説明

農作業機

【課題】適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、中央作業部2と、左右の延長作業部3とを具備する。中央作業部2は、中央機体11と、中央耕耘体12と、中央整地体とを備える。延長作業部3は、延長機体31と、延長耕耘体32と、延長整地体とを備える。中央機体11の左右両側には、耕耘爪23の回転で飛んだ土が延長作業部3側に移動することを規制しかつ耕耘爪43の回転で飛んだ土が中央作業部2側に移動することを規制する土移動規制体61を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な耕耘整地作業ができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結される作業部と、この作業部に設けられ折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる延長作業部とを具備している。
【0004】
また、作業部は、機体と、この機体に回転可能に設けられ回転しながら耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の後方で整地作業をする整地体とを備えている。同様に、延長作業部は、延長機体と、この延長機体に回転可能に設けられ回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体と、この延長耕耘体の後方で整地作業をする延長整地体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−342001号公報(図1、図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の農作業機では、耕耘体にて飛ばされた土が延長作業部側に移動するとともに、延長耕耘体にて飛ばされた土が作業部側に移動するため、圃場面に大きな凹凸が生じやすく、適切な耕耘整地作業ができないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される作業部と、この作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる延長作業部とを具備し、前記作業部は、機体と、この機体に回転可能に設けられ、回転しながら耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の後方で整地作業をする整地体とを備え、前記延長作業部は、延長機体と、この延長機体に回転可能に設けられ、回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体と、この延長耕耘体の後方で整地作業をする延長整地体とを備え、前記機体および前記延長機体の少なくとも一方には、前記耕耘体にて飛ばされた土が前記延長作業部側に移動することを規制しかつ前記延長耕耘体にて飛ばされた土が前記作業部側に移動することを規制する土移動規制体が設けられているものである。
【0009】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、土移動規制体の下端側は、耕耘整地作業時に圃場の土中を移動するものである。
【0010】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、整地体および延長整地体の少なくとも一方には、耕耘体にて飛ばされた土が延長作業部側に移動することを規制しかつ延長耕耘体にて飛ばされた土が作業部側に移動することを規制する整地側土移動規制体が設けられ、前記整地側土移動規制体と土移動規制体とは、耕耘整地作業時に側面視で常に互いに部分的に重なり合うように位置するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機体および延長機体の少なくとも一方には、耕耘体にて飛ばされた土が延長作業部側に移動することを規制しかつ延長耕耘体にて飛ばされた土が作業部側に移動することを規制する土移動規制体が設けられているため、圃場面に大きな凹凸が生じる不具合を防止でき、適切な耕耘整地作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機を示す図である。
【図2】(a)が延長チェーンケース側の図(a矢視図)で、(b)が中央ブラケット側の図(b矢視図)で、(c)が延長ブラケット側の図(c矢視図)である。
【図3】同上農作業機の中央作業部の側面図である。
【図4】同上農作業機の中央作業部の作業時の側面図である。
【図5】同上農作業機の展開平面図である。
【図6】同上農作業機の耕耘部に動力を伝える伝動手段を示す図である。
【図7】同上農作業機の作用説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る農作業機を示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態について図1ないし図7を参照して説明する。
【0014】
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されて使用される耕耘整地作業機(ロータリー)である。つまり、農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、トラクタの走行により進行方向である前方(図4では左方向)に向かって圃場上を移動しながら耕耘整地作業(農作業)をする例えば3分割構造の折畳式作業機である。
【0015】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結され、トラクタ側から動力を受けて耕耘整地作業をする左右方向長手状の作業部である中央作業部2を備えている。
【0016】
また、農作業機1は、中央作業部2の左右方向両端部に回動支点である折畳用軸4を中心として上下方向に回動可能に設けられ、その回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられ、展開作業状態時には中央作業部2側から動力を受けて耕耘整地作業をする左右方向長手状の左右の延長作業部3を備えている。
【0017】
各延長作業部3は、農作業機1の中央部に位置する中央作業部2に対して回動中心軸線Aを中心として上下方向に回動可能であり、一方向(展開方向)への所定角度、例えば略180度の回動により中央作業部2の外側方に位置する展開作業状態となり、この展開作業状態に展開ロック手段5によって解除可能にロックされる。また、各延長作業部3は、一方向とは反対の他方向(折畳方向)への所定角度、例えば略180度の回動により中央作業部2の上方に位置する折畳非作業状態となり、この折畳非作業状態に折畳ロック手段(図示せず)によって解除可能にロックされる。
【0018】
なお、延長作業部3の状態を切り換える際における延長作業部3の回動角度は、例えば150度や90度等でもよい。また、展開ロック手段5は、例えばロックピン6およびこのロックピン6と係合するフック7等にて構成されている。
【0019】
中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結される左右方向長手状の機体である中央機体11と、この中央機体11に回転可能に設けられトラクタ側から動力を受けて回転しながら耕耘作業をする耕耘体である中央耕耘体12と、中央機体11の耕耘カバー部である中央耕耘カバー部15の後端部に水平な左右方向の回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ中央耕耘体12の後方で整地作業をする整地体である中央整地体13とを備えている。
【0020】
中央機体11は、左右方向長手状で円筒状のフレームパイプ部16を有し、このフレームパイプ部16の左右方向中央部にはギアボックス部17が設けられ、このギアボックス部17から入力軸18が前方に向かって突出している。入力軸18は、トラクタのPTO軸(図示せず)に、ユニバーサルジョイントおよび伝動シャフトからなる伝動手段(図示せず)を介して接続される。
【0021】
フレームパイプ部16の長手方向端部である左端部には、箱状の伝動ケース部であるチェーンケース部(中央チェーンケース部)19の上部が取り付けられている。そして、チェーンケース部19と離間対向する鉛直面状で板状のブラケット部(延長ブラケット部)20の上部が中央耕耘カバー部15の長手方向端部である右端部に取り付けられている。つまり、中央耕耘カバー部15のカバー側板15aに、ブラケット部20の上部内面が固着されている。
【0022】
また、中央機体11の中央耕耘カバー部15は、中央耕耘体12の上方部を覆う湾曲板状のカバー本体板15bを有し、このカバー本体板15bの後端部に中央整地体13の上端部が蝶番等を介して回動中心軸線Bを中心として回動可能に取り付けられている。カバー本体板15bの左右方向両端部に鉛直面状のカバー側板15aが設けられている。
【0023】
中央耕耘体12は、チェーンケース部19の下部とブラケット部20の下部とにて回転可能に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸21を有している。回転軸21は、フレームパイプ部16内の伝動シャフト22およびチェーンケース部19内のチェーン24等にて構成された伝動手段から動力を受けて回転する。回転軸21には、この回転軸21とともに回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪23が取り付けられている。
【0024】
中央整地体13は、中央耕耘カバー部15のカバー本体板15bの後端部に回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ中央耕耘体12の後方で整地作業をする中央整地部材(中央均平板)25を有している。つまり、中央整地体13は、1枚板状の中央整地部材25のみで構成されている。そして、中央整地部材25は、左右方向長手状の整地本体板部26と、この整地本体板部26の左右方向両端部に設けられた鉛直面状の側板部27とを有している。
【0025】
延長作業部3は、中央作業部2の中央機体11の左右方向両端部に回動中心軸線Aを中心として上下方向に回動可能に設けられた延長機体31と、この延長機体31に回転可能に設けられ中央作業部2側から動力を受けて回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体32と、延長機体31の耕耘カバー部である延長耕耘カバー部35の後端部に左右方向の回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ延長耕耘体32の後方で整地作業をする延長整地体33とを備えている。
【0026】
延長機体31は、左右方向長手状で円筒状のフレームパイプ部36を有している。フレームパイプ部36の長手方向端部である左端部には、箱状の伝動ケース部であるチェーンケース部(延長チェーンケース部)37の上部が取り付けられている。そして、チェーンケース部37と離間対向する鉛直面状で板状のブラケット部(延長部ラケット部)38の上部が延長耕耘カバー部35の長手方向端部である右端部に取り付けられている。つまり、延長耕耘カバー部35のカバー側板35aに、ブラケット部38の上部内面が固着されている。
【0027】
なお、進行方向右側の延長作業部3の延長機体31のブラケット部38は、進行方向左側の延長作業部3の延長機体31のブラケット部38とは異なり、延長耕耘カバー部35より上方に位置する延長部38aを有し、この延長部38aがフレームパイプ部36の右端部に固着されている。
【0028】
また、延長機体31の延長耕耘カバー部35は、延長耕耘体32の上方部を覆う湾曲板状のカバー本体板35bを有し、このカバー本体板35bの後端部に延長整地体33の上端部が蝶番等を介して回動中心軸線Bを中心として回動可能に取り付けられている。カバー本体板35bの左右方向両端部に鉛直面状のカバー側板35aが設けられている。
【0029】
延長耕耘体32は、チェーンケース部37の下部とブラケット部38の下部とにて回転可能に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸41を有しており、この左右の各回転軸41には回転軸41とともに回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪43が取り付けられている。
【0030】
そして、左側の延長耕耘体32の回転軸41は、延長側のフレームパイプ部36内の伝動シャフト44およびチェーンケース部37内のチェーン45等にて構成された伝動手段から動力を受けて回転する。なお、中央機体11の伝動シャフト22の左端部には一方側クラッチ46が取り付けられ、左側の延長機体31の伝動シャフト44の右端部には一方側クラッチ46と解除可能に接続される他方側クラッチ47が取り付けられている。これら一方側クラッチ46および他方側クラッチ47は、左側の延長作業部3が展開作業状態になった場合に自動的に接続される。
【0031】
また、右側の延長耕耘体32の回転軸41は、中央側のフレームパイプ部16内の伝動シャフト48、チェーンケース部37の上部にて支持されこのチェーンケース部37から内側方に向かって突出する伝動シャフト49、およびチェーンケース部37内のチェーン50等にて構成された伝動手段から動力を受けて回転する。なお、中央機体11の伝動シャフト48の右端部には一方側クラッチ51が取り付けられ、右側の延長機体31の伝動シャフト49の左端部には一方側クラッチ51と解除可能に接続される他方側クラッチ52が取り付けられている。これら一方側クラッチ51および他方側クラッチ52は、右側の延長作業部3が展開作業状態になった場合に自動的に接続される。
【0032】
延長整地体33は、延長耕耘カバー部35のカバー本体板35bの後端部に回動中心軸線Bを中心として上下方向に回動可能に設けられ延長耕耘体32の後方で整地作業をする延長整地部材(延長均平板)55を有している。つまり、延長整地体33は、1枚板状の延長整地部材55のみで構成されている。そして、延長整地部材55は、左右方向長手状の整地本体板部56と、この整地本体板部56の左右方向両端部に設けられた鉛直面状の側板部57とを有している。
【0033】
そして、中央機体11および延長機体31の少なくとも一方、すなわち例えば中央機体11の左右方向両端部には、中央作業部2と展開作業状態の延長作業部3とによる耕耘整地作業時に下端側が圃場の土中を移動しながら、その土中を移動する下端側以外の部分によって、中央耕耘体12の耕耘爪23にて外側方に向かって飛ばされた土が延長作業部3側(延長耕耘体側)に移動することを規制しかつ延長耕耘体32の耕耘爪43にて内側方に向かって飛ばされた土が中央作業部2側(中央耕耘体側)に移動することを規制する板状の土移動規制体61が脱着可能に設けられている。
【0034】
つまり、中央作業部2および左側の延長作業部3間での土の移動を規制する左側の土移動規制体61は、中央機体11の一方側軸保持部であるチェーンケース部19に取付具(例えばボルトおよびナット)60によって脱着可能に取り付けられた鉛直面状の1枚の土移動規制板62にて構成されている。また、中央作業部2および右側の延長作業部3間での土の移動を規制する右側の土移動規制体61は、中央機体11の他方側軸保持部であるブラケット部20に取付具60によって脱着可能に取り付けられた鉛直面状の1枚の土移動規制板63にて構成されている。
【0035】
ここで、土移動規制板62は、図3および図4に示されるように、上端が傾斜した略矩形状をなす規制板部66と、この規制板部66の前端にこの規制板部66に対して直交状に一体に設けられた取付板部67とを有している。
【0036】
そして、取付板部67が複数箇所(例えば4箇所)でチェーンケース部19の被取付板部68に取付具60によって脱着可能に取り付けられ、規制板部66の上端部の取付部分66aが複数箇所(例えば2箇所)で中央耕耘カバー部15の左側のカバー側板15aに取付具60によって脱着可能に取り付けられている。
【0037】
この取付状態において、規制板部66の下端は、チェーンケース部19の下端と略同じ高さに位置して中央耕耘体12の回転軸21よりも下方に位置する。また、規制板部66の後端は、中央耕耘カバー部15の後端の下方に位置して中央耕耘体12の耕耘爪23の先端移動軌跡よりも後方に位置する。つまり、この土移動規制板62は、側面視でチェーンケース部19の後方かつ中央耕耘カバー部15の下方の領域に位置するように設けられている。なお、チェーンケース部19の被取付板部68は、ケース本体部69から後方に向かって突出する突出板部70の後端にこの突出板部70に対して直交状に設けられている。
【0038】
また、土移動規制板63は、図2(b)に示されるように、土移動規制板62と略同じ形状のもので、上端が傾斜した略矩形状をなす規制板部71と、この規制板部71の前端にこの規制板部71に対して直交状に一体に設けられた取付板部72とを有している。
【0039】
そして、取付板部72が複数箇所(例えば3箇所)でブラケット部20の被取付板部73に取付具60によって脱着可能に取り付けられ、規制板部71の上端部の取付部分71aが複数箇所(例えば2箇所)で中央耕耘カバー部15の右側のカバー側板15aに取付具60によって脱着可能に取り付けられている。
【0040】
この取付状態において、規制板部71の下端は、中央耕耘体12の回転軸21よりも下方に位置する。また、規制板部71の後端は、中央耕耘カバー部15の後端の下方に位置して中央耕耘体12の耕耘爪23の先端移動軌跡よりも後方に位置する。つまり、この土移動規制板63は、土移動規制板62と同様、側面視でブラケット部20の後方かつ中央耕耘カバー部15の下方の領域に位置するように設けられている。
【0041】
また、中央整地体13および延長整地体33の少なくとも一方、すなわち例えば中央整地体13の左右方向両端部には、機体側土移動規制体である土移動規制体61と協働して、中央耕耘体12の耕耘爪23にて外側方に向かって飛ばされた土が延長作業部3側(延長耕耘体側)に移動することを規制しかつ延長耕耘体32の耕耘爪43にて飛ばされた土が中央作業部2側(中央耕耘体側)に移動することを規制する整地側土移動規制体81が脱着可能に設けられている。
【0042】
なお、整地側土移動規制体81と土移動規制体61とは、中央作業部2と展開作業状態の延長作業部3とによる耕耘整地作業時に、側面視で常に互いに部分的に重なり合うように位置する。つまり、耕耘整地作業時において、土移動規制体61の後端部と整地側土移動規制体81の前端部との間には、隙間ができない構成となっている(図4参照)。換言すると、中央耕耘カバー部15と中央耕耘体12と中央整地体13と圃場面との間の中央側空間部79と、延長耕耘カバー部35と延長耕耘体32と延長整地体33と圃場面との間の延長側空間部80とが、両規制体61,81によって仕切られて互いに不連通状態となっている。
【0043】
ここで、土移動規制板62と協働して中央作業部2および左側の延長作業部3間での土の移動を規制する整地側土移動規制体81は、中央整地体13の左側の側板部27に取付具(例えばボルトおよびナット)によって脱着可能に取り付けられた鉛直面状の1枚の整地側土移動規制板82にて構成されている。また、土移動規制板63と協働して中央作業部2および右側の延長作業部3間での土の移動を規制する整地側土移動規制体81は、中央整地体13の右側の側板部27に取付具(例えばボルトおよびナット)によって脱着可能に取り付けられた鉛直面状の1枚の整地側土移動規制板83にて構成されている。
【0044】
整地側土移動規制板82は、図3および図4に示されるように、略3角形状のもので、後側に取付部82aを有し、この取付部82aが複数箇所(例えば2箇所)で左側の側板部27に脱着可能に取り付けられている。また、整地側土移動規制板83は、図2(b)に示されるように、整地側土移動規制板82と同じ略3角形状のもので、後側に取付部83aを有し、この取付部83aが複数箇所(例えば2箇所)で右側の側板部27に脱着可能に取り付けられている。
【0045】
なお、図1および図2(a)に示されるように、左側の延長機体31のチェーンケース部37には、耕耘整地作業時に下端側が圃場の土中を移動しながら、その土中を移動する下端側以外の部分によって、延長耕耘体32の耕耘爪43にて外側方に向かって飛ばされた土が延長作業部3外に移動することを規制する板状の外端土移動規制体86が取付具60で脱着可能に設けられている。この外端土移動規制体86は、土移動規制板62と同一形状の外端土移動規制板87にて構成されている。
【0046】
また、この外端土移動規制板87と協働して土の延長作業部3外への移動を規制する外端整地側土移動規制板91が左側の延長整地体33の外端側の側板部57に脱着可能に取り付けられている。
【0047】
さらに、図1および図2(c)に示されるように、右側の延長機体31のブラケット部38には、耕耘整地作業時に下端側が圃場の土中を移動しながら、その土中を移動する下端側以外の部分によって、延長耕耘体32の耕耘爪43にて外側方に向かって飛ばされた土が延長作業部3外に移動することを規制する板状の外端土移動規制体88が取付具60で脱着可能に設けられている。この外端土移動規制体88は、土移動規制板63と略同じ形状の外端土移動規制板89にて構成されている。
【0048】
また、この外端土移動規制板89と協働して土の延長作業部3外への移動を規制する外端整地側土移動規制板92が右側の延長整地体33の外端側の側板部57に脱着可能に取り付けられている。
【0049】
また一方、図5に示されるように、農作業機1は、延長作業部3を中央作業部2に対して上下方向に回動させる油圧シリンダ等の回動駆動手段95を備えている。回動駆動手段95は、例えばシリンダ本体96と、このシリンダ本体96内に対して出入りするロッド97とを有している。また、中央整地体13は係合受部材98を有し、延長整地体33は延長作業部3の展開作業状態時に係合受部材98と係脱可能に係合する可動係合部材99を有している。
【0050】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0051】
例えば農作業機1を使用して最大の作業幅で耕耘整地作業をする際には、左右両側の延長作業部3を中央作業部2に対して下方へ回動させて展開作業状態に切り換える。
【0052】
延長作業部3が展開作業状態に切り換えられると、中央作業部2のクラッチ46,51と各延長作業部3のクラッチ47,52とが互いに接続される。また、中央作業部2の中央整地体13の係合受部材98と延長作業部3の延長整地体33の可動係合部材99とが互いに係合し、中央整地体13と延長整地体33とが中央機体11および延長機体31に対して回動中心軸線Bを中心として一体となって上下回動可能な連結状態となる。
【0053】
そして、この状態で、トラクタの走行により農作業機1全体を進行方向前方に移動させると、中央作業部2の中央耕耘体12と延長作業部3の延長耕耘体32とにて耕耘作業が行われる。
【0054】
また、中央耕耘体12と延長耕耘体32との後方では、可動係合部材99と係合受部材98とが互いに係合して連結状態となっている中央整地体13と延長整地体33とにて整地作業が行われる。
【0055】
そして、この耕耘整地作業時において、図4および図7の左側に示されるように、中央側と延長側との間に土移動規制体61および整地側土移動規制体81が位置するため、中央耕耘体12の耕耘爪23にて飛ばされた土は、両規制体61,81の一方面に当たり延長作業部3側に移動せず、延長耕耘体32の耕耘爪43にて飛ばされた土は、両規制体61,81の他方面に当たり中央作業部2側に移動せず、その結果、土が偏らず、圃場面に大きな凹凸が生じる不具合が発生せず、整地性が向上する。
【0056】
なお、図7の右側に示されるように、両規制体61,81がないと、中央側と延長側との間で土が移動し、圃場面に大きな凹凸が生じる。これは、チェーンケース部19,37の存在により、中央作業部2と延長作業部3とのつなぎ部では、耕耘爪23,43の不連続範囲ができてしまうからである。
【0057】
そして、このような農作業機1によれば、中央機体11の左右方向両端部および中央整地体13の左右方向両端部に土移動規制体61および整地側土移動規制体81が設けられているため、圃場面に大きな凹凸が生じる不具合を防止でき、適切な耕耘整地作業ができる。
【0058】
また、土移動規制体61の下端側および整地側土移動規制体81の下端側は、耕耘整地作業時に圃場の土中を移動するようになっているため、圃場面に大きな凹凸が生じる不具合を効果的に防止でき、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0059】
なお、上記一実施の形態では、土移動規制体61が中央機体11の左右方向両端部に設けられた構成について説明したが、例えば図8に示すように、土移動規制体61が延長機体31の内端部(中央機体11と対向する側の端部)に設けられた構成でもよい。この図8の例では、左側の延長機体31の内端部のブラケット部38に取り付けられた土移動規制体61が土移動規制板63にて構成され、右側の延長機体31の内端部のチェーンケース部37に取り付けられた土移動規制体61が土移動規制板62にて構成されている。
【0060】
また、土移動規制体61が中央機体11および延長機体31のいずれか一方のみに設けられた構成には限定されず、土移動規制体61が中央機体11および延長機体31の両方に設けられた構成でもよい。
【0061】
さらに、農作業機1は、整地側土移動規制体81を有しない構成でもよく、例えば図9に示すように、整地側土移動規制体81の代わりに、土移動規制体61を図3に示すものよりも大きくし、土移動規制体61のみで中央側空間部79と延長側空間部80とを仕切るようにしてもよい。
【0062】
また、整地側土移動規制体81が中央整地体13の左右方向両端部に設けられた構成には限定されず、例えば整地側土移動規制体81が延長整地体33の内端部(中央整地体13と対向する側の端部)に設けられた構成でもよい。
【0063】
さらに、整地側土移動規制体81が中央整地体13および延長整地体33のいずれか一方のみに設けられた構成には限定されず、例えば整地側土移動規制体81が中央整地体13および延長整地体33の両方に設けられた構成でもよい。
【0064】
また、農作業機1は、左右両側に延長作業部3を備えた3分割式の構成には限定されず、例えば左右いずれか片側のみに延長作業部3を備えた2分割式の構成等でもよい。
【0065】
さらに、農作業機1は、ロータリーには限定されず、代掻作業をする代掻機(ハロー)でもよく、この場合、泥土の移動を規制でき、適切な代掻作業(耕耘整地作業)ができる。
【符号の説明】
【0066】
1 農作業機
2 作業部である中央作業部
3 延長作業部
11 機体である中央機体
12 耕耘体である中央耕耘体
13 整地体である中央整地体
31 延長機体
32 延長耕耘体
33 延長整地体
61 土移動規制体
81 整地側土移動規制体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される作業部と、
この作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる延長作業部とを具備し、
前記作業部は、
機体と、
この機体に回転可能に設けられ、回転しながら耕耘作業をする耕耘体と、
この耕耘体の後方で整地作業をする整地体とを備え、
前記延長作業部は、
延長機体と、
この延長機体に回転可能に設けられ、回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体と、
この延長耕耘体の後方で整地作業をする延長整地体とを備え、
前記機体および前記延長機体の少なくとも一方には、前記耕耘体にて飛ばされた土が前記延長作業部側に移動することを規制しかつ前記延長耕耘体にて飛ばされた土が前記作業部側に移動することを規制する土移動規制体が設けられている
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
土移動規制体の下端側は、耕耘整地作業時に圃場の土中を移動する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
整地体および延長整地体の少なくとも一方には、耕耘体にて飛ばされた土が延長作業部側に移動することを規制しかつ延長耕耘体にて飛ばされた土が作業部側に移動することを規制する整地側土移動規制体が設けられ、
前記整地側土移動規制体と土移動規制体とは、耕耘整地作業時に側面視で常に互いに部分的に重なり合うように位置する
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−95599(P2012−95599A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246198(P2010−246198)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】