説明

農作業機の延長整地板回動装置

【課題】第1整地板が持ち上げられた状態で連動アームの回動時に、延長整地板を作業位置側又は格納位置側へ確実に倒すことができる延長整地板回動装置を提供する。
【解決手段】延長整地板回動装置40は、回転自在に支持された耕耘ロータ23の上部を覆うシールドカバーと、この後方に上下方向に回動自在に配設されて耕耘ロータ23により耕耘された耕土を整地する第2整地板左29Lと、この進行方向に対して左右方向の端部に前後方向に延設された軸部31を中心として回動自在に支持された延長整地板左30Lとを備える代かき作業機1に設けられ、シールドカバーの上方に配設された正逆回転用モータと、略垂直方向に延びてモータからの動力を受けて回動する支軸51に連結されて回動する連動アーム53と、この先端部と延長整地板左30Lとを繋ぐ連結体60とを備える。連動アーム53の基端部は、その回動中心軸線が進行方向前側に傾いた状態で支軸51に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘ロータの耕耘幅より広い幅に亘って圃場の表面を平らに整地可能な延長整地板を格納位置と展開位置との間で回動させる農作業機の延長整地板回動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような延長整地板回動装置は、例えば、特許文献1に記載されているように、代かき用の耕耘作業機に設けられている。この耕耘作業機は、走行機体の後部に装着されて走行機体の走行とともに進行して代かき作業を行うものであり、耕耘ロータの上部を覆うシールドカバーの後端部に上下方向に回動自在に支持されたエプロン(文献では第1延長整地板)と、エプロンの後端部に上下方向に回動自在に接続されて耕耘ロータにより耕耘された耕土を整地する整地板(文献では第2延長整地板)と、この整地板の幅方向端部に前後方向に延設された支軸を中心として回動自在に支持された延長整地板(文献では延長補助整地板)とを有して構成されている。
【0003】
延長整地板回動装置は、耕耘ロータの上部を覆うカバー体(文献ではシールドカバー)上に設置されている。延長整地板回動装置は、カバー体に取り付けられた台座上に設けられた正逆回転可能なモータと、モータの回転軸に接続された歯車伝動機構と、歯車伝動機構の出力軸に連結されて出力軸とともに回動する回動アームと、台座に臨むシールドカバー上に突設された軸部に回動自在に接続されて回動アームに連結された連動アームと、連動アームと延長整地板との間に接続されたワイヤとを有してなる。
【0004】
この延長整地板回動装置は、モータの回転軸が一方向に回動すると、モータの動力が歯車伝動機構を介して回動アームに伝達されて、回動アームの回動にともなって連動アームを回動させる。その結果、延長整地板はワイヤを介して格納位置から展開位置又は展開位置から格納位置に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の延長整地板回動装置では、連動アームが略水平方向に回動するので、耕耘作業機の移動時や耕耘作業時において、エプロンが持ち上げられると、ワイヤが接続された連動アームの先端部とワイヤが接続された延長整地板の取付位置が接近する。この状態で連動アームを回動させて、延長整地板を作業位置側又は格納位置側へ回動させると、エプロンが持ち上げられる前の状態と比較して、延長整地板に作用するワイヤの引っ張り力の垂直方向成分が小さくなる。このため、延長整地板回動装置を作動させても、延長整地板が作業位置側又は格納位置側へ倒れにくくなる虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、エプロンを持ち上げた状態で連動アームを回動させても、延長整地板を作業位置側又は格納位置側へ確実に倒すことができる農作業機の延長整地板回動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明の農作業機(実施の形態における代かき作業機1)の延長整地板回動装置は、回転自在に支持された耕耘ロータの上部を覆うカバー部(実施の形態におけるシールドカバー左27L、シールドカバー右27R)と、該カバー部の後方に上下方向に回動自在に配設されて耕耘ロータにより耕耘された耕土を整地する整地板(実施の形態における第2整地板左29L、第2整地板右29R)と、該整地板の進行方向に対して左右方向の端部に前後方向に延設された支軸(実施の形態における軸部31)を中心として回動自在に支持された延長整地板(実施の形態における延長整地板左30L、延長整地板右30R)とを備える農作業機において、カバー部の上方に配設されたモータ(実施の形態における正逆回転用モータ43)と、略垂直方向に延びてモータからの動力を受けて回動する支軸(実施の形態における支軸51)に連結されて回動する連動アームと、連動アームの先端部と延長整地板とを繋ぐ連結体とを備えた農作業機の延長整地板回動装置であって、連動アームの基端部は、その回動中心軸線が進行方向前側に傾いた状態で支軸(実施の形態における支軸51)に連結されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
また本発明は、支軸の下部にフランジ状の接続部(実施の形態におけるフランジ部51b)を設け、連動アームの基端部には、支軸の接続部に接続されるフランジ状の接続部材(実施の形態におけるフランジ部53c)が設けられ、接続部材は、連動アームの基端部の回動中心軸線が進行方向前側に傾いた状態で支軸(実施の形態における支軸51)に接続されていることを特徴とする(請求項2)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる農作業機の延長整地板回動装置によれば、連動アームの基端部は、その回動中心軸線が進行方向前側に傾いた状態で、略垂直方向に延びてモータからの動力を受けて回動する支軸に連結されることで、エプロンを持ち上げた状態で、連動アームを回動させても延長整地板を作業位置側又は格納位置側へ確実に倒すことができる農作業機の延長整地板回動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係わる延長整地板回動装置が搭載された代かき作業機の側面図を示す。
【図2】この延長整地板回動装置が搭載された代かき作業機の背面図を示す。
【図3】代かき作業機に搭載された延長整地板回動装置の内部構造を説明するための代かき作業機の部分平面図である。
【図4】延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は延長整地板が格納位置にあるときの代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は延長整地板が格納位置にあるときの代かき作業機の部分背面図である。
【図5】延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は延長整地板が回動時にあるときの代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は延長整地板が回動時にあるときの代かき作業機の部分背面図である。
【図6】延長整地板回動装置の作動を説明するための図であり、同図(a)は延長整地板が展開位置にあるときの代かき作業機の部分平面図であり、同図(b)は延長整地板が展開位置にあるときの代かき作業機の部分背面図である。
【図7】本発明の延長整地板回動装置と比較対象となる延長整地板回動装置との作動の相違を説明するための模式図を示す。
【図8】本発明と比較対象となる延長整地板回動装置の作動を説明するための代かき作業機の部分背面図であり、同図(a)は延長整地板が格納位置にあるときの代かき作業機の部分背面図であり、同図(b)は延長整地板が回動時にあるときの代かき作業機の部分背面図であり、同図(c)は延長整地板が展開位置にあるときの代かき作業機の部分背面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係わる延長整地板回動装置が搭載されて第1整地板左が持ち上げられた状態の代かき作業機の側面図を示す。
【図10】エプロンが持ち上げられた代かき作業機において、本発明の延長整地板回動装置と比較対象となる延長整地板回動装置との作動の相違を説明するための模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。先ず、本発明に係る延長整地板回動装置を説明する前に、延長整地板回動装置を搭載する農作業機の一例である代かき作業機について概説する。なお、本実施例では、代かき作業機として、作業機本体の両側に左右の作業体が折り畳み且つ展開可能に設けられたものを例にして説明する。
【0013】
代かき作業機1は、図1(側面図)及び図2(背面図)に示すように、走行機体90の後部に装着されて走行機体90の前進走行とともに進行して代かき作業を行うものであり、機体前進方向に対して左右方向の中央部に配置された作業機本体2と、この左右両端部に上下方向に回動可能に取り付けられた左作業体20L及び右作業体20Rとを備え、作業機本体2、左作業体20L、右作業体20Rによって3分割構造になっている。
【0014】
作業機本体2は、左右方向に延びる主フレーム3を有した機体5の前部に、走行機体90の後部に設けられた図示しない3点リンク連結機構が連結されて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。主フレーム3の左右方向の中央部には前方へ突出する入力軸6aを備えたギアボックス6が設けられ、走行機体90のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して動力が入力軸6aに伝達されるようになっている。
【0015】
主フレーム3の左右両端部には伝動フレーム(チェーンケース)8と側部フレーム9が垂設され、伝動フレーム(チェーンケース)8と側部フレーム9の下部間には多数の耕耘爪を取り付けた耕耘ロータが回転自在に支持されている。主フレーム3内には伝動機構が設けられ、この伝動機構が後述する左作業体20L、右作業体20Rの上部に設けられた主フレーム左21L、主フレーム右21R内の伝動機構と連結されて、入力軸6aに伝達された動力がこれらの伝動機構を介して作業機本体2の耕耘ロータと左作業体20L、右作業体20Rに設けられた耕耘ロータ23に伝達されて、作業機本体2の耕耘ロータと左作業体20L、右作業体20Rに設けられた耕耘ロータ23を所定方向に回転させるように構成されている。
【0016】
伝動フレーム(チェーンケース)8と側部フレーム9の上部間には耕耘ロータの上部を覆うシールドカバー10が設けられている。このシールドカバー10の後端部には、前端部が上下方向に回動自在に取り付けられて後側が斜め下方へ延びる第1整地板11が取り付けられ、第1整地板11の後端部によって耕土表面が平らに整地される。第1整地板11の後端部には、第2整地板12が上下方向に回動自在に取り付けられ、この第2整地板12によって圃場の耕土表面が平らに整地される。
【0017】
作業機本体2の左右両端部には、シールドカバー10の上方位置に前後方向に延びる軸部14が設けられ、この軸部14を中心として左作業体20L、右作業体20Rが上下方向に回動自在に設けられている。作業機本体2と左作業体20L、右作業体20Rの上部間には油圧シリンダ15が設けられ、この油圧シリンダ15の伸縮によって、左作業体20L、右作業体20Rが作業機本体2の上方に折り畳まれる格納位置Pk(図4(b)参照)と、左作業体20L、右作業体20Rが作業機本体2の側方に展開される展開位置Ptとの間を移動する。
【0018】
左作業体20L、右作業体20Rは、左右対称の構造であり、左作業体20Lで説明すると、左右方向に延びる主フレーム左21Lの外側端部にチェーンケース左25Lが垂設され、主フレーム左21Lの内側端部に側部フレーム左26Lが垂設されている。チェーンケース左25Lと側部フレーム左26Lの下部間に耕耘ロータ23が回転自在に支持され、チェーンケース左25Lと側部フレーム左26Lの上部間に耕耘ロータ23の上部を覆うシールドカバー左27Lが設けられている。シールドカバー左27Lの後端部には、第1整地板左28Lが取り付けられ、第1整地板左28Lの後端部に第2整地板左29Lが上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0019】
第1整地板左28L及び第2整地板左29Lは、左作業体20Lの展開姿勢時に、作業機本体2の第1整地板11及び第2整地板12に接合して連結され、左作業体20Lの折り畳み姿勢時には、第1整地板左28L及び第2整地板左29Lが作業機本体2の外端部から離反して第1整地板11及び第2整地板12との接合が解除されるようになっている。
【0020】
第2整地板左29Lの外側端部には、延長整地板左30Lが上下方向に回動自在に設けられている。この延長整地板左30Lは、第2整地板左29Lの左右方向外側端部に前後方向に延設された軸部31を中心として回動して、展開状態時には第2整地板左29Lの外側に延びて第2整地板左29Lの整地作業を補助し、折り畳んだ状態(不使用状態)時には第2整地板左29Lの表面側に折り畳まれて第2整地板左29L上に格納される。
【0021】
軸部31は、図6(a)に示すように、第2整地板左29Lの左右方向左側の上方に前側が第2整地板左29Lの内側に傾いた状態で配設されている。この軸部31に枠部材32の一端側が回動自在に取り付けられ、枠部材32の他端側が延長整地板左30Lの表面側の基部に固定されている。
【0022】
また、第2整地板左29Lの左右方向左端の進行方向後端部と枠部材32の後側の先端部との間には、引っ張りばね33が取り付けられている。この引っ張りばね33は、図5(b)に示すように、延長整地板左30Lが格納位置から展開位置側への回動角度αが増加すると、それに伴って引っ張りばね33は伸長し、回動角度αが略90°になると、引っ張りばね33の伸びは最大となり、回動角度αが略90°を超えると、引っ張りばね33の伸びが漸次小さくなるように構成されている。このため、延長整地板左30Lを格納位置から展開位置側へ回動させると、引っ張りばね33に抗して延長整地板左30Lを回動させる必要があり、回動角度αが略90°を超えると、引っ張りばね33の縮小にともなって延長整地板左30Lは展開位置側に引っ張りばね33に附勢されながら回動する。
【0023】
このような引っ張りばね33が接続された延長整地板左30Lは、左作業体20Lのシールドカバー左27Lの上方に設けられた延長整地板回動装置40によって展開状態又は格納状態にされる。延長整地板回動装置40は、図3に示すように、左作業体20Lのシールドカバー左27Lの左右方向左側上に取り付けられた台座41と、台座41上に設けられた正逆回転用モータ43と、正逆回転用モータ43の回転軸に取り付けられた動力伝達機構部47と、台座41に臨むシールドカバー27上に回動自在に支持された連動アーム53と、連動アーム53と延長整地板左30Lとの間に接続された連結体60とを有してなる。
【0024】
台座41は、板金等を折り曲げて形成され、モータ等を取り付ける平面部41aと、平面部41aの左右方向両側から下方へ屈曲して延びる脚部41bとを有してなる。脚部41bの下部はボルト42を介してシールドカバー左27Lに着脱可能に取り付けられている。
【0025】
正逆回転用モータ43は、電流の流れる方向によってモータの回転軸が正逆回転するモータ本体部43aを有し、モータ本体部43aには回転軸の回転を減速してトルクを増大させる動力伝達機構部47の一部である減速機構48が一体的に取り付けられている。
【0026】
正逆回転用モータ43は、図示しないブラケットを介して台座41の平面部41a上に取り付けられている。正逆回転用モータ43には遠隔操作用のスイッチ44が電気的に接続され、このスイッチ44は走行機体90の運転席の近くに配置されている。このスイッチ44の操作によって正逆回転用モータ43を駆動及び停止させることができる。
【0027】
減速機構48の出力軸には、ウォームギアが設けられ、このウォームギアに小歯車(ピニオン)が歯合し、この小歯車にこれよりも大径の大歯車50が歯合している。減速機構48と、これらウォームギア、小歯車、大歯車50によって、前述した動力伝達機構部47が構成されている。小歯車及び大歯車50は平面部41aに回転自在に支持されている。小歯車と大歯車50のギア比は、正逆回転用モータ43の回転数と連動アーム53の回動速度から決定される。
【0028】
大歯車50の下面には、図1に示すように、大歯車50の回転軸に同軸上に挿着された支軸51が取り付けられている。支軸51は、大歯車50の回転軸に挿着される軸側円筒部51aと、軸側円筒部51aの下部の周縁部に設けられた環状のフランジ部51bとを有してなる。耕耘作業時において、大歯車50の回転軸は略垂直方向に延び、また軸側円筒部51aのフランジ部51bは略水平方向に延びる。
【0029】
この支軸51に連動アーム53の基部が着脱可能に接続されている。連動アーム53は、支軸51に接続されるアーム側円筒部53aと、アーム側円筒部53aから延びるアーム本体部53bとを有してなる。アーム側円筒部53aの上部の周縁部には環状のフランジ部53cが設けられている。
【0030】
アーム側円筒部53aのフランジ部53cは、支軸51のフランジ部51bに対して傾斜した状態で、これらのフランジ部51b、53c間に挿通されたピン54を介してフランジ部51bに連結されて、連動アーム53が支軸51に接続されている。連動アーム53が支軸51に接続された状態で、アーム側円筒部53aの中心軸線Sは進行方向前側に傾いた状態にある。このため、連動アーム53は、大歯車50の回転軸が回動すると、連動アーム53の先端部が上方に凸の円弧状の移動軌跡L(図7参照)を描くようにして回動する。
【0031】
アーム側円筒部53aの内側には、シールドカバー左27Lに突設されてアーム側円筒部53aの中心軸線と同軸上に配設された軸部が挿入されて、連動アーム53は安定に回動支持されている。アーム本体部53bは、図3に示すように、棒状に延び、その基部側が直線状に延び先端側が延長整地板左30L側に屈曲している。なお、連動アーム53は、正逆回転用モータ43の駆動を制御するモータ制御装置によって、連動アーム53の先端側が左作業体20Lの左右内側方向に延びる位置(図3参照)と、左右外側方向に延びる位置(図6(a)参照)との間を移動する。
【0032】
連結体60は、伸び縮みがなく屈曲自在なワイヤが用いられる。なお、連結体60はワイヤに限るものではなく、金属製のチェーンや合成樹脂材料製の紐等でもよい。
【0033】
このように構成された延長整地板回動装置40は、図4(a)、図4(b)、図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)に示すように、延長整地板左30Lが第2整地板左29L上に折り畳まれた格納位置Pk(図4(a)、図4(b)参照)にある状態で、正逆回転用モータ43(図3参照)が駆動すると、連動アーム53が時計方向(矢印A方向)に回動して、連動アーム53の向きが左作業体20Lの左右内側方向から左右外側方向へ変わり、延長整地板左30Lが格納位置Pkから回動して展開位置Ptに移動する(図6(a)、図6(b)参照)。
【0034】
ここで、連動アーム53の回動にともなう延長整地板左30Lの回動時に、連結体60を介して延長整地板左30Lに作用する力について考える。なお、この力は、連結体60に作用する引っ張り力に該当する。図7は、本発明の延長整地板回動装置40と、これと比較対象となる従来の延長整地板回動装置70によって、連動アーム53、53'を回動させたときに延長整地板左30Lに作用する力F、F'の様子を表した模式図である。
【0035】
従来の延長整地板回動装置70は、図8(a)に示すように、連動アーム53'のアーム側円筒部53'aが、大歯車50(図3参照)の略垂直方向に延びる回転軸と同軸上に配置されて支軸51に接続されている点が、本発明の延長整地板回動装置40と相違する。このため、大歯車50が回動すると、図8(b)、図8(c)に示すように、連動アーム53'は大歯車50と同一方向に且つ略水平方向に回動する。
【0036】
このように、従来の延長整地板回動装置70が作動すると、図7に示すように、連結体60を介して延長整地板左30Lに作用する力F'の向きは、水平方向に対する角度θ'が比較的に小さな角度(図面では約25°)を有した方向になる。これは、延長整地板回動装置70の連動アーム53'の先端の移動軌跡L'が略水平方向に延びるためである。
【0037】
これに対し、本発明に係わる延長整地板回動装置40の連動アーム53の先端の移動軌跡Lは、前述したように上方へ凸の円弧状である。このため、延長整地板左30Lの回動時に、連結体60を介して延長整地板左30Lを回動させるための力Fの向きは、従来の延長整地板回動装置70の対応する力F'の角度θ'よりも大きな角度θを有した方向になる。
【0038】
従って、格納位置から展開位置側に延長整地板左30Lを回動させる場合、力Fのうち延長整地板左30Lを上方へ引き上げるように作用する力Fの垂直方向成分Fvも、従来の延長整地板回動装置70の対応する垂直方向成分Fv'よりも大きくなる。その結果、延長整地板左30Lを格納位置から展開位置側に回動させる場合に、大きな力で延長整地板左30Lを回動させることができ、延長整地板左30Lを展開位置側へ確実に倒すことができる。つまり、従来の延長整地板回動装置70と略同様の構成、スペース(大きさ)でありながら、延長整地板を回動させる力を大きくすることができるという効果もある。なお、延長整地板左30Lを展開位置から格納位置側へ回動させる場合も、延長整地板30を格納位置から展開位置側へ回動させる場合と同様なので、その説明は省略する。
【0039】
また、図9(側面図)に示すように、代かき作業中(耕耘作業中)においては、ある程度の耕深を保って作業するため第1整地板左28L及び第2整地板左29Lが上方へ持ち上げられることになり、第1整地板左28Lが上方へ持ち上げられると、延長整地板回動装置40に対して延長整地板左30Lが上方に接近移動する。このため、図10(模式図)に示すように、従来の延長整地板回動装置70の連結体60を介して延長整地板左30Lに作用する力F'の水平方向に対する角度θ'は、図7に示す角度θ'よりもさらに小さくなる。このため、延長整地板左30Lを展開位置側へ回動時に延長整地板左30Lを上方へ引き上げるための力F'の垂直方向成分Fv'もさらに小さくなり、延長整地板左30Lが展開位置側へ倒れにくくなる虞が生じる。
【0040】
一方、本発明に係わる延長整地板回動装置40では、連動アーム53の先端の移動軌跡Lは上方へ凸の円弧状であるので、連結体60を介して延長整地板左30Lに作用する力Fの角度θは、従来の延長整地板回動装置70の力F'の角度θ'よりも大きくなる。このため、力Fの垂直方向成分Fvも、従来の延長整地板回動装置70の対応する垂直方向成分Fv'よりも大きくなり、延長整地板左30Lを展開位置側へ確実に倒すことができる。
【0041】
なお、前述した実施の形態では、左作業体20L、右作業体20Rが作業機本体2に対して折り畳み可能な構造の代かき作業機1を例にしたが、左作業体20L、右作業体20Rを無くし作業機本体2の幅方向端部に延長整地板左30L、延長整地板右30Rを回動自在に取り付けて構成される代かき作業機でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 代かき作業機(農作業機)
23 耕耘ロータ
27L シールドカバー左(カバー部)
27R シールドカバー右(カバー部)
29L 第2整地板左(整地板)
29R 第2整地板右(整地板)
30L 延長整地板左(延長整地板)
30R 延長整地板右(延長整地板)
40 延長整地板回動装置
43 正逆回転用モータ(モータ)
51 支軸
51b フランジ部(接続部)
53 連動アーム
53c フランジ部(接続部材)
60 連結体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持された耕耘ロータの上部を覆うカバー部と、該カバー部の後方に上下方向に回動自在に配設されて前記耕耘ロータにより耕耘された耕土を整地する整地板と、該整地板の進行方向に対して左右方向の端部に前後方向に延設された支軸を中心として回動自在に支持された延長整地板とを備える農作業機において、前記カバー部の上方に配設されたモータと、略垂直方向に延びて前記モータからの動力を受けて回動する支軸に連結されて回動する連動アームと、前記連動アームの先端部と前記延長整地板とを繋ぐ連結体とを備えた農作業機の延長整地板回動装置であって、
前記連動アームの基端部は、その回動中心軸線が進行方向前側に傾いた状態で前記支軸に連結されていることを特徴とする農作業機の延長整地板回動装置。
【請求項2】
前記支軸の下部にフランジ状の接続部を設け、
前記連動アームの基端部には、前記支軸の接続部に接続されるフランジ状の接続部材が設けられ、
前記接続部材は、前記連動アームの基端部の回動中心軸線が進行方向前側に傾いた状態で前記支軸に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の農作業機の延長整地板回動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−187066(P2012−187066A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54406(P2011−54406)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】