説明

軽量発泡コンクリートパネルの取付用金具セットおよびこれを用いる軽量発泡コンクリートパネルの取付方法

【課題】施工効率および組立効率を改善し、従来に比較してより容易かつ経済的にALCパネルを取り付けることができるALCパネルの取付用金具セットおよびALCパネルの取付方法を提供する。
【解決手段】平面の少なくとも一部に縦長のボルト挿通長孔52を備えると共に、建物躯体に壁パネルを固定する外部金物50と、壁パネル内に下記係止金具30を介して埋設される棒状部材20と、一端側軸方向にボルト挿入孔32を有すると共に、壁パネル内に埋設されてその直径方向に設けられた貫通孔33に棒状部材20を貫通する筒状の係止金具30と、外部金物50のボルト挿通長孔52から係止金具30のボルト挿入孔32に螺合されるボルト40とからなる壁パネルの取付用金具セットであって、前記外部金物50のボルト挿通長孔52は、前記係止金具30が挿通可能な大きさである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体に軽量発泡コンクリートパネル(ALCパネル)を取り付けるために使用するALCパネルの取付用金具セットおよびこれを用いるALCパネルの取付方法の改良に関するものである。さらに詳しくは、施工効率および組立効率を改善し、従来に比較してより容易かつ経済的にALCパネルを取り付けることができるALCパネルの取付用金具セットおよびALCパネルの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ALCパネルに代表される壁パネル(以下、断りのない限り壁パネルPと呼ぶ。)の建物躯体への取付構造としては、建物躯体のフランジ部に固着した上部アングルと下部アングルからなる取付金具により、外部から壁パネルを支持する構造が一般的であったが、この取付構造では、溶接やモルタル補修などの手間を要するばかりか、壁パネルに形成した貫通孔により外観が著しく阻害されるため、近年では、壁パネルの内部に埋設したアンカー金具と取付金具とを連結固定し、この取付金具を建物躯体に固定する取付構造(例えば、特許文献1および2参照)が主として採用されている。
【0003】
そして、この従来の取付構造は図3に示したように構成されていた。すなわち、壁パネルPは、ALCパネルであって、内部に設けられた埋設アンカー棒(棒状部材)20に外部金物50が係止されることにより、建物躯体(図示略)に取り付けられる。
【0004】
壁パネルPを取り付ける建物躯体は、通常フランジを備えたH型の断面形状をしており、壁パネルPと該建物躯体とは、フランジ上に固定された定規アングルが壁パネルPの裏面と外部金物50との間に狭持されることによって結合される。この外部金物50は、ボルト挿通孔52を備えた板状の金属部材であって、ボルト40がボルト挿通孔42を挿通した状態で、壁パネルPの内部に埋設された係止金具30の貫通孔33へ螺着されることにより、該棒状部材20を壁パネルP内に固定する。
【0005】
壁パネルPは、起立した長方形板状のパネルであって、パネル面P1に棒状部材20を埋設するための裏面孔12を、またパネル面P2に小口面孔17とを備えている。裏面孔12は、裏面11に開口したパネル厚方向に延びる断面形状が円の孔であって、小口面孔17は、小口面16に開口したパネル面に沿って延びる断面形状が円の孔である。そして、これら裏面孔12と小口面孔17とは、壁パネルPの内部で連通している。
【0006】
棒状部材20は、外部金物50をボルト40で取り付けるためのもので、壁パネルPの内部に埋設される係止金具30の貫通孔33へと挿入される。
【0007】
係止金具30は、裏面孔12内に挿入される金属部材であって、貫通孔33の他に、ボルト40を螺着するためのボルト挿入孔32が、内周面に雌ネジを螺刻することにより穿設されている。詳しくは、この係止金具30は、ボルト挿入孔32と貫通孔33とからなる筒孔が形成された円筒状の形状をしており、通常はその先端部分がやや楕円形気味に押し潰され、その楕円形気味の部分を貫通孔33が短軸径方向に貫通した形状をしている。筒孔の構成は、基端側の端面から貫通孔33のやや手前までの部分がボルト挿入孔32となっており、このボルト挿入孔32のやや手前部分から先端側の端面までの部分が貫通孔33となっている。
【0008】
以上に示した壁パネルPを、建物躯体に取り付けるに際しては、まず、係止金具30を壁パネルPの裏面孔12に挿入する。次いで、小口面孔17から棒状部材20を挿入し、壁パネルPの内部で、この棒状部材20を係止金具30の貫通孔33に挿通させることにより、埋設アンカー金具を組み立てる。その後、該埋設アンカー金具における係止金具30端に、外部金物50をボルト40で緩く止め仮止めしてから、壁パネルPを建物躯体と当接する所定の取付位置にまで移動させ、最後に、仮止めしていたボルト40をボルト挿通孔32へしっかりと締め付けることにより、取付を完了させる。
【0009】
この取付構造によれば、ボルト40により係止金具30と棒状部材20と外部金物50とが結合され、かつこの結合は安定したものとなっている。
【0010】
ところで、上記の取付構造において、パネルの取付用金具セットを構成する各部品、つまり棒状部材20、係止金具30、ボルト40および外部金物50は、それぞれ工場にて製造されたものが別々に梱包されて、施工現場へ運び込まれていた。そして、施工者は施工現場において、
a)ボルト50を係止金具30のボルト挿入孔33に螺合仮止めする、
b)パネルP内で係止金具30の貫通孔33に棒状部材20を係合させる、
c)ボルト40を係止金具30から取り外す、
d)外部金物50のボルト挿通長孔52を介して、ボルト40を係止金物30のボルト挿入孔33に螺合本止めするという手順により、取付構造を完成させていた。
【0011】
しかしながら、上記のb)工程においては、係止金具30が壁パネルPの内部に入ることから、この係止金具30を手で保持することが容易ではないため、係止金具30に仮止めしたボルト40を手で保持しながら、棒状部材20を貫通孔33へ挿通させた後にボルト40を取り外してから、再度外部金物50を介してボルト40を締め込む必要があった。そればかりか、ボルト40と外部金物50とが別梱包されて施工現場へ運ばれていたため、両者の数が不揃いとなったり、輸送中にボルト40の先端が損傷を受け螺合不良を発生したりするという問題もあった。
【0012】
したがって、従来のALCパネルの取付用金具セットおよびALCパネルの取付方法においては、施工効率および組立効率の改善が頻りに求められていたのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−274721号公報
【特許文献2】特開2007−009659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0015】
したがって、本発明の目的は、施工効率および組立効率を改善し、従来に比較してより容易かつ経済的にALCパネルを取り付けることができるALCパネルの取付用金具セットおよびALCパネルの取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために本発明によれば、
平面の少なくとも一部に縦長のボルト挿通長孔を備えると共に、建物躯体に軽量発泡コンクリートパネルを固定する外部金物と、
ALCパネル内に下記係止金具を介して埋設される棒状部材と、
一端側軸方向にボルト挿入孔を有すると共に、ALCパネル内に埋設されてその直径方向に設けられた貫通孔に前記棒状部材を貫通する筒状の係止金具と、
前記外部金物のボルト挿通長孔から前記係止金具のボルト挿入孔に螺合されるボルトとからなるALCパネルの取付用金具セットであって、
前記外部金物のボルト挿通長孔は、前記係止金具が挿通可能な大きさであることを特徴とするALCパネルの取付用金具セットが提供される。
【0017】
なお、本発明のALCパネルの取付用金具セットにおいては、
前記外部金物のボルト挿通長孔の短辺幅が18〜25mmの範囲にあること、および
前記外部金物が、イナズマプレート、サンダープレートおよび平プレートから選ばれたいずれかであること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0018】
また、本発明のALCパネルの取付方法は、
上記のALCパネルの取付用金具セットを使用して建物躯体にALCパネルを取り付けるに際し、
まず係止金具のボルト挿入孔にボルトを螺合しておき、
この係止金具とボルトとの一体化金具を、外部金物のボルト挿通長孔へ前記係止金具側から挿入し、
次にALCパネルの内部で、前記係止金具の貫通孔に、ALCパネルの小口面から挿入された棒状部材を貫通させ、
この状態で前記外部金物のボルト挿通長孔側から前記ボルトを締め込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ALCパネルの取付用金具セットにおける外部金物のボルト挿通長孔は、前記係止金具が挿通可能な大きさであるため、以下に説明するとおり、予めボルトを係止金具のボルト挿入孔に挿入して一体化したものを使用できることから、セット部品数が減少するばかりか、この一体化部品のボルト側を手に持ちながら、これを外部金物のボルト挿通長孔へ挿通することができ、その状態で係止金具と棒状部材とを壁パネル内で係合させることができるため、施工工程の減少も可能であることから、施工効率および組立効率を改善し、従来に比較してより容易かつ経済的にALCパネルを取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。なお、以下においては、本発明と図3に示した従来例における共通部分については、同じ符号を用いて説明する。
【0021】
まず、図1および図2にしたがって、本発明のALCパネルの取付用金具セットの基本構造について説明する。
【0022】
図1に示したように、本発明のALCパネルの取付用金具セットは、外部金物50と、棒状部材20と、係止金具30と、ボルト40とから構成されるものである。
【0023】
外部金物50は、平面の少なくとも一部に縦長のボルト挿通長孔52を備えると共に、建物躯体60に壁パネル(図示省略)を固定するために機能する部材であり、図面ではサンダープレートを使用しているが、このサンダープレートに代えて、周知のイナズマプレートおよび平プレートなどを使用することも可能である。なお、この外部金物50が備えるボルト挿通長孔52は縦長であることが望ましく、これによりボルト40を挿通した後で、壁パネルの縦方向の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0024】
棒状部材20は、壁パネル内に下記係止金具30を介して埋設される棒状のアンカー部材であり、直径が9〜12mm、長さが200〜400mm程度の鋼棒が好ましく使用される。
【0025】
係止金具30は、壁パネルの裏面孔内に挿入される金属製の筒状部材であって、一端側軸方向にボルト40を螺着するためのボルト挿入孔32が、内周面に雌ネジを螺刻することにより穿設されている。この係止金具30は、通常その先端部分がやや楕円形気味に押し潰され、その楕円形気味の部分を貫通孔33が短軸径方向に貫通した形状をしている。
【0026】
ボルト40は、外部金物50のボルト挿通長孔52から係止金具30のボルト挿入孔32に螺合されて、外部金物50と係止金具30を締結するために機能する部材である。なお、このボルト40の頭部直径が外部金物50のボルト挿通長孔52よりも小さい場合には、それよりも外径の大きなワッシャー(座金)42を介在させることによって、本発明に適用することが可能である。
【0027】
これら外部金物50と、棒状部材20と、楕円形気味の係止金具30と、ボルト40とから構成される本発明のALCパネルの取付用金具セットにおいては、図1に示したように、外部金物50のボルト挿通長孔52を、係止金具30が挿通可能な大きさに形成している。
すなわち、係止金具30が楕円形気味であるとともに、ボルト挿通長孔が楕円孔である場合、ボルト挿通長孔に比べて係止金具30の短径および長径(図1においてL2)がそれぞれ小さければ良い。
また、係止金具30が円筒(断面が円)の場合は、その直径が外部金物50のボルト挿通長孔52の短辺幅L1より小さければ良い。
そして、外部金物50のボルト挿通長孔52の長辺長さは20〜25mmで、短辺幅L1は18〜25mmの範囲にあることが好ましい。また、係止金具30の断面における、最大となる長径部分であっても13〜20mmの範囲にあることが望ましい。
【0028】
このように、外部金物50のボルト挿通長孔52が係止金具30が挿通可能な大きさであることによって、図1に示したように、予めボルト40を係止金具30のボルト挿入孔32に挿入して一体化したものを使用できることから、セット部品数が減少するばかりか、図2に示したように、この一体化部品のボルト40側を手にもちながら、これを外部金物50のボルト挿通長孔52へ挿通することができ、その状態で係止金具30と棒状部材20とを壁パネル内で係合させることができるため、施工工程の減少も可能となるのである。
【0029】
次に、上記の構成からなる本発明のALCパネルの取付用金具セットを使用して、壁パネルを建物躯体に取り付ける方法について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
なお、上記においては図3を従来例として説明したが、その基本構造自体は本発明と同様である。また、図1および2は、図3を反対側から見た例であり、壁パネルについては図示を省略してある。
【0030】
本発明の取付方法を実施するに際しては、図1に示したように、まず係止金具30のボルト挿入孔32にボルト40を螺合しておく。なお、この両部品30、40の結合一体化は、これら部品の製造工場で機械的に効率よく実施可能であり、この一体化部品を梱包して施工現場へ搬送できるため、部品数が減少できるばかりか、これまで施工現場で行っていたボルト40のネジ螺合検査も、一体化と同時に実施できるため、施工効率が著しく改善されることになる。
【0031】
そして、施工現場では、この係止金具30とボルト40との一体化金具を、図2に示したように、外部金物50のボルト挿通長孔32へ係止金具30側から挿入する。この場合には、外部金物50のボルト挿通長孔52が係止金具30が挿通可能な大きさであるため、この一体化部品のボルト40側を手にもちながら、これを外部金物50のボルト挿通長孔52へと容易に挿通することができ、その状態で以下のように係止金具30と棒状部材20とを壁パネル内で係合させることができる。
【0032】
次に、建物躯体、例えばL字アングル60に載置された壁パネルの内部で、係止金具30の貫通孔33に、壁パネルの小口面から挿入された棒状部材20を貫通させ、この状態で外部金物50のボルト挿通長孔52側からボルト40を締め込むことにより、従来に比較して遙かに容易かつ経済的に壁パネルの取付構造を完成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、予めボルトを係止金具のボルト挿入孔に挿入して一体化したものを使用できることからセット部品数が減少するばかりか、この一体化部品のボルト側を手にもちながら、これを外部金物のボルト挿通長孔へ挿通することができ、その状態で係止金具と棒状部材とを壁パネル内で係合させることができるため、施工工程の減少も可能であることから、施工効率および組立効率を改善し、従来に比較してより容易かつ経済的にALCパネルを取り付けることができ、壁パネルを用いる建築分野へ貢献するところが大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のALCパネルの取付用金具セットの一例を、ボルト挿通長孔の短辺幅L1および係止金具の長径L2を含めて示す斜視説明図。
【図2】図1のALCパネルの取付用金具セットの取付工程を示す斜視説明図。
【図3】従来の壁パネルへの取付構造を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0035】
P 壁パネル(ALCパネル)
12 裏面孔
17 小口面孔
20 棒状部材(埋設アンカー棒)
30 係止金具
31 筒状本体
32 ボルト挿入孔
33 貫通孔
40 ボルト
42 ワッシャー
50 外部金物
52 ボルト挿通長孔
L1 ボルト挿通長孔の短辺幅
L2 係止金具の長径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面の少なくとも一部に縦長のボルト挿通長孔を備えると共に、建物躯体に軽量発泡コンクリートパネルを固定する外部金物と、
軽量発泡コンクリートパネル内に下記係止金具を介して埋設される棒状部材と、
一端側軸方向にボルト挿入孔を有すると共に、軽量発泡コンクリートパネル内に埋設されてその直径方向に設けられた貫通孔に前記棒状部材を貫通する筒状の係止金具と、
前記外部金物のボルト挿通長孔から前記係止金具のボルト挿入孔に螺合されるボルトとからなる軽量発泡コンクリートパネルの取付用金具セットであって、
前記外部金物のボルト挿通長孔は、前記係止金具が挿通可能な大きさであることを特徴とする軽量発泡コンクリートパネルの取付用金具セット。
【請求項2】
前記外部金物のボルト挿通長孔の短辺幅が18〜25mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の軽量発泡コンクリートパネルの取付用金具セット。
【請求項3】
前記外部金物が、イナズマプレート、サンダープレートおよび平プレートから選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量発泡コンクリートパネルの取付用金具セット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の軽量発泡コンクリートパネルの取付用金具セットを使用して建物躯体に軽量発泡コンクリートパネルを取り付けるに際し、
まず係止金具のボルト挿入孔にボルトを螺合しておき、
この係止金具とボルトとの一体化金具を、外部金物のボルト挿通長孔へ前記係止金具側から挿入し、
次に軽量発泡コンクリートパネルの内部で、前記係止金具の貫通孔に、軽量発泡コンクリートパネルの小口面から挿入された棒状部材を貫通させ、
この状態で前記外部金物のボルト挿通長孔側から前記ボルトを締め込むことを特徴とする軽量発泡コンクリートパネルの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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