説明

農作業機の延長整地板回動装置

【課題】延長整地板が展開された農作業機の移動時に、左右の作業体が障害物等に接触しても損傷する虞のない農作業機の延長整地板回動装置を提供する。
【解決手段】延長整地板回動装置40は、代かき作業機1のシールドカバー27の上方に配設され、第2整地板左29Lの左右一方側から他方側へ回動する連動アーム53と、連動アーム53を回動させる正逆回転用モータと、連動アーム53の先端部と延長整地板左30Lとの間に接続されて屈曲自在な連結体60と、モータの作動を制御して連動アーム53を回動させるモータ制御装置70とを備える。モータ制御装置70は、連動アーム53を回動させて延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動すると、延長整地板左30Lを展開位置Ptから上方へ回動させない連動アーム53の回動範囲W内に連動アーム53を回動させて、連動アーム53に繋がる連結体60を弛ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘ロータの耕耘幅より広い幅に亘って圃場の表面を平らに整地可能な延長整地板を格納位置と展開位置との間で回動させる農作業機の延長整地板回動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような延長整地板回動装置は、例えば、特許文献1に記載されているように、代かき用の耕耘作業機に設けられている。この耕耘作業機は、走行機体の後部に装着されて走行機体の走行とともに進行して代かき作業を行うものであり、耕耘ロータの後方に位置して上下方向に回動自在に接続されて耕耘ロータにより耕耘された耕土を整地する整地板(文献では第2延長整地板)と、この整地板の幅方向端部に前後方向に延設された支軸を中心として回動自在に支持された延長整地板(文献では延長補助整地板)とを有して構成されている。
【0003】
延長整地板回動装置は、耕耘ロータの上部を覆うカバー体(文献ではシールドカバー)上に設置されている。延長整地板回動装置は、カバー体に取り付けられた台座上に設けられた正逆回転可能なモータと、モータの回転軸に接続された歯車伝動機構と、歯車伝動機構の出力軸に連結されて出力軸とともに回動する回動アームと、台座に臨むシールドカバー上に突設された軸部に回動自在に接続されて回動アームに連結された連動アームと、連動アームと延長整地板との間に接続されたワイヤとを有してなる。
【0004】
この延長整地板回動装置は、モータの回転軸が一方向に回動すると、モータの動力が歯車伝動機構を介して回動アームに伝達されて、回動アームの回動にともなって連動アームを回動させる。その結果、延長整地板はワイヤを介して格納位置から展開位置又は展開位置から格納位置に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の延長整地板回動装置では、延長整地板を展開状態にすると、連動アームが耕耘作業機の幅方向外側に延出した位置に移動し、連動アームと延長整地板との間に繋がる連結体が緊張した状態になる。このため、延長整地板が展開位置に移動した状態のままで、走行機体に対して耕耘作業機が持ち上げ支持されて走行機体が旋回走行又は前進走行したり、耕耘作業中に延長整地板が障害物等に引っ掛かって持ち上げられたりすると、連結体に引っ張り力が作用する。従って、連動アームやこれに接続された歯車伝動機構に大きな負荷が作用して、これらが損傷する虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、延長整地板が展開された状態で農作業機の移動時や耕耘作業中に、延長整地板が障害物等に引っ掛かって持ち上げられて連動アームや歯車伝動機構等が損傷する虞のない農作業機の延長整地板回動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明の農作業機(実施の形態における代かき作業機1)の延長整地板回動装置は、耕耘ロータの上部を覆うカバー部(実施の形態におけるシールドカバー左27L、シールドカバー右27R)の後方に上下方向に回動自在に配設されて耕耘ロータにより耕耘された耕土を整地する整地板(実施の形態における第2整地板左29L、第2整地板右29R)と、該整地板の進行方向に対して左右方向の端部に前後方向に延設された支軸(実施の形態における軸部31)を中心として回動自在に支持された延長整地板(実施の形態における延長整地板左30L、延長整地板右30R)とを備える農作業機において、農作業機のカバー部の上方に配設され、一端部が上下方向に延びる支軸に回動自在に支持されて他端側が整地板の左右一方側から他方側へ回動する連動アームと、該連動アームを回動させるモータ(実施の形態における正逆回転用モータ43)と、連動アームの先端部と延長整地板との間に接続されて屈曲自在な連結体と、モータの作動を制御して連動アームを回動させるモータ制御手段(実施の形態におけるモータ制御装置70)とを備える農作業機の延長整地板回動装置であって、モータ制御手段は、連動アームを他方側に回動させて延長整地板が整地板の左右方向端部の外側に展開する展開位置に移動すると、延長整地板を展開位置から上方へ回動させない連動アームの回動範囲内で該連動アームを一方側へ回動させて、連動アームに繋がる連結体を弛ませることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明に記載の整地板は、カバー部の後部に上下方向に回動自在に配設されて圃場を整地する整地板(実施の形態における第1整地板左28L、第1整地板右28R)を含む。この場合には、本発明に記載の延長整地板は、整地板(実施の形態における第1整地板左28L、第1整地板右28R)の進行方向に対して左右方向の端部に前後方向に延設された支軸を中心として回動自在に支持された延長整地板を含む。
【0010】
また、本願発明のモータ制御手段は、延長整地板が展開位置に移動すると、延長整地板を展開位置から上方へ回動させない連動アームの回動範囲の一方側限界位置より手前側の直近位置に連動アームを回動させることを特徴とする(請求項2)。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる農作業機の延長整地板回動装置によれば、連動アームを回動させるモータのモータ制御手段は、連動アームを他方側に回動させて延長整地板が整地板の左右方向端部の外側に展開する展開位置に移動すると、延長整地板を展開位置から上方へ回動させない連動アームの回動範囲内で該連動アームを一方側へ回動させて、連動アームに繋がる連結体を弛ませることで、延長整地板が展開された状態で農作業機の移動時や耕耘作業中に、延長整地板が障害物等に引っ掛かって持ち上げられて連動アームや歯車伝動機構等が損傷する虞のない農作業機の延長整地板回動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係わる延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は代かき作業機の部分背面図であり、同図(c)は代かき作業機の側面図である。
【図2】この延長整地板回動装置が搭載された代かき作業機の平面図である。
【図3】この延長整地板回動装置が搭載された代かき作業機の側面図である。
【図4】この延長整地板回動装置が搭載された代かき作業機の部分平面図である。
【図5】延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は延長整地板が格納位置にあるときの代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は延長整地板が格納位置にあるときの代かき作業機の部分背面図であり、同図(c)は延長整地板が格納位置にあるときの代かき作業機の側面図である。
【図6】延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は延長整地板が回動時にあるときの代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は延長整地板が回動時にあるときの代かき作業機の部分背面図であり、同図(c)は延長整地板が回動時にあるときの代かき作業機の側面図である。
【図7】延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は延長整地板が展開位置にあるときの代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は延長整地板が展開位置にあるときの代かき作業機の部分背面図であり、同図(c)は延長整地板が展開位置にあるときの代かき作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。先ず、本発明に係る延長整地板回動装置を説明する前に、延長整地板回動装置を搭載する農作業機の一例である代かき作業機について概説する。なお、本実施例では、代かき作業機として、作業機本体の両側に左右の作業体が折り畳み且つ展開可能に設けられたものを例にして説明する。
【0014】
代かき作業機1は、図2(平面図)及び図3(側面図)に示すように、走行機体90の後部に装着されて走行機体90の前進走行とともに進行して代かき作業を行うものであり、機体前進方向に対して左右方向の中央部に配置された作業機本体2と、この左右両端部に上下方向に回動可能に取り付けられた左作業体20L及び右作業体20Rとを備え、作業機本体2、左作業体20L、右作業体20Rによって3分割構造になっている。
【0015】
作業機本体2は、左右方向に延びる主フレーム3を有した機体5の前部に、走行機体90の後部に設けられた図示しない3点リンク連結機構が連結されて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。主フレーム3の左右方向の中央部には前方へ突出する入力軸6aを備えたギアボックス6が設けられ、走行機体90のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して動力が入力軸6aに伝達されるようになっている。
【0016】
主フレーム3の左右両端部には伝動フレーム(チェーンケース)8と側部フレーム9が垂設され、伝動フレーム(チェーンケース)8と側部フレーム9の下部間には多数の耕耘爪を取り付けた耕耘ロータが回転自在に支持されている。主フレーム3内には伝動機構が設けられ、この伝動機構が後述する左作業体20L、右作業体20Rの上部に設けられた主フレーム左21L、主フレーム右21R内の伝動機構と連結されて、入力軸6aに伝達された動力がこれらの伝動機構を介して作業機本体2の耕耘ロータと左作業体20L、右作業体20Rに設けられた耕耘ロータ23に伝達されて、作業機本体2の耕耘ロータと左作業体20L、右作業体20Rに設けられた耕耘ロータ23を所定方向に回転させるように構成されている。
【0017】
伝動フレーム(チェーンケース)8と側部フレーム9の上部間には耕耘ロータの上部を覆うシールドカバー10が設けられている。このシールドカバー10の後端部には、前端部が上下方向に回動自在に取り付けられて後側が斜め下方へ延びる第1整地板11が取り付けられ、第1整地板11の後端部によって耕土表面が平らに整地される。第1整地板11の後端部には、第2整地板12が上下方向に回動自在に取り付けられ、この第2整地板12によって圃場の耕土表面が平らに整地される。
【0018】
作業機本体2の左右両端部には、シールドカバー10の上方位置に前後方向に延びる軸部14が設けられ、この軸部14を中心として左作業体20L、右作業体20Rが上下方向に回動自在に設けられている。作業機本体2と左作業体20L、右作業体20Rの上部間には油圧シリンダ15が設けられ、この油圧シリンダ15の伸縮によって、左作業体20L、右作業体20Rが作業機本体2の上方に折り畳まれる格納位置と、左作業体20L、右作業体20Rが作業機本体2の側方に展開される展開位置Ptとの間を移動する。
【0019】
左作業体20L、右作業体20Rは、左右対称の構造であり、左作業体20Lで説明すると、左右方向に延びる主フレーム左21Lの外側端部にチェーンケース左25Lが垂設され、主フレーム左21Lの内側端部に側部フレーム左26Lが垂設されている。チェーンケース左25Lと側部フレーム左26Lの下部間に耕耘ロータ23が回転自在に支持され、チェーンケース左25Lと側部フレーム左26Lの上部間に耕耘ロータ23の上部を覆うシールドカバー左27Lが設けられている。シールドカバー左27Lの後端部には、第1整地板左28Lが取り付けられ、第1整地板左28Lの後端部に第2整地板左29Lが上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0020】
第1整地板左28L及び第2整地板左29Lは、左作業体20Lの展開姿勢時に、作業機本体2の第1整地板11及び第2整地板12に接合して連結され、左作業体20Lの折り畳み姿勢時には、第1整地板左28L及び第2整地板左29Lが作業機本体2の外端部から離反して第1整地板11及び第2整地板12との接合が解除されるようになっている。
【0021】
第2整地板左29Lの外側端部には、延長整地板左30Lが上下方向に回動自在に設けられている。この延長整地板左30Lは、第2整地板左29Lの左右方向外側端部に前後方向に延設された軸部31を中心として回動して、展開状態時には第2整地板左29Lの外側に延びて第2整地板左29Lの整地作業を補助し、折り畳んだ状態(不使用状態)時には第2整地板左29Lの表面側に折り畳まれて第2整地板左29L上に格納される。
【0022】
軸部31は、図7(a)に示すように、第2整地板左29Lの左右方向左側の上方に前側が第2整地板左29Lの内側に傾いて配設されている。この軸部31に枠部材32の一端側が回動自在に取り付けられ、枠部材32の他端側が延長整地板左30Lの表面側の基部に固定されている。
【0023】
また、第2整地板左29Lの左右方向左端の進行方向後端部と枠部材32の後側の先端部との間には、引っ張りばね33が取り付けられている。この引っ張りばね33は、図7(b)に示すように、延長整地板左30Lが展開位置Ptから格納位置Pk側への回動角度θが増加すると、それに伴って引っ張りばね33は伸長し、回動角度θが略90°になると、引っ張りばね33の伸びは最大となり、回動角度θが略90°を超えると、引っ張りばね33の伸びが漸次小さくなるように構成されている。このため、延長整地板左30Lを格納位置から展開位置Pt側へ回動させると、引っ張りばね33に抗して延長整地板左30Lを回動させる必要があり、回動角度θが略90°を超えると、引っ張りばね33の縮小にともなって延長整地板左30Lは展開位置側に引っ張りばね33に附勢されながら回動する。
【0024】
このような引っ張りばね33が接続された延長整地板左30Lは、左作業体20Lのシールドカバー左27Lの上方に設けられた延長整地板回動装置40によって展開状態又は格納状態にされる。延長整地板回動装置40は、図4に示すように、左作業体20Lのシールドカバー左27Lの左右方向の外側上に取り付けられた台座41と、台座41上に設けられた正逆回転用モータ43と、正逆回転用モータ43の回転軸に取り付けられた動力伝達機構部47と、台座41に臨むシールドカバー27上に回動自在に支持された連動アーム53と、連動アーム53と延長整地板左30Lとの間に接続された連結体60とを有してなる。
【0025】
台座41は、板金等を折り曲げて形成され、モータ等を取り付ける平面部41aと、平面部41aの左右方向両側から下方へ屈曲して延びる脚部41bとを有してなる。脚部41bの下部はボルト42を介してシールドカバー左27Lに着脱可能に取り付けられている。
【0026】
正逆回転用モータ43は、流れる電流の向きによってモータの回転軸が正逆回転するモータ本体部43aを有し、モータ本体部43aには回転軸の回転を減速してトルクを増大させる動力伝達機構部47の一部である減速機構48が一体的に取り付けられている。
【0027】
正逆回転用モータ43は、図示しないブラケットを介して台座41の平面部41a上に取り付けられている。正逆回転用モータ43には遠隔操作用のスイッチ44(図1(a)参照)が電気的に接続され、このスイッチ44は走行機体90の運転席の近くに配置されている。このスイッチ44の操作によって正逆回転用モータ43を駆動及び停止させることができる。
【0028】
減速機構48の出力軸には、ウォームギアが設けられ、このウォームギアに小歯車(ピニオン)が歯合し、この小歯車にこれよりも大径の大歯車50が歯合している。減速機構48と、これらウォームギア、小歯車、大歯車50によって、前述した動力伝達機構部47が構成されている。小歯車及び大歯車50は平面部41aに回転自在に支持されている。小歯車と大歯車50のギア比は、正逆回転用モータ43の回転数と連動アーム53の回動速度から決定される。
【0029】
大歯車50の下面には、図3に示すように、大歯車50の回転軸に同軸上に挿着された連結部材51が取り付けられている。大歯車50の回転軸は作業時において略垂直方向に延びるように配設されている。この連結部材51に連動アーム53がボルト等を介して着脱可能に固定されている。このため、大歯車50が回動すると、連動アーム53は大歯車50と同一方向に且つ略水平方向に回動する。連動アーム53は、連結部材51に接続される円筒部53aと、円筒部53aから延びるアーム本体部53bとを有してなる。
【0030】
円筒部53aの内側には、シールドカバー左27Lに突設されて大歯車50の回転軸と略同軸上に配設された軸部が挿入されて、連動アーム53は安定に回動支持されている。アーム本体部53bは、図4に示すように、棒状に延び、その基部側が直線状に延び先端側が延長整地板左30L側に屈曲している。連動アーム53は、詳細は後述するが、正逆回転用モータ43の駆動を制御するモータ制御装置70(図1(a)参照)によって、連動アーム53の先端側が左作業体20Lの進行方向に対して左右内側方向に延びる位置(図4参照)と、進行方向に対して左右外側方向に延びる位置(図7(a)参照)との間を移動する。
【0031】
連結体60は、伸び縮みがなく屈曲自在なワイヤが用いられる。なお、連結体60はワイヤに限るものではなく、金属製のチェーンや合成樹脂材料製の紐等でもよい。
【0032】
モータ制御装置70は、図1に示すように、スイッチ44のスイッチ操作によって、連動アーム53の先端側が左作業体20Lの進行方向に対して左右内側方向に延びる位置(図4参照)と、進行方向に対して左右外側方向に延びる位置との間を回動するように、正逆回転用モータ43の回転を制御する。なお、前記したように右作業体20Rとは左右対称の構造であり、その動きも左右対称となる。モータ制御装置70は、連動アーム53を時計回りに回動させて延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動すると、延長整地板左30Lを展開位置Ptから上方へ回動させることなく連動アーム53が反時計回りに回動可能な範囲(以下、「回動範囲W」と記す。)のうちの時計回り側の限界位置より手前の直近位置Paに連動アーム53を回動させるように構成されている。この連動アーム53の回動作の詳細については、後述する。
【0033】
なお、モータ制御装置70は、延長整地板左30Lを格納位置から展開位置Ptに移動させる場合、スイッチ44がオン操作され続けているときに連動アーム53を時計回りに回動させ、この状態でスイッチ44がオフ操作されると、連動アーム53を逆方向、即ち反時計回りに回動させるように構成したり、スイッチ44が一回オン操作されると、連動アーム53を時計回りに回動させ、延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動すると正逆回転用モータ43の回転を一旦停止させた後に逆回転させて、連動アーム53を反時計回りに回動させるように構成してもよい。
【0034】
延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動したことを検出する手段としては、正逆回転用モータ43内を流れる電流の電流値が過電流(ロック電流)に対応する電流値を超えると、延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動したと判断したり、正逆回転用モータ43内を流れる電流の交流成分が非検出状態になると、延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動したと判断してもよい。
【0035】
また連動アーム53の回動範囲Wのうちの時計回り側の限界位置の手前側の直近位置Paに連動アーム53が移動したか否かの判断は、連動アーム53が回動範囲Wの時計回り側の限界位置Pbから直近位置Paに移動するまでの時間を予め設定しておき、連動アーム53が時計回り側の限界位置Pbから直近位置側に動きだした時からの時間が予め設定した時間に達すると、連動アーム53が直近位置Paに移動したと判断したり、連動アーム53にポテンショメータを取り付け、連動アーム53が直近位置Paに移動したことをポテンショメータで検出するようにしてもよい。
【0036】
このように構成された延長整地板回動装置40は、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図6(a)、図6(b)、図6(c)、図7(a)、図7(b)、図7(c)に示すように、延長整地板左30Lが第2整地板左29L上に折り畳まれた格納位置Pkにある状態で、正逆回転用モータ43(図4参照)が駆動すると、連動アーム53が時計回り(矢印A方向)に回動して、連動アーム53の向きが左作業体20Lの左右内側方向から左右外側方向へ変わり、延長整地板左30Lが格納位置Pkから回動して展開位置Ptに移動する(図7(a)、図7(b)、図7(c)参照)。
【0037】
ここで、連動アーム53と延長整地板左30Lとの間を繋ぐ連結体60は、連動アーム53の回動時に連結体60を介して延長整地板左30Lを回動させるので、延長整地板左30Lの回動時には緊張した状態になる(図6(b)、図6(c)参照)。また、連動アーム53の回動と同時に延長整地板左30Lを格納位置Pkから展開位置Pt側へ回動させ、また展開位置Ptから格納位置Pk側へ回動させるため、延長整地板左30Lが格納位置Pk及び展開位置Ptに移動したときも、連結体60が緊張するように連動アーム53の位置が設定されている(図5(c)、図7(c)参照)。
【0038】
但し、図7(a)に示すように、連動アーム53の先端の移動軌跡Lは、大歯車50の回転軸50aを中心とした円弧状に形成され、延長整地板左30Lが展開位置Ptに位置した状態で、連結体60が延長整地板左30Lに接続される接続位置Psの上方周辺を通る。このため、連動アーム53の先端が図7(a)に示す進行方向に対して左右外側方向に延びた状態から反時計回り(矢印A方向と反対方向)に回動すると、連動アーム53の先端と連結体60の接続位置Psとの間の距離Rが連動アーム53の回動に伴って小さくなって連結体60を弛ませる連動アーム53の回動範囲Wが存在する。本願発明はこの回動範囲Wを利用したものであり、延長整地板左30Lが展開位置Ptに位置したままで連動アーム53を回動範囲Wの時計回り側の限界位置よりも手前側の直近位置Pa(図1(a)参照)に回動させて、連結体60を最も弛ませるようにした。
【0039】
従って、図1(a)、図1(b)に示すように、延長整地板左30Lが展開位置Ptに移動した状態で、連動アーム53を回動範囲Wの時計回り側の限界位置Pbよりも手前側の直近位置Paに回動させると、走行機体90が代かき作業機1を持ち上げ支持しながら前進旋回又は前進走行し、また代かき作業中(耕耘作業中)においても、障害物等が延長整地板左30Lに接触して延長整地板左30Lが上方へ回動すると、連結体60は弛んでいるので、連結体60を介して連動アーム53が引っ張られる虞はない。また、特に代かき作業中(耕耘作業中)においてはある程度の耕深を保って作業するため、第1整地板左28L及び第2整地板左29Lが上方に持ち上げられており、その分、第2整地板左29Lが相対的に後方に位置することになる。それに伴い、接続されている延長整地板左30Lと連動アーム53との距離が離れることになり、連結体60を介して連動アーム53が引っ張られる可能性が高くなるが、本発明を実施することにより、連動アーム53や延長整地板回動装置40の動力伝達機構部47に大きな負荷が作用する事態を防止することができ、これらが損傷する事態を未然に防止することができる。
【0040】
なお、前述した実施の形態では、左作業体20L、右作業体20Rが作業機本体2に対して折り畳み可能な構造の代かき作業機1を例にしたが、左作業体20L、右作業体20Rを無くし作業機本体2の幅方向端部に延長整地板左30L、延長整地板右30Rを回動自在に取り付けて構成される代かき作業機でもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 代かき作業機(農作業機)
23 耕耘ロータ
27L シールドカバー左(カバー部)
27R シールドカバー右(カバー部)
29L 第2整地板左(整地板)
29R 第2整地板右(整地板)
30L 延長整地板左(延長整地板)
30R 延長整地板右(延長整地板)
31 軸部(支軸)
40 延長整地板回動装置
43 正逆回転用モータ(モータ)
53 連動アーム
60 連結体
70 モータ制御装置(モータ制御手段)
Pa 直近位置
Pt 展開位置
W 回動範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘ロータの上部を覆うカバー部の後方に上下方向に回動自在に配設されて前記耕耘ロータにより耕耘された耕土を整地する整地板と、該整地板の進行方向に対して左右方向の端部に前後方向に延設された支軸を中心として回動自在に支持された延長整地板とを備える農作業機において、
前記農作業機の前記カバー部の上方に配設され、一端部が上下方向に延びる支軸に回動自在に支持されて他端側が前記整地板の左右一方側から他方側へ回動する連動アームと、該連動アームを回動させるモータと、前記連動アームの先端部と前記延長整地板との間に接続されて屈曲自在な連結体と、前記モータの作動を制御して前記連動アームを回動させるモータ制御手段とを備える農作業機の延長整地板回動装置であって、
前記モータ制御手段は、前記連動アームを他方側に回動させて前記延長整地板が前記整地板の左右方向端部の外側に展開する展開位置に移動すると、前記延長整地板を展開位置から上方へ回動させない前記連動アームの回動範囲内で該連動アームを一方側に回動させて、前記連動アームに繋がる連結体を弛ませることを特徴とする農作業機の延長整地板回動装置。
【請求項2】
前記モータ制御手段は、前記延長整地板が展開位置に移動すると、前記延長整地板を展開位置から上方へ回動させない前記連動アームの回動範囲の一方側限界位置よりも手前側の直近位置に前記連動アームを回動させることを特徴とする請求項1に記載の農作業機の延長整地板回動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−187064(P2012−187064A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54404(P2011−54404)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】