説明

辛みを増加させたカイワレ大根及びその栽培方法

【課題】 辛みを増加させたカイワレ大根の提供。
【解決手段】 キシリトールを有効成分とする、カイワレ大根の栽培に用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させるカイワレ大根の辛み成分増加剤および辛み成分を増加させたカイワレ大根。発芽したカイワレ大根の種子の播種を行い、キシリトールの水溶液を栽培水及び希釈液肥に加えて栽培,緑化を行うことにより、栽培によって収穫することを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法。カイワレ大根の種子を、キシリトールの水溶液中に浸漬し、発芽後の種子を播種して前記水溶液を栽培水及び液肥の希釈水として用いて栽培,緑化を行うことにより、栽培によって収穫することを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は辛みを増加させたカイワレ大根に関し、特にはキシリトールを有効成分とするカイワレ大根の辛み成分増加剤、キシリトールの水溶液を利用したことによって辛みを増加させたカイワレ大根、およびその栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から健康食品の一つとしてハウス栽培によってカイワレ大根が生産され、市場を通じて一般家庭に提供されているが、通常カイワレ大根の栽培工程は6日間のサイクルで行われている。先ず芽出しを良くするため種子を地下水もしくは水道水に数時間浸漬した後、水を切って発芽室で1晩寝かす。2日目に発芽した種子を発泡スチロールの育苗箱に種蒔きし、時々散水及び液肥を施しながら日の当たらない場所で3日目まで保持し、4日目に散水と液肥を施してから緑化のため日当たりの良いハウスに移して室温を管理することによって黄色のカイワレが緑色になり、5日目は通常の散水と液肥を施して6日目に収穫となる。製品はパック詰めして出荷に備える。
【0003】
ダイコンをすり下ろすと、辛み前駆体にミロシナーゼが作用し、辛み物質を生成する。しかし、この辛み物質((E)−4−メチルチオ−3−ブテニルイソチオシアネート)は分解が速く、室温で45から60分で半減するという性質があるといわれている。このため、辛み成分を保持していて、安定した風味を有し、薬味食品として十分通用できるカイワレ大根の開発が望まれている。
【0004】
希少糖について説明する。「希少糖」とは、自然界に微量にしか存在しない単糖と定義づけることができる。自然界に多量に存在する単糖は、D−グルコース、D−フラクトース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−リボース、D−キシロース、L−アラビノースの7種類あり、それ以外の単糖は、自然界における存在量が少なく希少糖に分類することができる(特許文献1)。また、糖アルコールは単糖を還元してできるが、自然界にはD−ソルビトールおよびD−マンニトールが比較的多いが、それ以外のものは量的には少ないので、これらも本発明に従う希少糖と定義される。これらの希少糖は、これまで入手が困難であったが、自然界に多量に存在する単糖から希少糖を生産する方法が開発されつつあり、その技術を利用して製造することができる。
最も有名なキシリトールは、未利用資源の木質から生産できるD−キシロースを還元することで容易に生産できる。
【0005】
希少糖のうち、現在大量生産ができているD−プシコースという希少糖について説明する。プシコースは、単糖類の中で、ケトン基を持つ六炭糖の一つである。このプシコースには光学異性体としてD体とL体とが有ることが知られている。ここで、D−プシコースは既知物質であるが自然界に希にしか存在しないので、国際希少糖学会の定義によれば「希少糖」と定義されている。D−プシコースは、ケトースに分類されるプシコースのD体であり六炭糖(C6H12O6)である。このようなD−プシコースは、自然界から抽出されたもの、化学的またはバイオ的な合成法により合成されたもの等を含めて、どのような手段により入手してもよい。比較的容易には、例えば、エピメラーゼを用いた手法(例えば、特許文献2参照)により調製されたものでもよい。得られたD−プシコース液は、必要により、例えば、除蛋白、脱色、脱塩などの方法で精製され、濃縮してシラップ状のD−プシコース製品を採取することができ、更に、カラムクロマトグラフィーで分画、精製することにより99%以上の高純度の標品も容易に得ることができる。このようなD−プシコースは単糖としてそのまま利用できるほか、必要に応じて各種の誘導体として用いることも期待される。
【0006】
【特許文献1】国際公開03/97820号公報
【特許文献2】特開平6-125776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させるカイワレ大根の辛み成分増加剤、ならびに、野菜の品種改良とは異なった手段により辛み成分を保持していて、安定した風味を有し、薬味食品として十分通用できるカイワレ大根を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、平成20年3月15日に全国スーパーサイエンスハイスクール(SSH)コンソーシアムによる「希少糖をとおしてみる最新のバイオの世界」研修会の後期プログラムにおいて「第一回希少糖甲子園」を開催した時の成果物に基づく。同一種の植物を培地に加える糖の種類あるいは濃度を変えて成長の速度の違い、生育した植物の形状、味の違いを観察した結果、キシリトールの水溶液で栽培したカイワレダイコンがその他の糖のものよりも辛みが強いということをはじめて発見し、その発見に基づき本発明を完成したものである。
【0009】
本発明は、以下の(1)に記載のカイワレ大根の辛み成分増加剤を提供する。
(1)キシリトールを有効成分とする、カイワレ大根の栽培に用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させるカイワレ大根の辛み成分増加剤。
【0010】
また、本発明は、以下の(2)に記載の辛み成分を増加させたカイワレ大根を提供する。
(2)カイワレ大根の栽培にキシリトールを用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させたカイワレ大根。
【0011】
また、本発明は、以下の(3)〜(5)に記載の辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法を提供する。
(3)発芽したカイワレ大根の種子の播種を行い、キシリトールの水溶液を栽培水及び希釈液肥に加えて栽培,緑化を行うことにより、栽培によって収穫することを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法。
(4)カイワレ大根の種子を、キシリトールの水溶液中に浸漬し、発芽後の種子を播種して前記水溶液を栽培水及び液肥の希釈水として用いて栽培,緑化を行うことにより、栽培によって収穫することを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法。
(5)上記栽培をハウス栽培で行う(3)または(4)のカイワレ大根の栽培方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キシリトールを有効成分とする、カイワレ大根の栽培に用いるカイワレ大根の辛み成分増加剤を提供することができる。
【0013】
本発明によれば、カイワレ大根の栽培水及び希釈液肥にキシリトール水溶液を用いたことにより、辛み成分を増加させたカイワレ大根を比較的短期間で大量に生産することができる。キシリトールを水溶液として液肥に添加するので、キシリトール濃度のコントロールも容易である。
【0014】
また、本発明にかかるカイワレ大根は、キシリトールを水溶液として液肥に添加することがない通常の栽培方法と比べて辛みを増加させることができ、かつ、安定した風味を有し、薬味食品として十分通用できるカイワレ大根を提供することができる。
【0015】
本発明に係るカイワレ大根は辛みが顕著であるため、例えばハウス栽培による大量に生産のみならず、キシリトールを用いる少量生産のカイワレダイコンの育成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】2回目に行った実験の糖による発芽の違いを説明する図面に代わる写真である。
【図2】3回目に行った実験の糖による発芽の違いを説明する図面に代わる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る、カイワレ大根の栽培に用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させるカイワレ大根の辛み成分増加剤、カイワレ大根の栽培にキシリトールを用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させたカイワレ大根、すなわち、発芽した種子を播種して栽培水及び希釈液肥を加えながら栽培、緑化を行って収穫するカイワレ大根において、上記栽培水と、液肥にキシリトール水溶液を加えたことを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根及びその栽培方法の具体的な実施形態を説明する。
まず、カイワレダイコンについて説明する。大根の幼苗を暗黒下にて,もやし状に徒長させた後に,明るい場所で葉を緑化させた商品をカイワレと呼び、これは薬味食品として生産されている。カイワレには辛味成分として4−メチルチオ−3−ブテニルイソチオシアネート( 4-methylthio-3-butenyl-isothiocyanate)を含むが、室温において、60分静置すると半減すると考えられており、分解が早い成分であることが予想される。そのため、辛味成分を保持した状態のカイワレの開発が望まれている。収穫したカイワレに対する食味の官能検査は甘味、酸味、苦味、塩味、旨味、渋味、辛味、えぐ味、コク、キレ、歯応えの項目でなされることが報告されている。本発明では、カイワレの「辛味」について食味の官能検査を実施した。
【0018】
本発明のカイワレ大根は、健康食品の一つとして例えばハウス栽培によってカイワレ大根を生産するに際して、栽培水と液肥にキシリトール水溶液を加えたことによって生育を促進するとともに、辛み成分を増加させたカイワレ大根を得たことを特徴としている。
【0019】
本実施形態にかかるカイワレ大根の製造工程例を説明する。先ず原水として水道水、地下水などを用意し、この水から使用水を作成する。水道水は水道法による水質基準に適合した飲用適の水を指しており、本実施形態では水道水をストレーナで濾過したものを用いる。
【0020】
一方、粉体肥料を用いて溶解工程により液肥原液とし、この液肥原液に使用水及び必要に応じて地下水を加えて希釈液肥を作製する。栽培容器は前記使用水もしくは地下水を用いて洗浄殺菌工程により前処理する。他に播種用のウレタンと梱包用のポット及びフィルムを用意する。
【0021】
上記希釈液肥として、たとえば水1容と液肥原液3容の割合の希釈液肥を用いる。具体的に希釈液肥を作製する例として、使用水を用いる場合には、調整の目安として水20リットルに対して水耕肥料1号を30グラム、水耕肥料2号を20グラム配合することによって好ましい結果が得られる。また、水の給水量が少ないとき及び地下水の水量に応じて該地下水を適宜に添加しても良い。
【0022】
本発明によるカイワレ大根の栽培は、先ず種子を用意し、芽出しを良くするため前記使用水中に種子を6〜8時間程度浸漬する。具体例として、種子の0.8リットルを8リットルの使用水中に7時間浸す。この種子を使用水から引き上げて水洗いしてから水切りを行い、発芽室で1晩寝かす。
【0023】
次に2日目、前記ウレタンと使用水を利用して発芽した種子を播種し、使用水の散水と適量の希釈液肥を与えながら日の当たらない場所で栽培を行い、3日目では日当たりの良い室内、好ましくはハウス内で室温を管理しながら使用水の散水と希釈液肥を施して緑化を行う。そして2日〜3日後収穫する。
【0024】
収穫した製品を予冷してから翌日に使用水を散水後、前記フィルムを用いてポット内にポット詰めを行い、梱包してから冷蔵し、出荷に備える。
【0025】
上記種子を浸漬する使用水として、キシリトールの水溶液を用いることができる。上記栽培水と液肥にキシリトール水溶液を加える場合、各種濃度(0.005〜0.5 M)のキシリトール水溶液を用意しそれらに加え、水耕で育苗して、最適濃度を決定することができる。
【0026】
更に根の発育が良好であるため、使用水の散水と希釈液肥による栽培を行い、室内、好ましくはハウス内で室温を管理しながら緑化を行う際にも使用水の吸収力が良くなり、茎が太くて葉が大きいカイワレ大根が順調に生育する。また、キシリトールの水溶液を加えることで、辛み成分を保持していて、安定した風味を有し、薬味食品として十分通用できるカイワレ大根が得られる。このカイワレ大根は、そのまま食することができることは勿論であるが、保存食として、乾燥しておくこともできる。この乾燥法としては、例えば真空乾燥法を採用することができる。十分に乾燥したカイワレ大根は、真空パック等で包装して保存すればよい。乾燥したカイワレ大根は、そのまま食することも可能であるが、水で戻すことにより、生のカイワレ大根とそれほど差がない味と食感を得ることができる。
【0027】
本発明のキシロースを有効成分とするカイワレ大根の辛み成分増加剤はカイワレダイコンの栽培に通常用いられる水および/または液肥に加える形態で使うことができる。好ましくはキシリトール水溶液および/またはキシリトールを加えた液肥として用いる。液肥にはキシリトール水溶液にして加えることが出来る。
【0028】
本発明において栽培水および/または液肥に加えるキシリトール水溶液に用いるキシリトールは、天然に存在するキシロースに由来する糖アルコールであり、スクロースと同程度の甘味を呈するが、スクロースと比較して代謝されにくい。このため、キシリトールは、臨床的に、例えば、糖尿病および肝疾患患者において、従来のスクロースに代わる低カロリーの甘味料として用いられている。キシリトールはまた、虫歯の原因となりにくいという特徴を有する。このような特徴により、例えば、チューインガム、ソフトドリンク、アイスクリームなどの食品分野での使用が増大している。特に、近年、キシリトールが食品添加物として認可されたことより、食品分野での使用(例えば、低カロリー食品)がより一層期待される。
【0029】
キシリトールは、キシロースを原料として、化学的または生化学的な方法により得られる(例えば、P. NigamおよびD. Singh、Process Biochem., 30(2):117-124 (1995)を参照のこと)。キシリトールの化学的な生産方法として、例えば、ニッケル触媒の存在下、高圧水素によってキシロースを水素化する方法が知られている。キシリトールの生化学的な生産方法において、種々の微生物(例えば、酵母、細菌、および菌類)が用いられる。そのような微生物として、例えば、以下のようなものが知られている:Candida pelliculosa(Kitpreechavanich, V.ら、Biotech. Lett. 6:651-656(1984))、Candida tropicalis(Gong, C.S., Biotechnol. Lett., 3(3):130-135(1983);Hirotsu, H.ら、Botechnol. Bioeng., 40:1085-1091(1992))、Candida guillermondii(Meyrial.V.ら、Biotechnol. Lett., 13:281-286 (1991))などの酵母;Enetrobacter liquifaciens(Yoshitake, J.ら、Agri. Biol. Chem., 40:1493-1503(1976))Mycobacterium smegmatis(Izumori, K.およびTuzaki, K.、J. Ferment. Technol., 66:33-36(1988))などの細菌;およびPetromyces albertensis(Dahiya, J.S.、Can. J. Microbiol., 37:14-18(1991))などの菌類。
【0030】
上記栽培水と、液肥とにキシリトール水溶液を加えた本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
かいわれ大根と糖の関係
[実験内容]
糖は動物にとってエネルギー源である。植物は光合成によって糖をつくるが、光合成を行っていない段階の発芽・成長に糖が影響を及ぼすかどうかに関する関係について実験した。
[実験方法]
(1)用いた糖(濃度:0.2モル/L)
下記の8種類の糖類を用いた。
D-グルコース Sigma市販試薬
D-フルクトース Sigma市販試薬
D-マンノース Sigma市販試薬
D-プシコース D−フルクトースから生産
キシリトール Sigma市販試薬
トレハロース 林原製品
スクロース Sigma市販試薬
デンプン
和光純薬市販試薬
【0032】
(2)実験条件
糖を用いたかいわれ大根の育成と観察
1回目種子を純水に浸水させ、種蒔時に糖の水溶液を与える
2回目種子を糖の水溶液に浸水させ、種蒔時にも糖の水溶液を与える
3回目種子を純水と糖水溶液とに浸水させ、種蒔時に糖の水溶液を与える
【0033】
[結果と考察]
かいわれ大根の成長については、与える糖によってあきらかな違いがみられ、マンノースとプシコースが発芽した数が少なく、発芽してもそこからはあまり成長はしなかった。
2回目に行った実験でも、やはりマンノースとプシコースは発芽せず、キシリトール、フラクトース、グルコース、トレハロースは水に比べてあまり成長しなかった。2回目に行った実験の糖による発芽の違いを図1に示す。1回目および2回目に行った実験の糖による発芽と成長の違いを表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
この結果は、マンノースとプシコースが発芽と成長を明らかに抑制している。この結果は、同じ分子量の単糖であっても植物に与える影響は全くことなることである。
【0036】
D-マンノースとD-グルコースの構造式を比較してみると、化1に示すように炭素2に結合する OH の位置が反対側になっているだけである。分子量も元素の数も全く同じである。このわずかな結合の違いが生物に対して、全く異なる反応として現れていることを示している。
【化1】

【0037】
またD-プシコースとD-フラクトースとについて比較してみると、これもD-マンノースとD-グルコースの場合と同様に同じ分子量で同じ原子の数であるが全く異なる作用を示している。しかしこの二つの構造の違いは、化2に示すように炭素の3番目の OH の結合の方向がことなる。
【化2】

【0038】
すなわち、炭素に結合するこれらの二つの糖による比較によって植物は糖の炭素2のOH の位置も、炭素3のOHの位置の違いも敏感に見分けて反応していることが明確となった。
【0039】
成長阻害しないかいわれ大根についてその味について調べた。その結果、はっきりとした味の差が生じ、キシリトールがとても辛くなっていることを発見した。キシリトールは人には甘くて虫歯にいい甘味料として広く利用されている。それを植物はどのように反応するかについては全く研究が進んでおらず、新しい予想すらできなかった結果である。発芽や成長には影響はほとんど見られないキシリトールがカイワレ大根に与えると辛みを増すという反応を示したのである。
【実施例2】
【0040】
水耕栽培キット
(a)植物の種:かいわれ大根の種
(b)スポンジ:1個の大きさは6.5×6.5×H8mm。6枚
(c)糖:スクロース、グルコース、フルクトース、キシリトール、マンノース
プシコースの6種類
(通常は、糖類の水溶液濃度を1%にして用いた。)
(d)実験の具体的手順(説明書としてキットに添付することができる。)
(1)1日目 タネを水に吸わせる。
水の入ったコップにタネを入れ、6〜8時間おく。
時間が経つとタネが水を吸って大きくふくらんでくる。
(2)2日目 タネをまく。
1) 濃度1%の糖類の水溶液を調製する。
2)スポンジを糖類の水溶液にひたし、その中でぎゅっとにぎってからはなす。糖類の水溶液をたっぷり吸ったスポンジをそのまま皿の上におく。
3)コップの中のタネを茶こしか、キッチンペーパーをしいたザルに入れ、水をきる。タネをスプーンですくい、スポンジの上に重ならないようにおく。タネまきの後は、直接日の光が当たらないところにおく。
次の日には白い根が出てくる。
(3)3〜5日目 糖類の水溶液を添加する。
毎日朝と夕方の1日2回、たっぷり糖類の水溶液を添加する。カイワレダイコンの根がスポンジの中に入るまではきり吹きで、根が入ったらコップで糖類の水溶液を添加する。
芽が出てすぐのカイワレダイコンはうすい黄色。だんだん色が変わってくる。
(4)6日目 日に当てる。
カイワレダイコンが4〜5cmくらいの長さになったら(糖の種類によっては成長しないものもある。)、糖類の水溶液をたっぷりあげて日の当たる明るいところにおく。
半日から1日おくと、葉がひらいて、濃い緑色になる。
(5)7日目 食べて味覚を確認する。
キッチンばさみなどを使って根もとを切る。かるくあらって、食べ比べる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るカイワレ大根は、辛み成分を増加させた薬味食品として十分通用できるカイワレ大根を比較的短期間で大量に生産することができる。
本発明の特徴は、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させる方法として、単純に栽培用の液にキシリトール添加という方法で実現できることである。カイワレ大根の形や根の絡み方を適切なものにするとか、発芽率を上昇するために、栽培に用いるポットの改良や種子の浸漬条件などの物理的条件を改良することは工夫されている。このようなカイワレ大根の生産物の形の改良は、栽培の条件を研究開発されている。一方、本発明はカイワレ大根の形ではなく、その味を、栽培条件を改良することで変化させるというこれまで全く試みられていなかったものである。
さらに特殊な薬品の添加とか、辛み成分の前駆体を添加するとかではなく、甘味料として広く利用されている、安価なキシリトールを添加するのみという画期的な方法である。この方法によって、カイワレ大根の辛み成分の量を増大させることは容易であり、その用途にあったカイワレ大根を生産する方法として産業上極めて重要な成果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトールを有効成分とする、カイワレ大根の栽培に用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させるカイワレ大根の辛み成分増加剤。
【請求項2】
カイワレ大根の栽培にキシリトールを用い、カイワレ大根の生体の中で生産される辛み成分の量を増加させたカイワレ大根。
【請求項3】
発芽したカイワレ大根の種子の播種を行い、キシリトールの水溶液を栽培水および/または希釈液肥に加えて栽培,緑化を行うことにより、栽培によって収穫することを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法。
【請求項4】
カイワレ大根の種子を、キシリトールの水溶液中に浸漬し、発芽後の種子を播種して前記水溶液を栽培水および/または液肥の希釈水として用いて栽培,緑化を行うことにより、栽培によって収穫することを特徴とする辛み成分を増加させたカイワレ大根の栽培方法。
【請求項5】
上記栽培をハウス栽培で行う請求項3または4のカイワレ大根の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−240307(P2009−240307A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62988(P2009−62988)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(506388060)合同会社希少糖生産技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】