説明

農薬含有排水を処理するための方法及び装置

本発明は、農薬を含んでいる排水を処理するための方法及び装置に関する。本発明の方法によれば、該排水を電気化学的セル(14)の中に導き、該排水中に含まれている農薬を該電気化学的セル内で少なくとも部分的に電気化学的に酸化し、次いで、該排水を該農薬の酸化的分解生成物と一緒に処分する。本発明の装置(10)には、好ましくはホウ素ドープダイヤモンド電極が取り付けられている少なくとも1の電気化学的酸化セル(14)を含んでいる排水循環路(11)が備えられている。該排水循環路(11)は、さらに、該排水のための運搬機構(13)及び制御ユニットも含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物保護剤を含んでいる排水を処理するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業及び園芸において、作物保護剤は、主に、液体形態で施用される。その際、作物保護剤は、しばしば、タンクミックスとして存在している。タンクミックスは、噴霧方法で施用される作物保護剤の水性散布液を意味するものと理解される。
【0003】
実際面では、処理対象のそれぞれの農業地域に対する散布液の量を正確に混合及び調製することは、実質的に不可能である。一般に、使用者、即ち、農業従事者は、例えば、より多くのタンクミックスを調製すること(これは、より多くの水を運ぶことを包含する)を回避するために、僅かだけ多い量のタンクミックスを調製する。農業の適正な実践では、残留した量のタンクミックスは、典型的には、水で1:10又はそれ以上の割合に希釈して、付加的な施用として圃場に施用する。しかしながら、実際には、劣った土壌条件や望ましくない天候(例えば、強風が吹き始めるなど)により、この手順が妨げられる場合がある。従って、2回目の施用においてタイヤの跡又は形成された通路によって作物の密度がそれ以上不必要に低減されないように、圃場へ繰り返し施用することを省くことができればそれは望ましいであろう。これは、その後、収量の相当な損失となるであろう。多くの場合、実際上、散布液又は残留量のタンクミックスは、約10時間経過した後又は一晩放置された後は、沈殿する活性化合物が凝集又は結晶化することにより、もはや使用することはできない。典型的には、作物保護剤の製造元が施用に適した安定なタンクミックスを保証するのは、該組成物の調製後最大で僅か6時間に過ぎない。さらにまた、適合性のない組成物(即ち、均質に混合することができない組成物)を不注意で使用した場合、凝集体が形成されるであろう。
【0004】
上記問題の結果として、実際、しばしば、残留量のタンクミックスを排水として処分することが求められ、また、希なケースではあるが全量のタンクミックスでさえ排水として処分することが求められることがある。より多量の処分される農薬含有排水は、散布装置の洗浄に由来する。そのような散布装置の洗浄は、定期的に行うことが求められる。
【0005】
しかしながら、使用者のみではなく、作物保護剤の製造者も、研究及び開発に関連して、新規製剤の調製及び試験に際して、製造の準備段階及び得られた生成物が所望の規格を未だ満たしていないか又はもはや満たしていない場合の製造の検証に際して、又は、製造設備の洗浄操作に関連して、作物保護剤を含んでいる排水を産み出す。
【0006】
従って、本発明に関連して、作物保護剤を含んでいる排水は、農業、森林管理及び農業経営に由来する排水を意味し、さらにまた、少なくとも1種類の作物保護剤を含んでいる工業的研究又は工業的製造プラントに由来する排水も意味するものと理解されるべきである。該排水は、作物保護剤の製剤中で用いられる助剤(これは、自体公知であり、以下でさらに詳細に論じる)に加えて、洗浄剤又は合成洗剤(これらは、例えば、散布装置又は製造プラントの洗浄に使用される)も含み得る。
【0007】
最近典型的に使用される作物保護剤は、一般に、分解性が不充分な活性化合物である。ここで、特性「化学的分解性が不充分な(poorly degradable)」は、特に、光及び大気中の酸素による酸化プロセス、並びに/又は、排水処理プラント内における比較的極めて短い分解間隔又は1〜3日間での処理時間での分解に関する。これについての理由は、現代の作物保護剤が持続的な生物学的な作用を示し、従って、発生前用組成物の場合には、典型的には、10〜約150日、特に、20〜60日の作物植物及び/又は処理対象の雑草における土壌半減期に達すべきであるという事実である。結果として、例えば茎葉部の広い表面に施用される作物保護剤は、一般に、光(特に、紫外線)に対して安定でなければならず、また、酸素に対して安定でなければならない。
【0008】
作物保護剤の一般的に不充分な分解には、そのような活性化合物が存在していることに起因して、該排水を自治体の下水系又は生物学的な下水処理場に流すことができないという不利点を必然的に伴う。その結果、例えば特殊廃棄物として焼却することにより、廃棄処理コストが高くなる。
【0009】
焼却に代わるものとして、別の酸化的方法により作物保護剤を分解する試みが既になされている。かくして、例えば、「J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 5115-5120」には、二酸化チタンを用いて作物保護剤を光触媒酸化するプロセスが記載されている。同様の方法が、Herrmann(Catalysis today 53, 1999, 115-129)により記述されている。実際上は、作物保護剤を用いた場合、それらの酸化プロセスでは、不満足な結果しか得られないか、又は、それらは、得ることが可能な利益を目的として、農業又は工業における商業的用途に対して、必用な経費が高すぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、分解性が不充分な作物保護剤を化学的及び/又は生物学的に容易に分解可能な生成物に変換する作物保護剤含有排水の処理方法を提供するという技術的目的に基づいている。その結果、このような方法で処理された排水は、次に、単純で安価な方法で、例えば、慣習的な下水処理場において、処分することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この技術的な目的は、本明細書の請求項1に記載されている方法及び本明細書の請求項15に記載されている装置により達成される。本発明の有利な実施形態は、従属クレームの主題である。
【0012】
驚くべきことに、電気化学的酸化(例えば、カソード還元、好ましくは、アノード酸化)により、市販されている製剤中の作物保護剤を良好な空時収量で殆ど完全に分解することが可能であるということが見いだされた。その結果、該作物保護剤の酸化された分解生成物は、慣習的な下水処理場で処分する(dispose of)ことが可能であり、特殊廃棄物として焼却することはもはや必用ではない。従って、本発明の方法により、及び、本発明の装置を適用することにより、廃棄処分のコストを相当減じることが可能である。
【0013】
従って、本発明は、作物保護剤を含んでいる排水を処理する方法に関し、ここで、該方法では、該排水を電気化学的セルの中に導き、該排水中の作物保護剤を該電気化学的セル内で少なくとも部分的に電気化学的に酸化し、次いで、該作物保護剤の酸化的分解生成物を含んでいる排水を処分する。
【0014】
電気分解は、当業者には既知の慣習的な電解セル中で実施する。
【0015】
分割されていないフローセルを用いて連続的に操作するか又は50〜5000mLの反応容積を有するガラス製ビーカーセルを用いてバッチ式に操作するのが好ましい。
【0016】
特に適しているのは、二極式に連結されたキャピラリーギャップセル(capillary gap cell)又はプレートスタックセル(plate stack cell)であり、ここで、電極は、プレートとして成形されいて、面平行に配置されている(cf. Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 1999 (electronic release), Sixth Edition, VCH Verlag Weinheim, Volume Electrochemistry, Chapter 3.5. "Special Cell Designs", and Chapter 5, Organic Electrochemistry、Subchapter 5.4.3.2 "Cell Design")。
【0017】
電気化学的セル中で電極材料(特に、アノード材料)として使用するのに好ましいものは、高い酸素過電圧を達成するのが可能な材料、例えば、貴金属、例えば、白金、又は、金属酸化物、例えば、酸化ルテニウム、酸化クロム若しくは酸化鉛、又は、RuOxTiOx型の混合酸化物、又は、それ自体公知の寸法安定アノード(dimensionally stable anodes)(DSA)、又は、ダイヤモンド電極である。本発明の方法に特に好ましいのは、ホウ素ドープダイヤモンド電極であり、ここで、該ダイヤモンド電極は、有利には、20〜20000ppmの濃度のホウ素を含んでいる。有利には、本発明の方法を実施する場合、該電極の極性を定期的に交換して、電極が汚れるのを防止する。電極の極性を交換しない場合、適するカソード材料は、例えば、鉄、鋼鉄、ステンレス鋼又はニッケルであり、また、そうでない場合は、白金などの貴金属やダイヤモンド電極も適している。しかしながら、カソード及びアノードの両方としてホウ素ドープダイヤモンド電極を使用するのが好ましい。
【0018】
該電気化学的酸化は、好ましくは、1〜1000mA/cm2の電流密度で、さらに好ましくは、10〜100mA/cm2の電流密度で実施する。
【0019】
該電気化学的酸化は、該排水が運搬可能な液体として存在している温度で実施することができる。従って、該酸化は、好ましくは、-20〜100℃の温度で、さらに好ましくは、5〜60℃の温度で実施する。一般に、該酸化は、大気圧で実施する。該酸化を高温で実施する場合は、該液体及び/又は存在している共溶媒の沸騰を防止するために、高圧を使用するのが好ましい。
【0020】
特に驚くべきことに、本発明の方法が、比較的親水性の活性化合物が分子形態で溶解して存在している単相系に対してのみ有利な方法で使用可能であるばかりではなく;むしろ、本発明の方法を、活性化合物が、例えばミクロ分散又はミクロ乳化として親油性相中に溶解していない粒子の形態で存在している、多相排水を酸化するのにも使用可能であるということが分かった。後者の場合、特に、ホウ素ドープダイヤモンド電極を使用すれば、別の電極材料と比較して、特に高い空時収量及び作物保護剤分解率が達成される。
【0021】
用語「作物保護剤」には、農業、森林管理及び園芸において有害生物を防除するために使用される一群の約1700種類の個々の組成物が包含される。これらの作物保護剤組成物において、約270種類の異なった物質が、活性化合物として、実際の活性に関与している。典型的には、作物保護剤組成物において、これらの活性化合物は、個々の物質として又は活性化合物混合物として、溶媒、粘着性付与剤、乳化剤などの有効な物質と一緒に製剤される。従って、本発明の方法で処理される排水は、様々な活性化合物及び有効な物質を含み得る。作物保護のための活性化合物は、それらの最も重要な使用領域に従って分類し得る。ここで、除草剤、殺菌剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、殺虫剤を区別し、また、植物の生長を調節する活性化合物も区別する。
【0022】
当業者は、例えば、「Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed. on CD-ROM, Wiley VCH 1997:chapter Fungicides, Insect Control and Weed Control」及び「the Compendium of Pesticide Common Names, http://www.hclrss.demon.co.uk/index.html」により、適切な活性化合物についてよく知っている。
【0023】
本発明により水性活性化合物組成物として製剤することが可能な殺菌活性化合物の例としては、以下のものを挙げることができる:
・ アシルアラニン系、例えば、ベナラキシル、メタラキシル、オフラセ又はオキサジキシル;
・ アミン誘導体、例えば、アルジモルフ、ドジン、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、フェンプロピジン、グアザチン、イミノクタジン、スピロキサミン又はトリデモルフ;
・ アニリノピリミジン系、例えば、ピリメタニル、メパニピリム又はシプロジニル;
・ 抗生物質、例えば、シクロヘキシミド、グリセオフルビン、カスガマイシン、ナタマイシン、ポリオキシン及びストレプトマイシン;
・ アゾール系、例えば、ビテルタノール、ブロモコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニトロコナゾール(dinitroconazol)、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イマザリル、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロクロラズ、プロチオコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリフルミゾール又はトリチコナゾール;
・ 2-メトキシベンゾフェノン系、例えば、EP-A 897 904において一般式(I)により開示されているもの、例えば、メトラフェノン;
・ ジカルボキシイミド系、例えば、イプロジオン、ミクロゾリン、プロシミドン又はビンクロゾリン;
・ ジチオカルバメート系、例えば、ファーバム、ナーバム、マンネブ、マンゼブ、メタム、メチラム、プロピネブ、ポリカーバメート、チウラム、ジラム又はジネブ;
・ ヘテロ環式化合物、例えば、アニラジン、ベノミル、ボスカリド、カルベンダジム、カルボキシン、オキシカルボキシン、シアゾファミド、ダゾメット、ジチアノン、ファモキサドン、フェンアミドン、フェナリモール、フベリダゾール、フルトラニル、フラメトピル、イソプロチオラン、メプロニル、ヌアリモール、ピコベンズアミド(picobenzamid)、プロベナゾール、プロキナジド、ピリフェノックス、ピロキロン、キノキシフェン、シルチオファム、チアベンダゾール、チフルザミド、チオファネート-メチル、チアジニル、トリシクラゾール又はトリホリン;
・ ニトロフェニル誘導体、例えば、ビナパクリル、ジノカップ、ジノブトン又はニトロタル-イソプロピル;
・ フェニルピロール系、例えば、フェンピクロニル又はフルジオキソニル;
・ 非分類殺菌剤、例えば、アシベンゾラル-S-メチル、ベンチアバリカルブ、カルプロパミド、クロロタロニル、シフルフェナミド、シモキサニル、ジクロメジン、ジクロシメット、ジエトフェンカルブ、エジフェンホス、エタボキサム、フェンヘキサミド、酢酸トリフェニルスズ、フェノキサニル、フェリムゾン、フルアジナム、ホセチル、ホセチル-アルミニウム、イプロバリカルブ、ヘキサクロロベンゼン、メトラフェノン、ペンシクロン、プロパモカルブ、フタリド、トルクロホス-メチル、キントゼン又はゾキサミド;
・ ストロビルリン系、例えば、WO 03/075663において一般式(I)により開示されているもの、例えば、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン及びトリフロキシストロビン;
・ スルフェン酸誘導体、例えば、キャプタホール、キャプタン、ジクロフルアニド、ホルペット又はトリルフルアニド;
・ シンナムアミド系及び類似化合物、例えば、ジメトモルフ、フルメトベル(flumetover)又はフルモルフ;
・ 6-アリール-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン系、例えば、WO 98/46608、WO 99/41255又はWO 03/004465においていずれの場合も一般式(I)により開示されているもの;
・ アミド殺菌剤、例えば、シフルフェナミド、及び、(Z)-N-[α-(シクロプロピルメトキシイミノ)-2,3-ジフルオロ-6-(ジフルオロメトキシ)ベンジル]-2-フェニルアセトミド。
【0024】
本発明により水性活性化合物組成物として製剤することが可能な除草剤物の例としては、以下のものを挙げることができる:
・ 1,3,4-チアジアゾール系、例えば、ブチダゾール及びシプラゾール;
・ アミド系、例えば、アリドクロル、ベンゾイルプロプ-エチル、ブロモブチド、クロルチアミド、ジメピペレート、ジメテナミド、ジフェナミド、エトベンザニド、フラムプロップ-メチル、ホサミン、イソキサベン、メタザクロール、モナライド、ナプタラム、プロナミド又はプロパニル;
・ アミノリン酸系、例えば、ビラナホス、ブミナホス、グルホシネート-アンモニウム、グリホサート又はスルホサート;
・ アミノトリアゾール系、例えば、アミトロール、又は、アニリド系、例えば、アニロホス若しくはメフェナセット;
・ アリールオキシアルカン酸系、例えば、2,4-D、2,4-DB、クロメプロップ、ジクロルプロップ、ジクロルプロップ-P、フェノプロップ、フルロキシピル、MCPA、MCPB、メコプロップ、メコプロップ-P、ナプロパミド、ナプロアニリド又はトリクロピル;
・ 安息香酸系、例えば、クロラムベン又はジカンバ;
・ ベンゾチアジアジノン系、例えば、ベンタゾン;
・ 白化剤(bleacher)、例えば、クロマゾン、ジフルフェニカン、フルオロクロリドン、フルポキサム、フルリドン、ピラゾレート又はスルコトリオン;
・ カーバメート系、例えば、カルベタミド、クロルブファム、クロルプロファム、デスメディファム、フェンメディファム又はバーノレート;
・ キノリンカルボン酸系、例えば、キンクロラック又はキンメラック;
・ ジクロロプロピオン酸系、例えば、ダラポン;
・ ジヒドロベンゾフラン系、例えば、エトフメセート;
・ ジヒドロフラン-3-オン系、例えば、フルルタモン;
・ ジニトロアニリン系、例えば、バナフィン、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、フルクロラリン、イソプロパリン、ニトラリン、オリザリン、ペンジメタリン、プロジアミン、プロフルラリン、トリフルラリン;
・ ジニトロフェノール系、例えば、ブロモフェノキシム、ジノセブ、酢酸ジノセブ、ジノテルブ、DNOC又は酢酸ミノテルブ(minoterb-acetate);
・ ジフェニルエーテル系、例えば、アシフルオルフェン-ナトリウム、アクロニフェン、ビフェノックス、クロルニトロフェン、ジフェノクスウロン、エトキシフェン、フルオロジフェン、フルオログリコフェン-エチル、ホメサフェン、フリロキシフェン、ラクトフェン、ニトロフェン、ニトロフルオルフェン又はオキシフルオルフェン;
・ ジピリジル系、例えば、シペルコート、ジフェンゾコートメチル硫酸、ジクワット又はパラコートジクロリド;
・ イミダゾール系、例えば、イソカルバミド;
・ イミダゾリノン系、例えば、イマザメタピル、イマザピル、イマザキン、イマゼタベンズ-メチル(imazethabenzmethyl)、イマゼタピル、イマザピック又はイマザモックス;
・ オキサジアゾール系、例えば、メタゾール、オキサジアルギル又はオキサジアゾン;
・ オキシラン系、例えば、トリジファン;
・ フェノール系、例えば、ブロモキシニル又はアイオキシニル;
・ フェノキシフェノキシプロピオン酸エステル系、例えば、クロジナホップ、シハロホップ-ブチル、ジクロホップ-メチル、フェノキサプロップ-エチル、フェノキサプロップ-P-エチル、フェンチアプロップ-エチル、フルアジホップ-ブチル、フルアジホップ-P-ブチル、ハロキシホップ-エトキシエチル、ハロキシホップ-メチル、ハロキシホップ-P-メチル、イソキサピリホップ、プロパキザホップ、キザロホップ-エチル、キザロホップ-P-エチル、キザロホップ-テフリル;
・ フェニル酢酸、例えば、クロルフェナック;
・ フェニルプロピオン酸系及びそのエステル、例えば、クロロフェンプロップ-メチル;
・ ppi-活性成分(ppi=植え付け前混和)、例えば、ベンゾフェナップ、フルミクロラック-ペンチル、フルミオキサジン、フルミプロピン、フルプロパシル(flupropacil)、ピラゾキシフェン、スルフェントラゾン又はチジアジミン(thidiazimin);
・ リン化合物系、例えば、グリホサート、グルホシネート、アミプロホス、アニロホス、ベンスリド、ビラナホス、ブタミホス、2,4-DEP、DEPMA、EBEP、ホサミン、ピペロホス;
・ ピラゾール系、例えば、ニピラクロフェン;
・ ピリダジン系、例えば、クロリダゾン、マレイン酸ヒドラジド、ノルフルラゾン又はピリデート;
・ ピリジンカルボン酸系、例えば、クロピラリド、ジチオピル、ピクロラム又はチアゾピル;
・ ピリミジルエーテル系、例えば、ピリチオバック酸、ピリチオバック-ナトリウム、KIH-2023又はKIH-6127;
・ スルホンアミド系、例えば、フルメツラム又はメトスラム;
・ トリアゾールカルボキサミド系、例えば、トリアゾフェナミド(triazofenamide);
・ ウラシル系、例えば、ブロマシル、レナシル又はターバシル;
・ さらに、ベナゾリン、ベンフレセート、ベンスリド、ベンゾフルオル、ベンタゾン、ブタミホス、カフェンストロール、クロルタル-ジメチル、シンメチリン、ジクロベニル、エンドタール、フルオルベントラニル(fluorbentranil)、メフルイジド、ペルフルイドン、ピペロホス、トプラメゾン(topramezone)及びプロヘキサンジオン-カルシウム(prohexandion-calcium);
・ スルホニル尿素系、例えば、アミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロン-メチル、クロリムロン-エチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメツルフロン-メチル、フラザスルフロン、ハロスルフロン-メチル、イマゾスルフロン、メトスルフロン-メチル、ニコスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン-エチル、リムスルフロン、スルホメツロン-メチル、チフェンスルフロン-メチル、トリアスルフロン、トリベヌロン-メチル、トリフルスルフロン-メチル又はトリトスルフロン;
・ シクロヘキサノン型の植物保護活性成分、例えば、アロキシジム、クレトジム、クロプロキシジム、シクロキシジム、セトキシジム及びトラルコキシジム。
【0025】
シクロヘキサノン型の特に非常に好ましい除草活性化合物は、テプラロキシジム(cf. AGROW, No. 243, 11.3.95, page 21, caloxydim)及び2-(1-[2-{4-クロルフェノキシ}プロピルオキシイミノ]ブチル)-3-ヒドロキシ-5-(2H-テトラヒドロチオピラン-3-イル)-2-シクロヘキセン-1-オンであり、スルホニル尿素型の特に非常に好ましい除草活性化合物は、N-(((4-メトキシ-6-[トリフルオロメチル]-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)カルボニル)-2-(トリフルオロメチル)-ベンゾールスルホンアミドである。
【0026】
本発明により水性活性化合物組成物として製剤することが可能な殺虫剤の例としては、以下のものを挙げることができる:
・ 有機リン酸エステル系、例えば、アセフェート、アジンホス-メチル、クロルピリホス、クロルフェンビンホス、ダイアジノン、ジクロルボス、ジメチルビンホス、ジオキサベンゾホス、ジクロトホス、ジメトエート、ダイスルホトン、エチオン、EPN、フェニトロチオン、フェンチオン、イソキサチオン、マラチオン、メタミドホス、メチダチオン、メチルパラチオン、メビンホス、モノクロトホス、オキシジメトン-メチル、パラオキソン、パラチオン、フェントエート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホレート、ホキシム、ピリミホス-メチル、プロフェノホス、プロチオホス、ピリミホス-エチル、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、スルプロホス、トリアゾホス、トリクロルホン、テトラクロロビンホス又はバミドチオン;
・ カーバメート系、例えば、アラニカルブ、ベンフラカルブ、ベンジオカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、インドキサカルブ、メチオカルブ、メソミル、オキサミル、ピリミカーブ、プロポクスル、チオジカルブ又はトリアザメート;
・ ピレスロイド系、例えば、ビフェントリン、シフルトリン、シクロプロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、シハロトリン、ラムダ-シハロトリン、ペルメトリン、シラフルオフェン、タウ-フルバリネート、テフルトリン、トラロメトリン、アルファ-シペルメトリン又はゼータ-シペルメトリン;
・ 節足動物成長調節剤: (a) キチン合成阻害薬、例えば、ベンゾイル尿素系、例えば、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロ、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、ブプロフェンジン、ジオフェノラン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾール又はクロフェンテジン; (b) エクジソン拮抗薬、例えば、ハロフェノジド、メトキシフェノジド又はテブフェノジド; (c) 幼若ホルモンミミック、例えば、ピリプロキシフェン、メトプレン又はフェノキシカルブ; (d) 脂質生合成阻害薬、例えば、スピロジクロフェン;
・ ネオニコチノイド系、例えば、フロニカミド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム、ニチアジン、アセタミプリド又はチアクロプリド;
さらに別の非分類殺虫剤、例えば、アバメクチン、アセキノシル、アセタミプリド、アミトラズ、アザディラクチン、ビフェナゼート、カルタップ、クロルフェナピル、クロルジメホルム、シロマジン、ジアフェンチウロン、ジネトフラン(dinetofuran)、ジオフェノラン、エマメクチン、エンドスルファン、エチプロール、フェナザキン、フィプロニル、ホルメタネート、塩酸ホルメタネート、ヒドラメチルノン、イミダクロプリド、インドキサカルブ、メタフルミゾン(= 4-{(2Z)-2-({[4-(トリフルオロメトキシ)アニリノ]カルボニル}ヒドラゾノ)-2-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}ベンゾニトリル)、ニテンピラム、ピリダベン、ピメトロジン、スピノサド、硫黄、テブフェンピラド、チアメトキサム、チアクロプリド、チオシクラム、スピロメシフェン、スピロジクロフェン、ピリダリル、及び、WO 98/05638に記載されている式:
【化1】

【0027】
で表される活性化合物;
殺ダニ剤(acarizide)、特に、ブロモプロピレート、スピロジクロフェン、クロフェンテジン、フェンピロキシメート、ヘキシチアゾクス;
生長調節剤、例えば、アンシミドール、アゾルロン(azoluron)、クロルフルレノール-メチル、フルルプリミドール、ホルクロルフェニュロン、インドリル酪酸、メフルイジド、ナフチルアセトアミド、ナフチル酢酸、2-ナフチルオキシ酢酸(エステル)、パクロブトラゾール、チジアズロン、ウニコナゾール、プロファム、メピコート、クロルメコート、トリネキサパック、プロヘキサジオン、並びに、さらに、ジベレリン酸及びジベレリン類(ここで、ジベレリン類としては、例えば、ジベレリンGA1、ジベレリンGA3、ジベレリンGA4、ジベレリンGA5及びジベレリンGA7など、並びに、それらの対応するエキソ-16,17-ジヒドロジベレリン類及びさらにそれらの誘導体、例えば、C1-C4-カルボン酸とのエステルなどを挙げることができる);
殺細菌剤、特に、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)、カルベンダジム、クロロトルロン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの混合物、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、フルオメツロン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、イソプロツロン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、プロメトリン、プロピコナゾール、2-フェニルフェノール、チモール、4-t-アミルフェノール、4-クロロ-3-メチルフェニル、4-クロロ-2-ベンジルフェノール及び4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール;
軟体動物駆除剤、例えば、クロニトラリド(clonitralid);
殺藻剤、特に、キノクラミン及びキノナミド;
木材を保護するための第4級アンモニウム化合物をベースとする慣習的な塩類、例えば、トリメチル-C6-C30-アルキルアンモニウム塩類及びトリエチル-C6-C30-アルキルアンモニウム塩類、例えば、ココトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルセチルアンモニウム塩類、ジメチル-ジ-C4-C20-アルキルアンモニウム塩類及びジエチル-ジ-C4-C20-アルキルアンモニウム塩類、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド及びジデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジココジメチルアンモニウムクロリド、C1-C20-アルキル-ジ-C1-C4-アルキルベンジルアンモニウム塩類、例えば、ココベンジルジメチルアンモニウムクロリド、メチル-ジ-C4-C20-アルキルポリ(オキシエチル)アンモニウム塩類及びエチル-ジ-C4-C20-アルキルポリ(オキシエチル)アンモニウム塩類、例えば、ジデシルメチルポリ(オキシエチル)アンモニウムクロリド及びジデシルメチルポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネート、並びに、さらに、ボレート類、カルボネート類、ホルメート類、アセテート類、ビカルボネート類、スルフェート類及びメトスルフェート類。
【0028】
作物保護剤製剤は、実際の活性化合物に加えて、一般に、多くの様々なアジュバント、溶媒及び界面活性剤助剤を含んでいる。それらについては、以下で説明する。
【0029】
アジュバント及び溶媒
・ パラフィン油類、芳香族炭化水素類及び芳香族炭化水素類の混合物、例えば、キシレン類、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200など;
・ フェノール類及びアルキルフェノール類、例えば、フェノール、ヒドロキノン、ノニルフェノールなど;
・ 4個を超える炭素原子を有するケトン類、例えば、シクロヘキサノン、イソホロン、イソフェロン(isopherone)、アセトフェノン、アセトナフトン;
・ 4個を超える炭素原子を有するアルコール類、例えば、アセチル化ラノリンアルコール、セチルアルコール、1-デカノール、1-ヘプタノール、1-ヘキサノール、イソオクタデカノール、イソプロピルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール;
・ カルボン酸エステル類、例えば、アジピン酸ジアルキル、例えば、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、フタル酸ジアルキル、例えば、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、酢酸アルキル(さらに、分枝鎖アルキル基)、例えば、酢酸エチル及びアセト酢酸エチル、ステアリン酸エステル、例えば、ステアリン酸ブチル、モノステアリン酸グリセリル、クエン酸エステル、例えば、クエン酸アセチルトリブチル、さらに、オクタン酸セチル、オレイン酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、テトラデカン酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、安息香酸メチル、乳酸エステル、例えば、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル及び2-エチルヘキシルラクテート。
【0030】
・ 植物油類、例えば、パーム油、ナタネ油、ヒマシ油及びその誘導体、例えば、酸化誘導体、ココナツ油、タラ肝油、トウモロコシ油、ダイス油、アマニ油、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、グレープフルーツ油、メボウキ油、アンズ油、ジンジャー油、ゼラニウム油、オレンジ油、ローズマリー油、マカダミア油、オニオン油、マンダリン油、パイン油、ヒマワリ油;
・ 硬化植物油類、例えば、硬化パーム油、硬化ナタネ油、硬化ダイズ油;
・ 動物油類、例えば、ブタ脂肪油(pig fat oil)、魚油;
・ 中鎖〜長鎖脂肪酸のジアルキルアミド類、例えば、Hallcomide類;
及び、さらに、
・ 植物油エステル類、例えば、ナタネ油メチルエステル。
【0031】
界面活性剤、界面活性化合物
アニオン性界面活性剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる:カルボキシレート類、特に、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、例えば、ステアリン酸カリウム(これは、通常、セッケンとも称される);アシルグルタメート類;サルコシネート類、例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム;タウレート類;メチルセルロース類;アルキルホスフェート類、特に、一リン酸及び二リン酸のアルキルエステル類;スルフェート類、特に、アルキルスルフェート類及びアルキルエーテルスルフェート類;スルホネート類、さらに、アルキルスルホネート類及びアルキルアリールスルホネート類、特に、アリールスルホン酸及びアルキル置換アリールスルホン酸のアルカリ金属塩類、アルカリ土類金属塩類及びアンモニウム塩類、アルキルベンゼンスルホン酸類、例えば、リグノール及びフェノールスルホン酸、ナフタレン及びジブチルナフタレンスルホン酸、又は、ドデシルベンゼンスルホネート類、アルキルナフタレンスルホネート類、アルキルメチルエステルスルホネート類、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレンスルホン酸、フェノール-及び/若しくはフェノールスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物、又は、ナフタレンスルホン酸、フェノール-及び/若しくはフェノールスルホン酸とホルムアルデヒド及び尿素との縮合物、モノアルキルスルホスクシネート類若しくはジアルキルスルホスクシネート類;並びに、タンパク質加水分解産物、及び、リグノスルフィト廃液。上記で挙げたスルホン酸は、有利には、その中性塩の形態で使用するか、又は、適切な場合には、塩基性塩の形態で使用する。
【0032】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる:
・ 脂肪アルコールポリオキシエチレンエステル類、例えば、ラウリルアルコールポリオキシエチレンエーテルアセテート;
・ アルキルポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンエーテル類、例えば、イソトリデシルアルコールのアルキルポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンエーテル類、並びに、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル類;
・ アルキルアリールアルコールポリオキシエチレンエーテル類、例えば、オクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル類;
・ アルコキシル化動物及び/又は植物脂肪類及び/又は油類、例えば、トウモロコシ油エトキシレート類、ヒマシ油エトキシレート類、獣脂エトキシレート類;
・ グリセロールエステル類、例えば、モノステアリン酸グリセロール;
・ 脂肪アルコールアルコキシレート類及びオキソアルコールアルコキシレート類、特に、RO-(R18O)r(R19O)sR20[ここで、R18及びR19は、互いに独立して、C2H4、C3H6又はC4H8であり、R20はH又はC1-C12-アルキルであり、RはC3-C30-アルキル又はC6-C30-アルケニルであり、r及びsは、互いに独立して、0〜50であるが、この2つの変数が同時に0であることはない]のタイプのものの脂肪アルコールアルコキシレート類及びオキソアルコールアルコキシレート類、例えば、イソトリデシルアルコール及びオレイルアルコールポリオキシエチレンエーテル;
・ アルキルフェノールアルコキシレート類、例えば、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール若しくはノニルフェノール、トリブチルフェノールポリオキシエチレンエーテル;
・ 脂肪アミンアルコキシレート類、脂肪酸アミドアルコキシレート類及び脂肪酸ジエタノールアミドアルコキシレート類、特に、それらのエトキシレート類;
・ 糖界面活性剤、ソルビトールエステル類、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、アルキルポリグリコシド類、N-アルキルグルコンアミド類;
・ アルキルメチルスルホキシド類;
・ アルキルジメチルホスフィンオキシド類、例えば、テトラデシルジメチルホスフィンオキシド。
【0033】
両性界面活性剤としては、例えば、スルホベタイン類、カルボキシベタイン類及びアルキルジメチルアミンオキシド類、例えば、テトラデシルジメチルアミンオキシドなどを挙げることができる。
【0034】
ここで例として挙げることができる他の界面活性剤は、ペルフルオロ界面活性剤、シリコーン界面活性剤、リン脂質類、例えば、レシチン又は化学的に修飾されたレシチン類、アミノ酸界面活性剤、例えば、N-ラウロイルグルタメートなどである。
【0035】
特に別途示されていない限り、上記で挙げた界面活性剤のアルキル鎖は、通常8〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のラジカルである。
【0036】
ここで言及されている助剤は、典型的には、懸濁液剤(suspension concentrate)、乳剤(emulsion concentrate)、サスポエマルション剤(suspoemulsion)、水和剤(water-dispersible powder)又は顆粒水和剤(water-dispersible granule)に使用される。さらに、作物保護剤は、油性懸濁液剤(oil suspension concentrate)にも加工処理され、これは、別のタイプの助剤を含有し得る。
【0037】
増粘剤として知られているものとして、油性懸濁液剤は、さらに、例えばベントナイト、タルサイト又はヘクトライトなどの無機成分を含有することができ、その結果、一般に、セラムの形成がより少なくなるか又は沈殿がより少なくなることに関して、当該製剤の物理的特性が改善される。さらに、それらは、貯蔵中における該製剤中の化学過程を(通常、粘度増大の結果として)抑制することも可能であり、その結果、該活性化合物の安定性は改善され得る。さらに、適している有機増粘剤は、例えば、ヒマシ油誘導体である。これらの油性懸濁液剤は、溶媒に加え、製剤のさらなる成分として、乳化剤、界面活性剤及び界面活性助剤、例えば、湿潤剤又は分散剤なども含んでいる。タンクミックス法で希釈されたときに、それらは、2相系又は3相系として、エマルション(活性化合物が水溶性に場合)又はサスポエマルションを形成する。
【0038】
該作物保護組成物は、さらに、0〜60%の水を含有し得る。ここで、水の割合(%)は、選択した製剤のタイプに依存する。かくして、乳剤及び油性懸濁液剤の場合、水の量は、慣習的に、0%から最大で5%まで、好ましくは、一般に、0〜2%であるのに対して、O/W懸濁液剤、W/O懸濁液剤又はサスポエマルション剤の場合は、水の割合(%)は、慣習的に、20〜50%である。
【0039】
適切な場合には、水性製剤は、さらに、1種類以上の製剤助剤(d)も含有し得る。適切な製剤助剤は、例えば、増量剤、溶媒、消泡剤、殺細菌剤及び不凍剤などである。
【0040】
使用に先立ち、使用者(一般に、農業従事者)は、作物保護剤(これは、通常、濃厚物として調節されている)を自体公知の方法で水を用いて完成した散布液へと加工処理する。即時使用可能な散布液(ready-to-spray liquor)は、通常、0.0001〜10%、好ましくは、0.001〜1%、特に、0.01〜0.5%の作物保護剤、及び、0.001〜50%、好ましくは、0.01〜5%、特に、0.1〜0.5%の上記混合物を含んでいる。その散布液は、自体公知の方法で、特に、例えば自走式スプレーヤを用いて、微細分配ノズルで噴霧することにより施用することができる。この目的のために使用される装置及び手順は、当業者にはよく知られている。
【0041】
上記作物保護剤を施用する場合、本発明の方法により酸化される活性化合物は、通常、多相系として存在しており、ここで、本発明の方法の実施形態による多相系は、(a)親水性相、好ましくは、水相;(b)0.001%〜1%の、好ましくは、0.01%〜0.5%の、活性化合物粒子含有ミクロ分散質固相、及び/又は、活性化合物含有ミクロ乳化親油性相(例えば、油相);(c)0.001%〜2%の、好ましくは、0.01%〜0.5%の界面活性助剤及び/又は有機溶媒;及び、(d)0.01%〜5%の、特に、0.1%〜1%の電解質塩を含んでいる。
【0042】
多相系の場合、該ヘテロトロピック親油性相中の作物保護剤のフラクション及び/又は粒子状固相のフラクションは、1〜99%の範囲内、好ましくは、5〜85%の範囲内にある。
【0043】
懸濁液製剤、顆粒水和剤の製剤及びサスポエマルション製剤の微粒子状活性化合物は、特に、水溶性に乏しく、さらに、電気化学的酸化においてOHラジカルによる攻撃を防止し得る又はその進行を妨げ得るコーティングポリマー、イオン性界面活性剤又は界面活性助剤に取り囲まれている。他の多くの場合、それらは急速な酸化を受けるポリエーテル系である。その結果、予め溶解させてあるか又はミクロ分散させてあるか又は乳化させてある活性化合物は、凝集し得るか又は沈殿し得る。結果として、本発明の方法に関連して、多相作物保護剤含有排水の場合でさえ、空時収量が良好で且つ分解率が初期COD値の80%を超えるということは、当業者にとってさらに驚くべきことである。
【0044】
本発明の方法の特に好ましい変形態様では、該電気化学的セルを循環路中に配置し、該作物保護剤を含んでいる排水を、該排水のCOD値が電気化学的酸化の前の初期値と比較して少なくとも80%低減されるまで、好ましくは少なくとも90%低減されるまで、該循環路内で循環させる。COD値は、排水の全ての成分を完全に酸化するのに必用な酸素の量(容積を基準とする質量)を示す化学的酸素要求量を意味するものと理解され、ここで、問題になっている作物保護剤含有農業排水の場合、当該有機成分は、非常に重要である。従って、該COD値は、汚染物質負荷又は排水の汚染の程度を決定するのに適しており、環境解析の重要な合計パラメータ(sum parameter)である。COD値を少なくとも80%低減すれば(これは、本発明により達成可能である)、本発明により処理された排水中で、例えば部分的な酸化により、毒物学的に好ましくないか又はさもなければ環境に対して有害であり得る活性化合物誘導体が形成されるのを確実に防止することが可能である。
【0045】
本発明の方法は、さらにまた、水溶解度が充分ではない(例えば、1g/L未満、特に、0.1g/L未満)作物保護剤を酸化的に分解するのにも適している。
【0046】
伝導性を増大させるために、処理される排水に電気化学において慣習的な電解質塩を添加することもできる。従って、有利には、0.001〜5%、特に、0.1〜0.5%の環境に対して適合性の電解質塩、例えば、テトラ(C1-C6-アルキル)アンモニウム塩類、好ましくは、トリ(C1-C6-アルキル)メチルアンモニウム塩類を補助電解質(support electrolyte)として処理される排水に添加する。対イオンとして用いるのに適しているものは、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、アルキル硫酸アニオン、アリール硫酸アニオン、ハロゲン化物、リン酸アニオン、炭酸アニオン、アルキルリン酸アニオン、アルキル炭酸アニオン、硝酸アニオン、アルコキシド、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン又は過塩素酸アニオンである。さらにまた、補助電解質として適しているものは、上記で挙げたアニオンから誘導される酸である。典型的な例は、メチルトリブチルアンモニウムメチルスルフェート(MTBS)、メチルトリエチルアンモニウムメチルスルフェート、メチルトリプロピルメチルアンモニウムメチルスルフェート又はテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBABF4)である。しかしながら、環境適合性を目的として、特に好ましいものは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩類である。
【0047】
活性化合物の分解プロセスを促進するために、アニオン界面活性助剤、特に好ましくは、アニオン性の分枝鎖又は直鎖C4-C24-アルキルスルフェート及び/若しくはアニオン性の分枝鎖又は直鎖C4-C24-アルキルアリールするフェート又は同様のスルホネートからなる群から選択されるアニオン界面活性助剤を、処理される排水に追加的に加えても良い。電気化学において慣習的に使用されている共溶媒(例えば、アセトニトリル又は炭酸プロピレン)を添加することも可能である。
【0048】
10〜10000mg/Lの濃度の水溶性鉄塩も、処理される排水に添加することができる。あるいは、又は、さらに加えて、鋼鉄製又はステンレス鋼製のカソードを用いてもよく、また、該鉄塩は、極性を反転させることによるアノード腐食によって処理される排水中に導入することができる。
【0049】
本発明の方法に関連してあまり好ましいものではないが、それでも、当業者は、電気化学において広く使用されている自体公知の溶媒、好ましくは、極性プロトン性溶媒及び極性非プロトン性溶媒からなる群から選択される溶媒を、処理される排水に添加することも可能であろう。極性非プロトン性溶媒の例は、ニトリル類、アミド類、スルホキシド類、カルボネート類、エーテル類、尿素類、塩素化炭化水素類、例えば、CH3CN、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、炭酸プロピレン及びジクロロメタンなどである。極性プロトン性溶媒の例は、アルコール類、カルボン酸類及びアミド類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールなどである。これらは、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールなどのように、部分的にハロゲン化されていても良い。適切な場合には、慣習的な共溶媒も該電解液に添加する。後者は、有機化学において一般に慣習的な酸化電位が高い不活性溶媒である。ここで挙げることができる例は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトニトリル又はジメチルホルムアミドである。
【0050】
本発明の方法に従って処理される排水は、農業生産において使用者によって得られた、例えば、残留量の水性の単相又は多相の散布液であり得るか、及び/又は、タンクミックスプロセスで使用した作物保護剤と接触した器具の濯ぎ洗い及び洗浄の結果として得られた排水であり得る。
【0051】
しかしながら、処理される該排水は、作物保護剤のための製造設備に由来する単相又は多相の残留量であってもよく、ここで、処分が必用な作物保護剤含有排水は、製品開発においてや品質管理に際して生じるのみではなく、質の悪いバッチが製造された結果としても生じる。これらの全領域において、本発明の方法は、より複雑でよりコストがかかる作物保護組成物の特殊廃棄物としての焼却に対して、費用効果的な環境に優しい代案を提供する。
【0052】
本発明は、さらにまた、作物保護剤を含んでいる排水を処理するための装置にも関し、、ここで、該装置は、少なくとも1の電気化学的酸化セルを含んでいる排水循環路、該排水のための運搬設備及び制御ユニットを含んでいる。好ましくは、本発明の装置は、当該作物保護剤の分解の進行をモニタリングするための、及び、未分解活性化合物の閾値にいつ達したかを決定するための検出ユニットを含んでいる。この目的のために、該排水に例えば指示薬染料を添加してもよく、ここで、該指示薬染料は、電気化学的酸化によるその分解速度論が分解対象の該作物保護剤の電気化学的酸化による分解速度論に本質的に対応していて、それにより、該作物保護剤の分解を、例えば光学的検出ユニットで、モニタリングすることが可能となるような指示薬染料である。
【0053】
上記で論じたように、電気化学的酸化セルに関して、20〜20000ppmの濃度のホウ素を含んでいるホウ素ドープダイヤモンド電極を使用するのが好ましい。
【0054】
ホウ素ドープダイヤモンド電極を有する電気化学的セル(以下、BDDセルと称する)の調製については、当業者には一般的に知られている。かくして、国際特許出願WO 02/088430A1には、場合によりモジュール式であっても良い電気化学的BDDセルについて記載されている。そのようなBDDセルの調製及び構築に関して、この文献の開示内容及びその中で言及されているさらなる従来技術の開示内容については、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0055】
上記従来技術には、さらに、BDDセルを用いて工場排水のCOD値を低減する方法についても開示されている。US 5,399,247には、排水を光処理する方法について記載されている。しかしながら、この排水を光処理する方法においては、当該排水中に存在している物質は、容易に水に溶解するか又は完全に溶解している有機化合物、例えば、カルボン酸類、アミノ酸類、キレート類又は比較的単純な親水性芳香族物質(例えば、フェノール類又はアリールアミン類)などの均質な単相溶液である。BDDシステムの使用については、EP 1036861A1によっても教示されている。このEP 1036861A1には、有機溶媒系(一般に、水非含有溶媒系)中における、特に、メタノール中における、酸化反応及び応用について記載されている。BDDセルのさらなる適用は、飲料水若しくはスイミングプールにおける風呂水の消毒、又は、染料製造排水の脱色である。作物保護剤とは対照的に、有機染料顔料は、一般に、電子過剰な長鎖のメソメリーパイ系を有している。その結果、脱色において、それらは、酸化剤(例えば、過酸化物又はOHラジカル)による攻撃に対して比較的優れた反応相手である。ここで、電気化学的BDD処理は、一般に、OH誘導体化、即ち、パイ電子鎖の開環及びその結果として起こる脱色に限定される。本発明の方法とは異なって、従来技術で記載されている方法は、それぞれの適用に先立ち、pH、電解質塩、アンペア数及びボルト数又は循環条件に関して、並びに、予備試験された空時収量に関して、該酸化プロセスを適合させることができるように、一般に、正確に定義された出発条件に基づいている。
【0056】
以下、図面において図式的に示されている本発明の装置の実施形態及びその装置を用いて実施した実施例により、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0057】
図面において:
図1は、作物保護剤を含んでいる排水を処理するための本発明の装置を図式的に描いたものである;
図2は、本発明の装置のBDDセル内において作物保護剤の電気化学的酸化に際して起こる反応を図式的に描いたものである。
【0058】
図1に示されている作物保護剤含有排水を処理するための装置(10)は、熱交換器で冷却されている受け入れ容器(12)を有する排水循環路(11)、循環ポンプ(13)及び電気化学的セル(14)(この場合は、CESEM(Swiss Center for Electronics and Microtechnology)(Neuchatel, Switzerland)製の「DiaCell Type 104」タイプのBDDセルである)含んでいる。電源(15)から、該セルの電極に、5Aのアンペア数で40Vの電圧を印可した。受け入れ容器(12)から、気体は、ダクト(16)を介して流出可能である。ダクト(17)により、一定の時間間隔をおいてサンプルを採取することが可能となる。循環路(11)には、さらに、流量計(18)及び温度計(19)も備えられている。
【0059】
該セル内で使用した電極は、p-Si支持体(Siltronix)上のBDD電極であった。この物質は、アノードとカソードの両方で使用した。そのBDD電極は、HF-CVDプロセス(ホットフィラメント化学蒸着)で調製した。アノードの材料とカソードの材料が(本例におけるように)同一である場合、アノードの表面に付着する堆積物は、位相反転回路を用いてカソード的に切断(cathodically remobilized)可能である。従って、1〜100分毎に位相を反転させるのが有利であり得る。しかしながら、他の材料、例えば、白金、半貴金属又はステンレス鋼も、純粋なカソード材料として適している。
【0060】
本発明により利用可能な電極の支持体又はコア又は基体は、ケイ素、チタン、ニオブ、モリブデン、金、ジルコニウム、タングステン、タンタル、白金又はグラファイトであり、これらに、BDD層を特別なプロセスで適用することができる。該BDD層は、CVDプロセスにより適用し得るか、又は、加圧下、BDD粒子を金属基体中に組み入れることにより適用し得る。不動態化可能な支持体(例えば、ケイ素、チタン又はニオブなど)は、一般に水不溶性の酸化物層を形成するか、又は、不動態化層さえも形成するので、好ましい。
【0061】
反応性層にホウ素をドーピングするために、0.1〜10000ppmの範囲にある量のホウ素を使用する。作物保護剤を含んでいる排水を処理するのには、0.1〜20000ppmのホウ素が好ましい。ホウ素のドーピングは、軸層(axial layer)中に均一に又は不均一に分配させ得る。該支持体上の反応性物質の層の厚さは、好ましくは、0.5〜100μmであり、さらに好ましくは、1〜10μmである。適切な場合には、調製後にBDD層をフッ素化することは有利であり得る。
【0062】
本発明によれば、1L当たり0.1〜200gの電解質の量で、好ましくは、1L当たり0.5〜10gの電解質の量で、該農薬排水に電解質塩を添加する。
【0063】
好ましい電解質は、アンモニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩及び炭酸塩であり、又は、硫酸水素塩などの酸性塩も好ましい。適切な界面活性助剤は、それらと分枝鎖若しくは直鎖のアルキル-C1-C24、好ましくは、C4-C12-アルコール、C1-C20-アルキルアリールスルホネートとのモノエステル、例えば、n-オクチルモノスルフェートエステルナトリウム塩、イソオクチルモノスルフェートエステルナトリウム塩、ドデシルフェニルスルホネート類、又は、例えば、いわゆる半電解質(semielectrolyte)と称される、アルキルスルホコハク酸ナトリウムである。酸化プロセス中に、これらの有機物質は、該有機活性化合物と一緒に酸化される。それらの機能は、分解される該活性化合物の該セルの表面における利用率を中間的に改善することである。
【0064】
本発明によれば、これらの半電解質又はアニオン性界面活性剤は、伝導性を増大させることにより、総体的に電流/時間収量も改善し得る。付加的な効果は、該活性化合物の優れた可溶化又はミクロ分散である。総体的な結果は、酸化についての良好な空時収量である。一般に、加えられた助剤も、該活性化合物と一緒に酸化される。
【0065】
BDDセル内で起こる酸化的電気化学的分解反応について、図2に示されている反応方程式により説明する。
【0066】
Rx及びRyに関する適切なラジカルを用いて、上記反応方程式は活性化合物エポキシコナゾールについて例証している。上記方程式によれば、H+イオン(プロトン)又はヒドロキソニウムイオンが生成され、それらは、カソードにおいて元素水素を形成する。それに続く段階では、OH-アリール基がさらにヒドロキシル化され、次いで、アリール環が分解されて、酸化C-C鎖、特に、ヒドロキシカルボン酸誘導体、シュウ酸又は別のジカルボン酸となる。OH-ラジカルは、一般に、2.6〜2.8ボルトの過電圧で生成される。副反応として、2つのOHラジカルの二量化も起こってH2O2となり、これは、該反応に従って少量のFe塩類を添加すると、フェントン反応を受けて、酸化剤としても作用する。
【実施例】
【0067】
実施例1
3相系の例としての「Opus Top」タンクミックス又は排水の分解
「Opus Top」を水の中に入れて撹拌した場合、サスポエマルションが形成され、そこでは、連続相としての水に加えて、活性化合物エポキシコナゾールが固相中に粒子形態で存在しており、また、フェンプロピモルフは、油相中で乳化された液状活性化合物として存在している。分解実験について、以下で説明する。
【0068】
供給材料
・ 「Opus Top」(BASF製製品) 以下のものを含有:
活性化合物 フェンプロピモルフ 250 g/L
エポキシコナゾール 84 g/L
密度 1.02 g/mL
・ 硫酸ナトリウム
・ 水道水(源:Limburgerhof/Germany)
実験設備は、図1のそれに相当する。
【0069】
実験の実施
実験の初めに、5Lの水道水を最初に受け入れ容器の中に入れ、26.02gの「Opus」を入れて撹拌する。これにより、「Opus Top」の濃度は約0.5%となるが、これは、作物保護においても施用目的に典型的に使用される濃度であり得る(殺菌剤としての典型的な施用量:200Lのタンクミックス当たり1Lの「Opus Top」)。その溶液を電磁式撹拌機を用いて充分に混合し、次いで、20gの硫酸ナトリウムを添加する。次いで、ブランクサンプル及び比較値として最初のサンプルを取る。次いで、Teflon製ラジアルポンプを200L/hのポンプ速度で用いて、乳白色のサスポエマルションをポンプで上記Diacell系及び2つのガラス製凝縮器に通し、該製品容器内に再循環させる。活性化合物を分解させるために、38mA/cm2の電流密度で定電流電解を実施した。1.5時間経過した後、混合容器又は受け入れ容器から別のサンプルを採取する。次に下記表に示されているように、残りのサンプルを採取する。酸化が進行している間、該サスポエマルションの色は、僅かに褐色になる。この褐色の色は実験中に強まっていくが、分解の終わりに向かって、ゆっくりと、再度減じていく。この褐色の色は、該活性化合物のアリール基において最初にフェノール性酸化生成物が形成されたことで説明され得る。このことは、上記反応スキームから明らかである。
【0070】
結果: 該活性化合物が分解されたことは、下記表1から明らかである。
【表1】

【0071】
35時間の実行時間が経過した後、酸化される散布液調製物の色は、未だ僅かに褐色がかっている。求められた活性化合物の含有量は、有意に減少した。活性化合物のフェンプロピモルフ及びエポキシコナゾールは、実質的に分解されている。
【0072】
実施例2
3相系の例としての「Opus Top」タンクミックス又は排水の分解及びCOD値のドキュメンテイション
表2には、比較実験における、3.0Lのバッチサイズに対するCOD分解値が記載されている。
【0073】
約14時間の処理時間が経過した後、COD値は、初期値の10500ppmから750ppmへと7.14%に減少した。約0.5gの未溶解残渣を500mmフィルターでDia又はBDDセルから除去した。実験1に関して既に記載したように、最初は非常に濁っていた「Opus Top」のサスポエマルション色は、中間で、僅かに褐色となり、次いで、電気化学的酸化プロセスの終わりに該溶液が殆ど透明になるまで、再び明るくなっていく。
【0074】
実施例3
2相系の例としての「Butisan S」タンクミックスの分解及びCOD値のドキュメンテイション
実験1及び実験2と同様に、1L当たり0.5gのメタザクロールを含んでいる人工的なタンクミックス排水について試験した。使用した作物保護剤は、除草剤又は2相懸濁液剤「Butisan S」(BASF Aktiengesellschaft製の市販品)であった。
【0075】
「Butisan S」溶液は、1L当たり2gの硫酸ナトリウム(1L当たり0.5gのメタザクロール)を含んでいる水道水中で調製し、硫酸(pH:2.1)を用いて僅かに酸性化した。それにより、BDD電気分解の初めにCOD値が急速に低下した。その分解速度は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて人為的にpHを5まで上昇させた場合、直ぐに、低下した。メタザクロールは塩素化化合物であるという事実に基づいて、カソードにおいても還元的な分解機構が作用している。これも、慣習的なカソード材料(ステンレス鋼、グラファイト、ジルコニウム)と比較して高い水素過電圧(1.5V/NHE)を達成するBDD電極を用いることにより、非常に望ましい。これらの還元的な塩素化合物は、中性-アルカリ条件下におけるよりも、より酸性条件下において、より良好に且つより急速に分解され得る。
【0076】
表3から明らかなように、約10時間の処理時間が経過した後、COD値は、70%を超えて減少した。
【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】作物保護剤を含んでいる排水を処理するための本発明の装置を図式的に描いた図である。
【図2】本発明の装置のBDDセル内において作物保護剤の電気化学的酸化に際して起こる反応を図式的に描いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物保護剤を含んでいる排水を処理する方法であって、該排水を電気化学的セルの中に導き、該排水中の作物保護剤を該電気化学的セル内で少なくとも部分的に電気化学的に酸化し、次いで、該作物保護剤の酸化的分解生成物を含んでいる排水を処分する、前記方法。
【請求項2】
使用する前記電気化学的セルがホウ素ドープダイヤモンド電極を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダイヤモンド電極が20〜20000ppmの濃度のホウ素を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気化学的酸化を、1〜1000mA/cm2の電流密度で、さらに好ましくは、10〜100mA/cm2の電流密度で実施する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記電気化学的酸化を、-20〜100℃の温度で、さらに好ましくは、5〜60℃の温度で実施する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酸化されることとなる該排水中の作物保護剤が、
(a) 親水性相、好ましくは、水相;
(b) 0.001重量%〜1重量%の、好ましくは、0.01重量%〜0.5重量%の、活性化合物粒子含有ミクロ分散質固相、及び/又は、活性化合物含有ミクロ乳化親油性相;
(c) 0.001重量%〜2重量%の、好ましくは、0.01重量%〜0.5重量%の、界面活性助剤及び/又は有機溶媒;
及び、
(d) 0.01重量%〜5重量%の、特に、0.1重量%〜1重量%の、電解質塩;
を含む多相系として存在している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ヘテロトロピック親油性相中の活性化合物のフラクション及び/又は微粒子固相のフラクションが、1〜99%の範囲、好ましくは、5〜85%の範囲にある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電気化学的セルを循環路中に配置し、前記作物保護剤を含んでいる排水を、該排水のCOD値が初期値と比較して少なくとも80%低減されるまで、好ましくは少なくとも90%低減されるまで、該循環路内で循環させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理される排水中に存在している作物保護剤の水溶解度が、1g/L未満、特に、0.1g/L未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記処理される排水に、0.001%〜5%の、特に、0.1%〜0.5%の環境適合性電解質塩が添加されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記処理される排水に、さらに、アニオン性界面活性助剤が添加されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理される排水に、さらに、10〜10000mg/Lの濃度の水溶性鉄塩が添加されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記処理される排水が、残留量の水性の単相又は多相の散布液、及び/又は、タンクミックスプロセスで使用した作物保護剤と接触した器具の濯ぎ洗い及び洗浄の結果として得られた排水を含んでいる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記処理される排水が、作物保護剤のための製造設備に由来する水性の単相又は多相の残留量を含んでいる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
作物保護剤を含んでいる排水を処理するための装置、特に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を実施するための装置であって、少なくとも1つの電気化学的酸化セルを含んでいる排水循環路、該排水のための運搬設備及び制御ユニットを含んでいる、前記装置。
【請求項16】
前記制御ユニットが前記酸化の終点を決定するための検出ユニットを含んでいる、請求項15に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−525164(P2008−525164A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543803(P2007−543803)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013069
【国際公開番号】WO2006/061192
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】