輸液ポンプ
【課題】医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを目視で確認することで防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる輸液ポンプを提供する。
【解決手段】薬剤バッグ170の薬剤171を患者P側に輸液する輸液チューブを横方向(水平方向、X方向)に装着して、送液駆動部60が輸液チューブ200に蠕動運動を与えて薬剤171を横方向に沿って予め定めてある送液方向Tに送液する輸液ポンプ1であって、この輸液ポンプ1は、輸液チューブ200を横方向に装着するチューブ装着部50を有し、チューブ装着部50には、輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bを表示する輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。
【解決手段】薬剤バッグ170の薬剤171を患者P側に輸液する輸液チューブを横方向(水平方向、X方向)に装着して、送液駆動部60が輸液チューブ200に蠕動運動を与えて薬剤171を横方向に沿って予め定めてある送液方向Tに送液する輸液ポンプ1であって、この輸液ポンプ1は、輸液チューブ200を横方向に装着するチューブ装着部50を有し、チューブ装着部50には、輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bを表示する輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬剤等を送液するための輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して薬剤の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。輸液ポンプは本体と開閉扉とを有している。輸液ポンプの上には所定の薬剤バッグ(輸液バッグ)が配置され、本体と開閉扉との間には、薬剤バッグから下げた輸液チューブを挟みこんで、この輸液チューブを本体内に収容して開閉扉を閉じることで保持している。
輸液ポンプの本体内では、定位置にセットされた輸液チューブの外周面が、本体内の複数のフィンガと開閉扉の内面との間に挟まれている。この輸液ポンプは、送液駆動部の複数のフィンガが個別駆動されることで、複数のフィンガが輸液チューブの外周面を長さ方向に沿って順次押圧して薬剤の送液を行う蠕動式輸液ポンプである(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸液ポンプでは、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において上から下に向けて垂直に通して保持している。
これに対して、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において水平方向に通して保持する輸液ポンプが提案されている。このように、輸液チューブを輸液ポンプの本体において水平方向に通して保持する構造を採用しようとするのは、輸液チューブが輸液ポンプの本体内を上から下に向けて垂直に通っている輸液ポンプとは異なり、複数の輸液ポンプを上下位置にスタックした状態で重ねて保持しても輸液チューブが邪魔にならないという利点があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の輸液ポンプでは、輸液チューブを上下方向にセットするため、チューブの上流と下流を間違えてセットするおそれはない。
しかし、輸液チューブを水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、輸液チューブが輸液ポンプの本体において水平方向にセットされるので、医療従事者(使用者)が輸液チューブの上流側と下流側とを間違えて輸液ポンプの本体に対して水平方向に沿って逆方向にセットする可能性がある。
例えば、輸液ポンプの本体に対して向かって右側部分に輸液チューブの上流側が配置され、輸液ポンプの本体に対して向かって左側部分に輸液チューブの下流側が配置されるように予め決められている場合には、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置すれば、送液駆動部が駆動することで、薬剤が上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って送液でき、患者に対して正しく送液できる。
【0006】
しかし、医療従事者が、誤って輸液チューブを本体に対して逆方向に配置してしまい、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置してしまうと、薬剤は正しい方向とは逆の方向に送液されてしまうので、薬剤が患者に対して正しく送液することができない。
そこで、本発明は、医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを目視で容易に確認することができるようにし、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の輸液ポンプは、薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部とを有し、前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に装着された状態で、前記送液駆動部を駆動して前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たすプライミングを行った場合に、前記気泡センサが前記輸液チューブ内に前記気泡を検出したことを示す気泡検出信号と、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号と、に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、送液駆動部を駆動して輸液チューブ内に薬剤を満たすプライミングを行った場合に、制御部は、気泡検出信号(S1)と下流閉塞信号(S3)に基づいて、輸液チューブが送液方向とは逆方向に設定されたことを判別するので、その後誤って薬剤が逆方向に送液されるのを防ぐことができる。
【0008】
本発明の輸液ポンプは、また、薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部とを有し、前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定された状態で、前記薬液バッグと前記送液駆動部の間の前記輸液チューブのクランプを開放して前記薬液バッグから前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たして患者に対して送液するプライミングを行った場合に、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と を有することを特徴とする。
上記構成によれば、クランプを開放してプライミングを行った場合に、制御部は、下流閉塞信号(S3)に基づいて、輸液チューブが送液方向とは逆方向に設定されたことを判別するので、その後誤って薬剤が逆方向に送液されるのを防ぐことができる。
【0009】
本発明の輸液ポンプは、また、薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部とを有し、前記チューブ装着部に対応する開閉カバーの表面には、前記輸液チューブの上流側と下流側を表示する輸液チューブ設定方向表示部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者が、輸液チューブを設定する際に輸液チューブ設定方向表示部を見ることで、輸液チューブの上流側と下流側を目視で確認することができ、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる。
【0010】
好ましくは、前記送液方向とは逆方向に前記輸液チューブが装着されたことを前記制御部が判別した場合には、前記制御部の指令により警告を発生する警告手段を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、医療従事者が輸液チューブをチューブ装着部に対して誤って送液方向とは逆方向に設定してしまった場合には、警告手段が警告を発することで、医療従事者に輸液チューブの設定の誤りを知らせることができるので、医療従事者は適切な処置が図れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる輸液ポンプを提供することができる。また、医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを目視により防止できる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図。
【図3】図1と図2に示す輸液ポンプの開閉カバーを開いて輸液チューブを装着するためのチューブ装着部を示す斜視図。
【図4】図3に示す輸液ポンプをV方向から見た正面図。
【図5】輸液ポンプの電気的な構成例を示す図。
【図6】輸液ポンプと、薬剤バッグと、輸液ポンプに対して正しい送液方向に沿って配置された輸液チューブを示す図。
【図7】図7(A)は、輸液チューブが輸液ポンプに対して正しい方向であるT方向に沿ってセットされた状態を示し、図7(B)は、輸液チューブが輸液ポンプに対して誤った方向であるN方向に沿ってセットされた状態を示す図。
【図8】図8(A)は、輸液チューブが患者に対して接続される前のプライミング状態を示し、図8(B)は、輸液チューブが患者に対して薬剤が送液されている状態を示し、図8(A)と図8(B)のいずれの場合も、輸液チューブはチューブ装着部に対して誤った方向であるN方向にセットされてしまっている状態を示している図。
【図9】図9(A)は、図7(A)に示すように輸液チューブが正しい方向であるT方向(順方向)に沿ってセットされている場合の輸液ラインの閉塞状況と、上流閉塞センサと下流閉塞センサの検出内容例を示し、図9(B)は、図7(B)に示すように輸液チューブが誤った方向であるN方向(逆方向)に沿ってセットされている場合の輸液ラインの閉塞状況と、上流閉塞センサと下流閉塞センサの検出内容例を示す図。
【図10】輸液ポンプの動作例を示すフローを示す図。
【図11】図5の表示部に表示される警告メッセージの例を示す図。
【図12】図1と図2に示す複数台の輸液ポンプを、輸液スタンドに搭載した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図である。
【0015】
図1と図2に示す輸液ポンプ1は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬剤の注入を、1〜999mL/h(1時間あたりの注入量、即ち注入速度),1〜9999mL(予定注入量)程度の範囲で、±2%以内の精度で比較的長時間行うことに用いられる注入ポンプである。この輸液ポンプ1は、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤を選択して、その選択した薬剤を送液するために用いられる場合がある。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
【0016】
図2に示すように、輸液ポンプ1は、薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、輸液チューブ200と留置針172を介して、患者Pに対して正確に送液することができる。薬剤は輸液剤ともいう。輸液チューブは輸液ラインともいう。
輸液ポンプ1は、本体カバー2と取手2Tを有し、この本体カバー2は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫処理構造を有している。このように、本体カバー2が防沫処理構造を有しているのは、上方に配置されている薬剤バッグ170内の薬剤171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0017】
まず、輸液ポンプ1の本体カバー2に配置された要素について説明する。
図1と図2に示すように、本体カバー2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり、例えばカラー液晶表示装置を用いている。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。
図2では、表示部3には、一例として薬剤投与の予定注入量(mL)の表示欄3B、薬剤投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、注入速度(mL/h)の表示欄3E等が表示されているが、図1に示す表示部3ではこれらの表示内容の図示は、図面の簡単化のために省略している。表示部3は、この他に図11に示すような警告メッセージ300,301,302を表示することもできる。
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、例えば電源スイッチボタン4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。
【0018】
図1に示すように、本体カバー2の下部分2Bには、開閉カバー5が回転軸5Aを中心として、R方向に開閉可能に設けられている。開閉カバー5はX方向に沿って長く形成されている蓋であり、開閉カバー5の内面側には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200を挟むことで、X方向に沿って水平に装着できるようになっている。
図2に示すように、開閉カバー5の表面には、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向であるT方向を明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。輸液チューブ設定方向表示部150は、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を有する。
【0019】
これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、例えばシール材に印刷されたものであり、これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、開閉カバー5の表面のチューブ装着部50に対応する位置に貼り付けられている。さらに、チューブ装着部50の適所に薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と同様の内容の小さな表示部を貼り付けてもよい。こうすることで、輸液チューブ200が装着される時、チューブ装着部50への装着方向が正しいか否か直ぐに分かる。
図2に示すように、薬剤バッグ表示部151は、輸液チューブ200の薬剤バッグ170側が開閉カバー5において向かって右側部分にくることを目視で確認するために配置され、患者側表示部152は、輸液チューブ200の患者P側が開閉カバー5において向かって左側部分に位置されることを目視で確認するために配置されている。そして、送液方向表示部153は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬剤171の正しい方向の送液方向(T方向)を明示するために配置されており、薬剤バッグ表示部151から患者側表示部152に向かっているT方向に沿った矢印である。薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152は、いずれも少なくとも文字で表記され、好ましくは、文字及び図柄で示されている。このため、医療従事者の輸液チューブ設定方向の間違いを防止できる。
なお、図1と図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向はT方向と平行であり輸液ポンプ1の左右方向で、Y方向は輸液ポンプ1の前後方向である。
【0020】
図3は、図1と図2に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5を開いて、輸液チューブ200を装着するためのチューブ装着部50を示す斜視図である。図4は、図3に示す輸液ポンプ1をV方向から見た正面図である。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、輸液ポンプ1の本体部1B側に設けられており、チューブ装着部50は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。チューブ装着部50は、図2に示すように開閉カバー5を閉じると開閉カバー5により覆うことができる。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55と、開閉カバー5を有している。開閉カバー5の内側には、輸液チューブ押さえ部材5Cと係合部材5D、5Eが設けられている。
輸液チューブ押さえ部材5Cは、X方向に沿って、長く矩形状かつ面状の突出部として配置されて送液駆動部60に対面する位置にある。係合部材5D、5Eは、係合部材5D、5Eに連動するレバー5Fを操作することで、本体部1B側のはめ込み部分1D、1Eに対してそれぞれはまり込むことにより、開閉カバー5が本体部1Bのチューブ装着部50を閉鎖することができる。
【0021】
図4に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、本体部1Bおいて向かって右側部分に設けられ、第2輸液チューブガイド部55は、本体部1Bにおいて向かって左側部分に設けられている。第1輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aをはめ込むことで保持でき、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bをはめ込むことで保持でき、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に保持するようになっている。このように、水平方向に正しい方向で装着(セット)された輸液チューブ200は、図4において、右から気泡センサ51、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53に対して順に配置されるようになっている。
本体部1Bでは、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55の間において、T方向(X方向と平行)に沿って、気泡センサ51、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53が、順番に配置されている。送液駆動部60は、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の間に配置されている。
【0022】
図4に示す気泡センサ51は、輸液チューブ200内に生じる気泡(空気)を検出するセンサであり、例えば気泡センサ51は、軟質塩化ビニル製などの輸液チューブ200の外側から、輸液チューブ200内に流れる薬剤中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。超音波センサの発信部から発生する超音波を輸液チューブ200内に流れる薬剤に当てることで、超音波の薬剤における透過率と超音波の気泡における透過率が異なることから、超音波センサの受信部は、その透過率の差を検出して気泡の有無を監視する。
図4に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサであり、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサである。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53としては、例えば発光部と受光部を組み合わせたフォトカプラ等を用いることができ、発光部から光を輸液チューブ200に照射してその光を受光部により受けることにより、輸液チューブ200内が閉塞されたことを検出することができる。
【0023】
図5は、輸液ポンプ1の電気的な構成例を示している。
図5に示すように、送液駆動部60は、後で説明するが、駆動モータ61と、この駆動モータ61により回転駆動される複数個のカムを有するカム構造体62と、このカム構造体62の各カムにより移動される複数のフィンガを有するフィンガ構造体63を有している。
カム構造体62は、複数のカム、例えば6個のカム62A〜62Fを有しており、フィンガ構造体63は、6個のカム62A〜62Fに対応して6個のフィンガ63A〜63Fを有している。6個のカム62A〜62Fは互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体62は、駆動モータ61の出力軸61Aに連結されている。
【0024】
図5に示す制御部100の指令により、駆動モータ61の出力軸が回転すると、6個のフィンガ63A〜63Fが順番にY方向に所定ストローク分進退することで、輸液チューブ200はT方向に沿って開閉カバー5の輸液チューブ押さえ部材5Cに対して押し付けられることから、輸液チューブ200内の薬剤を、T方向に送液することができるようになっている。すなわち、複数のフィンガ63A〜63Fが個別駆動されることで、複数のフィンガ63A〜63Fが輸液チューブ200の外周面をT方向に沿って順次突出することで押圧して輸液チューブ200内の薬剤の送液を行う。複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動を制御することにより、フィンガ63A〜63Fを順次前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、輸液チューブ200の閉塞点をT方向に移動させることで、輸液チューブ200をしごいて薬剤を移送する。
【0025】
図5に示すように、輸液ポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0026】
図5に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Aと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
【0027】
図5に示す送液駆動部60の駆動モータ61の出力軸61Aが制御部100の指令により回転され、複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動をさせることにより、輸液チューブ200をしごいて薬剤をT方向に移送する。
図6は、輸液ポンプ1と、薬剤バッグ170と、輸液ポンプ1に対して正しい送液方向であるT方向に沿ってセットされた輸液チューブ200を示している。
図6に示すように、輸液チューブ200の一端部はクランプ(クランプ部材)179を介して薬剤バッグ170に接続され、輸液チューブ200の他端部は患者P側の留置針172に接続される。薬剤バッグ170内の薬剤171は、送液駆動部60の駆動により、輸液チューブ200と留置針172を通じて正しい方向であるT方向に送液されることで患者Pに投与されるようになっている。
【0028】
図5に戻ると、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、図2に例示する情報内容や図11に示す警告メッセージ300〜302等を表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の警報内容を音声により告知することができる。ブザー132は、制御部100の指令により各種の警報を音により告知することができる。スピーカ131は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音声により警告を発する警告手段の一例である。ブザー132は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音により警告を発する警告手段の一例である。
【0029】
図5において、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3は、制御部100に供給される。上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2は、輸液チューブ200の上流側200Aの内圧の大きさを示す信号である。下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3は、輸液チューブ200の下流側200Bの内圧の大きさを示す信号である。
上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越えて、薬剤を送液できない状態を検出することができ、制御部100に出力されるアラームである。輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越える原因としては、輸液用の留置針や輸液チューブ200が詰まっている場合、輸液チューブ200がつぶれているかまたは折れ曲がっている場合、高粘度の薬剤を使用している場合等である。
【0030】
図5において、制御部100は、通信ポート140を通じて、例えば、デスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬剤データベース(DB)160に接続されており、薬剤データベース160に格納されている薬剤情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬剤情報MFを基にして、例えば図2に示す表示部3には薬剤情報MF等を表示することができる。
図5において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4Eは、制御部100に電気的に接続されている。
【0031】
次に、上述した輸液ポンプ1を使用する際の動作を説明する。
図7(A)は、輸液チューブ200が輸液ポンプ1のチューブ装着部50に対して正しい方向であるT方向(順方向)に沿って装着(セット)された状態を示し、図7(B)は、輸液チューブ200が輸液ポンプ1のチューブ装着部50に対して誤った方向であるN方向(逆方向)に沿ってセットされた状態を示している。
図3に示すように医療従事者が、開閉カバー5を開けてチューブ装着部50に輸液チューブ200を設定する前に、図2に示す開閉カバー5の上に配置された輸液チューブ設定方向表示部150を見て輸液チューブ200のセット方向を目視で確認する。これにより、輸液チューブ200を送液方向であるT方向に沿って正しく装着でき、薬剤171を輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bに向かって、送液駆動部60の予め定めた送液方向であるT方向に沿って、正しく送液できることになる。
図7(A)に示すように、輸液チューブ200が正しい方向であるT方向に沿ってセットされた状態では、輸液チューブ200の上流側200Aが本体部1Bおいて向かって右側部分の第1輸液チューブガイド部54側に配置され、輸液チューブ200の下流側200Bが本体部1Bおいて向かって左側部分の第2輸液チューブガイド部55側に配置される。図6と図1〜図4に示す輸液チューブ200のセット状態も、輸液チューブ200が正しくセットされた状態であり、薬剤はT方向に沿って送液される。
【0032】
これに対して、図7(B)に示すように、輸液チューブ200が輸液ポンプ1に対して誤った方向であるN方向に沿ってセットされた状態では、輸液チューブ200の上流側200Aが第2輸液チューブガイド部55に配置されてしまい、輸液チューブ200の下流側200Bが第1輸液チューブガイド部54に配置されてしまっている。すなわち、輸液チューブ200の装着状態は、医療従事者が輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bとを左右間違えて、輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対して誤った方向であるN方向に装着された状態である。このように、輸液チューブ200が誤って装着された場合には、薬剤は、送液駆動部60の予め定めた送液方向であるT方向とは逆のN方向に沿って送液されてしまうことになる。
【0033】
そこで、図7(A)と図2に示すように、医療従事者が輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対してT方向に沿って正しく装着できるようにするために、まず、医療従事者は、図2に示すように、開閉カバー5上の輸液チューブ設定方向表示部150の薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、そして薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を目視で確認する。これにより、医療従事者は、輸液チューブ200の上流側200Aを薬剤バッグ表示部151側に位置させることと、輸液チューブ200の下流側200Bを患者側表示部152側に位置させることと、そして薬剤の送液方向がT方向であることを送液方向表示部153の矢印により、輸液チューブ200の設定方向を目視で確認することができる。
【0034】
このように、医療従事者が、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、そして薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を目視で確認して、輸液チューブ200の正しい方向であるT方向の向けてあることをチェックした後、図3と図4に示すように、医療従事者はレバー5Fを操作して開閉カバー5を開けて、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55と、そして送液駆動部60を露出させる。
【0035】
そして、医療従事者は、輸液チューブ200を、第1輸液チューブガイド部54、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53、そして第2輸液チューブガイド部55に沿ってT方向に装着する。その後、図1と図2に示すように、開閉カバー5を閉じて、泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55と、そして送液駆動部60を覆う。これにより、輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に沿って装着でき、送液駆動部60を駆動することにより、薬剤は輸液チューブ200を通じてT方向に沿って送液することができる。
【0036】
ところで、図8(A)は、輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミング状態を示し、図8(B)は、輸液チューブ200の薬剤171が患者に対して誤った方法で送液されている状態を示している。図8(A)と図8(B)のいずれの場合であっても、輸液チューブ200は、チューブ装着部50に対して誤った方向であるN方向に装着されてしまっている。このプライミングとは、始動に備えて準備的な作業を行うことであり、輸液チューブ200内に薬剤を満たして、血管確保した留置針に対してすぐに接続できるように準備することである。
図8(A)に示す輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミング状態では、輸液チューブ200が図7(B)にも示すように誤った方向であるN方向に装着されている。この場合には、輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミング時、すなわち図2,図5に示す早送りスイッチボタン4Bが押されている間であって、制御部100が送液駆動部60を駆動させて薬剤171を輸液チューブ200内に満たしている間には、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3は、輸液チューブ200が図7(A)に示すように正しい方向であるT方向に装着されている場合とは異なる値となるので、このことを利用して輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを、制御部100は判別するようになっている。
【0037】
すなわち、輸液チューブ200が図8(A)に示すように誤った方向であるN方向に装着されている場合にプライミングを行うと、輸液チューブ200の端部から薬剤バッグ170方向に向かって気泡199が流入してしまうので、気泡センサ51が輸液チューブ200内の気泡199を検出する。このため、気泡センサ51が気泡検出信号S1を制御部100に送る。
この時点で、制御部100がスピーカ131とブザー132を駆動することにより、輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを、医療従事者に対して警告を発すれば、適切な処置ができるので患者は安全である。
【0038】
また、図8(B)において、輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミングを、クランプ部材179による閉鎖状態の解放により行う場合、つまり制御部100が送液駆動部60を駆動させるのではなく、輸液チューブ200のクレンメ179の閉鎖状態の解放により薬剤バッグ170から輸液チューブ200内を薬剤171で満たす場合には、送液中における下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3に注目して、この下流閉塞信号S3の値から、輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを制御部100は判別することができる。
輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されている場合に、図8(B)において薬剤バッグ170から輸液チューブ200を通じて患者Pに対して薬剤171を送液すると、患者Pから薬剤バッグ170側に向かって、輸液チューブ200内に血液BLがG方向に流入してしまう。このため、気泡センサ51は気泡を検出することはできずに、気泡センサ51からは気泡検出信号S1が制御部100に対して送られない。
【0039】
そこで、図8(B)に示すように、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着されている場合には、輸液チューブ200が患者に対して薬剤171が送液されている状態では、送液時には上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2の値と下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3の値が、輸液チューブ200が正しい方向であるT方向に装着されている場合の各値と異なることを利用して、この上流閉塞信号S2の値と下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3の値の内の下流閉塞信号S3の値に注目して利用する。制御部100は、輸液チューブ200の下流側の内圧が上昇する傾向にあることに注目して下流閉塞信号S3をチェックすることで、制御部100は輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着されていることを判別することができる。
【0040】
図9(A)は、図7(A)に例示するように輸液チューブ200がT方向に装着されている場合において、輸液ライン200の閉塞状況と、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の検出内容例を示している。この検出内容は、プライミング時であっても送液時であっても同じである。
図9(A)において、ケース1のように、輸液チューブ200の上流側200Aが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧が低下したことを検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が実質的に変化しない(微動はあり)か、もしくは下流側200Bの内圧がやや低下することを検出して、図5の制御部100に伝える。
【0041】
図9(A)において、ケース2のように、輸液チューブ200の下流側200Bが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
図9(A)において、ケース3のように、輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bがともに閉塞されておらず通常輸液時である場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出して、図5の制御部100に伝える。
【0042】
これに対して、図9(B)は、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿ってセットされている場合の、輸液ライン200の閉塞状況と、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の検出内容例を示している。
図9(B)において、ケース4のように、輸液チューブ200の上流側200Aが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧が実質的に変化しないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
【0043】
図9(B)において、ケース5のように、輸液チューブ200の下流側200Bが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧が低下することを検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧がやや上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
図9(B)において、ケース6のように、輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bがともに閉塞されておらず通常時である場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
【0044】
このように、図9(B)と図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着された場合には、図9(A)と図7(A)に示すように輸液チューブ200が正しい方向であるT方向に装着された場合とは異なり、図9(B)に示す破線の枠189で示すように、ケース4の上流閉塞の場合、ケース5の下流閉塞の場合、そしてケース6の通常輸液時の場合のいずれの状況においても、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の内圧の上昇傾向を検出することを、制御部100が認識できる。
これに対して、図9(A)に示す破線の枠179では、ケース2の下流閉塞の場合だけが内圧上昇があるが、ケース1の上流閉塞の場合とケース3の通常輸液時の場合では内圧は上昇しない。
【0045】
図10は、輸液ポンプ1の動作例を示すフロー図である。
図10のステップST1では、図5に示す制御部100は、輸液ポンプ1がプライミングモードであるか、通常輸液モードであるかを判別する。医療従事者が図5に示す早送りスイッチボタン4Bを押し続けることで、制御部100は、プライミングモードであることを判別できる。判別の結果、輸液ポンプ1がプライミングモードであれば、図10のステップST2に移り、制御部100は送液駆動部60を早送り送液動作させる。これにより、輸液チューブ200内には薬剤が早送りされる。この時点では、輸液チューブ200が図7(A)に示すように正しく装着されているか、図7(B)に示すように誤ってセットされているか不明である。
【0046】
図10のステップST3では、図8(A)に示すように気泡センサ51が輸液チューブ200内において連続的に気泡199を検出しているかを確認する。ステップST3において、気泡センサ51が輸液チューブ200内において連続的に気泡199を検出しているのであれば、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着されており、薬剤171が輸液チューブ200内を逆流している可能性がある。
そこで、図10のステップST4では、図5の制御部100は、スピーカ131とブザー132の少なくとも一方を駆動することにより、音声アナウンスと警告音の少なくとも一方により、輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを、医療従事者に対して警告を発することができる。この警告により、医療従事者は適切な処置ができる。この警告の際には、図2に示す表示部3には、図11(A)に示す警告メッセージ300を表示される。
【0047】
一方、図10のステップST3において、図8(A)に示すように気泡センサ51が輸液チューブ200内において連続的に気泡199を検出することがなければ、図10のステップST5に移る。ステップST5において、図5の制御部100は、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇しているかどうかを確認する。図10のステップST5において、制御部100が、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇していると判断した場合には、次の2つの事例が考えられる。
第1番目の事例としては、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されている(図9(B)のケース4,5,6を参照)。
第2番目の事例としては、図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが、輸液チューブ200に下流閉塞が起こっている(図9(A)のケース2を参照)。
【0048】
この場合には、図10のステップST4に移り、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されているか、あるいは図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが輸液チューブ200に下流閉塞現象が起こっているのではないかを、警告する。また、図5の表示部3には、図11(B)に示す警告メッセージ301が表示される。制御部100は、スピーカ131とブザー132の少なくとも一方を駆動する。この音声アナウンスと警告音の少なくとも一方と、表示部3における警告メッセージ301により、医療従事者に対して警告を発することができる。この警告により、医療従事者は適切な処置ができる。
【0049】
図10のステップST1に戻り、医療従事者が図5に示す早送りスイッチボタン4Bを押しておらず、しかも医療従事者が図5に示す開始スイッチボタン4Cを押すと、制御部100は、輸液ポンプ1が通常輸液モードであると判別して、ステップST6からステップST7に移る。
ステップST7では、図5の制御部100は、送液駆動部60を通常の送液動作をさせて薬剤の送液を行う。そして、ステップST5において、制御部100は、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇しているかどうかを確認する。図10のステップST5において、制御部100は、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇していると判断した場合には、次の2つの事例が考えられる。
第1番目の事例としては、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されている。
第2番目の事例としては、図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが、輸液チューブ200に下流閉塞が起こっている。
【0050】
この場合には、図10のステップST4に移り、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されているか、あるいは図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが輸液チューブ200に下流閉塞現象が起こっているのではないかを、警告する。制御部100は、スピーカ131とブザー132の少なくとも一方を駆動する。また、図5の表示部3には、図11(C)に示す警告メッセージ302が表示される。この音声アナウンスと警告音の少なくとも一方と、表示部3における警告メッセージ302により、医療従事者に対して警告を発することができる。この警告により、医療従事者は適切な処置ができる。
【0051】
なお、図10のステップST6において、医療従事者が図5に示す開始スイッチボタン4Cを押さなければ、これ以降の動作は終了する。ステップST4において警告を発した後には、これ以降の動作は終了する。
以上説明したように、本発明の実施形態の輸液ポンプ1では、医療従事者が、輸液チューブを設定する際に輸液チューブ設定方向表示部を見ることで、輸液チューブの上流側と下流側を目視で確認することができ、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる。
【0052】
図11は、図5の表示部3に表示される上述した警告メッセージ300,301,302の例を示している。図5の表示部3は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、警告内容を表示して、医療従事者に対して視覚的に警告を発する警告手段の一例である。
図11(A)に示す警告メッセージ300は、プライミングモード時に、気泡センサ51が連続的に気泡を検出して反応した場合のエラーの例であり、図10のステップST3からステップST4になると表示部3に表示される。警告メッセージ300では、「プライミング時エラー:輸液チューブ(輸液ライン)200が逆に装着されていないか確認してください」というメッセージが表示される。
【0053】
図11(B)に示す警告メッセージ301は、プライミングモード時に、下流閉塞センサ53が輸液チューブ200の下流側の閉塞を連続的に反応した場合のエラーの例であり、図10のステップST3からステップST5を経てステップST4になると表示部3に表示される。警告メッセージ301では、「プライミング時エラー:輸液チューブ(輸液ライン)200が逆方向に装着されていないか、下流閉塞が発生していないか確認してください」というメッセージが表示される。
図11(C)に示す警告メッセージ302は、通常送液時に、下流閉塞センサ53が輸液チューブ200の下流側の閉塞を連続的に反応した場合のエラーの例であり、図10のステップST7からステップST5を経てステップST4になると表示部3に表示される。警告メッセージ301では、「送液時エラー:輸液チューブ(輸液ライン)200が逆方向に装着されていないか、下流閉塞が発生していないか確認してください」というメッセージが表示される。
【0054】
図12は、図1と図2に示す複数台の輸液ポンプ1を、輸液スタンド70に搭載した例を示しており、必要に応じて複数台の輸液ポンプ1を同時に使用することができる。輸液ポンプ1は、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に装着することができるので、複数第の輸液ポンプ1は輸液チューブを上から下向きに垂直方向に装着する従来構造のものに比べて、上下方向に並べて重ねて配置し易く、使い勝手が良い。
【0055】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
本発明の実施形態の輸液ポンプ1では、図2に示すように、輸液チューブ設定方向表示部150の表面は、開閉カバー5の一端部側に配置される薬剤バッグ表示部151と、開閉カバー5の他端部側に配置される患者側表示部152と、T方向を明示する送液方向表示部153を有している。
しかし、これに限らず、輸液チューブ設定方向表示部150は、開閉カバー5の表面ではなく、開閉カバー5以外の本体カバー2側に配置することもでき、輸液チューブ設定方向表示部150の配置位置は任意に選択できる。
また、輸液チューブ設定方向表示部150は、例えば開閉カバーを開くと露出する内面のいずれかの露出面、例えば、図4における気泡センサ51の上方位置等に「矢印」で示してもよい。
図1と図2に示す例では、輸液チューブ200は、チューブ装着部50により水平方向であるT方向に沿って装着されているが、これに限らず、例えばチューブ装着部50は、輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bにかけて所定の角度分下がるように傾斜して横方向に装着するような構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1・・・輸液ポンプ、2・・・本体カバー、2A・・・本体カバーの上部分、2B・・・本体カバーの下部分、3・・・表示部(警告手段の一例)、4・・・操作パネル部、5・・・開閉カバー、50・・・チューブ装着部(ライン装着部ともいう)、51・・・気泡センサ、52・・・上流側閉塞センサ、53・・・下流側閉塞センサ、60・・・送液駆動部、100・・・制御部、131・・・スピーカ(警告手段の一例)、132・・・ブザー(警告手段の一例)、150・・・輸液チューブ設定方向表示部、151・・・薬剤バッグ表示部、152・・・患者側表示部、153・・・送液方向表示部、200・・・輸液チューブ(輸液ラインともいう)、200A・・・輸液チューブの上流側、200B・・・輸液チューブの下流側、T・・・正しい方向、N・・・誤った方向、X・・・水平方向(横方向)
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬剤等を送液するための輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して薬剤の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。輸液ポンプは本体と開閉扉とを有している。輸液ポンプの上には所定の薬剤バッグ(輸液バッグ)が配置され、本体と開閉扉との間には、薬剤バッグから下げた輸液チューブを挟みこんで、この輸液チューブを本体内に収容して開閉扉を閉じることで保持している。
輸液ポンプの本体内では、定位置にセットされた輸液チューブの外周面が、本体内の複数のフィンガと開閉扉の内面との間に挟まれている。この輸液ポンプは、送液駆動部の複数のフィンガが個別駆動されることで、複数のフィンガが輸液チューブの外周面を長さ方向に沿って順次押圧して薬剤の送液を行う蠕動式輸液ポンプである(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸液ポンプでは、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において上から下に向けて垂直に通して保持している。
これに対して、輸液チューブを輸液ポンプの本体内において水平方向に通して保持する輸液ポンプが提案されている。このように、輸液チューブを輸液ポンプの本体において水平方向に通して保持する構造を採用しようとするのは、輸液チューブが輸液ポンプの本体内を上から下に向けて垂直に通っている輸液ポンプとは異なり、複数の輸液ポンプを上下位置にスタックした状態で重ねて保持しても輸液チューブが邪魔にならないという利点があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の輸液ポンプでは、輸液チューブを上下方向にセットするため、チューブの上流と下流を間違えてセットするおそれはない。
しかし、輸液チューブを水平方向に通して保持する輸液ポンプでは、輸液チューブが輸液ポンプの本体において水平方向にセットされるので、医療従事者(使用者)が輸液チューブの上流側と下流側とを間違えて輸液ポンプの本体に対して水平方向に沿って逆方向にセットする可能性がある。
例えば、輸液ポンプの本体に対して向かって右側部分に輸液チューブの上流側が配置され、輸液ポンプの本体に対して向かって左側部分に輸液チューブの下流側が配置されるように予め決められている場合には、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置すれば、送液駆動部が駆動することで、薬剤が上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って送液でき、患者に対して正しく送液できる。
【0006】
しかし、医療従事者が、誤って輸液チューブを本体に対して逆方向に配置してしまい、輸液チューブの上流側を輸液ポンプの本体の左側部分に配置し、輸液チューブの下流側を輸液ポンプの本体の右側部分に配置してしまうと、薬剤は正しい方向とは逆の方向に送液されてしまうので、薬剤が患者に対して正しく送液することができない。
そこで、本発明は、医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを目視で容易に確認することができるようにし、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の輸液ポンプは、薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部とを有し、前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に装着された状態で、前記送液駆動部を駆動して前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たすプライミングを行った場合に、前記気泡センサが前記輸液チューブ内に前記気泡を検出したことを示す気泡検出信号と、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号と、に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、送液駆動部を駆動して輸液チューブ内に薬剤を満たすプライミングを行った場合に、制御部は、気泡検出信号(S1)と下流閉塞信号(S3)に基づいて、輸液チューブが送液方向とは逆方向に設定されたことを判別するので、その後誤って薬剤が逆方向に送液されるのを防ぐことができる。
【0008】
本発明の輸液ポンプは、また、薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部とを有し、前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定された状態で、前記薬液バッグと前記送液駆動部の間の前記輸液チューブのクランプを開放して前記薬液バッグから前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たして患者に対して送液するプライミングを行った場合に、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と を有することを特徴とする。
上記構成によれば、クランプを開放してプライミングを行った場合に、制御部は、下流閉塞信号(S3)に基づいて、輸液チューブが送液方向とは逆方向に設定されたことを判別するので、その後誤って薬剤が逆方向に送液されるのを防ぐことができる。
【0009】
本発明の輸液ポンプは、また、薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部とを有し、前記チューブ装着部に対応する開閉カバーの表面には、前記輸液チューブの上流側と下流側を表示する輸液チューブ設定方向表示部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者が、輸液チューブを設定する際に輸液チューブ設定方向表示部を見ることで、輸液チューブの上流側と下流側を目視で確認することができ、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる。
【0010】
好ましくは、前記送液方向とは逆方向に前記輸液チューブが装着されたことを前記制御部が判別した場合には、前記制御部の指令により警告を発生する警告手段を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、医療従事者が輸液チューブをチューブ装着部に対して誤って送液方向とは逆方向に設定してしまった場合には、警告手段が警告を発することで、医療従事者に輸液チューブの設定の誤りを知らせることができるので、医療従事者は適切な処置が図れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる輸液ポンプを提供することができる。また、医療従事者が、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを目視により防止できる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図。
【図3】図1と図2に示す輸液ポンプの開閉カバーを開いて輸液チューブを装着するためのチューブ装着部を示す斜視図。
【図4】図3に示す輸液ポンプをV方向から見た正面図。
【図5】輸液ポンプの電気的な構成例を示す図。
【図6】輸液ポンプと、薬剤バッグと、輸液ポンプに対して正しい送液方向に沿って配置された輸液チューブを示す図。
【図7】図7(A)は、輸液チューブが輸液ポンプに対して正しい方向であるT方向に沿ってセットされた状態を示し、図7(B)は、輸液チューブが輸液ポンプに対して誤った方向であるN方向に沿ってセットされた状態を示す図。
【図8】図8(A)は、輸液チューブが患者に対して接続される前のプライミング状態を示し、図8(B)は、輸液チューブが患者に対して薬剤が送液されている状態を示し、図8(A)と図8(B)のいずれの場合も、輸液チューブはチューブ装着部に対して誤った方向であるN方向にセットされてしまっている状態を示している図。
【図9】図9(A)は、図7(A)に示すように輸液チューブが正しい方向であるT方向(順方向)に沿ってセットされている場合の輸液ラインの閉塞状況と、上流閉塞センサと下流閉塞センサの検出内容例を示し、図9(B)は、図7(B)に示すように輸液チューブが誤った方向であるN方向(逆方向)に沿ってセットされている場合の輸液ラインの閉塞状況と、上流閉塞センサと下流閉塞センサの検出内容例を示す図。
【図10】輸液ポンプの動作例を示すフローを示す図。
【図11】図5の表示部に表示される警告メッセージの例を示す図。
【図12】図1と図2に示す複数台の輸液ポンプを、輸液スタンドに搭載した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す輸液ポンプをW方向から見た斜視図である。
【0015】
図1と図2に示す輸液ポンプ1は、例えば集中治療室(ICU、CCU,NICU)等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬剤の注入を、1〜999mL/h(1時間あたりの注入量、即ち注入速度),1〜9999mL(予定注入量)程度の範囲で、±2%以内の精度で比較的長時間行うことに用いられる注入ポンプである。この輸液ポンプ1は、例えば薬剤ライブラリから使用する薬剤を選択して、その選択した薬剤を送液するために用いられる場合がある。この薬剤ライブラリは、薬剤ライブラリデータベース(DB)において、予め登録された薬剤名を含む薬剤の投与設定群である薬剤情報である。医療従事者は、この薬剤ライブラリを用いることにより、複雑な投与設定をその都度行わなくても良く、薬剤の選択および薬剤の設定が図れる。
【0016】
図2に示すように、輸液ポンプ1は、薬剤171を充填した薬剤バッグ170から、輸液チューブ200と留置針172を介して、患者Pに対して正確に送液することができる。薬剤は輸液剤ともいう。輸液チューブは輸液ラインともいう。
輸液ポンプ1は、本体カバー2と取手2Tを有し、この本体カバー2は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、仮に薬剤等がかかっても輸液ポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫処理構造を有している。このように、本体カバー2が防沫処理構造を有しているのは、上方に配置されている薬剤バッグ170内の薬剤171がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着することがあるためである。
【0017】
まず、輸液ポンプ1の本体カバー2に配置された要素について説明する。
図1と図2に示すように、本体カバー2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。表示部3は、画像表示装置であり、例えばカラー液晶表示装置を用いている。表示部3は、本体カバー2の上部分2Aの左上位置であって、開閉カバー5の上側に配置されている。
図2では、表示部3には、一例として薬剤投与の予定注入量(mL)の表示欄3B、薬剤投与の積算量(mL)の表示欄3C、充電履歴の表示欄3D、注入速度(mL/h)の表示欄3E等が表示されているが、図1に示す表示部3ではこれらの表示内容の図示は、図面の簡単化のために省略している。表示部3は、この他に図11に示すような警告メッセージ300,301,302を表示することもできる。
操作パネル部4は、本体カバー2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、例えば電源スイッチボタン4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。
【0018】
図1に示すように、本体カバー2の下部分2Bには、開閉カバー5が回転軸5Aを中心として、R方向に開閉可能に設けられている。開閉カバー5はX方向に沿って長く形成されている蓋であり、開閉カバー5の内面側には、例えば軟質塩化ビニル等の可撓性の熱可塑性樹脂製の輸液チューブ200を挟むことで、X方向に沿って水平に装着できるようになっている。
図2に示すように、開閉カバー5の表面には、輸液チューブ200をセットする際に、正しい送液方向であるT方向を明確に表示するための輸液チューブ設定方向表示部150が設けられている。輸液チューブ設定方向表示部150は、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を有する。
【0019】
これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、例えばシール材に印刷されたものであり、これらの薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と送液方向表示部153は、開閉カバー5の表面のチューブ装着部50に対応する位置に貼り付けられている。さらに、チューブ装着部50の適所に薬剤バッグ表示部151と患者側表示部152と同様の内容の小さな表示部を貼り付けてもよい。こうすることで、輸液チューブ200が装着される時、チューブ装着部50への装着方向が正しいか否か直ぐに分かる。
図2に示すように、薬剤バッグ表示部151は、輸液チューブ200の薬剤バッグ170側が開閉カバー5において向かって右側部分にくることを目視で確認するために配置され、患者側表示部152は、輸液チューブ200の患者P側が開閉カバー5において向かって左側部分に位置されることを目視で確認するために配置されている。そして、送液方向表示部153は、開閉カバー5の内側にセットされた輸液チューブ200による薬剤171の正しい方向の送液方向(T方向)を明示するために配置されており、薬剤バッグ表示部151から患者側表示部152に向かっているT方向に沿った矢印である。薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152は、いずれも少なくとも文字で表記され、好ましくは、文字及び図柄で示されている。このため、医療従事者の輸液チューブ設定方向の間違いを防止できる。
なお、図1と図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。X方向はT方向と平行であり輸液ポンプ1の左右方向で、Y方向は輸液ポンプ1の前後方向である。
【0020】
図3は、図1と図2に示す輸液ポンプ1の開閉カバー5を開いて、輸液チューブ200を装着するためのチューブ装着部50を示す斜視図である。図4は、図3に示す輸液ポンプ1をV方向から見た正面図である。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、輸液ポンプ1の本体部1B側に設けられており、チューブ装着部50は、表示部3と操作パネル部4の下部においてX方向に沿って設けられている。チューブ装着部50は、図2に示すように開閉カバー5を閉じると開閉カバー5により覆うことができる。
図3と図4に示すように、チューブ装着部50は、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55と、開閉カバー5を有している。開閉カバー5の内側には、輸液チューブ押さえ部材5Cと係合部材5D、5Eが設けられている。
輸液チューブ押さえ部材5Cは、X方向に沿って、長く矩形状かつ面状の突出部として配置されて送液駆動部60に対面する位置にある。係合部材5D、5Eは、係合部材5D、5Eに連動するレバー5Fを操作することで、本体部1B側のはめ込み部分1D、1Eに対してそれぞれはまり込むことにより、開閉カバー5が本体部1Bのチューブ装着部50を閉鎖することができる。
【0021】
図4に示すように、第1輸液チューブガイド部54は、本体部1Bおいて向かって右側部分に設けられ、第2輸液チューブガイド部55は、本体部1Bにおいて向かって左側部分に設けられている。第1輸液チューブガイド部54は、輸液チューブ200の上流側200Aをはめ込むことで保持でき、第2輸液チューブガイド部55は、輸液チューブ200の下流側200Bをはめ込むことで保持でき、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に保持するようになっている。このように、水平方向に正しい方向で装着(セット)された輸液チューブ200は、図4において、右から気泡センサ51、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53に対して順に配置されるようになっている。
本体部1Bでは、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55の間において、T方向(X方向と平行)に沿って、気泡センサ51、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53が、順番に配置されている。送液駆動部60は、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の間に配置されている。
【0022】
図4に示す気泡センサ51は、輸液チューブ200内に生じる気泡(空気)を検出するセンサであり、例えば気泡センサ51は、軟質塩化ビニル製などの輸液チューブ200の外側から、輸液チューブ200内に流れる薬剤中に含まれる気泡を監視する超音波センサである。超音波センサの発信部から発生する超音波を輸液チューブ200内に流れる薬剤に当てることで、超音波の薬剤における透過率と超音波の気泡における透過率が異なることから、超音波センサの受信部は、その透過率の差を検出して気泡の有無を監視する。
図4に示す上流閉塞センサ52は、輸液チューブ200の上流側200Aにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサであり、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の下流側200Bにおいて輸液チューブ200内が閉塞しているかどうかを検出するセンサである。上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53としては、例えば発光部と受光部を組み合わせたフォトカプラ等を用いることができ、発光部から光を輸液チューブ200に照射してその光を受光部により受けることにより、輸液チューブ200内が閉塞されたことを検出することができる。
【0023】
図5は、輸液ポンプ1の電気的な構成例を示している。
図5に示すように、送液駆動部60は、後で説明するが、駆動モータ61と、この駆動モータ61により回転駆動される複数個のカムを有するカム構造体62と、このカム構造体62の各カムにより移動される複数のフィンガを有するフィンガ構造体63を有している。
カム構造体62は、複数のカム、例えば6個のカム62A〜62Fを有しており、フィンガ構造体63は、6個のカム62A〜62Fに対応して6個のフィンガ63A〜63Fを有している。6個のカム62A〜62Fは互いに位相差を付けて配列されており、カム構造体62は、駆動モータ61の出力軸61Aに連結されている。
【0024】
図5に示す制御部100の指令により、駆動モータ61の出力軸が回転すると、6個のフィンガ63A〜63Fが順番にY方向に所定ストローク分進退することで、輸液チューブ200はT方向に沿って開閉カバー5の輸液チューブ押さえ部材5Cに対して押し付けられることから、輸液チューブ200内の薬剤を、T方向に送液することができるようになっている。すなわち、複数のフィンガ63A〜63Fが個別駆動されることで、複数のフィンガ63A〜63Fが輸液チューブ200の外周面をT方向に沿って順次突出することで押圧して輸液チューブ200内の薬剤の送液を行う。複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動を制御することにより、フィンガ63A〜63Fを順次前後進させ、あたかも波動が進行するようにして、輸液チューブ200の閉塞点をT方向に移動させることで、輸液チューブ200をしごいて薬剤を移送する。
【0025】
図5に示すように、輸液ポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0026】
図5に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Aと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
【0027】
図5に示す送液駆動部60の駆動モータ61の出力軸61Aが制御部100の指令により回転され、複数のフィンガ63A〜63Fの蠕動運動をさせることにより、輸液チューブ200をしごいて薬剤をT方向に移送する。
図6は、輸液ポンプ1と、薬剤バッグ170と、輸液ポンプ1に対して正しい送液方向であるT方向に沿ってセットされた輸液チューブ200を示している。
図6に示すように、輸液チューブ200の一端部はクランプ(クランプ部材)179を介して薬剤バッグ170に接続され、輸液チューブ200の他端部は患者P側の留置針172に接続される。薬剤バッグ170内の薬剤171は、送液駆動部60の駆動により、輸液チューブ200と留置針172を通じて正しい方向であるT方向に送液されることで患者Pに投与されるようになっている。
【0028】
図5に戻ると、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、図2に例示する情報内容や図11に示す警告メッセージ300〜302等を表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の警報内容を音声により告知することができる。ブザー132は、制御部100の指令により各種の警報を音により告知することができる。スピーカ131は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音声により警告を発する警告手段の一例である。ブザー132は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、医療従事者に対して音により警告を発する警告手段の一例である。
【0029】
図5において、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの輸液チューブ200の上流側が閉塞したことを示す上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの輸液チューブ200の下流側が閉塞したことを示す下流閉塞信号S3は、制御部100に供給される。上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2は、輸液チューブ200の上流側200Aの内圧の大きさを示す信号である。下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3は、輸液チューブ200の下流側200Bの内圧の大きさを示す信号である。
上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53は、輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越えて、薬剤を送液できない状態を検出することができ、制御部100に出力されるアラームである。輸液回路の内圧が輸液ポンプ1内の設定圧を越える原因としては、輸液用の留置針や輸液チューブ200が詰まっている場合、輸液チューブ200がつぶれているかまたは折れ曲がっている場合、高粘度の薬剤を使用している場合等である。
【0030】
図5において、制御部100は、通信ポート140を通じて、例えば、デスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬剤データベース(DB)160に接続されており、薬剤データベース160に格納されている薬剤情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬剤情報MFを基にして、例えば図2に示す表示部3には薬剤情報MF等を表示することができる。
図5において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4Eは、制御部100に電気的に接続されている。
【0031】
次に、上述した輸液ポンプ1を使用する際の動作を説明する。
図7(A)は、輸液チューブ200が輸液ポンプ1のチューブ装着部50に対して正しい方向であるT方向(順方向)に沿って装着(セット)された状態を示し、図7(B)は、輸液チューブ200が輸液ポンプ1のチューブ装着部50に対して誤った方向であるN方向(逆方向)に沿ってセットされた状態を示している。
図3に示すように医療従事者が、開閉カバー5を開けてチューブ装着部50に輸液チューブ200を設定する前に、図2に示す開閉カバー5の上に配置された輸液チューブ設定方向表示部150を見て輸液チューブ200のセット方向を目視で確認する。これにより、輸液チューブ200を送液方向であるT方向に沿って正しく装着でき、薬剤171を輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bに向かって、送液駆動部60の予め定めた送液方向であるT方向に沿って、正しく送液できることになる。
図7(A)に示すように、輸液チューブ200が正しい方向であるT方向に沿ってセットされた状態では、輸液チューブ200の上流側200Aが本体部1Bおいて向かって右側部分の第1輸液チューブガイド部54側に配置され、輸液チューブ200の下流側200Bが本体部1Bおいて向かって左側部分の第2輸液チューブガイド部55側に配置される。図6と図1〜図4に示す輸液チューブ200のセット状態も、輸液チューブ200が正しくセットされた状態であり、薬剤はT方向に沿って送液される。
【0032】
これに対して、図7(B)に示すように、輸液チューブ200が輸液ポンプ1に対して誤った方向であるN方向に沿ってセットされた状態では、輸液チューブ200の上流側200Aが第2輸液チューブガイド部55に配置されてしまい、輸液チューブ200の下流側200Bが第1輸液チューブガイド部54に配置されてしまっている。すなわち、輸液チューブ200の装着状態は、医療従事者が輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bとを左右間違えて、輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対して誤った方向であるN方向に装着された状態である。このように、輸液チューブ200が誤って装着された場合には、薬剤は、送液駆動部60の予め定めた送液方向であるT方向とは逆のN方向に沿って送液されてしまうことになる。
【0033】
そこで、図7(A)と図2に示すように、医療従事者が輸液チューブ200を輸液ポンプ1に対してT方向に沿って正しく装着できるようにするために、まず、医療従事者は、図2に示すように、開閉カバー5上の輸液チューブ設定方向表示部150の薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、そして薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を目視で確認する。これにより、医療従事者は、輸液チューブ200の上流側200Aを薬剤バッグ表示部151側に位置させることと、輸液チューブ200の下流側200Bを患者側表示部152側に位置させることと、そして薬剤の送液方向がT方向であることを送液方向表示部153の矢印により、輸液チューブ200の設定方向を目視で確認することができる。
【0034】
このように、医療従事者が、薬剤バッグ側を表示する薬剤バッグ表示部151と、患者側を表示する患者側表示部152と、そして薬剤の送液方向を明示する送液方向表示部153を目視で確認して、輸液チューブ200の正しい方向であるT方向の向けてあることをチェックした後、図3と図4に示すように、医療従事者はレバー5Fを操作して開閉カバー5を開けて、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55と、そして送液駆動部60を露出させる。
【0035】
そして、医療従事者は、輸液チューブ200を、第1輸液チューブガイド部54、気泡センサ51と、上流閉塞センサ52、送液駆動部60、下流閉塞センサ53、そして第2輸液チューブガイド部55に沿ってT方向に装着する。その後、図1と図2に示すように、開閉カバー5を閉じて、泡センサ51と、上流閉塞センサ52と、下流閉塞センサ53と、第1輸液チューブガイド部54と第2輸液チューブガイド部55と、そして送液駆動部60を覆う。これにより、輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に沿って装着でき、送液駆動部60を駆動することにより、薬剤は輸液チューブ200を通じてT方向に沿って送液することができる。
【0036】
ところで、図8(A)は、輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミング状態を示し、図8(B)は、輸液チューブ200の薬剤171が患者に対して誤った方法で送液されている状態を示している。図8(A)と図8(B)のいずれの場合であっても、輸液チューブ200は、チューブ装着部50に対して誤った方向であるN方向に装着されてしまっている。このプライミングとは、始動に備えて準備的な作業を行うことであり、輸液チューブ200内に薬剤を満たして、血管確保した留置針に対してすぐに接続できるように準備することである。
図8(A)に示す輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミング状態では、輸液チューブ200が図7(B)にも示すように誤った方向であるN方向に装着されている。この場合には、輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミング時、すなわち図2,図5に示す早送りスイッチボタン4Bが押されている間であって、制御部100が送液駆動部60を駆動させて薬剤171を輸液チューブ200内に満たしている間には、気泡センサ51からの気泡検出信号S1と、上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2と、そして下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3は、輸液チューブ200が図7(A)に示すように正しい方向であるT方向に装着されている場合とは異なる値となるので、このことを利用して輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを、制御部100は判別するようになっている。
【0037】
すなわち、輸液チューブ200が図8(A)に示すように誤った方向であるN方向に装着されている場合にプライミングを行うと、輸液チューブ200の端部から薬剤バッグ170方向に向かって気泡199が流入してしまうので、気泡センサ51が輸液チューブ200内の気泡199を検出する。このため、気泡センサ51が気泡検出信号S1を制御部100に送る。
この時点で、制御部100がスピーカ131とブザー132を駆動することにより、輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを、医療従事者に対して警告を発すれば、適切な処置ができるので患者は安全である。
【0038】
また、図8(B)において、輸液チューブ200が患者に対して接続される前のプライミングを、クランプ部材179による閉鎖状態の解放により行う場合、つまり制御部100が送液駆動部60を駆動させるのではなく、輸液チューブ200のクレンメ179の閉鎖状態の解放により薬剤バッグ170から輸液チューブ200内を薬剤171で満たす場合には、送液中における下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3に注目して、この下流閉塞信号S3の値から、輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを制御部100は判別することができる。
輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されている場合に、図8(B)において薬剤バッグ170から輸液チューブ200を通じて患者Pに対して薬剤171を送液すると、患者Pから薬剤バッグ170側に向かって、輸液チューブ200内に血液BLがG方向に流入してしまう。このため、気泡センサ51は気泡を検出することはできずに、気泡センサ51からは気泡検出信号S1が制御部100に対して送られない。
【0039】
そこで、図8(B)に示すように、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着されている場合には、輸液チューブ200が患者に対して薬剤171が送液されている状態では、送液時には上流閉塞センサ52からの上流閉塞信号S2の値と下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3の値が、輸液チューブ200が正しい方向であるT方向に装着されている場合の各値と異なることを利用して、この上流閉塞信号S2の値と下流閉塞センサ53からの下流閉塞信号S3の値の内の下流閉塞信号S3の値に注目して利用する。制御部100は、輸液チューブ200の下流側の内圧が上昇する傾向にあることに注目して下流閉塞信号S3をチェックすることで、制御部100は輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着されていることを判別することができる。
【0040】
図9(A)は、図7(A)に例示するように輸液チューブ200がT方向に装着されている場合において、輸液ライン200の閉塞状況と、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の検出内容例を示している。この検出内容は、プライミング時であっても送液時であっても同じである。
図9(A)において、ケース1のように、輸液チューブ200の上流側200Aが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧が低下したことを検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が実質的に変化しない(微動はあり)か、もしくは下流側200Bの内圧がやや低下することを検出して、図5の制御部100に伝える。
【0041】
図9(A)において、ケース2のように、輸液チューブ200の下流側200Bが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
図9(A)において、ケース3のように、輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bがともに閉塞されておらず通常輸液時である場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出して、図5の制御部100に伝える。
【0042】
これに対して、図9(B)は、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿ってセットされている場合の、輸液ライン200の閉塞状況と、上流閉塞センサ52と下流閉塞センサ53の検出内容例を示している。
図9(B)において、ケース4のように、輸液チューブ200の上流側200Aが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧が実質的に変化しないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
【0043】
図9(B)において、ケース5のように、輸液チューブ200の下流側200Bが閉塞されている場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧が低下することを検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧がやや上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
図9(B)において、ケース6のように、輸液チューブ200の上流側200Aと下流側200Bがともに閉塞されておらず通常時である場合には、上流閉塞センサ52は輸液チューブ200の上流側200Aの内圧には実質的な変化がないこと(微動はあり)を検出し、下流閉塞センサ53は輸液チューブ200の下流側200Bの内圧が上昇することを検出して、図5の制御部100に伝える。
【0044】
このように、図9(B)と図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着された場合には、図9(A)と図7(A)に示すように輸液チューブ200が正しい方向であるT方向に装着された場合とは異なり、図9(B)に示す破線の枠189で示すように、ケース4の上流閉塞の場合、ケース5の下流閉塞の場合、そしてケース6の通常輸液時の場合のいずれの状況においても、下流閉塞センサ53は、輸液チューブ200の内圧の上昇傾向を検出することを、制御部100が認識できる。
これに対して、図9(A)に示す破線の枠179では、ケース2の下流閉塞の場合だけが内圧上昇があるが、ケース1の上流閉塞の場合とケース3の通常輸液時の場合では内圧は上昇しない。
【0045】
図10は、輸液ポンプ1の動作例を示すフロー図である。
図10のステップST1では、図5に示す制御部100は、輸液ポンプ1がプライミングモードであるか、通常輸液モードであるかを判別する。医療従事者が図5に示す早送りスイッチボタン4Bを押し続けることで、制御部100は、プライミングモードであることを判別できる。判別の結果、輸液ポンプ1がプライミングモードであれば、図10のステップST2に移り、制御部100は送液駆動部60を早送り送液動作させる。これにより、輸液チューブ200内には薬剤が早送りされる。この時点では、輸液チューブ200が図7(A)に示すように正しく装着されているか、図7(B)に示すように誤ってセットされているか不明である。
【0046】
図10のステップST3では、図8(A)に示すように気泡センサ51が輸液チューブ200内において連続的に気泡199を検出しているかを確認する。ステップST3において、気泡センサ51が輸液チューブ200内において連続的に気泡199を検出しているのであれば、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に装着されており、薬剤171が輸液チューブ200内を逆流している可能性がある。
そこで、図10のステップST4では、図5の制御部100は、スピーカ131とブザー132の少なくとも一方を駆動することにより、音声アナウンスと警告音の少なくとも一方により、輸液チューブ200が図7(B)に示すように誤った方向であるN方向に装着されていることを、医療従事者に対して警告を発することができる。この警告により、医療従事者は適切な処置ができる。この警告の際には、図2に示す表示部3には、図11(A)に示す警告メッセージ300を表示される。
【0047】
一方、図10のステップST3において、図8(A)に示すように気泡センサ51が輸液チューブ200内において連続的に気泡199を検出することがなければ、図10のステップST5に移る。ステップST5において、図5の制御部100は、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇しているかどうかを確認する。図10のステップST5において、制御部100が、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇していると判断した場合には、次の2つの事例が考えられる。
第1番目の事例としては、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されている(図9(B)のケース4,5,6を参照)。
第2番目の事例としては、図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが、輸液チューブ200に下流閉塞が起こっている(図9(A)のケース2を参照)。
【0048】
この場合には、図10のステップST4に移り、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されているか、あるいは図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが輸液チューブ200に下流閉塞現象が起こっているのではないかを、警告する。また、図5の表示部3には、図11(B)に示す警告メッセージ301が表示される。制御部100は、スピーカ131とブザー132の少なくとも一方を駆動する。この音声アナウンスと警告音の少なくとも一方と、表示部3における警告メッセージ301により、医療従事者に対して警告を発することができる。この警告により、医療従事者は適切な処置ができる。
【0049】
図10のステップST1に戻り、医療従事者が図5に示す早送りスイッチボタン4Bを押しておらず、しかも医療従事者が図5に示す開始スイッチボタン4Cを押すと、制御部100は、輸液ポンプ1が通常輸液モードであると判別して、ステップST6からステップST7に移る。
ステップST7では、図5の制御部100は、送液駆動部60を通常の送液動作をさせて薬剤の送液を行う。そして、ステップST5において、制御部100は、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇しているかどうかを確認する。図10のステップST5において、制御部100は、下流閉塞センサ53の検出する輸液チューブ200の内圧が連続的に上昇していると判断した場合には、次の2つの事例が考えられる。
第1番目の事例としては、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されている。
第2番目の事例としては、図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが、輸液チューブ200に下流閉塞が起こっている。
【0050】
この場合には、図10のステップST4に移り、図7(B)に示すように輸液チューブ200が誤った方向であるN方向に沿って装着されているか、あるいは図7(A)に示すように輸液チューブ200は正しい方向であるT方向に装着されているが輸液チューブ200に下流閉塞現象が起こっているのではないかを、警告する。制御部100は、スピーカ131とブザー132の少なくとも一方を駆動する。また、図5の表示部3には、図11(C)に示す警告メッセージ302が表示される。この音声アナウンスと警告音の少なくとも一方と、表示部3における警告メッセージ302により、医療従事者に対して警告を発することができる。この警告により、医療従事者は適切な処置ができる。
【0051】
なお、図10のステップST6において、医療従事者が図5に示す開始スイッチボタン4Cを押さなければ、これ以降の動作は終了する。ステップST4において警告を発した後には、これ以降の動作は終了する。
以上説明したように、本発明の実施形態の輸液ポンプ1では、医療従事者が、輸液チューブを設定する際に輸液チューブ設定方向表示部を見ることで、輸液チューブの上流側と下流側を目視で確認することができ、輸液チューブを装着する場合に輸液チューブの装着方向を誤ってしまうことを防止して、薬剤を輸液チューブの上流側から下流側に向かって予め定めた送液方向に沿って正しく送液することができる。
【0052】
図11は、図5の表示部3に表示される上述した警告メッセージ300,301,302の例を示している。図5の表示部3は、輸液チューブ200が誤った方向であるN方向(逆方向)にセットされた場合に、警告内容を表示して、医療従事者に対して視覚的に警告を発する警告手段の一例である。
図11(A)に示す警告メッセージ300は、プライミングモード時に、気泡センサ51が連続的に気泡を検出して反応した場合のエラーの例であり、図10のステップST3からステップST4になると表示部3に表示される。警告メッセージ300では、「プライミング時エラー:輸液チューブ(輸液ライン)200が逆に装着されていないか確認してください」というメッセージが表示される。
【0053】
図11(B)に示す警告メッセージ301は、プライミングモード時に、下流閉塞センサ53が輸液チューブ200の下流側の閉塞を連続的に反応した場合のエラーの例であり、図10のステップST3からステップST5を経てステップST4になると表示部3に表示される。警告メッセージ301では、「プライミング時エラー:輸液チューブ(輸液ライン)200が逆方向に装着されていないか、下流閉塞が発生していないか確認してください」というメッセージが表示される。
図11(C)に示す警告メッセージ302は、通常送液時に、下流閉塞センサ53が輸液チューブ200の下流側の閉塞を連続的に反応した場合のエラーの例であり、図10のステップST7からステップST5を経てステップST4になると表示部3に表示される。警告メッセージ301では、「送液時エラー:輸液チューブ(輸液ライン)200が逆方向に装着されていないか、下流閉塞が発生していないか確認してください」というメッセージが表示される。
【0054】
図12は、図1と図2に示す複数台の輸液ポンプ1を、輸液スタンド70に搭載した例を示しており、必要に応じて複数台の輸液ポンプ1を同時に使用することができる。輸液ポンプ1は、輸液チューブ200をX方向に沿って水平方向に装着することができるので、複数第の輸液ポンプ1は輸液チューブを上から下向きに垂直方向に装着する従来構造のものに比べて、上下方向に並べて重ねて配置し易く、使い勝手が良い。
【0055】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
本発明の実施形態の輸液ポンプ1では、図2に示すように、輸液チューブ設定方向表示部150の表面は、開閉カバー5の一端部側に配置される薬剤バッグ表示部151と、開閉カバー5の他端部側に配置される患者側表示部152と、T方向を明示する送液方向表示部153を有している。
しかし、これに限らず、輸液チューブ設定方向表示部150は、開閉カバー5の表面ではなく、開閉カバー5以外の本体カバー2側に配置することもでき、輸液チューブ設定方向表示部150の配置位置は任意に選択できる。
また、輸液チューブ設定方向表示部150は、例えば開閉カバーを開くと露出する内面のいずれかの露出面、例えば、図4における気泡センサ51の上方位置等に「矢印」で示してもよい。
図1と図2に示す例では、輸液チューブ200は、チューブ装着部50により水平方向であるT方向に沿って装着されているが、これに限らず、例えばチューブ装着部50は、輸液チューブ200の上流側200Aから下流側200Bにかけて所定の角度分下がるように傾斜して横方向に装着するような構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1・・・輸液ポンプ、2・・・本体カバー、2A・・・本体カバーの上部分、2B・・・本体カバーの下部分、3・・・表示部(警告手段の一例)、4・・・操作パネル部、5・・・開閉カバー、50・・・チューブ装着部(ライン装着部ともいう)、51・・・気泡センサ、52・・・上流側閉塞センサ、53・・・下流側閉塞センサ、60・・・送液駆動部、100・・・制御部、131・・・スピーカ(警告手段の一例)、132・・・ブザー(警告手段の一例)、150・・・輸液チューブ設定方向表示部、151・・・薬剤バッグ表示部、152・・・患者側表示部、153・・・送液方向表示部、200・・・輸液チューブ(輸液ラインともいう)、200A・・・輸液チューブの上流側、200B・・・輸液チューブの下流側、T・・・正しい方向、N・・・誤った方向、X・・・水平方向(横方向)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と
を有し、
前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、
前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、
前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に装着された状態で、前記送液駆動部を駆動して前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たすプライミングを行った場合に、前記気泡センサが前記輸液チューブ内に前記気泡を検出したことを示す気泡検出信号と、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号と、に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と、
を有することを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と
を有し、
前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、
前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、
前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定された状態で、前記薬液バッグと前記送液駆動部の間の前記輸液チューブのクランプを開放して前記薬液バッグから前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たして患者に対して送液するプライミングを行った場合に、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と
を有することを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と
を有し、
前記チューブ装着部に対応する開閉カバーの表面には、前記輸液チューブの上流側と下流側を表示する前記輸液チューブ設定方向表示部が設けられていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項4】
前記送液方向とは逆方向に前記輸液チューブが装着されたことを前記制御部が判別した場合には、前記制御部の指令により警告を発生する警告手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項1】
薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と
を有し、
前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、
前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、
前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に装着された状態で、前記送液駆動部を駆動して前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たすプライミングを行った場合に、前記気泡センサが前記輸液チューブ内に前記気泡を検出したことを示す気泡検出信号と、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号と、に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と、
を有することを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
薬剤バッグの薬剤を患者に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と
を有し、
前記チューブ装着部には、前記輸液チューブ内に生じる気泡を検出する気泡センサと、
前記輸液チューブの閉塞状態を検出する下流側閉塞センサと、
前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定された状態で、前記薬液バッグと前記送液駆動部の間の前記輸液チューブのクランプを開放して前記薬液バッグから前記輸液チューブ内に前記薬剤を満たして患者に対して送液するプライミングを行った場合に、前記輸液チューブの内圧が上昇したことを示す前記下流閉塞センサからの下流閉塞信号に基づいて、前記輸液チューブが前記送液方向とは逆方向に設定されたことを判別する制御部と
を有することを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
薬剤バッグの薬剤を患者側に輸液する輸液チューブを横方向に装着するチューブ装着部と、
前記輸液チューブを前記横方向に装着した状態で、前記輸液チューブに蠕動運動を与えて前記薬剤を前記横方向に沿って予め定めてある送液方向に送液するための送液駆動部と
を有し、
前記チューブ装着部に対応する開閉カバーの表面には、前記輸液チューブの上流側と下流側を表示する前記輸液チューブ設定方向表示部が設けられていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項4】
前記送液方向とは逆方向に前記輸液チューブが装着されたことを前記制御部が判別した場合には、前記制御部の指令により警告を発生する警告手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−223341(P2012−223341A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93092(P2011−93092)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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