説明

農業機械

【課題】燃料が満量となったことを視覚的および聴覚的に確実に認識できる農業機械を提供する。
【解決手段】エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクFTと、燃料タンクFTに設ける給油口SOと、給油口SOを着脱自在に覆う給油口キャップCAと、給油口キャップCAの着脱を検知するスイッチ(着脱検知手段)SW1と、燃料タンクFT内の燃料の量を検知するフロート(油量検知手段)と、フロートが満量を検知したときに、視覚的に報知する発光部(視覚報知手段)L2および聴覚的に報知するアラーム(聴覚報知手段)を備える。そして、発光部L2が給油口SOに隣接して設けられ、かつ発光することで満量を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクと、燃料タンクに設ける給油口と、給油口を着脱自在に覆う給油口キャップと、給油口キャップの着脱を検知する着脱検知手段と、燃料タンク内の燃料の量を検知する油量検知手段と、油量検知手段が満量を検知したときに、視覚的に報知する視覚報知手段および聴覚的に報知する聴覚報知手段とを備える農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクタなどのエンジンを備える農業機械は、エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクと、燃料タンクに設ける給油口と、給油口を着脱自在に覆う給油口キャップを備えてなる。給油口は円筒形状で、燃料タンクの上部外壁に連続して設けられる。給油口の外周には雄ネジが形成されている。一方、給油口キャップは円板形状で円板の外縁に沿って下向きに円筒形状の縁部が形成されている。この縁部の内周には、給油口外周に形成された雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。なお、給油時以外は、給油口キャップは給油口にネジつけられて給油口の開口部を覆っている。
【0003】
燃料を補給する際には、農業機械を自走させて給油設備に横付けする。そして、給油口キャップを反時計回りに回転させて、給油口を露出させ、給油設備に備える給油ノズルの先端を給油口に挿入する。その後、給油レバーを握ることで、給油ポンプが作動し、燃料が給油ノズルを通って燃料タンクに供給される。
【0004】
しかし、このような給油操作では、燃料タンクが満量になったことを知らせる手段がなく、誤って燃料を供給しすぎて、給油口からあふれてしまう恐れがあった。
このような問題に対して、特許文献1に開示された技術では、給油口近傍に給油口キャップの着脱を検知するスイッチ(着脱検知手段)と、燃料タンク内の燃料の量を検知するフロート(油量検知手段)とを設けている。そして、給油口キャップを取り外すと油量監視回路がONとなり、フロートが一定の位置まで上昇したことを感知すると警報音(聴覚報知手段)が鳴って満量を報知するようになっている。しかし、たとえば交通量の多い道路に面したガソリンスタンドで給油する際には、警報音は車の騒音にかき消されてしまい、満量警報が十分に機能しないという問題があった。
【0005】
そこで、警報音による報知手段に加えて、視覚的に満量を知らせる報知手段を備えたコンバインが開示されている(特許文献2)。これによると、エンジンキーをONにした状態で車体後部側面にある給油口に給油を開始すると、燃料タンク内の燃料の量を監視し始め、一定量に達すると警報音(聴覚報知手段)が鳴って聴覚的に報知するとともに、コンバインの尾灯(視覚報知手段)が点滅して視覚的にも報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−67239号公報
【特許文献2】特開2005−83881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このようなコンバインでは、給油口が車体後部側面に設けられている一方、尾灯は後方に向けて点滅するので、給油しながら尾灯の点滅を確認しにくいという問題
があった。
そこで、この発明の目的は、燃料が満量となったことを容易かつ確実に認識できる農業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため請求項1に記載の発明は、エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクと、該燃料タンクに設ける給油口と、該給油口を着脱自在に覆う給油口キャップと、該給油口キャップの着脱を検知する着脱検知手段と、前記燃料タンク内の燃料の量を検知する油量検知手段と、
該油量検知手段が満量を検知したときに、視覚的に報知する視覚報知手段および聴覚的に報知する聴覚報知手段を備える農業機械において、
前記視覚報知手段が前記給油口に隣接して設けられ、かつ発光することで満量を報知することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の農業機械において、前記給油口に隣接し、かつ該給油口を取り囲むように発光手段を備え、該発光手段は、前記給油口キャップを外したときにのみ発光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクと、その燃料タンクに設ける給油口と、給油口を着脱自在に覆う給油口キャップと、給油口キャップの着脱を検知する着脱検知手段と、燃料タンク内の燃料の量を検知する油量検知手段と、油量検知手段が満量を検知したときに、視覚的に報知する視覚報知手段および聴覚的に報知する聴覚報知手段を備える農業機械において、視覚報知手段が給油口に隣接して設けられ、かつ発光することで満量を報知するので、給油作業者が給油しながら容易に燃料の満量を認知することができる。また、聴覚的報知手段も備えるので、視覚的な報知を見過ごした場合にも、聴覚的に満量を認識することができる。したがって、燃料が満量となったことを容易かつ確実に認識できる農業機械を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、給油口に隣接し、かつ給油口を取り囲むように発光手段を備え、発光手段は、給油口キャップを外したときにのみ発光するので、たとえば夜間に給油する場合など給油口が見えにくい状況でも、給油ノズルを給油口に挿入しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の農業機械の一例としてのトラクタの斜視図である。
【図2】この発明の主要部の拡大平面図である。
【図3】図2のX矢視断面図である。
【図4】(a)は、発光手段としての発光部を備える回路図であり、(b)は、視覚報知手段としての発光部を備える回路図である。
【図5】この発明のトラクタに燃料を給油する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1にこの発明の一例であるトラクタ(農業機械)の斜視図を示す。トラクタTは、ボンネットBの後端に隣接してステアリングコラムCCを設ける。ステアリングコラムCCの上面には、速度や燃料などの状況を表示するメーターパネルMPを設ける。そのメーターパネルMPの後方に、ステアリングSTを延出して設ける。ステアリングSTの近傍には、警報音を発する不図示のアラームを設ける。また、ステアリングコラムCCの上部側面右側からはエンジン回転数制御レバー、左側からは主変速レバーLなどを延出して設ける。そして、ステアリングコラムCCの後方には一定の距離をおいて運転席DSを設ける。運転席DSの右側には作業機操作レバーSLを、また、左側にはPTO変速レバーP、副変速レバーSBなどを備える。
【0014】
また、ボンネットB内には、エンジンと、エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクなどを備える。燃料タンクの上部には給油口が連続して設けられている。その給油口は、ボンネットBに設けられた凹部Dの底面から突出してなる。そして、給油口キャップCAが給油口を着脱自在に覆うようにネジつけられている。
【0015】
図2に給油口付近の拡大正面図、図3に図2のX矢視断面図を示す。給油口SOはプラスチック製の燃料タンクFTの上端に連続して設けられている。給油口SOは円筒状に形成され、その外周には、給油口キャップCAの内側に形成された雌ネジと螺合する雄ネジMが形成されている。給油口SOの周辺には、給油口SOを取り囲むように隣接して発光部(発光手段)L1と発光部(視覚報知手段)L2とが配置されている。発光部L1,L2はそれぞれ、青色発光ダイオード、赤色発光ダイオードで構成されている。また、給油口SO近傍にはスイッチ(着脱検知手段)SW1が設けられる。スイッチSW1は発光部L2と給油口SOの外側面との間に設けられる。このスイッチSW1は、給油口キャップCAの着脱を検知するためのものであり、先端にアクチュエータ部tを備えるリミットスイッチなどを用いるものとする。
【0016】
燃料タンクFTは、不図示のブラケットによってトラクタTの車体本体に固設されている。給油口SOの雄ネジMの下方は皿部PLに取り囲まれている。この皿部PLは、円板状の鉄板の中心部を給油口SOの外径寸法かそれよりやや大き目にくり抜かれている。また、周縁部は上方に向けて折り曲げられて外周部OL1を形成する。一方、トラクタTのボンネットBは、給油口SO付近において円形状にくり抜きが施されている。このくり抜きの周縁部は下方に向けて折り曲げられて外周部OL2を形成する。外周部OL1と外周部OL2とは重なり合うようにして溶接によって固定される。このようにして、ボンネットBと皿部PLとで凹部Dを形成する。また、皿部PLには、中央部の円形状のくり抜きの外側に、発光部L1のための4つのくり抜きと、発光部L2のための別の4つのくり抜き、さらに、スイッチSW1のためのくり抜きが形成されている。
【0017】
発光部L1,L2は、給油口SOの近傍で、かつ、給油口SOを取り囲むように外周辺に一定間隔をもって交互に円形状に配置される。詳しくは、発光部L1,L2は、給油口SOの中心と同心となるべく円形を形成して配置される。そして、この円心CTに対して発光部L1は90度の間隔をもって配置され、発光部L2はそれぞれの発光部L1の中間に配置され、かつ、この円心CTに対して90度の間隔をもって配置される。言い換えると、発光部L1と発光部L2とは、円心CTに対して45度の間隔をもって交互に配置されている。
【0018】
スイッチSW1は、この発光部L1,L2が形成する円の内側に設けられる。加えて、スイッチSW1は給油口キャップCAを給油口SOにネジつけたときに、給油口キャップCAの外周部の下端CEに当接し、スイッチSW1がONとなるように設けられる。なお、この例ではスイッチSW1を発光部L2に隣接して設けているが、発光部L1,L2との中間位置でかつ、給油口SOの外側面寄りに設けるようにしてもよい。発光部L1,L2、スイッチSW1はそれぞれ2本ずつのコードを下方に向けて延出している。これらのコードは図4の各図に示す構成の回路図に従って結束されている。
【0019】
図4(a)は、スイッチSW1、発光部L1、バッテリーBTの関係を示した回路図である。スイッチSW1は、非荷重時でON、アクチュエータ部tに荷重がかかることでOFFとなる構造である。スイッチSW1の一端はバッテリーBTと、他端は発光部L1の一端と接続されている。そして、発光部L1の他端は、バッテリーBTに接続されている。なお、この実施例では、発光部L1のダイオードは4つあるが、この図では便宜上、1つのみ描いている。
【0020】
図4(b)は、満量警報回路であり、スイッチSW1、発光部L2、アラーム(聴覚報知手段)AL、給油タンクFT内に浮かべて燃料の量を検知するフロートFL、フロートFLの動きに連動したスイッチ(油量検知手段)SW2の関係を示した回路図である。スイッチSW2は、燃料が満量に達したときのみONとなるものであり、ロータリーポテンショメータなどが用いられる。また、発光部L2は、回路がONとなったときに点滅するように不図示のICと適宜接続されている。この実施例では、発光部L2のダイオードは4つあるが、この図では便宜上、1つのみ描いている。また、この回路図のバッテリーBTは、図4(a)のバッテリーBTと同一であってもよいし、別であってもよい。
【0021】
このように構成されたトラクタTで燃料を給油する方法を図5を参照しつつ説明する。まず、トラクタTを給油スタンドの給油設備に横付けする。そして、給油口キャップCAを半時計周りに回転させながら取り外す(S1)。すると、アクチュエータ部tがスイッチSW1に内臓された不図示のバネによって上昇し、スイッチSW1がONとなる(S2)。これによって、発光部L1を有する回路(図4(a))が閉回路となり、4つの発光部L1が青色に点灯する(S3)。そして、給油設備に備える給油ノズルを給油口SOに差し込んで給油を開始する(S4)。このとき、給油口SOの周辺には発光部L1が青色に点灯(発光)しているので、給油が夜間であっても、容易に給油口SOを見つけることができる。燃料タンクFTに燃料が供給され始めるとフロートFLが上昇し始める(S5)。
【0022】
そして、満量になると、スイッチSW2がONとなり、満量警報回路(図4(b))が閉回路となる(S6)。すると、4つの発光部L2が赤色に点滅するとともに、ステアリングST近傍に備えるアラームALが警報音を発する(S7)。そこで、給油を終了し(S8)、給油口キャップCAを給油口SOにはめ付ける(S9)。すると、給油口キャップCAの外周部の下端CEがアクチュエータ部tを押下して、スイッチSW1がOFFとなる(S10)。これによって、発光部L1が点灯を停止するとともに、発光部L2が点滅を停止し、さらにアラームALが警報音を停止する(S11)。なお、この時点では、燃料タンクFTは満量であるので、フロートFLは上昇したままであり、スイッチSW2はONとなったままである。
【0023】
この発明は上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば、発光部(視覚報知手段)L2が発光部(発光手段)L1を兼ねるようにしてもよい。上述の例にしたがうと、兼用される発光部は8つとなる。そして、給油口キャップCAを外したときに8つの同一色のLEDを同時に点灯させ、燃料タンクFTが満量になったときに8つのLEDが同時に点滅に切り替わるようにする。この場合に、必ずしも8つのLEDを給油口SOの周囲に配置する必要はなく、たとえば、4つのLEDを一定間隔(90度間隔)で配置するようにしてもよい。このようにすると、LEDの部品点数を低減することができる。
【0024】
また、発光部L2は燃料タンクFTが満量となったときに点滅するような形態に限定されるものではなく、赤色のLEDが点灯するようにしてもよい。また、発光部L1,L2に用いるLEDの色はこの実施例に限定されるものではなく、あらゆる色のLEDを使用してもよい。
【0025】
さらに、給油口キャップCAの開閉、燃料の満量による回路の開閉は、上述のような機械スイッチSW1,SW2に限定されるものではなく、たとえば、光センサーによって給油口キャップCAの開閉の検知および燃料の満量を検知を行い、回路を開閉するようにしてもよい。
【0026】
さらに、上述の実施形態では、給油口がステアリングST前方でボンネットB上に設けられている例について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、運転席下方に燃料タンクを備え、その一部に給油口を設けるようにしてもよい。また、運転席後方に燃料タンクを備え、その一部に給油口を設けるようにしてもよく、トラクタのあらゆる位置に適用しうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
なお、この発明の農作業機は、エンジンを有する農業機械、たとえば、田植機、トラクタ、コンバインなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
AL アラーム(聴覚報知手段)
B ボンネット
BT バッテリー
CA 給油口キャップ
CC ステアリングコラム
CE 下端
CT 円心
D 凹部
DS 運転席
FL フロート(油量検知手段)
FT 燃料タンク
L 主変速レバー
L1 発光部(発光手段)
L2 発光部(視覚報知手段)
M 雄ネジ
MP メーターパネル
OL1,OL2 外周部
P PTO変速レバー
PL 皿部
SB 副変速レバー
SL 作業機操作レバー
SO 給油口
ST ステアリング
SW1 スイッチ(着脱検知手段)
SW2 スイッチ(油量検知手段)
T トラクタ(農作業機)
t アクチュエータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに供給する燃料を保持する燃料タンクと、該燃料タンクに設ける給油口と、該給油口を着脱自在に覆う給油口キャップと、該給油口キャップの着脱を検知する着脱検知手段と、前記燃料タンク内の燃料の量を検知する油量検知手段と、
該油量検知手段が満量を検知したときに、視覚的に報知する視覚報知手段および聴覚的に報知する聴覚報知手段を備える農業機械において、
前記視覚報知手段が前記給油口に隣接して設けられ、かつ発光することで満量を報知することを特徴とする、農業機械。
【請求項2】
前記給油口に隣接し、かつ該給油口を取り囲むように発光手段を備え、該発光手段は、前記給油口キャップを外したときにのみ発光することを特徴とする、請求項1に記載の農業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280307(P2010−280307A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135790(P2009−135790)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】