説明

輸送システムの工場での事前組み立てのための方法、および輸送システムを生産するための組立プラント

【課題】いくつかの組立ステーション(20.1−20.13)を備える輸送システム(10.1−10.17)の、工場での事前組み立てのための組立プラント(20)。
【解決手段】組立ステーション(20.1−20.13)ごとに、輸送システム(10.1−10.17)の部分が予め組み立てられ、組立段階の順序に配置され、組立段階特有の組立構成要素の在庫品、工具装置を有する。各輸送システム(10.1−10.17)が交互に移動して組立段階に掛かるような方法で管理または作動し、1つの組立ステーション(20.1−20.13)から次に輸送システム(10.1−10.17)を移動させる目的で、生産管理システム(30)が設けられる。組立段階は、予め特定された固定の標準的な組立時間ウインドウTによって規定されるリズム(τ)で進行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、それぞれ請求項1および10のプリアンブルによるエスカレータまたは動く歩道として具現化される輸送システムを、工場で予め組み立てるための方法および組立プラントである。
【背景技術】
【0002】
これまで、輸送システムは、個々の設置場所で個別に予め組み立てられ、時には、天井クレーンの助けを借りて移動されていた。
【0003】
このような輸送システムは、高重量であり、長さが長いことが特徴である。エスカレータの重量は、一般に10トン程度であり、エスカレータの長さは30メートル以上の場合がある。これらの輸送システムは、移動が困難であり、遅く移動することしかできない強力な天井クレーンを使用する必要がある。
【0004】
現在の従来技術を用いて、組立工場における様々なエスカレータが、特定の順番で互いに平行に配置される。この順番にあるエスカレータの位置は、事前に決められた処理の状態に対応する。第1の位置を占めるのは、事前に組み立てられたエスカレータのトラスのみである。最後の位置において、薄板カバ−が、そのとき完成されるエスカレータに取付けられる。各エスカレータが天井クレーンによって次の位置に移動し、3日または4日間まで各位置に留め置くことができる。エスカレータは互いから独立して処理され、そしてまた、互いから独立して次の位置に移動する。10日から15日後には、通常エスカレータがあらゆる取付け段階を通過している。
【0005】
不利なのは、これらの長さのために、結果として生じるエスカレータシステムの長さが組立工場の長さをすぐに超えるので、エスカレータは次々と配置されることができないことである。エスカレータは移動するのが困難であるため、エスカレータはまた、できるだけ長い間これらの位置に置かれる。
【0006】
このタイプの事前組み立ては、ほとんど自由度をもたらさず、計画し管理するのが困難であり、比較的高いコストの原因となり、多くの時間を必要とする。
【0007】
それゆえに、大きくてかさばる輸送システムの事前組み立てがより容易に計画可能となり、特に、管理可能となる方法を提供する課題が生じる。
【0008】
さらなる課題は、事前組み立てを管理可能にし、それゆえに、コストを節約する様々な処理を、互いに可能な範囲まで最大に調整可能にすることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、エスカレータおよび動く歩道のための知られている生産技術を改良することであり、このような輸送システムのための生産コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
後述する本発明による方法を用いて、輸送システムの事前組み立て処理を標準化することが可能であり、同時に、さらなる任意の段階によって、事前組み立て処理を顧客ニ−ズに柔軟に適応させることが可能である。この方法において用いられるトラスフレームによって、エスカレータを組立工場に個別に再配置することが可能となる。エスカレータシステムを移動可能にするために、それぞれの実施形態による特別な搬送車が使用されることができる。
【0011】
この課題に対する解決策が、以下のために与えられる。すなわち、
−請求項1を特徴部分の特性による方法のためと、
−請求項10の特徴部分の特性によるエスカレータシステムを生産するための組立システムのためと、である。
【0012】
エスカレータまたは動く歩道として具現化される、輸送システムの工場での事前組み立てのためのいくつかの組立段階を予測することによって、本発明はこの課題を解決する。いくつかの組立ステーションを有する組立プラントにおいてこれらの段階が行われ、同時に事前組み立てするためにいくつかの輸送システムが組立プラント内に存在する。
【0013】
組立ステーションの領域において、ステーション特有の組立段階が、組立ステーションの領域で一時的に滞在する輸送システムについて行われる。組立段階の間で、輸送システムは、移送段階において、1つの組立ステーションからその直後に続く組立ステーションに個別に移動し、輸送システムが移送段階および組立段階を交互に受けるような方法で、組立段階の実行と組立プラントにおける移送段階の性能とが、生産管理システムによって管理される。組立プラントにおける組立段階は、標準的な組立時間ウインドウによって規定される、特定の定められたリズムで進行する。
【0014】
このことには、個々の組立ステーションが、生産手順における1つの時点でのみ必要とされる特別な工具を備えることができるという利点がある。組立ステーションをこのように特定化することによって、組立ステーションを基盤とするコストが節約され得る。輸送システムの個々の生産段階は、小さな、管理可能な生産段階に分割され、それによって、最大可能な範囲まで標準化される。それによって、生産工程における最適化方法がより容易に定義可能となり、効率的に実行されることができる。生産段階をより小さく分割することによって、生産工程の混乱もまた、より容易に分離することができ、改善され得る。さらにまた、どのようなクレーントロリーまたはリフティングクレーンも工場の天井領域において必要とされないので、本発明による組立プラントが配置される工場は、その構造においてより複雑でなくなる。
【0015】
事前組み立て処理において組み立てられるのに必要とされる部品は、必要とされる組立ステーションに有利な場所に直接準備することが可能である。
【0016】
生産管理システムは、組立プラント全体を管理し監視することが可能である。このことによって、事前組み立て処理にある輸送システムの生産の現状に関する生産システムの照会が可能となる。
【0017】
有利なことに、あらゆる組立段階は、標準的な組立時間ウインドウに分割される。対応するように設計された生産管理システムによって、組立プラントにおけるいくつかの輸送システムの組立が、時間同期方式で進行する。
【0018】
このことには、輸送システムの事前組み立てによって、生産工程および生産がより簡潔に、そしてより正確に計画されることができるという利点がある。組立プラントの時間同期方式の形によって、結果として、単位時間あたりの組立プラントにおける輸送システムの生産がほぼ一定となる。
【0019】
有利なことに、標準的な組立時間ウインドウの終了時に、輸送システムをそれぞれの次の組立ステーションに個別に移動する移送段階が実行されるような方法で、組立プラントにある輸送システムが生産管理システムによって監視され管理される。
【0020】
このことには、十分に利用される組立プラントにおいて、組立ステーション内で予測される作業が行われている輸送システムが、各組立ステーションに常に存在するという利点がある。
【0021】
この組立ステーションが長く時間のかかりすぎる組立段階によって妨害され、それによってリズムが混乱することが予想されると、有利なことに、生産管理システムは、組立ステーションで実際に必要とされる経過した組立時間を短くするための方策を取る。たとえば、資材の準備を通して、および/または、より高い程度まで予め組み立てられる構成要素の準備を通して、および/または、組立作業者をさらに準備することを通して、このことが可能となる。組み立てるのに時間のかかる輸送システムの後に続いて、組み立てるのに時間のかからない輸送システムが組立ステーションを通過するような方法で、生産管理システムはまた、あるいはさらに、組立プラントを管理することもできる。
【0022】
このことには、組立プラントのリズムが一定に保たれることが可能であるという利点がある。より高い程度にまで予め組み立てられる構成要素を準備することによって、組立ステーションの作業時間が減少され得る。対応する事前組み立てが、組立プラントの内部、または外部の作業場で行われることが可能である。組立作業者をさらに準備することによって、組立ステーションでの作業をより迅速に処理することができる。標準的な組立時間ウインドウよりも多少の時間を必要とする輸送システムを有利に計画することによって、組立プラントのリズムを損うことなく、標準時間ウインドウのリズムからの限られた偏差が許容され得る。
【0023】
有利なことに、組立ステーションは、実行されることになっている組立段階の順に配置され、組立段階特有の組立構成要素の在庫品を準備するための装置と共に、組立段階特有の工具装置を有する。
【0024】
このことには、いかなる作業段階が削除されることなく、標準的な組立時間ウインドウによって規定されるリズムで、輸送システムが第1の組立ステーションから最後の組立ステーションまでさらに搬送されることができるという利点がある。組立ステーションを専門化することよって、特別な工具装置は、それらが必要とされる組立ステーションで提供されなければならないだけである。それによって、組立ステーションの調達費および保全費が低減する。組立ステーションによって組立段階特有の組立構成要素の在庫品を直接備えることによって、組立作業者のための不要な距離を節約することができる。
【0025】
有利なことに、組立プラントは、1つのそれぞれの組立ステーションから次の組立ステーションに予め組み立てられることになっている輸送システムを個々に移動させる、少なくとも1つの搬送車を含む。
【0026】
このことには、大きな強度を必要とすることなく、輸送システムが組立プラント内を移動することができるという利点がある。搬送車にを用いて、その完成の程度によって、トラスフレームが容易に加速および減速されることができる。それによって、生産プラントを安全に運転することが可能となる。搬送車を用いて、輸送システムはまた、組立ステーションから通過ステーションに移動することができる。
【0027】
有利なことに、生産管理システムは、いくつかの輸送システムの事前組み立てを管理し、修正的に介入する検出器および出力装置を用いる、コンピュ−タ支援の生産管理システムである。
【0028】
このことには、生産管理システムが検出器によって事前組み立ての現状について常に通知され、対応する情報の項目が生産工程において考慮されることが可能となるという利点がある。出力装置を介して、生産工程に有利に影響を及ぼす情報の項目が出力されることができる。生産管理システムがコンピュ−タ支援されるので、たとえばインタ−ネットまたはイントラネット等のネットワ−クを介して、他のコンピュ−タによる生産データへのアクセスもまた可能である。あるいは、生産管理システムはまた、計画作成ソフトウェアに接続されることができる。
【0029】
有利なことに、輸送システムは、トラスフレームの上にまたは下に取付けられるローラーを好ましくは有するトラスフレームに取付けられて搬送される。
【0030】
このことには、事前組み立ての後、輸送システムがトラスフレームとともに最終組立まで搬送されることができるという利点がある。トラスフレームの上にまたは下にローラーが取付けられていることによって、組立前、組立後、または組立プラントにあるトラスフレームが難なく移動可能となる。
【0031】
有利なことに、在庫品を準備するための装置は、かんばん方式によって構成される装置である。
【0032】
このことには、中央生産管理システムが全く必要なく、部品が新規に取付けられなければならない必要性を、個々の組立プラントが独立して管理することができるという利点がある。かんばんカ−ドを用いて、供給点が部品の必要性を通知される。その結果、組立プラントにおいて多数の在庫品は不要となる。
【0033】
有利なことに、生産管理システムは、ジャストインタイムシステムに連係される。
【0034】
このことには、在庫品を保有する経費、したがって、関連する固定資本における出費が低減できるという利点がある。さらにまた、在庫品が旧式化する恐れがない。
【0035】
有利なことに、それぞれの組立ステーションによって、生産管理システムが必要である材料の準備を直ちに開始するので、組立工程に遅れが生じず、好ましくは順序づけられた材料ワゴンに材料が準備される。
【0036】
このことには、組立プラントにおいて、組立工程の間に組立ステーションで遅れや不足が生じないという利点がある。順序づけられた材料ワゴンのため、注文の組立のための部品全てが準備されることができる。同時に、組立のための部品の量および質の点検が行われることができる。さらにまた、実際に必要とされるのと同じ量の材料のみが、組立ステーション内に存在する。このことによって、在庫費用を低減することが可能となる。
【0037】
有利なことに、組立プラントには、以下の組立ステーションのうちの少なくとも1つが存在する。すなわち、準備ステーション、電気部品を取付けるためのステーション、手すりおよび/またはステップを取付けるためのステーション、予め組み立てられた輸送システムを検査するための検査ステーション、梱包ステーションである。
【0038】
このことには、個々の専門化された作業段階が組立ステーションで効率的に実行されることができるという利点がある。モジュール構造のため、輸送システムまたは注文によって、個々の組立ステーションが削除されることができる。
【0039】
輸送システムが事前組み立て処理から一時的に取り除かれ、組立ステーションを妨害しないようにするために、少なくとも1つの通過ステーションが設けられることが好ましい。
【0040】
このことには、混乱が生じることによって、組立プラント全体が妨害されないという利点がある。このような混乱は、たとえば、完璧に進行しない輸送システムの検査や、組立のための部品の供給における問題や、標準的な組立時間ウインドウへの付着の失敗や、通常標準的な時間ウインドウを超える特別な取付け部品(fittings)によって起こり得る。
【0041】
生産管理システムが材料の流れを管理することもまた、有利である。
【0042】
このことには、輸送システムの事前組み立ての状態が、生産管理システムにいつでも通知され問い合わせられることが可能であるという利点がある。さらにまた、材料の流れを管理することによって、生産管理システムがサブ在庫品(subinventories)の量を監視することができ、必要なときに材料を注文することができる。
【0043】
例示的実施形態と関連して、図面を参照して、本発明を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明によると、ソフトウェアを備える、またはソフトウェアが生産管理システム30に連係されることのできる生産管理システム30が、組立プラント20における事前組み立て処理を計画可能にするために使用される。この計画の一部として、輸送システム10の事前組み立てが、あらゆる輸送システム10のために実行されることのできる一連の(標準化された)基礎的な組立段階に分解される。組み立てられることになっている輸送システム10の所望の実施形態または装置によって、実行されなければならないあらゆるさらなる段階が選択され、または規定される。これらの段階は任意である。
【0045】
組立ステーションで必要となるであろうあらゆる段階(基礎的な取付け段階および任意の段階)を実行するのに要求されることになる時間Tlを決定することができるように、上記のソフトウェアが好ましくは設計される。特定された標準的な組立時間ウインドウTよりもこの時間Tlが短い場合、たとえば対応する段階が節約されることが可能となる。この処理は、各組立ステーション20のために繰り返されることができる。単位時間に(たとえば特定の日に)予め組み立てられることになっている各輸送システム10のために、この単位時間(たとえば特定の日に)の間に実行されるべき作業処理を計画できるよう同じ手順が実行される。
【0046】
好ましくはソフトウェアは、(生産)リズムτを確実に維持するよう計画段階においてすでに講じられた施策を使用可能にするように、いかなる時間不足も検出されることができるように設計される。たとえば、1つの方策は、組み立てるのに極めて時間のかかる輸送システム10.3の後に組立時間がより少なくてすむ輸送システム10.2が続くように、時間を分割することである。組み立てるのに時間のかかる輸送システム10.3は、標準的な組立時間ウインドウTにおいて予測よりも多くの時間を必要とする場合がある。より少ない時間ですむ輸送システム10.2が続くので、これらの2つの輸送システム10.2および10.3を通じて平均される組立手順は、それでもなお、特定のリズムτの範囲内でとどまる。
【0047】
実際に組み立てる間いかなる時間不足も検出されることができ、修正的な介入が可能となるソフトウェアが設計されるのが好ましい。この目的のために、生産管理システム30は、さらなる資材を準備することが可能であり、またはそれらが準備できているように作動することが可能である。しかしながら、リズムτを維持可能にするために、輸送システム10を(少なくとも一時的に)生産ラインから取り除くことが可能である。この目的のために、通過ステーション(図2において、たとえば組立ステーション20.10から20.13)が設けられることができる。ステーション20.4は、たとえば、様々な機械的および/または電気的な機能検査が行われることのできる検査ステーションであることができる。このような検査によって、一定の基準が達成されなかったことが示される場合、局所的に、すなわちステーション20.4において、修正が可能である。ただし、特定のリズムτが認められる(allows)、すなわち時間Tがまだ終了していない場合である。そうしないと、機能検査に合格していない輸送システムが通過ステーション(たとえば図2における組立ステーション20.10)に移動することが可能となる。図2に示されるのは、通過ステーション20.10で修正されている輸送システム10.14である。図5に示すように、本発明による組立プラント20が、ソフトウェアベースの計画システム31と、ソフトウェアベースの生産管理システム30とを備えるのが好ましい。好ましい実施形態において、これらの2つの管理システム30および31は、矢印41によって示されるように互いに連係される。生産が開始する前に、計画システム31が、どの輸送システム10が特定の時間に順番に生産されるべきかを決定する。計画システム31はまた、標準的な組立時間ウインドウTの持続時間を定める。この時間Tが3時間から4時間の間であることが有利である。T=約3.5時間が特に好ましいのは、この場合、1つの作業シフトにおいて、少なくとも2つの輸送システム10が完全に予め組み立てられることができ、組立プラント20から離れることができるからである。
【0048】
本発明によると、組立ステーション20.1−20.nで組み立てに必要とされる輸送システム10あたりの実時間Tlは、組立プラント20全体に対して特定のリズムτの範囲内にとどまるために、標準的な組立時間ウインドウTより少ないか、または等しいはずである。しかしながら、異なる輸送システム(10.1−10.m)のための組立時間Tlは、輸送システムによって異なっていてもよい。計画システム31は、標準的な輸送システム10の生産時間だけでなく、可能な任意の組立段階の生産時間も知るものである。このことによって、たとえば、標準的な組立時間ウインドウTよりも少ない時間(すなわちT110.4<T)ですむ輸送システム10.4が、標準的な組立時間ウインドウTより多くの時間(すなわちT110.3>T)を必要とするか、またはその逆(2つの組立ステーションの平均された総時間がT110.4+T110.3<2T)である第2の輸送システム10.3に続くような方法で、計画システム31が生産手順を計画することが可能になる。このようにして、標準的な組立時間ウインドウのリズムからの限られた偏差が許容される。要するに、特定の標準的な組立時間ウインドウTおよびリズムτによって、順次続く輸送システム10を同期化することが可能であり、それによって組立プラント20全体がリズムから外れないようにすることが可能である。
【0049】
この実施形態によって、計画システム31はまた、組み立てられることになっている部品のための材料の流れを組織化するのを手助けすることが可能である。たとえば、供給業者からちょうど間に合うように、部品が入手されることができる。この場合、計画システム31は、必要な部品を直ちに注文する役目をする。
【0050】
有利なことに、生産管理システム30は、ジャストインタイムシステムに連係されることもできる。部品が到着したあと生産管理システムに示されるように組み立てられることは、部品の利用可能性にとって有利である。ジャストインタイムとは、組み立てられることになっている部品が、在庫のまま保有されることなく、商品荷受部門から組立プラント20または個々の組立ステーション20.1−20.nに直接持ち込まれることを意味する。それによって、在庫品を保つための経費が低減され得る。しかしながら、一定の調達期間で部品が供給業者に注文されなければならず、たとえば、注文は計画システム31によって作動または実行されることができる。調達期間は、組み立てられることになっている部品を注文することから組立プラント20へ部品が到着するまでの時間を示すものである。調達期間は、組み立てられることになっているあらゆる部品に対して個別的であり、計画システム31によって注文がいつ設定され、考慮されることができるかを、対応して知られていなければならない。
【0051】
計画システム31は、たとえば、図5のブロック10.2、10.3、10.4および10.5によって概略的に示されるように、個々の(データ)対象として各輸送システム10.1−10.nを処理することができる。計画システム31がどのように実行されるかによって、より少ない時間ですむ輸送システム(たとえば図5における輸送システム10.4)、およびより多くの時間を必要とする輸送システム(たとえば図5における輸送システム10.3)を事前に組み立てる間に生ずるような、時間ずれ(図5において参照符号33によって示される)が考慮されることもまた可能である。
【0052】
図5の矢印41によって示されるように、生産管理システム30は、輸送システム10.1−10.nを生産するための計画システム31からのデータを好ましくは含む。しかしながら、生産管理システム30は、完全に独立したシステムとして作動されることもできる。
【0053】
本発明によると、生産管理システム30は、いくつかの輸送システム10.1−10.nの生産工程を監視して、直接管理するように設計されている。これらの組立ステーション20.1−20.nのうち1つ以上が、極端に長い組立段階によって妨害されること、およびそれによってリズムτが混乱することが予想されると、組立ステーション20.1−20.nで実際に必要とされる組立所要時間を短くするために、様々な方策が生産管理システム30に利用可能である。
【0054】
たとえば、生産工程において時間不足が生じる場合、いわゆるジャンパーチーム(jumper team)が、組立ステーション20.1−20.9の領域に発注されることができる。これらのさらなる組立作業者は、組立ステーション20.1−20.9に存在する妨害物を排除し、または妨害物を防止し、それによって定められたリズムτを保つ手助けをする。この目的のために、図5に示すように、生産管理システム30は対応するモジュール(たとえばソフトウェアモジュール)35を含むことができる。
【0055】
必要に応じて、妨害される恐れがある組立ステーション20.1−20.nの領域において、生産管理システム30は、すでにより高い程度にまで予め組み立てられた構成要素を準備し、またはそれらが準備できるように起動させることができる。事前組み立てによって、組み立てられることになっている部品の前処理の程度が増大し、そのために、組立ステーション20.1−20.nにおいて、組み立てられることになっている部品がモジュールとして直接中に組み込まれることが可能となる。このことは、組立ステーション20.1−20.nにおいて利用できない組立時間が、別の作業場で外注されることが可能であることを意味する。この目的のために、図5において概説されるように、生産管理システム30は、対応するモジュール(たとえばソフトウェアモジュール)36を含むことができる。
【0056】
生産工程の混乱を回避する、または混乱に対応するさらなる手段が、通過ステーション20.10−20.13によって得られることができる。通過ステーション20.10−20.13は、組立ステーション20.1−20.9に近接して配置される。このことによって、混乱が取り除かれたあと、大きな労力なしで輸送システム10が生産工程に再統合されることができる。この目的のために、生産管理システム30は、図5において概説されるように、対応するモジュール(たとえばソフトウェアモジュール)37を含むことができる。
【0057】
混乱した場合、前述の方策に取られるような決定が、生産管理システム30自体によってなされるのが好ましい。しかしながら、生産管理システム30の複雑さの程度によって、生産管理システム30による決定が対応する入力に影響を受けることが、また考えられる。しかしながら、好ましくは、生産管理システム30は、現在の生産状況と、輸送システム10.1−10.nの位置と、そして、そのようなことがある場合には、輸送システムの組立における混乱とを常に通知される。図5において、参照符号38は、輸送システム10.1−10.nの現在位置に関する対応する情報が生産管理システム30に伝えられることを示す。
【0058】
たとえばバーコードシステムを介して、および/または検出器を介して、生産管理システム30が生産に関連したさらなるデータを受け取ることが可能である。たとえば、組立のために必要とされる部品がバーコードシステムを備えている。組立ステーション20.1−20.n上のバーコードリ−ダによって、図5における参照符号39によって示されるように、組立のための部品の位置および/または作業進行の位置が生産管理システム30に絶えず伝達される。たとえば、図5における参照符号39によって示されるように、電波によって、または床面の誘導ル−プを介して、輸送システム10の位置が決定され生産管理システム30に伝達されることができるような方法で、輸送システム10が検出器を備えている。
【0059】
すでに暗に述べてきた様に、本発明によると、輸送システム10は、いくつかの組立段階を有する処理において工場で予め組み立てられる。図2に示される本発明の例示的実施形態を参照して、この事前組み立てを以下に説明する。個々の段階が、いくつかの組立ステーション20.1−20.13を有する組立プラント20において実行される。いくつかの輸送システム10.1−10.m(示される例示的実施形態において、m=17)が、事前組み立てのために組立プラント20に同時に存在することが可能である。図1に示すように、輸送システム10.1−10.17がトラスフレーム12に予め組み立てられ、組立ステーション20.1−20.9のうちの1つから、次に続く組立ステーション20.1−20.9まで個々に搬送され、ローラー13は好ましくはトラスフレーム12の上にまたは下に取付けられる。これらのトラスフレーム12は、少なくとも1つの搬送車11の助けにより移動するのが好ましい。トラスフレーム上にある輸送システムが1つの搬送車によってそれぞれ同時に移動するかどうか、または、トラスフレームより少ない搬送車が存在し、それぞれの搬送車がこの場合毎回離れるかどうかは、重要でない。時間の偏りの結果として、第2の態様によって、1つの組立ステーションから次の組立プラント内までトラスフレームが波状に動くことになる。輸送システム10の長さ部分が異なるため、トラスフレーム12はまた、それらの長さ部分において対応して異なる。
【0060】
図2に示されるのは、いくつかの輸送システム10.1−10.17がいくつかの異なる組立段階で示される組立プラント20である。組立ステーション20.1−20.13の領域において、ステーション特有の組立段階が、それぞれの組立ステーションの領域内において一時的に存在する輸送システム10.1−10.17の上で行われる。組立段階の間、輸送システム10.1−10.17は、1つの組立ステーション20.1−20.13から後に続く組立ステーション20.1−20.13まで、組立プラント内を個々に移動する。この移動は移送段階と呼ばれる。生産管理システム30は、移送段階の実行と同様に、組立段階の実行を管理する。生産管理システム30は、が保証するのは、輸送システム10.1−10.17が移送段階および組立段階に交互にさらされ、組立プラント20の組立段階が、特定された固定の標準的な組立時間ウインドウTによって定められる規定されたリズムτで行われることを保証する。このことは、通常どの輸送システムも他の輸送システムと同じでないとしても、生産管理システム30によって、輸送システム10.1−10.17の組立が同期化された方法で確実に進行することを意味する。
【0061】
図6Aおよび図6Bに示されるのは、本発明による管理システムによって実現され得る2つの方法である。
【0062】
図6Aにおいて、標準的な組立時間ウインドウTおよび移送時間ウインドウTの間を分化される。リズムτは結果として以下のようになる、すなわち、
τ=1/(T+T
である。時間Tが3時間から4時間の間であることが有利である。特に好ましいのは、T=約3.5時間である。移送時間は、たとえば、T=0.25時間、またはT=0.5時間とすることができる。また、図6Aにおいて概略的に示されるのは、組立ステーションの領域においてステーション特有の組立段階を実行するために、輸送システム10.a、10.bおよび10.cが異なる時間を必要とすることである。ここに示した例では、T10.a<T、T10.b<T、およびT10.c<Tである。換言すれば、示される輸送システムのいずれも、特定の標準的な組立時間ウインドウTによって予測される時間よりも多くの時間を必要としない。図6Aからもまた明らかであるのは、輸送システム10.aが早く完成しており、その結果、いくぶんより多くの時間が移送段階を実行するのに利用可能であることである。次の組立ステーションが空いている場合、輸送システム10.aは明らかに次の組立ステーションへ移動されることができるだけである。輸送システム10.bの組立は、リズムτの最初で始まらずに少し遅れて始まる。この理由は、たとえば、移送段階にかかる時間がより長かったことであり得る。輸送システム10.cの組立も、リズムτの最初で始まらずに少し遅れて始まる。この輸送システム10.cは、その組立のため少しの時間量のみを必要とし、それゆえに、標準的な組立時間ウインドウTが終わるずっと前に完成している。
【0063】
図6Bにおいて、標準的な組立時間ウインドウTおよび移送時間ウインドウTの間がまったく分化されていない。リズムτは、結果として以下のようになる、すなわち、
τ=1/T
である。標準的な組立時間ウインドウTの残り時間は、移送時間TTaからTTcと呼ばれ、移送を実行するために使用される。この実施形態において、時間Tが3時間から5時間の間であることが有利である。T=約4時間であるのが特に好ましい。
【0064】
図4に示されるのは、さらなる例示的な組立プラント20である。図4において、輸送システムの移動が開矢印によって示され、個々の輸送システムが長方形によって表される。開矢印の長さは、移送段階の持続時間を示す。
【0065】
それぞれの必要性を特に考慮した組立プラントを提供するために、様々な実施形態の個々の要素および態様は、互いに自由に組み合わせられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】トラスフレーム上にある輸送システムの概略的な側面図である。
【図2】組立ステーションを備える組立プラントの概略的な上面図である。
【図3A】組立ステーションの詳細な上面図である。
【図3B】組立ステーションの詳細な前面図である。
【図4】輸送システムの移動方向に関する情報と共に、組立ステーションおよび通過ステーションを備える第2の組立プラントである。
【図5】本発明による生産管理および計画システムの可能な実施形態の、図表による説明である。
【図6A】本発明による第1の経時的な手順の図表による説明である。
【図6B】本発明による第2の経時的な手順の図表による説明である。
【符号の説明】
【0067】
10 輸送システム
11 搬送車
12 トラスフレーム
13 ローラー
20 組立プラント
20.1−20.9 組立ステーション
20.10−20.13 通過ステーション
30 生産管理システム
31 生産計画システム
35、36、37 モジュール
38 輸送システムの位置に対応する情報の伝達
39 部品および/または作業位置に対応する情報の伝達
T 組立時間ウインドウ
Ta、Tb、TTc 移送時間ウインドウ
τ リズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの組立ステーション(20.1−20.n)を備える組立プラント(20)において実行可能な、エスカレータまたは動く歩道として具現化される輸送システム(10)のいくつかの組立段階における工場での事前組み立てのための方法であって、
いくつかの輸送システム(10.1−10.m)が事前組み立てのために組立プラント(20)に同時に存在し、
−組立ステーション(20.1−20.n)の領域において、ステーション特有の組立段階を、それぞれの組立ステーションの領域において一時的に存在する輸送システム(10.1−10.m)上で実行するステップと、
−輸送システム(10.1−10.m)を移動する移送段階を、1つの組立ステーション(20.1−20.n)から次に続く組立ステーション(20.1−20.n)まで個々に実行するステップであって、輸送システム(10)が移送段階および組立段階を交互に受け、組立プラント(20)の組立段階が特定された固定の標準的な組立時間ウインドウ(T)によって規定されたリズム(τ)で行われるような方法で、組立プラント(20)における組立段階の実行およびの移送段階の実行が生産管理システム(30)によって管理される、移送段階を実行するステップと、
を特徴とする、輸送システム(10)の事前組み立てのための方法。
【請求項2】
あらゆる組立段階を標準的な組立時間ウインドウ(T)に分解することによって、そして対応するように設計された生産管理システム(30)によって、組立プラント(20)におけるいくつかの輸送システム(10)の組立が時間同期方式で進行することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標準的な組立時間ウインドウ(T)の終了時に、輸送システム(10)がそれぞれの次の組立ステーション(20.1−20.n)に個別に移動する移送段階が実行されるような方法で、生産管理システム(30)が、組立プラント(20)にあるいくつかの輸送システム(10)の組立を監視して管理することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
移送段階が個々の組立ステーション(20.1−20.n)で次々と時間移動して実行されるので、組立プラントを通して移送段階が一種の波の動きで移動することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
この組立ステーション(20.1−20.n)が、極端に長い組立段階によって妨害されること、およびそれによってリズム(τ)が混乱させられることが予想されると、生産管理システム(30)が組立ステーション(20.1−20.n)で実際に必要とされる組立所要時間を短くする方策を取ることを特徴とする、請求項2、3、または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
妨害される恐れがある組立ステーション(20.1−20.n)の領域において、生産管理システム(30)が、さらなる資材を準備し、またはそれらが準備されるように作動することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
妨害される恐れがある組立ステーション(20.1−20.n)の領域において、生産管理システム(30)が、すでにより高い程度にまで予め組み立てられた構成要素を準備し、またはそれらが準備されるように作動することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
妨害される恐れがある組立ステーション(20.1−20.n)の領域において、生産管理システム(30)が、さらなる組立作業員を準備し、またはそれらが準備されるように作動することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
規定されたリズム(τ)内に維持されるように、組立てるのに時間のかかる輸送システム(10.1−10.m)の後に続いて、組立てるのに時間のかからない輸送システム(10.1−10.m)が組立ステーションを通過するような方法で、生産計画システム(31)が組立プラント(20)を管理することを特徴とする、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
いくつかの組立ステーション(20.1−20.n)を備える、エスカレータまたは動く歩道として具現化される輸送システム(10.1−10.m)の工場での事前組み立てのための組立プラント(20)であって、
輸送システム(10.1−10.m)の部分が各組立ステーション(20.1−20.n)において予め組み立てられ、
組立ステーション(20.1−20.n)が、
−実行されることになっている組立段階の順序で配置され、
−組立段階特有の工具装置(21)を備え、
−組立段階特有の組立構成要素の在庫品を準備するための装置(22)を有する、
ことを特徴とし、かつ、
生産計画システム(31)が設けられ、各輸送システム(10.1−10.n)が交互に移動して組立段階を受けるような方法で、組立段階の実行および、組立プラント(20)内の1つの組立ステーション(20.1−20.n)から次に続く組立ステーション(20.1−20.n)までの輸送システム(10.1−10.m)の個々の移動を管理または作動するように、生産計画システム(31)は組立ステーション(20.1−20.n)のうちの少なくとも1つに連係され、
組立段階が、特定された固定の標準的な組立時間ウインドウ(T)によって規定されたリズム(τ)で進行することを特徴とする、組立プラント(20)。
【請求項11】
1つの組立ステーション(20.1−20.n)から次に続く組立ステーション(20.1−20.n)にそれぞれ予め組み立てられることになっている輸送システム(10)を個々に移動させるため、少なくとも1つの搬送車(11)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の組立プラント(20)。
【請求項12】
生産管理システム(30)が、いくつかの輸送システム(10.1−10.m)の事前組み立てを管理し、修正的に介入する検出器および出力装置を用いるコンピュ−タ支援の生産管理システム(30)であることを特徴とする、請求項10または11のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。
【請求項13】
輸送システム(10.1−10.m)が、トラスフレーム(12)に取り付けられて搬送され、ローラー(13)が好ましくはトラスフレーム(12)の上にまたは下に固定されることを特徴とする、請求項10、11、または12のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。
【請求項14】
在庫品を準備するための装置(22)が、かんばん方式によって構成される装置であることを特徴とする、請求項10、11、12、または13のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。
【請求項15】
在庫保有の経費を低減するために、生産管理システム(30)が、ジャストインタイムシステムに連係されることができることを特徴とする、請求項10、11、12、または13のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。
【請求項16】
それぞれの組立ステーション(20.1−20.n)で必要とされる材料の準備を生産管理システム(30)が直ちに開始するので、組立工程に遅れが生じず、順序づけられた材料ワゴンに材料が準備されていることを特徴とする、請求項10、11、12、または13のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。
【請求項17】
以下の組立ステーション(20.1−20.n)、すなわち、
−準備ステーション、
−電気部品を取付けるためのステーション、
−手すりおよび/またはステップを取付けるためのステーション、
−予め組み立てられた輸送システム(10.1−10.m)を検査するための検査ステーション、
−梱包ステーション、
のうちの少なくとも1つが存在することを特徴とする、請求項10から16のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。
【請求項18】
組立ステーションを妨害しないように、輸送システム(10.1−10.m)を事前組み立て処理から一時的に取り除くための、少なくとも1つの通過ステーションが設けられることを特徴とする、請求項17に記載の組立プラント(20)。
【請求項19】
生産管理システム(30)がまた、材料の流れを監視して、管理することを特徴とする、請求項10から18のいずれか一項に記載の組立プラント(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2007−153619(P2007−153619A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−323150(P2006−323150)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】