説明

農作業機の連結装置

【課題】耕耘作業機をトラクタに装着する際に、フック部材をロック可能なロック機構部の損傷を防止可能な連結装置を提供する。
【解決手段】連結装置40は、トラクタ90後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結枠41の幅方向両側に配設された係合プレート49の側面に上下方向に回動自在に設けられてヒッチピン26を係止可能なフック部材55がヒッチピン26を係止及び係止解除する位置にフック部材55をロック可能なロック機構部60を備え、フック部材55の回動支点Oを、フック部材55が係止位置にロックされた状態で、ヒッチピン26がフック部材55の先端部に当接する外力の作用方向延長線上に設け、フック部材55の先端部に、外力がフック部材55の先端部に接する接点を通って外力の方向に直交する当接面を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに設けられた三点リンク連結機構に作業機を自動的に連結可能な農作業機の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタの後部に設けられた三点リンク連結機構に連結枠を用いて農作業機を連結する連結装置は、一般的に知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の連結装置は、トラクタの後部に設けられた三点リンク連結機構に連結される連結枠と、連結枠の上部中央位置に設けられたハンガーフックと、連結枠の左右両側部に設けられて三点リンク連結機構に連結され係合プレートと、係合プレートの外側面に上下方向に回動可能に設けられたフック部材と、フック部材をヒッチピンに係止する位置と係止解除する位置にロック可能なロック機構部とを有して構成される。
【0004】
係合プレートは、ハンガーフックに係合された農作業機の前後方向の移動により農作業機の幅方向両側に配置された一対のヒッチピンが嵌合・離脱可能な嵌合孔を有する。フック部材は、回動端部側に上方へ開口してヒッチピンを係止する係合凹部を有している。ロック機構部は、フック部材の回動軸に一端部が接続されて上方へ延びてフック部材の回動を操作する操作レバーと、係合プレートの外側面に張り出して操作レバーをフック部材がヒッチピンに係止する位置と係止解除する位置にロック可能なセレクト板を有してなる。
【0005】
セレクト板には、操作レバーを回動軸の回動方向に案内する直線状の長孔と、長孔の両端部に長孔に対して外側に直角方向に延びて操作レバーを係止するレバー係止部が設けられている。このセレクト板の前側のレバー係止部に操作レバーが位置すると、フック部材が閉じる方向に回動してヒッチピンを係止し、後側のレバー係止部に操作レバーが位置すると、フック部材が開く方向に回動してヒッチピンを係止解除するように構成されている。
【0006】
一方、ヒッチピンが設けられた農作業機のヒッチピンの基部には、農作業機がトラクタに対してトラクタ幅方向にずれた場合でも、ヒッチピンをフック部材側に案内するガイド部材が設けられている。このガイド部材は、円錐台形状を有してヒッチピンと同軸上に配設され、傾斜する面部がヒッチピンの先端側に向いた状態でヒッチピンの基部に設けられている。ガイド部材の外径はヒッチピンのそれよりも大径である。
【0007】
このように構成された連結装置を介して農作業機をトラクタに連結する場合には、操作レバーをレバー係止部の解除位置にロックさせておく。作業機はスタンドで支持した状態でトラクタの後方に置き、トラクタを後退させてハンガーフックに農作業機の前側上部を掛止する。三点リンク連結機構を上昇させると、ハンガーフックに係止された農作業機の前側上部を回動支点として農作業機の下側が前後方向前側に移動して、ヒッチピンが係合プレートに設けられた嵌合孔に入り込む。ここで、農作業機の下側が前後方向前側に移動する際に、ヒッチピンの農作業機幅方向の位置がフック部材に対してずれていると、農作業機の下側の移動に応じてガイド部材の連結枠の下側部分に摺接しながらヒッチピンをフック部材側に案内する。
【0008】
ヒッチピンがフック部材に係止されると、作業者は、操作レバーを解除位置のレバー係止部から係止位置のレバー係止部に切り替える。これにより、フック部材がヒッチピン側に回動してフック部材によってヒッチピンが係止されて、農作業機は連結装置を介してトラクタに連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平2−148210号公報(第5−第8頁、図1、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように農作業機をトラクタに連結する場合には、フック部材を開いた状態にするが、誤ってフック部材を閉じた状態のままで、ハンガーフックに係止された農作業機の前側上部を回動支点として農作業機の下側が前後方向前側に移動すると、ヒッチピン又はガイド部材がフック部材の先端部に形成された傾斜面に当接する。
【0011】
この傾斜面は、フック部材が閉じた状態で上方へ進むに従って連結枠側に傾斜する。このため、傾斜面にヒッチピン又はガイド部材が当接すると、傾斜面に垂直方向を向く外力のうち下方向成分の力がフック部材を開く方向に回動させようとするが、フック部材は操作レバーを介してレバー係止部にロックされているので、フック部材は回動しない。その結果、フック部材に作用する外力は、操作レバーやレバー係止部にも作用して、これらが損傷する虞が生じる。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、農作業機を連結装置を介してトラクタに装着する際に、誤操作によってフック部材を閉じた状態にしても、農作業機を装着する際にロック機構部の操作レバーやレバー係止部が損傷する虞のない農作業機の連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するため、本発明は、トラクタの後部に設けられた三点リンク連結機構に連結される連結枠と、該連結枠のトラクタ幅方向中央上部に設けられたハンガーフックと、ハンガーフックよりも下方の連結枠のトラクタ幅方向両側に配設されて三点リンク連結機構に連結され、農作業機(例えば、実施形態における耕耘作業機1)の幅方向両側に配置された一対のヒッチピンが嵌合・離脱可能な嵌合孔を有した係合プレートと、係合プレートの側面に上下方向に回動自在に設けられ、嵌合孔に嵌合されたヒッチピンを係止可能な係合凹部を有したフック部材と、フック部材に連結されてフック部材がヒッチピンを係止する係止位置と係止解除する解除位置にロック可能なロック機構部を備えた農作業機の連結装置であって、フック部材の回動支点は、ロック機構部によってフック部材が係止位置にロックされた状態で、ハンガーフックに掛止された農作業機が前側に移動時にヒッチピンがフック部材の先端部に当接する外力の作用方向延長線上に設けられ、フック部材の先端部には、外力が先端部に接する接点を通って外力の方向に直交する当接面が設けられていることを構成要件とする。
【0014】
農作業機側に設けられるヒッチピンは、農作業機の幅方向(横方向)に延びたものや上下方向に延びたもののいずれでもよい。このヒッチピンを係止するフック部材は、ヒッチピンが横方向に延びたものの場合には、横方向に延びる回動軸を中心として上下方向に回動自在なものが用いられ、ヒッチピンが縦方向に延びたものの場合には、縦方向に延びる回動軸を中心として前後方向に回動自在なものが用いられる。
【0015】
ロック機構部は、フック部材をヒッチピンに係止する係止位置と係止解除する解除位置にロック可能なものであればよく、作業者が手動で行うものや、アクチュエータによって自動的に行うもののいずれでもよい。
【0016】
ハンガーフックに掛止された農作業機が前側に移動とは、ハンガーフックに掛止された農作業機の前側上部を回動支点として農作業機の下側が前側(トラクタ側)に移動することを意味する。
【0017】
農作業機が前側に移動時にフック部材の先端部に当接するものは、ヒッチピンに限るものではなく、ヒッチピンからフック部材側へ張り出してヒッチピンをフック部材に案内するガイド部材でもよい(請求項2)。ガイド部材は、農作業機が前側に移動時に、ヒッチピンをフック部材側へ案内可能であればよく、具体的には、ガイド部材は、ヒッチピンにヒッチピンと同軸上に取り付けられ、ヒッチピンの先端側又は基端側に進むに従ってヒッチピン側に傾斜する傾斜面を有した円錐台形状のものや、ヒッチピンに取り付けられてトラクタ側に延び前述した傾斜面を有した板状のものでもよい。
【0018】
またフック部材の先端部に設けられた当接面は、ヒッチピン又はガイド部材がフック部材の先端部に当接時に作用する外力が先端部に接する接点を通って外力の方向に直交する方向に延びていることを構成要件とする(請求項1,2)。
【0019】
これにより、農作業機のトラクタへの装着時において、ヒッチピン又はガイド部材が当接する当接面に作用する外力はフック部材の回動支点側に向くので、この外力にはフック部材を回動させる方向成分はない。このため、フック部材が回動することはなく、外力の全てをフック部材の回動支点で受けることができる。従って、農作業機のトラクタへの装着時において、ロック機構部に外力が作用することはなく、ロック機構部の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係わる農作業機の連結装置によれば、ロック機構部によってフック部材が係止位置にロックされた状態で、ハンガーフックに掛止された農作業機が前側に移動時にヒッチピン又はガイド部材がフック部材の先端部に当接する外力の作用方向延長線上にフック部材の回動支点が設けられ、外力が当接するフック部材の先端部には、外力が前記先端部に接する接点を通って外力の方向に直交する当接面が設けられることで、農作業機のトラクタへの装着時において、誤ってフック部材を閉じた状態、つまりロック機構部にてフック部材の回動を阻止する係止位置にロックしていることに気付かずにそのまま装着作業を続けたとしても、ヒッチピン又はガイド部材が当接面に作用する外力はフック部材の回動支点側に向き、この外力にはフック部材を回動させる方向成分はない。このため、フック部材が回動することはなく、外力の全てをフック部材の回動支点で受けることができる。従って、ロック機構部に外力が作用することはなく、ロック機構部の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の農作業機の連結装置を介してトラクタに連結された耕耘作業機の側面図を示す。
【図2】図2(a)は、本発明の農作業機の連結装置が連結されてスタンドによって支持された農作業機の前側斜視図を示し、図2(b)は、同図(a)の矢視IIに相当する取付板に設けられたヒッチピン及びガイド部材の斜視図を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係わる農作業機の連結装置の平面図を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係わる農作業機の連結装置の側面図を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係わる農作業機の連結装置の一部であるロック装置の部分斜視図を示す。
【図6】本発明の一実施形態に係わる農作業機の連結装置の一部であるフック部材の先端部にヒッチピン又はガイド部材が当接時にフック部材に作用する外力とフック部材との関係を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係わる農作業機の連結装置の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。先ず、農作業機の連結装置を説明する前に、連結装置に連結される農作業機の一例である耕耘作業機について説明する。なお、農作業機としては、耕耘作業機の他に、畦塗り機や溝掘り機でもよい。
【0023】
耕耘作業機1は、図1(側面図)及び図2(a)(前側斜視図)に示すように、トラクタ90の後部に装着され、トラクタ90の前進走行とともに進行して耕耘作業を行うものである。耕耘作業機1は、進行方向に対して左右方向(以下、単に「左右方向」と記す)に延びる本体フレーム10を有する。本体フレーム10の左右方向両側には伝動ケース11及びサポートフレーム13が設けられ、これらの下側間に耕耘ロータ15が回転自在に支持されている。
【0024】
本体フレーム10の左右方向中央部にはトラクタ90からの動力を入力する入力軸19aを備えたギヤボックス19が設けられ、トラクタ90から取り出された動力はユニバーサルジョイント等を介して入力軸19aに伝達される。入力軸19aに伝達された動力は、本体フレーム10及び伝動ケース11内に設けられた動力伝達機構を介して耕耘ロータ15を回転させる。
【0025】
耕耘ロータ15の上方にはシールドカバー17が配設され、シールドカバー17の進行方向に対して前後方向(以下、単に「前後方向」と記す。)における後端部には前端部が回動自在に取り付けられて後側が斜め後方へ延びるエプロン21が設けられている。エプロン21の幅方向両側には上下方向に回動自在に取り付けられた延長整地板22が設けられている。
【0026】
ギヤボックス19を中央にして本体フレーム10の左右方向両側には、本体フレーム10に基端側が固着されて前方側に延び先端部がシールドカバー17の前端部から突出する一対の取付板24が設けられている。これらの取付板24の各先端部には、基端側が固着されて本体フレーム幅方向外側へ略水平方向に延びる一対のヒッチピン26が設けられている。これらのヒッチピン26は、トラクタ90の後部に取り付けられる連結装置40に連結される。
【0027】
ヒッチピン26の基端部側には、図2(b)(斜視図)を更に追加して説明すると、耕耘作業機1がトラクタ90に対してトラクタ幅方向にずれた場合、ヒッチピン26をフック部材側に案内するガイド部材35が設けられている。このガイド部材35は、円錐台形状を有してヒッチピン26と略同軸上に配設され、ガイド部材35の軸方向中間部にはヒッチピン26の先端側に進むに従ってヒッチピン側に傾く案内面35aが設けられている。
【0028】
この案内面35aの取付板側端部には円弧状の周面35bが形成されている。案内面35aの取付板側端部の直径(周面35bの直径)はヒッチピン26のそれよりも大径である。このため、耕耘作業機1がトラクタ90に対してトラクタ幅方向にずれた場合、案内面35aが連結装置40の後述する連結枠41の下端部に接触してヒッチピン26をフック部材側に案内することができる。
【0029】
ヒッチピン26には、後述するフック部材55の係合凹部内へのヒッチピン26の挿入をし易くするため、ヒッチピン26の外周面にガイドカラー27が挿着されている。このガイドカラー27はヒッチピン26に対して回動自在に取り付けられている。なお、ガイドカラー27はヒッチピン26に固着された状態で取り付けられてもよい。
【0030】
ギヤボックス19の上部には、前方側であって斜め上方へ延びるトップマスト28が設けられている。このトップマスト28の上端部には略水平方向に延びる係止ピン28aが設けられ、係止ピン28aの両端部は、トップマスト28の上端部左右両側面から突出している。この突出した部分の係止ピン28aが後述する連結装置40に連結される。連結装置40を介してトラクタ90の後部に連結された耕耘作業機1は、三点リンク連結機構91の上下方向の揺動によってトラクタ90の後部に対して昇降可能である。
【0031】
三点リンク連結機構91は、トラクタ後部の幅方向中央部に基端部が回動自在に取り付けられて後方側へ延びるトップリンク92と、トラクタ後部の幅方向両側に基端部が回動自在に取り付けられて後方側へ延びる一対のロアリンク93と、トラクタ後部に設けられロアリンク93に連結されて三点リンク連結機構91を昇降させる昇降シリンダ(図示せず)を有してなる。
【0032】
一対の取付板24の各先端部には本体フレーム幅方向外側へ延びる支持フレーム30が設けられている。この支持フレーム30の基端部側には、高さ調節可能に取り付けられた一対のゲージ輪32が設けられ、支持フレーム30の先端部側には、支持フレーム30に着脱可能に挿着されるキャスタスタンド34が設けられている。支持フレーム30にキャスタスタンド34を挿着することで、耕耘作業機1をトラクタ90から離した状態で格納等することができる。なお、図1は、キャスタスタンド34が取り外された耕耘作業機1がトラクタ90に装着された状態を示している。
【0033】
連結装置40は、図3(平面図)、図4(側面図)に示すように、三点リンク連結機構91に連結される連結枠41と、連結枠41のトラクタ幅方向中央上部に設けられたハンガーフック45と、ハンガーフック45よりも下方の連結枠41のトラクタ幅方向両側に配設された係合プレート49と、係合プレート49の外側の側面に上下方向に回動自在に設けられたフック部材55と、フック部材55に連結されてフック部材55をヒッチピン26に係止する係止位置Prと係止解除する解除位置Pfにロック可能なロック機構部60とを有してなる。
【0034】
連結枠41は、上方へ突出してハ字状に形成された枠体である。連結枠41の頂部41aにはハンガーフック45が設けられている。ハンガーフック45は、連結枠41の頂部41aに所定間隔を有して対向配置された一対の板部材46からなる。板部材46は頂部41aからトラクタ側に向かって斜め上方へ延びる連結部46aと、頂部41aから耕耘作業機側に向かって斜め下方へ延びるフック部46bとを有してなる。フック部46bには、係止ピン28a(図1参照)を掛止可能な下側に延びる係合凹部46cが設けられている。
【0035】
連結部46aには、上下方向に所定間隔を有して複数の貫通孔46dが設けられている。これらの貫通孔46dは、対向配置された他の板部材46に設けられた複数の貫通孔46dの対応する貫通孔46dと対向している。対向する一対の板部材46間に三点リンク連結機構91を構成するトップリンク92の先端部を配置し、対向配置された一対の貫通孔46dとトップリンク92の先端部に設けられた貫通孔に係止ピン28a(図1参照)を挿通することで、トップリンク92の先端部がハンガーフック45に回動自在に取り付けられる。
【0036】
連結枠41のトラクタ幅方向両側に配設された係合プレート49は、側面視において略矩形状をなし、その前側下部が連結枠41に固着されている。係合プレート49の前側下部には、外側へ突出する係止ピン49bが設けられ、この係止ピン49bにロアリンク93の先端部が回動自在に取り付けられている。
【0037】
係合プレート49の後側には、耕耘作業機1の幅方向両側に配置された一対のヒッチピン26を嵌合・離脱可能な嵌合孔49aが設けられている。この嵌合孔49aは、前後方向に延びて後端側が開口し、嵌合孔49aの開口部は外側に拡開してヒッチピン26の嵌合孔49aへの挿入を容易にしている。一対の係合プレート49は、これらの内側間に連結された連結部材50によって補強されている。
【0038】
係合プレート49の外側面にはフック部材55が上下方向に回動自在に設けられている。フック部材55は、側面視において半円状に形成され、フック部材55の前側下部が係合プレート49に突設された係合ピン51に回動自在に取り付けられている。このため、フック部材55は係合ピン51を回動支点Oとして上下方向に回動自在である。フック部材55の後側下部には、嵌合孔49aに挿入されたヒッチピン26を上方から係止可能な係合凹部56が設けられている。係合凹部56は、フック部材55の後側下部に開口している。フック部材55の詳細については後述する。
【0039】
フック部材55の内面と係合プレート49の外側面との間には、フック部材55を嵌合孔49aに挿入されたヒッチピン26側(時計方向)に附勢するねじりコイルばね58が設けられている。
【0040】
これらのフック部材55には、ヒッチピン26を係止する係止位置Prと係止解除する解除位置Pfにロック可能なロック機構部60が設けられている。ロック機構部60は、両端部が対応するフック部材55に回動自在に連結された連結部材61と、連結部材61の頂部に固着された操作レバー62と、操作レバー62の操作に応じてフック部材55がヒッチピン26を係止する係止位置Prと係止解除する解除位置Pfにフック部材55が維持されるように操作レバー62の移動をロックするレバー係止板64を有してなる。
【0041】
ロック機構部60の連結部材61は、連結枠41に沿って延びて正面視ハ字状に形成されている。連結部材61の上側は連結枠41の外側を通って連結枠前方に延び、連結部材61の頂部は連結枠41の上部近傍位置に配置されている。操作レバー62は、図5に示すように、下端部が連結部材61の頂部に固着されて上方へ延びるレバー支持部62aと、レバー支持部62aの上端部に繋がって左右方向一方側に屈曲して延びて先端部に把手部62cが設けられたレバー操作部62bを有してなる。
【0042】
レバー支持部62aの上部には、この側面に固着されて側面に沿って延びる係止突出部63が設けられている。係止突出部63の下端部が後述するレバー係止板64上に当接して、操作レバー62の下方への移動をロックする。
【0043】
レバー操作部62bの基端側には、上下方向に回動自在に挿着されたフックばね70が設けられている。このフックばね70は、線条体を折り曲げて枠状に形成され、一端側が開口している。フックばね70の開口側の端部はレバー操作部62bの基端側に設けられた孔部62dに挿入されて回動自在に支持され、フックばね70の先端側は屈曲してレバー係止板64に設けられた突出部65に係止可能な係止部70aが形成されている。このフックばね70の係止部70aをレバー係止板64に係止させると、レバー係止板64に対する操作レバー62の上方への移動を規制することができる。
【0044】
レバー係止板64は、連結枠41の頂部41aの前側に取り付けられ、前後方向に延びる操作板部66を有している。操作板部66には操作レバー62のレバー支持部62a及び係止突出部63を挿通可能なセレクト孔67が設けられている。セレクト孔67は、一端側が平面視矩形状に形成された矩形状孔部67aと、矩形状孔部67aの他端側に繋がって連通して平面視円弧状に形成された円弧状孔部67bを有してなる。円弧状孔部67bは矩形状孔部67aの幅方向一方側にずれて設けられている。このため、円弧状孔部67bの他方側端部を超えた操作板部には、操作レバー62のレバー支持部62aを円弧状孔部67bに位置させた状態で係止突出部63の下面を当接可能な当接面部66aが形成されている。
【0045】
レバー係止板64の幅方向一方側の端部であってセレクト孔67の側方に、フックばね70の係止部70aを係止する前述した突出部65が設けられている。
【0046】
このように構成されたロック機構部60及びフック部材55の作用を、耕耘作業機1をトラクタ90に装着する場合とトラクタ90から取り外す場合に分けて図4及び図5に基づいて説明する。耕耘作業機1をトラクタ90に装着するには、装着前にフックばね70を起こしてレバー係止板64に対するフックばね70のロック状態を解除し、操作レバー62を引き上げて操作レバー62の係止突出部63を当接面部66aに引っ掛けると、フック部材55はヒッチピン26を係止解除する開いた状態の解除位置Pfに移動する。
【0047】
そしてトラクタ90を耕耘作業機側に近づけ、ハンガーフック45にトップマスト28を掛止し、三点リンク連結機構91を上方へ揺動させて耕耘作業機1を持ち上げる。耕耘作業機1が持ち上げられると、ハンガーフック45に掛止された耕耘作業機1の前側上部を回動支点として耕耘作業機1の下側がトラクタ側に移動して、ヒッチピン26が嵌合孔49aに挿入される。
【0048】
ヒッチピン26が嵌合孔49aに挿入されたことを確認後、操作レバー62を引き上げて操作レバー62の係止突出部63を当接面部66aから外し、レバー支持部62aを円弧状孔部67bに移動させた状態で操作レバー62を押し下げる。操作レバー62が押し下げられると、ねじりコイルばね58の附勢と相まってフック部材55はその回動支点Oを中心として嵌合孔49aに挿入されたヒッチピン26側(時計方向)に回動し、係合凹部56内にヒッチピン26が挿入されて、フック部材55はヒッチピン26を係止する閉じた状態の係止位置Prに移動し、耕耘作業機1は連結装置40を介してトラクタ90に装着される。
【0049】
ヒッチピン26が係止されたことを確認すると、フックばね70を下方に回動させてレバー係止板64に対してロック状態にして、不用意にヒッチピン26がフック部材55から外れる事態を防止する。
【0050】
一方、耕耘作業機1をトラクタ90から外す場合には、三点リンク連結機構91によって耕耘作業機1を持ち上げてから、フックばね70を起こしてロック状態を解除する。そして、操作レバー62を引き上げて操作レバー62の係止突出部63を当接面部66aに引っ掛けると、フック部材55は開いた状態の解除位置Pfに移動する。この状態で、三点リンク連結機構91によって耕耘作業機1を下げると、ヒッチピン26は、嵌合孔49aから抜脱されるとともに、トップマスト28がハンガーフック45から外れて、耕耘作業機1はトラクタ90から外れる。
【0051】
このようにヒッチピン26を係止及び係止解除するフック部材55の回動支点Oは、図1及び図6(側面図)を用いて説明すると、ロック機構部60(図4参照)によってフック部材55が係止位置Prにロックされた状態において、耕耘作業機1の上側がハンガーフック45に掛止された位置を回動支点Qとして耕耘作業機1の下側が連結枠41側への移動時にヒッチピン26又はガイド部材35がフック部材55の先端部に当接する外力Fの作用方向延長線上に設けられている。
【0052】
またヒッチピン26又はガイド部材35が当接するフック部材55の先端部には、外力Fが先端部に接する接点Sを通って外力Fの方向に直交する当接面55aが設けられている。
【0053】
これにより、耕耘作業機1のトラクタ90への装着時において、フック部材55を解除位置Pfに移動させる操作を忘れてフック部材55が係止位置Prにある状態で、耕耘作業機1の上側がハンガーフック45に掛止された状態で耕耘作業機1の下側が前後方向前側に移動すると、ヒッチピン26又はガイド部材35が当接面55aに当接する。
【0054】
なお、通常、耕耘作業機1をトラクタ90に装着する場合、この装着作業は設置場所が平坦なところで行われる。この場合、耕耘作業機1の上側がハンガーフック45に掛止された状態において、ヒッチピン26及びガイド部材35のトラクタ幅方向の位置は、トラクタ90に対して殆どずれていない。従って、耕耘作業機1の下側を連結枠41側へ移動させると、ガイド部材35がフック部材55に当接することはなく、ヒッチピン26がフック部材55に当接する。
【0055】
一方、耕耘作業機1の設置場所が平坦でない所で装着作業が行われる場合には、耕耘作業機1の上側がハンガーフック45に掛止され状態において、ヒッチピン26及びガイド部材35のトラクタ幅方向位置はトラクタ90に対してずれ、耕耘作業機下側の前後方向前側への移動時に、ヒッチピン26よりも大径のガイド部材35がフック部材55に当接する。
【0056】
ここで、ヒッチピン26又はガイド部材35が当接面55aに当接する際に作用する外力Fの方向はフック部材55の回動支点側に向くので、この外力Fはフック部材55を回動させる方向成分を有さない。このため、フック部材55が回動することはなく、外力Fの全てをフック部材55の回動支点となる係合ピン51で受けることになる。従って、フック部材55に接続されたロック機構部60に外力が作用しないので、ロック機構部60が損傷する虞はない。
【符号の説明】
【0057】
1 耕耘作業機(農作業機)
26 ヒッチピン
35 ガイド部材
40 連結装置
41 連結枠
45 ハンガーフック
49 係合プレート
49a 嵌合孔
55 フック部材
55a 当接面
56 係合凹部
60 ロック機構部
90 トラクタ
91 三点リンク連結機構
F 外力
Pf 解除位置
Pr 係止位置
S 接点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に設けられた三点リンク連結機構に連結される連結枠と、該連結枠のトラクタ幅方向中央上部に設けられたハンガーフックと、
前記ハンガーフックよりも下方の前記連結枠のトラクタ幅方向両側に配設されて前記三点リンク連結機構に連結され、前記農作業機の幅方向両側に配置された一対のヒッチピンが嵌合・離脱可能な嵌合孔を有した係合プレートと、
前記係合プレートの側面に上下方向に回動自在に設けられ、前記嵌合孔に嵌合されたヒッチピンを係止可能な係合凹部を有したフック部材と、
前記フック部材に連結されて前記フック部材が前記ヒッチピンを係止する係止位置と係止解除する解除位置にロック可能なロック機構部を備えた農作業機の連結装置であって、
前記フック部材の回動支点は、前記ロック機構部によって前記フック部材が前記係止位置にロックされた状態で、前記ハンガーフックに掛止された農作業機が前側に移動時に前記ヒッチピンが前記フック部材の先端部に当接する外力の作用方向延長線上に設けられ、
前記フック部材の先端部には、前記外力が前記先端部に接する接点を通って前記外力の方向に直交する当接面が設けられていることを特徴とする農作業機の連結装置。
【請求項2】
前記ヒッチピンには、前記ヒッチピンから前記フック部材側へ張り出して前記ヒッチピンをフック部材側に案内するガイド部材が設けられ、
前記フック部材の回動支点は、前記ロック機構部によって前記フック部材が前記係止位置にロックされた状態で、前記ハンガーフックに掛止された農作業機が前側に移動時に前記ガイド部材が前記フック部材の先端部に当接する外力の作用方向延長線上に設けられ、
前記当接面は、前記ガイド部材が前記フック部材の先端部に当接する接点を通って前記外力の方向に直交する方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載の農作業機の連結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−4605(P2011−4605A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148182(P2009−148182)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】