説明

較正基準

【課題】デバイスの較正に対して高い精度を有し、正確さを再現しやすく、製造が簡単な較正基準を提供する。
【解決手段】キャリア層(12)が支え面(14)に対する面平行の測定面(16)を有し、標準(17)が、キャリア層(12)の測定面(16)上に載せるための、測定面(19)に面平行の支え面(18)を有し、さらに標準(17)がこすりつけるメッキによってキャリア層に永久的に設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に基礎材料のキャリア層とそのキャリア層に設けられる標準とで、薄膜層の厚さを非破壊的に測定するデバイスを較正するための較正基準に関する。前記標準はデバイスが較正されるための、測定される層の厚さを有する。
【背景技術】
【0002】
基礎材料に関して、磁気誘導方法か渦電流方法によって薄膜層の厚さを非破壊的に測定のために、正規化の後、デバイスが対応する測定タスクに対して較正されることが必要である。較正によって、名目と実際の値の違いが定められる。測定タスクに対して較正されているデバイスでこの違いが修正される。
【0003】
名目と実際の値の違いの修正のために、較正基準による測定が実行される。まず最初に、第1の値が基礎材料からなるキャリア層に関して記録される。その後、他の値が、キャリア層に加えられる標準に関して記録される。違いは測定された層厚である。標準によって、測定される公称値が決定される。いくつかの測定の後、名目と実際の値の間の平均された偏りが記録され、較正される。
【0004】
今までに知られた較正基準は、標準が載せられるかまたはプラスチック膜(例えばポリエチレンテレフタレート(PTFP))が接着される基礎材料のキャリア層から成る。較正基準が、例えば40μmから1,000μmまで層厚の再現のために使われる。これらの較正基準については、特に層厚の低い範囲で、加えることまたは特に接着することは結合剤によって僅かに増加する結果となり、層厚が歪められて再現されので、問題がある。この種のフィルムの使用には、それらが延性があり、粗い表面を有するという更なる不利な点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、デバイスの較正に対して高い精度を有し、正確さを再現しやすく、製造が簡単な較正基準を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、標準がキャリア層にこすりつけることによるメッキによって永久的に設けられる較正基準によって解決される。キャリア層の上で標準をこすりつけることによるメッキのため、結合剤または他の添加物なしでキャリア層と標準とを、密着力により結合させることが可能である。キャリア層への標準のこすりつけとメッキによる位置決めの後、一種の冷間溶接が時間とともに増加する。この結合によって、キャリア層上への標準の安定な面平行の構成を確実にする。同時に、キャリア層に対して標準の面が曲がったりゆがんだりする結果となる物質が標準とキャリア層の間にないので、較正基準の高精度の設計が達成される。
【0007】
本発明の有利な開発によれば、標準が僅かな圧力での変位運動によってキャリア層に配置される。これは標準の支え面とキャリア層の測定面の間の空気の層が完全に除去され、キャリア層の測定面に対する標準の支え面の直接接触が確実になる。
【0008】
キャリア層の基礎材料は、好ましくは鋼、鉄または非鉄金属で形成される。基礎材料の鋼と鉄は磁気誘導測定に対して用いられる。渦電流方法に対しては、キャリア層用の材料が、非鉄金属、黄銅、銅、アルミニウムまたはアルミニウムから合金から選択される。
【0009】
キャリア層は磨かれたまたは覆われた測定面を備えるのが好ましい。このようにして、表面荒さの平均が低い面が形成され、測定用プローブが測定面上へ設定されるとき、均一な条件が提供される。この面を堅くするのが好ましい。
【0010】
標準は、絶縁層として設計されるのが望ましい。この絶縁層は、好ましくは半導体物質で形成されることである。ゲルマニウムまたはシリコンのような単元素半導体が用いられるか、または、例えば、例えばガリウム砒素、InSb、その他のIII族やV族、または例えばCdS、ZnS、などのII族やIV族の元素の化合物からなる化合物半導体が用いられる。これらの半導体物質はウェハとして提供されて、標準の所望の形状にされる。標準の形状は、角ばっていても丸くてもよい。これらの半導体物質によれば、正確な層厚のウェハを生成できるという効果がある。これは、定義された方法で成長する個々の原子層によって達成され、決められた層厚を得ることができる。ドーピングされた、部分的にドーピングされた半導体物質、または個々の元素またはドーピングの実施によって欠陥のある半導体物質を使用することができる。半導体物質のドーピングは測定に影響を及ぼさない。この種のウェハの表面は、高い耐久力を有している。それは粗さが少なく、明るく輝いており、かくして、標準の全ての測定面が測定用プローブに対して同一の設定条件を提供する。さらに、この材料は長期間使用に耐え、例えば、同じ測定点での合計60,000の測定で、200μmの標準の厚さに対して0.8μmの変化が測定された。
【0011】
本発明の他の有利な実施態様によれば、補助極を標準に割り当てることが提供される。薄膜層の測定用のデバイス、特に手動測定デバイスが、ベース点または接触点または、それぞれの接触部材で簡単に安全に較正されるように、補助極が標準から予め決められた距離だけ離して基礎本体に設けられる。
【0012】
いくつかの標準が載せられるキャリア層が、基礎本体上の支え面、すなわち補助極に面平行に設計された基礎本体上の支え面に位置決め可能であることが有利である。このようにして、キャリア層と標準の測定面及び基礎本体上の支え面の正確な位置合わせが可能となる。
【0013】
いくつかの標準とそれらに割り当てられた補助極を含む較正基準の最初の実施態様によれば、補助極の接触面が、調整デバイス、特にねじ、によって基礎本体にステップなしに支持され、かつ、それぞれに割当られた標準に対して調節可能である。したがって、補助極の接触面と標準の接触面が1つの平面を形成するようにすることができる。かくして、傾斜のない測定を実行することができる。ゼロ位置を登録するために、キャリア層の測定面のレベルである基礎本体の支え面の上へ、最初に、測定デバイスが設置され、続いて層の厚さを測定し、測定デバイスの較正を実行するように、補助極と関連する基準の上に測定デバイスを設置できるように、補助極に隣接して、関連する標準のキャリア層の測定面と同一平面である支え面を基礎本体に設けることが望ましい。
【0014】
較正基準の他の有利な実施態様によれば、少なくとも一つの標準を有し、1つの補助極が標準に割り当てられている実施態様において、標準の測定面が1つの平面にあり、かつ基礎本体の1つの支え面が標準と同じ平面にあり、さらに、段差を付けられた補助極が基礎本体に設けられ、段差を付けられたキャリア面に割り当てられることが提供される。このように、本実施態様において、標準と補助極が共通平面になるように、補助極が異なる高さに設けられ、同様に、キャリア層の測定面も異なる高さにあるものが提供される。別の実施態様では、逆のものが提供される。この種の逆のものは、キャリア層は基礎本体上の支え面と1つの平面に設けられる。補助極は、標準の測定面と同様に段階的とされている。
【0015】
標準の測定面で直接境界となっているフレームによって標準が囲まれることが望ましい。この実施態様は、標準が、その平面拡張部内において、測定用プローブのセンサエレメントの上に設置するために非常に小さく設計され、かつ、フレームが、測定用プローブのプローブブッシュに対する接触面が拡張される。測定用プローブのセンサエレメントは、プローブブッシュ内でほとんど可動に保たれる。したがって、大きな表面の標準と同じ機能を有する補助フレームを使用することで、標準を非常に小さく設計することができ、かつコストを節約することができる。
【0016】
標準を囲んでいるフレームを備えた標準の有利な実施態様は、プラスチック、ガラス、セラミックなどの非鉄金属で形成されているフレームを備えている。この種の材料は、標準のために使用する材料より経済的である。さらに、あらゆる層厚が、標準を載せる幾何形状とともにそのような材料で提供できる。
【0017】
以下に、付加的な有利な実施態様やその発展形態とともに本発明を、図面に示される実施形態に基づいて詳述する。説明と図面から得られる特徴が、それ自身によって単独で使用でき、または、本発明にしたがって任意の組合せで使用することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は概略的に本発明による較正基準11を示す。較正基準11は、支え面14を有し、測定テーブルすなわち作業領域に較正基準11を配置するためのキャリア層12を含む。支え面の反対側に、キャリア層12の測定面16が設けられている。測定面16は支え面14と面平行である。この測定面16は好ましくは高い光沢を有するように磨かれている。この測定面16に標準17が配置される。標準17はその支え面18で測定面16の上に置かれている。支え面18の反対側に、標準17の測定面19が設けられている。支え面18は測定面19と面平行に整列されている。
【0019】
キャリア層12は、基礎材料、例えば、磁気誘導層厚測定方法に対しては鋼や鉄の基礎材料からなり、例えば渦電流方法による層厚測定に対しては非磁性鋼、アルミニウム、それらの合金の非強磁性の基礎材料からなる。
【0020】
標準17は、半導体物質から絶縁層とし製作される。そのために、標準17は、半導体物質、特にシリコンまたはゲルマニウムのウェハから作られる。
【0021】
キャリア層12上に標準17を載せるために、測定面16は、少なくとも糸くずが出ない布によってきれいにこすられて、塵から解放される。加えて、測定面16は、アルコール等によってきれいにされる。同様に、標準17の支え面18を清浄にする。さらに、支え面18を磨く。続いて、標準17が、押したり、こすったりして、測定面16の上に設けられる。標準17を、軽い押圧と滑り移動でキャリア層12の所望の位置に位置決めするのが好ましい。所望の位置に対して前後に繰り返し標準17を移動させることによって、標準17を、キャリア層12に位置決めすることができる。標準17をキャリア層12に位置決めした後には、標準17は、密着力や始まっている初期冷間溶接によってキャリア層12上に永久に残る。
【0022】
キャリア層12の基礎材料または層/キャリアの組み合わせだけでなく、標準17の層厚の公称値がキャリア層12の上に付加的に示されている。
【0023】
標準17は、1,000μmまでの層厚として提供され、適用される。本発明による較正基準11を形成するためにキャリア層12上へ押しつけることよって例えば10μmの層厚の標準17さえ提供できる。標準17の厚さの測定が、次に較正される機械的な精密方法で追跡可能に実行される。
【0024】
図3aは、測定用プローブを備え、それに加えて、計測される層厚上へ測定用プローブが設定される前に、測定デバイスが測定面の上に最初に設定される接触点または接触部材を備えているデバイスのための較正基準11を示す。特に、例えば、手動計測器として設計されたこの種の測定デバイスを較正するために、少なくとも一つの標準17とその標準17に割り当てられる少なくとも一つの補助極21から成る較正基準11が提供される。図3による例示的実施形態において、3つの標準17が、1つの較正基準11に例示的に結合されている。これらの標準17は、異なる層厚、例えば50μm、100μm、500μmを有する。補助極21が基礎本体25に設けられている。この基礎本体25は、キャリア層12の測定面16と同様の表面品質を含む支え面26を備えている。基礎本体25は、キャリア層12を静止させると、支え面26に対して面平行となる支え面にキャリア層12を載せている。
【0025】
この例示的実施形態では、測定面16が支え面26と面一である。かくして、測定デバイスが、接触点で測定面26上に最初に設定され、その後、測定面16へ測定用プローブを設定する。その後、測定デバイスの較正のために、測定デバイスの接触点が補助極21の支え面23上へ設定され、割当られた標準17の測定面19の上に測定用プローブが置かれる。補助極21の支え面23は、割り当てられた、すなわち対応する標準17と同じ平面内で面平行である。
【0026】
この種の較正基準11によって、傾斜のない測定がこの種の手動計測器で実施され、正確な較正を実行できる。標準17の数と較正基準11に設けられるそれらに割当られた補助極21は単に例示しただけである。本実施形態において、補助極21は、基礎本体25にねじによって設けられ、標準17の厚さに調整させることができる。
【0027】
図3bは、較正基準11の別の実施形態を示す。本実施形態において、標準17は、大きさが小さくなっている。測定用プローブのプローブブッシュに対して十分大きい支え面を達成するために、標準はフレーム31によって囲まれる。このフレーム31は、標準17に直接縁取りするのが有利である。フレーム31の1つの支え面32は、好ましくは標準17の支え面19と面一にすることが望ましい。しかしながら、センサ要素がプローブブッシュに対して摺動可能に設けられ、かつプローブブッシュに差し込むことができるので、この支え面32が支え面19と同じ面内にあることが絶対的に必要なものではない。このフレーム31は、標準17より経済的な材料で形成されることが好ましい。例えば、非鉄金属、ガラス、セラミックまたは特にプラスチック材料とすることができる。フレーム31の形は、丸くてもよいか、角ばっていてもよい。標準17を載せるためのフレーム31の凹部は、標準17の幾何学的形状に調節される。
【0028】
標準17に対するフレーム31の割当てが、図1、2による実施形態と同様に、図3a、4、5の実施形態に従って、較正基準11に行われる。この種のフレーム31は、接している面16、18との間、キャリア層12と標準17の間が動くのを保護するために、保護機能を付加的な特徴とする。
【0029】
図4は、図3の別の実施形態を示す。調節可能な補助極21の代わりに、ミリング加工で基礎本体25に形成された接触面23が設けられている。基礎本体25の支え面26は、キャリア層12の測定面16と面平行で、同じ平面に位置している。
【0030】
図5は、図3、4の別の実施形態を示し、特に図4の実施形態の逆のものを示している。標準17の測定面19は共通の平面である。この平面において、補助極21は、測定デバイスの接触点を載せる接触面23を基礎本体25に形成している。関連するキャリア層12の測定面16は、標準17の厚さによって、接触面23に対して位置がずれている。同じことは、支え面26に対しても同様適用される。
【0031】
本発明によるこれらの較正基準11は、層厚測定のために非常に正確である。
上述した機能の全ては、本発明にとって重要で、各々をランダムに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】較正基準の概略の側面図、
【図2】較正基準の概略の平面図、
【図3a】割り当てられる補助極を備える較正基準の斜視図、
【図3b】図3aの較正基準の別の実施形態の斜視図、
【図4】図3の別の実施形態の斜視図、
【図5】図3、4の他の別の実施形態の斜視図。
【符号の説明】
【0033】
11…較正基準、12…キャリア層、14…キャリア層の支え面、16…キャリア層の測定面、17…標準、18…標準の支え面、19…標準の測定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎材料からなるキャリア層(12)とそのキャリア層(12)に設けられる標準(17)とで、薄膜層の厚さを非破壊的に測定するデバイスを較正するための較正基準であって、前記標準が、デバイスを較正するための、計測される層の厚さを有する前記較正基準において、キャリア層(12)が支え面(14)に対する面平行の測定面(16)を有し、標準(17)が、キャリア層(12)の測定面(16)上に載せるための、測定面(19)に面平行の支え面(18)を有し、さらに標準(17)がこすりつけるメッキによってキャリア層に永久的に設けられることを特徴とする較正基準。
【請求項2】
標準(17)が僅かな圧力の変位運動によってキャリア層(12)に配置されることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項3】
キャリア層(12)の基礎材料が鋼、鉄または非鉄金属から成ることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項4】
少なくとも、キャリア層(12)の測定面(16)が磨かれたまたは覆われた面から成ることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項5】
標準(17)が絶縁層で形成されることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項6】
標準(17)が半導体物質からなることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項7】
標準(17)がゲルマニウムまたはシリコンウエハからなることを特徴とする請求項6に記載の較正基準。
【請求項8】
標準(17)の測定面(19)が磨かれてたまたは覆われた面からなることを特徴とする請求項6に記載の較正基準。
【請求項9】
標準(17)の支え面(18)が磨かれているかまたは覆われた面からなることを特徴とする請求項6に記載の較正基準。
【請求項10】
標準(17)が10μmから1,000μmまで層厚から成ることを特徴とする請求項6に記載の較正基準。
【請求項11】
標準(17)から離されており、かつそれに割り当てられており、標準(17)の測定面(19)に対して面平行の接触面(23)を有する補助極(21)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項12】
補助極(21)の接触面(23)が基礎本体(25)に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の較正基準、
請求項11に記載の較正基準。
【請求項13】
基礎本体(25)がその支え面上に接触面(23)と並列にキャリア層(12)を載せていること特徴とする請求項12に記載の較正基準。
【請求項14】
補助極(21)の接触面(23)が基礎本体(25)に、調整デバイス、特にねじによって段差無しに、かつ、割り当てられた標準(17)の測定面(19)に対して調節可能に設けられることを特徴とする請求項11に記載の較正基準。
【請求項15】
測定デバイスの接触点のために基礎本体(25)上に支え面(26)がキャリア層(12)の平面と並んで設けられることを特徴とする請求項11に記載の較正基準。
【請求項16】
少なくとも2つの標準(17)の測定面(19)が1つの平面に並んでおり、基礎本体(25)の支え面(26)が同じ平面にあり、さらに段差を付けられた支え面(26)がキャリア層(12)の段差を付けられた測定面(16)に割り当てられて基礎本体(25)に設けられることを特徴とする請求項11に記載の較正基準。
【請求項17】
キャリア層(12)の測定面(16)が基礎本体(25)の1つの支え面(26)とともに1つの平面に位置しており、補助極(21)の接触面(23)が、標準(17)の測定面(19)に対応して段差を付けられた面とされることを特徴とする請求項11に記載の較正基準。
【請求項18】
標準(17)がフレーム(31)によって囲まれることを特徴とする請求項1に記載の較正基準。
【請求項19】
フレーム(31)が直接標準(19)の測定面(19)に接することを特徴とする請求項18に記載の較正基準。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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