説明

迅速分散性含水カオリン

以下の比を満足する粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを含む組成物、ならびにこの粒径分布、中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(Alkyd Hegman Test)による一定のヘグマン(Hegman)分散を有する含水カオリンが開示されている。また、本発明の含水カオリンを含む組成物を調製する方法、ならびに含水カオリンの分散速度を増大する方法が開示されている。また、インキ、塗料、高分子製品、ゴム製品、およびコーティング剤などの本発明の含水カオリンを使用した製品が開示されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態に見合った微粉化含水カオリンを含む組成物が開示される。本明細書に開示された微粉化含水カオリンは、カオリンが水性媒体ならびに非水性媒体中で迅速な分散を示すことを可能にする粒径分布を有することができる。本明細書に開示された組成物は、インキ、塗料中の充填剤または増量剤、プラスチックス、高分子、製紙、およびコーティング剤などの多くの領域において使用することができる。さらに一般に、本明細書に開示された組成物は、含水カオリンが使用されるどこにでも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年11月21日に出願した米国仮出願第60/523,672号の優先権を主張するものである。
【0003】
微粒子カオリンは、通常は含水形態の形で生じ、ヒドロキシル官能性を含む結晶構造として存在する。含水カオリンは、製紙工業において広く使用されてきた。しかし、水性媒体中および/または非水性媒体中の典型的含水カオリンの分散速度は、制限されることがあるので、典型的な含水カオリンは、インキ、高分子、およびコーティング剤などのいくつかの用途において、時には、満足でない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、インキ、高分子、およびコーティング剤などの用途における生産の速度を改善するために、水性媒体中および非水性媒体中で、高い分散を示す能力のある含水カオリンに対する必要性が依然としてある。本発明者等は、驚くべきことには、比較的小量の非常に微細な粒子が高分散速度をもたらすこと、および定義された粒径分布を有する微粉化含水カオリンが、水性媒体ならびに非水性媒体において迅速な分散を可能とすることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の1つの態様は、比較的小さな部分を占める微細な粒子を含む粒径分布を有する微粉化含水カオリンを含む組成物に関し、比較的小さな部分を占める微細粒子は、以下の比を満足する粒径分布として定義される:
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
そして微粉化含水カオリンは、例えば2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径を有する。
【0006】
本発明の他の態様は、以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
例えば2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)による3分間で2を超える(3分間で2.5を超える、および3分間で3を超えるなどの)ヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する含水カオリンを含む組成物を提供する。
さらに、本発明の他の態様は、以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および
例えば2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径を有する含水カオリンを微粉化すること、および組成物中に該微粉化含水カオリンを含有させることを含む本明細書に開示されている組成物を調製する方法を提供する。
【0007】
その上、本発明は、含水カオリンが以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および
例えば2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径を有する含水カオリンを微粉化することを含む、含水カオリンの分散速度を増大する方法をさらに提供する。
【0008】
本発明の他の態様は、本明細書に開示されているような本発明の含水カオリンを含む、インキ、塗料、高分子、ゴム、およびコーティング剤などの製品を提供する。
【0009】
本発明の他の態様は、微粒子顔料または顔料混合物の分散速度を測定する方法を提供する。この方法は、微粒子顔料をアルキド樹脂含有系(液体の非水性ビニルトルエンアルキド樹脂含有系などの)と混合して、最初の顔料含有混合物を形成すること;最初の顔料含有混合物を粉砕して、粉砕された顔料含有混合物を生成すること;
粉砕された顔料含有混合物中の、微粒子顔料の相対的分散を測定すること;粉砕された顔料含有混合物を再粉砕すること、および再粉砕された顔料含有混合物中の微粒子顔料の相対的分散を測定することを含む。1つの態様において、相対的分散は、ヘグマングラインド(Hegman grind)ゲージに基づく方法を使用して測定することができる。他の態様において、相対分散は、顔料含有混合物から調製された乾燥皮膜の光沢および光輝を測定することによって求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において使用することができる含水カオリンは、ブラジルのリオカピム(Rio Capim)地域および米国ジョージアなどからの種々の場所から天然のものとして入手することができる。
【0011】
本明細書に開示されている“粒径分布”(PSD)は、(1)0.5μmの粒径を有する粒子の累積質量の(2)2μmの粒径を有する粒子の累積質量に対する比によって測定される。本発明による顔料製品などの微粒子製品のPSDは、米国ミクロメリティクス社(Micromeritics Corporation)から入手されるSEDIGRAPH(商標)、例えばSEDIGRAPH 5100を使用して、水などの標準水性媒体中に完全に分散された条件において、微粒子製品の沈降を測定することによって求めることができる。ある粒子の“粒径”は、媒体を沈降する等価な直径をもつ球体の直径、すなわち等価球体直径(ESD)によって表される。
【0012】
本明細書で示される百分率および量は、全て重量による。本明細書で示される量、百分率、および範囲は全て、概略のものである。
【0013】
1つの実施形態において、本明細書に開示されている本発明の含水カオリンは、2μm未満またはこれに等しい中央粒径を有する。例えば、中央粒径は、0.5μmを超えるが1.5μm未満、または1μm未満などの、0.5μmから1.5μmの範囲であってよい。また、中央粒径は、例えば2μm未満だが0.4μmより大きくてもよい。
【0014】
本明細書に開示された本発明の含水カオリンは、水性媒体ならびに非水性媒体において高分散速度を有することができる。本明細書に開示されているように、“水性媒体”は、水をベースとする媒体、およびさらに一般には極性、親水性媒体を意味する。一般に、“非水性媒体”は、非極性、疎水性媒体を意味する。場合によって、水性媒体および非水性媒体は、例えば、ケトン、エステル、およびアルコールから選択される少なくとも1種の可溶性有機溶媒を含むことができる。さらに、媒体は、水のエマルジョンおよび不溶性有機溶媒、例えば炭化水素を含むことができる。
【0015】
本明細書に開示されているように、微粉化は、当技術分野の通常の技術者に知られている任意のプロセス、例えばバウアー(Bauer)ミルまたは空気分級ミル(ACM)を使用して実施することができる。
【0016】
本明細書において、さらに開示されているものには、本発明の含水カオリンを使用して、インキなどの製品;艶消塗料などの塗料;高分子製品;ゴム製品;および紙用非水性コーティング剤などのコーティング剤がある。
【0017】
1つの実施形態において、本発明は、本明細書に開示されている本発明の含水カオリンを適切な媒体中に含むインキを提供する。本明細書に開示されている“インキ”は、例えばグラビアインキ、ヒートセットインキ、平版印刷インキ、および新聞印刷インキを含む、水性インキおよび非水性インキから選択することができる。本明細書に開示されている本発明の含水カオリンは、例えばインキ中の顔料として役立つことができ、水性媒体ならびに非水性媒体において高分散速度を示すことができるので、インキ製品に経済的利点を与えることができる。
【0018】
本明細書に開示されているインキにおける適切な媒体は、当技術分野において通常使用されている、水性媒体および非水性媒体から選択することができる。
【0019】
インキの最終用途によって、本明細書に開示されたインキは、例えばビニル樹脂などの樹脂;高分子;レオロジー改質剤、界面活性剤、および乾燥促進剤(ラウリル硫酸ナトリウム、N,N−ジメチル−m−トルアミド、シクロヘキシルピロリジノンおよびブチルカルビトールなど)といった添加剤;充填剤;希釈剤;湿潤剤(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、エーテル、カルボン酸、エステル、アルコール、オルガノスルフィド、オルガノスルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコール、およびケトンなど);および殺生剤(ベンゾエート、ソルベート、およびイソチアゾロンなど)から選択される少なくとも1種の成分をさらに含むことができる。インキ製品は、当技術分野で通常使用される顔料から選択される、少なくとも1種の他の顔料をさらに含むことができる。
【0020】
インキ中の本発明の含水カオリンの量は、当技術分野の通常の技術者には明らかであるように、インキの配合に基づいて大きく変えることができる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の含水カオリンは、配合されるインキの5重量%から45重量%の範囲の量において存在することができる。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、適切な媒体中において本明細書に開示されている本発明の含水カオリンを含む、水性または非水性工業用コーティング剤、建築用塗料、デコ(deco)塗料、またはアート塗料などの塗料を提供する。本明細書に開示されている本発明の含水カオリンは、例えば塗料において光沢制御剤顔料として役立つことができる。一般に、本発明の含水カオリンは、限界顔料体積未満の量において存在することができる。しかし、本発明の顔料は、乾燥皮膜基準で1重量%から80重量%の範囲においてなどの、より高い顔料体積濃度において存在することもできる。
【0022】
本明細書に開示されている塗料は、高分子バインダー、例えばポリビニルアルコール(PVA)およびラテックスから選択される、例えば水分散性バインダーなどのバインダー、および例えば界面活性剤、増粘剤、殺生剤、脱泡剤、ぬれ向上剤、分散剤、および合体剤から選択される通常塗料において使用される添加剤から選択される少なくとも1種の成分をさらに含むことができる。本明細書に開示された塗料は、例えばTiOおよび炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種の他の顔料を含むことができる。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されている本発明の含水カオリンを含む高分子製品を提供する。本発明の含水カオリンは、配合された高分子の60重量%までの、および最終高分子物品の30重量%までの濃度で存在することができる。本発明の含水カオリンは、樹脂増量(すなわち、充填)、TiO増量、ならびに高分子の強化に使用することができる。
【0024】
本明細書に開示されている高分子製品は、少なくとも1種の高分子樹脂を含む。用語“樹脂”は、プラスチック物品に形成する前の固体または液体の高分子材料を意味する。本発明において使用される少なくとも1種の高分子樹脂は、冷却(熱可塑性プラスチックの場合)または硬化(熱硬化プラスチックの場合)してプラスチック材料を形成することができる。
【0025】
本発明において使用することができる少なくとも1種の高分子樹脂は、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エンジニアリング高分子、アリル樹脂、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂から選択することができる。
【0026】
他の実施形態において、本明細書に開示されている本発明の含水カオリンを含むゴム製品を提供する。本発明の含水カオリン組成物は、樹脂増量、ゴムの強化、およびゴム組成物の増大した硬度といった恩恵をもたらす。本明細書に開示されているゴム製品は、天然ゴムおよび合成ゴムから選択される少なくとも1種のゴムを含む。例えば、タイヤトレッドの製造に使用することができるイオウ加硫性ゴムが、本発明において使用することができる。本発明において使用することができる合成ゴムの例には、限定はしないが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ビニル−スチレン−ブタジエンゴム(VSBR)、ブタジエンゴム(BR)、およびネオプレンゴムまたはポリイソプレンが含まれる。SBRは、エマルジョンSBR(E−SBR)または溶液SBR(S−SBR)であってよい。VSBRは、溶液VSBR(S−VSBR)であってよい。BRの例には、限定はしないが、シス−1,3−ポリブタジエンゴムおよびシス−1,4−ポリブタジエンゴムが含まれる。本発明において使用することができる天然ゴムの例は、標準マレーシア天然ゴムである。
【0027】
本明細書に開示されているゴム製品は、当技術分野において使用されている通常の添加剤、例えばエキステンダー油、および鉱物充填剤および合成充填剤から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。ゴム製品は、配合により本発明の含水カオリンを35重量%まで含むことができる。
【0028】
他の実施形態において、本発明は、紙用または板紙用非水性コーティング剤などの、本明細書に開示されている本発明の含水カオリンを含むコーティング剤を提供する。コーティング剤は、当技術分野において通常使用されているバインダーから選択される少なくとも1種のバインダーをさらに含むことができる。例示的バインダーには、限定はしないが、天然澱粉から得られる接着剤、および、例えばスチレンブタジエン、アクリル系ラテックス、酢酸ビニルラテックス、またはスチレンアクリル系、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、またはその混合物といった合成バインダーが含まれる。
【0029】
紙用または板紙用コーティング剤は、被覆された製品の最終用途によって、異なるバインダーレベルを有することができる。所望の最終製品に基づいて、適切なバインダーレベルは、当分野の技術者には、すぐに明らかとなるであろう。例えば、バインダーレベルは、表面に、インキが切れなく付着するように制御することができる。一般に、紙用または板紙用コーティング剤に対するラテックスバインダーレベルは、コーティング剤の総重量を基準にして、3重量%から30重量%の範囲である。例えば、少なくとも1種のバインダーが、コーティング剤の総重量を基準にして、3重量%から30重量%、10重量%から30重量%などの範囲の量において存在することができる。紙用または板紙用コーティング剤は、乾燥コーティングを基にして、約3重量%から約95重量%の範囲の量において含むことができる。
【0030】
本発明を以下の限定しない実施例によってさらに明らかにするが、これらは本発明の純粋に例示的なものであることを意図するものである。
【0031】
〔実施例〕
以下の実施例において、粒径データをSEDIGRAPH 5100を使用して、水中で標準温度34.9℃で求めた。
【実施例1】
【0032】
含水カオリンの4個の試料の粒径分布を以下の表Iに示した。この実施例においては、試料IおよびIIは、一般に水性および非水性系において良好な分散を示すと考えられている2種の従来の微粉化粒子である。本発明の試料AおよびBは、本発明によって噴霧乾燥したブラジル産製品から作製した。これらの本発明の含水カオリンは、New Jersey、Summitに所在するSlick Corporationの一部門の Mikro Samplmil Mikropulによって販売されている実験室ミクロミルによって多数回通過させる典型的微粉化条件をまねた条件を使用して、微粉化した。微粉化は、340メッシュ篩を使用して、試料をミクロミルを3回通過させることによって実施した。
【0033】
【表1】

【0034】
表Iに示した結果は、本発明による本発明の試料AおよびBが、以下の比:
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
を満足する粒径分布を有することを示しており、一方本発明によらない従来の微粉化試料 IおよびIIは、このような粒径分布を有していない。
【0035】
これら4個の試料の比較分散試験は、“SSM”V−Tアルキド ヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して行った。“SSM”V−Tアルキド ヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)において、表IIに記載した顔料含有混合物を最初に調製した。
【0036】
【表2】

基本配合において、固体濃度は、基本配合の総重量に基づいて45.9重量%であり、固体濃度は、基本配合の総体積に基づいて37.8体積%であることが理解される。次に、以下の表において述べられている最終配合を、基本配合に顔料(すなわち、含水カオリン試料)を添加することによって調製した。
【0037】
【表3】

顔料含有混合物の最終配合において、顔料体積濃度(PVC)は、最終配合の総体積に基づいて、34.9%であり、固体濃度は、最終配合の総重量に基づいて、69.0重量%であり、固体濃度は、最終配合の総体積に基づいて、50.2体積%であることが理解される。
【0038】
分散試験において、粉砕のために模擬サンドミルを使用した。詳細には、約250gのガラスビーズ、(Potters Industries A−Series、Tech Quality Grass Spheres、A−205、公称2mm径)を名目上同重量の物と一緒に500mlHDPEねじ蓋付き円筒試料壜に添加した。次いで、顔料含有混合物を機械的撹拌機、Red Devil Model 5400 Paint Shakerを使用して、ある一定時間(粉砕時間)粉砕した。分散は、0から8の範囲のHegman National Standardによって標準ヘグマングラインド(Hegman Grind)ゲージを使用して、時間の関数として測定した。Hegman Grind値の数値が高いほど、分散の相対的度合いが高い。結果を表IIIに示す。
【0039】
【表4】

【0040】
表IIIに示した結果は、本発明の試料AおよびBは、従来試料IおよびIIよりも高い分散速度を示す。
【0041】
さらに、皮膜特性を終夜乾燥後、4個の試料について測定した。光沢および光輝をHunter Pro−3 光沢計(Gloss Meter)を使用して、知られている方法において測定した。結果を表IVに示した:
【0042】
【表5】

【0043】
表IVに示した結果は、本発明の試料AおよびB、および、従来試料IおよびIIは、良好な非水性分散特性を有することを示している。
【実施例2】
【0044】
改善された分散速度が、減少した微細分布に関係していることを確認するために含水カオリンの6個の試料の粒径分布を測定した。結果を表Vに示す。この実施例において、試料II、IIIおよびIVは、非水性媒体中で高分散を有することが知られている従来の微粉化含水カオリン製品である。試料IIは、実施例Iにおける試料IIと同じである。試料C、DおよびEは、ブラジルカオリンおよびジョージアカオリンを使用して本発明によって作製された試料であり、実施例1に述べられているのと同じ条件下で、実験室的微粉化によって微粉化した。
【0045】
【表6】

【0046】
また、これら6個の試料の分散速度および皮膜特性を実施例Iに開示した方法によって測定した。結果をそれぞれ表VIおよび表VIIに示す。
【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
表VIに示した結果は、本発明の試料C、D、およびEが、従来試料II、IIIおよびIVよりも高い分散速度を有することを示している。表VIIに示した結果は、本発明の試料C、D、およびEが、従来試料II、IIIおよびIVよりも良好な非水性分散特性を有することを示している。
【実施例3】
【0050】
微粉化の効果を示すために、非微粉化、噴霧乾燥供給原料CおよびDの分散速度を測定し、本発明による対応する微粉化試料と直接比較した。分散速度を実施例1に開示した試験によって測定した。結果を表VIIIに示す。
【0051】
【表9】

【0052】
表VIIIに示した結果は、微粉化の効果、すなわち微粉化試料は、それらの対応する非微粉化試料よりも高い分散速度を有することを示している。これらの結果は、
ヘグマングラインド値(Hegman Grind Value)に関して示されており、より高い数値が相対的により高い分散度を表している。
【実施例4】
【0053】
微粉化の効果を実施例4においてさらに示した。分散速度を測定する際に、模擬サンドミルの代わりに高速コールズ型(cowles-type)ミキサーを使用する以外は実施例Iに開示した試験によって測定した。結果を表IXに示す。
【0054】
【表10】

【0055】
表IXに示した結果は、微粉化の効果、すなわち微粉化試料は、どの分散方法を使用するかに拘わらず、それらの対応する非微粉化試料よりも高い分散速度を有することを示している。これらの結果は、ヘグマングラインド値(Hegman Grind Value)に関して示されており、より高い数値が相対的により高い分散度を表している。
【実施例5】
【0056】
ここでは、微粉化の効果を3個の噴霧乾燥含水カオリンについてさらに示した。試料FおよびGは、本発明の粒径条件を満足する。さらに、非常に良好な分散特徴を有することが知られているが、本発明の粒径制限を満足していない従来の噴霧乾燥含水カオリンを対照試料Vとして使用した。3個の噴霧乾燥含水カオリン試料は、全て表XおよびXIに示した条件下で、実験室ミクロ微粉化機を使用して微粉化した。例えば、篩のサイズおよびミクロ微粉化機の通過回数を表XおよびXIに示すように変化させた。一般に、より細かい篩の使用および/またはより多い通過回数は、より良好な分散特性を有する製品をもたらす。分散速度および皮膜特性を実施例1に開示した方法によって測定した。結果をそれぞれ表XおよびXIに示す。
【0057】
【表11】

【0058】
【表12】

【0059】
結果は、微粉化の効果、すなわちヘグマングラインド値(Hegman Grind Value)によって示される分散の相対速度は、また微粉化の度合いに依存していることを示す。より完全な微粉化を行った試料は、より不完全な微粉化を行った同様の試料よりも、より高い分散速度を有する。同様の微粉化条件下でも、本発明による本発明の試料は、従来試料よりも高い分散速度を有する。
【0060】
さらに、表XIに示すように、細かい篩および1回通過により微粉化を行った本発明の試料FおよびGは、細かい篩および3回通過により微粉化を行った従来対照試料Vと類似の皮膜特性を示す。
【0061】
別に示さない限り、明細書および特許請求の範囲において使用されている成分、反応条件などを表す全ての数字は、“約”が付いたものであることを理解されたい。したがって、反対に示されていなければ、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に述べられている数字パラメーターは、本発明によって得ようとする所望の特性によって変化できる近似値である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉化含水カオリンを含む組成物であって、
該微粉化含水カオリンが、以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
微粉化含水カオリンが、約0.5μmから約1.5μmの範囲にある中央粒径(D50)を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
微粉化含水カオリンが、約2.0μm未満かつ約0.4μmを超える中央粒径(D50)を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
微粉化含水カオリンが、約1.0μm未満かつ約0.5μmを超える中央粒径(D50)を有する請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
含水カオリンを含む組成物であって、
該含水カオリンが、以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有することを特徴とする組成物。
【請求項6】
含水カオリンが、“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2.5を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
含水カオリンが、“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約3を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
含水カオリンが、約0.5μmから1.5μmの範囲にある中央粒径(D50)を有する請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
含水カオリンが約2.0μm未満かつ約0.4μmを超える中央粒径(D50)を有する請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
含水カオリンが約1.0μm未満かつ約0.5μmを超える中央粒径(D50)を有する請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
以下の粒径分布比、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する含水カオリンを微粉化する工程、および、組成物中に該微粉化含水カオリンを含有させる工程を含むカオリン組成物の調製方法。
【請求項12】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する含水カオリンを微粉化する工程を含む、含水カオリンの分散速度を増大させる方法。
【請求項13】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する含水カオリンを適切な媒体中に含むインキ。
【請求項14】
適切な媒体が、水性媒体および非水性媒体から選択される請求項13に記載のインキ。
【請求項15】
グラビアインキ、ヒートセットインキ、平板印刷インキ、および新聞印刷インキから選択される請求項13に記載のインキ。
【請求項16】
樹脂、高分子、添加剤、充填剤、希釈剤、湿潤剤、レシチン、および殺生剤から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む請求項13に記載のインキ。
【請求項17】
樹脂が、ビニル樹脂、アクリル樹脂、炭化水素樹脂、ポリエステル樹脂、金属含有レジネート、およびセルロース系レジネートから選択される請求項16に記載のインキ。
【請求項18】
添加剤が、レオロジー改質剤、界面活性剤、および乾燥促進剤から選択される請求項16に記載のインキ。
【請求項20】
乾燥促進剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、N,N−ジエチル−m−トルアミド、シクロヘキシルピロリジノンおよびブチルカルビトールから選択される請求項19に記載のインキ。
【請求項21】
湿潤剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、エーテル、カルボン酸、エステル、アルコール、オルガノスルフィド、オルガノスルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコール、およびケトンから選択される請求項17に記載のインキ。
【請求項22】
殺生剤が、ベンゾエート、ソルベート、およびイソチアゾロンから選択される請求項17に記載のインキ。
【請求項23】
少なくとも1種の顔料をさらに含む請求項13に記載のインキ。
【請求項24】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する含水カオリンを適切な媒体中に含む塗料。
【請求項25】
建築用塗料、デコ塗料、アート塗料、および工業用コーティング剤から選択される請求項24に記載の塗料。
【請求項26】
1%〜80%の範囲にある顔料体積濃度を有する請求項24に記載の塗料。
【請求項27】
塗料が、その限界顔料体積濃度より低い顔料体積濃度を有する請求項24に記載の塗料組成物。
【請求項28】
バインダーおよび添加剤から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む請求項24に記載の塗料組成物。
【請求項29】
バインダーが、水性分散性バインダーおよび非水性分散性バインダーから選択される請求項28に記載の塗料。
【請求項30】
バインダーが、ポリビニルアルコール、アクリル系、ビニルアクリル系、酢酸ビニル、スチレン含有バインダー、およびラテックス含有バインダーから選択される請求項28に記載の塗料。
【請求項31】
添加剤が、界面活性剤、増粘剤、脱泡剤、ぬれ向上剤、分散剤、殺生剤、および合体剤から選択される請求項28に記載の塗料。
【請求項32】
少なくとも1種の顔料をさらに含む請求項28に記載の塗料。
【請求項33】
少なくとも1種の追加の顔料が、TiOおよび炭酸カルシウムから選択される請求項32に記載の塗料。
【請求項34】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する含水カオリンを含む高分子製品。
【請求項35】
少なくとも1種の高分子樹脂をさらに含む請求項34に記載の高分子製品。
【請求項36】
少なくとも1種の高分子樹脂が、ポリオレフィン樹脂、アリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エンジニアリング高分子、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂から選択される請求項35に記載の高分子製品。
【請求項37】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する含水カオリンを含むゴム製品。
【請求項38】
天然ゴムおよび合成ゴムから選択される少なくとも1種のゴムを含む請求項37に記載のゴム製品。
【請求項39】
合成ゴムが、イオウ加硫ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ビニル−スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、およびネオプレンゴムから選択される請求項38に記載のゴム製品。
【請求項40】
スチレン−ブタジエンゴムが、エマルジョンスチレン−ブタジエンゴムおよび溶液スチレン−ブタジエンゴムから選択される請求項39に記載のゴム製品。
【請求項41】
ブタジエンゴムが、シス−1,3−ポリブタジエンゴムおよびシス−1,4−ポリブタジエンゴムから選択される請求項39に記載のゴム製品。
【請求項42】
天然ゴムが、標準マレーシア天然ゴムである請求項38に記載のゴム製品。
【請求項43】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)、および“SSM”V−Tアルキドヘグマンテスト(“SSM”V−T Alkyd Hegman Test)を使用して、3分間で約2を超えるヘグマングラインド(Hegman Grind)を有する含水カオリンを含むコーティング剤。
【請求項44】
非水性紙用コーティング剤である請求項43に記載のコーティング剤。
【請求項45】
板紙用コーティング剤である請求項43に記載のコーティング剤。
【請求項46】
少なくとも1種のバインダーをさらに含む請求項39に記載のコーティング剤。
【請求項47】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを適切な媒体中に含むインキ。
【請求項48】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを適切な媒体中に含む塗料。
【請求項49】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを含む高分子製品。
【請求項50】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを含むゴム製品。
【請求項51】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを含むコーティング剤。
【請求項52】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを含む紙用コーティング剤。
【請求項53】
以下の比の粒径分布、
(0.5μmにおける累積質量)/(2μmにおける累積質量)≦0.5
および約2.0μm未満またはこれに等しい中央粒径(D50)を有する微粉化含水カオリンを含む板紙用コーティング剤。
【請求項54】
微粒子顔料または顔料混合物の分散速度の測定方法であって、
a)微粒子顔料をアルキド樹脂含有系と混合して、最初の顔料含有混合物を形成する工程、
b)最初の顔料含有混合物を粉砕して、粉砕された顔料含有混合物を生成する工程、
c)粉砕された顔料含有混合物中の、微粒子顔料の相対的分散を測定する工程、
d)粉砕された顔料含有混合物を再粉砕する工程、および
e)再粉砕された顔料含有混合物中の微粒子顔料の相対的分散を測定する工程
を含む方法。
【請求項55】
前記アルキド樹脂が、液体の非水性アルキド樹脂を含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記アルキド樹脂が、ビニルトルエン樹脂を含む請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記相対的分散が、ヘグマングラインド(Hegman grind)ゲージに基づく方法を使用して測定される請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記相対的分散が、顔料含有混合物から調製された乾燥皮膜の光沢および光輝を測定することによって求められる請求項54に記載の方法。

【公表番号】特表2007−518656(P2007−518656A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541347(P2006−541347)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038575
【国際公開番号】WO2005/052066
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(505348371)アイメリーズ カオリン,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】