質規格による各項目の製品の規格値を表5に示す。
【0082】
【表5】
【0083】
(5)-4 圧縮強度試験
「JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。ただし供試体の成型方法は加圧振動による成型とした。養生は蒸気養生とし、養生条件は製品工場における製品の出荷までの日数が14日程度であることに準じ、材齢14日において強度を測定した。また、供試体寸法および質量を測定し、見かけ密度の算出を行った。
【0084】
(6) 試験結果および考察
(6)-1 締め固め試験結果
一般的に、粉体量が少なすぎる場合、達成可能充填率は100%以下となり、良好な締め固めを行うことができなくなるとされる。しかし、すべて27配合の達成可能充填率Cfおよび締め固め効率Ceについては、使用した材料に係わらずほぼ100%に達し、100%を超える場合もあった。
【0085】
これは、基本配合において軽量化を図るため細骨材の全量を粉体としたことが原因だと考えられる。また、充填率が100%を超える配合があった原因は試験を行った際に振動加圧により水分がコンクリート表面に出て、型枠から抜けたことであると考えられる。
締め固め性試験結果を、図3〜図5に示す。
【0086】
既往の研究より、初期充填率(Ci)は、容器に試料を詰めたときの充填率で、単位水量およびモルタル骨材空隙比の増加にしたがって大きくなる傾向がある。
【0087】
単位セメント量220、270および320kg/m3の場合ともに、単位PS灰量160kg/m3を用いた配合のCiが比較的大きかった。よって、単位PS灰量が小さい時、より締め固めが容易であることが分かった。また、本実験では、初期充填率が90%を超える配合が多く見られ、今回用いた配合においてはブロックの締め固めが容易であることが確認された。
【0088】
試作したブロックでは一般コンクリート用の骨材を使用せず、粉体であり粒径の細かいPS灰、パーライトくずを多量に使用していることから、締め固め後、骨材間の空隙が小さく、組織が密となったためCiが大きくなったと考えられる。
【0089】
(6)-2 ブロック各種性状試験結果。
試験結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
材齢14日の圧縮強度はすべて目標値を満足する結果となった。
【0092】
試験を行っている中で、材齢14日の強度が目標値を明らかに上回る大きな値となったため、試験の進行速度を考慮し、材齢1日の強度においても目標値を満足する場合、材齢1日の強度の測定でブロック性能を十分検討できると考えられる。
【0093】
ここで、No.18、No.19,およびNo.20の配合において、1日強度、14日強度を測定したものを表7に示す。
【0094】
【表7】
【0095】
それら強度の関係を図6に示す。
【0096】
表7より、3配合の強度において、1日強度と14日強度ともに3N/mm2 以上であり、目標値を大きく上回ったことが確認された。14日強度が1日強度より大きいと予想できると考えられるため、後は1日強度を測定することとした。
【0097】
1日強度を測定した配合の試験結果を表8に示す。
【0098】
【表8】
【0099】
密度と圧縮強度分布を図7、図8に示す。
【0100】
図7、図8に示すように、1日強度が14日強度に比べ、多少小さい値となったが、1日強度、14日強度ともに目標値1N/mm2を上回ったことが確認された。1日強度も目標値の3倍の大きな値となった。
【0101】
これは、既往の研究と同様に、本研究では単位セメント量200kg/m3以上かつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲でコンクリートを配合したため、水和反応の際に水酸化カルシウムが多く生成され、PS灰によりポゾラン反応が十分に生じたことより、圧縮強度が増大したと考えられる。
【0102】
全27配合ともに1日養生で密度、吸水率、保水量、吸上げ高さ試験を行ったため、ブロック性状の変化傾向をより把握しやすくするため以下、全27配合の試験結果を同時にグラフに示す。
密度−吸水率分布を図9、図10および図11に示す。
【0103】
図9に単位セメント量毎の密度‐吸水率分布を示し、図10にパーライトくずと硬質パーライトの体積置換率(割合)が100-0(パーライトくず100%に対して硬質パーライト0%)、50−50(パーライトくず50%に対して硬質パーライト50%)、0−100(パーライトくず0%に対して硬質パーライト100%)の場合の試験結果を表した。
【0104】
図9より、単位セメント量が220、270kg/m3の場合は単位セメント量320kg/m3の場合と比べ、吸水率が高く、密度が小さいことが分かる。単位セメント量が320kg/m3における密度は目標値より大きい傾向が多く見られ、単位セメント量が大きくなるにつれてブロックの密度は大きくなることが分かる。
【0105】
単位セメント量が320kg/m3における吸水率が比較的劣る結果となった。これは、密度が大きくなったことより、試験体に含む空隙が減少し、間隙内に含むことのできる水分が減少したことが原因と考えられる。
【0106】
図10より、パーライトくずと硬質パーライトの体積割合が100−0の場合、ブロックの密度が目標値を満足した。吸水率に関しても体積置換が100%の場合は、吸水率の目標値(80%)を満足しないものの良好な傾向を示した。これは、パーライトくずの吸水率が硬質パーライトのそれより高いことが原因だと考えられる。
【0107】
したがって、単位セメント量が220kg/m3かつパーライトくずを100%用いた組み合わせの場合、ブロックの密度が小さく、吸水率が高い傾向が得られたため、実験1の範囲では最も好ましい値であると考えられる。
【0108】
また、図11に単位PS灰量毎の密度‐吸水率分布を示す。単位PS灰量が160、200、240kg/m3の配合では類似した分布が見られ、近似直線でも著しく変化の傾向が見当たらないため、今回の範囲ではまだ単位PS灰量を選定することは難しいと考えられる。また、全27配合の吸水率は最大でも55%以下であり、目標値を大きく下回っているため、その後の実験において、単位PS灰量を種々変化させてブロック性状に及ぼす傾向を把握することとした。
【0109】
図12に密度−保水量分布を示す。
パーライトくずと硬質パーライトの体積割合(PA−PW)が0−100の場合では、保水量の最大値が0.45g/cm3、最小値が0.33g/cm3であり、また密度の最大値が1.52g/cm3、最小値が1.10g/cm3であるため、最大値・最小値の差が大きく、製品の製造に良くないと考えられる。
【0110】
逆に、パーライトくず100%に対して硬質パーライト0%の場合では、密度が小さいとともに、保水量が大きい、最大値・最小値の差が小さいため、ブロックは軽量で吸水率・保水性が良いことが確認された。したがって、以後の実験においては、パーライトくずを100%使用した配合を使用することとした。
【0111】
また、全27配合ともに保水量の規格値を満足した。こらは、今回用いたリサイクル材料およびコンクリート補強用繊維は保水性に優れる材料であるため、保水性を友試体に付与したことが原因だと考えられる。
図13に吸上げ高さ−密度の図を示す。
【0112】
吸上げ高さについても図13に示すように吸上げ高さの規格値(70%)を満足し、非常に良好な結果が得られた。これは、本研究ではリサイクル材料であるPS灰、パーライトくずを用いたことと、繊維数が多く繊維自重の約80%が保水性を有するコンクリート用補強天然繊維(UF500)を導入したことが原因で、吸上げ高さが向上されたと考えられる。
【0113】
〔実験2〕 パーライトの選定
(1) 概要
実験1でのセメント量・PS灰量の選定の結果より、単位セメント量220kg/m3でパーライトくずを100%混入した場合に、保水量・密度ともに最も良好な結果が得られた。しかし、吸水率については最大でも50%前後と目標値は満足していない。よって、吸水率が目標の80%に達するように、更にパーライトの種類を変え、その吸水率の変化傾向を得ることとした。本節では3種類のパーライトを用いて実験を行い、吸水率の目標を満足する配合を提案するとともにブロックの軽量・保水性状を把握した。
【0114】
(2) 使用材料
使用材料を表9に示す。
【0115】
【表9】
【0116】
ここで使用したパーライトは東興パーライト社製の硬質パーライト(P5B)、太平洋パーライト社製のパーライト細(P2)およびパーライト粗(P3)とした。P2とP3は真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させたものであり、軽量かつ白色の建設材料用パーライトである。軽量性、保水性など優れた特徴がある。P2は粒度が2.5mm以下、密度が0.15kg/m3のものであり、P3は粒度が5mm以下、密度が0.17kg/m3のものである。また、P5Bは、真珠岩等水分を含むガラス流紋岩類を粉砕後、高温で焼成発泡させたものであり、粒度が5mm以下で密度が0.20kg/m3のものである。
【0117】
これらは非常に軽量な材料であり、高い吸水性の特性を有する材料でもある。このため、これらを使用することにより、より高い吸水率を有するブロックの開発が期待できると考えられる。本章では、各配合の実験を行い、試作されたブロックの性状を比較し、本研究に最も適用する配合かつパーライトの種類を選定する。
【0118】
(3) 示方配合
セメント量・PS灰量の選定の結果より、単位セメント量220kg/m3、パーライトくずが100%の組み合わせにおいて密度・吸水率のよい結果が得られている。よって、単位セメント量220kg/m3の場合において、パーライトを3種類変化させ、性状に及ぼす傾向を把握し、目的値達成可能なパーライトを選定することとした。
【0119】
また、PS灰は実験1よりブロックの性状の大きな変化の傾向が見られなかったため、単位PS灰量を160、200、240kg/m3の3水準を変化させた。よって、PS灰の3水準、パーライトをP2、P3、P5Bの3種類を組み合わせた9配合、さらに単位PS灰量160kg/m3、P2、P3を50%ずつ混合した配合を加えた。合計10配合について実験を行った。
示方配合を表10に示す。
【0120】
【表10】
【0121】
*ただし養生は実験1と同様とした。
【0122】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
実験1と同様とした。
(5)-5 試験項目
実験1と同様とした。
【0123】
(6) 試験結果
試験結果を表11に示す。圧縮強度は実験1で述べた理由から1日強度で評価するものとした。
【0124】
【表11】
【0125】
図14に密度−吸水率の関係について示し、図15に各種のパーライトにおける吸水率の比較を示す。P2およびP3を用いた場合、吸水率は目標の80%に近い値を示している。P5Bを使用した場合、密度と吸水率ともに目標値を満足しなかった。これは、P5BがP2、P3より硬質であり、細かいため、閉め固めおよび振動加圧により材料が密となり、試験体の空隙が減少し、毛細管現象が発生しにくく、水を吸い込まれることが困難であることが原因だと考えられる。
【0126】
図16、図17に密度と圧縮強度の関係および各種パーライトにおける密度比較について示す。
【0127】
図16より、P5Bを使用した場合、P2、P3を用いた場合と比べ、圧縮強度は減少する結果となった。図17より、P5Bを用いた配合はP2,P3を用いた配合より密度は大きな値となった。これは、P2、P3の密度と比べ、P5Bは大きいため、これを用いた試験体の密度も大きくなるものと考えられる。よって、P2、P3を用いることが好ましいと考えられる。
【0128】
図18に保水量の結果を示し、図19に密度−保水量の分布図を示す。
図18より、P2を使用した配合は、保水量が0.52g/cm3以となり、最大でも0.50g/cm3を超えていないP3およびP5Bを使用した配合と比較すると、良好な結果が得られた。
また、図19より、全配合の保水量が規格ラインを超える結果となった。
【0129】
吸上げ高さについても、図20に示すように全配合の吸上げ高さが90%を超え、規格値の70%より大きく上回った。保水量と吸上げ高さともに規格を満足したことが確認された。
【0130】
実験1で述べたように、今回試作したブロックでは一般コンクリート用の骨材を使用せず、粉体であり、粒径の細かい保水性を有するPS灰、パーライトくずを多量に使用したとともに吸水率80%を有するコンクリート用補強天然繊維を混入したため、保水性と吸水性が良好な結果を得られたものと考えられる。
【0131】
実験1、実験2のまとめ
単位セメント量が増加するにつれ、ブロック密度も増加した。
【0132】
今回の配合において、各種ブロック性状の目標を満足するためには、単位セメント量は220kg/m3以下である必要がある。
【0133】
PS灰、パーライトくずのリサイクル材料を用いてのブロック吸水率は50%が最大であった。
【0134】
単位セメント量270±50kg/m3、単位PS灰量200±40kg/m3の強度増加レベル内であれば材料1日においても圧縮強度1N/mm2以上のブロックの作製が可能である。
【0135】
リサイクル材料を用いる事により、低強度レベルであれば、保水性舗装用コンクリートブロック品質規格に決まれる保水量の規格値を満足し、かつ2倍以上の性能を得る事ができる。
【0136】
リサイクル材料を用いることにより、低強度であれば、保水性および吸上げ高さの規格値を十分満足するブロックの作製が可能である。
【0137】
製品のパーライト細又パーライト粗を用いることで、70%程度の吸水率を持つブロックの作製が可能である。
【0138】
〔実験3〕 実機試験
(1) 概要
【0139】
実験1、2の結果より、吸水の目標値は満足しないのもの良好な性状を持つブロックの作製ができた。そこで、これらの室内実験結果から、製品工場実験を行った。
【0140】
ここで、実験1、実験2において良好であった配合に加え、工場の実機を用いることによる傾向を把握するため、種々の配合を選出し、実験を行った。
【0141】
(2) 使用材料
使用材料を表12に示す。
【0142】
【表12】
【0143】
(3) 配合条件
配合を表13に示す。
【0144】
実験1、実験2の結果より、目標の軽量保水性ブロック性状に最も近い配合をもとに、5配合について実機実験を行った。また、同配合において、室内試験も行い、実機のものとの比較を行った。養生は実験1と同様とした。
【0145】
【表13】
【0146】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
今回比較用に実製品製造ラインについてブロックを作製しての諸性状把握実験の他に、室内実験にて、締め固め性試験を行っており、工場と室内実験では練り混ぜ方法が異なるため、以下に記す。
【0147】
ミキサーはオムニ型ミキサーを用い、セメントと粉体を入れて30秒まぜた後,水と混和剤を入れて1分間練り混ぜた。
【0148】
練り混ぜ後の材料はベルトコンベアーで運ばれ、十分な剛性を持った型枠にテーブルバイブレーター(振幅1.5mm、振動数90Hz)を用い、30kN/m2のプレスと振動(振幅0.3mm、振動数110Hz)を基層投入後2秒間、表層投入後7秒間の計9秒間加え、振動締め固め後、即時脱型を行った。
【0149】
作製した供試体は、平面寸法198×98mm、厚さ5mmの着色可能な表層部と55mmの基層部にて構成される。
【0150】
(5) 試験項目
(5)- 保水性試験
【0151】
保水量を求めるため保水性試験を行った。保水量は、湿潤質量と絶乾質量および供試体の体積を求めて、実験1と同様、以下の式で算出した。
保水量(g/cm3)=(湿潤質量(g)−絶乾質量(g))/供試体の体積(cm3)
【0152】
(5)-2 吸水試験
吸水性試験は、30分間の水の吸い上げ高さを求めるものであり、試験方法は実験1と同様である。
(5)-3 圧縮強度試験
「JIS A 1106 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。
【0153】
(6) 試験結果
試験結果を表14に示す。
【0154】
【表14】
【0155】
また、圧縮強度、吸水率、密度の結果を図にまとめたものを図21〜図23に示す。ただし、実験1の実験結果より、全配合における保水量および吸上げ高さが規格値を満足したため、ここで目標のブロックの性能の密度、圧縮強度および吸水率のみについて検討することとした。
【0156】
図21より、圧縮強度はほぼすべての配合において室内試験の配合よりも大きな値となった。これは、実機試験におけるプレスが室内試験のものより大きく、締め固めによる試験体が密となったため、強度が増加したものと考えられる。
【0157】
図22より、吸水率については、実機試験のものと室内試験のもので同様の傾向を示した。しかし、すべての配合において吸水率は室内試験のものより減少し、40%以下となった。これは、前述の通り、試験体が密となったため、空隙が減少し、空隙内に含むことのできる水分が減少したことが原因と考えられる。また、空隙が減少したため、毛細管現象が阻まれてしまったことも原因の一つであると考えられる。
【0158】
図23より、密度については、実機試験のものは室内試験のものと比べ、大きくなった。これは、前述の通り、試験体が密になり、残存空隙が少なくなってしまったため、密度が大きくなってしまったものと考えられる。
【0159】
また、図21、図22の結果より、全配合において、実機試験の強度は室内試験のものより大きい、また実機試験の吸水率は室内試験のものより小さい結果が得られたため、密度についても実機試験のものは室内試験のものより大きい結果となるはずが、図23に示すように、No.2、No.3では、実機のものは室内のものより小さい結果となってしまった。これは、パーライト(P2、P3)が非常にもろい材料であり、締め固めの際、実機のプレスによりパーライトがつぶされてしまい、パーライトの粒径が変化し、試験体の体積が大きくなってしまったためではないかと考えられる。
【0160】
(7) 成型機試験の条件を変化し、実機試験結果を再現
(7)-1 概要
実機試験では室内実験と比べ、吸水率が減少し、40%以下となった。
【0161】
実機および室内試験の締め固めにおけるプレス条件が異なるためブロックの性状が異なったと考えられ、ここで、室内においても実機試験の条件を再現するため、室内にて簡易型ブロック成型機を用いて5秒〜30秒プレス時間を変化させ、試験を行った。これより、ブロックの各種性状を把握し、実機試験を再現できるプレス時間を求める。
【0162】
(7)-2 使用材料
(1)-2と同様とした。
【0163】
(7)-3 配合条件
【0164】
表13のNo.2が実機試験と室内試験ともに吸水率が最も高い結果が得られた。よって、ここでは、単位セメント量220kg/m3、単位パーライト細(P2)量118kg/m3、単位PS灰量160kg/m3とした配合No.2について、それぞれのプレス時間で試験を行った。
【0165】
(7)-4 練り混ぜ方法および供試体作製方法
【0166】
締め固め試験については、公称容量10Lのオムニミキサーを用いた。材料投入後30秒間空練りし、練り混ぜ水投入後1分間練混ぜた。練り混ぜ後の材料は、十分な剛性を持った型枠を基層投入し、振動を加え、1日養生後、即時脱型を行った。
【0167】
供試体は簡易型ブロック成型機(以下成型機)を用いて、平面寸法198×98mm、高さ55mmにて構成される。
【0168】
(7)-5 試験項目および試験方法
実験1と同様とした。
【0169】
(7)-6 試験結果
試験結果を表15、表16に示す。
【0170】
【表15】
【0171】
【表16】
【0172】
図24に密度分布を示す。プレス時間を30秒追加した後、得られる密度の結果が目標の値を下回ったが、近似直線がやや上に傾いていることが分かった。近似直線の方程式が単調増加であるため、時間を増やすことにより、密度が増加する傾向が確認された。これは、プレス時間を増やすことにより、フレッシュコンクリートに含まれる空気量がだんだん減少するため、試験体がより密となった現象であると考えられる。
【0173】
図25より、密度と同様に圧縮強度についてもこれらの現象が確認された。プレス時間が増えることより、空気量が減少し、試験体がより密となるため、圧縮強度も大きくなったと考えられる。
【0174】
図26に吸水率分布を示す。プレス時間を増やすことより、吸水率が減少し、近時直線が下に傾いている。これは、試験体に含まれる空気量が減少し、試験体が密となったため、空隙内に含むことのできる水分が減少したことが原因と考えられる。また、空隙が減少したため、毛細管現象が発生しにくくなったことも原因の一つであると考えられる。
【0175】
これまでの実験結果より、密度は本研究の目標値1g/cm3を満足しており、また、圧縮強度についても、全体的に本研究の目標値1N/mm2を満足した。したがって、問題となった実機試験における吸水率の減少の解決方法を探すため、簡易型ブロック成型機試験における吸水率の結果から近似直線を用いることにより、実機試験を再現する簡易型ブロック成型機におけるプレス時間を暫定的に求めることとする。
【0176】
実機試験における吸水率の値を得られるために必要なプレス時間は近似直線により以下の関数から求めることができると考えられる。
y=−0.1748x+53.457
ただし、
yは吸水率(%)、
xはプレス時間(s)
を示す。
【0177】
ここで、実機試験から得られた吸水率の目標値は表15に示したように40.2(%)である。したがって、上式を用いて、実機試験結果を同等の吸水率を得ることのできるプレス時間を算出すると、必要なプレス時間は1分15秒と求めることができる。
【0178】
このプレス時間は推測値であるが、今回は暫定的にこのプレス時間1分15秒を室内における簡易型ブロック成型機を用いて、実機試験結果と同等の性能のブロックを作製することのできるプレス時間と設定した。この条件において後の、吸水率の目標値を満足する配合を選出するためブロック性能の改良試験を行うこととした。
【0179】
(8) まとめ
実機試験において、プレスが大きいため、圧縮強度が室内試験より増大結果となった。
密度についても室内より大きい結果となったが、目標値を満足したことが確認された。
実機試験において、プレスが大きいため、吸水率が室内試験と比べ、低い結果となった。
【0180】
簡易型ブロック成型機試験において、圧縮強度および密度ともに目標値を満足したブロックの作製が可能である。
【0181】
暫定的にプレス時間1分15秒を室内における簡易型ブロック成型機を用いて、実機試験結果と同等の性能のブロックを作製することのできるプレス時間と設定した。この条件において後の、吸水率の目標値を満足する配合を選出するためブロック性能の改良試験を行うこととした。
【0182】
〔実験4〕
(1) 概要
【0183】
これまでの試験結果より、単位セメント量220kg/m3およびパーライト細(P2)またパーライト粗(P3)を使用した場合、試験体の性能が良い傾向であることが分かった。また、実験2より、プレスを1分15秒とすることにより、実機試験を室内で再現できることが分かった。
【0184】
そこで、実験4ではプレスを1分15秒とし、各種ブロック性状を満足する配合を選出するため実験を行った。
【0185】
(2) 使用材料
使用材料を表17に示す。
【0186】
【表17】
【0187】
(3) 示方配合
配合を表18に示す。
【0188】
PS灰はパーライトに比べ密度が大きく、吸水率も小さい。今回、目標を満足する配合を選出するにあたり、強度の目標値は満足していること、プレスにより室内実験よりも材料が密となり強度が増加すること考察し単位PS灰量を100kg/m3とした。また、P3はP2より粒度の粗いものであり、これを段階的にP2に置換することにより、粒度分布を変化させ、最も毛細管現象の効果が大きくなる比率を選出するため、P2に対するP3の体積置換率を0〜100%変化させた6配合について実験を行った。
【0189】
【表18】
【0190】
養生は実験1と同様とした。
【0191】
(4) 練り混ぜ方法および供試体作製方法
実験1と同様とした。
(5) 試験項目
実験1と同様とした。
【0192】
(6) 試験結果
試験結果を表19に示す。
【0193】
【表19】
【0194】
図27より、全6配合ともに密度が目標値を満足したことが確認された。特に、パーライト粗置換率が80%および100%の場合において、密度が比較的小さかったため、ブロックの軽量性をより改善できると考えられる。これは、P3の粒子がP2のものより大きく、硬質であるため、締め固めにおけるプレスによって、P2を多く使用する場合の方が密となり供試体の残存空隙が少なくなり、体積が小さくなったため密度が大きくなったことが原因であると考えられる。
【0195】
また、表18および表19より、配合上の計算される配合密度と実密度を比較するとすべての配合において、実密度の方が配合密度より大きくなった。これは、振動加圧成型により、空気量は5%以下となっていること、およびPS灰、繊維の吸水率が高く、余剰水を吸水していることが原因であると考えられる。
【0196】
図28より、パーライト粗P3の体積置換率が80%および100%を用いた場合、圧縮強度がP2を用いた場合と比べ、減少する結果となった。これは、前述の通り、P2を多く使用する場合、供試体が密となったため、強度が増大したものと考えられる。P3をまったく用いない配合No.1において、P2を使用することで、プレスより供試体が密になり、圧縮強度は最も大きい値となるはずが、図28に示したように劣る結果となってしまった。これは、P3をまったく用いなかったため、P3の硬質性による強度がないことが原因であると考えられる。
【0197】
図29に保水量比較図を示す。上述より、P2を使用することで供試体が密となり、水分が含めることのできる残存空隙が減少するため、保水量が小さいと考えられるが、図29に示すように、その傾向が見られなかった。全6配合において、保水量及が規格値を大きく上回った。これは、PS灰およびパーライトを多く用いたため、水分が多く含まれると考えられる。
【0198】
図30より、吸上げ高さが全6配合ともに90%を超え、非常に良好な結果となった。この結果が得られた原因は保水性に優れる材料を使用したこと、それに加えコンクリート補強用天然繊維を使用したことであると考えられる。繊維の形状が導管状であるため、供試体がより多くの水分をより早く吸上げることができると考えられる。
【0199】
図31より、実験3の結果と比べ、吸水率が多少改良されたが、仮の目標値の80%をまだ満足していない結果となった。吸水率の目標値を満足していない配合の中、パーライト粗(P3)の体積置換率が80%を用いた場合、最も高い吸水率が得られた。
【0200】
これは、締め固めのプレス圧より、P2を使用した場合、残存空隙が少ないため、水分を多く含むことができない、逆に、P3を多く使用した場合、P3粒子の性状が粗いものなので、供試体の空隙における毛細管現象が発生しやすいことが原因と考えられる。P3の体積置換率が60%の配合No.3の場合において、吸水率が劣る結果となった。これは、図27に示したように、P3の体積置換率が60%の場合、密度が最も大きかったため、プレスにより、供試体が密となり、空隙率が減少してしまったことが原因であると考えられる。
【0201】
図27〜図31より、圧縮強度の目標値を満足した配合No.1〜4の中、パーライトP3の体積置換率が40%を配合したNo.3の場合、比較的に吸水率が大きく、密度が小さい結果が得られたため、目標の軽量保水性ブロックの開発には最も望ましい配合であると考えられる。
【0202】
(7) まとめ
【0203】
ペーパースラッジ灰量を100kg/m3、パーライト細P2を40%パーライト粗P3に置換する配合において、密度および圧縮強度が目標値を満足した。
【0204】
ペーパースラッジ灰量を100kg/m3とすると供に、パーライト細P2を40%パーライト粗P3に置換することによりブロックの吸水率を改善することが可能である。
【0205】
したがって、リサイクル材料およびコンクリート補強用天然繊維ウルトラファイバーを用いることにより、それらの特徴を生かし、軽量保水性ブロックへの適用することが可能であることが確認された。
【0206】
〔実験5〕
(1) 概要
実験4の結果より、圧縮強度の目標値を満足したもののP3の体積置換率が40%場合、比較的良好な結果が得られたことが確認された。そこで、試作されたブロックの温度上昇性能(供試体表面温度)と水分蒸発性能(供試体表面からの水分蒸発量)を相対評価し、ヒートアイランド現象に効果があるかどうか確認のため、照射試験を行った。
【0207】
(2) 供試体
ブロック配合条件を表20に示す。
【0208】
【表20】
【0209】
実験4の試験結果より、ブロック性状を表21に示す。
【0210】
【表21】
【0211】
(3) 試験方法
(3)-1 試験手順
試験手順を図32に示す。
【0212】
(3)-2 試験器具
図33に示す構造の照射試験装置を使用する。照射試験装置と供試体の条件は表21に示す。
【0213】
(3)-3 試験室
雰囲気温度20±3℃、雰囲気湿度65±15%に保持できる恒温恒湿室に照射試験装置を設置する。
【0214】
(3)-4 照射試験法
(3)-4−1 密粒度アスファルト試験体によるランプ高さ(H)の決定
1.図33に示すように、密粒度アスファルト供試体表面の中心に縦20mm×横20mmのアルミテープを貼着する。アルミテープには熱電対を差し込む隙間を空けておく。
2.密粒度アスファルト供試体を15〜25℃の清水中で24時間浸水させる。
【0215】
3.密粒度アスファルト供試体を取り出して、絞った濡れウエスで目に見える水膜をぬぐった後、図33に示すような密閉式のプラスッチック容器に入れ、試験室内で30分間水を切る。
【0216】
4.密粒度アスファルト供試体を取り出して、絞った濡れウエスで目に見える水膜をぬぐった後、図32に示すように断熱材にはめ込む。供試体表面と断熱材の隙間には幅10mm程度のアルミテープを貼着し、隙間から水分が蒸発しないようにする。
【0217】
5.密粒度アスファルト供試体表面のアルミテープの隙間に熱電対を差し込み、アルミテープを押し付けて熱電対と供試体表面を密着させる。温度記録はパソコンに温度データを送信することで記録する。
6.ランプの中心直下に供試体中心を合わせて照射試験装置を設置する。
7.ランプを点灯し、照射を開始する。表面温度の記録は、照射開始から10分毎とする。
【0218】
8.照射時間2〜4時間で供試体表面温度が60℃以上となるようにランプ高さ(H)を決定する。照射開始から2時間以内に表面温度が60℃を超えた場合、または4時間照射しても表面温度が60℃以下の場合は、再度手順を繰り返し、ランプ高さ(H)を調整し直す。
【0219】
(3)-4−2 供試体の準備及び照射試験装置の調整
1.〜5.について、密粒度アスファルトの場合と同様とする
ただし、ランプ高さ(H)は、密粒度アスファルト供試体で調整した高さに合わせる。
【0220】
6.密粒度アスファルト供試体の熱電対の上に放射照時計を設置した後、直ちにランプを消灯する。
【0221】
7.他の供試体におけるランプ高さ(H)は、密粒度アスファルト供試体の放射照度になるように調整する。
【0222】
(3)-4−3 照射試験
1.はかりのゼロ調整を行う。
【0223】
2.ランプを点灯し、照射を開始する。表面温度の記録は、照射開始から10分毎とする。質量減量(すなわち水分蒸発量)の記録は、照射開始から10分毎とする。
3.昼夜の日照を再現するため、12時間ごとにランプの点灯・消灯を行うものとする。
【0224】
(4) 照射試験結果及び考察
照射試験結果は、照射試験条件を表22に、表面温度、底面温度及び水分蒸発量を図34、図35および図36に示す。
【0225】
【表22】
【0226】
図34より、試作軽量保水性ブロックにおける表面温度はほかのブロックと比べ、低い結果であることが確認された。これは、試作軽量保水性ブロックの使用した材料はほかのブロックのものと違い、保水性に優れるものがほとんどであるからだと考えられる。
【0227】
多孔質であるため保水性に優れるペーパースラッジ灰を用いることで、ブロックに保水、吸水性能を付与できる。また、パーライトは非常に軽量であり、膨張させると多孔質構造、高い吸水性、断熱性などの特性を有するため、ブロックの保水性を高めることができる。
【0228】
さらに、コンクリート補強用天然繊維を用いたことより、ブロックの強度が改善できると他に、繊維の形状が導管状であるため、繊維質量に対して約80%の質量の水分を保持することができ、ブロックの保水性を向上することができる。
【0229】
これらの材料を用いたため、ブロックが保持できる水量が非常に多く、ランプ光の影響より、水分が蒸発し、試作ブロックの表面温度は最も低く、3日間通じても60℃以下を保つことができた。製作方法及び用いる材料の違いから、密粒度アスファルトは3日間ともに90℃を超える値を示した。
【0230】
保持できる水量がほとんどないため水分の蒸発散があまりなかったことが原因と考えられる。普通ブロックについても、保持水量が少ないため他のブロックより高い温度となった。市販のセラミック系保水性ブロックは初日に水分を多量に含んでいるため温度が低く、表面温度低減効果が表れている。
【0231】
しかし、間隙のみに水分を保持しているとガラス質であるため水分の抜けが急速であり、2日目以降は90℃近くまで温度が上昇してしまうことも確認された。よって、試作軽量保水ブロックは最も温度低減効果を有すると考えられる。
【0232】
図35より、底面温度の結果では表面温度の結果より全体的に低い結果となった。これはブロックの底面では直接熱を受けないことと、ブロック中の水分が重力により底面に集中するためと考えられる。密粒度アスファルトと普通ブロックにおいては保持できる水量が少ないため温度低減効果はほとんど見られなかった。
【0233】
市販のセラミック系保水性ブロックについては、表面温度と同様に初日に水分が残留しているため低い結果となったが、初日で水分を放出しきっているため2日目からは温度が上昇し、温度低減効果がなく、80℃を超える結果となった。試作軽量保水性ブロックでは、3日間を通じても、保持水量が多く残留し、水分の蒸発散ため、温度低減効果が顕著に表れ、50℃程度の低い結果となった。
【0234】
図36より、表面温度測定間の水分蒸発量は、密粒度アスファルト及び普通ブロックについては、水分の保持がほとんど行わなかったため、水分蒸発散による表面温度及び底面温度の温度低減効果が見られなかった。市販のセラミック系保水性ブロックについては、初日の保持水量が大きいが2日目以降、水分がなくなっているため、密粒度アスファルト及び普通ブロックと同様に温度低減効果が見られなかった。
【0235】
比較的に軽量保水性ブロックにおける保持水量が非常に多く、3日間通じて他のブロックにおける水分がほとんどなくなってしまったが、試作軽量保水性ブロッにおいては、まだ大量に残っている。
【0236】
そのため、図34、図35に示すように試作軽量保水性ブロックは他のブロックより温度低減効果が表れ、長期にわたる水分を保持することができるため、長期間温度低減効果が期待できると考えられる。
【0237】
(5) まとめ
試作した軽量保水性ブロックにおいて、表面温度低減効果が確認された。
【0238】
ブロックの底面においては、表面と異なり、熱を直接受けないこと、ブロックの水分が重力により底面に集中することにより表面より低い温度を示す。
【0239】
試作した軽量保水性ブロックは、長期にわたり水分を保持することが可能なため、温度低減効果が長期間期待できる。
【0240】
試作した軽量保水性ブロックは長期にわたる表面温度低減効果の持続が期待でき、外部からの水分の供給がある状態であれば、更に長期の蒸発散が可能であると考えられるため、ヒートアイランド現象に有効である。
【0241】
〔配合調整〕
以上の各実験結果をもとに、目標値を
1) 実密度0.9g/cm3以下
2) 吸水率50%以上
3) 圧縮強度1N/mm2以上
に置き換えて、表20の配合を基準として、配合における単位セメント量、単位ペーパースラッジ灰量、単位パーライト量の範囲を決めるための配合調整を行った。
【0242】
その結果、単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3、単位パーライト量が100〜125kg/cm3との範囲であれば、上記の新たな目標値をほぼ満足できることが分かった。
【0243】
なお、この配合調整においては、UF500については、4〜6kg/cm3の範囲で配合し、その性能を確認した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、ペーパースラッジ灰と、パーライトとを含む水硬性組成物に混練水を加えて加圧成型してなり、配合における単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3、単位パーライト量が100〜125kg/cm3であることを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項2】
請求項1記載の軽量保水性ブロックにおいて、さらに繊維材料を含むことを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項3】
請求項1または2記載の軽量保水性ブロックにおいて、配合における密度を0.6g/cm3以下としたことを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトがパーライトくずであることを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項5】
請求項1、2または3記載の軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトが、真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が2.5mm以下で密度が0.15kg/m3のもの、または真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が50mm以下で密度が0.17kg/m3のもの、またはこれらを所定の割合で加えたものであることを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの請求項に記載の軽量保水性ブロックにおいて、前記繊維材料が木材から抽出した耐アルカリ性天然セルロースの短繊維であること特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項1】
セメントと、ペーパースラッジ灰と、パーライトとを含む水硬性組成物に混練水を加えて加圧成型してなり、配合における単位セメント量が190〜220kg/cm3、単位ペーパースラッジ灰量が80〜120kg/cm3、単位パーライト量が100〜125kg/cm3であることを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項2】
請求項1記載の軽量保水性ブロックにおいて、さらに繊維材料を含むことを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項3】
請求項1または2記載の軽量保水性ブロックにおいて、配合における密度を0.6g/cm3以下としたことを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトがパーライトくずであることを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項5】
請求項1、2または3記載の軽量保水性ブロックにおいて、前記パーライトが、真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が2.5mm以下で密度が0.15kg/m3のもの、または真珠岩を破砕、粒度を調整し急速に加熱、発泡させた粒度が50mm以下で密度が0.17kg/m3のもの、またはこれらを所定の割合で加えたものであることを特徴とする軽量保水性ブロック。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの請求項に記載の軽量保水性ブロックにおいて、前記繊維材料が木材から抽出した耐アルカリ性天然セルロースの短繊維であること特徴とする軽量保水性ブロック。
【図1】
【図2】
【図24】
【図25】
【図26】
【図33】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図24】
【図25】
【図26】
【図33】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2011−93759(P2011−93759A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251090(P2009−251090)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
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