説明

農地区画データ作成システム

【課題】高度上空から地表を撮影した観測画像に基き、ユーザの負担を軽減し、農地などの土地区画のデータを作成することができる画像処理システムを提供する。
【解決手段】衛星や航空機などの高度飛翔体から地表を撮影した観測画像から農地の候補となる区画を抽出する区画抽出手段と、農地候補区画の利用用途を分類する区画分類手段とを含むことを特徴とする。さらに、区画分類手段は、農地候補区画の各領域のノイズ量を計算するノイズ判定手段と、農地候補区画の各領域の植生指数を計算する植生判定手段と、農地候補区画の各領域の形状を計算する形状判定手段とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星や航空機等を用いて高度上空から地表を撮影して得られた観測画像を解析し、地表における土地区画に関するデータを作成する地理画像処理システムに関し、特に地理画像に含まれる農業用地の抽出を容易にするための画像処理を行うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星画像や航空写真画像の利用が広まってきており、それらの画像を使った地図の作成や地表の分析等に関わる技術が開発されている。この中で、農地部を撮影した写真の分析を行うには、画像内の土地区画を抽出し、さらに抽出された土地区画の中から農地に該当する領域を抽出することが不可欠である。
【0003】
従来、土地区画の抽出と、抽出された土地区画からの農地の抽出は、手作業で行われていたので、多大な人的コストがかかることが問題だった。そこで、これらの処理をコンピュータにより自動化させる方法が提案されている。その一例として、特許文献1では、まず地表を撮影した画像からエッジを抽出し、そのエッジ画像上の任意の1点から放射状に伸ばした直線とエッジとの交点を求め、複数の交点を連結させてできる多角形の区画領域を抽出する処理が提案されている。この処理により、土地区画の抽出を自動的に行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−256807号公報
【非特許文献1】J.Canny,「A Computational Approach to Edge Detection」IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,Vol.PAMI-8,No6,1986年11月
【非特許文献2】尾上守,「画像処理ハンドブック」,昭晃堂出版,1987年
【非特許文献3】金子正美,外5名「湿原植生分類のためのリモートセンシング手法の研究」,北海道環境科学研究センター所報,第29号,2002年,pp.53-58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の手法によって地理画像から農地の候補となる区画領域を抽出することはできるが、抽出された各区画領域に対して農地或いは非農地と判定し、分類する作業は操作者が実際に各区画領域の画像を見て行う必要がある。この作業は自動化されておらず、多大な人的コストを必要し、操作者は多大な集中力、時間を必要とするものである。また、広範囲の画像に対して限られた時間で作業を行うためには複数の操作者が必要となるが、この場合各操作者の主観的判断基準の差によって分類結果にばらつきが生じてしまう恐れもある。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、衛星画像や航空写真画像などの地理画像から農地などの土地区画データを容易に作成することができる農地区画データ作成システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、抽出された区画領域に対して、ノイズ量、植生指数、区画形状などのパラメータを計算し農地らしさを判定することで自動的に農地と非農地を区別し、上記課題が解決されることに想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、地理画像に含まれる区画領域の抽出および分類を行うシステムであって、地理画像中の田畑などの農地区画の輪郭、すなわちエッジを抽出し、抽出したエッジに基づいて区画領域を抽出する区画抽出手段と、各区画領域の、農地らしさを表す特徴を解析し、「農地」または「非農地」といった土地利用用途を判定する区画分類手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
より具体的には、本発明は、地表を撮影して得られた地理画像データを解析し、農地区画データを作成する農地区画データ作成システムに関し、地理画像データから区画領域を抽出する区画抽出手段と、区画領域中のノイズ量を計算するノイズ判定手段と、区画領域の植生指数を計算する植生判定手段と、区画領域の形状特徴を判定する形状判定手段と、ノイズ量と植生指数と形状特徴とを用いて、区画領域が農地か否かを判定する農地判定手段と、を備えることを特徴とする。ノイズ判定手段は、抽出した区画領域の面積に対するノイズ量であるノイズ評価値を計算する。ここでノイズ評価値は、その値が小さいほど農地らしさが高いことを示すものである。また、形状判定手段は、抽出した区画領域を構成する各ベクトルのなす角をチェックする。ここでなす角は、0度または90度に近いほど農地らしさが高いことを示すものである。
【0010】
農地判定手段は、ノイズ量と植生指数と形状特徴のそれぞれに異なる重み係数を乗算し、それらの総和を算出し、その総和の値が所定の閾値よりも大きい場合に、区画領域が農地であると判定する。なお、農地判定手段は、地理画像データの撮影時期に応じて、重み係数を可変とするようにしてもよい。
【0011】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明の地理画像処理システムによれば、衛星画像や航空写真画像などの地理画像から土地区画の抽出および分類する作業を大幅に効率化することができる。また、従来操作者の技量に頼っていた作業工程が自動化されるので、多数の操作者によって作業を行う場合であっても、操作者の熟練度の差に影響されることなく均質な土地区画データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の地理画像処理システムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1乃至10は、本発明の実施の形態を例示する図である。これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。なお、本発明は本実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【0014】
<システム構成>
図1は、本発明の地理画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図である。図1において、本システムは、パソコン、ワークステーション等から構成される処理装置10と、メインメモリとして使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)及び磁気ディスク記憶装置等の補助記憶装置とを含む記憶装置20と、入出力装置30とを備えている。
【0015】
入出力装置30は、キーボード及びマウス等のポインティングデバイスを含む入力装置31と、CRTディスプレイ装置等の表示装置32と、プリンタ33とを備えている。入力装置31は、ユーザによるパラメータの入力やコマンドの起動等、並びに本システムにより画像処理を施した地理画像を用いた土地区画データ生成に用いられる。表示装置32及びプリンタ33は、本システムで扱う地理画像や土地区画データをユーザに提示するために用いられる。尚、表示装置としては、表示装置32及びプリンタ33のいずれか一方のみを備える構成としてもよい。
【0016】
処理装置10は、地理画像処理プログラム40を含んでいる。地理画像処理プログラム40は、プログラムモジュールとして、地理画像に含まれる農地等の区画を抽出する区画抽出部100、抽出された各区画領域に対して土地利用用途ごとに分類を行う区画分類部200を含む。
【0017】
また、区画分類部200は、サブモジュールとして、地理画像から抽出したエッジを利用して各区画領域中のノイズを抽出し農地らしさを判定するノイズ判定部201、地理画像を用いて植生指数(後述する)を計算し各区画領域の農地らしさを判定する植生判定部202、各区画領域の形状を評価し農地らしさを判定する形状判定部203、ノイズ判定部と植生判定部と形状判定部の各評価値をもとに各区画領域の分類(農地か非農地かの分類/判定)を行う農地判定部204を含む。
【0018】
記憶装置20は、地理画像データ21、区画領域データ22、ノイズデータ23、植生データ24、区画形状データ25、区画分類データ26を記憶する。これらのうち、地理画像データ21は、人工衛星又は航空写真画像から得られるものであり、本システムによる処理実行前に予め記憶されているデータである。一方、区画領域データ22、ノイズデータ23、植生データ24、区画形状データ25、区画分類データ26は、本システムにおいて地理画像データ21に基づいて生成されるデータである。
【0019】
<地理画像処理の概要>
図2は、本システムにより行われる画像処理の概要を例示する図である。図2(a)は、予め記憶装置20に記憶されている地理画像データ21を示している。この地理画像データに対して区画抽出を行うことにより、図2(d)に示すような区画領域が得られる。図2(d)において、一つの多角形は一区画領域を示している。一つの区画領域は、複数のベクトルが連結したデータである。このデータは区画領域データ22として記憶装置20に格納される。また、地理画像データに対してエッジ検出処理を行うことにより、図2(c)に示すエッジ画像が得られる。このエッジ画像に対してノイズ判定処理を行い、農地らしさを判定する。エッジ検出処理は、Canny法(非特許文献1参照)や、Sobelフィルタ(非特許文献2参照)などの各種エッジフィルタを使用して行うことができる。ノイズ判定処理で得られた各区画領域のノイズ量の評価値のデータはノイズデータ23として記憶装置20に格納される。また、地理画像データに対して植生指数を計算することで、図2(b)に示す植生画像が得られる。植生画像は、地理画像の各画素の植生指数の値を表示した画像である。植生判定処理で得られた各区画領域の植生の評価値のデータは植生データ24として記憶装置20に格納される。また、区画領域データの各区画領域における隣り合ったベクトルのなす角の計算を行う。図10(a)はその際の概略図である。各区画領域における隣り合ったベクトルのなす角を計算し、農地らしさを表す評価値を計算する。このときの各区画領域の形状をもとにした評価値のデータは区画形状データ25として記憶装置20に格納される。ノイズデータ23と植生データ24と区画形状データ25を用いて各区画領域の農地らしさが判定され、各区画領域の分類結果は区画分類データ26として記憶装置20に出力される。図2(e)は、区画分類データ26の一例である。従来技術では、図2(d)のような区画領域の抽出までを自動化し、区画領域の分類は手作業で行っていたが、本発明では区画領域の分類も自動的に行うことができる。
【0020】
<地理画像処理の詳細>
以下、本発明の地理画像処理システムにおける区画抽出処理、ノイズ判定処理、植生判定処理、形状判定処理、区画判定処理について詳細を説明する。本発明において、地理画像処理プログラム40が起動されると、区画抽出部100、区画分類部200が順に起動される。また、区画分類部内では、ノイズ判定部201、植生判定部202、形状判定部203、農地判定部204が起動される。ただし、ノイズ判定部201、植生判定部202、形状判定部203の各処理は順不同であり、これらの後に農地判定部204が起動される。以下、それぞれによる処理の詳細を述べる。
【0021】
(1)区画抽出処理
図3は、地理画像処理プログラム40の区画抽出部100による処理の流れを示すフローチャートである。図3において、区画抽出部100は、記憶装置20から地理画像データ21を読み込み(S301)、画像中に存在する農地等のエッジを抽出する(S302)、エッジを抽出する処理としては種々の周知技術が適用可能である。土地区画の輪郭を抽出できればどの手法を用いてもよい。本システムではCanny法を適用するものとする。この処理によって図2(c)のようなエッジ画像が生成される。
【0022】
次に、区画抽出部100は、農地の候補となる領域を抽出するために、エッジ画像に対して領域抽出処理を行う(S303)。この際の領域抽出には直線交点法(特許文献1)を用いる。この処理について、図8を用いて説明する。この処理は、与えられたエッジ画像と、シード点と呼ぶ一点の座標から、シード点を含む区画領域を抽出する処理である。シード点とは、区画領域を抽出する際の出発点となる座標のことを指す。シード点は、格子状に点在させたり、ランダムに配置するなどの方法で決定する。あらかじめ、図8(a)のようにエッジ画像とシード点が与えられているとする。まず、シード点から等角度間隔に全方位に直線を伸ばす(図8(b))。そしてそれぞれの直線とエッジ画像におけるエッジ画素との交点を求め、得られた交点を順に結合させる(図8(c))。この処理によって抽出された多角形の領域を区画領域とする(図8(d))。区画領域の頂点の数は、シード点から伸ばす直線数に依存する。例えば図8では直線の数を8本としている。この直線数を増やすことにより、より精密な区画領域の抽出を行うことができる。ただし、エッジ画像にノイズが多く含まれる場合、ノイズを交点として抽出してしまう可能性があるため、適度な数を設定しておく。以上の処理を、すべてのシード点に対して行う。
【0023】
次に、区画抽出部100は、抽出した区画領域に対して、必要に応じて調整処理を行う(S304、S305)。調整処理は、それまでの処理で得られた区画領域をチェックし、不自然な区画領域データ(例えば、不自然に鋭角に尖った部分)を修正するために行う。区画領域データのチェックは、主に大きさのチェックと、形状及びその形状のなす角度のチェックによって行われる(詳細は特許文献1を参照)。従って、例えば袋地などの土地のデータの場合道路に通じる通路が鋭角的な部分として抽出される可能性があるが、この区画抽出処理の段階では、通路を除く形状部分のみが抽出される。
区画抽出部100は、このようにして得られた各区画領域のベクトルデータを、区画領域データ22として記憶装置20に格納する(S306)。
【0024】
(2)ノイズ判定処理
図4は、地理画像処理プログラム40の区画分類部200内の、ノイズ判定部201による処理の流れを示すフローチャートである。図4において、ノイズ判定部201は、記憶装置20から地理画像データ21と区画領域データ22を読み込み(S401)、地理画像中のエッジを抽出する(S402)。そして各区画領域に該当する領域内のエッジ量によって、その区画領域の農地らしさ(農地か否か)を判定する。区画抽出処理と同様に、エッジを抽出する処理としては種々の周知技術が適用可能である。本システムではCanny法を適用するものとする。この処理によって生成されるエッジ画像を、ノイズ判定用エッジ画像と呼ぶ。そして各区画領域のノイズ量計算処理を行う(S403)。ノイズ量計算は式1で行う。
【0025】
【数1】

【0026】
ただし、Nは対象とする区画領域内のノイズ評価値、g(x,y)はエッジ画像の座標(x,y)における輝度値(つまり、エッジとして検出された場所の輝度)、Sは対象とする区画領域の面積である。この計算を、ノイズ判定用エッジ画像中の各区画領域に対して行い、各区画領域のノイズ評価値を計算する。
【0027】
次にノイズ判定処理を行い各区画領域の農地らしさを判定する。一般に農地の領域は、領域内で輝度の変化が少ないためエッジ量は少なくなる。一方、建築物や駐車場などには建物の輪郭や、白線などの輪郭がエッジとして強く出やすく、エッジ量は多くなりやすい。そのため、エッジ量を評価することにより農地と建築物などをある程度区別できる。図9は、ノイズ判定処理における農地と非農地それぞれのエッジデータの例を示す図である。図9(a)は水田でありエッジ量が少ない。一方、図9(b)は建築物が立っている区画であり、建築物のエッジが多く存在する。このような場合、本発明で判定を行うと、図9(a)は「農地」、図9(b)は「非農地」として区別することができる。
【0028】
ノイズ判定部201は、このようにして生成された各区画領域のノイズ評価値をノイズデータ23として記憶装置20に格納する(S404)。
【0029】
(3)植生判定処理
図5は、地理画像処理プログラム40の区画分類部200内の、植生判定部202による処理の流れを示すフローチャートである。図5において、植生判定部202は、記憶装置20から地理画像データ21と区画領域データ22を読み込み(S501)、地理画像中の植生指数を計算する(S502)。植生指数は、リモートセンシングの多バンドから求められる植生の有無・多少・活性度を示す指標である(たとえば非特許文献3を参照)。代表的な植生指数にNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)があり、式2で求められる。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、IRは近赤外線バンドの反射率、Rは可視の赤バンドの反射率である。IRは0.7〜1.1μm程度、Rは0.5〜0.7μm程度である。用いる地表画像により波長帯は異なるが、IRは植物の葉の細胞構造による反射率の高い近赤外域に対応しており、Rは葉に含まれるクロロフィルによる0.64〜0.67μm付近の強い吸収帯(可視光の赤)に対応している。換言すれば、IRとRはレッドエッジを挟んだ2つのバンドである。このため、画素に対応する地表上で植物の葉が多いほど、NDVIの値は高くなる。なお、同じ農地であっても季節によってNDVI値が高い時期と低い時期がある。例えば水田の場合、田植え後から夏頃までは一面が緑でありNDVI値は高くなるが、秋頃の収穫時期や収穫後は緑が少なく、NDVI値が低くなる。従って、季節によってNDVI値を農地判定のための重要な要素として考慮(例えば、後述の重み係数を季節によって変更する)するかを決めると最適な判定をすることができる。
【0032】
一般に農地では植生指数が高くなり、池などの水域や建物や駐車場などでは植生指数が低くなる。このことを利用し本発明では各区画領域の農地らしさを判定する。各区画領域の農地らしさを表す植生評価値の計算は式3で行う。
【0033】
【数3】

【0034】
ただし、Vは対象とする区画領域内の植生評価値、NDVI(x,y)は、地理画像の座標(x,y)における植生指数。Sは対象とする区画領域の面積である。この計算を、地理画像中の各区画領域に対して行い、各区画領域の植生値を計算する。
【0035】
植生判定部202は、このようにして生成された各区画領域の植生評価値を植生データ24として記憶装置20に格納する(S503)。
【0036】
(4)形状判定処理
図6は、地理画像処理プログラム40の区画分類部200内の、形状判定部203による処理の流れを示すフローチャートである。図6において、形状判定部203は、記憶装置から区画領域データ22を読み込み(S601)、各区画領域の隣り合ったベクトルのなす角を計算することで形状特徴を定量化する(S602)。図10はこの処理の概略を示す図である。図10(a)は区画領域を八角形で表したときの図であり、隣り合ったベクトルのなす角をθ〜θで表している。一般に農地は長方形的な形状や長方形に近い平行四辺形の形状をしていることが多い。そのため、区画領域の隣り合ったベクトルのなす角は0度か90度のいずれかに近いといえる。そこで図10(b)及び図10(c)に示すように、角度が0度か90度のいずれかに近い場合に評価値を多く与え、0度か90度のいずれにも遠い場合に評価値を少なく与える。各区画領域内の隣り合ったベクトルの角度の評価値を求め、平均したものをその区画領域の農地らしさを表す評価値する。具体的には式4で計算する。
【0037】
【数4】

【0038】
ただし、Aは対象とする区画領域内の形状評価値、E(θj)は各角度の評価値、nは頂点数である。
形状判定部203は、このようにして生成された各区画領域の形状評価値を区画形状データ25として記憶装置20に格納する(S603)。
【0039】
(5)農地判定部
図7は、地理画像処理プログラム40の区画分類部200内の、農地判定部204による処理の流れを示すフローチャートである。図7において、農地判定部204は、記憶装置20からノイズデータ23と植生データ24と区画形状データ25を読み込む(S701)。次に、各区画領域の農地らしさを式5で評価する(S702)。
【0040】
【数5】

【0041】
ただし、Eは各区画領域の農地らしさを表す農地評価値であり、大きいほど農地らしい。N、V、Aはそれぞれ各区画領域における、ノイズ評価値、植生評価値、形状評価値を表す。これらはそれぞれ、ノイズデータ23、植生データ24、区画形状データ25から求められる。α、β、γは、それぞれノイズ評価値、植生評価値、形状評価値の各評価値の重みを表す定数である。このEで農地らしさを求め、地理画像中に含まれる農地や空き地や池などの区画領域の分類を行うことができる。農地と非農地を区別するためのEの閾値はユーザの要求に応じて適切に決定すればよい。なお、農地と言っても、水田や畑から果樹園等がある。従って、それぞれの農地の性質によってN、V、Aの値の傾向が異なってくる。例えば、果樹園の場合、水田よりもエッジが多くノイズが多く含まれる可能性が高いため、N値の重み係数を水田のそれよりも低く設定したり、果樹園の個々の指標(別に設けられた指標)とさらに比べて最終的に判定するようにしても良い。
【0042】
図2(e)は、図2(a)の地理画像と図2(d)の区画領域画像に対する区画領域及び分類結果の例である。図2(d)において、(1)、(2)、(4)の区画領域は、図2(c)から確認できるようにノイズが少ない。また、図2(b)から確認できるように植生指数が高い。また、図2(d)から確認できるように形状が長方形に近い。そのため式5におけるEが大きい値となる。一方、図2(d)において、(3)の区画領域は、図2(c)から確認できるようにノイズが多い。また、図2(b)から確認できるように植生指数が低い。また、図2(d)から確認できるように形状がやや歪んでいる。そのため式5におけるEが小さい値となる。以上より、図2(d)において、領域(1)、(2)及び(4)は「農地」と判定され、領域(3)は「非農地」と判定される。
【0043】
農地判定部204は、このようにして生成された各区画領域の分類結果を区画分類データ26として記憶装置20に格納する(S703)。
【0044】
<まとめ>
以上のように、本発明の実施形態は、地表を撮影して得られた地理画像データを解析し、農地区画データを作成する農地区画データ作成システムに関するものである。そして、そのシステムは、地理画像データから区画領域を抽出する区画抽出部(モジュール)と、区画領域中のノイズ量を計算するノイズ判定部(モジュール)と、区画領域の植生指数を計算する植生判定部(モジュール)と、区画領域の形状特徴を判定する形状判定部(モジュール)と、ノイズ量と植生指数と形状特徴とを用いて、区画領域が農地か否かを判定する農地判定部(モジュール)と、を備える。これにより、農地判定の処理を自動化できると共に、主観的な判定及びそれによる判定のばらつきを防止でき、客観的な農地判定を実現することができるようになる。
【0045】
ノイズ判定部は、抽出した区画領域の面積に対するノイズ量であるノイズ評価値を計算する。ここでノイズ評価値は、その値が小さいほど農地らしさが高いことを示すものである。また、形状判定手段は、抽出した区画領域を構成する各ベクトルのなす角をチェックする。ここでなす角は、0度または90度に近いほど農地らしさが高いことを示すものである。このようにすることによって、農地判定の指標が明確になり、より客観的な判定に資することができる。
【0046】
また、農地判定部は、ノイズ量と植生指数と形状特徴のそれぞれに異なる重み係数を乗算し、それらの総和を算出し、その総和の値が所定の閾値よりも大きい場合に、区画領域が農地であると判定する。重み係数を変更すれば、適応的な農地判定を実行できる。例えば、地理画像データの撮影時期に応じて、Vに対する重み係数を可変とすれば、季節に対応してより適切な農地判定を実行することができる。
【0047】
なお、本実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても本発明は実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピィ(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0048】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0049】
また、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードがネットワークを介して配信されることにより、システム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納され、そのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても、達成されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の地理画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の地理画像処理システムにより行われる画像処理の概要を例示する図である。
【図3】図1に示す地理画像処理プログラムの区画抽出部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図1に示す地理画像処理プログラムのノイズ判定部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図1に示す地理画像処理プログラムの植生判定部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図1に示す地理画像処理プログラムの形状判定部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図1に示す地理画像処理プログラムの農地判定部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】区画抽出処理の概要を例示する図である。
【図9】ノイズ判定処理における農地と非農地それぞれのエッジデータの例を示す図である。
【図10】形状判定処理の説明図である。(a)は隣り合ったベクトルのなす角を例示する図である。(b)はベクトルのなす角に対する各角度の評価値を例示する図である。(c)はベクトルのなす角に対する各角度の評価値E(θ)を例示する表である。
【符号の説明】
【0051】
10 処理装置
20 記憶装置
21 地理画像データ
22 区画領域データ
23 ノイズデータ
24 植生データ
25 区画形状データ
26 区画分類データ
30 入出力装置
31 入力装置
32 表示装置
33 プリンタ
40 地理画像処理プログラム
100 区画抽出部
200 区画分類部
201 ノイズ判定部
202 植生判定部
203 形状判定部
204 農地判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表を撮影して得られた地理画像データを解析し、農地区画データを作成する農地区画データ作成システムであって、
前記地理画像データから区画領域を抽出する区画抽出手段と、
前記区画領域中のノイズ量を計算するノイズ判定手段と、
前記区画領域の植生指数を計算する植生判定手段と、
前記区画領域の形状特徴を判定する形状判定手段と、
前記ノイズ量と前記植生指数と前記形状特徴とを用いて、前記区画領域が農地か否かを判定する農地判定手段と、
を備えることを特徴とする農地区画データ作成システム。
【請求項2】
前記ノイズ判定手段は、前記抽出した区画領域の面積に対するノイズ量であるノイズ評価値を計算し、
前記ノイズ評価値は、その値が小さいほど農地らしさが高いことを示すことを特徴とする請求項1に記載の農地区画データ作成システム。
【請求項3】
前記形状判定手段は、前記抽出した区画領域を構成する各ベクトルのなす角をチェックし、
前記なす角は、0度または90度に近いほど農地らしさが高いことを示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の農地区画データ作成システム。
【請求項4】
前記農地判定手段は、前記ノイズ量と前記植生指数と前記形状特徴のそれぞれに異なる重み係数を乗算し、それらの総和を算出し、その総和の値が所定の閾値よりも大きい場合に、前記区画領域が農地であると判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の農地区画データ作成システム。
【請求項5】
前記農地判定手段は、前記地理画像データの撮影時期に応じて、前記重み係数を可変とすることを特徴とする請求項4に記載の農地区画データ作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−152425(P2008−152425A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338159(P2006−338159)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】