説明

軽量塗工紙

【課題】地合良好でクッション性に優れたヤンキー紙からなる基紙に顔料及び接着剤を主成分とする塗工層を有した網点再現性に優れた軽量塗工紙を提供する。
【解決手段】軽量化した際に発生するクッション性低下によるグラビア印刷の網点再現性低下を防止するために、ルンケル比の低いパルプ原料をヤンキードライヤーにて乾燥させることで、クッション性、寸法安定性を備えた軽量塗工紙基紙を製造し、前記基紙に塗工層を設け、軽量化した塗工紙においても高精細なグラビア印刷適性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量化しても高精細なグラビア印刷適性を備えた塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から食品用途に用いる包材分野においては廃棄物低減の要望が高まり、包材の軽量化が強く求められるようになってきた。
従来食品用途に用いられている包材としては、内容物の鮮度や見栄えを良くし購買意欲向上を促すため、グラビア印刷による高精細な印刷が施されるため、グラビア印刷適性が求められており、40〜60gの上質紙に塗工層(塗工量16〜20g/m2)を設けた物であり、製品坪量が55〜80g/m2である塗工紙が汎用的に用いられてきた。近年の軽量化に向けて、55g/m2以下の製品坪量の塗工紙の開発が望まれるが、下記の解決課題を有するため、現状として高精細なグラビア印刷適性を十分に満足する軽量塗工紙は出現していない。
【0003】
軽量化に対応するため、現状の上質紙を用いた場合においては、高精細なグラビア印刷適性を維持する方法として基紙坪量の低減が考えられるが、凹版印刷であるグラビア印刷においては、グラビア印刷版と塗工紙との密着性が求められるため、基紙坪量の低減はクッション性、寸法安定性低下をきたすため、網点再現性が著しく劣るものとなり、高精細なグラビア印刷を行うことが困難に成る。 前記、網点再現性の問題を解決する手段として、低密度パルプを配合し、かつ軽質炭酸カルシウム、微粒カオリンを含む塗工液を塗工し、乾燥後にスーパーカレンダー処理を施す方法が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献2では、艶消しグラビア印刷用塗工紙を提供するため、塗工液に嵩密度の低いカオリンを全顔料の10〜50重量%となるように加え、かつ塗工後にカレンダー仕上げを施している。正反射平滑度(設定圧力20kgf/cm2、加圧開始10ミリ秒後)が2.0μm以下のグラビア印刷用塗工紙が開示されている。
【0005】
また、耐水性、耐湿性、インキの滲み防止等に優れるグラビア印刷用のラベル用紙として、化学パルプを90重量%以上含む基紙の両面表面上に、耐水コート層(熱可塑性樹脂など)、さらにその上にクレーコート層(カオリン)を有するグラビア印刷用のラベル用紙が特許文献3に開示されている。
特許文献4、5において、基紙の製造にヤンキードライヤーを使用したラベル用塗工紙について開示されている。
【0006】
しかし、上記いずれの文献においても、塗工紙軽量化の課題となる網点再現性を解決する手段となる記載はない。
【特許文献1】特開2005−206975
【特許文献2】特開平9−188998
【特許文献3】特開2004−256937
【特許文献4】特開平11−12980
【特許文献5】特開平1−250986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、地合が良好でクッション性に優れたヤンキー紙からなる基紙に顔料及び接着剤を主成分とする塗工層を有し、網点再現性、耐水性、寸歩安定性に優れた 軽量塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、優れた網点再現性、耐水性、水中伸度からなる品質を有する軽量塗工紙を得るために研究を行ってきた結果、軽量化した際に発生するクッション性の低下によるグラビア印刷の網点再現性の低下を防止するために、クッション性のあるパルプの原料をヤンキードライヤーにて乾燥させた軽量塗工紙基紙に塗工層を設けることで、軽量化した塗工紙においてもクッション性、耐水性、寸法安定性(水中伸度)を備え高精細なグラビア印刷適性を有する軽量塗工紙が得られることを見出した。本発明はこれに基づいてなされたものである。
【0009】
本発明は、ヤンキードライヤーにて乾燥された基紙の艶面に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有する軽量塗工紙であって、
基紙を構成するパルプ主原料として、JIS P 8220に準拠して離解したパルプのルンケル比0.9以下の広葉樹クラフトパルプを含有し、塗工紙坪量40〜55g/m2、片面塗工量8〜15g/m2、塗工表面の正反射平滑度が加圧24.4kgf/cm2、加圧開始10ミリ秒後、波長0.5mmの条件下で、2μm以下であることを特徴とする軽量塗工紙である。
【0010】
さらに本発明においては以下の態様も含まれ、これらの態様を採用することによって、より優れた効果が得られる。
(1) 前記軽量塗工紙のガーレ透気度(JIS P 8117)が1000秒以上で、水中伸度が2.5%以下である。
(2) 前記塗工層中に、湿潤紙力増強剤を含有する。
(3) 基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプである。
(4) 前記顔料が、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有される。
【0011】
本発明で提供される軽量塗工紙は、基紙を構成するパルプ原料として、ルンケル比0.9以下のパルプ繊維原料を使用し、ヤンキードライヤーにて乾燥された基紙の艶面に顔料と接着剤からなる塗工層を有し、塗工紙坪量40〜55g/m2、片面塗工量8〜15g/m2、塗工表面の正反射平滑度が加圧24.4kgf/cm2、加圧開始10ミリ秒後、波長0.5mmの条件下で2μm以下であることを特徴とする。
【0012】
クッション性に寄与する要素としてパルプ繊維自体の物理的構造がある。パルプ繊維にはルーメン(内腔)が存在し、それ自体が潰れることによって、紙全体としてのクッション機能に繋がるため、内腔と外環(細胞壁)の厚みとの比率がクッション性にとって重要となる。そこで、パルプ繊維のクッション性を評価する指標としてルンケル比がある。
【0013】
ルンケル比(R)とは、繊維の内腔の幅(径)(L)と細胞壁の厚さ(t)によって求められる値であり、R=2・ t/Lによって表される。本文中に表記している本発明のルンケル比の測定は、Fiber Lab.(kajaani社) により測定された繊維幅、細胞壁厚より算出されたものである。このルンケル比は、このルンケル比が大きい方が剛直な繊維であると言え、このような繊維を使用すると密度の低い紙を抄造し易くなる。また、数値が低いほど同じ径に対して繊維壁の厚みが薄いことを意味し、繊維は柔軟性を持つ。JIS P 8220に準拠して離解したパルプのルンケル比の大きなパルプ繊維を用いて抄紙すると、繊維同士の結合面積の少ない、ポーラスな紙となり、クッション性が向上するが、ルンケル比が大きすぎると、繊維同士の結合面積が非常に小さくなるために、強度及びコシが低下するばかりでなく、表面性が低下するのでグラビア印字適性も低下する。
【0014】
本発明者等の知見によれば、JIS P 8220に準拠して離解したパルプの平均ルンケル比が0.9以下、更に好適には0.6〜0.9であれば、グラビア印刷に適したクッション性が得られる。平均ルンケル比が0.9以下のパルプ繊維を得るには、パルプの原料となる木材として比較的若い段階で伐採した植林木や間伐材を用いるのが好ましい。ルンケル比の小さい(繊維壁の薄い)繊維を使用すると、例えば粘着剤等を軽量塗工紙裏面に設けた場合、粘着剤の繊維内部への浸透性が過剰になる問題が発現しやすくなる問題が考えられるとともに、クッション性を維持するためにウエットプレスが十分にかけられず、艶面の平坦性にムラが生じやすく好ましくない。また、ルンケル比の小さい(繊維壁の薄い)繊維は剛直性に劣るため、寸法安定性(水中伸度)が悪化するといった問題が生じるため、平均ルンケル比が0.6を上回ることが好ましい。
【0015】
本発明における軽量塗工紙基紙の坪量としては40〜55g/m2、更に好適には40〜50g/m2で抄造されることが好ましい。40g/m2未満だと、紙力確保が困難であると共に、高精細なグラビア印刷を行えるための十分なクッション性を付与出来ない場合が生じるためグラビア印刷時の網点再現性が出ない。また、55g/m2を越えると、本発明の課題である軽量化と、軽量化における高精細なグラビア印刷適性の確保、廃棄物量の低減に繋がらないので環境への配慮に反する事となる。
【0016】
軽量塗工紙の基紙(抄紙された紙)には、ヤンキードライヤーに圧着させて乾燥されたヤンキー紙が好適に用いられる。ヤンキードライヤーで基紙が乾燥されていると、基紙のヤンキードライヤー接触面(艶面)がヤンキードライヤー鏡面を写し取るため表面平滑性が優れ、より平滑な塗工層を設けることができる。
【0017】
また、ヤンキードライヤーによる乾燥は、緊張乾燥のため、寸法安定性に優れ、しかもカールが抑えられ、加えて、乾燥時の収縮が少ないためクッション性を有したまま乾燥されるためグラビア印刷時に高精細なグラビア印刷が可能になり見当ずれも発生しづらく、網点再現性も良好である。
【0018】
本発明で得られる軽量塗工紙の好適な使用用途として、飲料品のビン等に貼合するラベル用途がある。軽量塗工紙の塗工層を有する艶面にグラビア印刷を行い、もう一方の面に粘着剤を設け、粘着剤にてビン等の被着体にグラビア印刷が成された軽量塗工紙を貼合する加工が施される。グラビア印刷面は平滑度の高さが必要となり、貼合面は接合強度を上げるために粘着剤と基紙及びビン等の被着体との比表面積を増やし粘着度を増すために平滑度の低さが必要となるため、平滑度の表裏差を設けることが出来る事などからも、ヤンキー紙を本発明における基紙に使用することが好ましい。
【0019】
本件発明の軽量塗工紙表面の平滑性は、東洋精機製作所製のマイクロトポグラフを使用して24.4kg/cm2の圧力でプリズムの一面に圧着し、波長0.5μmの光を用いて測定したときのRp値にて評価する。
【0020】
グラビア印刷下でのニップ圧力は通常10〜20kgf/cm2 で、ニップの通過時間は1ミリ秒前後といわれており、非常に短時間の加圧下での用紙の平滑性、即ち、用紙とグラビア印刷版との接触率が重要であることが分かる。従来より、加圧下でのガラス面と紙の光学的接触率を測定する装置として、正反射平滑度計(東洋精機製作所製のマイクロトポグラフ)が知られている。マイクロトポグラフでは、加圧開始後1ミリ秒前後の接触率の読み取りは不可能であるが、最短で加圧開始後10ミリ秒後のガラス面と紙の光学的接触率を読み取ることが可能であり、ヤンキー紙を基紙とした軽量塗工紙における艶面(塗工層)とガラス面との接触率から算出される平滑性の指標となるRp値(凹部の平均深さに比例した物理量:単位μm)とミッシングドットの発生率を調べた結果、マイクロトポグラフの加圧圧力24.4kgf/cm2の設定で加圧開始後10ミリ秒後のRp値がミッシングドットの発生率と最も相関性の高いことがわかった。
【0021】
即ち、ヤンキー紙は従来の上質紙からなる基紙を用いた塗工紙と異なり、裏面が粗面で塗工層をもうけた艶面が高平滑であるため、裏面の粗面の凹凸に対し、グラビア印刷下でのニップ圧力を高めに設定したマイクロトポグラフの設定圧力24.4kgf/cm2における加圧開始後10ミリ秒後のRp値を2.0μm以下、好適には1.8μm以下に成るようにヤンキー紙からなる基紙と塗工層を設けることで、良好なグラビア印刷適性を得ることが可能となる。
【0022】
本発明が所望するRp値を得る方法としては、基紙を構成するパルプ主原料として、ルンケル比0.9以下の広葉樹クラフトパルプを含有させることのほか、基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプを用いること、塗工層に用いる顔料が、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有されることが好適な手段として挙げられる。
【0023】
なお、Rp値の下限としては特に限定するものではないが、艶消し塗被紙の外観特性等を考慮すると、Rp値の下限値としては0.5μmである。因みに、0.5μm未満では高精細なグラビア印刷適性が低下する恐れが有る。また、2μm以上だと高精細なグラビア印刷に必要な網点再現性が得られない。
【0024】
本件発明の軽量塗工紙においては、塗工層中に湿潤紙力増強剤を含有させる事が好ましい。塗工層に含有される湿潤紙力増強剤としては特に限定されるものではなく、例えば尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素―ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリ尿素―ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、アルデヒドテンプン、ケトンアルデヒド樹脂等が挙げられ、必要に応じて2種類以上を併用することも可能である。中でも、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂やポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂が特に好ましく用いられる。
【0025】
湿潤紙力増強剤は、含有量が少なすぎると十分な耐水性・水中伸度が得られにくく、多すぎると塗料調整における操業性不良、不用意な凝固が発生しやすくなるため、固形分で対顔料当たり、0.3〜1.0重量%含有することが望ましい。本発明ではこの範囲で含有することにより、操業性に支障をきたすことなく目標とする耐水性・水中伸度を効率良く得ることができる。より好ましくは0.3〜0.5重量%である。
【0026】
固形分で対顔料当たり、0.3重量%未満では、十分な耐水性・水中伸度が得られにくく、1.0重量%を超える含有量では、元来アニオン性を呈する塗工層の形成において、塗工液のゲル化や凝集物発生の問題が生じやすく、操業性に問題が生じる。
【0027】
前記軽量塗工紙は、ガーレ透気度(JIS P 8117)が1000秒以上で水中伸度が2.5%以下(紙の幅方向)であることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、ガーレー透気度を1000秒以上とすることにより、グラビア印刷における、印刷後の乾燥時における加熱に対し寸法安定性を維持すると共に、特にラベル用途で用いた場合における、粘着剤の過度の浸透性を抑制し、使用後の廃棄性、粘着剤使用量の低減を図ることができることを見いだした。
【0029】
軽量塗工紙の透気性を高くするためには、用紙支持体の透気性を高くすることのほか、塗工層の透気性を高くする、本名発明においては、基紙を構成するパルプ主原料として、ルンケル比0.9以下の広葉樹クラフトパルプを含有させることのほか、基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプを用いる方策が好適であり、塗工層の形成においては、塗工層に用いる顔料に、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有させることが好適な手段として用いられる。
【0030】
また、抄造時におけるプレス線圧を高くする等、紙層の密度を上げる試みを考えられるが、過度の対応はクッション性を低下させる問題があり、原料パルプ、塗工層の構成を主体に調整することが好ましい。 また、透気度が1000秒未満ではインキが紙へ浸透しやすくなり、塗工表面でのインキの目止め性が悪くなり、網点再現性が出ない。好ましくは1000秒〜3500秒が好ましい。3500秒以上だとアルミやフィルムとの貼合時に熱が紙層から逃げないため、バブリング等の加工上の問題が発生する。
【0031】
本発明の軽量塗工紙は、クロス方向(紙の幅方向)のJ.TAPPI No.27に基づく20分後の水中伸度が2.5%以下、より好適には2.2%以下であることが好ましい。
【0032】
水中伸度は2.5%以下とする。高精細なグラビア印刷用途においては高い網点再現性が必要とされるが、2.5%以上だとグラビア印刷時の乾燥工程における紙の収縮により印刷時の見当ずれが発生する。
【0033】
また、本発明の軽量塗工紙が好適に用いられるラベル用途において、水中伸度が2.5%を超えると、軽量塗工紙の裏面に設けられた粘着剤などが塗布されたり、艶面に設けられた塗工層、基紙に水分が含まれたりすると、基材や塗工層に寸法変化が生じてしまうため、被着体に貼着時に作業性が悪化するなどの問題が生じる。水中伸度は理想的には0%であるが、水中伸度の下限は現実的には0.5%程度である。
【0034】
前記軽量塗工紙は、基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上、好適には93〜97%含有するパルプが用いられている。より好適には、0.4〜0.9mm、更に好ましくは0.45〜0.85mmとなるように調整される。
【0035】
なお、この繊維長の調整は叩解処理及びスクリーニング処理にて行われる。クッション性を確保する手段として、原料パルプ中に機械パルプを配合する試みが考えられるが、機械パルプが配合されると、本グラビア印刷用塗工紙の紙基材のクッション性及び不透明度を向上させることはできるが、グラビア印刷用塗工紙の表面に繊維の浮出し現象が現れ、印刷物の見栄え、特に白紙の表面性の影響を受け易いハーフトーン部からハイライト部にかけて見栄えが悪化する傾向にあるため、主成分として広葉樹機械パルプを、好適には100%広葉樹クラフトパルプを用いることが好ましい。
【0036】
基紙を構成する原料パルプとして、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプが用いられていると、紙層が均一となり、また、表面平滑性が優れる。更 に重量平均繊維長が1.0mmを超えるパルプが用いられていると、パルプ繊維の結束が生じ、地合が悪くなるため、高精細なグラビア印刷適性を満たすためには塗工量を増加しなくてはならず、軽量化の課題解決にならない。他方、重量平均繊維長が0.5mm未満のパルプが用いられていると、地合は良好となるが、緊度が上がりすぎるため、クッション性が低下し、グラビア印刷適性が低下する。
【0037】
前記軽量塗工紙の顔料は、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)を重量比で
(A):(B)=30:70〜70:30、より好適には40:60〜60:40
となるよう配合されたものを使用する。
【0038】
塗工層に含有させる顔料として、体積平均粒径0.10〜0.40μm、より好適には0.20〜0.35μm、アスペクト比が7〜13、より好適には、8〜12の微粒カオリン(A)と体積平均粒径0.20〜0.60μm、より好適には、0.30〜0.50μmの重質炭酸カルシウム(B)を 用いることが好ましい。
【0039】
微粒カオリンの体積平均粒径が0.10μm未満では粒子が細かすぎてバインダーが相当量必要となり、バインダーマイグレーションが発生するためグラビア印刷時に塗工層におけるインキ受理性が悪くなり、乾燥不良が発生し、グラビア印刷時の操業性が悪化する。0.40μmを超えると、粒子径が大きすぎ、塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。好ましくは0.20〜0.30μmである。
【0040】
アスペクト比が7未満の微粉カオリンでは顔料中の空隙が大きくなるため高い網点再現性が得られない。逆に13を超えると塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。
【0041】
重質炭酸カルシウムの体積平均粒径が0.20μm未満では、粒子が細かすぎバインダーが相当量必要となり、バインダーマイグレーションが発生するためグラビア印刷時に塗工層におけるインキ受理性が悪くなり、乾燥不良が発生し、グラビア印刷時の操業性が悪化する。0.60μmを超えると、粒子径が大きすぎ、塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。好ましくは0.30〜0.50μmである。
【0042】
塗工層に含有させる顔料として、微粒カオリン(A):重質炭酸カルシウム(B)を重量比で30:70〜70:30の範囲で含有させることが好ましい。微粒カオリンの重量割合が30未満では、重質炭酸カルシウムの割合が多すぎるため、顔料中の空隙が多くなり、高い網点再現性が得られない。70を超えると塗料の流動性が悪くなり、塗工適性が悪化する。すなわち、ストリークが発生したり、塗料濃度を下げる必要性が生じ生産性が低下したりする。
【0043】
塗料に含有される接着剤としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体の各種ラテックスを挙げることができる。特にSBRラテックスのうち、スチレン含有量が50重量%〜80重量%のスチレンリッチであるものは、柔らかいブタジエンによる紙面のブロッキング効果がなく、平滑性を向上させる効果があるため好ましい。 本発明における塗工層は、オンマシンのサイズプレス工程やオフコーターで水が塗布され、塗布方式としては、例えばツーロールサイズプレス、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等の種々の公知の塗布方式を使用できるが、最も好適には、艶面(片面)への塗工が容易であり、高精細なグラビア印刷を可能にするため、ブレードコーターを用いることが好ましい。
【0044】
また、本発明においては、ヤンキー紙からなる基材の、非塗工面に、バックコート層として、澱粉と耐水化剤との混合水性塗工液を固形分で約2.0g/m2をバーコーター等の塗工手段で塗布し乾燥後更に表面温度が180℃である金属ロールからなるソフトカレンダーを用いて約線圧60kN/m程度にて平滑化処理を行うことで、本発明に係る軽量塗工紙のカール対策、粘着剤塗工面の粘着剤塗工性等、軽量塗工紙の表面性に関わる品質を向上できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、地合良好でクッション性に優れたヤンキー紙からなる基紙に顔料及び接着剤を主成分とする塗工層を有することで網点再現性に優れた軽量塗工紙ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本形態の軽量塗工紙は、ヤンキー紙からなる基紙に顔料と接着剤からなる塗工層を有する軽量塗工紙であって、塗工紙坪量40〜55g/m2、塗工量(片面)8〜15g/m2、塗工面でのマイクロトポグラフが加圧20kgf/cm2の条件下で、加圧開始10ミリ秒後に2μm以下であるとされている。
また、塗工紙表面におけるガーレ透気度(JIS P 8117)が1000秒以上で水中伸度が2.5%以下であるとされている。
【0047】
前記軽量塗工紙の顔料が体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有されるとされている。
【実施例】
【0048】
以下、本発明に係る実施例を、比較例を参照しつつ詳説する。尚、各薬品の添加量は固形分である。
【0049】
〔実施例1〕
ろ水度410mlのチリ産ユーカリを主原料としたルンケル比0.9である広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100%のパルプを用い、硫酸バンド、紙力増強剤、サイズ剤を内添し、水で希釈した後、ヤンキードライヤー抄紙機で抄紙し、坪量33g/m2の 基紙を抄造した。
顔料としてカオリン(商品名:カオファイン、シール社製、平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:10)50部と、重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル97、イメリスミネラルズジャパン社製、平均粒子径:0.4μm)50部、分散剤(商品名:アロンT−540、東亜合成社製)0.1部を加え、コーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、接着剤として、リン酸エステル化澱粉(商品名:PN700S、三和澱粉工業社製)3.0部、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:R1395、旭化成ケミカルズ社製)12部、湿潤紙力増強剤(星光PMC社製、型番:WS4024 ポリアミド・エピクロロヒドリン)0.4部を添加、攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度が60%の塗工液を調製した。前記基紙に前記塗工液を、ブレードコーターを用いて塗工量(片面)が12g/m2となるように塗工した。
【0050】
また、実施例1〜21、比較例1〜23の原料パルプにおいては、
実施例1〜21では、原料パルプの主原料としてチリ産ユーカリを用いた。
比較例1では、原料パルプの主原料としてユーカリグロビュラスを用いた。
比較例2では、原料パルプの主原料としてラジアータパインを用いた。
比較例3では、原料パルプの主原料としてアスペンを用いた。
比較例4では、原料パルプの主原料としてダグラスファーを用いた。
比較例5〜23では、主原料としてチリ産ユーカリを用いた。
各原料パルプについて、叩解処理及び分級手段にてルンケル比、平均繊維長、繊維長分布を調整した。
【0051】
実施例2〜7、10〜17、比較例3〜5、7〜21については、湿潤紙力増強剤(星光PMC社製、型番:WS4024 ポリアミド・エピクロロヒドリン)を用い、実施例18〜21及び比較例22、23においては、湿潤紙力増強剤(田岡化学工業社製、型番:スミレズレジン メラミン樹脂)を用いた。
【0052】
本発明で用いた無機微粒子は以下のとおりである。
(1)微粒カオリン
・カオファイン(シール社製)平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:10
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.08μm、アスペクト比:10
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.10μm、アスペクト比:10
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.15μm、アスペクト比:14
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.20μm、アスペクト比:10
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:5
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:6
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:7
・カオファインを更に湿式粉砕機にて粒度を調整した
平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:8
・カオファイン(シール社製)平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:13
・カピムCC(イメリス社製)を更に湿式粉砕機にて粒度を調整して製造
平均粒子径:0.25μm、アスペクト比:15
・カピムCCを更に湿式粉砕機にて粒度を調整して製造
平均粒子径:0.35μm、アスペクト比:10
・カピムCCを更に湿式粉砕機にて粒度を調整して製造
平均粒子径:0.40μm、アスペクト比:8
・カピムCCを更に湿式粉砕機にて粒度を調整して製造
平均粒子径:0.40μm、アスペクト比:10
・カピムCCを更に湿式粉砕機にて粒度を調整して製造
平均粒子径:0.50μm、アスペクト比:10
・カピムCCを更に湿式粉砕機にて粒度を調整して製造
平均粒子径:1.25μm、アスペクト比:4
【0053】
(2)重質炭酸カルシウム
・カービタル97(イメリスミネラルズジャパン社製)平均粒子径:0.40μm
・カービタル97を更に湿式粉砕機にて粒度を調整した 平均粒子径:0.15μm
・カービタル97を更に湿式粉砕機にて粒度を調整した 平均粒子径:0.20μm
・カービタル97を更に湿式粉砕機にて粒度を調整した、平均粒子径:0.3μm
・カービタル60(イメリスミネラルズジャパン社製)を分級、湿式粉砕して製造
平均粒子径:0.5μm
・カービタル60を分級、湿式粉砕して製造 平均粒子径:0.60μm
・カービタル60を分級、湿式粉砕して製造 平均粒子径:0.70μm
〔実施例2〜21〕〔比較例1〜23〕
実施例2〜21、比較例1〜23、市販品を表1および表2に示す条件以外は実施例1と同様に作製し、本発明の評価を行った。各条件における評価結果を表3、表4に示す。
【0054】
表1、表2中に示す条件の詳細は、次の通りである。
【0055】
〔ルンケル比〕
得られた軽量塗工紙基紙を、JIS P 8220に準拠して離解した。得られた離解パルプの繊維の内腔の幅(径)Lと細胞壁の厚さtをカヤニFiberlabを使用して測定した後、次式により算出した。
ルンケル比=t(μm)×2/L(μm)
【0056】
〔重量平均繊維長〕
得られた軽量塗工紙基紙を、JIS P 8220に準拠して離解し、得られた離解パルプを基に、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙−繊維長試験方法−光学的自動計測法」に準拠して、カヤニ繊維長測定機FS−100を用いて原料パルプの重量平均繊維長、繊維長1.5mm以下の繊維の割合を測定した。
【0057】
〔繊維長分布〕
得られた軽量塗工紙基紙を、JIS P 8220に準拠して離解し、得られた離解パルプを基に、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙−繊維長試験方法−光学的自動計測法」に準拠して、カヤニ繊維長測定機FS−100を用いてパルプ繊維長を測定した。
【0058】
〔アスペクト比〕
電子顕微鏡(嶋津製作所製:S−2150)を用いて微粒カオリンの100個の粒子について長径、短径を測定し、長径、短径からアスペクト比(=長径/短径)の平均を求めた。
【0059】
〔体積平均粒子径〕
塗工組成物に含有する顔料のメタノール分散溶液をレーザー粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した。
【0060】
〔米坪(坪量)〕
JIS P 8124に準拠して測定した。
表3、表4中に示す評価の詳細は、次の通りである。
【0061】
〔正反射平滑度〕
本明細で言う正反射平滑度は東洋精機(株)製マイクロトポグラフを用い、加圧24.4kgf/cm2、加圧開始10ミリ秒後、波長0.5mmについて測定した値を言う。
【0062】
〔水中伸度〕
J・TAPPI―No27−28A法に準じて測定した、本発明に係る軽量塗工紙の幅方向の値である。
【0063】
〔耐水性〕
耐水性の評価として、オフセット輪転印刷(オフセット輪転印刷機:型番LITHRONE44、(株)小森コーポレーション製を用いて、両面が4色ベタ図柄で印刷速度600rpm)後、印刷ブランケットの汚れ状態を目視判定し、1〜5の5段階で評価した。
(評価基準)
5:ブランケットに汚れが全く観察されず、極めて優れているレベル。
4:ブランケットに汚れは殆ど観察されず、優れているレベル。
3:ブランケットに塗被層の剥がれが少量観察されるが、実用上問題ないレベル。
2:ブランケットに塗被層の剥がれが多量に観察され、実用上問題ありのレベル。
1:ブランケットに塗被層の剥がれが著しく観察され、実用上問題ありのレベル。
【0064】
〔網点再現性〕
軽量塗工紙の塗工層上にグラビア印刷による印刷を施し、インキの載り具合を目視で観察し、下記基準で評価した。
(評価基準)
5:白抜けがない。
4:白抜けが少ない。
3:白抜けがやや目立つ。
2:白抜けが多く目立つ。
1:白抜けがかなり多く目立つ。
【0065】
〔塗工流動性〕
ブレード塗工した際に発生した2800m2当たりのストリーク数より、塗工液の流動
性を判定した。
(評価基準)
5:0〜1個 流動性が非常に良い。
4:2〜3個 流動性が良い。
3:4〜5個 流動性については実用上問題ない。
2:6〜7個 流動性について実用上問題が発生する。
1:8個以上 流動性について実用上重大な問題が発生する。
【0066】
〔印刷光沢〕
印刷光沢については実施例記載の手法で作成された塗工紙にGP−II印刷機を用いてインキ3g/m2塗布して印刷(インキ:東洋インキ社製 PCNT 391 T)し、村上色彩技術研究所製光沢度計によりJIS P 8142 に規定される入射光束/反射光束=75°/75°の鏡面光沢度を測定した。
(評価基準)
5:印刷光沢度が50%以上
4:印刷光沢度が45%〜50%
3:印刷光沢度が40%〜45%
2:印刷光沢度が35%〜40%
1:印刷光澤度が35%以下
評価3〜5であれば、軽量塗工紙として合格レベルとする。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤンキードライヤーにて乾燥された基紙の艶面に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有する軽量塗工紙であって、基紙を構成するパルプ主原料として、JIS P 8220に準拠して離解したパルプのルンケル比0.9以下の広葉樹クラフトパルプを含有し、塗工紙坪量40〜55g/m2、片面塗工量8〜15g/m2、塗工表面の正反射平滑度が加圧24.4kgf/cm2の条件下で、2μm以下であることを特徴とする軽量塗工紙。
【請求項2】
前記軽量塗工紙のガーレ透気度(JIS P 8117)が1000秒以上で、水中伸度(紙の幅方向)が2.5%以下である請求項1に記載の軽量塗工紙。
【請求項3】
前記塗工層中に、湿潤紙力増強剤を含有する請求項1または2に記載の軽量塗工紙。
【請求項4】
基紙を構成するパルプ原料として重量平均繊維長が0.5mm〜1.0mmで、繊維長1.5mm以下の繊維を90%以上含有するパルプである請求項1〜3のいずれかに記載の軽量塗工紙。
【請求項5】
前記顔料が、体積平均粒径0.10〜0.40μm、アスペクト比が7〜13の微粒カオリン(A)と、体積平均粒径0.20〜0.60μmの重質炭酸カルシウム(B)が重量比で、(A):(B)=30:70〜70:30で含有される請求項1〜4のいずれかに記載の軽量塗工紙。

【公開番号】特開2010−37693(P2010−37693A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204057(P2008−204057)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】